(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】装置、熱交換器、蒸発器、および発熱体
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240208BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240208BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20240208BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 L
F28D15/02 102Z
H05K7/20 R
H01L23/46 B
H01L23/40 D
(21)【出願番号】P 2020029926
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】長野 方星
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀志
(72)【発明者】
【氏名】水谷 琢志
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0282382(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0233639(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0239392(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0077232(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0242476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H05K 7/20
H01L 23/427
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器と、
を備える装置において、
前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および
当該蒸発器を互いに接触させた状態で、
前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する
装置。
【請求項2】
前記発熱体および前記蒸発器が互いに接触する接触領域に、前記スライド移動する向きに沿って形成される溝部と、当該溝部内に向けて突出する突出部とが形成される
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記溝部および前記突出部の組は、前記スライド移動する向きと交差する向きに複数並べて形成される
請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器が互いに掛かり合う掛かり部を複数有する
請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器が互いに対向する領域に形成される
請求項1乃至
4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器のいずれかによって、前記スライド移動する向きと交差する向きにおける当該発熱体および当該蒸発器の他のいずれかの両側から当該他のいずれかを挟む
請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器と、
を備える装置において、
前記発熱体および前記蒸発器を互いに接触させた状態で、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有し、
前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器のいずれかによって、前記スライド移動する向きと交差する向きにおける当該発熱体および当該蒸発器の他のいずれかの両側から当該他のいずれかを挟
む
装置。
【請求項8】
前記押付機構は、前記一方が前記他方に対して回転運動することにともない、前記発熱体および前記蒸発器を互いに押し付け合わせる
請求項1乃至7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器において、
前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および
当該蒸発器を互いに接触させた状態で、
前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する
熱交換器。
【請求項10】
発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させ流出させるとともに、流出した気相の作動流体が凝縮して環流する蒸発器において、
前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および
当該蒸発器を互いに接触させた状態で、
前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する
蒸発器。
【請求項11】
熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させ流出させるとともに、流出した気相の作動流体が凝縮して環流する蒸発器に設けられ発熱する発熱体において、
前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および
当該蒸発器を互いに接触させた状態で、
前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する
発熱体。
【請求項12】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に向けて排出する凝縮器と、
前記凝縮器から熱を吸収して放熱する放熱体と、
を備える装置において、
前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および
当該蒸発器を互いに接触させた状態で、
前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、熱交換器、蒸発器、および発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設置角度の如何に関わらず効率的に発熱部品を冷却するべく、蒸発部、凝縮部、及び液戻り管の内部にそれぞれ設けられるとともに、毛細管力を生じさせるウィックを有するループ型ヒートパイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば電子機器などの装置の製造工程において、装置が備える発熱体に対して、熱交換器を取り付ける工程を簡略化したいという要望がある。また、発熱体に取り付けた熱交換器が発熱体から離間すると、熱交換器が発熱体からの熱流束を効率よく除去することが困難となる。
そこで、本発明は、発熱体に対する熱交換器の取り付けを容易とする装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、上記課題を解決する手段として、以下に記載の発明が挙げられる。すなわち、請求項1に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器と、を備える装置において、前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および当該蒸発器を互いに接触させた状態で、前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する装置である。
請求項2に記載の発明は、前記発熱体および前記蒸発器が互いに接触する接触領域に、前記スライド移動する向きに沿って形成される溝部と、当該溝部内に向けて突出する突出部とが形成される請求項1記載の装置である。
請求項3に記載の発明は、前記溝部および前記突出部の組は、前記スライド移動する向きと交差する向きに複数並べて形成される請求項2記載の装置である。
請求項4に記載の発明は、前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器が互いに掛かり合う掛かり部を複数有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置である。
