(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】耐火部材、及び耐火構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
A62C 3/16 20060101AFI20240208BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240208BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A62C3/16 B
E04B1/94 F
F16L5/02 E
(21)【出願番号】P 2020039950
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】国枝 勉
(72)【発明者】
【氏名】田宮 朋幸
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089377(JP,A)
【文献】特開平09-262305(JP,A)
【文献】米国特許第05887396(US,A)
【文献】特開2008-256216(JP,A)
【文献】特開2008-245710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/16
E04B 1/94
F16L 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に貫通する貫通孔を有する区画部と、前記貫通孔に挿通される管体とを備える区画構造における前記貫通孔を通じた延焼を抑える用途に用いられる耐火部材であって、
火災時の熱によって熱膨張する熱膨張材を有する熱膨張性部材と、前記熱膨張性部材を支持する支持部材と、前記管体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に挿入される目地材と、を備え、
前記支持部材は、前記熱膨張性部材を保持する保持部と、前記貫通孔の上端開口縁に係止する係止部と、前記保持部と前記係止部とを連結する連結部と、を備え、
前記目地材は、
前記連結部が挿通される挿通部を有し、前記挿通部に前記連結部が挿通されることで前記連結部に取り付けられるとともに、前記連結部に沿って移動可能である、耐火部材。
【請求項2】
前記熱膨張性部材は、前記熱膨張材を被覆する被覆材をさらに備え、
前記被覆材は、前記管体の径方向の内外側となる前記熱膨張材の両側から前記熱膨張材の上端を跨ぐように被覆する上側被覆材を含み、前記上側被覆材は、耐火性を有する、請求項
1に記載の耐火部材。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の耐火部材を用いる耐火構造の施工方法であって、
前記耐火部材の前記目地材を前記連結部に沿って移動させる工程と、
前記耐火部材の前記係止部を前記貫通孔の上端開口縁に係止する工程と、を備える、耐火構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火部材、及び耐火構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管体が挿通される区画部の貫通孔を通じた延焼を抑えるために、火災時の熱により膨張する熱膨張材を備えた耐火部材が用いられている。特許文献1には、区画部の貫通孔と管体との間に熱膨張材とともに目地材を配置する構成が開示されている。また、特許文献2には、熱膨張材と、熱膨張材を支持する支持部材と、支持部材に固定された目地材(シール材)とを備える耐火部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-109069号公報
【文献】特開2019-052746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2に開示されるように熱膨張材を支持する支持部材に予め目地材を固定することで、支持部材、熱膨張材、及び目地材を一体品として取り扱うことができる。このような耐火部材の支持部材は、目地材が固定される本体部と、区画部の貫通孔の上端開口縁に係止される係止部とを有している。目地材は、支持部材の係止部に接するように支持部材の本体部の上端に固定されている。このように固定された目地材は、耐火部材が区画部に装着されたとき、区画部の貫通孔内の上端に配置される。
【0005】
