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特許7432244アルツハイマー病の病原性因子としてのグラニンの同定、およびグラニン凝集を阻害し、アルツハイマー病を治療するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】アルツハイマー病の病原性因子としてのグラニンの同定、およびグラニン凝集を阻害し、アルツハイマー病を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240208BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/353
A61K31/517
A61K31/7076
A61P25/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020555225
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2019004409
(87)【国際公開番号】W WO2019199099
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】62/657,601
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520488481
【氏名又は名称】ユ、スン ヒョン
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユ、スン ヒョン
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】吉田 佳代子
【審判官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/031300(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0026086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0163580(US,A1)
【文献】特表2003-532634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0111014(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0040618(KR,A)
【文献】CNA & Neurological Disorders:Drug Targets、2017年、Vol.16、No.4、p.387-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物であって、
i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチンフィセチンおよびモリンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロールiii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478;の4つの各グループ(i~iv)からそれぞれ少なくとも1つ選択された4つ以上の化合物を含
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
動物の神経系において金属イオンZn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+の1つ以上を低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤(agent)をさらに含み、前記薬剤は、金属タンパク質、カゼイン、アルブミン、セルロプラスミン、カルモジュリン、トロポニン、フェリチン、トランスフェリン、ラクトフェリン、およびアントシアニンから選択される
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物であって、
i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチンフィセチンおよびモリンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロールiii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478;の4つの各グループ(i~iv)からそれぞれ少なくとも1つ選択された4つ以上の化合物を含
ことを特徴とする組成物。
【請求項5】
スクテラレイン 、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチンモリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボンおよびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む
請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含み、
前記薬剤は、金属タンパク質、カゼイン、アルブミン、セルロプラスミン、カルモジュリン、トロポニン、フェリチン、トランスフェリン、ラクトフェリン、およびアントシアニンから選択される
請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための薬学的組成物であって、
i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチンフィセチンおよびモリンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロールiii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478;の4つの各グループ(i~iv)からそれぞれ少なくとも1つ選択された4つ以上の化合物を含
ことを特徴とする組成物。
【請求項8】
スクテラレイン 、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチンモリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、モリンおよびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む
請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含み、
前記薬剤は、金属タンパク質、カゼイン、アルブミン、セルロプラスミン、カルモジュリン、トロポニン、フェリチン、トランスフェリン、ラクトフェリン、およびアントシアニンから選択される
請求項7に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。これは、ここに提供された情報のいずれかが、現在記述されているかもしくは請求項に記載されている発明の先行技術であるかまたは関連するものであること、または、具体的にもしくは暗黙的に参照されている出版物あるいは文書が先行技術であることを認めるものではない。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease;AD)患者の脳は、老人斑(senile plaque)と呼ばれるタンパク質凝集体を持っていることが知られており、アルツハイマー病患者の臨床的重症度は、これらの老人斑に直接関連されている(非特許文献1-2)。したがって、アルツハイマー病の治療法を見つけるための過去の取り組みは、主に、これらの老人斑の研究に焦点を当ててきた。老人斑の成分を見つけ、老人斑の形成の阻害、または老人斑のタンパク質成分の凝集を妨害することにより、既に形成された老人斑の破壊および/または減少のいずれかの方法を考案しようと取り組んだ(非特許文献2-3)。同定された老人斑の主要成分は、β-アミロイド(beta-amyloid;Aβ)とグラニン(クロモグラニン(chromogranins)とセクレトグラニン(secretograinins))である(非特許文献2-5)。老人斑に見られるβ-アミロイドは~42個のアミノ酸からなり、グラニンタンパク質は主に~430-700個のアミノ酸からなる(非特許文献6-8)。
【0003】
伝統的に、アルツハイマー病の治療法を見つけるためのほとんどすべての努力は、β-アミロイド(Aβ)に集中しており、成功していない(非特許文献1-3、9-10)。その結果、人間は治療法なしにこの致命的な病気に無力にさらされており、アルツハイマー病の治療に関連する世界の年間支出は約1兆ドルに達する。地球規模の悲惨な状況にもかかわらず、世界規模で約30年以上にわたる広範な努力の後でさえ、パイプラインでこの病気と戦う有望な薬物は現在ない(非特許文献9-10)。この行き止まりは、主に標的タンパク質として老人斑のマイナーなコンポーネントであるβ-アミロイドに主に焦点を当てた、アルツハイマー病の治療法を見つけるための世界的な取り組みにおける狭いアプローチによって引き起こされたようである。
【0004】
実際、アルツハイマー病(AD)の特徴は、脳間質(brain interstitium)における老人斑として知られる脳タンパク質の細胞外凝集体の存在である(非特許文献1-3)。老人斑は、脳タンパク質の凝集体、すなわちグラニンとβ-アミロイドの凝集体で構成されている(非特許文献9-10)。これらのうち、グラニンはβ-アミロイドよりも著しく大きく、脳内ではβ-アミロイドよりはるかに豊富である(非特許文献6-8)。本出願では、凝集されたグラニンがアルツハイマー病の病原因子であり、金属イオンがアルツハイマー病の補因子(co-factor)であることを確認するだけでなく、金属によって引き起こされるグラニンの凝集を阻害すると、アルツハイマー病を予防し、少なくとも部分的な治癒につながる可能性があることを指摘している。したがって、グラニン凝集および凝集されたグラニンの毒性を阻害するための組成物および方法に一般的に関連する実験的発見および発明を報告する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Glass et al.,2010
【文献】Heneka et al.,2010
【文献】Heneka et al.,2015
【文献】Willis et al.,2008
【文献】Willis et al.,2011
【文献】Bartolomucci et al.,2011
【文献】Helle,2000
【文献】Taupenot et al.,2003
【文献】Doody et al.,2014
【文献】Salloway et al.,2014
【文献】Brinkmalm et al.,2018
【文献】Duits et al.,2018
【文献】Mattsson et al.,2013
【文献】Shaw et al.,2009
【文献】Wildsmith et al.,2014
【文献】Twig et al.,2005
【文献】Wu et al., 2013
【文献】Faller et al、2014
【文献】Wang and Xu、2011
【文献】Ward et al.,2014
【文献】Yates et al.,1990
【文献】Zatta et al.,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で説明および特許請求される発明は、本概要で記載または説明または参照されるものを含むが、これらに限定されない多くの属性および実施形態を有する。本明細書で説明および特許請求される発明は、本概要で識別される特徴または実施形態に限定されるものではなく、説明のためにのみ含まれ、制限のためのものではない。
【0007】
本願では、老人斑の形成における老人斑の主成分タンパク質であるグラニンの寄与、および脳細胞の病原性発達におけるグラニンの潜在的な役割を研究した。この研究は、無毒性の低分子量形態から毒性の高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するための組成物の開発につながった。このような組成物は、典型的には、本明細書で分解化合物(disaggregation compound)と呼ばれる1つ以上の活性化合物(active compound)または薬剤(agent)を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載される1つの態様は、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を調節、阻害または抑制すること、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離することである。
【0009】
より詳細には、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するための組成物が提供される。このような組成物は、典型的には、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を阻害、防止または調節する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する1つ以上の分解化合物を含む。
【0010】
本明細書に記載されている特定のアントキサンチン(anthoxanthin)化合物は、好ましい分解化合物である。したがって、本明細書で提供される特定の実施形態は、グラニンと金属イオンとの相互作用および/またはグラニンの金属誘導凝集を阻害するための組成物を使用する方法に関するものであり、この組成物は、少なくとも1つの分解化合物として1つ以上のアントキサンチンを含む。
【0011】
本明細書で提供される別の態様は、アルツハイマー病および他の神経変性疾患を引き起こす脳細胞の病因(pathogenesis)を低減、阻害または抑制するために、動物の脳におけるグラニンの凝集を調節、阻害または抑制することである。
【0012】
また別の態様では、グラニンと金属イオンとの相互作用を調節、阻害または防止する方法が提供される。この態様による実施形態では、グラニンと、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンまたは補因子との相互作用または結合を阻害、防止または調節する分解化合物が提供される 。
【0013】
また別の態様では、本明細書で提供される分解化合物は、動物の神経系におけるグラニンと金属イオンとの相互作用または結合を阻害、防止または調節するために、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離することにより、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を調節、阻害または防止する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する機能を有する。
【0014】
また別の態様では、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を調節、阻害または防止する方法、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する方法が提供される。
【0015】
また別の態様では、細胞毒性を低減または阻害する方法が提供される。特定の実施形態では、この方法は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を投与すること、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離することを含む。
【0016】
また別の態様では、認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための方法が提供される。特定の実施形態では、これらの方法は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を使用する。
【0017】
本発明の態様の他の特徴および利点は、例として本発明の態様の原理を示す添付の図面と併せて、以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は、本発明の態様を示す。
図1】アルツハイマー病患者の脳海馬におけるクロモグラニンA(a、d)、セクレトグラニンII(b、e)、クロモグラニンB(c、f)の免疫染色(写真では黒く表示)を示す。バー(bar)=100μm(a)、200μm(b、c)、40μm(d)、80μm(e、f)。
図2】アルツハイマー病(AD)患者の脳海馬におけるクロモグラニンB(A、C)およびβ-アミロイド(B、D)の存在を示す。
