(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】拡張可能な気管内チューブ
(51)【国際特許分類】
A61M 16/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A61M16/04 A
(21)【出願番号】P 2022559679
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021024840
(87)【国際公開番号】W WO2021202496
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】マヘシュ バイッドヤーナサン
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0030559(US,A1)
【文献】米国特許第08807136(US,B2)
【文献】米国特許第06562064(US,B1)
【文献】特表2014-514115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0284482(US,A1)
【文献】米国特許第05638813(US,A)
【文献】米国特許第08196584(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道を有するシャフトと;
前記シャフトの遠位端に取り付けられた拡張可能なセグメントと、
制御ロッドと、
前記シャフトに対して静止するように前記シャフトの遠位端に取り付けられた、固定ロッドと、を含む、拡張可能な気管内チューブであって、前記拡張可能なセグメントは:
拡張可能な膜と;
前記拡張可能な膜内に配置された定荷重ばねと、を含み;前記定荷重ばねは、前記拡張可能な気管内チューブを患者内に配置することを可能にする圧縮構成と、前記拡張可能な膜が、前記患者の気管とシールを形成して陽圧換気を可能にする拡張構成と、を有
し、
前記定荷重ばねは、長手方向の両端にそれぞれ第一端及び第二端を有する材料のコイル状に巻かれたストリップから形成され、
前記定荷重ばねの前記第一端が、前記制御ロッドに取り付けられ、
前記定荷重ばねの前記第二端が、第一の方向への前記制御ロッドの回転が前記定荷重ばねの拡張を生じ、第二の方向への前記制御ロッドの回転が前記定荷重ばねの圧縮を生じるように、前記固定ロッドに取り付けられる、
拡張可能な気管内チューブ。
【請求項2】
前記シャフトの近位端に取り付けられた気道アダプターを更に含み、前記気道アダプターは人工呼吸器に接続する、請求項1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項3】
前記シャフトの本体に形成された制御ロッドポートを更に含み、前記制御ロッドが前記制御ロッドポート内で回転することができるように、前記制御ロッドを収容する、請求項
1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項4】
傾斜ロッドを更に含み、前記傾斜ロッドは、前記傾斜ロッドの回転が前記制御ロッドの回転を引き起こすような角度で、前記制御ロッドに取り付けられる、請求項
1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項5】
前記傾斜ロッドと前記制御ロッドとを接続する接続部を更に含み、前記接続部は、前記傾斜ロッドに取り付けられた第1歯車と、前記制御ロッドに取り付けられた第2歯車とを含み、前記第1歯車が前記第2歯車と噛み合うようになっている、請求項
4に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項6】
ハンドルをさらに含み、前記ハンドルの回転が前記傾斜ロッドの回転をもたらすように、前記ハンドルは、前記傾斜ロッドに取り付けられた、請求項
4に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項7】
ブジーをさらに含み、前記ブジーが前記拡張可能な膜の遠位端を越えて伸長するように、前記ブジーは、前記シャフトの遠位端に取り付けられた、請求項1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項8】
