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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】経口投与用製剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240208BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20240208BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240208BHJP
   A23K 20/10 20160101ALI20240208BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/17
A23L5/00 K
A23K20/10
A23K20/147
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022155841
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522268579
【氏名又は名称】株式会社Walky
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】保科 千晶
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-129715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0218151(US,A1)
【文献】特開2017-218409(JP,A)
【文献】取扱商品,wayback machine [online],2022年09月27日,[2023年9月12日検索], <https://web.archive.org/web/20220927053721/https://walky.life/goods/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Google
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-カルニチンのカルボン酸塩非変性II型コラーゲンとを含有する、人間への経口投与用粉体製剤組成物であって、
前記L-カルニチンのカルボン酸塩中のL-カルニチンの含有量が、前記粉体製剤組成物に対して、純分で10~50質量%であり、
前記非変性II型コラーゲンの含有量が、前記粉体製剤組成物に対して、純分で0.2~5質量%であり、
前記非変性II型コラーゲンの含有量に対する前記L-カルニチンの含有量の割合が、5~50の範囲であり、かつ、
酸味抑制成分を含まない、人間への経口投与用粉体製剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の粉体製剤組成物を、カプセルに充填してなる人間への経口投与用カプセル剤。
【請求項3】
L-カルニチンのカルボン酸塩と、非変性II型コラーゲンと、水と、を含有する人間への経口投与用液状製剤組成物を、カプセルに充填してなる人間への経口投与用カプセル剤であって、
前記L-カルニチンのカルボン酸塩中のL-カルニチンの含有量が、前記液状製剤組成物に対して、純分で50~60質量%であり、
前記非変性II型コラーゲンの含有量が、前記液状製剤組成物に対して、1~10質量%であり、
前記非変性II型コラーゲンの含有量に対する前記L-カルニチンの含有量の割合が、10~50の範囲であり、
前記水の含有量が、前記液状製剤組成物に対して、20~30質量%であり、かつ、
酸味抑制成分を含まない、人間への経口投与用カプセル剤。
【請求項4】
塩を形成していないL-カルニチン粉体と、非変性II型コラーゲン粉体との混合物である、動物への経口投与用粉体製剤組成物であって、
前記L-カルニチン粉体は、粉体化した酸味抑制成分で表面被覆されて複合化された複合粉体として形成され、
前記L-カルニチンの含有量が、前記粉体製剤組成物に対して、純分で5~40質量%であり、
前記非変性II型コラーゲンの含有量が、前記粉体製剤組成物に対して、純分で0.1~5質量%であり、