図3】クロモグラニンA(CGA)-(パネルA)およびβ-アミロイド(Aβ)-(パネルB)による、脳免疫細胞ミクログリア(brain immune cell microglia)からの一酸化窒素(NO)および腫瘍壊死因子-α(TNFα)の誘導放出の用量反応効果を示す。
図4】精製された天然のクロモグラニンB(c)、セクレトグラニンII(d)、およびクロモグラニンA(b)を示す。
図5】増加するFe2+濃度の関数としてのクロモグラニンAの凝集を示す。
図6】増加するFe2+濃度の関数としてのクロモグラニンBの凝集を示す。
図7】増加するFe2+濃度の関数としてのセクレトグラニンIIの凝集を示す。
図8】増加するZn2+濃度の関数としてのクロモグラニンBの凝集を示す。
図9】増加するZn2+濃度の関数としてのセクレトグラニンIIの凝集を示す。
図10】増加するCu2+濃度の関数としてのセクレトグラニンIIの凝集を示す。
図11】スクテラレイン(scutellarein)による、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Cu2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMスクテラレインによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、スクテラレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図12】スクテラレインによる、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMスクテラレインによってほとんど阻害された。Cu2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、スクテラレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図13】ルテオリン(luteolin)による、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMルテオリンによってほとんど阻害された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ルテオリンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図14】ルテオリンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMルテオリンによってほとんど阻害された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ルテオリンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図15】バイカレイン(baicalein)による、Cu2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。Cu2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMバイカレインによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図16】バイカレインによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.01mg/ml)(0.14μM)は、pH7.4で1μMバイカレインによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図17】ケンフェロール(kaempferol)による、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMケンフェロールによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図18】ケンフェロールによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMケンフェロールによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図19】レスベラトロール(resveratrol)による、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMレスベラトロールによってほとんど抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、レスベラトロールの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図20】レスベラトロールによる、Zn2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Zn2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMレスベラトロールによって有意に抑制された。Zn2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、レスベラトロールの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図21】エピガロカテキン3-ガレート(epigallocatechin 3-gallate;EGCG)による、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMEGCGによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、EGCGの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図22】エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)による、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMEGCGによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、EGCGの存在下では灰色の線(白丸)で表される。
図23】コルジセピン(cordycepin)による、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Cu2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMコルジセピンによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、コルジセピンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。Cu2+によるクロモグラニンAの凝集は、コルジセピンによって実質的に阻害された。
図24】コルジセピンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMコルジセピンによって有意に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、コルジセピンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。Fe2+によるセクレトグラニンII凝集は、コルジセピンによって完全に阻害された。
図25】チルホスチン(tyrphostin)AG1478による、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMチルホスチンAG1478によって有意に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、チルホスチンAG1478の存在下では灰色の線(白丸)で表される。Fe2+によるクロモグラニンA凝集は、チルホスチンAG1478によって完全に阻害された。
図26】チルホスチンAG1478による、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMチルホスチンAG1478によって有意に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、チルホスチンAの存在下では灰色の線(白丸)で表される。Fe2+によるセクレトグラニンII凝集は、チルホスチンAG1478によって完全に阻害された。
図27】0.2mM Fe2+の存在下でのクロモグラニンBの流体力学的状態の分布プロファイルを示す。金属誘導グラニン凝集の流体力学的状態の分布プロファイルは、pH7.4で動的光散乱法を使用して、0.2mM Fe2+の存在下でクロモグラニンB(0.5mg/ml)で測定された。
図28】フラボノイド(flavonoid)の1つであるバイカレインとFe2+の存在下でのクロモグラニンBの流体力学的状態の分布プロファイルを示す。金属誘導グラニン凝集の流体力学的状態の分布プロファイルは、pH7.4で動的光散乱法を使用して、0.2mMバイカレインおよび0.2mM Fe2+の存在下でクロモグラニンB(0.5mg/ml)(6μM)で測定された。
図29】注入カニューレ(injection cannula)が頭部に取り付けられたラットと、注入が行われた箇所を示すラットの前頭部(frontal section)の図を示している。(右)ラットの脳室内(intracereborventricle)は灰色で示され、注入カニューレの位置は右脳室内の灰色で示されている。 4種類の分子が次のように脳室内注入法により適用された(左から右に表示):グループ1(コントロール);1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7.4)をラット脳(7匹のラット)の脳室内に注入した。グループ2(グラニン);それぞれ0.1μMのクロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)およびセクレトグラニンII(SgII)が含まれたグラニン溶液を1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7.4)に入れて、これをラット脳(9匹のラット)の脳室内に注入した。グループ3(グラニン+金属イオン);それぞれ0.1μMのCGA、CGBおよびSgIIが含まれたグラニン溶液に0.8mM Cu2+、250μM Fe2+および2mM Zn2+を加えたものを、1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7.4)に入れて、これをラット脳(9匹のラット)の脳室内に注入した。グループ4(グラニン+金属イオン+4種類のフラボノイドとスチルベノイド);それぞれ0.1μMのCGA、CGBおよびSgIIと、0.8mMのCu2+、250μMのFe2+および2mMのZn2+とを含む溶液に、4種類のフラボノイド、スチルベノイドおよびその他の分子をそれぞれ1μMずつ添加したものを、1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7)に入れて、これをラット脳(8匹のラット)の脳室内に注入した。
図30】試験分子の脳室内注入後1.5ヶ月が経過した後、モリス水迷路試験(Morris water maze test)で各グループのラットが費やした探索時間(search time)を示す。各グループのラットがモリス水迷路試験で逃避台(platform:プラットフォーム)に脱出するのに費やした平均時間(秒単位)は、標準誤差(nは各グループのラットの数)で表された。
図31】各グループのラットの代表的な水泳軌跡(swimming tracks)を示す。
図32】再配置された逃避台を見つけるために費やされた時間を示す。数字はグループ番号を示し、探索の平均時間(秒)は標準誤差バーで表される。
図33】各グループのラットの代表的な水泳軌跡を示す。左上の数字はグループ番号を示し、トレース(trace)は各グループのラットの水泳軌跡を示す。右上の象限にある小さな円は、左下の象限にある大きな円で示された逃避台を見つけるためにラットが泳ぎ始めた場所を示す。
図34】グラニンを注入した一部のラットの異常な姿勢を示す。グループ3の一部のラットは、グラニンと金属イオン(Cu2+、Zn2+およびFe2+)を注入してから2週間後に首のゆがみ(skewed neck)を示したが、グループ2の一部のラットは、グラニンを注入してから4~5週間後に首のゆがみを示し始めた。グループ1及びグループ4のラットは、1匹も注入してから35週間(約8ヶ月)後でも異常な姿勢を見せていない。
図35】グループ2(グラニン注入)における首がゆがんだラットの収縮した海馬(右半分)を示す。首がゆがんだグループ2(グラニン注入)のラットを、グラニンを注入してから10週間後(首のゆがみが現れてから6週間後、生後6ヶ月後)に犠牲にし、脳組織を調べた。
図36】アピゲニン(Apigenin)による、Zn2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。
図37】アピゲニンによる、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図38】タンゲレチン(Tangeretin)による、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。
図39】タンゲレチンによる、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図40】ケルセチン(Quercetin)による、Cu2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。
図41】ケルセチンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。
図42】フィセチン(Fisetin)による、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図43】フィセチンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。
図44】ミリセチン(Myricetin)による、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図45】ミリセチンによる、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。
図46】モリン(Morin)による、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図47】モリンによる、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図48】5,7-ジメトキシフラボン(5,7-dimethoxyflavone)による、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図49】5,7-ジメトキシフラボンによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。
図50】20μMのCu2+および1μMの毒性阻害剤ルテオリンの存在下での各グラニンの細胞毒性を示す。20μMのCu2+の存在下および1μMルテオリン(金属誘導グラニン毒性阻害剤の一つ、上記の図13及び図14参照)の追加存在下での、各グラニン(0.1μMクロモグラニンA、0.06μMクロモグラニンB、および0.07μMセクレトグラニンII)の細胞毒性を、PC12細胞及びMTTアッセイを用いて測定した(Cheruvara et al.,2015;Shearman et al.,1994)。金属誘導グラニン凝集の阻害剤の1つであるルテオリン(上記の図13及び図14参照)は、実質的にグラニン誘導毒性を停止させた。
図51】試験分子の脳室内注入後2.5ヶ月が経過した後、モリス水迷路試験において各グループのラットが費やした探索時間(逃避台を見つけるのにかかった時間)を示す。
図52図51の各グループのラットの代表的な水泳軌跡を示す。
図53】10.5ヶ月齢(グラニン注入後7.5ヶ月)のラットの脳海馬部位(brain hippocampus section)をヘマトキシリン(haematoxylin)で染色したことを示す。
図54図53の海馬のほぼ同じ領域の高倍率ビューを示す。
図55】アルツハイマー病(AD)のような症状がある場合とない場合の10.5ヶ月齢のラットの脳皮質の前部(frontal section)を示す。
図56】アルツハイマー病のような症状がある場合とない場合の10.5ヶ月齢のラットの脳組織密度の比較を示す。
図57】クロモグラニンA特異的抗体により、10.5ヶ月齢のラットの海馬の免疫染色を示す。
