(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電気的筋肉刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2022209109
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521165459
【氏名又は名称】有限会社B.A.R.
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】下山 幸夫
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-143326(JP,A)
【文献】特開2020-195517(JP,A)
【文献】特開2017-23223(JP,A)
【文献】特開平7-36362(JP,A)
【文献】特開2021-29389(JP,A)
【文献】特開平11-253560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者の表皮に接触して前記表皮の下方に位置する刺激対象筋に対して電気を付加して刺激する1または複数の電極と、
前記刺激対象筋に付加する出力電流を算出するための第1のユニットと、
前記刺激対象筋に付加する出力電圧を算出するための第2のユニットと、
前記第1のユニットおよび前記第2のユニットで算出された結果を合成するための合成出力部と、を含み、
前記第1のユニットは、
前記刺激対象筋に対応する前記表皮上の電流を所定の周期で検出する電流検出部と、
前記刺激対象筋に付加すべき電流目標値のそれぞれが前記所定の周期に対応して時系列で示される電流目標情報を記憶保持する記憶部と、
前記電流検出部で検出される電流検出値と前記電流目標値との差を前記所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて前記刺激対象筋に付加するための電流値を算出する電流値算出部と、を有し、
前記第2のユニットは、
前記刺激対象筋に対応する前記表皮上の電圧を所定の周期で検出する電圧検出部と、
前記刺激対象筋に付加すべき電圧目標値のそれぞれが前記所定の周期に対応して時系列 で示される電圧目標情報を記憶保持する記憶部と、
前記電圧検出部で検出される電圧検出値と前記電圧目標値との差を前記所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて前記刺激対象筋に付加するための電圧値を算出する電圧値算出部と、を有し、
前記合成出力部は、前記電圧値算出部によって算出される前記電圧値、および前記電流値算出部によって算出される前記電流値を合成して、その合成の結果を前記複数の電極の少なくとも1つを通じて前記刺激対象筋に付加するための前記電気の値として決定する、電気的筋肉刺激装置。
【請求項2】
前記刺激対象筋が、平滑筋
、ミュラー筋または眼瞼挙筋の少なくともいずれか1つである、
請求項1に記載の電気的筋肉刺激装置。
【請求項3】
前記第1のユニットでの前記所定の周期および前記第2のユニットでの前記所定の周期は互いに同一に設定される、
請求項1に記載の電気的筋肉刺激装置。
【請求項4】
前記所定の周期は、6Hz以下に設定される、
請求項3に記載の電気的筋肉刺激装置。
【請求項5】
前記電流目標情報および前記電圧目標情報は、三角波成分を含んで設定される、
請求項1に記載の電気的筋肉刺激装置。
【請求項6】
前記電流目標情報は、前記三角波成分の周波数よりも高い周波数を有する正弦波成分をさらに含んで設定される、
請求項5に記載の電気的筋肉刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的筋肉刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的筋肉刺激装置は、家庭においても広く普及している製品である。その動作原理は低い周波数の交流波、パルス波または電圧の変化などを発生させて筋肉を電気的に刺激することで筋肉を強制的に運動させるものである。筋肉を強制的に運動させることで、血液循環が良くなり体質が改善され、頭痛、肩こりまたは不眠などを解消したり軽減したり、さらには筋肉の強化とその新陳代謝の向上を図ったりして、その表皮部分のたるみまたはシワを予防することが可能となる。近年では複数の波長を同時に発生させて、皮下(体内)で複合波を合成することでその電気的刺激の効果を高めるものも知られる。
【0003】
ここで、人間の目元のたるみまたはシワは他人に年齢を顕著に感じさせる。そのため、年齢が高くなるにつれ、そのたるみおよびシワに関する悩みが増加する傾向にある。そのたるみおよびシワの原因は、目元周辺の皮膚表面の奥側に位置する筋肉、具体的には眼輪筋が衰えることにある。