前記非変性II型コラーゲンの含有量に対する前記L-カルニチンの含有量の割合が、10~60の範囲であり、かつ、
前記酸味抑制成分が、前記粉体製剤組成物に対して40~80質量%である、動物への経口投与用粉体製剤組成物。
【請求項5】
前記酸味抑制成分は、シリカ、さつま芋、りんご及び黒砂糖のうちの少なくとも1つの材料で構成されている、請求項4に記載の動物への経口投与用粉体製剤組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の粉体製剤組成物である前記混合物を、造粒して得られる、動物への経口投与用顆粒製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与用製剤組成物に関し、具体的には、人間や動物の関節ケアや運動機能改善に有用な経口投与用製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間や飼育動物の運動機能を改善するための製剤組成物が、重要となっている。人間や、犬、猫、馬のような飼育動物においては、昨今、老化や運動不足、肥満等に起因する、変形性関節症等の関節トラブルが増加傾向にある。こうした関節トラブルの予防及びケア、さらには運動機能全般の改善を目的に、従来より様々な経口投与用製剤組成物が、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等として供給されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、L-カルニチン類とグルコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸等の、グルコサミンを成分とするムコ多糖類)とを含む組成物が記載され、また、特許文献2には、グルコサミン類とミルク香料とを含んでなる経口投与用固形製剤が記載されている。さらに、特許文献3には、コラーゲンペプチド及びホエイタンパク質を有効成分とする筋損傷回復促進用組成物が開示され、コラーゲンと関節との関係についても言及されている。加えて、特許文献4には、イミダゾールペプチドとケルセチン配糖体とを含有する組成物、さらにはコラーゲンを含有する組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-53569号公報
【文献】特開2009-184967号公報
【文献】特開2022-40051号公報
【文献】国際公開第2013/132668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グルコサミンやコンドロイチン類等は、関節軟骨の主要成分の一つであり、その摂取によって関節障害を予防、治療、又は緩和し得ることが報告されている。しかし、水分を除く関節軟骨成分中で、グルコサミンやコンドロイチン類が占める割合は5~15質量%程度であるため、特許文献1及び2記載の組成物は、関節のケアのために十分有効とは限らない。しかもグルコサミン等は、体内に吸収され難い短所も有する。関節障害を予防、治療、又は緩和する上では、グルコサミン等よりも、軟骨成分の約80質量%以上を占めるコラーゲンを摂取する方が有用である。
【0006】
コラーゲンの内でも、脊椎動物中に最も大量に存在するコラーゲンはI型であり、関節軟骨に多く含まれるII型コラーゲンとは構造が異なる。関節を有効にケアするためには、II型のコラーゲンを、それも非変性の形で摂取することが望ましい。特許文献3に記載されたような、コラーゲンペプチドを含有する組成物では、たとえII型コラーゲンを原料に用いても、その構造が加水分解酵素等での処理によって失われてしまっている。そのため、ペプチドが栄養として吸収されるだけでコラーゲンとしては認識されず、関節のケアには必ずしも有効に機能し得ない。特許文献4ではII型コラーゲンについても言及されてはいるが、コラーゲンペプチドではなく非変性のコラーゲンを摂取することの重要性については、開示されていない。
【0007】