図58】クロモグラニンB特異的抗体により、10.5ヶ月齢のラットの海馬の免疫染色を示す。
図59】セクレトグラニンII特異的抗体により、10.5ヶ月齢のラットの海馬の免疫染色を示す。
図60】アルツハイマー病のような症状がある場合とない場合の11.5ヶ月齢のラットの活動性(mobile activity)の比較を示す。
【0019】
上述の図面は、例示的な実施形態の少なくとも1つにおける本発明の態様を示しており、これらの態様は、以下の説明においてさらに詳細に定義されている。異なる図において同じ番号で参照される本発明の特徴、要素および態様は、1つ以上の実施形態による、同じ、同等または類似の特徴、要素または態様を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
アルツハイマー病(AD)患者の脳は、老人斑と呼ばれるタンパク質凝集体を持っていることが知られており、アルツハイマー病患者の臨床的重症度はこれらの老人斑に直接関連している(非特許文献1-3)。このため、アルツハイマー病の治療法を見つけるためのこれまでの取り組みは、主にこれらの老人斑の研究に焦点を当ててきた。老人斑の成分を見つけ、老人斑の形成の阻害、または斑のタンパク質成分の凝集を妨害することにより、すでに形成された老人斑の破壊および/または減少のいずれかの方法を考案しようとした(非特許文献1-3)。同定された老人斑の主な成分は、β-アミロイド(Aβ)とグラニン(クロモグラニン及びセクレトグラニン)である(非特許文献2-5)。老人斑に見られるβ-アミロイドは~42個のアミノ酸からなり、グラニンタンパク質はほとんど~430-700個のアミノ酸からなる(非特許文献6-8)。
【0021】
グラニンは、脳の3つの主要な分泌細胞、すなわち星状細胞(astrocytes)、ニューロン(neurons)及びおそらくミクログリア(microglia)からも分泌され、脳細胞の約80%を構成し、脳にはるかに豊富であり、β-アミロイド(Aβ)よりも桁違いに高い凝集特性を持っており(非特許文献11-17)、β-アミロイドよりもモルベースで少なくとも~5,400倍、重量ベースで~500倍毒性が高い(非特許文献16-17)。
【0022】
本発明者は、老人斑の形成における老人斑の主成分タンパク質であるグラニンの寄与、および脳細胞の病原性発達におけるグラニンの潜在的な役割を研究した。この研究によれば、そのプロセスにおいて、Ca2+、Cu2+、Fe2+およびZn2+などの金属イオンの存在および酸性pH、このようなアルツハイマー病患者の脳に明らかな2つの特徴下で、グラニンが容易に凝集すること(非特許文献18-22)、また、凝集されたグラニンは老人斑の形成に積極的に関与していることが示されている。グラニンの凝集傾向は、β-アミロイドの凝集傾向よりも桁違いに高い。さらに、グラニンタンパク質は脳細胞に対して非常に有毒であることが示され、毒性はβ-アミロイドの毒性よりもモルベースで少なくとも~5,400倍、重量ベースで~500倍高いことが示された(非特許文献16-17)。
【0023】
本発明の一態様は、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を調節、阻害または抑制する方法、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する方法を研究および提供することである。特定の態様は、アルツハイマー病および他の神経変性疾患につながる脳細胞の病因を調節、阻害または抑制するために、動物の脳におけるグラニンの凝集を調節、阻害または抑制する方法を提供することである。グラニンは通常、以下のクロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上を含む。
【0024】
したがって、本発明の実施形態は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を開示する。このような組成物は、典型的には、本明細書では分解化合物と呼ばれることもある1つ以上の活性化合物(active compound)または薬剤(agent)を含む。本明細書で使用される活性化合物または化合物(本明細書では互換的に使用される)は、通常、十分な量が動物または患者の血流に吸収されたときに生物学的効果を引き起こす薬剤(pharmaceutical agent)を指す。実施形態は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するため、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するための1つ以上の分解化合物を含有してもよい。
【0025】
様々な実施形態では、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10つの分解化合物が使用される。しかしながら、代替の実施形態では、10つを超える分解化合物を使用できる。一態様では、本明細書で提供される分解化合物は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害し、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する。別の態様では、本明細書で提供される分解化合物は、グラニンと、例えば、Zn2+、Cu2+、Fe2+、およびCa2+を含む金属イオンまたは補因子との相互作用または結合を阻害、防止または調節する。特定の実施形態では、動物の神経系において、グラニンと金属イオンとの相互作用または結合を阻害、防止または調節するために、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の分解化合物を提供することにより、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する。
【0026】
適切な分解化合物は、制限なく、以下のものを含む:アントキサンチン、アントシアニン、アントシアニジン、フラバン、フラバノン、フラボノール、スチルベノイド、金属タンパク質、Zn2+結合および隔離分子、カゼイン、アルブミン、亜鉛フィンガー転写因子、金属イオンキレーター(metal ion chelator)、Cu2+結合および隔離分子、セルロプラスミン、Fe2+結合および隔離分子、カルモジュリン、トロポニン、フェリチン、トランスフェリン、ラクトフェリン、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478。
【0027】
適切なアントキサンチンみは、制限なく、以下のものを含む:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、ガランギン、イソラムネチン、パキポドール、ラムナジン、ピラノフラボノール、およびフラノフラボノール。
【0028】
適切なスチルベノイドは、制限なく、以下のものを含む:レスベラトロール、ピセアタンノリン(piceatannolin)、ピノシルビン、プテロスチルベン、アストリンギン、およびピセイド。ここで好ましいスチルベノイドはレスベラトロールである。
【0029】
適切なフラバンは、制限なく、以下のものを含む:エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、カテキン、ガロカテキン、カテキン3-ガレート、ガロカテキン3-ガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ガレート、テアルビジン、およびプロアントシアニジン。ここで好ましいフラバンは、エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)である。
【0030】
方法
また別の態様では、i)グラニンと金属イオンとの相互作用を調節、阻害または防止する方法;ii)グラニンの凝集を調節、阻害、防止するか、または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する方法;iii)細胞毒性を低減または阻害する方法;およびiv)認知症またはアルツハイマー病を治療または予防する方法を提供する。
【0031】
一態様では、これらの方法は、通常、1つ以上の分解化合物を使用する。好ましい分解化合物は、アントキサンチンを含む。したがって、本明細書で提供される特定の実施形態は、グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物を使用する方法に関するものであり、ここで、組成物は1つ以上のアントキサンチンを含む。
【0032】
非限定的な例として、本明細書で提供される特定の一実施形態は、グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物を使用する方法に関するものであり、その組成物は、以下のうちの少なくとも2つを含む:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478。他の実施形態は、以下のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、またはすべてを含む、グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物を使用する:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478。一実施形態は、以下のものを含む:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、およびEGCG。別の実施形態は、以下のものを含む:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478。
【0033】
本明細書で提供される特定の実施形態は、グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物および方法に関するものであり、この組成物は、i)アントキサンチン;ii)スチルベノイド、およびiii)アントキサンチンまたはスチルベノイド以外の分解化合物を含む。特定のさらなる実施形態において、アントキサンチンは、以下のスクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチンおよびフィセチンのうちの1つ以上である。特定のさらなる実施形態において、スチルベノイドは、レスベラトロールまたはその誘導体、塩またはエステルである。特定のさらなる実施形態では、アントキサンチンまたはスチルベノイド以外の分解化合物は、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478から選択される。
【0034】
別の態様では、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を調節、阻害または防止する方法、または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する方法が提供される。したがって、特定の実施形態では、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を調節、阻害または防止するための薬学的組成物が開示および提供される。特定の実施形態において、これらの方法は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を使用する。提供される低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を調節、阻害または防止する方法のための薬学的組成物の1つの特定の実施形態は、以下のうちの少なくとも2つを含む:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478。代替の実施形態は、薬学的組成物または製剤中に少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10つの分解化合物を含む。
【0035】
また別の態様では、認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための方法が提供される。したがって、特定の実施形態では、認知症またはアルツハイマー病の治療または予防の方法のための薬学的組成物が開示されて提供される。特定の実施形態において、これらの方法は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するため、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するための組成物を使用する。提供される、認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための薬学的組成物の1つの特定の実施形態は、以下のうちの少なくとも2つを含む:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478。代替の実施形態は、薬学的組成物または製剤中に少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10つの分解化合物を含む。
【0036】
また別の態様では、細胞毒性を低減または阻害する方法が提供される。好ましい実施形態において、方法は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を投与すること、および/または本明細書で提供される高分子量凝集形態を低分子量形態に解離することを含む。
【0037】
また別の態様では、認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための方法が提供される。特定の実施形態において、その方法は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するために、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するために、有効量の薬学的組成物を動物(例えば、患者)に投与することを含む。特定の一実施形態において、組成物は、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも2つを含む。好ましい実施形態において、その方法は、動物においてグラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するのに有効である。
【0038】
組成物および製剤
活性化合物の1日投与量は、例えば、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも40mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも55mg、少なくとも60mg、少なくとも65mg、少なくとも70mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、少なくとも100mg、少なくとも150mg、少なくとも200mg、少なくとも250mg、少なくとも300mg、少なくとも350mg、少なくとも400mg、少なくとも450mg、少なくとも500mg、少なくとも550mg、少なくとも600mg、少なくとも650mg、少なくとも700mg、少なくとも750mg、少なくとも800mg、少なくとも850mg、少なくとも900mg、少なくとも950mg、少なくとも1000mg、少なくとも1050mg、少なくとも1100mg、少なくとも1150mg、少なくとも1200mg、少なくとも1250mg、少なくとも1300mg、少なくとも1350mg、少なくとも1400mg、少なくとも1450mg、少なくとも1500mg、少なくとも2000mg、少なくとも3000mg、少なくとも5000mg、またはその以上であってもよい。
【0039】
本明細書の態様は、障害を治療するための治療用化合物の用量が、少なくとも0.1mg/kg/日、少なくとも1.0mg/kg/日、少なくとも5.0mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、少なくとも15mg/kg/日、少なくとも20mg/kg/日、少なくとも25mg/kg/日、少なくとも30mg/kg/日、少なくとも35mg/kg/日、少なくとも40mg/kg/日、少なくとも45mg/kg/日または少なくとも50mg/kg/日であるか、または約0.001mg/kg/日~約100mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約15mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約20mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約25mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約30mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約35mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約40mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約45mg/kg/日、約0。001mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.001mg/kg/日~約75mg/kg/日、または約0.001mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲であることを開示する。
【0040】
また別の態様において、グラニンの低分子量形態から高分子量凝集形態への凝集を阻害するための、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するための組成物における1つ以上の分解化合物と別の分解化合物との比は、異なる実施形態では異なり得る。この態様では、1つの分解化合物の総量と別の分解化合物の総量との比は、例えば、約1:100、1:95、1:90、1:85、1:80、1:75、1:70、1:65、1:60、1:55、1:50、1:45、1:40、1:35、1:30、1:25、1:20、1:15、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、または1:1w/wから、約100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1:5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、および1:1w/wの範囲であってもよい。
【0041】
本明細書の態様は、グラニン凝集の減少または低減が、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%で行われ、アルツハイマー病の症状(AD)に関連する重症度が、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%で低減することを開示する。
【0042】
この実施形態の別の態様において、本明細書に開示される本発明の治療用化合物の投与は、グラニン凝集に関連する疾患に関連する症状の重症度を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減する。
【0043】
本明細書の態様は、グラニン凝集の減少または低減に関連する症状が、約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約50%~約70%低減することを開示する。好ましい実施形態において、グラニン凝集の減少または低減に関連する上記の症状は、i)グラニンと金属イオンとの相互作用を調節、阻害または防止する方法;ii)グラニンの凝集を調節、阻害または防止するか、または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する方法;iii)細胞毒性を低減または阻害する方法;およびiv)本明細書に記載の認知症またはアルツハイマー病を治療または予防する方法にさらに適用される。
【0044】
投薬は、単回投薬または累積的(連続投薬)であり得、そして当業者により容易に決定され得る。本発明の治療用化合物は、被験体に対して、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、またはそれ以上投与されてもよい。例えば、アルツハイマー病の治療は、本明細書に開示されているような治療用化合物(therapeutic compound)の有効量の1回の投与を含み得る。あるいは、アルツハイマー病の治療は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、数日おきに1回、または週1回など、一定期間にわたって実施される治療用化合物の有効用量の複数回投与を含み得る。投与のタイミングは個人の症状の重症度などの要因によって個人ごとに異なり得る。例えば、本明細書に開示される治療用化合物の有効容量は、無期限に1日1回、または個人がもはや治療を必要としないまで、個人に投与することができる。当業者は、個体の状態を治療の過程を通して監視でき、本明細書に開示される薬学的組成物の投与有効量をそれに応じて調整できることを認識するであろう。一実施形態において、本明細書に開示される治療用化合物は、アルツハイマー病に罹患している個体を含む、疾患の症状を解決するためにかかる時間を、同じ治療を受けていない患者と比較して、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%短縮することができる。
【0045】
一実施形態において、治療用化合物の投与期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日。13日、14日、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上である。さらなる実施形態において、投与が停止される期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上である。
【0046】
本明細書に開示される治療用化合物は、個体に投与される。個体は、通常人間であるが、家畜であるかどうかにかかわらず、犬、猫、鳥、牛、馬、羊、山羊、爬虫類、およびその他の動物を含むがこれらに限定されない動物であり得る。
【0047】
また別の態様では、使用説明書とともに、本発明の少なくとも1つの組み合わせ組成物を制限なく含むキットまたはパッケージが提供される。一実施形態では、各治療用化合物自体が、制限なく、個別または別個の剤形(投与形態)(例えば、カプセル、錠剤または液体)として投与される場合、キットは、制限なしに、使用説明書とともに、発明の組成物を構成する各治療用化合物を含む。さらなる実施形態において、治療用化合物は、パッケージングが、投与の指示と共に考慮されるとき、制限なしに、各治療用化合物が投与される方法を明確に示す限り、制限なく、投与に適した任意の方法でパッケージされてもよい。またさらなる実施形態において、各治療用化合物または治療用化合物の組み合わせは、制限なく、皮下投与される液体または他の液体製剤を含む液体などの単一の投与可能な剤形に組み合わせられてもよい。治療用化合物は、パッケージで個体に提供され得る。前記パッケージは、例えば、制限なく、ボトル、キャニスター、チューブまたは他の密閉容器であるコンテナであり得る。
【0048】
一実施形態では、それぞれの薬物自体が、制限なく、個別または別個の剤形(投与形態)(例えば、カプセルまたは錠剤)として投与される場合、キットは、制限なしに、使用説明書とともに、発明の組成物を構成する各薬物を含む。さらなる実施形態において、薬物成分は、パッケージングが、投与の指示と共に考慮されるとき、制限なしに、各薬物成分が投与される方法を明確に示す限り、制限なく、投与に適した任意の方法でパッケージされてもよい。またさらなる実施形態では、組み合わせの薬物成分のそれぞれは、制限なく、カプセルなどの単一の投与可能な剤形に組み合わせられてもよい。
【0049】
発明の形態
実施例
以下の非限定的な例は、現在検討されている代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするために、例示の目的でのみ提供されている。したがって、これらの実施例は、単なる例示であることを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0050】
したがって、これらの例は、本明細書に記載されている実施形態のいずれかを限定するものと解釈されるべきではない。
【0051】
実施例1
金属イオン結合時のグラニンの凝集
グラニンの凝集に対する金属、特にCu2+、Zn2+およびFe2+の影響をテストする実験が行われた。
【0052】
材料および方法
材料:主要なグラニンタンパク質であるクロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)およびセクレトグラニンII(SgII)は、ウシ副腎髄質の分泌顆粒から精製された(Park et al.,2002;Yoo,1995;Yoo and アルバネシ、1990年)。Chelex 100はBio-Rad(米国)製であり、他の化学物質は市販されている最高純度のものであった。精製された天然クロモグラニンB(c)、セクレトグラニンII(d)およびクロモグラニンA(b)を図4に示す。本実験で使用されたフラボノイド、スチルベノイドおよびその他の試験化合物は、MedChem Express(米国)、Sigma-Aldrich(米国)およびSanta-Cruz Biotech(米国)から入手したものであり、全試験化合物の純度は98%以上であった。
【0053】
凝集実験:凝集試験に先たち、グラニン凝集体を解離させるために、Chelex 100(Bio-Rad、米国)などのキレート剤を用いた広範囲な処理により、グラニンから、精製過程でグラニンと相互作用した金属イオンを除去する必要がある。金属誘導凝集試験では、2mM MOPS(pH7.4)でChelex 100処理CGA、CGBまたはSgIIを、CuCl、FeClおよびZnClなどの濃縮金属イオンで滴定した。凝集は、ベックマン(Beckman)DU640uv/vis分光光度計を使用して濁度の変化を測定することにより観察された。すべての測定は24Cで行われた。
【0054】
図5から図10は、特定のグラニンの凝集特性に対する特定の金属の影響を示している。図5は、増加するFe2+濃度の関数としてのクロモグラニンAの凝集を示す。0.005mg/mlクロモグラニンA(0.1μM)を、pH7.4でFe2+濃度の関数として使用した。図5から、Fe2+濃度が高くなるほど、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の大きさが大きくなることが明らかである。図6は.増加するFe2+濃度の関数としてのクロモグラニンBの凝集を示す。0.005mg/mlクロモグラニンB(0.06μM)を、pH7.4でのFe2+濃度の関数として使用した。図6から、Fe2+濃度が高くなるほど、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の大きさが大きくなることが明らかである。図7は、増加するFe2+濃度の関数としてのセクレトグラニンIIの凝集を示す。0.005mg/mlセクレトグラニンII(0.07μM)の量を、pH7.4でのFe2+濃度の関数として使用した。図7から、Fe2+濃度が高くなるほど、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の大きさが大きくなることが明らかである。図8は、増加するZn2+濃度の関数としてのクロモグラニンBの凝集を示す。0.005mg/mlクロモグラニンB(0.06μM)を、生理的pH7.4でのZn2+濃度の関数として使用した。図8から、Zn2+濃度が高くなるほど、Zn2+誘導クロモグラニンB凝集の大きさが大きくなることが明らかである。図9は、増加するZn2+濃度の関数としてのセクレトグラニンIIの凝集を示す。増加するセクレトグラニンII濃度を、生理的pH7.4でのZn2+濃度の関数として使用した。図9から、Zn2+濃度が高くなるほど、Zn2+誘導セクレトグラニンII凝集の大きさが大きくなることが明らかである。図10は、増加するCu2+濃度の関数としてのセクレトグラニンIIの凝集を示す。0.005mg/mlセクレトグラニンII(0.07μM)の量を、pH7.4でのCu2+濃度の関数として使用した。図10から、Cu2+濃度が高くなるほど、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の大きさが大きくなることが明らかである。図11は、スクテラレインによる、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Cu2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMスクテラレインによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、スクテラレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図11から、スクテラレインがCu2+誘導クロモグラニンA凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図12は、スクテラレインによる、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMスクテラレインによってほとんど阻害された。Cu2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、スクテラレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図12から、スクテラレインがCu2+誘導セクレトグラニンIIの凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図13は、ルテオリンによる、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMルテオリンによってほとんど阻害された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ルテオリンの存在では灰色の線(白丸)で表される。図13から、ルテオリンがFe2+誘導クロモグラニンB凝集をほとんど阻害したことが明らかである。
【0055】
図14は、ルテオリンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMルテオリンによってほとんど阻害された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ルテオリンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図14から、ルテオリンがFe2+誘導セクレトグラニンII凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図15は、バイカレインによる、Cu2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。Cu2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMバイカレインによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図15から、バイカレインがCu2+誘導クロモグラニンB凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図16は、バイカレインによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.01mg/ml)(0.14μM)は、pH7.4で1μMバイカレインによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図16から、バイカレインがFe2+誘導セクレトグラニンII凝集を完全に阻害したことが明らかである。図17は、ケンフェロールによる、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMケンフェロールによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図17から、ケンフェロールがCu2+誘導セクレトグラニンII凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図18は、ケンフェロールによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMケンフェロールによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、バイカレインの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図18から、ケンフェロールがFe2+誘導クロモグラニンA凝集を完全に阻害したことが明らかである。
【0056】