前記シャフトの本体に形成されたセンサポートをさらに含み、前記センサポートが前記シャフトに沿って長さ方向に伸びて前記拡張可能なセグメントへのアクセスを提供する、請求項1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項9】
前記センサポート内にセンサをさらに含み、前記センサが温度センサ又は二酸化炭素センサを含む、請求項
8に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項10】
前記定荷重ばねが第1の定荷重ばねを含み、さらに、第2の定荷重ばねを含み、前記第2の定荷重ばねは、前記第1の定荷重ばねと前記第2の定荷重ばねとの間に間隙があるように、前記拡張可能な膜内に配置された、請求項
8に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項11】
前記拡張可能な膜内に溝部をさらに含み、前記溝部が、前記第1の定荷重ばねと前記第2の定荷重ばねとの間の前記間隙に位置し、前記間隙が
前記患者の気道内の軟骨輪を受けるような大きさに形成されている、請求項
10に記載の拡張可能な気管内チューブ。
【請求項12】
拡張可能な気管内チューブを作製する方法であって、前記作製する方法は:
近位端と遠位端を有するシャフトであって、前記シャフトは前記シャフト内を長さ方向に通る気道を有する、シャフトを形成することであって、
前記シャフトを形成することが、前記シャフトの本体内に制御ロッドポートを形成することを含み、前記制御ロッドポートが前記シャフトの遠位端まで伸びる、シャフトを形成することと;
固定ロッドを前記シャフトの遠位端に装着することと;
制御ロッドが前記制御ロッドポート内で回転するように、前記制御ロッドポート内に前記制御ロッドを取り付けることと、
前記シャフトの遠位端への拡張可能なセグメントを装着することと、を含み、前記拡張可能なセグメントを装着することは:
定荷重ばねの第一端を前記固定ロッドに取り付けるように定荷重ばねを装着することであって、前記定荷重ばねは、患者内に前記拡張可能な気管内チューブを配置することを可能にする圧縮構成と、前記拡張可能なセグメントが前記患者の気管とのシールを形成して陽圧換気を可能にする拡張構成と、を有する、前記定荷重ばねを装着すること;及び
前記拡張可能な膜が前記定荷重ばねを囲むように前記シャフトに前記拡張可能な膜を装着すること、を含
み、
前記定荷重ばねは、長手方向の両端にそれぞれ第一端及び第二端を有する材料のコイル状に巻かれたストリップから形成され、
前記定荷重ばねを装着することは、前記定荷重ばねの第2先端部を前記制御ロッドに装着することを含み、第1の方向への前記制御ロッドの回転は、前記定荷重ばねの拡張をもたらし、第2の方向への前記制御ロッドの回転は、前記定荷重ばねの圧縮をもたらす、
拡張可能な気管内チューブを作製する方法。
【請求項13】
前記シャフトを形成することが、更に前記シャフトの本体内に1つ以上のセンサポートを形成することを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
ブジーが前記拡張可能なセグメントの遠位端を越えて伸長するように、前記シャフトの遠位端に前記ブジーを装着することを更に含む、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月30日に提出された米国仮出願第63/001,868号の優先権の利益を主張し、その開示の全体がここに引用されている。
【0002】
気管内チューブとは、患者の呼吸を助けるために使用される柔軟なチューブである。チューブは患者の口から気管内へと挿入される。その後、気管内チューブは、患者の肺に空気を送るために使用される人工呼吸器に接続することができる。気管内チューブは、患者に全身麻酔薬を投与する医療行為の間に使用され、外傷を受けた後の患者の呼吸を助け、重症疾患の間の患者の呼吸を助け、吸い込んだ異物の除去を助け、胃の内容物が気道に入ることなどを防止するために使用される。
【発明の概要】
【0003】