請求項5に記載の発明は、前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器が互いに対向する領域に形成される請求項1乃至4のいずれか1項記載の装置である。
請求項6に記載の発明は、前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器のいずれかによって、前記スライド移動する向きと交差する向きにおける当該発熱体および当該蒸発器の他のいずれかの両側から当該他のいずれかを挟む請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置である。
請求項7に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器と、を備える装置において、前記発熱体および前記蒸発器を互いに接触させた状態で、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有し、前記押付機構は、前記発熱体および前記蒸発器のいずれかによって、前記スライド移動する向きと交差する向きにおける当該発熱体および当該蒸発器の他のいずれかの両側から当該他のいずれかを挟む装置である。
請求項8に記載の発明は、前記押付機構は、前記一方が前記他方に対して回転運動することにともない、前記発熱体および前記蒸発器を互いに押し付け合わせる請求項1乃至7のいずれか1項記載の装置である。
請求項9に記載の発明は、発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器において、前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および当該蒸発器を互いに接触させた状態で、前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する熱交換器である。
請求項10に記載の発明は、発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させ流出させるとともに、流出した気相の作動流体が凝縮して環流する蒸発器において、前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および当該蒸発器を互いに接触させた状態で、前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する蒸発器である。
請求項11に記載の発明は、熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させ流出させるとともに、流出した気相の作動流体が凝縮して環流する蒸発器に設けられ発熱する発熱体において、前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および当該蒸発器を互いに接触させた状態で、前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する発熱体である。
請求項12に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に向けて排出する凝縮器と、前記凝縮器から熱を吸収して放熱する放熱体と、を備える装置において、前記発熱体および前記蒸発器の少なくとも一つに形成され、当該発熱体および当該蒸発器の一方が他方に対してスライド移動する向きに進むに従い、当該発熱体および当該蒸発器の他の一つから離間する向きに傾斜する傾斜面を有し、当該発熱体および当該蒸発器を互いに接触させた状態で、前記スライド移動することにともない、当該発熱体および当該蒸発器が互いに押し付け合う押付機構を有する装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、発熱体に対する熱交換器の取り付けを容易とする装置を提供することができる。
請求項2記載の発明によれば、発熱体および蒸発器の接触面積を増加させることができる。
請求項3記載の発明によれば、発熱体および蒸発器の接触面積を増加させることができる。
請求項4記載の発明によれば、発熱体および蒸発器の押し付け合いが確実になる。
請求項5記載の発明によれば、装置の寸法を抑制できる。
請求項6記載の発明によれば、発熱体および蒸発器がずれることが抑制される。
請求項7記載の発明によれば、発熱体および蒸発器がずれることが抑制される。
請求項8記載の発明によれば、発熱体に対して蒸発器の取り付けるために必要とされる空間の寸法が抑制できる。
請求項9記載の発明によれば、発熱体に対する取り付けを容易とする熱交換器を提供することができる。
請求項10記載の発明によれば、発熱体に対する取り付けを容易とする蒸発器を提供することができる。
請求項11記載の発明によれば、蒸発器に対する取り付けを容易とする発熱体を提供することができる。
請求項12記載の発明によれば、放熱体に対する凝縮器の取り付けを容易とする装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係るループ型ヒートパイプを示す概略構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る蒸発器を示す概略構成図である。
【
図3】(a)は収容室底板の斜視図であり、(b)は(a)のIIIb-IIIbにおける断面図である。
【
図4】(a)は発熱体天板の斜視図であり、(b)は(a)のIVb-IVbにおける断面図である。
【
図5】(a)および(b)は、収容室底板を発熱体天板に装着する動作を示す図である。
【
図6】(a)は収容室底板の斜視図であり、(b)は(a)のVIb-VIbにおける断面図である。
【
図7】(a)は発熱体天板の斜視図であり、(b)は(a)のVIIb-VIIbにおける断面図である。
【
図8】(a)および(b)は、収容室底板を発熱体天板に装着する動作を示す図である。
【
図9】(a)は収容室底板の斜視図であり、(b)は(a)のIXb-IXbにおける断面図であり、(c)は(a)のIXc-IXcにおける断面図である。
【
図10】(a)は発熱体天板の斜視図であり、(b)は(a)のXb-Xbにおける断面図であり、(c)は(a)のXc-Xcにおける断面図である。
【
図11】(a)および(b)は、収容室底板を発熱体天板に装着する動作を示す図である。
【
図12】(a)は筺体の斜視図であり、(b)は(a)のXIIb-XIIbにおける断面図である。
【
図13】(a)は発熱体天板の斜視図であり、(b)は(a)のXIIIb-XIIIbにおける断面図である。
【
図14】(a)および(b)は、筺体を発熱体天板に装着する動作を示す図である。
【
図15】(a)は筺体の斜視図であり、(b)は(a)のXVb-XVbにおける断面図である。
【
図16】(a)は発熱体天板の斜視図であり、(b)は(a)のXVIb-XVIbにおける断面図である。
【
図17】(a)乃至(c)は、筺体を発熱体天板に装着する動作を示す図である。
【
図18】(a)は筺体の斜視図であり、(b)は(a)のXVIIIからみた拡大図である。
【
図19】(a)は発熱体天板の斜視図であり、(b)は(a)のIXXb-IXXbからみた拡大図である。
【
図20】(a)乃至(c)は、筺体を発熱体天板に装着する動作を示す図である。
【
図21】(a)は筺体の斜視図であり、(b)は発熱体天板の斜視図である。
【
図22】(a)は筺体を発熱体天板に装着する動作を示す図であり、(b)は筺体が装着された発熱体天板を示す図である。
【
図23】ループ型ヒートパイプを備える携帯電話を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
<ループ型ヒートパイプ100の構成>
図1は、本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ100を示す概略構成図である。
まず、
図1を参照して、本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ100の構成を説明する。本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ100は、例えば電子機器等の筺体の内部に備えられる中央演算処理装置(CPU)などの発熱体200を、外部から動力を供給することなく冷却するため、作動流体を循環させるよう構成されている。
【0009】
詳細に説明すると、冷却素子の一例であるループ型ヒートパイプ100は、作動流体が気化する際の潜熱を利用して発熱体200を冷却するため作動流体を蒸発させる蒸発器(Evaporator)101と、この蒸発器101で気化された作動流体を放熱して液化する凝縮器(Condenser)107とを有する。
【0010】
