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特許7432240排気浄化装置、流路形成部材、及び筒状部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】排気浄化装置、流路形成部材、及び筒状部材
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240208BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240208BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240208BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N13/08 Z
F01N3/28 M
F01N3/28 301D
F01N3/28 301E
F01N3/28 301V
F01N3/24 E
F01N3/24 N
F01N3/28 301Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020177360
(22)【出願日】2020-10-22
(62)【分割の表示】P 2019145248の分割
【原出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025527
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591273719
【氏名又は名称】日新工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 幸子
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 健一
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112072(WO,A1)
【文献】特開2012-021506(JP,A)
【文献】特開2009-156198(JP,A)
【文献】特開2010-019082(JP,A)
【文献】特開2014-202099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 13/08
F01N 3/28
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気の排気流路を形成し、第1軸上に排気の導入口中心を有し、前記第1軸とは異なる第2軸上に排気が導出される第2接続開口部中心を有する流路形成部材と、
筒状の形態であり、前記排気流路の一部に設けられ、排気を内側に取り込む開口部を周壁に有する筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、一端側が前記筒状部材内に還元剤を噴霧するノズルに接続され、他端側が開口し、
前記筒状部材における前記還元剤の噴霧口中心は、前記第2軸上に位置し、
前記排気流路のうちの前記筒状部材に至るまでの排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記第1軸上の前記排気の導入口中心と前記第2軸上の前記還元剤の噴霧口中心とを結ぶ線分に対して一方側に偏る形態であり、
前記排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記線分の側に曲率中心を有する湾曲状の形態であり、
前記筒状部材は、内側に前記ノズルを取り付けるノズル取付部が設けられ、
前記ノズル取付部は、前記筒状部材の他端側に向けて縮径する内周面を有するテーパ部を含み、
前記ノズル取付部の前記テーパ部は、噴霧された還元剤の流れを制御する、排気浄化装置。
【請求項2】
内燃機関から排出される排気の排気流路を形成し、第1軸上に排気の導入口中心を有し、前記第1軸とは異なる第2軸上に排気が導出される第2接続開口部中心を有する流路形成部材と、
筒状の形態であり、前記排気流路の一部に設けられ、排気を内側に取り込む開口部を周壁に有する筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、一端側が前記筒状部材内に還元剤を噴霧するノズルに接続され、他端側が開口し、
前記筒状部材における前記還元剤の噴霧口中心は、前記第2軸上に位置し、
前記排気流路のうちの前記筒状部材に至るまでの排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記第1軸上の前記排気の導入口中心と前記第2軸上の前記還元剤の噴霧口中心とを結ぶ線分に対して一方側に偏る形態であり、
前記排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記線分の側に曲率中心を有する湾曲した流れを、前記排気流路部分内の排気に生じさせるガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記第2軸の方向に視て、前記第1軸側に向かって凸状の第1湾曲部位と、前記第2軸側に向かって凸状の第2湾曲部位と、前記第1湾曲部位と前記第2湾曲部位との間に位置し、前記一方側に向かって凸状の接続湾曲部とを含む、排気浄化装置。
【請求項3】