例示的な拡張可能な気管内チューブは、気道を有するシャフトを含む。拡張可能な気管内チューブには、シャフトの遠位端に取り付けられた拡張可能なセグメント(segment)も含まれる。拡張可能なセグメントは、拡張可能な膜と、拡張可能な膜内に配置された定荷重ばねを含む。定荷重ばねは、患者内に拡張可能な気管内チューブを配置することを可能にする圧縮構成と、拡張可能な膜が患者の気管とのシールを形成して陽圧換気(positive pressure ventilation)を可能にする拡張構成を有する。
【0004】
拡張可能な気管内チューブを作る例示的な方法は、近位端と遠位端を有するシャフトを形成することを含み、ここでシャフトはシャフト内を長さ方向に通る気道(airway)を有する。この方法はまた、シャフトの遠位端に固定ロッドを装着することも含む。この方法にはまた、シャフトの遠位端に拡張可能なセグメントを装着することも含まれる。拡張可能なセグメントを装着することは、定荷重ばねの第1先端部が固定ロッドに装着されるように、定荷重ばねを装着することを含む。定荷重ばねは、患者内に拡張可能な気管内チューブを配置することを可能にする圧縮構成と、拡張可能なセグメントが患者の気管とのシールを形成して陽圧換気を可能にする拡張構成を有する。この方法は、さらに、拡張可能な膜が定荷重ばねを囲むように、拡張可能な膜をシャフトに取り付けることを含む。
【0005】
本発明の他の主要な特徴及び利点は、以下の図面、詳細な説明、及び添付の請求項のレビューに基づき、当業者に明らかになるであろう。
【0006】
以下、本発明の例示的な実施形態は、本発明の例示的な実施形態を添付の図面を参照して説明するが、ここで、同様の数字は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、例示的な実施形態による拡張可能な気管内チューブの拡大状態の側面図である。
【0008】
【
図1B】
図1Bは、例示的な実施形態に従った、圧縮状態にある拡張可能な気管内チューブの側面図である。
【0009】
【
図2A】
図2Aは、例示的な実施形態に従ったチューブの端面図である。
【0010】
【
図2B】
図2Bは、例示的な実施形態によるチューブの部分透過図である。
【0011】
【
図3A】
図3Aは、第1の例示的な実施形態に従った接続部を描いている。
【0012】
【
図3B】
図3Bは、第2の例示的な実施形態に従った接続部を描いている。
【0013】
【
図3C】
図3Cは、第3の例示的な実施形態に従った接続部を描いている。
【0014】
【
図4A】
図4Aは、例示的な実施形態に従った、断面線C:C、及びD:Dを有する拡張構成における拡張可能な気管内チューブを示す。
【0015】
【
図4B】
図4Bは、例示的な実施形態に従って、断面線E:Eを有する圧縮構成にある拡張可能な気管内チューブを示す。
【0016】
【
図4C】
図4Cは、例示的な実施形態に従った、断面線C:Cに沿った拡張可能な気管内チューブの断面図を示す。
【0017】
【
図4D】
図4Dは、例示的な実施形態に従った、断面線D:Dに沿った拡張可能な気管内チューブの断面図を示す。
【0018】
【
図4E】
図4Eは、例示的な実施形態に従った、断面線E:Eに沿った拡張可能な気管内チューブの断面図を示す。
【0019】
【
図5A】
図5Aは、例示的な実施形態に従った、単一の定荷重ばね505を有する拡張可能な気管内チューブ500を示す。
【0020】
【
図5B】
図5Bは、例示的な実施形態に従って、拡張可能な気管内チューブの制御ロッドの回転が、対応する定荷重ばねの動きを引き起こす仕組みを示す断面図である。
【0021】
【
図6A】
図6Aは、例示的な実施形態に従った、圧縮(又は拡張されていない)状態にある拡張可能な気管内チューブの側面図である。
【0022】
【
図6B】
図6Bは、例示的な実施形態に従った、圧縮状態にある拡張可能な気管内チューブのセグメントの拡大断面図である。
【0023】
【
図6C】
図6Cは、例示的な実施形態に従った拡張可能な気管内チューブの拡大状態の側面図である。
【0024】
【
図6D】
図6Dは、例示的な実施形態に従った、拡張状態にある拡張可能な気管内チューブの拡張可能なセグメントの拡大断面図である。
【0025】
【
図7A】