ここで、管体が挿通される区画構造を形成する際に、区画部の貫通孔内に配置された直管の上端部に継手管を組み付ける施工が行われる場合がある。この施工の場合、直管に継手管を組み付ける前に耐火部材を装着すると、区画部の貫通孔の上端に目地材が配置されるため、上方から継手管を貫通孔に挿入する作業が煩雑となる。
【0006】
また、貫通孔内に配置した目地材の上方にシーリング材を充填する耐火構造を施工する場合では、上記のように目地材が貫通孔内の上端に配置されると、シーリング材を充填するスペースを確保することができない。
【0007】
以上のように、従来の耐火部材では、例えば、区画部の貫通孔内において直管と継手管とが接続された耐火構造や、目地材上にシーリング材を充填する耐火構造を形成する施工に好適に用いることができなかった。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持部材と目地材とを一体とした場合であっても、異なる複数種の耐火構造を形成する施工に好適に用いることのできる耐火部材、及び耐火構造の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する耐火部材は、上下に貫通する貫通孔を有する区画部と、前記貫通孔に挿通される管体とを備える区画構造における前記貫通孔を通じた延焼を抑える用途に用いられる耐火部材であって、火災時の熱によって熱膨張する熱膨張材を有する熱膨張性部材と、前記熱膨張性部材を支持する支持部材と、前記管体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に挿入される目地材と、を備え、前記支持部材は、前記熱膨張性部材を保持する保持部と、前記貫通孔の上端開口縁に係止する係止部と、前記保持部と前記係止部とを連結する連結部と、を備え、前記目地材は、前記連結部に取り付けられるとともに、前記連結部に沿って移動可能である。
【0010】
上記のように目地材は支持部材の連結部に取り付けられるとともに、連結部に沿って移動可能であるため、例えば、区画部の貫通孔内に配置された第1管体の上端部に第2管体を接続する作業を妨げない位置に目地材を配置することができる。このように上記耐火部材によれば、区画部の貫通孔内に配置された第1管体の上端部に第2管体を組み付ける施工に好適に用いることができる。また、目地材は、連結部に沿って移動可能であるため、例えば、目地材が区画部の貫通孔内の上端に配置されるように耐火部材を装着する耐火構造の施工や、区画部の貫通孔内に配置した目地材の上方にシーリング材を充填する耐火構造の施工にも好適に用いることができる。
【0011】
上記耐火部材において、前記目地材は、前記連結部が挿通される挿通部を有し、前記挿通部に前記連結部が挿通されることで前記連結部に取り付けられていることが好ましい。
この構成によれば、目地材を連結部に取り付ける構成において、部品点数の増加を抑えることができる。
【0012】
上記耐火部材において、前記熱膨張性部材は、前記熱膨張材を被覆する被覆材をさらに備え、前記被覆材は、前記管体の径方向の内外側となる前記熱膨張材の両側から前記熱膨張材の上端を跨ぐように被覆する上側被覆材を含み、前記上側被覆材は、耐火性を有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、火災時において熱膨張材の上方に向かう熱膨張は、耐火性を有する上側被覆材により抑えられる。これにより、熱膨張材の所定の位置で熱膨張させることができる。また、上側被覆材により熱膨張材の熱膨張が制限されることで、熱膨張材から形成された膨張体の密度を高めることも可能となる。
【0014】
耐火構造の施工方法は、上記耐火部材を用いる耐火構造の施工方法であって、前記耐火部材の前記目地材を前記連結部に沿って移動させる工程と、前記耐火部材の前記係止部を前記貫通孔の上端開口縁に係止する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持部材と目地材とを一体とした場合であっても、異なる複数種の耐火構造を形成する施工に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の耐火部材を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1の2a-2a線に沿った熱膨張性部材の断面図であり、(b)は、熱膨張した状態を示す概略図である。
【
図4】耐火構造の施工方法を説明する説明図である。
【