また、ループ型ヒートパイプ100は、蒸発器101で気化された作動流体を凝縮器107まで送る蒸気管(Vapor Line)105と、凝縮器107で液化された作動流体を蒸発器101まで送る液管(Liquid Line)109とを備えている。なお、図示の蒸気管105および液管109は、曲げ変形可能である。そして、ループ型ヒートパイプ100内には液相および気相の間で相変化する作動流体が充填されている。なお、作動流体は、例えば、水、アルコール、アンモニア等が用いられる。
【0011】
<ループ型ヒートパイプ100の動作>
次に、
図1を参照して、ループ型ヒートパイプ100内の動作を説明する。
発熱体200において発生する熱は、蒸発器101に伝達される(矢印C1参照)。蒸発器101において熱を吸収した作動流体は気化し、蒸気管105を通って(矢印A1参照)凝縮器107へ送られる(矢印A2参照)。凝縮器107へ送られた作動流体は、放熱板300を介して熱を放出して(矢印C2参照)液化する。そして、液化した作動流体は、液管109を通って(矢印A3参照)再び蒸発器101へと送られる(矢印A4参照)。
【0012】
ここで、本実施の形態に係る蒸発器101は、発熱体200に対して着脱可能に固定されている。また、凝縮器107は、放熱を行う放熱板300に対して着脱可能に固定されている。図示の例においては、蒸発器101を発熱体200に固定する機構と、凝縮器107を放熱板300に固定する機構は共通の構成である。以下では、蒸発器101を発熱体200に固定する機構について説明をする。
【0013】
<蒸発器101の構成>
図2は、本実施の形態に係る蒸発器101を示す概略構成図である。
次に、
図2を参照して、本実施の形態が適用される蒸発器101の構成を説明する。
図2に示すように、蒸発器101は、電子機器(図示せず)の内部に備えられ発熱体200からの熱を受ける筺体110と、筺体110の内部に設けられるウィック130とを有する。
【0014】
本実施の形態に係る筺体110およびウィック130は、概形が平板状である。また、この筺体110は、蒸気管105および液管109が接続される。さらに、筺体110には作動流体が充填されている。
【0015】
また、筺体110は、ウィック130を内部に収容する収容室本体141と、収容室本体141の発熱体200側を覆う収容室底板151とを有する。さらに説明をすると、収容室底板151は、収容室本体141よりも大きな板面を有している。したがって、収容室底板151の板面の一部に収容室本体141が設けられている構成である。これらの収容室本体141および収容室底板151は、例えばアルミなどの金属や樹脂などにより形成される。なお、ここでは収容室本体141および収容室底板151を別部材として説明をするが、収容室底板151が発熱体200から受けた熱を収容室本体141に伝達することができればよい。したがって、例えば収容室本体141および収容室底板151を一体として構成してもよい。
【0016】
ここで、収容室本体141の内部において、ウィック130を挟んで発熱体200とは反対側であり液管109と連続する空間は、液相の作動流体が収容される液溜め部150として機能する。また、収容室本体141の内部において、ウィック130よりも発熱体200側であり蒸気管105と連続する空間は、気相の作動流体が通過する蒸気溝140として機能する。したがって、ウィック130は、筺体110の内部を、液溜め部150と、蒸気溝140が形成される空間とに区画する。
【0017】
ウィック130は、多孔質金属(ポーラスメタル)などの多孔質体により形成される。このウィック130は、作動流体に毛細管力を発生させ、結果として作動流体を移動させる。ウィック130の実効空孔径は、0.1~20μmである。また、ウィック130の空孔率は、25~70%である。なお、実効空孔径および空孔率の測定法は特に限定されない。例えば、水中含侵法による見かけ密度測定、水銀圧入法による気孔径分布測定、あるいはX線CTによる気孔観察などにより測定してもよい。
【0018】
また、ウィック130は、上述の金属製の多孔質体に限定されるものではなく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂製の多孔質体、セラミック多孔質体、ガラス多孔質体、多孔質繊維など、その内部に多数の孔、すなわち空隙が形成された材料であればよい。また、ウィック130として、熱伝導率が低い材質を用いると、蒸発器101における熱リークを低減することができる。なお、熱リークをより低減したい場合、一般的に熱伝導率が金属よりも低い非金属製の材料を用いることが好ましい。
【0019】
<蒸発器101の動作>
次に、
図1および
図2を参照しながら蒸発器101内の動作について説明する。
液溜め部150に収容された液相の作動流体は、ウィック130に浸透する。そして、液相の作動流体は、ウィック130の毛細管力によりウィック130内を移動しながら、発熱体200の熱により加熱され気化する。この気化した作動流体は、蒸気管105側へと移動した後(矢印A5)、蒸気管105から流出し(矢印A1参照)、凝縮器107(
図1参照)へと送られる。
【0020】
一方、凝縮器107(
図1参照)で液化した作動流体は、液管109を介して筺体110内へと流入する(矢印A4参照)。筺体110内へ流入した作動流体は、液溜め部150を経てウィック130に浸透する。
【0021】
このように、ウィック130において作動流体の流れが途切れることなく、上記のサイクルが繰り返される。そして、発熱体200において発生した熱が、蒸発器101から凝縮器107(
図1参照)へと輸送される。
【0022】
なお、以下の説明においては、
図2における左右方向、すなわち収容室底板151(後述)の長手方向を、単に長手方向ということがある。また、長手方向、すなわち
図2における左右方向の左側を単に一方側といい、
図2における右側を単に他方側ということがある。また、
図2における上下方向を、単に上下方向ということがある。また、
図2における上下方向の上側を単に上側といい、
図2における下側を単に下側ということがある。また、
図2における奥行方向を、単に幅方向ということがある(後述する
図3参照)。また、
図2における紙面手前側を単に手前側といい、
図2の紙面奥側を単に奥側ということがある。なお、ここでの上下方向など向きの名称は、便宜上のものであり、ループ型ヒートパイプ100を設置する向きを限定するものではない。
【0023】
<発熱体200の構成>
次に、
図2を参照して、本実施の形態が適用される発熱体200の構成の構成を説明する。
図2に示すように、発熱体200の構成は、CPUなどの発熱体本体241と、発熱体本体241における筺体110側の面に固定される発熱体天板251とを有する。ここで、発熱体天板251は、例えばアルミなどの金属や樹脂などにより形成される。なお、ここでは発熱体本体241および発熱体天板251を別部材として説明をするが、発熱体本体241が発する熱を発熱体天板251に伝達することができればよい。したがって、例えば発熱体本体241および発熱体天板251を一体として構成してもよい。
【0024】
<着脱機構>
ここで、上記のように、本実施の形態における蒸発器101は発熱体200に対して着脱可能に固定される。具体的には、蒸発器101の収容室底板151が、発熱体200の発熱体天板251に対して着脱することが可能である。さらに説明をすると、収容室底板151が発熱体天板251と掛かりあうことにより、蒸発器101および発熱体200が互いに固定される。このように、収容室底板151および発熱体天板251を設けることにより、ねじ止めや溶接等を必要とすることなく、蒸発器101および発熱体200の所謂コネクタ接続が実現される。
【0025】
<収容室底板151の構成>
図3(a)は収容室底板151の斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のIIIb-IIIbにおける断面図である。
【0026】
次に、
図2、
図3(a)および(b)を参照しながら、収容室底板151について説明をする。
図3(a)に示すように、収容室底板151は略板状の部材である。収容室底板151は、上下方向上側を向く面である底板天面153と、上下方向下側を向く面である底板底面155とを有する。図示の底板天面153および底板底面155はそれぞれ略長方形状である。
【0027】
また、収容室底板151は、収容室底板151を厚さ方向に貫通する貫通穴161と、底板天面153から上側に突出する底板突出部165とを有する。図示の貫通穴161は、平面視略長方形状である。また、図示の底板突出部165は、幅方向に沿って形成される突出部であり、頂部166を頂点とする断面略三角形である。ここで、
図2に示すように、貫通穴161および底板突出部165は、収容室底板151における収容室本体141よりも長手方向一方側に突出する領域に設けられる。また、底板突出部165は、貫通穴161よりも長手方向他方側に設けられる。