前記排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記一方側に膨らむ形態である、請求項2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記線分の側に曲率中心を有する湾曲状の形態である、請求項2又は3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第2軸の方向に視て、前記排気流路部分のうちの曲率中心側の境界は、前記線分に対して前記一方側に位置する、請求項1又は4に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記筒状部材が有する前記開口部は、複数の円形開口部と、前記円形開口部よりも大きい矩形開口部とを含み、前記第2軸の方向に視て、前記第2軸まわりの旋回流を、前記筒状部材内の排気に生じさせる、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記筒状部材よりも下流側に接続される、円筒状のバッフルを更に備え、
前記バッフルは、更に下流側に向かって縮径するテーパ部を有し、
前記バッフルの前記テーパ部は、周方向に沿って複数の開口を有する、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の排気浄化装置で用いられる流路形成部材。
【請求項9】
請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の排気浄化装置で用いられる筒状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置、流路形成部材、及び筒状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関における排気浄化装置として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。尿素SCRシステムは、還元剤となる尿素水を排気流路内に噴射して尿素水を排気に混合させるミキシングパイプと、ミキシングパイプの下流における排気流路に設けられた還元触媒と、を備える。
【0003】
そして、従来の尿素SCRシステムにおいて、ミキシングパイプ内で尿素水が排気中に噴射されると、噴射された尿素水が熱分解及び加水分解の反応をして、アンモニア(NH)が生成される。発生したアンモニアにより、排気中の窒素酸化物(NO)は、還元触媒において、窒素(N)と水(HO)に還元される。このようにして、従来の排気浄化装置は、排気中の窒素酸化物を選択的に還元することにより浄化して、排気を実質的に無害にする。
【0004】
また、従来、排気流路におけるミキシングパイプよりも上流側にガイドフィンを備えた排気浄化装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-103019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術では、ミキシングパイプのような筒状部材内で旋回流を効率的に生成することが難しい。
【0007】
そこで、1つの側面では、本発明は、筒状部材内で旋回流を効率的に生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの側面では、内燃機関から排出される排気の排気流路を形成し、第1軸上に排気の導入口中心を有し、前記第1軸とは異なる第2軸上に排気が導出される第2接続開口部中心を有する流路形成部材と、
筒状の形態であり、前記排気流路の一部に設けられ、排気を内側に取り込む開口部を周壁に有する筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、一端側が前記筒状部材内に還元剤を噴霧するノズルに接続され、他端側が開口し、
前記筒状部材における前記還元剤の噴霧口中心は、前記第2軸上に位置し、
前記排気流路のうちの前記筒状部材に至るまでの排気流路部分は、前記第2軸の方向に視て、前記第1軸上の前記排気の導入口中心と前記第2軸上の前記還元剤の噴霧口中心とを結ぶ線分に対して一方側に偏る形態である、排気浄化装置が開示される。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、本発明によれば、筒状部材内で旋回流を効率的に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る排気浄化装置を正面から見た概略図である。
図2】排気の導入口側から排気浄化装置を示す斜視図である。
図3】ケーシングの斜視図である。
図4A】第1ケーシングとガイド部材とを示す斜視図である。
図4B】第2ケーシングとガイド部材とを示す斜視図である。
図5】X1側から視たインジェクタの斜視図である。
図6】X2側から視たインジェクタの斜視図である。
図7】ノズル取付部の単品状態を示す斜視図である。
図8】バッフルの単品状態を示す斜視図である。
図9】接続管の単品状態を示す斜視図である。
図10】出口部品とともに、バッフル及び接続管を示す斜視図である。
図11】排気浄化装置におけるケーシング内の排気等の流れの説明図である。
図12】制御羽根の拡散作用の説明図である。
図13】排気流路部分及び尿素水噴霧空間を通る斜視断面図である。
図14図13に示す排気流路(尿素水噴霧空間に至るまでの排気流路部分)及びそこでの排気の流れの模式図である。
