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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】軟質塩化ビニル系樹脂複合シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240208BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240208BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20240208BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20240208BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20240208BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240208BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B32B27/30 101
B32B5/02 A
C08G69/40
D01F6/60 351Z
D01F6/60 361E
D03D1/00 Z ZAB
D03D15/283
D04B1/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022017789
(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公開番号】P2023115533
(43)【公開日】2023-08-21
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-84739(JP,A)
【文献】特開2013-6963(JP,A)
【文献】特表2015-514150(JP,A)
【文献】特表2017-524576(JP,A)
【文献】特表2017-523994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D04B 1/00-21/20
D03D 1/00-27/18
D01F 1/00-9/04
C06M 13/00-15/715
C08G 69/00-69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤を少なくとも含んでなる可撓性被覆層が、布帛の1面以上に積層された軟質塩化ビニル系樹脂複合シートであって、前記布帛が、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維からなる糸条を織編要素に含むことを特徴とする軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【化1】
【請求項2】
前記フラン系ポリアミド〔化1〕が、アルキレンジアミン〔化2〕と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミドである請求項1に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【化2】
【化3】
【請求項3】
前記アルキレンジアミン〔化2〕、及び/または、前記2,5-フランジカルボン酸〔化3〕が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含む、請求項2に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【請求項4】
前記アルキレンジアミン〔化2〕が、1,4-テトラメチレンジアミン(n=4)、1,5-ペンタメチレンジアミン(n=5)、1,10-デカメチレンジアミン(n=10)、から選ばれた1種以上である請求項3に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【請求項5】
前記布帛が、アルキレンジアミン〔化2〕と、セバシン酸〔化4〕との重縮合によるポリアミド繊維〔化5〕からなる糸条をさらに含む請求項1~4の何れか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【化4】
【化5】
【請求項6】
前記アルキレンジアミン〔化2〕、及び/または、前記セバシン酸〔化4〕が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含む、請求項5に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【請求項7】
前記アルキレンジアミン〔化2〕が、1,4-テトラメチレンジアミン(n=4)、1,5-ペンタメチレンジアミン(n=5)、1,10-デカメチレンジアミン(n=10)、から選ばれた1種以上である請求項6に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【請求項8】
前記可塑剤が、フタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕、セバシン酸ジアルキルエステル化合物〔化7〕、フランジカルボン酸アルキルエステル化合物〔化8〕、及びポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕、から選ばれた1種以上である請求項1~7の何れか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
式中Rはアルキル基
【請求項9】
前記可塑剤が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含む、請求項8に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【請求項10】
前記塩化ビニル系樹脂が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、医療用陰圧テント、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ビジュアルファサード、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いる軟質塩化ビニル樹脂製ターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いる軟質塩化ビニル樹脂製帆布、及び建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、日除ファサードなどに用いる軟質塩化ビニル樹脂製メッシュシートなどに用いる軟質塩化ビニル樹脂製の産業用複合シートに関する。より詳しくは、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマス繊維からなる糸条を織編要素に含む布帛を基材とするターポリン、帆布、及びメッシュシートなど、主として軟質塩化ビニル樹脂製の産業用複合シートに関し、特に産業用複合シートを構成する軟質塩化ビニル樹脂層の成分に、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマス塩化ビニル系樹脂、及び/または、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマス可塑剤を、少なくとも含む再生循環型の産業用複合シートに関する。本明細書においてバイオマスとは動植物由来を意味し、再生循環型とは主にカーボンニュートラル(動植物由来のカーボンリサイクル)、及びポリマーの解重合による再生モノマーを利用してのケミカルリサイクル(ポリマーの再生利用)を意味する。
【背景技術】
【0002】
大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ファサードシート、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いられるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いられる帆布、さらには建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ビジュアルファサードなどに用いられるメッシュシートなどの産業資材シートの基材には、主にポリエチレンテレフタレート(以下PET樹脂)から紡糸したポリエステル繊維糸条を織編要素とする布帛が汎用化されている。特に空隙率6~25%程度の布帛(織布)の両面に熱可塑性樹脂組成物フィルムを積層したものがターポリンで、空隙率0~10%程度の布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜化したものが帆布で、また空隙率15~70%程度の粗目織物の全面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、塗工物を皮膜化したものがメッシュシートである。これらの産業資材シート用の熱可塑性樹脂には、主に軟質塩化ビニル系樹脂(可塑剤で可塑化された塩化ビニル系樹脂)が用いられている。これらの産業資材シートによる膜構築物、特に大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)などでは、10~20年間、風雨、紫外線に晒された状態で使用されるため、軟質塩化ビニル系樹脂層は紫外線被曝で経年劣化を伴い、また基材のPET繊維布帛は湿熱による加水分解を生じて強度低下しており、使用後の産業資材シートからPET繊維布帛や軟質塩化ビニル系樹脂を資源回収しても、劣化で再利用できない代物であった。これらのリサイクルに適さない産業資材シート(膜構築物)で、特に軟質塩化ビニル系樹脂を含む廃材の焼却処理は、二酸化炭素ガス、塩素ガスの排出、ダイオキシン生成などの環境問題や健康被害が深刻なため、やむなく埋め立て処理されているのが実情である。
【0003】