【0004】
その眼輪筋を刺激してその強化および新陳代謝を図ろうとする従来技術として、刺激制御部を有し、低周波の電気的刺激による筋肉収縮中にはたたき機構部による機械的刺激を発生させず、その後の筋肉弛緩期間中にはたたき機構部による機械的刺激を皮下の筋肉に与えるように制御するものが知られる(たとえば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、筋肉に電気的刺激を付加するための電気波形について、高周波になるほど直進性が増加し到達距離が浅く(短い)、小さいものへの刺激に効果的であるが、その運動量は小さい。その一方、低周波になるほどその進行方向について湾曲性が増し到達距離が長く(深く)なる。低周波は大きなものへの刺激に効果的であり、刺激対象筋に対し大きな運動量を実現し易い。
【0007】
そして、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの筋肉も前述の眼輪筋と同様に衰えると外見上年齢が老けて見え、また平滑筋が衰えた場合には血管の老化または腸機能の低下が発生する可能性がある。これら筋肉の容量は小さく、また表皮の奥側の深いところに位置し、あるいはその周りを大きな筋肉(たとえば横紋筋)に被覆されている。そのため前述の特許文献1のような従来の電気的刺激装置では、これら筋肉に電気的刺激を付加するのは困難であった。この点、従来の電気的筋肉刺激装置は、改善の余地があったといえる。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対しても電気的刺激を付加することができる電気的刺激装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
[1]
被治療者の表皮に接触して前記表皮の下方に位置する刺激対象筋に対して電気を付加して刺激する1または複数の電極と、
前記刺激対象筋に付加する出力電流を算出するための第1のユニットと、
前記刺激対象筋に付加する出力電圧を算出するための第2のユニットと、
前記第1のユニットおよび前記第2のユニットで算出された結果を合成するための合成出力部と、を含み、
前記第1のユニットは、
前記刺激対象筋に対応する前記表皮上の電流を所定の周期で検出する電流検出部と、
前記刺激対象筋に付加すべき電流目標値のそれぞれが前記所定の周期に対応して時系列で示される電流目標情報を記憶保持する記憶部と、
前記電流検出部で検出される電流検出値と前記電流目標値との差を前記所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて前記刺激対象筋に付加するための電流値を算出する電流値算出部と、を有し、
前記第2のユニットは、
前記刺激対象筋に対応する前記表皮上の電圧を所定の周期で検出する電圧検出部と、
前記刺激対象筋に付加すべき電圧目標値のそれぞれが前記所定の周期に対応して時系列で示される電圧目標情報を記憶保持する記憶部と、
前記電圧検出部で検出される電圧検出値と前記電圧目標値との差を前記所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて前記刺激対象筋に付加するための電圧値を算出する電圧値算出部と、を有し、
前記合成出力部は、前記電圧値算出部によって算出される前記電圧値、および前記電流値算出部によって算出される前記電圧値を合成して、その合成の結果を前記複数の電極の少なくとも1つを通じて前記刺激対象筋に付加するための前記電気の値として決定する、
電気的筋肉刺激装置。
[2]
前記刺激対象筋が、平滑筋、SMAS(Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋または眼瞼挙筋の少なくともいずれか1つである、
[1]に記載の電気的筋肉刺激装置。
[3]
前記第1のユニットでの前記所定の周期および前記第2のユニットでの前記所定の周期は互いに同一に設定される、
[1]に記載の電気的筋肉刺激装置。
[4]
前記所定の周期は、6Hz以下に設定される、
[3]に記載の電気的筋肉刺激装置。
[5]
前記電流目標情報および前記電圧目標情報は、三角波成分を含んで設定される、
[1]に記載の電気的筋肉刺激装置。
[6]
前記電流目標情報は、前記三角波成分の周波数よりも高い周波数を有する正弦波成分をさらに含んで設定される、
[5]に記載の電気的筋肉刺激装置。
【0010】