図19は、レスベラトロールによる、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMレスベラトロールによってほとんど抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、レスベラトロールの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図19から、レスベラトロールがFe2+誘導クロモグラニンA凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図20は、レスベラトロールによる、Zn2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Zn2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMレスベラトロールによって有意に抑制された。Zn2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、レスベラトロールの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図21は、エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)による、Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Cu2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMEGCGによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、EGCGの存在下では灰色の線(白丸)で表される。図21から、EGCGがCu2+誘導セクレトグラニンII凝集をほとんど阻害したことが明らかである。図22は、EGCGによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMEGCGによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、EGCGの存在下では灰色の線(白丸)で表される。EGCGがFe2+誘導セクレトグラニンII凝集を完全に抑制したことが明らかである。図23は、コルジセピンによる、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Cu2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMコルジセピンによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、コルジセピンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。Cu2+によるクロモグラニンAの凝集は、コルジセピンによって実質的に阻害された。図24は、コルジセピンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMコルジセピンによって有意に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、コルジセピンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。Fe2+によるセクレトグラニンII凝集は、コルジセピンによって完全に阻害された。図25は、チルホスチンAG1478による、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の抑制を示す。Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMチルホスチンAG1478によって有意に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、チルホスチンAG1478の存在下では灰色の線(白丸)で表される。Fe2+によるクロモグラニンA凝集は、チルホスチンAG1478によって完全に阻害された。図26は、チルホスチンAG1478による、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の抑制を示す。Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMチルホスチンAG1478によって有意に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、チルホスチンAの存在下では灰色の線(白丸)で表される。Fe2+によるセクレトグラニンII凝集は、チルホスチンAG1478によって完全に阻害された。図27は、0.2mM Fe2+の存在下でのクロモグラニンBの流体力学的状態の分布プロファイルを示す。金属誘導グラニン凝集の流体力学的状態の分布プロファイルは、pH7.4で動的光散乱法を使用して、0.2mM Fe2+の存在下でクロモグラニンB(0.5mg/ml)で測定された。この溶液条件下では、クロモグラニンBの大部分(72.3%)は大きな凝集状態のままであり、27.7%は低分子量のオリゴマー状態のままであった。金属イオンの存在下で他のグラニンでも同様の結果が得られた。この結果は、上記の結果(図5から図10)と一致し、金属によって誘導されるグラニンの凝集が確認された。
【0057】
図11から図26および図36から図49で説明されているように、金属誘導グラニン凝集の阻害でテストされた他のフラボノイド、スチルベノイドおよび分子は、同一の細胞アッセイ(図示せず)において同様の毒性阻害結果を示し、アルツハイマー病のための強力な治療薬候補(drug candidate)としてのこれらの阻害剤分子の有効性を示す。
【0058】
実施例2
グラニンの流体力学的特性実験
分子動的光散乱:異なる溶液条件でグラニンがモノマー-オリゴマー(monomer-to-oligomer)状態であるか高分子量凝集状態であるかを判断するために、ワイアットテクノロジー(Wyatt Techology:サンタバーバラ,CA、米国)社のダイナプロナノスター(DynaPro NanoStar)を用いて24℃でグラニンの動的光散乱実験を行い、その結果を、会社が提供するプログラム(Dynamics 7.5.0)により分析した。
【0059】
図28は、フラボノイドの1つであるバイカレインとFe2+の存在下でのクロモグラニンBの流体力学的状態の分布プロファイルを示す。金属誘導グラニン凝集の流体力学的状態の分布プロファイルは、pH7.4で動的光散乱法を使用して、0.2mMバイカレインおよび0.2mM Fe2+の存在下でクロモグラニンB(0.5mg/ml)(6μM)で測定された。かなり驚くべきことに、0.2mM Fe2+の存在にもかかわらず、クロモグラニンBの大部分(94.7%)は低分子量のオリゴマー状態に留まり、ごく一部(5.3%)だけが大きな凝集体状態に留まっており、これは、バイカレインが、クロモグラニンB同士が互いに相互作用して大きな凝集体を形成するのを防ぎ、および/または、図27に示されたクロモグラニンBの大きな凝集体状態を低分子量オリゴマー状態に解離したことを示す。他のグラニンでも同様の結果が得られた。この結果は、上記の結果(図11から図26および図36から図49)と一致し、フラボノイド、スチルベノイド、および一部の特定の分子が、金属によって誘導されるグラニンの凝集を阻害する理由を説明する。
【0060】
実施例3
細胞毒性実験
これらの実験では、グラニン誘導アルツハイマー病(AD)の病因における治療剤(therapeutics agents)としてのこれらの分子の有効性をテストするために、選択された化合物および薬剤をラットに適用した。テストされた化合物には、フラボノイド、スチルベノイド及びその他のものが含まれている。
【0061】
MTT細胞毒性アッセイ:細胞毒性アッセイは、Invitrogen(米国)製のMTT細胞増殖アッセイキットと50,000PC12細胞/ウェルを使用して行われた(Cheruvara et al.,2015;Shearman et al.,1994)。このアッセイは、細胞によるMTT色素減少(MTT dye reduction)のレベルを検出するように設計されており、570nmにおける色の変化は、細胞生存率(健康状態)の指標として使用される。細胞が健康であればあるほど、色の変化が大きくなる。
【0062】
図50は、20μMのCu2+および1μMの毒性阻害剤ルテオリンの存在下での各グラニンの細胞毒性を示す。20μMのCu2+の存在下および1μMルテオリン(金属誘導グラニン毒性阻害剤の一つ、上記の図13及び図14参照)の追加存在下での各グラニン(0.1μMクロモグラニンA、0.06μMクロモグラニンB、および0.07μMセクレトグラニンII)の細胞毒性を、PC12細胞及びMTTアッセイを用いて測定した(Cheruvara et al.,2015;Shearman et al.,1994)。金属誘導グラニン凝集の阻害剤の1つであるルテオリン(上記の図13及び図14参照)は、実質的にグラニン誘導毒性を停止させた。
【0063】
グラニン誘導アルツハイマー病(AD)の病因における治療剤としてのこれらの分子の有効性をテストするために、4種類の分子を同時にラットに適用した。Wistarラットの4つのグループ(各グループで7~9匹のラット)を動物実験で使用して、アルツハイマー病の病因におけるグラニンの効果、および脳室内注入法によるアルツハイマー病治療薬候補の効果を、次のようにテストした:グループ1(コントロール);1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7.4)をラット脳(7匹のラット)の脳室内に注入した。グループ2(グラニン);それぞれ0.1μMのクロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)およびセクレトグラニンII(SgII)が含まれたグラニン溶液を1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7.4)に入れて、これをラット脳(9匹のラット)の脳室内に注入した。グループ3(グラニン+金属イオン);それぞれ0.1μMのCGA、CGBおよびSgIIが含まれたグラニン溶液に0.8mM Cu2+、250μM Fe2+および2mM Zn2+を加えたものを、1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7.4)に入れて、これをラット脳(9匹のラット)の脳室内に注入した。グループ4(グラニン+金属イオン+4種類のフラボノイドとスチルベノイド);それぞれ0.1μMのCGA、CGBおよびSgIIと、0.8mMのCu2+、250μMのFe2+および2mMのZn2+とを含む溶液に、4種類のフラボノイド、スチルベノイドおよびその他の分子をそれぞれ1μMずつ添加したものを、1μlの緩衝液(2mM MOPS、pH7)に入れて、これをラット脳(8匹のラット)の脳室内に注入した。
【0064】
ここに提示された結果は、グラニン凝集を予防または抑制する、金属キレート剤および/または任意の薬剤が、図5から図10に示される金属誘導凝集を阻害または予防することにより、アルツハイマー病の治療剤として役立つ可能性があることを示す。実際、フラボノイド、スチルベノイド、およびいくつかの特定の分子は、金属誘導グラニン凝集を阻害および/または抑制し(図11から図26図36から図49)、細胞内(図50)およびラットの脳内(図30から図35図51から図60)におけるグラニンの毒性効果を予防するのに非常に効果的であることが証明された。さらに、動的光散乱実験において、金属イオンが、グラニンのモノマー-オリゴマー状態を大きな凝集体(図27)に、すなわち、非毒性から毒性状態に変換することが確認され、また、フラボノイド及び他の分子の役割が、グラニンのモノマー-オリゴマー状態の大きな凝集体への変換を防止し、および/または高分子量凝集体を低分子量モノマー-オリゴマー状態(図28)に解離することであると確認された。
【0065】
実施例4
動物実験
以下に記載する実験は、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するために本明細書で提供される化合物および組成物が、アルツハイマー病(AD)および関連する神経変性疾患の治療剤として役立つ可能性があることをさらに示す。
【0066】
材料および方法
動物実験:動物実験では、体重が約280gから300gの8週齢のWistarラットを地元のブリーダーから購入し、特定病原体フリー(specific pathogen free:SPF)動物施設に収容し、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)の規則と規定に厳密に準拠して使用した。
【0067】
ラット脳への定位脳室内(Stereotaxic Intracerebroventricular)注入:本実験では、Invivo 1(VA、米国)から購入したガイドカニューレ(guide cannula)を、脳の中心線(吻端から尾部まで)から右側に2mm、ブレグマ線(脳の中心線に垂直なブレグマ上に描かれる線)から尾部側に0.8mmの特定の箇所で、ラットの脳に脳組織の2.9mmの深さで挿入した。注入カニューレ(Invivo 1、VA)は、ガイドカニューレの端から側脳室内にさらに0.5mm突き出ていた。1μlの2mM MOPS、pH7.4でのグラニンおよび/またはテスト分子の最初の注入は、ラットが3歳のときに前述の脳の右心室に行われ、2回目の注入はその1週間後に行われた。対照群ラットには、実験群と同時に1μlの2mM MOPS、pH7.4を注入した。
【0068】
学習能力と記憶力のテスト:注入されたグラニンがラットに及ぼす影響を確認するために、各ラットの学習能力と記憶力をテストする目的で、モリス水迷路実験を行った。水タンクの直径は135cm、水深は23cmで、ラットが1つの象限において境界壁から15cm離れて脱出できる逃避台(直径12cm)が配置される。ラットが19~20週齢(4.5ヶ月)のときに、各ラットの学習能力をテストした。このため、正常に見えた各グループ(上記のグループ1~4参照)の7匹のラットは、生後18週~19週の間に7~8日間(1トレーニング/1日または2日間)にわたって総5回泳いで逃避台を見つける訓練を行った。訓練後には、逃避台を1.5cmの乳白色の水(合計深度24.5cm)の下で見えなくなるようにし、ラットが泳いで逃避台に到達できるようにして、各ラットが逃避台に到達するまでに必要な時間を測定した。各ラットが逃避台に到着するのに必要な時間は、各ラットの学習能力を反映するように解釈される。記憶力テストでは、ラットをして3日間でさらに3回(1日1回)逃避台の位置を学習せしめるようにし、その後、タンク全体を180回転させることにより、隠された逃避台を訓練時の環境に対して反対の位置に再配置した。ラットが、逃避台が配置されていた場所から出発して泳ぎ、再配置された逃避台を見つけるとき、逃避台の元の場所をより明確に記憶していたラットは、新しく移転した逃避台を見つける前に、元の場所で長時間逃避台を探索し続けた。ここでは、ラットが新しく配置された、水タンク内の逃避台を見つけるために費やした時間を、各ラットの記憶の尺度として使用した。
【0069】
図29は.注入カニューレが頭に取り付けられたラットと、注入が行われた箇所を示すラットの前頭部の図を示されている。(右)ラットの脳室内は青色で示され、注入カニューレの位置は右脳室内の灰色で示されている。図30は、モリス水迷路試験で各グループのラットが費やした探索時間を示す。各グループのラットがモリス水迷路試験で逃避台に脱出するのに費やした平均時間(秒単位)は、標準誤差(nは各グループのラットの数)で表された。グループ4のラットには治療薬候補と一緒にグラニンと金属イオンを同時に注入したにもかかわらず、グループ1および4のラットは逃避台の位置を確認するのに7~8秒を費やし、グループ2のラットは27秒を費やし、グループ3のラットは37秒を費やしたことに注意を要する。これらの結果は、フラボノイドとスチルベノイドのメンバーが、グラニンがラットに有害な影響を及ぼすことを完全に防止したことを示し、すなわち、アルツハイマー病の特徴的な症状である、学習能力と記憶を損なうことを完全に防止したことを示す。
【0070】
図31は、各グループのラットの代表的な水泳軌跡を示す。左上の数字はグループ番号を示し、トレース(trace)は各グループのラットの水泳軌跡を示す。左下の象限にある小さな円は、右上の象限にある大きな円で示された逃避台を見つけるためにラットが泳ぎ始めた場所を示す。
【0071】