また、関節障害を予防又は治療する上で、関節周辺の筋肉を強化し、加えて体重をできるだけ低減して関節に掛かる負荷を軽減することも重要である。特許文献4で言及されているように、II型コラーゲンを含有しているだけでは、筋肉強化や体重低減を含めた総合的な関節ケアを図ることはできない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、関節軟骨の主成分であるII型コラーゲンを有効に摂取でき、しかも筋肉強化や体重低減を併せて行うことによって、人間や動物の関節障害を予防、治療、又は緩和するとともに、運動機能を改善することができる経口投与用製剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、人間や動物の関節障害や、運動機能の改善を達成するための検討を行ったところ、例えば高齢化すると、関節の軟骨成分が不足する傾向があるとともに、関節周りの筋肉も弱くなりがちであることが判明した。このため、本発明者は、不足しがちな関節の軟骨成分を、非変性II型コラーゲンで補給し、また、弱くなりがちな関節周りの筋肉を、L-カルニチンで補強することによって、人間や動物に発生する関節障害を緩和するとともに、運動機能の改善を図ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は少なくとも下記の発明を提供する。
[1]L-カルニチンと非変性II型コラーゲンとを含有する経口投与用製剤組成物。
[2]非変性II型コラーゲンの含有量に対するL-カルニチンの含有量の割合が、質量比で、5~60の範囲である、[1]に記載の経口投与用製剤組成物。
[3]前記製剤組成物は、粉体物又は液状物である、[1]又は[2]に記載の経口投与用製剤組成物。
[4]前記製剤組成物は、粉体状の前記L-カルニチンと、粉体状の前記非変性II型コラーゲンとを混合した混合物であり、かつ、
前記L-カルニチンは、酸味抑制剤でマスキングされている、[3]に記載の経口投与用製剤組成物。
[5]前記酸味抑制剤は、シリカ、さつま芋、りんご及び黒砂糖のうちの少なくとも1つの材料で構成されている、[4]に記載の経口投与用製剤組成物。
[6]前記製剤組成物は、前記L-カルニチンと前記非変性II型コラーゲンを水に溶解させて調製した液状物である、[3]に記載の経口投与用製剤組成物。
[7]上記[4]又は[5]に記載の前記製剤組成物からなる顆粒製剤。
[8]上記[6]に記載の前記製剤組成物を充填してなるカプセル剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、関節軟骨の主成分であるII型コラーゲンを有効に摂取でき、しかも筋肉強化や体重低減を併せて行うことによって、人間や動物の関節障害を予防、治療、又は緩和するとともに、運動機能を改善することができる経口投与用製剤組成物の提供が可能になった。
【0012】
本発明は特定の理論により限定されるものではないが、本発明が効果を奏する理由として、II型コラーゲンが非変性の状態で体内に摂取されることの他に、経口免疫寛容が働くことが考えられる。例えば免疫機能が過剰活性化等の異常を来すと、免疫細胞が関節軟骨中のII型コラーゲンを攻撃してしまう場合がある。ここで非変性のII型コラーゲンを摂取すると、経口免疫寛容が働き、それまで活性化していた免疫細胞が攻撃を止めるため、関節軟骨の破壊が抑制されると考えられる。コラーゲンにはまた、軟骨細胞を活性化させ、関節のクッションの役割をするヒアルロン酸等の生成を促す機能があり、この機能によっても関節のケアがなされると推定される。
【0013】
また、本発明の経口投与用製剤組成物によれば、もう一方の主成分であるL-カルニチンによって脂肪燃焼が促進されて、体重を適正に制御すると共に、燃焼時のエネルギーによって関節周辺の筋肉を造成することも可能となる。しかもL-カルニチンは、肝臓の負担を軽減し、また、血流を改善する機能も有する。そのため、摂取した非変性II型コラーゲンの吸収・同化がさらに促進され、関節軟骨の保持・修復に寄与している可能性がある。こうした、非変性II型コラーゲンによる関節軟骨自体及び関節周辺の筋肉の強化と、L-カルニチンによる体重制御、さらにはL-カルニチンによる非変性II型コラーゲンの吸収・同化の促進等の機能の、いわば相乗効果によって、有効な関節ケア、さらには運動機能の改善がなされると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の経口投与用製剤組成物について、幾つかの実施形態を例に説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<経口投与用製剤組成物>