前記[1]の構成によれば、平滑筋、SMAS(Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対して電気的刺激を付与して、これら筋肉の強制的運動を発生させることができる。その結果、従来、電気的に刺激を付加することが難しいとされた、これら筋肉に対し、血行を改善したり、さらには筋肉の強化とその新陳代謝の向上を図ったりしてたるみまたはシワなどを予防して健康または美容を高めることができる。その結果、たとえば、その対象部位周辺の血管壁の増強回復それに伴う血圧の正常化、あるいは腸壁の増強回復それに伴う腸運動の改善などを実現することができる。
前記[2]の構成によれば、平滑筋またはSMAS(Superficial Muscular Aponeurotic System)の場合には、腹部付近における血管の弾力性の回復、腸活動の活性化を図って腸内環境の改善を期待することができる。ミュラー筋または眼瞼挙筋の場合には、その筋肉の活性化を図ることで目元に張りを与えて若返り効果を期待することができる。
前記[3]の構成によれば、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してより選択的または的確に電気的刺激を付与することができる。
前記[4]の構成によれば、装置の動作周波数についてその所定の周期が6Hz以下に設定されるとよい。この場合、小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してより一層的確にかつ効果的に電気的刺激を付与することができる。
前記[5]の構成によれば、電流目標情報および電圧目標情報は、三角波成分を含んで設定されるとよい。この場合、小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してゆっくりとした大きな運動を発生させることができる。
前記[6]の構成によれば、小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してゆっくりとした大きな運動に加え、小刻みする微細な運動をさらに発生させてより効果的な筋肉強化とその新陳代謝を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対しても電気的刺激を付加することができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の電気的筋肉刺激装置の装置本体の外観の一例を説明する模式図
【
図2】
図1に示す電気的筋肉刺激装置の機能の一例を説明するブロック図
【
図3】
図1に示す電流目標情報の設定内容の一例を説明する波形図
【
図4】
図1に示す電圧目標情報の設定内容の一例を説明する波形図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る電気的筋肉刺激装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。
【0015】
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、すでによく知られた事項の詳細説明または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、添付図面のそれぞれは符号の向きに従って視るものとする。
【0016】
また、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
なお、本発明または実施形態でいう「部」または「装置」とは単にハードウェアによって機械的に実現される物理的構成に限らず、その構成が有する機能をプログラムなどのソフトウェアにより実現されるものも含む。また、1つの構成が有する機能が2つ以上の物理的構成により実現されても、または2つ以上の構成の機能がたとえば1つの物理的構成(たとえば1つの独立した装置)によって実現されていてもかまわない。
【0018】
また、たとえば、以下の実施形態では刺激対象筋として、平滑筋、ミュラー筋または眼瞼挙筋を挙げて説明するが、これに限定されない。表皮の奥側の深いところに位置する比較的小さな筋肉、またはその周りを比較的大きな筋肉で被覆される小さな筋肉であれば、本発明に係る電気的筋肉刺激装置を適用することは可能である。
【0019】
<本発明の概要>
本発明の概要について説明する。
【0020】
本発明に係る電気的筋肉刺激装置によれば、たとえば、被治療者の腹部の表皮に電極が貼設されることで、平滑筋を刺激対象筋として電気的刺激を付加することが可能となる。また、被治療者の瞼の表皮に電極が貼設されることで、ミュラー筋、眼瞼挙筋を刺激対象筋として電気的刺激を付加することが可能となる。
【0021】
ここで、人間の筋肉は種々に分類され、その中で横紋筋、平滑筋という分類がなされるものがある。従来の電気的筋肉刺激装置は、主に横紋筋への刺激を目的として構成される。平滑筋は主に、血管または腸の壁を構成する筋肉であり、それら組織の弾力性と継続的な緩やかな動きを実現する役割を有する。
【0022】