図15】比較例による尿素水噴霧空間に至るまでの排気流路部分及びそこでの排気の流れの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して第1の形態(以下、本実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号が付される。なお、以下では、特に説明のない限り、排気の流れ方向を基準として内燃機関側を上流又は上流側と呼び、反対側(外気側)を下流又は下流側と呼ぶ。
【0012】
図1は本実施形態に係る排気浄化装置1を正面から見た概略図である。なお、図1における白抜き矢印は、排気が流れる大まかな方向(排気の流れ方向)を示している。なお、排気は、後述するように旋回を伴う態様(図11参照)で、白抜き矢印に沿って流れる。
【0013】
本実施形態に係る排気浄化装置1は、ディーゼルエンジン等の内燃機関ENGから排出される排気を浄化する装置であり、排気の流れの途中である、内燃機関ENGと外気との間に設けられる。排気浄化装置1は、例えば、尿素水(尿素水溶液)を還元剤として利用して、内燃機関ENGから排出された排気中の窒素酸化物NOxを選択的に還元する選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)タイプの浄化装置である。
【0014】
図1に示すように、排気浄化装置1は、気密な管状のケーシング60(流路部材)、コンテナK0,コンテナK等の内側に、排気流路Sを形成している。排気流路Sの断面は、圧力損失をできる限り抑制するために円形状となっている。
【0015】
詳細には、排気浄化装置1は、排気流路Sに、酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst)DOCと、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(Diesel Particulate Filter)DPFと、還元触媒が担持された選択触媒還元装置(Selective Catalytic Reduction)SCRと、を備える。排気浄化装置1は、適宜、排気流路Sにおける選択触媒還元装置SCRより下流に配置され、アンモニアNHが通り抜けて外気中に放出されるのを防止するための酸化触媒であるアンモニアスリップ触媒ASCを備える。
【0016】
酸化触媒DOCは、排気中の有害成分の一つである炭化水素HC及び一酸化炭素COを酸化浄化するものであり、例えば、セラミック製ハニカムや金属製メッシュ等に、炭化水素HC及び一酸化炭素COの酸化反応を促進させる白金又はパラジウム等の触媒成分を担持させたものである。
【0017】
ディーゼル微粒子捕集フィルタDPFは、排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタである。
【0018】
選択触媒還元装置SCRは、例えば、コージライト等の多孔質セラミックス基材に、ゼオライト系、酸化バナジウム系、酸化タングステン系等の触媒を担持させたものである。なお、図1では、選択触媒還元装置SCRは、1つだけであるが、排気の流れ方向SSに間隔をおいて複数設けられてもよい。
【0019】
本実施形態では、排気浄化装置1は、ケーシング60と、ガイド部材70と、インジェクタ100と、バッフル120と、接続管130と、出口部品140とを有する。なお、本実施形態では、ケーシング60、ガイド部材70、バッフル120、接続管130、及び出口部品140は、内燃機関ENGから排出される排気の排気流路Sを形成する流路形成部材の一例を実現する。
【0020】
そして、排気浄化装置1において、インジェクタ100によって尿素水が排気流路Sを流れる排気中に噴射されると、噴射された尿素水は熱分解及び加水分解の反応をして、アンモニアNHが生成される。すると、生成されたアンモニアNHにより、排気中の窒素酸化物NOは、選択触媒還元装置SCRにおいて、窒素Nと水HOに還元される。還元された窒素Nと水HOは、外気中に放出される。
【0021】
このようにして、排気浄化装置1は、排気中の窒素酸化物NOを選択的に還元することにより浄化して、排気を実質的に無害にする。
【0022】
(ケーシング60)
図2は、排気の導入口60b側から排気浄化装置1を示す斜視図である。図3は、ケーシング60の斜視図であり、図4Aは、第1ケーシング61とガイド部材70とを示す斜視図であり、図4Bは、第2ケーシング62とガイド部材70とを示す斜視図である。図2等には、互いに直交する3方向であるX方向、Y方向、及びZ方向が定義されている。以下では、X方向の負側をX1側と称し、X方向の正側をX2側と称する場合があり、Y方向の負側をY1側と称し、Y方向の正側をY2側と称する場合がある。なお、図2等では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0023】
ケーシング60は、第1ケーシング61と、第2ケーシング62とを含む。第1ケーシング61と第2ケーシング62とは互いに接続され一体化される。この場合、第1ケーシング61と第2ケーシング62とは、第1ケーシング61のX2側端部全体に第2ケーシング62のX1側端部全体が嵌合する態様で、X方向に接続される。
【0024】
第1ケーシング61は、Z方向で軸心J側に位置する第1部位611と、Z方向で軸心I側に位置する第2部位612と、接続部613とを含む。軸心Jと軸心Iとは互いに平行であり(X方向に略平行であり)、Z方向でオフセットする。なお、軸心Iの方向は、コンテナK0における排気の流れ方向SSに対応する。
【0025】
第1部位611及び第2部位612とは、Z方向で隣接する。第1部位611及び第2部位612は、図4Aに示すように、それぞれの内部空間がZ方向で連通する態様で互いに対して接続される。
【0026】