本発明の経口投与用製剤組成物は、上記のようにL-カルニチンと非変性II型コラーゲンとを含有する。そして、本発明は、コラーゲンとして非変性のII型コラーゲンを含有すること、カルニチンとしてL-体を含有すること、及びL-カルニチンと非変性II型コラーゲンとを併用することが必要である。非変性II型コラーゲンであれば、関節軟骨中に同化し易く、また、L-カルニチンの併用によってコラーゲンの吸収・同化がさらに促進されると共に、関節周辺の筋肉の強化や体重の制御等も可能となる。そのため、人間や動物の関節を有効にケアし、さらには運動機能を改善することができる。尚、カルニチンとして、L-カルニチンではなく、D-カルニチンを用いた場合には、関節ケア等の効果は発揮され難いため、本発明の経口投与用製剤組成物では、L-カルニチンを含有させることを必須としている。
【0016】
尚、本発明の経口投与用製剤組成物は、非変性II型コラーゲンの含有量に対するL-カルニチンの含有量の割合が、L-カルニチン純分の含有量:非変性II型コラーゲン純分の質量比で5:1~60:1の範囲、特に10:1~50:1の範囲とするのが好ましい。より好ましくは、後記するように対象とする人間や動物の種類や体重に応じて、L-カルニチン及び非変性II型コラーゲンの含有量、並びに両者の質量比をさらに細かく調整する。こうした調整によって、人間や動物の関節ケアや運動機能の改善を、より効果的に行うことが可能となる。
【0017】
[L-カルニチン]
L-カルニチン自体は公知であり、市販もされている。下記式(1)の構造の、室温で固体の物質である。
【化1】
【0018】
L-カルニチンはまた、種々の酸との塩の形でも市販されており、本発明の経口投与用製剤組成物においては、これらの塩を使用することもできる。塩の種類に制限はなく、例えば塩酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩等を用いることもできるが、これらに限定されない。L-カルニチンは吸湿性が高いため、取扱容易性の観点からは、カルボン酸等の塩、特にジカルボン酸塩、例えばシュウ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸との塩が好ましい。例としてL-カルニチンフマル酸塩やL-カルニチン酒石酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。ナトリウム等の金属イオンや、アンモニウムイオンを含む塩であってもよい。複数種のL-カルニチン及び/又はその塩を、併用することもできる。尚、これら塩や混合原料を用いる場合には、L-カルニチンの含有量は、上記式(1)に相当する純分の量を基に算出するものとする。
【0019】
L-カルニチンのカルボン酸塩には、一方で酸味を伴う難点もある。こうした難点は、人間用の製剤組成物の場合は、例えばカプセル化や糖衣錠剤化によって解決し得る。しかし、飼育動物の多くはカプセルや糖衣錠を受け付けないため、塩を形成していないほぼ純粋なL-カルニチンを経口投与用製剤組成物の成分としてもよい。また、後記するようにL-カルニチンを酸味抑制剤、例えばシリカ等のケイ素化合物、又はさつま芋、りんご、黒砂糖等の食物パウダーと複合化(混合、マスキング等)して、その酸味を低減させることもできる。尚、L-カルニチン等の成分を水に溶解させた、後記するような液状の製剤組成物や、そうした液状製剤組成物を充填したカプセル剤では、吸湿防止の必要がないため、例えばL-カルニチンの結晶性粉末も利便性良く使用することができる。
【0020】
[非変性II型コラーゲン]
非変性II型コラーゲンも公知であり、市販もされている。また、動物の軟骨等から抽出等によって採取することもできる。II型コラーゲンにおいては、α鎖と呼ばれるペプチド鎖3本が集まってコラーゲン細繊維を作り、繊維性のコラーゲンを形成している。本発明の経口投与用製剤組成物において、II型コラーゲンは非変性のものであればどのような構造のものでもよく、またどのような製法で得られたものであってもよい。
【0021】