【0028】
また、収容室底板151は、底板底面155に設けられる凹部である底板凹部171を有する。この底板凹部171は、長手方向に沿って形成される略直方体状の空間である。図示の例においては、底板凹部171は幅方向において予め定めた間隔で複数(3つ)設けられる。ここで、
図2に示すように、底板凹部171は、底板底面155における収容室本体141の上下方向下側の領域に形成されている。
【0029】
また、底板凹部171は、底板凹部171の底部を形成する面、すなわち底板凹部171の内面のうち上下方向と直交する面である凹部受け面172と、底板凹部171の幅方向と直交する面である凹部側面173(
図3(a)参照)とを有する。また、底板凹部171は、底板凹部171の長手方向における他方側端部174からさらに他方側に向かう凹部である底板掛かり部175を有する。ここで、底板掛かり部175は所謂楔型である。さらに説明をすると、底板掛かり部175の上下方向下側に位置する面は、傾斜面177である。このは、図示の例においては長手方向他方側に進むに従い上下方向上側となる向きに傾斜しているテーパ面である。
【0030】
<発熱体天板251の構成>
図4(a)は発熱体天板251の斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)のIVb-IVbにおける断面図である。
【0031】
次に、
図2、
図4(a)および(b)を参照しながら、発熱体天板251について説明をする。
図4(a)に示すように、発熱体天板251は略板状の部材である。発熱体天板251は、上下方向上側を向く面である発熱体天面253と、上下方向下側を向く面である発熱体底面255とを有する。図示の発熱体天面253および発熱体底面255は、それぞれ略長方形状である。
【0032】
また、発熱体天板251は、発熱体天面253から上側に突出して設けられる部分である爪体261を有する。爪体261は、幅方向において予め定めた間隔で複数(3つ)設けられる。また、爪体261は、各々収容室底板151の貫通穴161(
図3(a)参照)と対向する位置に設けられている。爪体261は、発熱体天面253に設けられた略板状部材である爪支持部263と、爪支持部263の上側端部から長手方向他方側に向けて形成される突起である爪先265とを有する。図示の爪支持部263は、板面が長手方向と直交する向きに設けられる。また、爪支持部263は弾性変形可能である。
【0033】
ここで、爪体261は、貫通穴161(
図3(a)参照)に挿入可能であり、かつ貫通穴161内で長手方向に移動可能な寸法で形成されている。また、発熱体天面253から爪先265までの高さH1は、底板天面153の厚さH2(
図3(b)参照)よりも大きい。このことにより、爪体261が収容室底板151の貫通穴161に挿入された状態において、爪先265が収容室底板151の底板天面153側に配置することが可能となる(後述)。また、爪支持部263が外力を受け弾性変形することにより、高さH1は変化し得る。
【0034】
さて、発熱体天板251は、発熱体天面253から上側に突出する天板凸部271を有する。この天板凸部271は、長手方向に沿って形成される略直方体状の部分である。また、天板凸部271は、幅方向において予め定めた間隔で複数(3つ)設けられる。また、天板凸部271は、各々底板凹部171(
図3(a)参照)と対向する位置に設けられている。天板凸部271は、上下方向上側を向く面である凸部頂面272と、天板凸部271の側面であり長手方向に沿う面である凸部側面273とを有する。
【0035】
また、天板凸部271は、天板凸部271の長手方向における他方側端部274からさらに他方側に向かう凸部である天板掛かり部275を有する。ここで、天板掛かり部275の上下方向下側の面は、掛かり面277である。この掛かり面277は、収容室底板151の傾斜面177に沿って移動する(後述)。
【0036】
ここで、天板凸部271は、収容室底板151の底板凹部171(
図3(a)参照)に収容可能であり、かつ底板凹部171内で長手方向に移動可能な寸法で形成されている。また、発熱体天面253から天板凸部271の凸部頂面272までの高さH3は、底板凹部171の深さH4(
図3(b)参照)と略一致する。このことにより、天板凸部271が底板凹部171に収容された状態において、凸部頂面272を凹部受け面172と接触させることが可能となる(後述)。また、天板凸部271の幅方向長さW1(
図4(a)参照)は、底板凹部171の幅方向長さW2(
図3(a)参照)と略一致する。このことにより、天板凸部271が底板凹部171に収容された状態において、天板凸部271の凸部側面273を底板凹部171の凹部側面173と接触させることが可能となる(後述)。なお、天板凸部271および底板凹部171の組が、幅方向において予め定めた間隔で複数(3つ)設けられることで、収容室底板151および発熱体天板251の接触面積が確保される。
【0037】
<着脱動作>
図5(a)および(b)は、収容室底板151を発熱体天板251に装着する動作を示す図である。
次に
図5(a)および(b)を参照しながら、収容室底板151を発熱体天板251に対して着脱する動作について説明をする。
【0038】
まず、収容室底板151を発熱体天板251に装着する動作を説明する。
図5(a)に示すように、発熱体天板251に収容室底板151を重ねて配置する(図中矢印D1参照)。このとき、収容室底板151の底板底面155が、発熱体天板251の発熱体天面253と接触した状態となる。また、天板凸部271は底板凹部171内に配置された状態となる。このとき、凸部頂面272が凹部受け面172と接触し、凹部側面173(
図3(a)参照)が凸部側面273(
図4(a)参照)と接触した状態となる。また、爪体261は貫通穴161内に挿入され、爪先265が収容室底板151の底板天面153側に位置する状態となる。
【0039】
次に、
図5(b)に示すように、発熱体天板251に対して収容室底板151をスライド移動させる。ここで、スライド移動とは、発熱体天板251および収容室底板151各々の面を互いに接触させた状態において、一方の面を他方の面に対して滑らせることをいう。図示の例においては、収容室底板151を長手方向一方側に移動させる(図中矢印D2参照)。このことにともない、天板凸部271の天板掛かり部275が、底板凹部171の底板掛かり部175内に進入する。そして、掛かり面277が傾斜面177に押し当てられることにより、天板掛かり部275が上下方向上側に押し付けられた状態となる。その結果、凸部頂面272が凹部受け面172により押し当てられた状態となる。
【0040】
また、収容室底板151を長手方向一方側に移動させる(図中矢印D2参照)ことにより、爪体261の爪支持部263が弾性変形しながら、爪先265が頂部166を超え、底板突出部165と掛かり合う。このことにより凸部頂面272が凹部受け面172により押し当てられた状態となる。
【0041】
ここで、上記のように収容室底板151および発熱体天板251における長手方向他方側において、天板掛かり部275が底板掛かり部175と掛かり合うと、長手方向一方側において、発熱体天板251が収容室底板151から離間する向き(矢印D3参照)に移動する力が発生し得る。しかしながら、図示の例においては、爪体261の爪先265が収容室底板151の底板突出部165に掛かることにより、収容室底板151が発熱体天板251から離間することが抑制される。付言すると、底板突出部165は、爪体261の爪止めとして機能する。
【0042】
上記のように、本実施の形態においては、発熱体天板251に対して収容室底板151をスライド移動することにともない、収容室底板151が発熱体天板251に固定される。言い替えると、発熱体天板251に対する収容室底板151の相対位置を変化させることにより、収容室底板151が発熱体天板251に固定される。また、本実施の形態においては、発熱体天板251に対して収容室底板151をスライド移動することにともない、収容室底板151を発熱体天板251に対して圧着する圧着度が増加する。
【0043】
次に、発熱体天板251から収容室底板151を外す動作を説明する。
図示は省略するが、発熱体天板251から収容室底板151を外す際には、発熱体天板251に対して収容室底板151を長手方向他方側にスライド移動させる。このことにより、天板凸部271の天板掛かり部275が、底板凹部171の底板掛かり部175から外れた状態となる。また、爪体261が頂部166を超え、底板突出部165と掛かり合った状態からはずれた状態となる。その結果、発熱体天板251が収容室底板151から離間可能となる。
【0044】