図32は、再配置された逃避台を見つけるために費やされた時間を示す。モリス水迷路試験における逃避台の位置についてラットをして十分習熟せしめた後、水タンクを180°回して水タンク内の逃避台を反対側の象限に再配置し、ラットが再配置された逃避台を見つけるのに必要な時間を、各試行の間に1日のギャップを置いて3つの異なる試行で測定した。数字はグループ番号を示し、探索の平均時間(秒)は標準誤差バーで表される。グループ1とグループ4のラットは、最初の試行で逃避台を元の場所で見つけようと長い時間(>40秒)費やしたが、逃避台が新しい場所に移動されたことに気づいた後には、探索時間が大幅に短縮され、3回目の試行では6~8秒で逃避台を見つけることができたことに注意を要する。しかし、グループ2とグループ3のラットは、最初の試行で21~32秒、3回目の試行で16~25秒を費やしており、これは、明確な記憶力の欠如を示している。
【0072】
図33は、各グループのラットの代表的な水泳軌跡を示す。左上の数字はグループ番号を示し、ピンク色は各グループのラットの水泳軌跡を示す。右上の象限にある小さな円は、左下の象限にある大きな緑色の円で示された逃避台を見つけるためにラットが泳ぎ始めた場所を示す。この結果は、グループ1および4のラットがグループ2および3のラットよりも著しく優れた記憶力を持っていることを明らかに示し、注入したグラニンの有害な(神経変性)効果だけでなく、グラニン誘導神経変性の阻害剤(治療薬候補)として共に注入したフラボノイドとスチルベノイドの顕著な効果も明らかに示している。
【0073】
図34は、グラニンを注入した一部のラットの異常な姿勢を示す。グループ3の一部のラットは、グラニンと金属イオン(Cu2+、Zn2+およびFe2+)を注入してから2週間後に首のゆがみ(skewed neck)を示したが、グループ2の一部のラットは、グラニンを注入してから4~5週間後に首のゆがみを示し始めた。グループ1及びグループ4のラットは、1匹も異常な姿勢を見せず、年齢が上がるまで(約18ヶ月のときに犠牲にされるまで)、正常で健康そうに見えた。
【0074】
図35は、グループ2(グラニン注入)における首がゆがんだラットの収縮した海馬(右半分)を示す。首がゆがんだグループ2(グラニン注入)のラットを、グラニンを注入してから10週間後(首のゆがみが現れてから6週間後、生後6ヶ月後)に犠牲にし、脳組織を調べた。驚くべきことに、学習と記憶に関与する海馬の右半分は、左半分と比較してかなり収縮していることが示された。右側は、これらのラットの右脳室内にグラニンが注入された場所である(図29参照)。収縮した脳(海馬を含む)がアルツハイマー病患者の特徴であることを考えると、グラニンがこれほど短時間(グラニンの注入後10週間)で若いラット(6ヶ月齢)の脳を収縮できることは驚くべきことである。
【0075】
上記の実験とデータから、1)アルツハイマー病の病原体(pathogenic agents)として機能するグラニン;2)脳内でグラニンの凝集を誘導することにより、アルツハイマー病の病因における補因子(cofactor)として機能するCu2+、Zn2+およびFe2+などの金属イオン;3)グラニン凝集を阻害および/または抑制する、または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離する能力を介してアルツハイマー病の治療薬候補(drug candidate)として機能するフラボノイド分子、スチルベノイド分子、およびその誘導体のメンバー、ならびに他の幾つかの分子;が確認され、また、4)ラットにおけるアルツハイマー病のような症状を阻害する因子(agents)として機能するフラボノイド分子とスチルベノイド分子のメンバーがさらに確認される。
【0076】
上記の実験とデータから、以下の因子(agent)が、アルツハイマー病および関連する神経変性疾患の治療剤として役立つ可能性があることを提案する:1)脳内でZn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+などの金属イオンの増加を阻害または抑制する任意の分子または因子、2)グラニンと相互作用してグラニンの凝集を防止または抑制する任意の分子(天然物、タンパク質、核酸など)、および3)グラニンから金属イオンを除去できる金属イオンのキレーター(chelator)および任意の因子(agent)。
【0077】
実施例5
In VitroおよびIn Vivo実験
材料および方法
材料:主要なグラニンタンパク質であるクロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)およびセクレトグラニンII(SgII)は、ウシ副腎髄質の分泌顆粒から精製された(Park et al.,2002;Yoo,1995;Yoo and アルバネシ、1990年)。Chelex 100はBio-Rad(米国)製であり、他の化学物質は市販されている最高純度のものであった。
【0078】
凝集実験:凝集試験に先たち、グラニン凝集体を解離させるために、Chelex 100(Bio-Rad、米国)などのキレート剤を用いた広範囲な処理により、グラニンから、精製過程でグラニンと相互作用した金属イオンを除去する必要がある。金属誘導凝集試験では、2mM MOPS(pH7.4)でChelex 100処理CGA、CGBまたはSgIIを、CuCl、FeClおよびZnClなどの濃縮金属イオンで滴定した。凝集は、ベックマン(Beckman)分光光度計を使用して濁度の変化を測定することにより観察された。すべての測定は24Cで行われた。
【0079】
分子動的光散乱:異なる溶液条件でグラニンがモノマー-オリゴマー(monomer-to-oligomer)状態であるか高分子量凝集状態であるかを判断するために、ワイアットテクノロジー(Wyatt Techology:サンタバーバラ,CA、米国)社のダイナプロナノスター(DynaPro NanoStar)を用いて24℃でグラニンの動的光散乱実験を行い、その結果を、会社が提供するプログラム(Dynamics 7.5.0)により分析した。
【0080】
動物実験:動物実験では、体重が約280gから300gの8週齢のWistarラットを地元のブリーダーから購入し、特定病原体フリー(specific pathogen free:SPF)動物施設に収容し、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)の規則と規定に厳密に準拠して使用した。
【0081】
ラット脳への定位脳室内(Stereotaxic Intracerebroventricular)注入:本実験では、Invivo 1(VA、米国)から購入したガイドカニューレ(guide cannula)を、脳の中心線(吻端から尾部まで)から右側に2mm、ブレグマ線(脳の中心線に垂直なブレグマ上に描かれる線)から尾部側に0.8mmの特定の箇所で、ラットの脳に脳組織の2.9mmの深さで挿入した。注入カニューレ(Invivo 1、VA)は、ガイドカニューレの端から側脳室内にさらに0.5mm突き出ていた。1μlの2mM MOPS、pH7.4でのグラニンおよび/またはテスト分子の最初の注入は、ラットが3歳のときに前述の脳の右心室に行われ、2回目の注入はその1週間後に行われた。対照群ラットには、実験群と同時に1μlの2mM MOPS、pH7.4を注入した。
【0082】
学習能力と記憶力のテスト:注入されたグラニンがラットに及ぼす影響を確認するために、各ラットの学習能力と記憶力をテストする目的で、モリス水迷路実験を行った。水タンクの直径は135cm、水深は23cmで、ラットが1つの象限において境界壁から15cm離れて脱出できる逃避台(直径12cm)が配置される。ラットが19~20週齢(4.5ヶ月)のときに、各ラットの学習能力をテストした。このため、正常に見えた各グループ(上記のグループ1~4参照)の7匹のラットは、生後18週~19週の間に7~8日間(1トレーニング/1日または2日間)にわたって総5回泳いで逃避台を見つける訓練を行った。訓練後には、逃避台を1.5cmの乳白色の水(合計深度24.5cm)の下で見えなくなるようにし、ラットが泳いで逃避台に到達できるようにして、各ラットが逃避台に到達するまでに必要な時間を測定した。各ラットが逃避台に到着するのに必要な時間は、各ラットの学習能力を反映するように解釈される。記憶力テストでは、ラットをして3日間でさらに3回(1日1回)逃避台の位置を学習せしめるようにし、その後、タンク全体を180回転させることにより、隠された逃避台を訓練時の環境に対して反対の位置に再配置した。ラットが、逃避台が配置されていた場所から出発して泳ぎ、再配置された逃避台を見つけるとき、逃避台の元の場所をより明確に記憶していたラットは、新しく移転した逃避台を見つける前に、元の場所で長時間逃避台を探索し続けた。ここでは、ラットが新しく配置された、水タンク内の逃避台を見つけるために費やした時間を、各ラットの記憶の尺度として使用した。
【0083】
脳の組織化学的実験:グラニンを注入したラットの脳がグラニンの影響を受けるかどうかを調べるために、ラットの脳を摘出して薄切片に切り、染色して調べた。
【0084】
結果
アピゲニンによる、Zn2+誘導クロモグラニンB凝集の防止。図36に示す実験結果では、Zn2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μMアピゲニンによってほとんど抑制された。Zn2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、アピゲニンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、アピゲニンは、Zn2+誘導クロモグラニンB凝集をほとんど阻害した。
【0085】
アピゲニンによる、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図37に示す実験結果では、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMアピゲニンによって完全に抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、アピゲニンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、アピゲニンは、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集を完全に阻害した。
【0086】
タンゲレチンによる、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の防止。図38に示す実験結果では、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMのタンゲレチンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、タンゲレチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、タンゲレチンは、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集を完全に阻害した。
【0087】
タンゲレチンによる、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図39に示す実験結果では、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMタンゲレチンによってほとんど抑制された。Cu2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、タンゲレチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、タンゲレチンは、Cu2+誘導クロモグラニンA凝集をほとんど阻害した。
【0088】
ケルセチンによる、Cu2+誘導クロモグラニンB凝集の防止。図40に示す実験結果では、Cu2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)(0.06μM)は、pH7.4で1μMケルセチンによって完全に抑制された。Cu2+濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ケルセチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、ケルセチンは、Cu2+誘導クロモグラニンB凝集を完全に阻害した。
【0089】
Fe2+によってセクレトグラニンIIが凝集されていることをケルセチンが遮断した。図41は、Fe2+によってセクレトグラニンII(0.005mg/ml)を(0.07μM)が凝集されていることを1μM ケルセチンが完全に抑制する(pH7.4)を示す。Fe2+濃度の増加に伴うセクレトグラニンIIの凝集は、黒丸でケルセチン存在下で行われたウォンで示した。
ケルセチンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の防止。図41に示す実験結果では、Fe2+誘導セクレトグラニンIIの凝集(0.005mg/ml)(0.07μM)は、pH7.4で1μMケルセチンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ケルセチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、ケルセチンは、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集を完全に阻害した。
【0090】
フィセチンによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図42に示す実験結果では、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMのフィセチンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンA凝集は黒い線(黒丸)で表され、フィセチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、フィセチンは、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集をほとんど阻害した。
【0091】
フィセチンによる、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集の防止。図43に示す実験結果では、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μMフィセチンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるセクレトグラニンIIの凝集は黒い線(黒丸)で表され、フィセチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、フィセチンは、Fe2+誘導セクレトグラニンII凝集を完全に阻害した。
【0092】
ミリセチンによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図44に示す実験結果では、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)(0.1μM)は、pH7.4で1μMミリセチンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ミリセチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、ミリセチンは、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集を完全に阻害した。
【0093】
ミリセチンによる、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集の防止。図45に示す実験結果では、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μMミリセチンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンBの凝集は黒い線(黒丸)で表され、ミリセチンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、ミリセチンは、Fe2+誘導クロモグラニンB凝集を完全に阻害した。
【0094】
モリンによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図46に示す実験結果では、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μMモリンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表されるが、モリンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、モリンは、Fe2+誘導クロマグラニンA凝集を完全に阻害した。
【0095】