ここで、「非変性」とは、II型コラーゲンのらせん構造が壊れておらず、例えばコラーゲンペプチドのような低分子量化されたものではない状態、すなわち化学処理や加熱処理による構造の変化を事実上来していない状態を指す。こうした非変性II型コラーゲンは、例えば鶏等の動物の軟骨から、温水抽出等によって得ることができる。しかしながら本発明に含まれる非変性II型コラーゲンは、他の動物の軟骨や他の抽出方法によって得られたものであってもよい。尚、抽出の際にゼラチンや脂肪分、又はI型コラーゲンやIII型コラーゲン等の他の構造のコラーゲンが混入する場合もあるが、本発明の経口投与用製剤組成物は、こうした不可避的な混合物を含有していてもよい。
【0022】
[他成分]
本発明の経口投与用製剤組成物はまた、食品や化粧品、医薬品等に一般に使用される添加剤や成分を含んでいてもよい。例えば、L-カルニチン及び非変性II型コラーゲンに加えて、グルコサミン等のムコ多糖類、例えばヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン類;非変性II型コラーゲン以外のコラーゲン、例えばI型コラーゲン、III型コラーゲン、コラーゲンペプチド;ビタミン類、例えばビタミンA、各種ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD;各種タンパク質;炭水化物類、例えば澱粉、デキストリン;脂肪酸塩、例えばステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、リノール酸ナトリウム等;さらには甘味料、酸味料、香味料、滑剤、界面活性剤、pH調整剤、賦形剤等を含有していてもよい。
【0023】
本発明の経口投与用製剤組成物に、例えばシクロデキストリン等のデキストリン、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸塩を配合することにより、賦形効果を得ることができる。また、ビタミン類を配合して、栄養補助剤としての機能を付すこともできる。特に、動物用の経口投与用製剤組成物においては、摂取対象の動物が好む味付け・臭気とするために、各種の炭水化物や、それを含有する食物パウダー、さらには香味料等を配合することが好ましい。
【0024】
[組成物の形状]
本発明の経口投与用製剤組成物はまた、各種成分を水や液糖等に溶解又は分散させた形態であってもよい。例えば、L-カルニチンと非変性II型コラーゲンを水に溶解させて調製した液状物であってもよく、こうした液状の製剤組成物を充填してなるカプセル剤であってもよい。本発明の経口投与用製剤組成物は勿論、粉体物、例えば粉状物や粒状物とすることもできる。製剤組成物から成る顆粒製剤や、錠剤の形状としてもよい。本発明の経口投与用製剤組成物の形状に特に制限はなく、摂取対象及び含有成分に応じて、所望の剤形とすることが可能である。以下では、各種組成及び形状の経口投与用製剤組成物について、具体的な実施形態を幾つか挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<人間用経口投与用粉体製剤>
本発明の経口投与用製剤組成物の実施形態の一つは、主として人間用の、粉体状の経口投与用製剤組成物(人間用経口投与用粉体製剤)である。ここで、粉体製剤とは、細粒剤(一般に850μmふるいを全量通過し、500μmふるいに残るものが10%以下の製剤)等の散剤の他、散剤を粒状に造粒した製剤や顆粒剤等を全て包含する。
【0026】
人間用の経口投与用粉体製剤は、例えば、純分で30~150mg、特に60~100mg程度のL-カルニチンと、純分で1~20mg、特に3~12mg程度の非変性II型コラーゲンとを含有し、それらを含有する粉体製剤の全量が、例えば100~1000mg、特に200~500mg程度の粉体製剤とすることができる。一般に人間は1日当たり5mg以上、特に10mg程度の非変性II型コラーゲンを摂取することが推奨されるため、上記粉体製剤又はこの2倍量の各成分を含む粉体製剤を、例えば1日に1~2包(又は錠)服用してもよい。また、多少の酸味であれば人間は概して忌避しないため、L-カルニチンの含有量を多めにすることができる。L-カルニチンを、例えばフマル酸等との塩の形で60~500mg、特に100~400mg程度配合してもよく、結晶性粉末の形で100~500mg、特に200~400mg程度配合してもよい。