ここで、上記のように、収容室底板151を発熱体天板251に対して着脱可能とすることにより、例えば発熱体に対して、熱交換器を取り付ける作業が簡略化され得る。また、発熱体に既に装着された熱交換器を修理や交換する作業が簡略化され得る。
【0045】
<第2の実施形態>
図6(a)は収容室底板1151の斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)のVIb-VIbにおける断面図である。
図7(a)は発熱体天板1251の斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)のVIIb-VIIbにおける断面図である。
図8(a)および(b)は、収容室底板1151を発熱体天板1251に装着する動作を示す図である。
【0046】
次に、
図6乃至
図8を参照しながら、第2の実施形態について説明をする。なお、以下の説明においては、上記第1の実施形態の構成と同一の部分には同一の符号をつけ、その詳細な説明は省略する。
【0047】
上記の第1の実施形態においては、収容室底板151および発熱体天板251が、底板凹部171や天板凸部271などを備えることを説明した。しかしながら、収容室底板151および発熱体天板251が着脱可能であり、かつ互いに押し付ける力を付与するものであれば、その構成は特に限定されない。例えば、
図6乃至
図8に示すように、収容室底板1151および発熱体天板1251を構成してもよい。
【0048】
図6(a)に示すように、収容室底板1151は略板状の部材であり、底板天面1153と底板底面1155とを有する。また、収容室底板1151は、各々底板底面1155に設けられる凹部である第1底板凹部1171および第2底板凹部1161を有する。第1底板凹部1171は、長手方向に沿って形成される略直方体状の空間である。また、第2底板凹部1161は、長手方向に沿って形成される略直方体状の空間であり、長手方向における第1底板凹部1171の両側に設けられる。
【0049】
ここで、
図6(b)に示すように、第2底板凹部1161は、長手方向における他方側端部1164からさらに他方側に向かう凹部である底板掛かり部1165を有する。ここで、底板掛かり部1165は所謂楔型である。さらに説明をすると、底板掛かり部1165の上下方向下側に位置する面は、長手方向他方側に進むに従い上下方向上側となる傾斜面1167である。
【0050】
図7(a)に示すように、発熱体天板1251は略板状の部材であり、発熱体天面1253と発熱体底面1255とを有する。また、発熱体天板1251は、各々発熱体天面1253に設けられる部分である爪体1261および天板凸部1271を有する。
【0051】
爪体1261は、収容室底板1151の第2底板凹部1161(
図6(a)参照)と対向する位置に設けられる。また、爪体1261は、発熱体天面1253に設けられた略直方体状の爪支持部1263と、爪支持部1263の上側端部から長手方向他方側に向けて形成される突起である爪端部1265とを有する。
天板凸部1271は、収容室底板1151の第1底板凹部1171(
図6(a)参照)と対向する位置に設けられる。天板凸部1271は、長手方向に沿って形成される略直方体状の部分である。
【0052】
次に、
図8(a)および(b)を参照しながら、収容室底板1151を発熱体天板1251に対して着脱する動作について説明をする。
まず、収容室底板1151を発熱体天板1251に装着する動作を説明する。
図8(a)に示すように、発熱体天板1251に収容室底板1151を重ねて配置する(図中矢印D1参照)。このとき、天板凸部1271は第1底板凹部1171内に配置される。また、爪体1261は、第2底板凹部1161内に配置される。
【0053】
次に、
図8(b)に示すように、発熱体天板1251に対して収容室底板1151を長手方向一方側にスライド移動させる(図中矢印D2参照)。このことにともない、爪体1261の爪端部1265が、第2底板凹部1161の底板掛かり部1165内に進入する。そして、爪端部1265が傾斜面1167に押し当てられることにより、爪体1261が上下方向上側に押し付けられた状態となる。
【0054】
ここで、爪体1261は、長手方向における第1底板凹部1171を挟んだ両側に設けられることにより、天板凸部1271が第1底板凹部1171から離間することが、第1底板凹部1171の両側において抑制される。すなわち、第1底板凹部1171の両側において楔構造を設けることにより、収容室底板1151および発熱体天板1251を互いに押し付ける力が発生する。
【0055】
次に、発熱体天板1251から収容室底板1151を外す動作を説明する。
図示は省略するが、発熱体天板1251から収容室底板1151を外す際には、発熱体天板1251に対して収容室底板1151を長手方向他方側にスライド移動させる。このことにより、爪体1261の爪端部1265が、第2底板凹部1161の底板掛かり部1165から外れた状態となる。
【0056】
<第3の実施形態>
図9(a)は収容室底板2151の斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)のIXb-IXbにおける断面図であり、
図9(c)は
図9(a)のIXc-IXcにおける断面図である。
図10(a)は発熱体天板2251の斜視図であり、
図10(b)は
図10(a)のXb-Xbにおける断面図であり、
図10(c)は
図10(a)のXc-Xcにおける断面図である。
図11(a)および(b)は、収容室底板2151を発熱体天板2251に装着する動作を示す図である。なお、
図11(a-1)および(b-1)は、収容室底板2151および発熱体天板2251を上下方向上側から下側に向けてみた図である。
【0057】
次に、
図9乃至
図11を参照しながら、第3の実施形態について説明をする。
上記の実施形態においては、長手方向に沿ってスライド移動させることにより、収容室底板151および発熱体天板251の着脱を実行すること説明したが、各部材の移動の向きは特に限定されない。例えば、
図9乃至
図11に示すように、収容室底板2151および発熱体天板2251を構成し、収容室底板2151および発熱体天板2251の相対位置を回転運動によってスライドさせる構成であってもよい。このように回転運動によって移動させることにより、収容室底板2151および発熱体天板2251を装着するために必要される空間の寸法が抑制され得る。
【0058】
図9(a)に示すように、収容室底板2151は略板状の部材であり、底板天面2153と底板底面2155とを有する。また、収容室底板2151は、各々底板底面2155に設けられる凹部である第1底板凹部2171および第2底板凹部2161を有する。第1底板凹部2171は、環状に形成された溝部である。また、第2底板凹部2161は、第1底板凹部2171と同心で第1底板凹部2171の外側に設けられた、略円弧状の溝部である。
【0059】
以下の説明においては、第1底板凹部2171の中心を回転中心とする周方向を、単に周方向ということがある。また、
図9(a)において周方向の時計回りに向かう側を、単にCW側ということがある。また、
図9(a)において周方向の反時計周りに向かう側を、単にCCW側ということがある。
【0060】
ここで、
図9(c)に示すように、第2底板凹部2161は、周方向におけるCW側端部2164からさらにCW側に向かう凹部である底板掛かり部2165を有する。ここで、底板掛かり部2165は所謂楔型である。さらに説明をすると、底板掛かり部2165の上下方向下側に位置する面は、周方向CW側に進むに従い上下方向上側となる傾斜面2167である。
【0061】
図10(a)に示すように、発熱体天板2251は略板状の部材であり、発熱体天面2253と発熱体底面2255とを有する。また、発熱体天板2251は、各々発熱体天面2253に設けられる部分である爪体2261および天板凸部2271を有する。
【0062】
爪体2261は、収容室底板2151の第2底板凹部2161(
図9(a)参照)と対向する位置に設けられる。また、
図10(c)に示すように、爪体2261は、発熱体天面2253に設けられた略直方体状の爪支持部2263と、爪支持部2263の上側端部から周方向CW側に向けて形成される突起である爪端部2265とを有する。
天板凸部2271は、収容室底板2151の第1底板凹部2171(
図9(b)参照)と対向する位置に設けられる。天板凸部2271は、周方向に沿って形成される環状の突出部である。
【0063】
次に、
図11(a)および(b)を参照しながら、収容室底板2151を発熱体天板2251に対して着脱する動作について説明をする。
まず、収容室底板2151を発熱体天板2251に装着する動作を説明する。
図11(a-1)に示すように、収容室底板2151を、発熱体天板2251に対して周方向にずらした状態で重ねて配置する。このとき、天板凸部2271は第1底板凹部2171内に配置される。また、爪体2261は、第2底板凹部2161内に配置される(