近年、プラスチック製品の焼却で増大する二酸化炭素濃度の影響による地球温暖化(異常気象、風水害、水位上昇、生態系異常など)、崩壊劣化プラスチック(マイクロプラスチック粒子)による海洋汚染、海洋生物被害などの問題が切実となっていることで、プラスチック代替とプラスチック削減の意識が高まり、昨今では植物や植物由来のバイオマス資源の利用度を高めて環境負荷を軽減したカーボンニュートラルな循環型社会の構築を目指す取り組みが進められている。カーボンニュートラルとは、植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス燃料・樹脂の使用により、これらが燃焼して発生する二酸化炭素が自然に還り、その二酸化炭素が植物に吸収されることで、植物由来の燃料や樹脂が再生するサイクルの持続によって、大気中の二酸化炭素量を実質的に増やさないという地球温暖化防止の取り組みである。こうした脱石油製品の提唱によって、植物由来のバイオマス樹脂の実用化が検討され、例えば特許文献1の背景技術には、化石燃料由来の構成要素から作製されるメタ-アラミドは、繊維製品及びその他の物品に用いる繊維を含めた様々な用途に過去数十年にわたって使用されてきたが、メタ-アラミドの生物含有量を増加させて生物由来ポリマーとするには非常に限られた研究しかなされていないことが述べられ、特許文献1には、m-フェニレンジアミンを含む芳香族ジアミンと、フランジカルボン酸又はその誘導体を含む芳香族二酸又はその誘導体と、から得られるポリ(m-フェニレン2,5-フランカルボキシルアミド)、及びそれからなる繊維に関する発明が開示されている。しかしながら明細書には、m-フェニレンジアミンを含む芳香族ジアミンと、フランジカルボン酸又はその誘導体を含む芳香族二酸又はその誘導体に対して、生物由来モノマーとして調達するプロセス、手段など、問題提起に対する解決が一切記載されていない。また特許文献2には、ポリマー、複合材、金属、合金、ガラス、シリコン、セラミック、木材、および紙からなる群から選択される第1層と、第1層の少なくとも一部に配置されたフラン系ポリアミド層からなるガスバリア性多層構造体の発明が開示されているが、フラン系ポリアミド、及び第1層の材料を生物由来の資源から調達すること、及びそのプロセス、手段に関する記載はなされていない。しかしながら生物由来、かつカーボンニュートラルのポリマー設計を産業資材シートにも適用し、塩化ビニル系樹脂をバイオマス塩化ビニル系樹脂に転換し、また可塑剤もバイオマス可塑剤に転換して、さらに基材の繊維布帛もバイオマス繊維布帛に転換してオールバイオマス化することで、環境負荷を軽減したカーボンニュートラルな理想的循環型社会の構築の貢献となり得るが、今現在では、バイオマス塩化ビニル系樹脂、バイオマス可塑剤、バイオマス繊維布帛などを含んで構成された軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは存在していない。
【0004】
従ってバイオマス樹脂の開発が広く進み、多様な植物由来のモノマーがラインナップされることで、種々のバイオマス樹脂から紡糸された繊維による再生循環型のバイオマス布帛を得ることができ、これらは産業資材向けの複合シートの布帛用として、PET繊維と並んでポリアミド繊維(ナイロン)が有望視され、特に新規なバイオマスポリアミド繊維に期待が寄せられている。そしてさらに、バイオマス布帛を被覆する熱可塑性樹脂組成物フィルム、及び熱可塑性樹脂組成物皮膜などの構成素材についてもバイオマス化が波及して、特に軟質塩化ビニル樹脂組成物において、その主体成分である塩化ビニル樹脂、及び可塑剤のバイオマス化が推進されることによって、環境負荷を極限的に軽減した再生循環型設計の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-514150号公報
【文献】特表2017-524576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを(バイオマス)ポリアミド繊維からなる布帛に積層してなるターポリン、及び軟質塩化ビニル系樹脂組成物を(バイオマス)ポリアミド繊維からなる布帛に含浸してなる帆布、並びメッシュシートなどの軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの提供であり、特に布帛が、バイオマスボリアミド繊維によって構成されるもので、さらに軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、軟質塩化ビニル系樹脂組成物が、バイオマス塩化ビニル系樹脂及び/またはバイオマス可塑剤を少なくとも含む態様で、何れもカーボンニュートラル(再生循環型)要素を高比率で含む軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの提供を課題とする。カーボンニュートラル(再生循環型)要素を高比率で含む本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートによれば、これらの焼却処分時に発生する二酸化炭素が、カーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が燃焼で二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する循環により実質的に二酸化炭素を増加させない)要素を満たすことで、地球環境における二酸化炭素量の増加が抑止可能となって低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献することができるようになる。本発明においてバイオマスとは動植物由来を意味し、再生循環型とは主にカーボンニュートラル(動植物由来のカーボンリサイクル)、及びポリマーの解重合による再生モノマーを利用してのケミカルリサイクル(ポリマーの再生)を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤を少なくとも含んでなる可撓性被覆層が、布帛の1面以上に積層された軟質塩化ビニル系樹脂複合シートにおいて、布帛が(バイオマス)フラン系ポリアミド繊維からなる糸条を織編要素に含み、この布帛を(バイオマス)フラン系アミド繊維によって構成し、さらに軟質塩化ビニル系樹脂が、バイオマス塩化ビニル系樹脂及び/またはバイオマス可塑剤を少なくとも含む態様とすることで、カーボンニュートラル(再生循環型)要素を高比率で含む軟質塩化ビニル系樹脂複合シートが得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤を少なくとも含んでなる可撓性被覆層が、布帛の1面以上に積層された軟質塩化ビニル系樹脂複合シートであって、前記布帛が、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維からなる糸条を織編要素に含むことが好ましい。フラン系ポリアミドは、化学構造の繰返し単位中にフラン環を有するものである。また、糸条とは、長繊維の集合体による無撚または撚糸、短繊維の集合体による紡績糸(単糸、双糸、三子撚)を意味する。
【化1】
【0009】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記フラン系ポリアミド〔化1〕が、アルキレンジアミン〔化2〕と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミドであることが好ましい。
【化2】
【化3】
【0010】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記アルキレンジアミン〔化2〕、及び/または、前記2,5-フランジカルボン酸〔化3〕が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むことが好ましい。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に動植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出されるアルキレンジアミン〔化2〕、及び2,5-フランジカルボン酸〔化3〕は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。これによって本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、布帛を構成するフラン系ポリアミド〔化1〕繊維から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【0011】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記アルキレンジアミン〔化2〕が、1,4-テトラメチレンジアミン(n=4)、1,5-ペンタメチレンジアミン(n=5)、1,10-デカメチレンジアミン(n=10)、から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記布帛が、アルキレンジアミン〔化2〕と、セバシン酸〔化4〕との重縮合によるポリアミド繊維〔化5〕からなる糸条をさらに含むことができる。これは例えば、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維と、ポリアミド繊維〔化5〕による混織布帛において、布帛質量に占めるポリアミド繊維〔化5〕の比率が10~50質量%の混織(規則的交互配置、またはランダムな交互配置)が例示できる。また布帛を構成する経糸条群をフラン系ポリアミド〔化1〕繊維で構成し、緯糸条群をポリアミド繊維〔化5〕で構成してもよく、あるいは経糸条群をポリアミド繊維〔化5〕で構成し、緯糸条群をフラン系ポリアミド〔化1〕繊維で構成してもよい。
【化4】
【化5】
【0013】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記アルキレンジアミン〔化2〕、及び/または、前記セバシン酸〔化4〕が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むことが好ましい。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に動植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出されるアルキレンジアミン〔化2〕、及びセバシン酸〔化4〕は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。これによって本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、布帛を構成するポリアミド繊維〔化5〕繊維から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【0014】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記アルキレンジアミン〔化2〕が、1,4-テトラメチレンジアミン(n=4)、1,5-ペンタメチレンジアミン(n=5)、1,10-デカメチレンジアミン(n=10)、から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記可塑剤が、フタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕、セバシン酸ジアルキルエステル化合物〔化7〕、フランジカルボン酸アルキルエステル化合物〔化8〕、及びポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕、から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