【0027】
人間用経口投与用粉体製剤の場合、L-カルニチンの含有量:非変性II型コラーゲンの含有量の比率は、純分の質量比で5:1~50:1の範囲、中でも10:1~30:1の範囲、特に15:1~20:1の範囲とするのが好ましい。例えば、純分で10~50質量%、特に20~30質量%のL-カルニチン、及び純分で0.2~5質量%、特に1~2質量%の非変性II型コラーゲン、さらには所望により、5~70質量%、特に10~50質量%の炭水化物類、例えばデキストリン、及び/又は0.2~5質量%、特に1~3質量%のステアリン酸カルシウム等の添加剤を含有する組成物であってもよい。
【0028】
人間用経口投与用粉体製剤においてはまた、L-カルニチンは、カルボン酸塩、例えばフマル酸塩や酒石酸塩等のジカルボン酸塩であることが好ましい。L-カルニチンをこうしたジカルボン酸塩とすることにより、吸湿性が抑制されるため、取扱性が良好となる利点が生じる。L-カルニチン塩の含有によって酸味が多少強くなる場合があるが、人間用製剤においてはこうした酸味が嫌われるケースは少ない。こうした人間用経口投与用粉体製剤は、粉体状や粒体状であってもよく、また、各種成分がゼラチン等のカプセル内に充填された、カプセル剤であってもよい。尚、同様の組成の経口投与用粉体製剤は、人間用に限らず、所望により動物に摂取させてもよい。
【0029】
<人間用経口投与用液状製剤>
本発明の経口投与用製剤組成物は、上記したように液状であってもよい。例えば、30~80質量%、特に50~60質量%のL-カルニチン、1~10質量%、特に2~4質量%の非変性II型コラーゲン、及び10~60質量%、特に20~30質量%の水を含有する液状物とすることができる。この液状物はまた、所望により5~40質量%、特に10~20質量%の炭水化物類、例えばデキストリン、及び/又は0.1~5質量%、特に1~3質量%のステアリン酸カルシウム等の添加剤を含有していてもよい。
【0030】
こうした人間用経口投与用液状製剤は、液状物として飲用することもできるが、当該液状物をゼラチン等のカプセル内に充填し、上記した人間用経口投与用粉体製剤と同様、カプセル剤として摂取することも可能である。その場合、酸味を感じないで摂取することができるので、L-カルニチンを比較的多量に含有させ、L-カルニチン(純分)の含有量:非変性II型コラーゲンの含有量の比率を、質量比で例えば10:1~50:1の範囲、中でも20:1~40:1の範囲、特に25:1~30:1の範囲とすることもできる。また、液状のために吸湿性を考慮する必要がないため、L-カルニチンを、塩ではなく純物質(不可避的不純物を少量含有する物質も含む。)の形で用いることも可能である。例えば、全量300~700mg程度のカプセル剤中に、L-カルニチンを純度90%程度の結晶性粉末の形で200~400mg程度、非変性II型コラーゲンを30~60mg程度配合してもよい。尚、同様の組成や形状をもつ人間用経口投与用液状製剤は、人間用に限らず、所望により動物に摂取させてもよい。
【0031】
<動物用経口投与用製剤組成物>
本発明の経口投与用製剤組成物を動物用、例えば犬や猫等の愛玩動物、あるいは馬や牛等の大型飼育動物用に使用する場合、摂取対象の動物に応じた組成及び摂取量とすることが好ましい。例えば主成分の一つであるL-カルニチンは、カルボン酸塩にすると酸味が増して摂取対象の動物が受け付けない場合があるので、塩を形成していないL-カルニチンとして配合することが好ましい。また、粉体状のL-カルニチン及び/又は非変性II型コラーゲンが、炭水化物等の酸味抑制成分と組み合わされていること、特に酸味抑制成分で表面被覆(マスキング)されていることが好ましい。
【0032】
具体的には、動物用の製剤組成物は例えば、粉体状のL-カルニチンと、粉体状の非変性II型コラーゲンとを混合した混合物であり、かつ、L-カルニチンは、粉体化した、シリカ、さつま芋、りんご及び黒砂糖のうちの少なくとも1つの酸味抑制成分で表面被覆(マスキング)されていることが好ましい。尚、こうした動物用経口投与用製剤組成物と同様の配合の製剤組成物は、人間用に使用することも可能である。
【0033】