第1部位611は、インジェクタ100が配置される円柱状の空間(軸心Jを中心とした円柱状の空間)の一部を形成する。
【0027】
第1部位611は、図2及び図3に示すように、X1側端部に、インジェクタ100が挿入される接続開口部60aを有する。接続開口部60aは、円形の形態であり、その中心が噴霧口中心O1(後述)と同心である。なお、接続開口部60aには、インジェクタ100を直接接続してよく、インジェクタ100にケーシング接続片(不図示)が設けられている場合、インジェクタ100をそのケーシング接続片を介して接続してもよい。
【0028】
第2部位612は、図2及び図3に示すように、X1側端部に、内燃機関ENGからの排気の導入口60bを有する。導入口60bは、円形の形態であり、その中心が導入口中心を画成する。第2部位612は、軸心I(第1軸の一例)上に導入口中心O2を有する。
【0029】
接続部613は、Z方向で第1部位611と第2部位612との間に位置し、第1部位611と第2部位612とを接続する。接続部613は、図4Aに示すように、Y2側ではY2側に凸状になる態様で膨らむ湾曲面を有するのに対して、Y1側ではY2側に凸状になる態様で膨らむ湾曲面を有する。これは、後述のガイド部材70の第2湾曲部位72の凸状の向きと同じである。なお、接続部613は、Y2側の湾曲面の方がY1側の湾曲面よりも曲率半径が大きい。
【0030】
第1部位611、第2部位612、及び接続部613は、図4Aに示すように、開口部61cを形成する。開口部61cは、接続開口部60a及び導入口60bを囲繞する形態である。
【0031】
第2ケーシング62は、Z方向で軸心J側に位置する第3部位621と、Z方向で軸心I側に位置する第4部位622と、接続部623とを含む。
【0032】
第3部位621及び第4部位622とは、Z方向で隣接する。第3部位621及び第4部位622は、図4Bに示すように、それぞれの内部空間がZ方向で連通する態様で互いに対して接続される。
【0033】
第3部位621は、図3及び図4Bに示すように、X2側端部に、バッフル120が接続される接続開口部62aを有する。接続開口部62aは、円形の形態であり、その中心が軸心Jと同心である。
【0034】
第3部位621は、第1ケーシング61の第1部位611と同様、インジェクタ100が配置される円柱状の空間(軸心Jを中心とした円柱状の空間)の一部を形成する。第3部位621は、第1ケーシング61の第1部位611にX方向で接続することで、第1部位611と協動して、インジェクタ100が配置される円柱状の空間(以下では、「尿素水噴霧空間S1」とも称する)を形成する。なお、尿素水噴霧空間S1は、排気流路Sの一部の区間を形成する。
【0035】
第4部位622は、X2側端部が閉塞される。したがって、第2ケーシング62は、X2側では、接続開口部62aのみで開口する。第4部位622は、第1ケーシング61の第2部位612にX方向で接続することで、第2部位612と協動して、軸心Iを中心とした円柱状の空間を包含する空間を形成する。なお、第4部位622と第2部位612とが画成する空間は、排気流路Sの一部の区間を形成する。
【0036】
接続部623は、Z方向で第3部位621と第4部位622との間に位置し、第3部位621と第4部位622とを接続する。接続部623は、上述した第1ケーシング61の接続部613と同様、図4Bに示すように、Y2側ではY2側に凸状になる態様で膨らむ湾曲面を有するのに対して、Y1側ではY2側に凸状になる態様で膨らむ湾曲面を有する。これは、後述のガイド部材70の第2湾曲部位72の凸状の向きと同じである。なお、接続部623は、Y2側の湾曲面の方がY1側の湾曲面よりも曲率半径が大きい。
【0037】
接続部623は、第1ケーシング61の接続部613とX方向で接続することで、接続部613と協動して、排気流路Sの一部の区間を形成する空間を形成する。
【0038】
(ガイド部材70)
ガイド部材70は、ケーシング60内に設けられる。ガイド部材70は、ケーシング60内のY1側に設けられ、排気流路SにおけるY1側の境界を画成する。すなわち、ガイド部材70は、上述した第1ケーシング61及び第2ケーシング62により形成される空間内に設けられる。
【0039】
本実施形態では、ガイド部材70は、第1ケーシング61の接続部613と第2ケーシング62の接続部623と協動して、排気流路Sにおける尿素水噴霧空間S1に至る排気の流れを、軸心Iの方向に視て蛇行させる機能を有する。すなわち、ガイド部材70は、第1ケーシング61の接続部613と第2ケーシング62の接続部623と協動して、導入口60bから導入された排気が尿素水噴霧空間S1に至るまでの排気流路部分S0を、軸心Iの方向に視て、Y2側に凸状に湾曲(蛇行)させる機能を有する。以下、このような機能を、「蛇行流路形成機能」とも称する。蛇行流路形成機能の詳細は、図13以降を参照して後述する。
【0040】
ガイド部材70は、図4A及び図4Bに示すように、X1側の端部が第1ケーシング61のX1側の側面部に接続され、X2側の端部が第2ケーシング62のX2側の側面部に接続される。すなわち、ガイド部材70は、第1ケーシング61と第2ケーシング62のそれぞれに突き当たる態様で、第1ケーシング61及び第2ケーシング62により形成される空間のX方向の端から端まで延在する。
【0041】
ガイド部材70は、図4A及び図4Bに示すように、軸心Jまわりに位置する第1湾曲部位71と、軸心Iまわりに位置する第2湾曲部位72と、接続湾曲部73とを含む。
【0042】