式中Rはアルキル基
上記〔化6〕は、フタル酸とアルコール(n=4~12の整数)とのエステル化反応によって合成され、好ましくはフタル酸とアルコールが共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤、上記〔化7〕は、セバシン酸とアルコール(n=4~12の整数)とのエステル化反応によって合成され、好ましくはセバシン酸、及びアルコールが共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤、上記〔化8〕は、フランジカルボン酸とアルコール(n=4~12の整数)とのエステル化反応によって合成され、好ましくはフランジカルボン酸、及びアルコールが共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤、上記〔化9〕は、グリセリンと脂肪酸(n=2~10の整数)とのエステル化反応によって合成され、好ましくはグリセリン及び脂肪酸が共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤である。これによって、本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、それから発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス可塑剤が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【0016】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記可塑剤が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むことが好ましい。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、既に数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出された可塑剤は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。これによって本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、可塑剤から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【0017】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、前記塩化ビニル系樹脂が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むことが好ましい。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、既に数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出された塩化ビニル系樹脂は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、バイオマス可塑剤とバイオマス塩化ビニル系樹脂から構成されることが最も好ましいが、バイオマス可塑剤と非バイオマスの塩化ビニル系樹脂から構成された複合シート、または、非バイオマスの可塑剤とバイオマス塩化ビニル系樹脂から構成された複合シートであってもよい。これによって、本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、軟質塩化ビニル系樹脂から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする軟質塩化ビニル系樹脂が自然に還り、それを再度植物が吸収する循環)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カーボンニュートラル(再生循環型)要素を高度に含む軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの提供が可能となるので、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ビジュアルファサード、医療用陰圧テント、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いる帆布、及び建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、日除ファサードなどに用いるメッシュシートなどに広く有用である。そしてこれらの焼却処分時に発生する二酸化炭素がカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が燃焼で二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する循環により実質的に二酸化炭素を増加させない)要素を具備することで、地球環境における二酸化炭素量増加の抑止に寄与し、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献することが期待できる。本発明において再生循環型とは主にカーボンニュートラル(植物由来のカーボンリサイクル)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
カーボンニュートラル要素を有し、地球環境における二酸化炭素量増加の抑止に寄与し、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献できる本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤を少なくとも含んでなる可撓性被覆層が、布帛の1面以上に積層され、布帛がポリアミド繊維からなる糸条を織編要素に含む態様であって、1)布帛にバイオマス要素を有し、塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤にバイオマス要素を有さない「低カーボンニュートラル」グループ、2)布帛にバイオマス要素を有し、塩化ビニル系樹脂、または可塑剤にバイオマス要素を有する「中カーボンニュートラル」グループ、3)布帛にバイオマス要素を有し、塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤にバイオマス要素を有する「高カーボンニュートラル」グループを包含する。ここでバイオマス要素とは、植物由来物質を出発原料に合成されたポリアミド繊維(すなわち布帛)、塩化ビニル系樹脂、可塑剤などを意味し、植物由来物質であることは、これらの分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を有することで証明される。
【0020】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートに用いる布帛を構成する糸条は、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維(mは重合度)であり、特にフラン系ポリアミド〔化1〕が、アルキレンジアミン〔化2〕と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミドであることが好ましく、さらにアルキレンジアミン〔化2〕、及び/または、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むこと、すなわち天然物由来物質を出発原料に合成されたものであることが好ましく、バイオマス度100%のカーボンニュートラルの観点においてはアルキレンジアミン〔化2〕、及び2,5-フランジカルボン酸〔化3〕の双方に放射性炭素原子C-14を含むことがより好ましい。アルキレンジアミン〔化2〕として、n=整数で4~12のジアミンが好ましく、特に1,4-テトラメチレンジアミン(別名:1,4-ジアミノブタン)、1,5-ペンタメチレンジアミン(別名:1,5-ジアミノペンタン)、1,10-デカメチレンジアミン(別名:1,10-ジアミノデカン)、から選ばれた1種以上であることがバイオマス調達の観点において好ましく、複数種のジアミンを用いることで得られるポリアミド共重合体繊維の物性値をコントロールできる。本発明においては取り分けペンタメチレンジアミンの単独使用がバイオマス調達的、繊維物性的に最も好ましく、分子量が98%硫酸相対粘度にして2~3.5の範囲のフラン系ポリアミド〔化1〕から得られる繊維の強度はポリエチレンテレフタレート繊維に匹敵するものとなる。具体的に2,5-フランジカルボン酸〔化3〕は、植物由来のフルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成:5-ヒドロキシメチルフルフラール)、酸化により合成されたものが例示できる。またペンタメチレンジアミン(n=5)は、リジン(リシン:アミノ酸)の酵素的脱炭酸反応により得られるもの、またテトラメチレンジアミン(n=4)は、オルニチン(アミノ酸)の酵素的脱炭酸反応により得られるもの、デカメチレンジアミン(n=10)は、トウゴマの種子から搾取されるヒマシ油から合成されたセバシン酸をアミノ化して得られるものである。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、既に数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出されたフラン系ポリアミド〔化1〕繊維(またはフラン系ポリアミド〔化1〕繊維糸条を織編してなる布帛)は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。これによって本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、布帛を構成するフラン系ポリアミド〔化1〕繊維から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【化1】