図11(a-2)参照)。
【0064】
次に、
図11(b-1)に示すように、発熱体天板2251に対して収容室底板2151を周方向CCW側に回転させる(図中矢印D4参照)。このことにともない、発熱体天板2251および収容室底板2151が揃う。また、爪体2261の爪端部2265が、第1底板凹部2171の底板掛かり部2165内に進入する(
図11(b-2)参照)。そして、爪端部2265が傾斜面2167に押し当てられることにより、爪体2261が上下方向上側に押し付けられた状態となる。
【0065】
ここで、爪体2261は、第1底板凹部2171の外周に複数(4つ)設けられることにより、天板凸部2271が第1底板凹部2171から離間することが、第1底板凹部2171の外周において抑制される。すなわち、第1底板凹部2171の外周において複数の楔構造を設けることにより、収容室底板2151および発熱体天板2251を互いに押し付ける力が発生する。さらに説明をすると、第1底板凹部2171の四方で圧着効果が得られる。
【0066】
次に、収容室底板2151を発熱体天板2251から外す動作を説明する。
図示は省略するが、発熱体天板2251から収容室底板2151を外す際には、発熱体天板2251に対して収容室底板2151を周方向CW側にスライド移動させる。このことにより、爪体2261の爪端部2265が、第2底板凹部2161の底板掛かり部2165から外れた状態となる。
【0067】
<第4の実施形態>
図12(a)は筺体3151の斜視図であり、
図12(b)は
図12(a)のXIIb-XIIbにおける断面図である。なお、
図12(a)においては、ウィック130などの記載は省略している。
図13(a)は発熱体天板3251の斜視図であり、
図13(b)は
図13(a)のXIIIb-XIIIbにおける断面図である。
図14(a)および(b)は、筺体3151を発熱体天板3251に装着する動作を示す図である。
【0068】
次に、
図12乃至
図14を参照しながら、第4の実施形態について説明をする。
上記の実施形態においては、筺体110を構成する収容室底板151と、発熱体200を構成する発熱体天板251とを互いに着脱可能とすることを説明したが、筺体110が発熱体200に対して着脱可能であればこれに限定されない。例えば、
図12乃至
図14に示すように、筺体3151全体と、発熱体200を構成する発熱体天板3251とを着脱可能としてもよい。
【0069】
図12(a)に示すように、筺体3151は、略直方体状の部材であり、ウィック130(
図12(b)参照)を内部に収容する。筺体3151は、上下方向上側を向く面である筺体天面3153と、上下方向下側を向く面である筺体底面3155と、幅方向手前側を向く面である筺体第1側面3157と、幅方向奥側を向く面である筺体第2側面3159とを有する。図示の例においては、筺体第1側面3157に、蒸気管105および液管109が接続される。また、筺体3151は、筺体底面3155に設けられる凹部である筺体凹部3171を有する。筺体凹部3171は、幅方向に沿って形成される略直方体状の空間である。
【0070】
図13(a)に示すように、発熱体天板3251は略板状の部材である。発熱体天板3251は、発熱体天面3253と、発熱体底面3255と、幅方向手前側を向く面である天板第1側面3257と、幅方向奥側を向く面である天板第2側面3259とを有する。また、発熱体天板3251は、発熱体天面3253から突出する天板凸部3271および爪体3361を有する。
【0071】
天板凸部3271は、発熱体天面3253における筺体凹部3171(
図12(a)参照)と対向する位置に設けられる。天板凸部3271は、長手方向に沿って形成される略直方体状の部分である。
爪体3361は、発熱体天板3251の長手方向両端に設けられる。また、爪体3361は、発熱体天板3251の長手方向両端において幅方向全体にわたって設けられている。
【0072】
爪体3361は、発熱体天面3253に直交する向きに設けられた略板状の爪支持部3363と、爪支持部3363の上側端部から発熱体天面3253の中央側に向けて形成される突起である爪端部3365とを有する。爪端部3365の上下方向下側に位置する面は、幅方向奥側に進むに従い上下方向下側となる傾斜面3367である。
【0073】
ここで、発熱体天板3251の長手方向両端に設けられる爪体3361は、筺体3151を抱え込む構成である。さらに説明をすると、爪体3361は、上下方向および長手方向において筺体3151を挟みこむ。なお、長手方向における爪支持部3363間の距離L1は、筺体3151の長手方向の長さL2(
図12(b)参照)と略一致する。また、発熱体天面3253から傾斜面3367まで高さL3(
図13(b)参照)は、筺体3151の上下方向の長さL4(
図12(b)参照)と略一致する。
【0074】
次に、
図14(a)および(b)を参照しながら、筺体3151を発熱体天板3251に対して着脱する動作について説明をする。
まず、筺体3151を発熱体天板3251に装着する動作を説明する。
図14(a-1)に示すように、筺体3151を発熱体天板3251に対する幅方向手前側に配置する。
【0075】
次に、
図14(a-2)に示すように、天板凸部3271を筺体凹部3171内に配置した状態で、発熱体天板3251に対して筺体3151を幅方向奥側にスライド移動させる(図中矢印D5参照)。その結果、
図14(a-3)に示すように、筺体3151および発熱体天板3251が揃う配置となる。
【0076】
さて、
図14(b)に示すように、筺体3151が発熱体天板3251に装着された状態においては、筺体天面3153が爪体3361の傾斜面3367に押し当てられる。このことにより、筺体3151が上下方向下側に向かう力を受ける。すなわち、筺体3151および発熱体天板3251を互いに押し付ける力が発生する。
【0077】
次に、筺体3151を発熱体天板3251から外す動作を説明する。
図示は省略するが、筺体3151を発熱体天板3251から外す際には、発熱体天板3251に対して筺体3151を幅方向手前側にスライド移動させる。このことにより、爪体3361の爪端部3365が、筺体天面3153から外れた状態となる。
【0078】
<第5の実施形態>
図15(a)は筺体4151の斜視図であり、
図15(b)は
図15(a)のXVb-XVbにおける断面図である。なお、
図15(a)においては、ウィック130などの記載は省略している。
図16(a)は発熱体天板4251の斜視図であり、
図16(b)は
図16(a)のXVIb-XVIbにおける断面図である。
図17(a)乃至(c)は、筺体4151を発熱体天板4251に装着する動作を示す図である。
【0079】
次に、
図15乃至
図17を参照しながら、第5の実施形態について説明をする。
上記の実施形態においては、発熱体天板251の発熱体天面253から上側に突出する爪体261を設けることを説明したが、筺体110が発熱体200に対して着脱可能であればこれに限定されない。例えば、
図15乃至
図17に示すように、筺体4151と、発熱体天板4251とを構成してもよい。
【0080】
図15(a)に示すように、筺体4151は、略直方体状の部材であり、ウィック130(
図15(b)参照)を内部に収容する。筺体4151は、上下方向上側を向く面である筺体天面4153と、上下方向下側を向く面である筺体底面4155と、幅方向手前側を向く面である筺体第1側面4157と、幅方向奥側を向く面である筺体第2側面4159とを有する。筺体4151は、長手方向他方側において蒸気管105および液管109と接続される。また、筺体4151は、筺体底面4155に発熱体天板4251(
図16(a)参照)を収容する天板収容凹部4170を有する。
【0081】
天板収容凹部4170は、筺体底面4155における長手方向全体にわたって形成された略直方体状の空間である。また、天板収容凹部4170は、天板収容凹部4170の底部を形成する面、すなわち天板収容凹部4170の内面のうち上下方向と直交する面である天板受け面4172と、天板収容凹部4170の幅方向と直交する面である天板収容凹部側面4144とを有する。
【0082】
天板受け面4172は、上下方向上側に凹む筺体凹部4171を有する。筺体凹部4171は、長手方向に沿って形成される略直方体状の空間である。天板収容凹部側面4144は、幅方向に凹む側面凹部4161を有する。ここで、
図15(a)に示すように、側面凹部4161は、湾曲部4164を有する溝部である。さらに説明をすると、側面凹部4161は、後述する爪体4261が内部でスライド移動可能な幅で形成されている。また、側面凹部4161において側面凹部4161の一端4162は、筺体底面4155から上下方向上側に向けて延びる。また、側面凹部4161において湾曲部4164を介した一端4162と反対側の端部である他端4166は、長手方向他方側に向けて延びる。また、他端4166は、一端4162よりも幅が小さくなるように形成されている。