図7Aは、例示的な実施形態に従った接続部の斜視図である。
【0026】
【
図7B】
図7Bは、例示的な実施形態に従った接続部の遠位端の平面図である。
【0027】
【
図7C】
図7Cは、例示的な実施形態に従った接続部の下面である。
【0028】
【
図7D】
図7Dは、例示的な実施形態に従った接続部の近位端の平面図である。
【0029】
【
図7E】
図7Eは、例示的な一実施形態に従った接続部の断面側面図である。
【0030】
【
図8A】
図8Aは、例示的な一実施形態に従ったシャフトの部分透過斜視図である。
【0031】
【
図8B】
図8Bは、例示的な一実施形態に従ったシャフトの端面図である。
【0032】
【
図8C】
図8Cは、例示的な一実施形態に従ったシャフトの側面図である。
【0033】
【
図9A】
図9Aは、例示的な実施形態に従ったトラック(track)の斜視図である。
【0034】
【
図9B】
図9Bは、例示的な実施形態に従ったトラックの平面図である。
【0035】
【
図9C】
図9Cは、例示的な実施形態に従ったトラックの側面図である。
【0036】
【
図9D】
図9Dは、例示的な実施形態に従ったトラックの遠位端の断面図である。
【0037】
【
図10A】
図10Aは、例示的な実施形態に従った拡張可能な螺旋(helix)の斜視図である。
【0038】
【0039】
【
図10C】
図10Cは、例示的な実施形態に従った拡張可能な螺旋の近位端の断面図である。
【0040】
【
図11A】
図11Aは、例示的な実施形態に従った圧縮状態でのステント(stent)の斜視図である。
【0041】
【
図11B】
図11Bは、例示的な実施形態に従った圧縮状態でのステントの側面図である。
【0042】
【
図11C】
図11Cは、例示的な実施形態に従った圧縮状態でのステントの端面図である。
【0043】
【
図12A】
図12Aは、例示的な実施形態に従ったカフ(cuff)の斜視図である。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【発明を実施するための形態】
【0049】
従来の気管内チューブは、様々なサイズの患者に対応するために複数のサイズで製造されている。その結果、病院などの医療センターや、気管内チューブを使用する救急救命士(EMT)は、数多くの異なるチューブを備蓄しておく必要があり、運用に多大なコストがかかる。また、多数の異なるチューブがあると、医師は特定の患者に対して正しいサイズを選択する必要があり、そのため緊急時に時間が失われる可能性がある。患者ごとにチューブを選択することは、サイズ選択を行う際にヒューマンエラーが入り込む可能性もある。サイズが不適切な気管内チューブは、状況によっては患者への挿管が困難になったり、患者への換気が困難になることがある。カフを拡張した状態でチューブを所定位置に長期間留置すると、声門下狭窄が生じて患者を害する可能性もある。さらに、従来の気管内チューブは、別々の硬いスタイレットを挿管の際に必要とし、陽圧換気を可能にするように設計された遠位に位置するバルーンを膨らませるためのシリンジの使用を必要とする。スタイレットとシリンジは、追加的な部品であり、医療センター、EMTなどが在庫を維持し、全ての挿管にすぐに利用できるようにする必要がある。
【0050】
本明細書では、サイズにかかわらず、あらゆる患者に適合するように設計された拡張可能な気管内チューブが説明される。また、提案される気管内チューブは、別のスタイレットや別のシリンジを使用せずに機能する。その結果、提案された拡張可能な気管内チューブは、複数のチューブサイズ、関連するスタイレット、又は関連するシリンジを医療センターが備蓄する必要から解放する。また、拡張可能な気管内チューブは、患者に適切なサイズのチューブを決定するための意思決定プロセスを排除する。さらに、提案されたチューブは、シリンジでバルーンを膨らませる必要性を無くし、患者が圧迫壊死による軟部組織の損傷を受けるおそれを低下させる。本明細書に記載するように、提案されたチューブは、患者に傷害を与えることなく、できるだけ大きく拡張するように構成されている。患者の体内でのこの十分な拡張は、従来の気管内チューブと比較して、漏出を防止し、換気を改善する。拡張可能な気管内チューブは、一般的な手術の場合、集中治療室(ICU)の挿管された患者、救急治療室の挿管を必要とする患者、病院のフロアで緊急挿管を必要とする患者、EMTによる挿管を必要とする患者、及び患者が挿管を必要とする他のあらゆる処置又は状況において使用することができる。