【化2】
【化3】
【0021】
フラン系ポリアミド〔化1〕繊維は、ターポリン用の布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物などで空隙率6~25%程度、目付量100~500g/m程度の織布)を構成する長繊維マルチフィラメント糸条として、繊度250~2000デニール(278~2222dtex)で、例えば278dtexのフィラメント数が100~200本、例えば1111dtexのフィラメント数だと400~800本程度であり、無撚(断面が楕円または扁平)であっても撚糸であってもよい。このような織布を基材とするターポリンは、この基材の両面に軟質塩化ビニル系樹脂組成物からカレンダー圧延成型、あまたるいはTダイス押出成型された厚さ0.1~1mmのフィルム、またはシートを熱圧ラミネートして得られ、空隙率6~25%の空隙部(軸糸の交絡により生じる空隙)を介在して、織布の表裏に配置されたフィルム、またはシート同士が溶融一体化することで表裏の軟質塩化ビニル樹脂層が織布と強固に接着する特徴を有している。ターポリンの厚さは0.4~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲だと、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材、フレキシブルコンテナの原反素材に適する。
【0022】
またフラン系ポリアミド〔化1〕繊維は、帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など空隙率0~10%程度、目付量100~500g/m程度のもの)を構成する短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条として、その繊度が綿番手の10番手(591dtex)~60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)などであり、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが使用できる他、嵩高加工糸条(タスラン加工糸、ウーリー加工糸など)、カバリング糸条(マルチフィラメント糸の外周に同種または異種の短繊維を巻き付けた芯鞘複合糸)なども使用できる。このようなスパン布帛を基材とする帆布は、スパン布帛の両面に軟質塩化ビニル樹脂系組成物の液状物をディップ塗工、あるいはコーティング塗工し、塗工物を乾燥させて0.05~0.3mmの皮膜化して得ることができ、塗工物の一部はスパン布帛に含浸した状態が好ましい。帆布の厚さは0.4~1.0mm、質量400~1500g/mの範囲だと、トラック幌、テント倉庫などの原反素材に適する。
【0023】
またフラン系ポリアミド〔化1〕繊維は、メッシュシート用の粗目布帛(平織物、模紗織物、積重ネットなど空隙率10~70%程度、目付量30~200g/m程度のもの)を構成する長繊維マルチフィラメント糸条として、その繊度はターポリンと同様の仕様のものが使用でき、特に樹脂で糸条全体を被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)であってもよい。このような粗目布帛を基材とするメッシュシートは、この基材の全体に軟質塩化ビニル系樹脂組成物の液状物をディップ塗工し、塗工物を乾燥させて0.05~0.3mmの皮膜化して得ることができ、塗工物の一部は粗目織物に含浸した状態が好ましい。また軟質塩化ビニル系樹脂組成物の液状物を糸条全体に塗工被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)を織編して得たメッシュシート、またはコーテッドヤーンの積重融着メッシュである。メッシュシートの厚さは0.4~1.0mm、質量100~500g/mの範囲だと、建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードメッシュなどの原反素材に適する。
【0024】
前述の布帛(織物、スパン織布、粗目織物、ネット)の織編要素は、1)「経糸条/緯糸条」からなる二軸織物、2)「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」からなる三軸織物、3)「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」からなる四軸織物、から選ばれた何れか1種であり、二軸織物が各種産業資材シートの分野で最も汎用的であるが、特に三軸織物、及び四軸織物を基材に用いることで、得られる産業資材シートの寸法安定性、破壊強度、耐貫通性、引裂防止性に優れる性能を付帯することができる。また前述の布帛(織物、スパン織布、粗目織物、ネット)における空隙率とは、経糸条、緯糸条、バイアス糸条などの軸糸群同士の交絡・交差によって生じる隙間の総和であり、布帛の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。具体的に糸条幅の平均値を求め、糸条の打込本数/インチの関係から1インチ平米当たりの空隙率による換算値として算出も可能である。
【0025】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートに用いる上述の布帛には、アルキレンジアミン〔化2〕と、セバシン酸〔化4〕との重縮合によるポリアミド繊維〔化5〕(mは重合度、分子量が98%硫酸相対粘度にして2~3の範囲)からなる糸条をさらに含むことができる。これは例えば、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維と、ポリアミド繊維〔化5〕による混織布帛において、布帛質量に占めるポリアミド繊維〔化5〕の比率が10~50質量%の混織(規則的交互配置、またはランダムな交互配置)が例示できる。また布帛を構成する経糸条群をフラン系ポリアミド〔化1〕繊維で構成し、緯糸条群をポリアミド繊維〔化5〕で構成してもよく、あるいは経糸条群をポリアミド繊維〔化5〕で構成し、緯糸条群をフラン系ポリアミド〔化1〕繊維で構成してもよい。特にアルキレンジアミン〔化2〕、及び/または、セバシン酸〔化4〕が、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むことが好ましく、セバシン酸は、トウゴマの種子から搾取されるヒマシ油から合成されたものが使用できる。特にアルキレンジアミン〔化2〕として、n=整数で4~12のジアミンが好ましく、特に1,4-テトラメチレンジアミン(n=4)、1,5-ペンタメチレンジアミン(n=5)、1,10-デカメチレンジアミン(n=10)、から選ばれた1種以上であることがバイオマス調達(段落〔0020〕に記載)の観点において好ましく、複数種のジアミンを用いることで得られるポリアミド共重合体繊維の物性値をコントロールできる。本発明においては取り分けペンタメチレンジアミンの単独使用がバイオマス調達的、繊維物性的に最も好ましい。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に動植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出されるアルキレンジアミン〔化2〕、及びセバシン酸〔化4〕は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。これによって本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、布帛を構成するポリアミド繊維〔化5〕繊維から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス繊維が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【化4】
【化5】
【0026】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートに付帯する可撓性被覆層は、塩化ビニル系樹脂、及び可塑剤を少なくとも含んでなる軟質塩化ビニル樹脂組成物によって形成されるものである。特に可塑剤として、フタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕、セバシン酸ジアルキルエステル化合物〔化7〕、フランジカルボン酸アルキルエステル化合物〔化8〕、及びポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕、から選ばれた1種以上であることが好ましく、さらに可塑剤の分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むものであることが好ましい。また同時に塩化ビニル系樹脂の分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を含むことがより好ましい。ここでC-14はC-12の同位体で、太陽からの宇宙線の作用で窒素が変化した質量数14、β崩壊による半減期5370年の放射性炭素原子で、自然界(特に動植物)にC-14C/C-12=1.2×10-12の平衡状態で常在し、数億年を経過した化石燃料中には含み得ないものであるから、C-14が1.2×10-12濃度で検出される可塑剤、または塩化ビニル系樹脂は、植物由来物質を出発原料に合成されたバイオマスの証明となる。ここで分子構造の一部にC-14を有する可塑剤分子とは、植物由来で合成された可塑剤分子を意味し、バイオマス可塑剤中に占めるC-14を有する可塑剤分子は、自然界に含む約1.2×10-12濃度と同程度で、バイオマス可塑剤に含む全ての可塑剤分子がC-14を有することを意味するものではない。これによって本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの廃材が焼却処分されたとしても、可撓性被覆層を構成する可塑剤、及び/または、塩化ビニル系樹脂から発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマス可塑剤、及び/または、バイオマス塩化ビニル系樹脂が自然に還り、それを再度植物が吸収するという植物由来のカーボンリサイクル)適合要件を具備することが出来、優良な再生循環型の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートとなり得る。