動物用の経口投与用製剤組成物では、摂取対象の動物がカプセル剤や液状物の剤形を受け付けない場合があるため、粉状物等の粉体状製剤、特にそうした粉状物を加工した顆粒製剤とすることが好ましい。例えば、上記のようにさつま芋等の酸味抑制成分と複合化したL-カルニチンの粉体及び非変性II型コラーゲンの粉体を、造粒して顆粒製剤とすれば、犬、猫、馬等の種々の動物が嫌がることなく摂取する経口投与用製剤組成物とすることができる。
【0034】
ここで、顆粒製剤を作製する際の造粒方法に特に制限はなく、攪拌造粒、流動層造粒、転動造粒、もしくは押出造粒等の湿式造粒法、又は乾式造粒法、さらには噴霧造粒法等の慣用の方法を採用すればよい。特に、密度が高く、粒度分布の均一な球形粒子が得易い、攪拌造粒法が好ましい。尚、こうした顆粒状や粉状の本発明の動物用経口投与用製剤組成物は、動物の食餌に振りかける、又は混入することによって摂取させることができる。ここで、本発明の動物用経口投与用製剤組成物は、調理後の食餌に振りかけ又は混合することが好ましい。非変性II型コラーゲンは熱に弱い傾向があるが、調理後の例えば50℃以下程度に冷えた食餌であれば分解することなく、効果を発揮し得る。
【0035】
動物用経口投与用製剤組成物の1日当たりの使用量等にも特に制限はなく、摂取対象の動物の種類及び体重に応じた所望の量とすることができる。個体差もあるが、1日に摂取させる非変性II型コラーゲン量は、小動物の場合で2~10mg、例えば5mg程度、大型動物、例えば体重500kg程度の馬の場合は100~500mg程度を目安とすればよい。例えば50~400mg、特に150~250mg程度のL-カルニチンと、2~10mg、特に3~8mg程度の非変性II型コラーゲンとを含有する、1包の全量が0.2~3g、特に0.5~1.5g程度の粉体物又は顆粒製剤を、小型犬や猫、ウサギに対しては半包~1包、中型犬に対しては1~2包程度、体重20kg程度以上の大型犬には2包程度以上、馬等の大型動物に対しては体重に応じて5~200包、特に20~100包程度使用することが好ましい。中型動物用に、同様の組成で1包の全量が1~5g、特に1~3g程度の製剤組成物としてもよく、また、大型動物用に1包の全量が10~100g程度の製剤組成物とすることもできる。
【0036】
動物用経口投与用製剤組成物におけるL-カルニチン:非変性II型コラーゲンの含有量比にも、特に制限はない。上記のように、小動物であれば1日当たり5mg程度の非変性II型コラーゲン量でも有効なため、その分L-カルニチンの含有比率が相対的に高まっても構わない。例えばL-カルニチンの含有量:非変性II型コラーゲンの含有量の比率を、質量比で10:1~60:1程度、中でも20:1~50:1程度、特に30:1~40:1程度としてもよい。
【0037】
具体的には、5~40質量%、特に15~20質量%のL-カルニチン、0.1~5質量%、特に0.2~2質量%の非変性II型コラーゲン、さらには40~80質量%、特に60~70質量%の酸味抑制成分を含有する動物用経口投与用製剤組成物とすることもできる。ここで、酸味抑制成分としてはシリカ等のケイ素化合物、さつま芋、りんご、及び/又は黒砂糖の粉体等が好ましい。さつま芋やりんごは食物繊維やビタミン、ミネラル等も含むため、整腸作用や血糖値の調整、疲労回復等の効果も奏し得る。特に、糖度の低いさつま芋を、皮をむいた上で乳酸発酵させた後パウダー化することにより、腸内環境の改善効果を発現することも可能となる。
【0038】
動物用経口投与用製剤組成物、特に小型~中型動物用の製剤組成物は、より具体的には、例えば全量1g中に、200~600mg、特に300~400mg程度のサツマイモパウダー、100~500mg、特に200~400mg程度のアップルパウダー、及び2~30mg、特に5~15mg程度の黒砂糖と、50~400mg程度のL-カルニチン及び2~10mg程度の非変性II型コラーゲンとを含有する組成とすることができる。
【実施例
【0039】
以下、実施例を通じて本発明の実施形態をより具体的に開示するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