第1湾曲部位71は、略等断面でX方向に延在する。第1湾曲部位71は、軸心Jの方向に視て、軸心J側に曲率中心を有し、例えば、軸心J上又はその近傍に曲率中心を有する。
【0043】
第2湾曲部位72は、略等断面でX方向に延在する。第2湾曲部位72は、軸心Iの方向に視て、軸心I側に曲率中心を有し、例えば、軸心I上又はその近傍に曲率中心を有する。
【0044】
接続湾曲部73は、略等断面でX方向に延在する。接続湾曲部73は、第1湾曲部位71と第2湾曲部位72との間に位置し、第1湾曲部位71と第2湾曲部位72とを接続する。接続湾曲部73は、軸心Iの方向に視て、Y1側に曲率中心を有する。したがって、接続湾曲部73は、軸心Iの方向に視て、Y2側に凸状となる態様で湾曲する。これにより、接続湾曲部73は、軸心Iの方向に視て、第1湾曲部位71とS字状をなす態様で接続し、第2湾曲部位72とS字状をなす態様で接続する。
【0045】
(インジェクタ100)
図5は、X1側から視たインジェクタ100の斜視図である。図6は、X2側から視たインジェクタ100の斜視図である。
【0046】
インジェクタ100は、インジェクタ本体10と、インジェクタ本体10の一端に設けられ、タンク及びポンプ等の供給源(不図示)から供給された尿素水を噴霧するノズル(不図示)を取り付け可能なノズル取付部20と、インジェクタ本体10の他端に設けられ、微細化された尿素水を排気流路Sにおける排気中に拡散する制御羽根30を備える。なお、ノズルから噴霧された尿素水の経路は、排気による流れがない場合、噴霧方向INJを中心としてノズル先端から円錐状に拡がるような形状になる(図12を参照して後述)。排気による流れがある場合、ノズルから噴霧された尿素水は、排気と混合しながら軸心Jまわりを旋回しつつ軸心Jの方向に進む(図11を参照して後述)。
【0047】
インジェクタ100は、内燃機関ENGからの排気流路Sに尿素水を添加するための部材である。インジェクタ100は、ケーシング60と協動して、排気及び尿素水を誘導し、拡散する機能を有する。この機能の詳細は後述する。
【0048】
インジェクタ100は、尿素水噴霧空間S1内に配置されるインジェクタ本体10(筒状部材の一例)を備える。インジェクタ本体10は、例えば、所定の板厚を有する鋼製のパイプを素材として、切断加工及び曲げ加工により形成されている。インジェクタ100は、インジェクタ本体10のX1側端部に、尿素水を噴霧する噴霧弁(不図示)が取り付けられるノズル取付部20を有し、インジェクタ本体10のX2側端部に、噴霧された尿素水を含む排気を拡散する制御羽根30を有する。
【0049】
インジェクタ100は、インジェクタ本体10がケーシング60を貫通するようにしてケーシング60に接続される。すなわち、インジェクタ本体10のX1側端部(ノズル側)の一部だけがケーシング60の外側に露出し、X2側端部(制御羽根30側)が尿素水噴霧空間S1内に延在する状態で、インジェクタ100をケーシング60に接続できる。よって、排気流路Sにインジェクタ100の一部が露出するので、内燃機関ENGからの排気に、噴霧された尿素水を、合流させることができる。
【0050】
インジェクタ100は、尿素水と合流した排気を、制御羽根30によって拡散することができるので、排気中に尿素水をムラのないように均質に混ぜることができるとともに、インジェクタ100より下流にある選択触媒還元装置SCRに対して、断面一様に流入させることができる。
【0051】
また、インジェクタ本体10は、高温である排気流路S(尿素水噴霧空間S1)に延在するので、高温に保つことができる。よって、尿素水は、高温に保たれたインジェクタ本体10に接する際に熱分解されやすくなるので、アンモニアNHを効率よく生成できる。したがって、インジェクタ100によって、短距離(短時間)で排気と尿素水とを均質に混合でき、排気の還元効率を高めることができる。
【0052】
(インジェクタ本体10)
図5に示すように、インジェクタ本体10は、軸心Jを中心軸とする中空の円筒状の形態である。インジェクタ本体10は、一端の開口11及び他端の開口12を有する。本実施形態において、インジェクタ本体10は、直線状に形成されている。インジェクタ本体10の軸心Jは、ノズルからの尿素水の噴霧方向INJと平行であり、噴霧口中心O1を通る。インジェクタ本体10は、ケーシング60の内壁面に固定される。
【0053】
また、インジェクタ本体10は、ケーシング60の接続開口部60aに対して溶接等の適宜の手段で固定されている。なお、インジェクタ本体10は、接続開口部60aに対して、ケーシング接続片(不図示)を介して固定してもよい。
【0054】
インジェクタ本体10は、図5及び図6に示すように、インジェクタ本体10を構成する周壁の一部に、開口部50を有する。なお、開口部50の数、配置及び開口面積は、開口部50から取り込まれる排気の流れ(向き、流速又は圧力)と、ノズルから噴霧された尿素水の流れ(向き、流速又は圧力)と、排気の流れと尿素水の流れとが合流した後の流れと、をそれぞれ考慮して、圧力損失を抑制しつつ均質な混合がなされるように最適化されて設定されている。本実施形態では、開口部50の数、配置及び開口面積は、後述する旋回流(図11参照)がインジェクタ本体10内で発生するように適合される。
【0055】
本実施形態では、一例として、開口部50は、軸心Jの方向に並ぶ4つの円形開口部51と、比較的広い周範囲に延在する矩形開口部52とを含む。なお、4つの円形開口部51は、図5に示す周位置以外の他の周位置にも設けられる(図13参照)。
【0056】