さらに、横紋筋の中でもSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)と呼ばれるものは、非常に微小な筋肉であり、平滑筋に近い性質を有する。そのSMASについても概念的に平滑筋に含まれるものとして取り扱うことが可能な組織である。
【0023】
そのような平滑筋またはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)は、前述のように血管および腸の壁を組成する筋肉であり、老化(動きが鈍くなることを意味する。)により、血管の弾力性の低下(たとえば、血行不良、血圧上昇または体温低下など)、腸活動の低下(便秘、解毒不良、腸内フローラの悪化)を引き起こす。
【0024】
また、ミュラー筋または眼瞼挙筋は、瞼を動かく筋肉である。それら筋肉が老化することで、筋肉が収縮しづらくなり、その結果、眼瞼下垂を引き起こし見た目で老けた印象を与える。
【0025】
これら筋肉に対し電気的刺激が付加されることで、これら筋肉の強制的運動を発生させて血行をよくしたり、さらには筋肉の強化とその新陳代謝の向上を図ったりしてたるみまたはシワを予防することが可能となる。本発明の筋肉刺激装置はそれに適した特別な構成を有する。
【0026】
すなわち、本発明の電気的筋肉刺激装置は、平滑筋、さらにはSMAS、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの微小な横紋筋などを対象とし、すなわち小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対しても電気的刺激を付加することを可能とするため、以下に説明する1または複数の実施形態のように特別な構成を有する。
【0027】
<第1実施形態>
図1~
図4に基づいて、本発明に係る電気的筋肉刺激装置10の第1実施形態について説明する。
【0028】
[・電気的筋肉刺激装置の外観構成]
図1を参照しながら、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10の外観構成の一例について説明する。
図1は、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10の装置本体11の外観の一例を説明する模式図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10は、装置本体11と、一対の電極15と、を含んで構成される。
【0030】
装置本体11は、扁平箱状に形成される筐体であり、その表側には表示部12および操作部13が配設される。また、装置本体11の内部には電極15に電気を供給したり、また表皮の電流および電圧を検出したりするための各種電気回路が内蔵される(後述参照)。
【0031】
一対の電極15のそれぞれは、電源線および信号線を含むケーブル16を介して筐体に電気的に接続される。操作部13は、たとえば一対の電極15に流れる電気の大きさを上昇させたり、あるいは下降させたりする際に被治療者(使用者)によって押下操作されるボタンである。表示部12はその操作部13の操作状況などを表示する。表示部12は、液晶ディスプレイまたは、赤色、黄色、緑色などに発光するLEDなどが例示される。
【0032】
一対の電極15は正極(+)および負極(-)の対で設けられる。一対の電極15のそれぞれは平板の矩形状に形成され、その平面視においてその表側の一端部にケーブル16の一端が電気的に接続される。また、一対の電極15のそれぞれにおいてその裏側にはゲル状の柔らかい導電性材料が塗布され、被治療者の表皮への接着を着脱自在にするとともにその密着性を高める。
【0033】
本実施形態では、電極15は被治療者の腹部または瞼の表皮に取り付けられ、筐体で発生される電気がケーブル16を通じて一方の電極15に供給される。一方の電極15から出力される電気は被治療者の生体(体内)を通過し他方の電極15へと流れる。そのようにして、電極15は被治療者の表皮に接触して表皮下の筋肉(刺激対象筋)に対して電気的刺激を付加し強制的に運動させる。
【0034】
なお、電極15は1対以上設けられていればよく、2対、3対、4対、5対またはそれ以上であってもよい。電極15は、公知のものを用いればよく、パッド状の他、針状、クリップ状など被治療者の生体に導電するものであれば種々の形状を採用することが可能である。皮膚への接着性の点でパッド状の電極15が好適である。パッドの素材またはその形状についても、適用する生体の部位に応じて、適宜公知のものに変更してもよい。
【0035】
[・電気的筋肉刺激装置の機能的構成]
図2を参照しながら、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10の機能の一例について説明する。