【0027】
上記可塑剤として、フタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕は、n=4~12の整数であり、フタル酸と炭素数C4~C12アルコールとのエステル化反応によって合成され、フタル酸と炭素数C4~C12アルコールが共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤(放射性炭素原子C-14含有)が最もカーボンニュートラルに好ましいが、フタル酸もしくは炭素数C4~C12アルコールの一方が植物由来物質(放射性炭素原子C-14含有)である半バイオマス可塑剤であってもよい。植物由来のフタル酸は、例えばトウモロコシ糖の発酵によるイソブタノールを脱水してイソブチレンとし、ラジカル反応による二量化、環化により得たオルトキシレンをフタル酸に転換したものである。フタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕の具体例は、フタル酸と炭素数C4アルコールとの反応によるフタル酸ジブチル(MW278)、及びフタル酸ジイソブチル(MW278)、同様に炭素数C5アルコールとの反応によるフタル酸ジペンチル(MW306)、同様に炭素数C6アルコールとの反応によるフタル酸ジヘキシル(MW334)、同様に炭素数C7アルコールとの反応によるフタル酸ジヘプチル(MW362)、同様に炭素数C8アルコールとの反応によるフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(MW390)、同様に炭素数C9アルコールとの反応によるフタル酸ジノニル(MW418)及び、フタル酸ジイソノニル(MW418)、同様に炭素数C10アルコールとの反応によるフタル酸ジデシル(MW446)及び、フタル酸ジイソデシル(MW446)、同様に炭素数C11アルコールとの反応によるフタル酸ジウンデシル(MW474)、同様に炭素数C12アルコールとの反応によるフタル酸ジラウリル(MW502)などで、複数種を併用することができる。合成に用いる炭素数C4~C12アルコールも植物由来の化合物であることが好ましく、バイオマス・エタノール、バイオマス・ブタノールなどバイオマス・アルコールの二量化、三量化によって得ることが可能である。これによって得られるこれらのフタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕はバイオマス度100%となり理想的な再生循環となり得る。
【化6】
【0028】
上記可塑剤として、セバシン酸ジアルキルエステル化合物〔化7〕は、n=4~12の整数であり、セバシン酸と炭素数C4~C12アルコールとのエステル化反応によって合成され、セバシン酸、及び炭素数C4~C12アルコールが共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤(放射性炭素原子C-14含有)が最もカーボンニュートラルに好ましいが、セバシン酸、または炭素数C4~C12アルコールの一方が植物由来物質(放射性炭素原子C-14含有)である半バイオマス可塑剤であってもよい。植物由来のセバシン酸は、例えばトウゴマの種子から搾取されるヒマシ油から合成されたものである。セバシン酸ジアルキルエステル化合物〔化2〕の具体例は、セバシン酸と炭素数C4アルコールとの反応によるセバシン酸ジブチル(MW314)、及びセバシン酸ジイソブチル(MW314)、同様に炭素数C5アルコールとの反応によるセバシン酸ジペンチル(MW342)、同様に炭素数C6アルコールとの反応によるセバシン酸ジヘキシル(MW370)、同様に炭素数C7アルコールとの反応によるセバシン酸ジヘプチル(MW398)、同様に炭素数C8アルコールとの反応によるセバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)(MW426)、同様に炭素数C9アルコールとの反応によるセバシン酸ジノニル(MW454)及び、セバシン酸ジイソノニル(MW454)、同様に炭素数C10アルコールとの反応によるセバシン酸ジデシル(MW482)及び、セバシン酸ジイソデシル(MW482)、同様に炭素数C11アルコールとの反応によるセバシン酸ジウンデシル(MW510)、同様に炭素数C12アルコールとの反応によるセバシン酸ジラウリル(MW538)などで、複数種を併用することができる。合成に用いる炭素数C4~C12アルコールも植物由来の化合物であることが好ましく、バイオマス・エタノール、バイオマス・ブタノールなどバイオマス・アルコールの二量化、三量化によって得ることが可能である。これによって得られるこれらのフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化7〕はバイオマス度100%となり理想的な再生循環となり得る。
【化7】
【0029】
上記可塑剤として、フランジカルボン酸アルキルエステル化合物〔化8〕は、n=4~12の整数であり、フランジカルボン酸と炭素数C4~C12アルコールとのエステル化反応によって合成され、フランジカルボン酸、及び炭素数C4~C12アルコールが共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤(放射性炭素原子C-14含有)が最もカーボンニュートラルに好ましいが、フランジカルボン酸、または炭素数C4~C12アルコールの一方が植物由来物質(放射性炭素原子C-14含有)である半バイオマス可塑剤であってもよい。植物由来のフランジカルボン酸は、例えばフルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成されたものである。フランジカルボン酸アルキルエステル化合物〔化8〕は、特に2,5-フランジカルボン酸と炭素数C4~C12のアルコールとの反応(エステル化)によって合成されたものが好ましい。フランジカルボン酸のカルボン酸の配位は2,5位以外、2,3位、2,4位、3,4位の態様も可能であるが、バイオマス化合物としては2,5-フランジカルボン酸が最も合成が簡便である。具体的に、2,5-フランジカルボン酸と炭素数C4アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジブチル(MW268)、及び2,5-フランジカルボン酸ジイソブチル(MW268)、同様に炭素数C5アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジペンチル(MW296)、同様に炭素数C6アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジヘキシル(MW324)、同様に炭素数C7アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジヘプチル(MW352)、同様に炭素数C8アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジ(2-エチルヘキシル)(MW380)、同様に炭素数C9アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジノニル(MW408)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(MW408)、同様に炭素数C10アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジデシル(MW436)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソデシル(MW436)、同様に炭素数C11アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジウンデシル(MW464)、同様に炭素数C12アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジラウリル(MW492)などで、複数種を併用することができる。合成に用いる炭素数C4~C12アルコールも植物由来の化合物であることが好ましく、バイオマス・エタノール、バイオマス・ブタノールなどバイオマス・アルコールの二量化、三量化によって得ることが可能である。これによって得られるこれらのフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化8〕はバイオマス度100%となり理想的な再生循環となり得る。
【化8】
【0030】
上記可塑剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕は、n=2~10の整数であり、グリセリンと炭素数C2~C10脂肪酸とのエステル化反応によって合成され、グリセリン及び炭素数C2~C10脂肪酸が共に植物由来物質である100%バイオマス可塑剤(放射性炭素原子C-14含有)が最もカーボンニュートラルに好ましいが、グリセリンまたは炭素数C2~C10脂肪酸の一方が植物由来物質(放射性炭素原子C-14含有)である半バイオマス可塑剤であってもよい。植物由来のグリセリンは、例えば生物の油脂に含むトリアシルグリセロールを加水分解して得られるもの、または生物の油脂を鹸化して得られる石鹸製造時の副産物で、一方、植物由来の脂肪酸は、例えばベニバナ油、コーン油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、及びパーム油などの炭素数C2~10の飽和または不飽和脂肪酸である。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕は、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化したもので、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル化合物、ポリグリセリン脂肪酸ジエステル化合物、ポリグリセリン脂肪酸トリエステル化合物、及びこれらの混合物の何れかである。ポリグリセリンはグリセリンをモノマーとして脱水縮合して得られる多量体(ポリマー)で、平均重合度2~10,特に2,4,6が好ましい。