そして、ノズルから噴霧された尿素水がインジェクタ本体10の一端の開口11から入って他端の開口12を抜けるのと同時に、排気流路Sの上流側からの排気が開口部50を通ってインジェクタ本体10に入りインジェクタ本体10の他端の開口12を抜けるようになっている。
【0057】
(ノズル取付部20)
図7は、ノズル取付部20の単品状態を示す斜視図である。
【0058】
ノズル取付部20は、図2及び図5に示すように、ノズルからの尿素水の噴霧経路となる開口21を略中央に有し、複数の取付孔22aを周縁に有するフランジ22を備える。開口21は、例えば円形の形態であり、その中心が噴霧口中心O1を画成する。ノズル取付部20は、軸心J(第2軸の一例)上に噴霧口中心O1を有する。
【0059】
フランジ22には、取付孔22aが3箇所形成されており、これらの取付孔22aを利用して、ボルト等の固定具により、ノズルが取り付けられる。これにより、ノズルとインジェクタ100との位置関係を確実に規定できる。なお、取付孔22aの形成箇所は3箇所に限られない。なお、このような構造に限らず、ノズル取付部20は、ノズルからの尿素水の噴霧経路となる開口21を有しており、インジェクタ本体10に対してノズルが取り付けられる構造であれば、クランプを用いる構造等、その他の構造であってもよい。
【0060】
また、ノズル取付部20は、フランジ22に接続される本体部24を有する。本体部24は、軸心Jを中心軸とする中空の円筒状の形態であり、中空内部は開口21に連通する。
【0061】
本実施形態では、本体部24は、図7に示すように、接続部241と、大径部242と、テーパ部243とを含む。接続部241は、軸心Jの方向での一端(X1側端部)がフランジ22に接続され、他端(X2側端部)が大径部242に接続される。接続部241は、フランジ22側から徐々に拡径する態様で大径部242に接続される。テーパ部243は、軸心Jの方向での一端(X1側端部)が大径部242に接続され、他端(X2側端部)が開口する。テーパ部243は、接続部241とは対称に、他端側から徐々に拡径する態様で大径部242に接続される。すなわち、テーパ部243は、他端側に向けて縮径するテーパ状の形態である。テーパ部243は、噴霧された尿素水の流れを制御する機能を有する。
なお、本実施形態では、大径部242は、外径がインジェクタ本体10の内径と略同じである。本体部24は、大径部242がネジ、溶接又は接着等の適宜の手段で固定されている。この場合、本体部24は、接続部241、大径部242、及びテーパ部243のうち、接続部241のみがインジェクタ本体10から露出する。
【0062】
(制御羽根30)
制御羽根30は、ノズルから噴霧された尿素水を、インジェクタ本体10の内側に取り入れられた排気とともに、排気流路Sにおける下流の排気中に拡散する機能を有する。
【0063】
制御羽根30は、図6に示すように、インジェクタ本体10の他端に、複数の羽根32を備える。複数の羽根32は、板状体であり、インジェクタ本体10を形成する素材と共通である、円筒状の部品を素材として、その部品の端部に切り込みを入れた後に曲げ加工を施すことで形成できる。
【0064】
複数の羽根32は、自由端部が、排気の流れ方向SSに対して斜めに交差する。このように、複数の羽根32は排気の流れ方向SSに対して斜めに交差するので、排気の流れ方向SSに流れる尿素水及び排気は、この複数の羽根32によって向きが変えられて、螺旋状に拡散して流れるようになる。また、複数の羽根32には、ノズルから噴霧された尿素水が衝突するので、尿素水を微細化させることができ、還元効率を高められる。
【0065】
ここで、本実施形態に係る複数の羽根32は、インジェクタ本体10の他端において、排気の流れ方向SSを基準として対向する位置に、3つ設けられているが、これに限らず、単数であっても、3つ以外の複数であってもよい。
【0066】
複数の羽根32が排気の流れ方向SSと交差する角度は、インジェクタ本体10より下流の排気流路Sの流路断面の大きさ(下流の排気流路Sに配置された選択触媒還元装置SCRの大きさ)及びインジェクタ本体10より下流における排気の流れ(向き、流速又は圧力)の分布に応じて設定されている。
【0067】
また、本実施形態のように、複数の羽根32のそれぞれが排気の流れ方向SSと交差する角度を、それぞれ異なる角度としてよい。これにより、インジェクタ本体10より下流の排気流路Sの流路断面に対して、より広域に一様に拡散できる。
【0068】
複数の羽根32は、螺旋形状に沿う曲面を有してもよい。これにより、インジェクタ本体10の内部での排気の旋回流れ(後述)を、インジェクタ本体10の他端から排気流路Sの下流側でも維持できる。
【0069】
このような制御羽根30によれば、添加された尿素水を微細化するとともに、尿素水の熱分解及び加水分解を促進し、微細化された尿素水の流れと排気の流れが合流した螺旋状の流れを生じさせることができ、排気流路Sを通る排気中に拡散させて混合させることができる。また、螺旋状に進むことにより、短い流れの距離、すなわち、限られた狭い空間で、排気中の窒素酸化物NOを効率的に還元できる。
【0070】
なお、変形例では、制御羽根30が省略されてもよい。この場合、インジェクタ本体10は、開口12側の端部がテーパ状の絞り形態であってもよい。
【0071】
(バッフル120)
図8は、バッフル120の単品状態を示す斜視図である。
【0072】
バッフル120は、図8に示すように、軸心Jを中心軸とする中空の円筒状の形態である。バッフル120は、X1側端部がケーシング60(第2ケーシング62の接続開口部62a)に接続され、ケーシング60のX2側におけるケーシングの一部を形成する。バッフル120は、X1側端部がインジェクタ本体10のX2側の開口12に対してわずかな隙間を介して対向する。