【0051】
例示的な実施形態では、提案された拡張可能な気管内チューブは、2つの可能な形態を有する。挿管の形態では、チューブの拡張可能なセグメントは、硬質の又は半硬質のチューブ先端(又はブジー(bougie))がスタイレットとして機能するように圧縮された状態にある。例えば、チューブ先端は硬く、前方方向にわずかに曲がるように設計することができる。換気の形態では、チューブの拡張可能なセグメントは、提案されたチューブの遠位端がチューブの近位端の連続として作用するように拡張状態にあり、これにより、人工呼吸器からの空気が閉塞することなく患者に到達できるようになる。提案されている気管内チューブは、図を参考にして、以下に詳細に記載されている。
【0052】
図1Aは、例示的な実施形態に従って拡張された状態の拡張可能な気管内チューブ100の側面図である。
図1Bは、例示的な実施形態に従って圧縮された状態での拡張可能な気管内チューブ100の側面である。拡張可能な気管内チューブ100は、シャフト(又はチューブ)105を含む。シャフト105は、多種多様な患者に適合するようなサイズにすることができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、提案された拡張可能な気管内チューブ100は、小児患者と小さな成人患者の両方に使用することができる。議論されているように、このように幅広く患者のために単一の装置を使用できることは、在庫が必要な装置の数を著しく減少させ、医療施設が常に正しい在庫数量を有することを保証する助けとなる。1つの実施形態において、シャフトの全体の直径は6~10ミリ(mm)であり得る。代わりに、直径は、特定の患者サイズ又は状況に対して、6mm未満又は10mmを超えることができる。シャフトは、シリコン、ポリエチレンなどの任意の生体適合性材料から作ることができる。シャフトアダプター110は、シャフト105の近位端に装着され、気道アダプター115を受けるように設計されており、これは、拡張可能な気管内チューブ100の呼吸回路及び人工呼吸器への装着に使用することができる。シャフトアダプター110及び気道アダプター115は、1つの実施形態においてポリエチレンから作成することができる。別の方法として、異なる材料を用いてもよい。シャフトアダプター110及び気道アダプター115は、シャフト105に取り付けることができ、そして/又は摩擦嵌め、接着剤などによって互いに取り付けることができる。シャフト105内には、以下により詳細に説明するように、使用される制御ロッド120が、システムの拡張可能なセグメントを拡張して圧縮する。
【0053】
例示的な実施形態では、制御ロッド120を支持することに加えて、シャフト105はまた、センサの使用を可能にする。
図2Aは、例示的実施形態によるシャフト105の端面図である。
図2Bは、例示的な実施形態によるシャフト105の部分透過図である。図示のように、シャフト105の本体に形成されるのは、制御ロッドポート200であり、制御ロッド120が制御ロッドポート200内で回転することができるように、制御ロッド120を受け入れるような大きさにされている。制御ロッドポート200は、シャフト105の全長を伸長しており、それによって、以下で詳細に論じるように、制御ロッド120が、拡張可能な気管内チューブ100の拡張可能なセグメントに伸長する。加えて、シャフト105は、シャフト105の本体内に形成され、シャフトの全長にわたって延びるセンサポート205を含む。図示のように、制御ロッドポート200を含むシャフト105の本体部分は、センサポート205を含むシャフト105の本体部分よりも広い。センサポートは、患者監視のために、患者の気道(又はそれを越えて)に1つ又は複数のセンサを配置することを可能にする。1つの実施形態において、センサをワイヤに取り付けて、このワイヤをセンサポート205内に配置し、シャフト105を通って患者の気道内にセンサを送達するように、このワイヤを使用することができる。
【0054】