図5】耐火構造の施工方法を説明する説明図である。
【
図6】第2実施形態の耐火構造を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態の耐火構造を示す断面図である。
【
図8】(a)及び(b)は、耐火部材の変更例を部分的に示す平面図である。
【
図9】(a)は、耐火部材の変更例を部分的に示す斜視図であり、(b)は、耐火構造の変更例を部分的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の耐火部材、及び耐火構造の施工方法の第1実施形態を説明する。
図1及び
図3に示すように、耐火部材11は、区画構造71における貫通孔51aを通じた延焼を抑える用途に用いられる。区画構造71は、上下に貫通する貫通孔51aを有する区画部51と、区画部51の貫通孔51aに挿通される第1管体61とを備えている。区画部51は、例えば、コンクリート製であり、建築物の床を構成している。
【0018】
本実施形態の区画構造71は、直管である第1管体61の上端部に接続される第2管体62を有している。第2管体62は、継手管であり、第2管体62の下端部は、区画部51の貫通孔51aに挿入されて第1管体61と接続されている。第2管体62には、水平方向に延びる横管である第3管体63と、上方に延びる縦管である第4管体64とが接続されている。各管体61,62,63,64は、ポリ塩化ビニル等の樹脂製の本体管を有している。各管体は、樹脂製の本体管の外周に必要に応じて防音層を配置して構成することもできる。防音層を配置する場合、例えば第1管体61の上端部のように、第2管体62等の管体に内嵌されることで接続される端部については、防音層で被覆せずに本体管の外周面を露出させる。
【0019】
耐火部材11は、熱膨張性部材12と、熱膨張性部材12を支持する支持部材21と、第1管体61の外周面と区画部51の貫通孔51aの内周面との間に挿入される目地材31とを備えている。
【0020】
図2(a)に示すように、熱膨張性部材12は、火災時の熱によって熱膨張する熱膨張材13を有している。熱膨張材13としては、建築物等の耐火用の熱膨張材13として市販されているものや、市販の原料を混合して用いることができる。熱膨張材13は、膨張黒鉛を含有することが好ましく、熱膨張後の膨張黒鉛の形状を安定化させる形状安定材をさらに含有することがより好ましい。形状安定剤としては、ホウ酸、樹脂等が挙げられる。膨張黒鉛の膨張倍率は、100倍以上であることが好ましく、200倍以上であることがより好ましい。膨張黒鉛の膨張倍率は、膨張黒鉛1gを900~1000℃の条件で5分間加熱したときの体積変化から求められる。なお、膨張黒鉛の膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば1000倍未満となる。また、熱膨張材13がペースト状や粉末状等の流動性を有する場合、熱膨張性部材12を熱膨張材13と熱膨張材13を収容する袋とを備えるように構成すればよい。袋は、例えば、合成樹脂製のフィルムを基材として構成される。
【0021】
熱膨張性部材12は、熱膨張材13を被覆する被覆材14をさらに備えている。被覆材14は、第1管体61の径方向の内外側となる熱膨張材13の両側から熱膨張材13の上端を跨ぐように被覆する上側被覆材15を備えている。詳述すると、上側被覆材15は、区画部51の貫通孔51aの内周面と熱膨張材13との間に配置される第1側部と、第1管体61の外周面と熱膨張材13との間に配置される第2側部と、第1側部の上端と第2側部の上端とを接続する中間部とを有している。
【0022】
上側被覆材15は、耐火性を有している。上側被覆材15は、耐火繊維から形成されたシート材を有することが好ましい。耐火繊維としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びジルコニア繊維が挙げられる。上側被覆材15は、耐火繊維から形成されたシートと、例えば、アルミ箔等の金属箔とが貼り合わされたものであってもよい。上側被覆材15は、熱膨張材13に粘着層を介して固定されることが好ましい。
【0023】
また、被覆材14は、第1管体61の径方向の内外側となる熱膨張材13の両側から熱膨張材13の下端を跨ぐように被覆する下側被覆材16を備えている。詳述すると、下側被覆材16は、区画部51の貫通孔51aの内周面と熱膨張材13との間に配置される第1側部と、第1管体61の外周面と熱膨張材13との間に配置される第2側部と、第1側部の下端と第2側部の下端とを接続する中間部とを有している。