【0083】
図16(a)に示すように、発熱体天板4251は略板状の部材である。発熱体天板4251は、発熱体天面4253と、発熱体底面4255と、幅方向手前側を向く面である天板第1側面4257と、幅方向奥側を向く面である天板第2側面4259とを有する。また、発熱体天板4251は、発熱体天面4253から突出する天板凸部4271と、天板第1側面4257および天板第2側面4259からそれぞれ突出する爪体4261を有する。
【0084】
天板凸部4271は、筺体4151の筺体凹部4171(
図15(a)参照)と対向する位置に設けられる。天板凸部4271は、長手方向に沿って形成される略直方体状の部分である。また、爪体4261は、天板第1側面4257および天板第2側面4259から各々幅方向に突出する略円柱状の部材である。ここで、発熱体天板4251の幅方向両端に設けられる爪体4261は、筺体4151の側面凹部4161内をスライド移動する部材である。言い替えると、爪体4261は、側面凹部4161を案内する部分である。
【0085】
次に、
図17(a)乃至(c)を参照しながら、筺体4151を発熱体天板4251に対して着脱する動作について説明をする。
まず、筺体4151を発熱体天板4251に装着する動作を説明する。
図17(a―1)および(a-2)に示すように、筺体4151を発熱体天板4251の上下方向上側に配置する。
【0086】
次に、
図17(b-1)および(b-2)に示すように、発熱体天板4251の爪体4261を筺体4151の側面凹部4161内に配置した状態で、発熱体天板4251に対して筺体4151を長手方向一方側にスライド移動させる(図中矢印D6参照)。このとき、側面凹部4161内における爪体4261の位置は、一端4162から湾曲部4164を介して他端4166に向かう。このことにより、筺体4151が、上下方向下側に移動しながら長手方向一方側に移動する。
【0087】
そして、
図17(c-1)および(c-2)に示すように、筺体4151が発熱体天板4251に装着される。このとき、天板凸部4271は筺体凹部4171内に配置された状態となる。
【0088】
さて、
図17(c-2)に示すように、筺体4151が発熱体天板4251に装着された状態においては、爪体4261が上下方向において側面凹部4161に挟まれた状態である。このことにより、筺体4151および発熱体天板4251を互いに押し付ける力が発生する。付言すると、図示の例における側面凹部4161は、爪体4261の移動の向きを制限するレールとして機能する。
【0089】
次に、筺体4151を発熱体天板4251から外す動作を説明する。
図示は省略するが、筺体4151を発熱体天板4251から外す際には、発熱体天板4251に対して筺体4151を長手方向他方側にスライド移動させる。このことにより、爪体4261が、側面凹部4161から外れた状態となる。
【0090】
<第6の実施形態>
図18(a)は筺体5151の斜視図であり、
図18(b)は
図18(a)のXVIIIからみた拡大図である。
図19(a)は発熱体天板5251の斜視図であり、
図19(b)は
図19(a)のIXXb-IXXbからみた拡大図である。
図20(a)乃至(c)は、筺体5151を発熱体天板5251に装着する動作を示す図である。
【0091】
次に、
図18乃至
図20を参照しながら、第6の実施形態について説明をする。
図18乃至
図20に示すように、筺体5151および発熱体天板5251を構成し、筺体5151および発熱体天板5251の相対位置を回転運動によってスライドさせる構成であってもよい。
【0092】
図18(a)に示すように、筺体5151は、内部にウィック130(
図1参照)が収容される略円筒状の蒸発器本体5150と、蒸発器本体5150の上下方向上側に設けられ蒸発器本体5150と同軸に設けられる略円盤状のフランジ部5152とを有する。
【0093】
ここで、フランジ部5152は、フランジ部5152における上下方向下側を向く面である下側面5154から上下方向下側に向けて突出する爪体5161を有する。図示の例の爪体5161は、フランジ部5152の板面中心5157を挟んで対向する位置に設けられている。
図18(b)に示すように、爪体5161は、下側面5154から上下方向下側に突出し、かつ周方向に沿って延びる爪支持部5163と、爪支持部5163の上下方向下側端部からの板面中心5157(
図18(a)参照)側に向けて形成される突起である爪端部5165とを有する。
【0094】
以下の説明においては、フランジ部5152の板面中心5157を回転中心とする周方向を、単に周方向ということがある。また、
図18(a)において周方向の時計回りに向かう側を、単にCW側ということがある。また、
図18(a)において周方向の反時計周りに向かう側を、単にCCW側ということがある。
【0095】
図19(a)に示すように、発熱体天板5251は、上下方向上側が開放された略円筒状の部材である。発熱体天板5251は、上下方向上側を向く面である発熱体天板5253と、上下方向下側を向く面である発熱体底面5255と、周方向に沿う外周面5256とを有する。
【0096】
ここで、発熱体天板5251は、外部と連続する略円柱状の空間であり、筺体5151の蒸発器本体5150(
図18(a)参照)が挿入される発熱体凹部5250を有する。また、発熱体天板5251は、外周面5256から径方向外側に向けて突出する突出部5261を有する。図示の例の突出部5261は、発熱体凹部5250を挟んで対向する位置に設けられている。
【0097】
突出部5261は、周方向において筺体5151の爪体5161(
図18(a)参照)と対応する位置に設けられる。また、
図19(b)に示すように、突出部5261は、上下方向上側を向く面である突出部天面5262と、上下方向下側を向く面である突出部底面5264とを有する。ここで、突出部底面5264における周方向CW側には、傾斜面5267が形成される。この傾斜面5267は、図示の例においては周方向CW側に進むに従い上下方向上側となる向きに傾斜しているテーパ面である。
【0098】
次に、
図20(a)乃至(c)を参照しながら、筺体5151を発熱体天板5251に対して着脱する動作について説明をする。
まず、筺体5151を発熱体天板5251に装着する動作を説明する。
図20(a-1)に示すように、筺体5151を発熱体天板5251の上下方向上側から下側に向けて移動(図中矢印D7参照)させ、蒸発器本体5150を発熱体凹部5250に挿入する。このとき、
図20(a-2)に示すように、発熱体天板5251の突出部5261と、筺体5151の爪端部5165とは、周方向における位置がずれた状態である。
【0099】
次に、
図20(b-1)に示すように、発熱体天板5251に対して筺体5151を周方向CCW側に回転させる(図中矢印D8参照)。このことにともない、
図20(b-2)に示すように、爪端部5165が、突出部5261の傾斜面5267に押し当てられ上下方向下側に押し付けられる。そして、
図20(c-1)および(c-2)に示すように、筺体5151が発熱体天板5251に装着される。
【0100】
ここで、爪体5161および突出部5261は、蒸発器本体5150の外周に複数(2つ)設けられることにより、蒸発器本体5150が発熱体凹部5250から外れることがより確実に抑制される。
【0101】
次に、筺体5151を発熱体天板5251から外す動作を説明する。
図示は省略するが、発熱体天板5251から筺体5151を外す際には、発熱体天板5251に対して筺体5151を周方向CW側にスライド移動させる。このことにより、爪体5161の爪端部5165が、突出部5261から外れた状態となる。
【0102】
<第7の実施形態>
図21(a)は筺体6151の斜視図であり、
図21(b)は発熱体天板6251の斜視図である。
図22(a)は筺体6151を発熱体天板6251に装着する動作を示す図であり、
図22(b)は筺体6151が装着された発熱体天板6251を示す図である。
【0103】
次に、
図21および
図22を参照しながら、第7の実施形態について説明をする。
上記の実施形態においては、例えば筺体110を構成する収容室底板151と、発熱体200を構成する発熱体天板251とを、互いに面で接触させた状態で滑らせながら着脱することを説明したが、筺体110が発熱体200に対して着脱可能であればこれに限定されない。例えば、
図21および
図22に示すように、筺体6151を発熱体天板6251に押し込みながら装着する構成としてもよい。
【0104】
図21(a)に示すように、筺体6151は、略直方体状の部材であり、ウィック130(