L-カルニチンフマル酸塩137mg、鶏軟骨抽出物(ロンザ株式会社製のUC-II(登録商標)、非変性II型コラーゲンを25質量%含有)20mg、シクロデキストリン(賦形剤)137mg、及びステアリン酸カルシウム(賦形剤)6mgを混合して、人間用経口投与用粉体製剤を作製した。本粉体製剤(300mg)中のL-カルニチン純分量は80mg(27質量%)、非変性II型コラーゲン純分量は5mg(約2質量%)である。この粉体製剤を、77mgのゼラチン製外皮に封入して、カプセルとした。
【0041】
得られたカプセルを、関節の痛みがあったり、疲労を感じやすい50歳以上の人の中から任意に選んだ24名の被験者に毎日2粒ずつ服用してもらい、関節の痛み低減や疲労回復効果が体感されるか否か試験した。尚、UC-II等の摂取によって副作用が観察されないことは、原料メーカーの試験によって確認されている。その結果、1週間後には被験者の6割強が、2週間後には8割近くが、4週間後には9割の被験者が、疲労感の低減等が体感されたと返答した。本願発明の経口投与用製剤組成物は、人間に対して効果を奏することが判明した。
【0042】
[実施例2]
L-カルニチン(ロンザ株式会社製のカルニキング(登録商標)、純度50~65質量%)粉末300mgを、サツマイモパウダー370mg、アップルパウダー300mg、及び黒砂糖10mgの混合物で被覆した。この被覆物と、20mgの鶏軟骨抽出物(UC-II)とを混合し、造粒して顆粒状の動物用経口投与用製剤を作製した。本顆粒状製剤(1000mg)中のL-カルニチン純分の量は150~195mg(約15~20質量%)、非変性II型コラーゲン純分量は5mg(0.5質量%)、L-カルニチン:非変性II型コラーゲンの質量比は約30:1~40:1である。
【0043】
得られた顆粒状製剤を振りかけた食餌を、スムーズに歩けなくなった、犬23匹及び猫15匹に食べさせたところ、いずれも嫌がることなく普通に食べた。尚、顆粒状製剤の1日当たりの使用量は、犬又は猫の体重が20kg未満の場合1000mg(1包)、20kg以上の場合は2000mg(2包)とした。摂取を1箇月ほど継続すると、7割以上の犬又は猫で歩行状態が改善し、体型もスリムになった。
【0044】
[実施例3]
UC-IIの配合量を5mgとした以外は、実施例2と同様の方法で顆粒状製剤を調製した。実施例3の顆粒状製剤におけるL-カルニチン:非変性II型コラーゲンの質量比は、約120~160:1である。この顆粒状製剤を摂取させたところ、体重20kg未満の犬では、実施例2と同様の効果が得られた。但し、体重20kg以上の犬では、1箇月後に歩行状態が改善された犬の割合が4割程度に止まった。本発明の経口投与用製剤組成物においては、L-カルニチン:非変性II型コラーゲンの質量比を5:1~60:1の範囲内とするのが好ましいことが、明らかとなった。
【0045】
尚、カルニキングの代わりにL-カルニチンのフマル酸塩(L-カルニチン純分150mg)を用い、実施例2と同様の方法で顆粒状製剤を調製し、得られた顆粒状製剤を振りかけた食餌を犬に食べさせたところ、犬が摂取したりしなかったりを繰り返したため、歩行状態等の変化を評価することはできなかった。これは、L-カルニチンフマル酸塩には酸味があり、この酸味を犬が嫌がったためであることが推定される。このため、飼育動物用には、塩の形でないL-カルニチンを配合するのが好ましい点が明らかとなった。
【0046】
以上のように、本発明に従いL-カルニチンと非変性II型コラーゲンとを含有する経口投与用製剤組成物は、人間及び飼育動物の関節ケアや運動機能改善に有用である。特に、L-カルニチン:非変性II型コラーゲンの質量比を5:1~60:1程度とすることにより、運動機能改善効果をさらに高め、かつ飼育動物が嫌がらずに摂取する経口投与用製剤組成物とすることができる。
【要約】
【課題】II型コラーゲンを有効に摂取でき、関節への負荷を軽減することが可能で、人間や動物の関節ケアや運動機能改善に有用な経口投与用製剤組成物を提供すること。
【解決手段】L-カルニチンと非変性II型コラーゲンとを含有する経口投与用製剤組成物。ここで、L-カルニチン純分の含有量:非変性II型コラーゲン純分の含有量の質量比は、5:1~60:1の範囲であることが好ましい。本発明の経口投与用製剤組成物はまた、粉体物又は液状物であってもよく、顆粒製剤やカプセル剤とすることもできる。シリカ、さつま芋、りんご及び/又は黒砂糖等を含有していてもよい。
【選択図】なし