【0024】
下側被覆材16は、上側被覆材15と同様に耐火性を有していてもよいし、非耐火性を有していてもよい。非耐火性を有する下側被覆材16としては、例えば、布、紙等が挙げられる。下側被覆材16は、熱膨張材13に粘着層を介して固定されることが好ましい。
【0025】
上側被覆材15と下側被覆材16とは、熱膨張材13の上下方向の中間位置で重なるように配置されてもよいし、重ならないように配置されてもよい。
図1及び
図3に示すように、支持部材21は、熱膨張性部材12を保持する保持部22と、区画部51の貫通孔51aの上端開口縁に係止する係止部23と、保持部22と係止部23とを連結する連結部24とを備えている。
【0026】
保持部22は、例えば、熱膨張性部材12を上下から挟み込む形状を有し、熱膨張材13を保持するように構成されるが、熱膨張性部材12を保持することが可能な他の形状であってもよい。係止部23は、連結部24から側方に突出する爪状に形成されている。連結部24の形状は、上下に延びる直線状である。支持部材21は、金属製であることが好ましい。本実施形態の支持部材21は、板材の切り起こし加工等の曲げ加工により形成されている。支持部材21は、例えば、棒材や網材から形成されてもよい。支持部材21は、複数の部品を接続して構成することもできる。本実施形態の耐火部材11は、二つの支持部材21を備えているが、支持部材21の数は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0027】
目地材31は、支持部材21の連結部24に取り付けられるとともに、連結部24に沿って移動可能である。詳述すると、本実施形態の目地材31は、支持部材21の連結部24が挿通される挿通部31aを有し、挿通部31aに連結部24が挿通されることで連結部24に取り付けられている。本実施形態の挿通部31aは、目地材31の上下に開口する貫通孔であり、挿通部31aに挿通された連結部24は、目地材31で囲まれている。目地材31は、支持部材21の保持部22と係止部23との間を連結部24に沿って上下に移動可能である。目地材31において、挿通部31aの内面の少なくとも一部は、支持部材21の連結部24の外面と接触している。目地材31の移動は、支持部材21の連結部24により案内される。
【0028】
目地材31としては、建築物用の目地材31(バックアップ材)として市販されているものを用いることができる。目地材31の形状は、例えば、角柱状や円柱状等の柱状である。目地材31の材質としては、ゴム(エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴム等)、樹脂(ポリエチレン等)等の有機高分子材料から構成された発泡体が好適である。
【0029】
次に、耐火構造の施工方法について耐火部材11の作用とともに説明する。
図4に示すように、耐火部材11を適用する区画構造71は、区画部51と、区画部51の貫通孔51a内に配置された第1管体61を備えている。区画部51に耐火部材11を装着するには、貫通孔51aにおける内周面と、第1管体61の外周面との間に熱膨張性部材12を挿入し、支持部材21の係止部23を貫通孔51aの上端開口縁に係止する。このとき、耐火部材11の目地材31は、予め支持部材21に取り付けられているため、熱膨張性部材12、支持部材21、及び目地材31を一体品として取り扱うことができる。
【0030】
図5に示すように、支持部材21に取り付けられた目地材31は、区画部51の貫通孔51aにおける内周面と、第1管体61の外周面との間に配置される。目地材31は、支持部材21の連結部24に沿って移動可能である。すなわち、目地材31を移動させることで、貫通孔51a内における目地材31の上下位置を調整することができる。
【0031】
次に、第1管体61の上端部に第2管体62を外嵌させて第1管体61に第2管体62を接続する。このとき、目地材31を例えば
図5に二点鎖線で示す位置から下方に移動して配置しておくことで、第1管体61の上端部の周囲の空間を確保することができる。すなわち、本実施形態の耐火部材11によれば、第1管体61に第2管体62を接続する作業を妨げない位置に目地材31を配置することができる。
【0032】
目地材31は、区画部51の貫通孔51aにおける内周面と、第1管体61の外周面との間で圧縮変形した状態で配置されることが好ましい。これにより、支持部材21の連結部24と目地材31との隙間、貫通孔51aにおける内周面と目地材31との隙間、及び第1管体61の外周面と目地材31との隙間を容易に塞ぐことができる。