図2参照)を内部に収容する。筺体6151は、上下方向上側を向く面である筺体天面6153と、上下方向下側を向く面である筺体底面6155と、長手方向一方側を向く面である筺体第1側面6157とを有する。図示の例においては、筺体第1側面6157に蒸気管105および液管109が接続される。
【0105】
図21(b)に示すように、発熱体天板6251は略板状の部材である。発熱体天板6251は、発熱体天面6253と発熱体底面6255とを有する。また、発熱体天板6251は、発熱体天面6253から突出する爪体6361を有する。
【0106】
図示の爪体6361は、3つ(複数)設けられている。さらに説明すると、爪体6361は、発熱体天面6253における幅方向両端側と長手方向他方側とに設けられる。図示の例においては、爪体6361の幅は、発熱体天板6251の長手方向長さ、あるいは幅方向長さよりも短い。
【0107】
爪体6361は、弾性変形可能な金属や樹脂などにより構成された板状部材により構成される。この爪体6361は、発熱体天面6253に直交する向きに設けられた略板状の爪支持部6363と、爪支持部6363の上側端部である屈曲部6364と、屈曲部6364から発熱体天面6253の中央側に向かう突起である爪端部6365とを有する。
【0108】
ここで、図示の爪支持部6363および爪端部6365がなす角度αは鋭角である。すなわち、爪端部6365の先端6368は、上下方向において屈曲部6364よりも下側、すなわち発熱体天面6253側に配置される。なお、上下方向における発熱体天面6253から先端6368までの距離L7は、筺体6151の上下方向長さL9(
図21(a)参照)よりも小さい。また、幅方向における先端6368同士の距離L11は、筺体6151の幅方向長さL13(
図21(a)参照)よりも小さい。
【0109】
爪体6361は、筺体6151を抱え込む構成である。さらに説明をすると、爪体6361は、先端6368によって筺体天面6153を押圧する。このことにより、筺体6151の筺体底面6155が、発熱体天板6251の発熱体天面6253に押し当てられた状態となる。
【0110】
次に、
図22(a)および(b)を参照しながら、筺体6151を発熱体天板6251に対して着脱する動作について説明をする。
まず、筺体6151を発熱体天板6251に装着する動作を説明する。
図22(a-1)に示すように、筺体6151を発熱体天板6251の上下方向上側に配置する。
【0111】
次に、
図22(a-2)に示すように、筺体6151を発熱体天板6251に向けて移動させる(図中矢印D9参照)。このとき、筺体6151が爪端部6365を押圧することにより、爪体6361が弾性変形し爪体6361同士が離間する向きに撓む(図中矢印D11参照)。このことにより、筺体6151を爪体6361の間に押し込むことが可能となる。そして、
図22(a-3)に示すように、筺体6151の筺体底面6155と、発熱体天板6251の発熱体天面6253とが接触した配置となる。
【0112】
さて、
図22(b-1)および(b-2)に示すように、筺体6151が発熱体天板6251に装着された状態においては、爪端部6365が筺体6151に掛かる状態となる。さらに説明をすると、爪体6361の先端6368が筺体天面6153を押圧し、筺体6151の筺体底面6155と、発熱体天板6251の発熱体天面6253とが互いに押し付けあう力が発生する。
【0113】
次に、筺体6151を発熱体天板6251から外す動作を説明する。
図示は省略するが、筺体6151を発熱体天板6251から外す際には、発熱体天板6251に対して筺体6151を長手方向一方側にスライド移動させる(図中矢印D10参照)。すなわち、爪体6361同士の間に配置された筺体6151を、爪体6361が形成されていない向きにスライド移動させる。このことにより、筺体6151が発熱体天板6251から外れた状態となる。
【0114】
なお、図示の例においては、発熱体天板6251が3つの爪体6361を有することを説明したが、これに限定されない。爪体6361によって筺体6151が押圧される構成であればよい。例えば、発熱体天板6251が2つあるいは4つ以上の爪体6361を有する構成であってもよい。2つの爪体6361の配置としては、例えば筺体6151を挟んで対向する位置に爪体6361が設けられてもよい。また、4つの爪体6361の配置としては、例えば筺体6151の四方に爪体6361が設けられてもよい。また、図示の例においては、発熱体天板6251に爪体6361を設けることを説明したが、筺体6151に爪体6361を設ける構成であってもよい。
【0115】
<電子機器>
図23は、ループ型ヒートパイプ100を備える携帯電話1000を説明する図である。
次に、
図10を参照しながら、ループ型ヒートパイプ100を備える電子機器の一例である携帯電話1000について説明をする。
【0116】
図23に示すように、ループ型ヒートパイプ100は、携帯電話1000などの電子機器に設けられる。図示の携帯電話1000は、所謂スマートフォンである。この携帯電話1000は、発熱体の一例である中央演算処理装置(CPU)1100と、この中央演算処理装置1100を冷却するループ型ヒートパイプ100と、ループ型ヒートパイプ100から熱を受けて放熱する放熱体の一例であるフィン1300と、これらを内部に収容する筺体1500とを備える。そして、中央演算処理装置1100が発生させる熱が、蒸発器101に伝達され、凝縮器107およびフィン1300を介して放出される。
【0117】
なお、ここでは電子機器の一例として、携帯電話1000を用いて説明をしたが、パーソナルコンピュータやタブレット型端末、プロジェクタなどに上記ループ型ヒートパイプ100を設けてもよい。また、自動車や人工衛星などの種々の装置にもループ型ヒートパイプ100を設け得る。
【0118】
<変形例>
さて、上記の実施形態においては、例えば収容室底板151の発熱体天板251に対する相対位置を変化させることを説明した。ここで、相対位置を変化させるには、収容室底板151および発熱体天板251のいずか一方を移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。
【0119】
また、上記の実施形態においては、例えば収容室底板151に底板掛かり部175を設け、発熱体天板251に天板掛かり部275を設けることを説明した。ここで、収容室底板151および発熱体天板251が互いに押し合う構成であれば、例えば収容室底板151が天板掛かり部275の機能を備え、発熱体天板251が底板掛かり部175の機能を備えてもよい。さらに説明をすると、蒸気収容室底板151および発熱体天板251の各々に設けられる凹凸の一部または全部を入れ替えてもよい。
【0120】
また、上記の実施形態においては、例えば掛かり面277が傾斜面177に押し当てられることにより、天板掛かり部275が上下方向上側に押し付けられた状態となることを説明した。ここで、収容室底板151および発熱体天板251の少なくともいずれか一方をスライド移動させることにより、収容室底板151および発熱体天板251が互いに押し付け合う力を生じさせる構成であれば、傾斜面177を設けない構成であってもよい。例えば、傾斜面177が設けられる位置に、弾性力により掛かり面277を押圧するスプリング(不図示)などの弾性部材を設けてもよい。あるいは、掛かり面277と、傾斜面177が設けられる位置との各々に、互いが反発する向きで磁石を設け、磁力により掛かり面277を付勢してもよい。
【0121】
また、ループ型ヒートパイプ100として上記各構成を説明したが、流体を循環させながら熱を移動させる装置であれば、ループ型ヒートパイプ100に限定されない。例えば、ポンプで液体を搬送する所謂液冷ポンプシステムにおいても、上記各構成を適用可能である。
【0122】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0123】
ループ型ヒートパイプ100は、熱交換器の一例である。収容室底板151および発熱体天板251は、押付機構の一例である。底板天面153および発熱体天面253は、接触領域の一例である。底板凹部171は、溝部の一例である。天板凸部271は、突出部の一例である。爪支持部6363は、突起の一例である。爪体6361は、付与機構の一例である。爪先265および天板掛かり部275は、掛かり部の一例である。放熱板300は、放熱体の一例である。携帯電話1000は、装置の一例である。
【符号の説明】
【0124】
100…ループ型ヒートパイプ、101…蒸発器、107…凝縮器、110…筺体、130…ウィック、151…収容室底板、165…底板突出部、171…底板凹部、177…傾斜面、200…発熱体、251…発熱体天板、261…爪体、271…天板凸部、275…天板掛かり部