【0073】
バッフル120は、図8に示すように、X2側に縮径するテーパ部121を有し、テーパ部121には、周方向に沿って複数の開口122を有する。複数の開口122は、円形の開口形状であるが、他の形状であってもよい。バッフル120は、インジェクタ本体10よりもX2側において、尿素水が混合された排気の流れを制御する機能を有する。
【0074】
(接続管130)
図9は、接続管130の単品状態を示す斜視図である。
【0075】
接続管130は、図2及び図9に示すように、軸心Jを中心軸とする中空の円筒状の形態であり、X2側に向けて拡径する。接続管130は、X1側端部がバッフル120に接続され、X2側端部がコンテナKに接続される。この場合、接続管130は、図9に示すように、バッフル120のX2側端部が接続管130内まで延在する態様(接続管130内に挿入される態様)で、バッフル120に接続される。
【0076】
(出口部品140)
図10は、出口部品140とともに、バッフル120及び接続管130を示す斜視図である。
【0077】
出口部品140は、軸心Jを中心軸とする円環状の形態であり、X2側に向けて縮径する。出口部品140は、X1側端部が接続管130の径方向内側に位置し、X2側端部が接続管130から露出する。出口部品140は、コンテナKに導入される、尿素水が混合された排気の流れを制御する機能を有する。
【0078】
(インジェクタ100を用いた排気浄化装置1による作用)
以上説明したインジェクタ100を用いた排気浄化装置1によって排気が浄化されるまでの作用を、図1図11、及び図12を参照しつつ、排気の流れに沿って概説する。
【0079】
図11は、排気浄化装置1におけるケーシング60内の排気等の流れの説明図であり、排気浄化装置1の断面図である。図11には、排気等の流れが矢印R1~R3で模式的に示される。図12は、制御羽根30の拡散作用の説明図であり、図11と同様の排気浄化装置1の断面図である。図12には、尿素水の径方向の広がりがハッチング範囲1100、1101で示されている。ハッチング範囲1100は、制御羽根30に当たる前の広がりを模式的に示し、ハッチング範囲1100は、制御羽根30に当たった後の広がりを模式的に示す。
【0080】
図1に示すように、内燃機関ENGから排出された窒素酸化物NOを含む排気は、排気浄化装置1に導かれる。
【0081】
続いて、排気浄化装置1に導かれた排気は、上流の排気流路Sに配置された酸化触媒DOCを通過する。その際、排気中の有害成分の一つである炭化水素HC及び一酸化炭素COは、酸化触媒DOCにより酸化浄化される。
【0082】
酸化触媒DOCを通過した排気は、上流の排気流路Sに配置されたディーゼル微粒子捕集フィルタDPFを通過する。その際、排気中の粒子状物質は、ディーゼル微粒子捕集フィルタDPFにより捕集される。
【0083】
ディーゼル微粒子捕集フィルタDPFを通過した排気は、ケーシング60の導入口60bを介してケーシング60内の排気流路Sに導かれる。ケーシング60内の排気流路Sに導かれた排気は、図11にて矢印R1で示すように、軸心Iの方向に沿った流れから、Z方向の成分を得て、排気流路部分S0を通って尿素水噴霧空間S1(インジェクタ100)に向かう。矢印R1で示す流れの詳細は、図13以降を参照して後述する。
【0084】
尿素水噴霧空間S1に到達した排気は、一部が開口部50を通過してインジェクタ本体10の内側に至る。
【0085】
なお、開口部50を通過せず、インジェクタ本体10の内側に至らなかった排気は、インジェクタ本体10の外側を伝って、インジェクタ本体10の他端から出た排気と尿素水とが混合した流れに合流する。
【0086】
インジェクタ本体10の内側では、図11にて矢印R2及び矢印R3で模式的に示すように、軸心Jまわりに旋回しながらX2側へと進む。本実施形態では、径方向内側の比較的弱い旋回流(矢印R2)と、径方向外側の比較的強い旋回流(矢印R3)とを含む二重旋回流が実現される。これにより、排気に尿素水を効率的に作用させることができる。
【0087】
排気がこのように流れている間に、インジェクタ100に取り付けられたノズルから噴霧されて霧状になった尿素水は、インジェクタ本体10の内部を旋回しながら流れる排気によって、粒径が更に微細化されるとともに、熱分解及び加水分解の反応をして、アンモニアNHを生成する。
【0088】
生成されたアンモニアNHは、インジェクタ本体10の内側に至った排気と合流し、互いに混ざり合いながら、制御羽根30に至る。
【0089】
制御羽根30に至った排気とアンモニアNHは、制御羽根30によって、均質に混ざり合いながら拡散していく。また、インジェクタ100に取り付けられたノズルから噴霧されて霧状になった尿素水のうちの、熱分解及び加水分解の反応せずに制御羽根30に至った尿素水は、制御羽根30に衝突し、粒径が更に微細化されるとともに、熱分解及び加水分解の反応をする。これにより、アンモニアNHが生成され、上記と同様に、制御羽根30によって、排気と均質に混ざり合いながら拡散していく。図12には、制御羽根30によって排気と尿素水とアンモニアNHが径方向に拡散されている様子が模式的に示される。
【0090】
インジェクタ本体10を通過して互いに混ざり合って拡散された排気及びアンモニアNHは、選択触媒還元装置SCRに至る。
【0091】
選択触媒還元装置SCRに至った、排気中の窒素酸化物NO及びアンモニアNHは、選択触媒還元装置SCRに担持された触媒の作用によって還元反応して分解され、窒素N及び水HOになる。