図2は、
図1に示す電気的筋肉刺激装置10の機能の一例を説明するブロック図である。
【0036】
装置本体11には、いわゆる汎用のミニコンピュータが内蔵される。ミニコンピュータは、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、を少なくとも含んで構成される。
【0037】
CPUは、その中央演算装置として後述する各種の機能を実現するプログラムを実行する。それにより、CPUは、機能的にコンピュータ全体の制御部20(後述参照)として動作する。
【0038】
記憶装置は、プログラムが記憶保持されるだけではなく、CPUのワーキングメモリーとしても使用される。記憶装置は、たとえばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの種々の記憶装置を含んで構成される。ROMは、電源を切ってもプログラムおよびデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROMにはミニコンピュータの起動時に実行されるBIOS、OS設定などのプログラムやデータが格納される。RAMはプログラムおよびデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。
【0039】
そのように、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10はハードウェア構成としてCPUを有し、CPUは種々のプログラムまたはデータ(情報)などを記憶装置から読み込んで実行することで各種機能が実現される。その結果、前述の筋肉への電気的刺激付加に関する各種処理が実行される。
【0040】
図2に示すように、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10は、そのCPUおよび記憶装置などのハードウェアの動作によって実現される機能として、制御部20を有する。さらに、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10は、ハードウェア構成として前述の表示部12および操作部13のほか、電圧検出回路25B(電圧検出部の一例)、電流検出回路25A(電流検出部の一例)および電気供給回路26を有する。また、本実施形態では、後述の所定の周期(制御部20の動作周波数)は統一され同一に設定される。具体的には、所定の周波数は、6Hz以下、本実施形態ではその一具体例として3Hzの周波数が選択され統一的に固定して設定される。
なお、電気供給回路26はバッテリーまたは乾電池などの電源(不図示)を有して構成される。
【0041】
電圧検出回路25Bおよび電流検出回路25Aは、電極15に電気的に接続される。電圧検出回路25Bは、電極15を通じて刺激対象筋に対応する表皮上の電圧を所定の周期で検出し、その検出結果を電圧検出値として制御部20に送信する。電流検出回路25Aも同様に、電極15を通じて刺激対象筋に対応する表皮上の電流を所定の周期で検出し、その検出結果を電流検出値として制御部20に送信する。電気供給回路26は、制御部20で算出される電気の値を受信し、その受信内容に従って電極15に電気を供給して刺激対象筋に電気的刺激を付加する。
【0042】
なお、本実施形態では、電圧検出回路25Bおよび電流検出回路25Aは、電極15を通じて表皮の電圧または電流を検出したがこれに限らない。本実施形態の電極15とは別途設けられる電気経路を通じて検出可能に構成してもよい。
【0043】
制御部20は、記憶部21および演算部22を有する。
【0044】
記憶部21には、電圧目標情報21Bおよび電流目標情報21Aが少なくとも記憶保持される。電圧目標情報21Bは、刺激対象筋に付加すべき電圧目標値のそれぞれが所定の周期に対応して時系列で示される。電流目標情報21Aも同様に、刺激対象筋に付加すべき電流目標値のそれぞれが所定の周期に対応して時系列で示される。電圧目標情報21Bおよび電流目標情報21Aはテーブル構造のデータとして構成されてもよい。
【0045】
演算部22は、電圧値算出部23Bと、電流値算出部23Aと、合成出力部24と、を含んで構成される。
【0046】
電圧値算出部23Bは、記憶部21の電圧目標情報21Bを参照し、電圧検出回路25Bで検出される電圧検出値と電圧目標値との差を前述の所定の周期で算出する。そして、電圧値算出部23Bは、その算出の結果に基づいて刺激対象筋に付加するための電圧値を算出する。
【0047】
電流値算出部23Aも同様に、記憶部21の電流目標情報21Aを参照し、電流検出回路25Aで検出される電流検出値と電流目標値との差を前述の所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて刺激対象筋に付加するための電流値を算出する。