例示的な実施形態では、拡張可能な気管内チューブ100とともに使用されるセンサは、1つ以上の温度センサ及び/又は1つ以上の二酸化炭素(CO
2)センサを含むことができる。1つ又は複数の温度センサを使用して、患者の内部温度を監視する。1つ又は複数の二酸化炭素センサは、患者が吐き出したCO
2を同定し、チューブが最初に気管内に留置され、食道内に留置されないことを確認するのを助けるのに用いられる。加えて、吸入(FiCO
2)のCO
2及び呼気(ETCO
2)のCO
2の両方は、従来のシステムでは現在、OR及びICUの追加モニタにより管理されているが、このセンサを使用して、前記両方のCO
2を監視することができる。センサは、シャフト105内のセンサポート205を介して患者に取り付けることができる。センサによって感知されたデータは、コンピュータ装置(例えば、スマートフォン、タブレット、ノートなど)に有線又は無線通信を介して送信することができ、利用者は、コンピュータ装置を介してデータを監視することができる。
図2の実施形態は、2つのセンサポートを示す。代替の実施形態では、1つのセンサポート、3つのセンサポートなど、より少ない又は追加のセンサポートを使用することができる。
【0055】
図1に戻って参照すると、制御ロッド120は、第1の方向(例えば、時計回り)に回転されて、システムの拡張可能なセグメントを拡張し、第2の反対の方向(例えば、反時計回り)に回転されて、拡張可能なセグメントを圧縮する。制御ロッド120の回転は、接続部125、傾斜ロッド130、及びハンドル135を含む制御システムによって容易になる。利用者は、制御システムのハンドル135を操作して、制御ロッド120をいずれかの方向に回転させることができる。ハンドル135は、
図1においてホイールとして描かれているが、代替の実施形態では、他の構成のハンドルが使用されてもよい。他の実施形態では、ハンドル135は、ラチェットを介して制御ロッド120を回転させるように作用するばね仕掛けのボタン又はレバーで置き換えてもよい。傾斜ロッド130は、使用者がシャフト105、シャフトアダプター110、及び気道アダプター115に妨げられることなくハンドル135を操作できるように、シャフト105の近位端から離れるように角度付けされる。例示的な実施形態では、傾斜ロッド130は、シャフト105に対して20°と90°の間の角度で配置される。別の方法として、別の角度を用いてもよい。代替の実施形態では、傾斜ロッド130及び接続部125を使用しないで、ハンドル135を制御ロッド120に直接取り付けてもよい。
【0056】
図示の実施形態では、傾斜ロッド130は、ハンドル135と一体に回転し、その回転は、接続部125を介して制御ロッド120上に付与される。接続部は、例示的な実施形態において回転を提供するための歯車を含むことができる。
図3Aは、第1の例示的な実施形態に従って接続部を描いている。図示のように、この接続部は、傾斜ロッド130に取り付けられた第1歯車300と、例示の実施形態に従って制御ロッド120に取り付けられた第2歯車305とを含む。ハンドル135の回転は、傾斜ロッド130及びそれに取り付けられた第1歯車300の回転を引き起こす。この回転は、第1歯車300から第2歯車305に伝達され、第2歯車305が取り付けられている第2歯車305及び制御ロッド120の回転を引き起こす。
【0057】
図3Bは、第2の例示的な実施形態に従って接続部を描いている。図示するように、継手は、例示的な実施形態に従った、傾斜ロッド130に取り付けられた第1のUボルト310と、制御ロッド120に取り付けられた第2のUボルト315とを含む。ハンドル135の回転は、傾斜ロッド130及びそれに取り付けられた第1のUボルト310の回転を引き起こす。この回転は、第1のUボルト310から第2のUボルト315に伝達され、第2のUボルト315が取り付けられた第2のUボルト315及び制御ロッド120の回転を引き起こす。
図3Cは、第3の例示的な実施形態に従って接続部を描いている。図示のように、
図3Cの接続部は、例示の実施形態に従った、傾斜ロッド130と制御ロッド120との間に取り付けられた柔軟にされた可撓性接続部320である。ハンドル135の回転は、傾斜ロッド130及びそれに取り付けられた可撓性接続部320の回転を引き起こす。この回転は、可撓性接続部320から、可撓性接続部320の他端が取り付けられている制御ロッド120に伝達される。