特にグリセリンは、生物(動物、魚類、昆虫類など)の油脂に含むトリアシルグリセロールを加水分解して得られるもの、油脂(動物系、植物系)を鹸化して得られる石鹸製造時の副産物であるグリセリン、油脂とメタノールのエステル交換反応による脂肪酸メチルエステル生成時の副産物であるグリセリン、バイオマス・プロピレンをエピクロルヒドリンに転化し、これを加水分解したグリセリンなど、化石燃料に依存しないバイオマス・グリセリンが好ましい。また脂肪酸は、炭素数2~10の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、これらは直鎖状または分岐状であってもよく具体的に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)などであるが、植物由来の観点において、ベニバナ油、コーン油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、及びパーム油などに含むリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)などが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕としては、ポリグリセリン/カプリル酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン/カプリン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン2-エチルヘキサン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン/ラウリン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン/パルミチン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、などである。(※「/」は化学物質のカタカナ名詞の連続による視認混乱を回避するために用いた。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物において全て同様の扱いとする)このようなバイオマスポリグリセリンと、バイオマス脂肪酸をエステル化して得られるポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化9〕は、バイオマス度100%となり理想的な再生循環となり得る。
【化9】
式中Rはアルキル基
【0031】
さらに可撓性被覆層に含む塩化ビニル系樹脂は、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を有する塩化ビニル単位を含むバイオマス塩化ビニル系樹脂であることがカーボンニュートラルの観点において好ましい。塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーの単独重合体(乳化重合タイプ、懸濁重合タイプで重合度が700~3800のもの)、架橋塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリルグラフト重合体など、塩化ビニル含有成分が60質量%を越える共重合体が挙げられる。塩化ビニルモノマーは、ナフサを熱分解して得たエチレンと、塩を電気分解して得られる塩素を反応させ二塩化エチレンとし、この二塩化エチレンを熱分解して得る直接塩素化法によるもの、及びナフサを熱分解して得たエチレンと、直接塩素化法で副生する塩化水素を酸素の存在下で反応させ二塩化エチレンとし、この二塩化エチレンを脱水して熱分解して得るオキシ塩素化法によるものが汎用的であるが、本願発明においては、カーボンニュートラルの観点において、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオマス・エタノールを脱水して得られるバイオマス・エチレン(放射性炭素原子C-14含有)を由来とする二塩化エチレンを熱分解してなる塩化ビニルモノマー(放射性炭素原子C-14含有)を用いて重合されたバイオマス塩化ビニル系樹脂(放射性炭素原子C-14含有)が好ましい。ここで分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を有する塩化ビニル単位を含むバイオマス塩化ビニル系樹脂とは、植物(サトウキビ)由来で合成された塩化ビニル系樹脂を意味し、塩化ビニル系樹脂中に占める放射性炭素原子C-14量は自然界に含む約1.2×10-12量と同程度で、塩化ビニル系樹脂に含む全てのポリマー鎖が必ずしもC-14を有することを意味するものではない。このバイオマス塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、上述の〔化6〕~〔化9〕の(バイオマス)可塑剤を30~100質量部、特に50~80質量部配合することで、カーボンニュートラル要素を高度に有し、地球環境における二酸化炭素量の増加を抑止可能な、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献できる可撓性被覆層(軟質塩化ビニル系樹脂層)となり得る。またバイオマス度が任意である場合は、フタル酸エステル系、イソフタル酸エステル系、テレフタル酸エステル系、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系、シクロヘキセンジカルボン酸エステル系、アジピン酸系、塩素化パラフィン系、ポリエステル系、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素三元共重合体樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・一酸化炭素三元共重合体樹脂などの化石燃料由来の可塑剤を、全可塑剤量に対して最大50質量%併用してもよい。特にエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油は、その化学構造の大豆油、アマニ油の部分がバイオマス由来なので上述の〔化6〕~〔化9〕の(バイオマス)可塑剤との併用に好適である。
【0032】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートに付帯する可撓性被覆層には、上述の(バイオマス)可塑剤、及び/または(バイオマス)塩化ビニル系樹脂の必須成分以外に、カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系などの安定剤(熱分解による塩化水素の脱離防止)を含み、必要に応じて、顔料、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などを自由に配合することができる。本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートは、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を有する可塑剤分子を含むバイオマス可塑剤、及び/または、分子構造の一部に放射性炭素原子C-14を有する塩化ビニル単位を含むバイオマス塩化ビニル系樹脂、を少なくとも含む樹脂被覆層が、布帛の1面以上に積層された態様で、1)布帛を基材として、その片面以上に、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを積層してなる厚さ0.4~1.5mmのターポリン、2)布帛を基材として、その両面に、軟質塩化ビニル系樹脂含浸被覆層を形成してなる厚さ0.3~1mmの帆布、3)粗目布帛を基材として、粗目布帛の露出部全面に、軟質塩化ビニル系樹脂含浸被覆層を形成してなる厚さ0.3~1.5mmのメッシュシートであり、ターポリン用の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、軟質塩化ビニル系樹脂コンパウンドをカレンダー圧延成型、またはTダイス押出成型して厚さ0.1~1mmに調整したものである。また帆布用、及びメッシュシート用の軟質塩化ビニル系樹脂含浸被覆層は、乳化重合によるペースト塩化ビニル樹脂100質量部に、可塑剤を30~100質量部を主体とし、それ以外に安定剤を含み、必要に応じて、上述の配合剤を自由に配合してなるペーストゾルを布帛にコーティング、または布帛をペースト組成物の液浴中にディッピングし、これを熱処理ゲル化させることで皮膜が形成される。
【0033】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの表面には必要に応じて、これらの片面以上に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン・シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン・フッ素系グラフト共重合体樹脂、などの塗膜からなる0.5~25μmの防汚層が形成されていてもよく、また、フッ素系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、及びフッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/塩化ビニル系樹脂接着層など多層構造のフッ素系樹脂フィルム(25~100μm)を積層して防汚層を形成することができる。これらの防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物に適用することで屋外使用時の耐久性を飛躍的に向上させる。特に本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート用の防汚層として、1次粒子径3nm~150nmの無機コロイド物質を原料とするナノ粒子が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる無機系の防汚薄膜層(0.1~5μm)が好ましい。無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛-五酸化アンチモン複合または酸化スズ-五酸化アンチモン複合)ゾルなどの金属酸化物が好ましい。
【0034】
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
バイオマス度(バイオマス由来の証明)
ポリマーを構成する全炭素原子中に含む放射性炭素原子C-14濃度(ポリマー中のC-14とC-12の検出比)を加速器質量分析計(Accelerator Mass Spectrometry)により求め、C-14の検出比によりバイオ化率が証明される。