モリンによる、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図47に示す実験結果では、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μMモリンによってほとんど抑制された。Zn2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、モリンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、モリンは、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集をほとんど阻害した。
【0096】
5,7-ジメトキシフラボンによる、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図48に示す実験結果では、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μMの5,7-ジメトキシフラボンによってほとんど抑制された。Zn2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、5,7-ジメトキシフラボンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、5,7-ジメトキシフラボンは、Zn2+誘導クロモグラニンA凝集をほとんど阻害した。
【0097】
5,7-ジメトキシフラボンによる、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集の防止。図49に示す実験結果では、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集(0.005mg/ml)は、pH7.4で1μM5,7-ジメトキシフラボンによって完全に抑制された。Fe2+の濃度の増加によるクロモグラニンAの凝集は黒い線(黒丸)で表され、5,7-ジメトキシフラボンの存在下では灰色の線(白丸)で表される。この実験に基づくと、5,7-ジメトキシフラボンは、Fe2+誘導クロモグラニンA凝集を完全に阻害した。
【0098】
図50は、20μMのCu2+および1μMの毒性阻害剤ルテオリンの存在下での各グラニンの細胞毒性を示す。20μMのCu2+の存在下および1μMルテオリン(金属誘導グラニン毒性阻害剤の一つ)の追加存在下での、各グラニン(0.1μMクロモグラニンA、0.06μMクロモグラニンB、および0.07μMセクレトグラニンII)の細胞毒性を、PC12細胞及びMTTアッセイを用いて測定した。金属誘導グラニン凝集の阻害剤の1つであるルテオリンは、実質的にグラニン誘導毒性を停止させた。図11から図26および図36から図49に示すように、金属誘導グラニン凝集の阻害についてテストされた他のフラボノイド、スチルベノイドおよび他の分子も、他の実験で見られるように、同一の細胞アッセイ(図示せず)で同様の毒性阻害結果を示し、これらの阻害剤分子の有効性をアルツハイマー病の強力な治療薬候補として予測した。
【0099】
図51は、脳室内注入後2.5ヶ月が経過した後、モリス水迷路試験において各グループのラットが費やした探索時間を示す。各グループのラットが逃避台に脱出するまでに費やした平均時間(秒単位)は、標準誤差(nは各グループのラットの数)で表された。グループ1および4のラットは逃避台の位置を確認するのに6.0~6.5秒を費やしたのに対し、グループ2のラットは16.8秒を費やし、グループ3のラットは13.3秒を費やした。これは、グループ3のラットがグループ2のラットよりも少し早くグランン誘導毒性から回復したことを意味する。これらの実験に基づくと、フラボノイドとスチルベノイドのメンバーは、グラニン注射後2.5ヶ月経過した時点でも、アルツハイマー病の特徴的な症状である学習能力や記憶力の低下など、グラニンがラットに及ぼす有害な影響を完全に防止した。
【0100】
図52は、図51の各グループのラットの代表的な水泳軌跡が示す。左上の数字はグループ番号を示し、トレースは各グループのラットの水泳軌跡を示す。左下の象限にある小さな円は、右上の象限にある大きな円で示された逃避台を見つけるためにラットが泳ぎ始めた場所を示す。
【0101】
図53及び図54は、アルツハイマー病のような症状がある場合とない場合の10.5ヶ月齢のラットの海馬の前部(frontal section)を示す。図53は、10.5ヶ月齢(グラニン注入後7.5ヶ月)のラットの脳部位(brain section)をヘマトキシリンで染色し、コントロール群(グループ1)、グラニン注入群(グループ2)、グラニン及び金属イオン注入群(グループ3)、および、グラニン、金属イオン及び分解化合物注入群(グループ4)のラットの海馬を比較したものである。グループ2のラットの海馬は、死細胞の徴候である多数の大きな空洞(hollow space)を示し、グループ3のラットの海馬にも同様に観察される。コントロール群(グループ1)のラットの海馬における死細胞の徴候は、グループ2および3のラットに比べて有意に少なかった。さらに、グループ4のラットの海馬には、空洞がほとんどなく、コントロール群のラットのそれよりもはるかに少なかったが、これは、グループ4のラットの海馬の完全性が十分に保存されていることを示す。図54は、図53からの海馬のほぼ同じ領域の高倍率ビューを示す(バー=100μm)。
【0102】
図55は、アルツハイマー病のような症状がある場合とない場合の10.5ヶ月齢のラットの脳皮質の前部を示す。10.5ヶ月齢のラットの脳部位をヘマトキシリンで染色し、コントロール群(グループ1)、グラニン注入群(グループ2)、グラニン及び金属イオン注入群(グループ3)、および、グラニン、金属イオン及び分解化合物注入群(グループ4)のラットの脳皮質を比較した。グループ2のラットの脳皮質は、死細胞の徴候である多数の大きな空洞を示し、グループ3のラットの脳皮質にも同様に観察された。海馬の場合と同様に、コントロール群(グループ1)のラットの脳皮質における死細胞の徴候は、グループ2および3のラットに比べて有意に少なかった。しかし、グループ4のラットの脳皮質には、空洞がほとんどなく、コントロール群のラットのそれよりもはるかに少なかった。グループ4のラットには、脳皮質の完全性が十分に保存されていた(バー=100μm)。
【0103】
図56は、アルツハイマー病のような症状がある場合とない場合の10.5ヶ月齢のラットの脳組織密度の比較を示す。アルツハイマー病のような症状のラットとそうではないラットでは、脳組織密度に大きな違いがあった。アルツハイマー病のような症状を発現するラット(グループ2および3)の脳組織密度は、コントロール群のラットに比べて有意に減少して約10~25%減少した。グループ4のラットの脳組織密度は約3~4%上昇し、グラニンと金属イオンと共に注入された分解化合物が脳細胞の完全性を保護したことを示した。データは、脳皮質と海馬の異なる領域の4つの測定値の平均であり、コントロールに対して平均±seで表された。
【0104】
図57は、クロモグラニンA特異的抗体により、10.5ヶ月齢のラットの海馬の免疫染色を示す。10.5ヶ月齢のラットの脳部位をクロモグラニンA特異抗体で免疫染色し、4つのグループのラットの海馬を比較した。海馬および脳皮質には多数のクロモグラニンA含有老人斑(plaques)があった(図示せず)。しかし、グループ1および2のラットでは、グループ3および4のラットよりもクロモグラニンA含有老人斑がはるかに多かったが、グループ1のラットの老人斑は有意に小さかった。また、クロモグラニンA含有老人斑と死細胞の徴候である脳組織の穴は、グループ2および3の方がグループ1および4よりも大きかった。グループ3の脳のグラニン含有老人斑は特に最も大きく、多くの場合、空洞に絶縁されているように見えた。グループ4のラットにおけるクロモグラニンA含有老人斑はまれであり、脳組織はコントルール群の脳組織よりも穴が少なく、十分に保存されているように見えた(バー=50μm)。
【0105】
図58は、クロモグラニンB特異的抗体により、10.5ヶ月齢のラットの海馬の免疫染色を示す。10.5ヶ月齢のラットの脳部位をクロモグラニンB特異抗体で免疫染色し、4つのグループのラットの海馬を比較した。海馬および脳皮質には多数のクロモグラニンB含有老人斑があった(図示せず)。グループ1および2のラットでは、グループ3および4のラットよりもクロモグラニンB含有老人斑がはるかに多かったが、グループ1のラットの老人斑は有意に小さかった。クロモグラニンB含有老人斑と脳組織の穴は、グループ2および3の方がグループ1および4よりも大きかった。グループ3の脳のグラニン含有老人斑は最も大きく、多くの場合、空洞に絶縁されているように見えた。クロモグラニンAと同様に、グループ4のラットにおけるクロモグラニンB含有老人斑はまれであり、脳組織はコントロール群の脳組織よりも穴が少なく、十分に保存されているように見えた(バー=50μm)。
【0106】
図59は、セクレトグラニンII特異的抗体により、10.5ヶ月齢のラットの海馬の免疫染色を示す。10.5ヶ月齢のラットの脳部位をセクレトグラニンII特異抗体で免疫染色し、4つのグループのラットの海馬を比較した。海馬および脳皮質には多数のセクレトグラニンII含有老人斑があった(図示せず)。グループ1および2のラットでは、グループ3および4のラットよりもセクレトグラニンII含有老人斑がはるかに多かったが、グループ1のラットの老人斑は有意に小さかった。セクレトグラニンII含有老人斑と脳組織の穴は、グループ2および3の方がグループ1および4よりも大きかった。前述したように、グループ3の脳のグラニン含有老人斑は大きく、コンパクトであり、多くの場合、空洞に絶縁されているように見えた。他のグラニンと同様に、グループ4のラットにおけるセクレトグラニンII含有老人斑はまれであり、脳組織はコントロール群の脳組織よりも穴が少なく、十分に保存されているように見えた(バー=50μm)。
【0107】
図60は、アルツハイマー病のような症状がある場合とない場合の11.5ヶ月齢のラットの活動性の比較を示す。ラットの活動性は、スピニングホイールを使用して測定され、各ラットの活動時間は、各ラットがホイールを回転させている時間であった。さらに、各ラットが90前後に動いたときにホイールにしがみつくことができる時間の長さも活動として見なされた。コントロール群ラット(グループ1)は、2分間のうち17.5秒間活動した。アルツハイマー病のような症状があるラット(グループ2および3)は、それぞれ11.2秒間および14.2秒間活動した。分解化合物を注入したグループ4のラットは、23.5秒間活動し、コントロール群のラットの活動よりも大幅に長くなった。各グループに4匹のラットがおり、測定は4回行われ、データは平均±seとして表される。
【0108】
この結果は、グラニンがアルツハイマー病のような症状を引き起こす可能性があることを示し、以下のアルツハイマー病の特徴を含む:1)学習能力の低下、2)記憶力の低下、3)脳細胞の喪失の加速、4)脳内のグラニン含有老人斑の発達の加速、および5)活動性の低減。この結果は、フラボノイドおよびスチルベノイドの4分子を同時に投与することにより、ラットにおけるグラニン誘導アルツハイマー病のような症状を抑制することを示す。
【0109】
低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物であって、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも2つを含む、組成物。
【0110】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む、請求項1に記載の組成物。
【0111】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【0112】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、およびチルホスチンAG1478を含む、請求項1に記載の組成物。
【0113】
前記グラニンが、クロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【0114】
動物の神経系において金属イオンZn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+の1つ以上を低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤(agent)をさらに含み、前記薬剤は、金属タンパク質、Zn2+結合および隔離分子、カゼイン、アルブミン、ジンクフィンガー転写因子、Cu2+結合および隔離分子、セルロプラスミン、カゼイン、アルブミン、Fe2+結合および隔離分子、カルモジュリン、トロポニン、フェリチン、トランスフェリン、ラクトフェリン、およびアントシアニンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【0115】
Zn2+、Cu2+またはFe2+から選択される金属イオンのキレーター(metal ion chelator)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【0116】
前記組成物が、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するのに有効である、請求項1に記載の組成物。
【0117】
低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するための組成物であって、i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、およびフィセチンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロール、ピセアタンノリン、ピノシルビン、プテロスチルベン、アストリンギン、およびピセイドから選択されるスチルベノイド;iii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、カテキン、ガロカテキン、カテキン3-ガレート、ガロカテキン3-ガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ガレート、テアルビジン、およびプロアントシアニジンから選択されるフラバン;およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478から選択される化合物;を含む、組成物。
【0118】
グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物であって、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも2つを含む、組成物。
【0119】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートを含む、請求項10に記載の組成物。
【0120】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478を含む、請求項10に記載の組成物。
【0121】
前記グラニンが、クロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の組成物。
【0122】
動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【0123】
Zn2+、Cu2+またはFe2+から選択される金属イオンのキレーターをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【0124】
前記組成物が、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するのに有効である、請求項10に記載の組成物。
【0125】
グラニンと金属イオンとの相互作用を阻害するための組成物であって、i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、およびモリンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロール、ピセアタンノリン、ピノシルビン、プテロスチルベン、アストリンギン、およびピセイドから選択されるスチルベノイド;iii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、カテキン、ガロカテキン、カテキン3-ガレート、ガロカテキン3-ガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ガレート、テアルビジン、およびプロアントシアニジンから選択されるフラバン;およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478から選択される化合物;を含む、組成物。