【0033】
なお、
図4に示すように、耐火部材11の熱膨張性部材12は、第1管体61の周方向において一対の端部を有している。熱膨張性部材12の一対の端部は、例えば、
図5に示すように互いに突き合わせるように配置することができる。また、図示を省略するが、熱膨張性部材12の一対の端部を第1管体61の径方向において互いに重ねて配置できるように熱膨張性部材12の長さを設定してもよい。
【0034】
図4に示すように、耐火部材11の目地材31についても、第1管体61の周方向において一対の端部を有している。目地材31の一対の端部は、例えば、
図5に示すように互いに突き合わせるように配置することができる。また、図示を省略するが、目地材31の一対の端部を第1管体61の軸方向、すなわち上下方向において互いに重ねて配置できるように目地材31の長さを設定してもよい。
【0035】
図3に示すように、第1管体61に接続された第2管体62に第3管体63及び第4管体64がさらに接続される。この耐火構造では、区画部51の下方の空間が火災側であり、区画部51の上方の空間は延焼から保護する保護側となる。火災時の熱により熱膨張性部材12が加熱されると、
図2(b)に示すように、熱膨張材13が熱膨張して膨張体17が形成される。このとき、上側被覆材15は、耐火性を有しているため、火災時において熱膨張材13の上方に向かう熱膨張は、上側被覆材15により抑えられる。これにより、熱膨張材13の所定の位置で熱膨張させることができる。なお、本実施形態の下側被覆材16は、非耐火性を有するため、火災時には、下側被覆材16は崩壊又は焼失する。膨張体17は、区画部51の貫通孔51aを閉塞するように熱膨張することで、区画部51の上方の空間を延焼から保護する。
【0036】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)耐火部材11は、上下に貫通する貫通孔51aを有する区画部51と、区画部51の貫通孔51aに挿通される第1管体61とを備える区画構造71における貫通孔51aを通じた延焼を抑える用途に用いられる。耐火部材11は、火災時の熱によって熱膨張する熱膨張材13を有する熱膨張性部材12と、熱膨張性部材12を支持する支持部材21と、第1管体61の外周面と区画部51の貫通孔51aの内周面との間に挿入される目地材31とを備えている。支持部材21は、熱膨張性部材12を保持する保持部22と、区画部51の貫通孔51aの上端開口縁に係止する係止部23と、保持部22と係止部23とを連結する連結部24とを備えている。目地材31は、支持部材21に取り付けられるとともに、連結部24に沿って移動可能である。
【0037】
この構成によれば、支持部材21と目地材31とを一体とした場合であっても、上述したように第1管体61に対する第2管体62の接続を妨げない位置に目地材31を配置することができる。このように第1の実施形態の耐火部材11によれば、区画部51の貫通孔51a内に配置された第1管体61の上端部に第2管体62を接続する耐火構造の施工に好適に用いることができる。
【0038】
(1-2)目地材31は、支持部材21の連結部24が挿通される挿通部31aを有し、挿通部31aに連結部24が挿通されることで連結部24に取り付けられている。この場合、目地材31を連結部24に取り付ける構成において、部品点数の増加を抑えることができる。
【0039】
また、挿通部31aが目地材31を貫通する貫通孔である場合、耐火部材11を区画構造71に適用した際に、支持部材21の連結部24の周囲を目地材31で取り囲むように目地材31を配置することができる。これにより、支持部材21の連結部24と目地材31との間に隙間が形成され難くなるため、例えば、火災時に発生する煙が連結部24と目地材31との間を通過することを抑えることができる。
【0040】
(1-3)熱膨張性部材12は、熱膨張材13を被覆する被覆材14をさらに備えている。被覆材14は、第1管体61の径方向の内外側となる熱膨張材13の両側から熱膨張材13の上端を跨ぐように被覆する上側被覆材15を含む。この上側被覆材15は、耐火性を有している。この場合、火災時において熱膨張材13の上方に向かう熱膨張は、耐火性を有する上側被覆材15により抑えられる。これにより、熱膨張材13の所定の位置で熱膨張させることができる。また、上側被覆材15により熱膨張材13の熱膨張が制限されることで、熱膨張材13から形成された膨張体17の密度を高めることも可能となる。これにより、例えば、火災時に発生する煙が通過し難い膨張体17を形成することができる。