【0092】
そして、選択触媒還元装置SCRを通過すると、排気流路Sにおいて選択触媒還元装置SCRより下流に配置されたアンモニアスリップ触媒ASCによって、選択触媒還元装置SCRを通過した排気に残存するアンモニアNHは捕獲され、窒素Nと水HOは、適宜、外気中に放出される。
【0093】
このようにして、排気浄化装置1は、排気中の窒素酸化物NOを効率的に浄化して、排気を実質的に無害にする。したがって、還元効率の高いインジェクタ100及び排気浄化装置1を提供でき、その結果、排気浄化装置1の全体をコンパクトにできる。
【0094】
(蛇行流路形成機能)
次に、図13以降を参照して、排気浄化装置1におけるケーシング60内での排気等の流れ及びそれに関連する構成について詳説する。
【0095】
図13は、排気流路部分S0及び尿素水噴霧空間S1を通る斜視断面図である。図14は、図13に示す排気流路S(尿素水噴霧空間S1に至るまでの排気流路部分S0)及びそこでの排気の流れの模式図である。図15は、比較例による尿素水噴霧空間S1に至るまでの排気流路部分S0’)及びそこでの排気の流れの模式図である。
【0096】
本実施形態では、図13及び図14に示すように、排気流路部分S0は、軸心Jの方向に視て、軸心Iと軸心Jとを結ぶ線分L14に対してY2側に偏る形態である。具体的には、排気流路部分S0は、軸心Jの方向に視て、Y2側に膨らむ形態である。これにより、図14で矢印R1にて示すように、排気流路部分S0の湾曲形状に沿った蛇行した流れ(すなわち線分L14の側に曲率中心を有する湾曲した流れ)を、排気流路部分S0内の排気に生じさせることができる。すなわち、ガイド部材70の接続湾曲部73は、図14に示すように、線分L14の側に曲率中心を有する湾曲形態であり、ケーシング60(接続部613)も、線分L14の側に曲率中心を有する湾曲形態であり、排気流路部分S0は全体が線分L14の側に曲率中心を有する湾曲形態となる。
【0097】
このような排気流路部分S0内の排気の流れは、上述したインジェクタ本体10内の旋回流(矢印R2、矢印R3参照)を効率的に促進できる。これにより、インジェクタ本体10内の旋回流が効率的に促進されるので、排気に尿素水を効率的に作用させることができる。以下、このように排気流路部分S0内の排気の流れが、インジェクタ本体10内の旋回流を促進させる機能を、「旋回流促進機能」とも称する。
【0098】
排気流路部分S0は、好ましくは、旋回流促進機能を高めるために、軸心Jの方向に視て、曲率中心側の境界が、線分L14に対してY2側に位置する。すなわち、排気流路部分S0は、好ましくは、旋回流促進機能を高めるために、湾曲部分全体が線分に対して線分L14に対してY2側に位置する。これにより、排気流路部分S0の全体としての湾曲半径を小さくしやすくなり、旋回流促進機能を高めることができる。なお、曲率中心側の境界は、ガイド部材70により形成され、特にガイド部材70の接続湾曲部73により形成される。
【0099】
また、本実施形態では、ケーシング60及びガイド部材70(特に排気流路部分S0を形成する部分)と、インジェクタ本体10とは、排気流路部分S0における湾曲した流れがインジェクタ本体10内の軸心Jまわりの旋回流を促進するように、連通される。例えば、図13に示すように、インジェクタ本体10は、矩形開口部52が排気流路部分S0に開口するように配置される。これにより、排気流路部分S0からの排気が矩形開口部52を介してインジェクタ本体10内に導入されやすくなり、インジェクタ本体10内の軸心Jまわりの旋回流が促進される。
【0100】
ここで、図15で示す比較例では、尿素水噴霧空間S1に至るまでの排気流路部分S0’は、本実施形態とは異なり、軸心Jの方向に視て、Y2側に膨らむことなく、軸心Iと軸心Jとを結ぶ線分に関して実質的に対称である。この場合、図15に矢印R1’で示すように、軸心Jの方向に視て、軸心Iから軸心Jに向かった直線状の(最短距離の)排気の流れが実現される。このような直線状(最短距離)の排気の流れは、軸心Jまわりの旋回流を生む作用を実質的に有さない。これに対して、本実施形態によれば、上述したように、湾曲(蛇行)しつつ軸心Iに向かって流れるので、軸心Jまわりの旋回流を生むことができる。
【0101】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0102】
例えば、上述した実施形態では、排気流路部分S0は、軸心Jの方向に視て、軸心Iと軸心Jとを結ぶ線分L14に対してY2側に偏る形態であるが、逆であってもよい。すなわち、排気流路部分S0は、軸心Jの方向に視て、軸心Iと軸心Jとを結ぶ線分L14に対してY1側に偏る形態であってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、軸心Jと軸心Iとは互いに平行であるが、平行でなくてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 排気浄化装置
DOC 酸化触媒
DPF ディーゼル微粒子捕集フィルタ
SCR 選択触媒還元装置
ASC アンモニアスリップ触媒
ENG 内燃機関
100 インジェクタ
10 インジェクタ本体
11 開口
12 開口
20 ノズル取付部
21 開口
22 フランジ
22a 取付孔
23 接続部
30 制御羽根
50 開口部
60 ケーシング
60a 接続開口部
INJ 噴霧方向
J 軸心
I 軸心
S 排気流路
SS 排気の流れ方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15