【0048】
そして、合成出力部24は、そのようにして電圧値算出部23Bおよび電流値算出部23Aのそれぞれによって算出される電圧値および電流値を合成する。そして、その合成の結果を、合成出力部24は電極15を通じて刺激対象筋に付加するための電気の値として最終決定し、電気供給回路26に送信(指示)する。前述のように、電気供給回路26は、制御部20の合成出力部24の指示に従って、電極15に電気を供給する。
【0049】
つまり、本実施形態では、電気的筋肉刺激装置10は、電流系の機能としての電流系ユニット(第1のユニットの一例)、および電圧系の機能としての電圧系ユニット(第2のユニットの一例)を有し、電極15に供給すべき電気の値を決定する。
【0050】
前述の電流系ユニットは、記憶部21の電流目標値と、電流検出回路25Aと、制御部20の電流値算出部23Aと、によって構成されることになる。前述の電圧系ユニットは、記憶部21の電圧目標情報21Bと、電圧検出回路25Bと、制御部20の電圧値算出部23Bと、によって構成されることになる。
なお、図面に示される符号のうち、数字の後に「A」が付されるものは電流系ユニットの構成要素を示す。「B」が付されるものは電圧系ユニットの構成要素を示す。
【0051】
[・電圧目標情報および電流目標情報の設定内容]
図3および
図4を参照しながら、電圧目標情報21Bおよび電流目標情報21Aの設定内容について説明する。
図3は、
図1に示す電流目標情報21Aの設定内容の一例を説明する波形図である。
図4は、
図1に示す電圧目標情報21Bの設定内容の一例を説明する波形図である。
【0052】
図3に示すように、電圧目標情報21Bは、三角波成分を含んで設定される。また、その電圧目標情報21Bのそれぞれの絶対値は、その一例として0V以上30V以下に設定される。
【0053】
図4に示すように、電流目標情報21Aは、三角波成分を含み、この三角波成分の周波数よりも高い周波数を有する正弦波成分をさらに含んで設定される。また、その電流目標情報21Aのそれぞれの絶対値は、その一例として1mA以上5mA以下の範囲に設定される。
【0054】
[・本実施形態の特徴および利点]
以上説明したように本実施形態の電気的筋肉刺激装置10によれば、被治療者の表皮に接触して表皮の下方に位置する刺激対象筋に対して電気を付加して刺激する複数(本実施形態では1対)の電極15と、刺激対象筋に付加する出力電流を算出するための電流系ユニット(第1のユニットの一例)と、刺激対象筋に付加する出力電圧を算出するための電圧系ユニット(第2のユニットの一例)と、電流系ユニットおよび電圧系ユニットで算出された結果を合成するための合成出力部24と、を含む。電流系ユニットは、刺激対象筋に対応する表皮上の電流を所定の周期で検出する電流検出回路25A(電流検出部の一例)と、刺激対象筋に付加すべき電流目標値のそれぞれが所定の周期に対応して時系列で示される電流目標情報21Aを記憶保持する記憶部21と、電流検出回路25Aで検出される電流検出値と電流目標値との差を所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて刺激対象筋に付加するための電流値を算出する電流値算出部23Aと、を有する。電圧系ユニットは、刺激対象筋に対応する表皮上の電圧を所定の周期で検出する電圧検出回路25B(電圧検出部の一例)と、刺激対象筋に付加すべき電圧目標値のそれぞれが所定の周期に対応して時系列で示される電圧目標情報21Bを記憶保持する記憶部21と、電圧検出回路25Bで検出される電圧検出値と電圧目標値との差を所定の周期で算出し、その算出の結果に基づいて刺激対象筋に付加するための電圧値を算出する電圧値算出部23Bと、を有する。合成出力部24は、電圧値算出部23Bによって算出される電圧値、および電流値算出部23Aによって算出される電流値を合成して、その合成の結果を複数の電極15の少なくとも1つを通じて刺激対象筋に付加するための電気の値として決定する。
【0055】
このため、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対して電気的刺激を付与して、これら筋肉の強制的運動を発生させることができる。その結果、従来電気的に刺激を付加することが難しいとされた、これら筋肉に対し、血行を改善したり、さらには筋肉の強化とその新陳代謝の向上を図ったりしてたるみまたはシワなどを予防して健康または美容を高めることができる。その結果、たとえば、その対象部位周辺の血管壁の増強回復それに伴う血圧の正常化、あるいは腸壁の増強回復それに伴う腸運動の改善などを実現することができる。
【0056】