【0041】
(1-4)耐火部材11を用いる耐火構造の施工方法は、耐火部材11の目地材31を連結部24に沿って移動させる工程と、耐火部材11の係止部23を区画部51の貫通孔51aの上端開口縁に係止する工程とを備えている。これにより、耐火部材11において支持部材21と目地材31とを一体とした場合であっても、耐火部材11の目地材31を区画部51の貫通孔51a内の所定の位置に配置することができる。本実施形態では、上記の移動させる工程及び係止する工程の各工程の後に、第1管体61に第2管体62を接続する工程を行うことで、その接続の工程を容易に行うことができる。
【0042】
(第2実施形態)
耐火部材、及び耐火構造の施工方法の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0043】
図6に示すように、第2実施形態の区画構造71は、区画部51と、区画部51の貫通孔51a内に配置された第1管体61とを備えている。本実施形態の区画構造71の第1管体61は、継手管である第2管体62に接続されずに、上方に延在している。
【0044】
区画部51に耐火部材11を装着するには、区画部51の貫通孔51aにおける内周面と、第1管体61の外周面との間に熱膨張性部材12を挿入し、支持部材21の係止部23を貫通孔51aの上端開口縁に係止する。このとき、耐火部材11の目地材31は、支持部材21の係止部23に接するように連結部24の上端に配置される。すなわち、耐火部材11を装着した際には、目地材31は、区画部51の貫通孔51a内の上端に配置される。目地材31の上面は、区画部51の貫通孔51aの上端開口に沿うように設けられている。
【0045】
図1に示すように、耐火部材11の目地材31が係止部23から離間した位置に配置されている場合、目地材31を連結部24に沿って係止部23に接する上端位置まで移動させた後に、耐火部材11を区画部51に装着すればよい。なお、耐火部材11は、予め目地材31が係止部23に接する上端位置に配置されたものであってもよい。
【0046】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)第2実施形態の耐火部材11は、第1実施形態の(1-1)欄に記載の構成と同様の構成を有する耐火部材11である。この構成によれば、支持部材21と目地材31とを一体とした場合であっても、第1実施形態とは異なる種類の耐火構造を形成する施工に好適に用いることができる。具体的には、目地材31が区画部51の貫通孔51a内の上端に配置されるように耐火部材11を装着する耐火構造の施工に好適に用いることができる。
【0047】
(2-2)第2実施形態における耐火構造の施工方法は、耐火部材11の目地材31を連結部24に沿って係止部23に接する上端位置まで移動させる工程と、耐火部材11の係止部23を区画部51の貫通孔51aの上端開口縁に係止する工程とを備えてもよい。これらの工程を通じて、目地材31が貫通孔51a内の上端に配置された耐火構造を形成することもできる。
【0048】
(第3実施形態)
耐火部材、及び耐火構造の施工方法の第3実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0049】
図7に示すように、第3実施形態の区画構造71は、区画部51と、区画部51の貫通孔51a内に配置された第1管体61とを備えている。本実施形態の区画構造71の第1管体61は、継手管である第2管体62に接続されずに、上方に延在している。
【0050】
区画部51に耐火部材11を装着するには、熱膨張性部材12を区画部51の貫通孔51aにおける内周面と、第1管体61の外周面との間に挿入し、支持部材21の係止部23を貫通孔51aの上端開口縁に係止する。このとき、耐火部材11の目地材31と、支持部材21の係止部23とは離間して配置される。すなわち、耐火部材11の目地材31の上面は、区画部51の貫通孔51a内の上端開口よりも下方に配置される。これにより、区画部51の貫通孔51a内には、目地材31の上面を底面とし、貫通孔51aにおける内周面と第1管体61の外周面とを側面とする凹溝51bが形成される。
【0051】