大気中の放射性炭素原子C-14量は、宇宙線によるC-14生成と、放射崩壊(半減期約5730年)とが平衡状態にありほぼ一定で、大気中のC-14は光合成によって植物に蓄積され、続く食物連鎖で動物中に分布することで地球上全ての生物のC-14濃度(C-14とC-12の検出比)はほぼ一定である。その一方、石油は1~2億年前の生物由来物質であるため、石油中の「C-14」濃度は半減期を大きく過ぎていることで実質ゼロと見做されることで、バイオマス由来製品には一定濃度のC-14が含まれ、石油由来製品にはC-14が含まれないことになる。従ってC-14濃度(C-14とC-12の検出比)測定によりバイオマス由来製品であることの証明となり得る。
【0035】
[実施例1]
〈布帛(1)によるターポリン〉
ペンタメチレンジアミン(n=5)と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミド樹脂を溶融紡糸したフラン系ポリアミド〔化1〕繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量190g/m、空隙率10%の布帛(1)を用いる。
※フラン系ポリアミド〔化1〕繊維の重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、ペンタメチレンジアミン(n=5)は、リジン(リシン:アミノ酸)の酵素的脱炭酸反応により得られるもので、2,5-フランジカルボン酸はフルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成される化合物で、得られるフラン系ポリアミド〔化1〕繊維のバイオマス度は100%となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(1)のバイオマス度も100%となる。また布帛(1)の強度(破壊・引裂)はナイロン6T繊維による布帛の強度に匹敵するものとなる。
<ターポリンの製造>
布帛(1)の両面に下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂コンパウンドから165℃~180℃の熱条件でカレンダー成型による厚さ0.16mmのフィルムを、ラミネーターにより170℃の熱ロール条件でフィルムを軟化させた状態で積層すれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(1)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(1)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
※成型した〔配合1〕による厚さ0.16mmのフィルムは軟質塩化ビニル系樹脂フィルムとしても利用できる。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド組成物
懸濁重合による塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
※サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオマス・エタノールを脱水して得られるバイオ
マス・エチレンを塩素化した塩化ビニルモノマーのラジカル重合によるバイオマス・ポ
リマー
フタル酸ジアルキルエステル化合物〔化6〕として、フタル酸ジイソノニル(可塑剤)
60質量部
※フタル酸とバイオマス・イソノニルアルコールとの反応(エステル化)によって合成
され、フタル酸は、トウモロコシ糖の発酵によるイソブタノールを脱水してイソブチレ
ンとし、ラジカル反応による二量化、環化により得たオルトキシレンをフタル酸に転換
したバイオマス度100%の化合物
エポキシ化大豆油(部分バイオマス可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型二酸化チタン(白色顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
【0036】
[実施例2]
実施例1の〔配合1〕のフタル酸ジイソノニル(可塑剤〔化6〕)60質量部を、セバシン酸ジイソノニル(可塑剤〔化7〕)60質量部に変更した〔配合2〕を用いた以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(2)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(2)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
※成型した〔配合2〕による厚さ0.16mmのフィルムは軟質塩化ビニル系樹脂フィルムとしても利用できる。
※〔配合2〕に用いるセバシン酸ジイソノニル(可塑剤〔化7〕)は、セバシン酸とバイオマス・イソノニルアルコールとの反応(エステル化)によって合成され、セバシン酸はトウゴマの種子から搾取されたヒマシ油から合成されるバイオマス度100%の化合物。
【0037】
[実施例3]
実施例1の〔配合1〕のフタル酸ジイソノニル(可塑剤〔化6〕)60質量部を、フランジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤〔化8〕)60質量部に変更した〔配合3〕を用いた以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(3)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(3)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
※成型した〔配合3〕による厚さ0.16mmのフィルムは軟質塩化ビニル系樹脂フィルムとしても利用できる。
※〔配合3〕に用いるフランジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤〔化8〕)は、2,5-フランジカルボン酸とバイオマス・イソノニルアルコールとの反応(エステル化)によって合成され、2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成:5-ヒドロキシメチルフルフラール)、酸化により合成されたバイオマス度100%の化合物。
【0038】
[実施例4]
実施例1の〔配合1〕のフタル酸ジイソノニル(可塑剤〔化6〕)60質量部を、ポリグリセリン/ミリスチン酸トリエステル(可塑剤〔化9〕)60質量部に変更した〔配合4〕を用いた以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(4)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(4)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
※成型した〔配合4〕による厚さ0.16mmのフィルムは軟質塩化ビニル系樹脂フィルムとしても利用できる。
※〔配合4〕に用いるポリグリセリン/ミリスチン酸トリエステル(可塑剤〔化9〕)は、ポリグリセリンとミリスチン酸をエステル化したバイオマス度100%のトリエステルで、ポリグリセリンは、油脂とメタノールのエステル交換反応による脂肪酸メチルエステル生成時に副産するグリセリンを単離し、これを脱水縮合して得られるバイオマス由来のグリセリン二量体(平均重合度n=2)で、ミリスチン酸(CH3(CH2)12COOH)は、ヤシ油から精製された植物由来のバイオマス度100%の化合物。
【0039】
[実施例5]
実施例1の布帛(1)を布帛(2)に変更した以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量920g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(5)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(5)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
〈布帛(2)〉
ヘキサメチレンジアミン(n=4)と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミド樹脂を溶融紡糸したフラン系ポリアミド〔化1〕繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量195g/m、空隙率10%の布帛(2)を用いる。
※フラン系ポリアミド〔化1〕繊維の重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、ヘキサメチレンジアミン(n=4)は、オルニチン(アミノ酸)の酵素的脱炭酸反応により得られるもので、2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成される化合物で、得られるフラン系ポリアミド〔化1〕繊維のバイオマス度は100%となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(2)のバイオマス度も100%となる。また布帛(2)の強度(破壊・引裂)はナイロン6T繊維による布帛の強度に匹敵するものとなる。
【0040】
[実施例6]
実施例1の布帛(1)を布帛(3)に変更した以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量910g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(6)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(6)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
〈布帛(3)〉
デカメチレンジアミン(n=10)と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミド樹脂を溶融紡糸したフラン系ポリアミド〔化1〕繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量185g/m、空隙率10%の布帛(3)を用いる。