【0126】
低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を含む、認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための薬学的組成物。
【0127】
認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための薬学的組成物であって、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも2つを含む、組成物。
【0128】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0129】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートを含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0130】
スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478を含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0131】
前記グラニンが、クロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上を含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0132】
動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0133】
Zn2+、Cu2+またはFe2+から選択される金属イオンのキレーターをさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0134】
前記組成物が、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するのに有効である、請求項19に記載の薬学的組成物。
【0135】
認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための薬学的組成物であって、i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、およびモリンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロール、ピセアタンノリン、ピノシルビン、プテロスチルベン、アストリンギン、およびピセイドから選択されるスチルベノイド;iii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、カテキン、ガロカテキン、カテキン3-ガレート、ガロカテキン3-ガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ガレート、テアルビギン、およびプロアントシアニジンから選択されるフラバン;およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478から選択される化合物;を含む、組成物。
【0136】
細胞毒性を低減または阻害する方法であって、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を投与するステップを含む、方法。
【0137】
細胞毒性を低減または阻害する方法であって、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための組成物を投与するステップを含み、前記組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートのうちの少なくとも4つを含む、方法。
【0138】
認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための方法であって、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するための有効量の薬学的組成物を投与するステップを含み、前記組成物が、少なくとも次の2つ:スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも2つを含む、方法。
【0139】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、およびチルホスチンAG1478の少なくとも4つを含む、請求項30に記載の方法。
【0140】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートを含む、請求項30に記載の方法。
【0141】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478を含む、請求項30に記載の方法。
【0142】
前記薬学的組成物が、クロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上のグラニンを含む、請求項30に記載の方法。
【0143】
前記薬学的組成物が、動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【0144】
前記薬学的組成物が、Zn2+、Cu2+またはFe2+から選択される金属イオンのキレーターをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【0145】
前記方法が、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害する、および/または高分子量凝集形態を低分子量形態に解離するのに有効である、請求項30に記載の方法。
【0146】
認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための方法であって、i)スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、およびモリンから選択されるアントキサンチン;ii)レスベラトロール、ピセアタンノリン、ピノシルビン、プテロスチルベン、アストリンギン、およびピセイドから選択されるスチルベノイド;iii)エピガロカテキン3-ガレート(EGCG)、カテキン、ガロカテキン、カテキン3-ガレート、ガロカテキン3-ガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキン3-ガレート、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、テアフラビン-3,3’-ガレート、テアルビジン、およびプロアントシアニジンから選択されるフラバン;およびiv)コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478から選択される化合物;を含む薬学的組成物の有効量を投与するステップを含む、方法。
【0147】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む、請求項38に記載の方法。
【0148】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートを含む、請求項38記載の方法。
【0149】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478を含む、請求項38に記載の方法。
【0150】
前記薬学的組成物が、クロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上のグラニンを含む、請求項38に記載の方法。
【0151】
前記薬学的組成物が、動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【0152】
前記薬学的組成物が、Zn2+、Cu2+またはFe2+から選択される金属イオンのキレーターをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【0153】
前記方法が、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するのに有効である、請求項38に記載の方法。
【0154】
被験体における認知症またはアルツハイマー病の治療または予防のための方法であって、被験体の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤を含む薬学的組成物の有効量を投与するステップを含む、方法。
【0155】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、タンゲレチン、ミリセチン、フィセチン、モリン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478のうちの少なくとも4つを含む、請求項46に記載の方法。
【0156】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、レスベラトロール、およびエピガロカテキン3-ガレートを含む、請求項46に記載の方法。
【0157】
前記薬学的組成物が、スクテラレイン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、エピガロカテキン3-ガレート、コルジセピン、5,7-ジメトキシフラボン、およびチルホスチンAG1478を含む、請求項46に記載の方法。
【0158】
前記薬学的組成物が、クロモグラニンA(CGA)、クロモグラニンB(CGB)、セクレトグラニンII(SgII)およびセクレトグラニンIII(SgIII)のうちの1つ以上のグラニンを含む、請求項46に記載の方法。
【0159】
前記薬学的組成物が、動物の神経系において、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンを低減、阻害、抑制または隔離する1つ以上の薬剤をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【0160】
前記薬学的組成物が、Zn2+、Cu2+またはFe2+から選択される金属イオンのキレーターをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【0161】
前記方法が、動物において、低分子量形態から高分子量凝集形態へのグラニンの凝集を阻害するのに有効である、請求項46に記載の方法。
【0162】
アルツハイマー病の治療薬候補をスクリーニングする方法であって、Zn2+、Cu2+、Fe2+およびCa2+から選択される金属イオンによって誘導される1つ以上のグラニンの凝集を阻害および/または抑制するか、または凝集されたグラニンを解離する能力に基づいて、治療薬候補を選択するステップを含む、方法。
【0163】
本明細書では、本発明を実施するために発明者に知られている最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態について説明する。もちろん、これらの説明された実施形態の変形は、前述の記載を読むことで当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に使用することを予測しており、本発明者は、本明細書に具体的に記載された以外の方法で本発明を実施することを意図する。したがって、本発明は、適用可能な法律により許可された、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修正および等価物を含む。その上、可能なすべての変形における上記の実施形態の任意の組み合わせは、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、本発明に含まれる。
【0164】
本発明の代替の実施形態、要素、またはステップのグループ化は、制限として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、または本明細書に開示される他のグループのメンバーとの任意の組み合わせで参照および主張され得る。グループの1つ以上のメンバーは、利便性および/または特許性の理由から、グループに含まれるか、グループから削除されることが予想される。そのような包含または削除が発生すると、本明細書は、変更されたグループを含むと見なされ、したがって、添付の請求項で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たすものとみなされる。
【0165】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特性、品目、数量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数字は、すべての場合に「約」という用語によって変更されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そのように修飾された特性、アイテム、数量、パラメータ、プロパティ、または用語が、記載された特性、アイテム、数量、パラメータ、プロパティ、または用語の値の上下10パーセントの範囲を包含することを意味する。したがって、別段の記載がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、変動し得る近似値である。少なくとも、そして均等論の適用をクレームの範囲に限定する試みとしてではなく、各数値表示は、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、かつ、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および数値は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値範囲および数値は、可能な限り正確に報告されている。ただし、数値の範囲または値には、それぞれのテスト測定で見られる標準偏差から必然的に生じる特定のエラーが本質的に含まれている。本明細書における数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の数値を個々に参照する簡略法として役立つことを単に意図している。本明細書で別段の指示がない限り、数値範囲の各個々の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0166】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、任意の適切な順序で実行できる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、他に請求される本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0167】
本明細書に開示される特定の実施形態は、言語からなるか、または本質的に言語からなることを使用する特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において使用される場合、出願時または補正で加えられたかにかかわらず、「からなる」という移行用語は、特許請求の範囲に記載されていない要素、ステップまたは成分を排除する。「から本質的になる」という移行用語は、特定の材料またはステップ、および基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさず、特許請求の範囲を限定する。そのように請求された本発明の実施形態は、本明細書において本質的または明示的に説明され、有効にされる。
【0168】
本明細書において参照および識別されるすべての特許、特許公報および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得る刊行物に記載された組成物および方法論を、説明および開示する目的で、その全体が参照により、別個におよび明示的に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、単に本出願の出願日前の開示のためにのみ供される。この点に関して、発明者が先行発明に起因して、または他の何らかの理由によって、当該開示よりも先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付または表現に関するすべての記述は、出願人が利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性についての承認を構成するものではない。

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