例えば、耐火部材11の目地材31が係止部23に接する上端位置に配置されている場合、係止部23を区画部51の貫通孔51aの上端開口縁に係止する前、又は係止した後に目地材31を係止部23から離間するように下方に移動させればよい。凹溝51bの深さは、目地材31の上下方向の位置を調整することで変更することができる。
【0052】
このように形成した凹溝51bには、貫通孔51aの内面と第1管体61の外周面との間のシール性を高めるために、シーリング材32を充填することができる。シーリング材32は、コーキング材とも呼ばれるものであり、シーリング材32としては、樹脂系シーリング材であり、例えば、シリコーン系シーリング材、ウレタン系シーリング材、及びアクリル系シーリング材が挙げられる。
【0053】
次に、第3実施形態の作用及び効果について説明する。
(3-1)第3実施形態の耐火部材11は、第1実施形態と同様の構成を有する耐火部材11である。この構成によれば、支持部材21と目地材31とを一体とした場合であっても、第1実施形態とは異なる種類の耐火構造を形成する施工にも好適に用いることができる。具体的には、貫通孔51a内に配置した目地材31の上方にシーリング材32を充填する耐火構造の施工に好適に用いることができる。
【0054】
(3-2)第3実施形態における耐火構造の施工方法は、耐火部材11の目地材31を連結部24に沿って移動させる工程と、耐火部材11の係止部23を区画部51の貫通孔51aの上端開口縁に係止する工程とを備える。この方法によれば、目地材31を移動させる工程により、係止部23と目地材31との間隔、すなわち上記凹溝51bの深さを調整することができる。
【0055】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・熱膨張性部材12における上側被覆材15及び下側被覆材16の少なくとも一方を省略することもできる。また、被覆材14は、上側被覆材15及び下側被覆材16を覆う外層被覆材をさらに含んでいてもよい。
【0057】
・熱膨張性部材12は、熱膨張材13から形成される膨張体17に埋め込まれることで、膨張体17の形状を維持する形状維持部材をさらに備えていてもよい。
・目地材31の挿通部31aは、
図8(a)に示すように、目地材31の側方に開口する挿入部31bと連続して形成されていてもよい。この場合、支持部材21の連結部24を挿入部31bから挿入して挿通部31aに挿通させることもできる。また、例えば、
図8(b)に示すように、帯状のゴム部材等の取付用部材31cの両端部を目地材31に固定し、目地材31と取付用部材31cとの間に支持部材21の連結部24が挿通されるように構成してもよい。このように目地材31に取付用部材31cを設けることで、目地材31を連結部24に取り付けるとともに、連結部24に沿って移動可能とすることもできる。
【0058】
・第1実施形態の耐火構造において、区画部51の貫通孔51aの内面と第1管体61の外周面との間にシーリング材やモルタル等の充填材を充填してもよい。
・第2実施形態の目地材31の上面は、区画部51の貫通孔51aの上端開口に沿うように設けられているが、目地材31の上面は、貫通孔51aの上端開口よりも下方に位置していてもよいし、貫通孔51aの上端開口よりも上方に位置していてもよい。例えば、
図9(a)に示すように、目地材31の上面において挿通部31aに隣接する部分に係止部23が入り込む凹部31dを形成することで、
図9(b)に示すように、目地材31の上面を区画部51の貫通孔51aの上端開口よりも上方に突出させることもできる。
【0059】
・第2実施形態の耐火構造において、シーリング材やモルタル等を用いた耐火性被覆部を目地材31の上方にさらに設けてもよい。
・第3実施形態のシーリング材32をモルタル等の充填材に変更してもよい。
【0060】
・第3実施形態の耐火構造において、モルタルを用いた耐火性被覆部をシーリング材32の上方にさらに設けてもよい。
・耐火部材11は、第1~第3実施形態における耐火構造以外の耐火構造の施工に用いることもできる。すなわち、耐火部材11は、目地材31の位置の異なる少なくとも二種の耐火構造の施工に好適に用いることができる。
【0061】
・区画部51の貫通孔51aに挿通される管体は、排水を流通する用途以外の用途に用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
11…耐火部材
12…熱膨張性部材
13…熱膨張材
14…被覆材
15…上側被覆材
21…支持部材
22…保持部
23…係止部
24…連結部
31…目地材
31a…挿通部
51…区画部
51a…貫通孔
61…第1管体
71…区画構造