※フラン系ポリアミド〔化1〕繊維の重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、デカメチレンジアミン(n=10)は、トウゴマの種子から搾取されるヒマシ油から合成されたセバシン酸をアミノ化して得られるもので、2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成される化合物で、得られるフラン系ポリアミド〔化1〕繊維のバイオマス度は100%となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(3)のバイオマス度も100%となる。また布帛(3)の強度(破壊・引裂)はナイロン6T繊維による布帛の強度に匹敵するものとなる。
【0041】
[実施例7]
実施例1の布帛(1)を布帛(4)に変更した以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(7)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(7)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
〈布帛(4)〉
ペンタメチレンジアミン(n=5)とデカメチレンジアミン(n=10)とのモル比1:1量と、2,5-フランジカルボン酸〔化3〕との重縮合によるポリアミド樹脂共重合体樹脂を溶融紡糸したフラン系ポリアミド〔化1〕繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量190g/m、空隙率10%の布帛(4)を用いる。
※フラン系ポリアミド〔化1〕繊維の重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、ペンタメチレンジアミン(n=5)は、リジン(リシン:アミノ酸)の酵素的脱炭酸反応により得られるもので、またデカメチレンジアミン(n=10)は、トウゴマの種子から搾取されるヒマシ油から合成されたセバシン酸をアミノ化して得られるもの、2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成される化合物で、得られるフラン系ポリアミド〔化1〕繊維のバイオマス度は100%となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(4)のバイオマス度も100%となる。また布帛(4)の強度(破壊・引裂)はナイロン6T繊維による布帛の強度に匹敵するものとなる。
【0042】
[実施例8]
実施例1の布帛(1)を布帛(5)に変更した以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量920g/mのターポリン態様の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(8)が得られる。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート複合シート(8)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
〈布帛(5)〉
布帛(1)の、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの経糸群、及び緯糸群打ち込みにおいて、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条の配置を1本間隔で省略し、省略した糸条の代わりにポリアミド繊維〔化5〕糸条(1000dマルチフィラメント糸条:フィラメント数192本:S撚200T/m)を配置して、フラン系ポリアミド〔化1〕繊維糸条とポリアミド繊維〔化5〕糸条とが1本交互で配置された、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの経糸群、及び緯糸群打ち込み密度の、質量185g/m、空隙率10%の布帛(5)を用いる。
※ポリアミド〔化5〕繊維の重合モノマーは、ペンタメチレンジアミン(n=5)と、セバシン酸〔化4〕で、ペンタメチレンジアミン(n=5)は、リジン(リシン:アミノ酸)の酵素的脱炭酸反応により得られるバイオマス由来化合物、セバシン酸〔化4〕はトウゴマの種子から搾取されるヒマシ油から合成されたバイオマス由来化合物で、得られるポリアミド〔化5〕繊維のバイオマス度は100%となり、この繊維糸条を織編要素の一部とするバイオマス布帛(1)ベースの布帛(5)のバイオマス度も100%となる。また布帛(5)の強度(破壊・引裂)はナイロン6,6繊維による布帛の強度に匹敵するものとなる。
【0043】
軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(1)~(8)のバイオマス度は理論的におよそ100%で(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)、これら各々の軟質塩化ビニル系樹脂を構成する塩化ビニル系樹脂は植物由来で合成されたものであるから、分子構造の一部に自然界に存在する放射性炭素原子C-14を有する可能性十分で、また可塑剤も植物由来で合成されたものであるから、分子構造の一部に自然界に存在する放射性炭素原子C-14を有する可塑剤分子を含む可能性十分で、さらには布帛を構成する合成繊維のポリマー構造の一部にも自然界に存在する放射性炭素原子C-14を有する可能性が十分にある。従って、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、布帛の構成要素から加速器質量分析計(Accelerator Mass Spectrometry)により放射性炭素原子C-14が検出されることで本発明の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(1)~(8)が、バイオマス由来のものであることの証明となり、これらの焼却処分時に発生する二酸化炭素がカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が燃焼で二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する循環により実質的に二酸化炭素を増加させない)要素を有し、地球環境における二酸化炭素量の増加を抑止可能な、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献することができるものとなる。
【0044】
[参考例1]
実施例1の軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(1)の両面に下記〔配合5〕のアクリル系樹脂塗料を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表裏に形成し中間体A(1)とする。
〔配合5〕アクリル系樹脂塗料
メタアクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体
100質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 250質量部
トルエン(希釈剤) 250質量部
次にこの中間体A(1)の片表面に下記〔配合6〕のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物の溶液を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表面側に半硬化の状態で付帯する中間体B(1)とする。
〔配合6〕アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物
メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸共重合
物のカルボキシル基にポリエチレンイミンをグラフトし、
側鎖が、-COO(CHCHNH)Hの化学式で示されるアミン価(固形分1g
に含むアミンmmol数)0.7~1.3mmol/gの一級アミノ基含有アクリル系樹脂
100質量部
エポキシ樹脂(エポキシ当量260g/eqのビスフェノールA骨格含有3官能
エポキシ樹脂) 20質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 150質量部
トルエン(希釈剤) 150質量部
次に、この中間体B(1)のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ半硬化物層面側に、厚さ25μm、53g/mのポリビニリデンフルオライド(PVdF)フィルムのコロナ処理面側を対向し、150℃の熱ロール条件でラミネーターを通過させ、熱圧着してフッ素系樹脂フィルムを積層して防汚層を形成することで、煤塵汚れ防止性、及び雨筋汚れ防止性に優れ、拭き取り洗浄により美麗外観を回復可能な軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(9)を得る。この軟質塩化ビニル系樹脂複合シート(9)のバイオマス度は理論上およそ93%になる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、カーボンニュートラル(再生循環型)要素を含む軟質塩化ビニル系樹脂複合シートの提供を可能とするので、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、医療用陰圧テント、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ビジュアルファサード、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いる帆布、及び建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、日除ファサードなどに用いるメッシュシートなどに広く有用である。そしてこれらの焼却処分時に発生する二酸化炭素がカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が燃焼で二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する循環により実質的に二酸化炭素を増加させない)要素を有し、地球環境における二酸化炭素量の増加を抑止可能な、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献することが期待できる。バイオマスとは植物由来を意味し、再生循環型とは主にカーボンニュートラル(植物由来のカーボンリサイクル)を意味する。