つまり、本実施形態によれば、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対しても電気的刺激を付加することができる。
【0057】
また、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10によれば、刺激対象筋が、平滑筋、SMAS(Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋または眼瞼挙筋の少なくともいずれか1つである。
【0058】
このため、平滑筋またはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)の場合には、腹部付近における血管の弾力性の回復、腸活動の活性化を図って腸内環境の改善を期待することができる。ミュラー筋または眼瞼挙筋の場合には、その筋肉の活性化を図ることで目元に張りを与えて若返り効果を期待することができる。
【0059】
また、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10によれば、電流系ユニット(第1のユニットの一例)での所定の周期および電圧系ユニット(第2のユニットの一例)での所定の周期は互いに同一に設定される。
【0060】
このため、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してより選択的または的確に電気的刺激を付与することができる。
【0061】
また、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10によれば、前述の所定の周期は、6Hz以下に設定される。
【0062】
このため、装置の動作周波数についてその所定の周期が6Hz以下に設定されるとよい。この場合、小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してより一層的確にかつ効果的に電気的刺激を付与することができる。
【0063】
また、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10によれば、電流目標情報21Aおよび電圧目標情報21Bは、三角波成分を含んで設定される。
【0064】
この場合、小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してゆっくりとした大きな運動を発生させることができる。
【0065】
また、本実施形態の電気的筋肉刺激装置10によれば、電流目標情報21Aは、三角波成分の周波数よりも高い周波数を有する正弦波成分をさらに含んで設定される。
【0066】
このため、小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対してゆっくりとした大きな運動に加え、小刻みする微細な運動をさらに発生させてより効果的な筋肉強化とその新陳代謝を実現することができる。
【0067】
<最後に>
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、平滑筋、さらにはSMAS(Superficial MusculoAponeurotic; Superficial Muscular Aponeurotic System)、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対しても電気的刺激を付加することができる電気的刺激装置として有用である。
【符号の説明】
【0069】
10 :電気的筋肉刺激装置
11 :装置本体
12 :表示部
13 :操作部
15 :電極
16 :ケーブル
20 :制御部
21 :記憶部
21A :電流目標情報
21B :電圧目標情報
22 :演算部
23A :電流値算出部
23B :電圧値算出部
24 :合成出力部
25A :電流検出回路(電流検出部の一例)
25B :電圧検出回路(電圧検出部の一例)
26 :電気供給回路
【要約】
【課題】平滑筋、ミュラー筋、眼瞼挙筋などの小さくかつ表皮の奥側深いところに位置する筋肉に対しても電気的刺激を付加することができる電気的刺激装置および電気的刺激方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る電気的筋肉刺激装置は、被治療者の表皮に接触して表皮の下方に位置する刺激対象筋に対して電気を付加して刺激する複数(本実施形態では1対)の電極15と、刺激対象筋に付加する出力電流を算出するための電流系ユニット(第1のユニットの一例)と、刺激対象筋に付加する出力電圧を算出するための電圧系ユニット(第2のユニットの一例)と、電流系ユニットおよび電圧系ユニットで算出された結果を合成するための合成出力部24と、を含む。
【選択図】
図2