【0058】
図1A及び1Bに戻って、拡張可能な気管内チューブ100の拡張可能なセグメントは、シャフト105の遠位端に配置される。拡張可能なセグメントは、静止している固定ロッド145を含む。固定ロッド145は、接着剤、オス/メスの摩擦嵌め接続等を用いてシャフト105に取り付けられる。定荷重ばね150(例えば、テンセータばね(tensator spring))は、圧縮及び拡張を提供するために、拡張可能セグメントに含まれる。定荷重ばね150は、第1先端部及び第2先端部を有する材料のコイル状に巻かれたストリップから形成される。定荷重ばね150は、1つの実施形態においてニチノールの薄板から形成することができ、シートの厚さは0.1mm未満とすることができる。代わりに、異なる材料及び/又は材料の厚さを用いてもよい。
【0059】
定荷重ばね150の各々の第1先端部は、固定ロッド145に取り付けられ、定荷重ばね150の各々の第2先端部は、制御ロッド120に取り付けられる。その結果、制御ロッド120の回転は、回転の方向に依存して、定荷重ばね150の拡張又は圧縮を引き起こす。
図1の実施形態は、2つの定荷重ばねを示す。しかしながら、代替の実施形態では、システムは、単一の定荷重ばね、3つの定荷重ばね、4つの定荷重ばねなどを含んでもよいことを理解されたい。拡張可能なセグメントはまた、スタイレットの代わりに、拡張可能な気管内チューブ100を患者に誘導するために使用されるブジー140も含む。ブジー140は、ゴム又は他の硬質又は半硬質の生体適合性材料から作ることができる。ブジー140は、実施形態に応じて、シャフト105、固定ロッド145、及び/又は定荷重ばね150に取り付けることができる。
【0060】
拡張可能な膜155は、接着剤又は他の取り付け技術を用いて、シャフト105の遠位端に装着され、定荷重ばね150と固定されたロッド145を囲む。拡張可能な膜155は、ゴム又は他の拡張可能な材料から作ることができる。拡張可能な膜155は、拡張可能な気管内チューブ100の患者への主要な接触点である。1つの実施形態において、拡張可能な膜は、6mm以下まで圧縮され、30mm以上まで拡張して、広範囲の患者に適応させる。あるいは、異なる寸法を用いてもよい。図に示すように、定荷重ばね150の間の間隔は、拡張可能な膜155内に形成された溝部160を生じる。この溝部160は、患者の気道内で輪状軟骨と接合するように設計されており、これは、拡張可能な気管内チューブと気管との間にシールを作り、システム内の陽圧空気の流れを可能にするのに役立つ。代替の実施形態では、拡張可能な膜155内に追加の定荷重ばねを含めることによって、追加の溝が形成され得る。例えば、3つの定荷重ばねを使用して、拡張可能な膜に2つの溝を提供することができ、4つの定荷重ばねを使用して、拡張可能な膜等に3つの溝を提供することができる。
【0061】
図4Aは、例示的な実施形態に従う、断面線C:C及びD:Dを有する拡張構成における、拡張可能な気管内チューブ100を示す。
図4Bは、例示的な実施形態に従う、断面線E:Eを有する圧縮構成における、拡張可能な気管内チューブ100を描いている。
図4Cは、例示的な実施形態に従った、断面線C:Cに沿った拡張可能な気管内チューブ100の断面図を示す。
図4Dは、例示的な実施形態に従った、断面線D:Dに沿った拡張可能な気管内チューブ100の断面図を示す。
図4Eは、例示的な実施形態に従った、断面線E:Eに沿った拡張可能な気管内チューブ100の断面図を示す。
図4D及び4Eに示されるように、定荷重ばね150の第1先端部は、制御ロッド120に取り付けられ、定荷重ばねの第2先端部は、制御ロッド120の回転が定荷重ばね150の全体の大きさ(直径)を調整するように、固定ロッド145に取り付けられる。
【0062】
図5Aは、例示的な実施形態に従った、単一の定荷重ばね505を有する拡張可能な気管内チューブ500を描いている。代替の実施形態では、追加の定荷重ばねを使用することができる。
図5Aの実施形態は、ハンドル507が、接続部及び傾斜ロッドを使用せずに制御ロッド510に直接取り付けられる代替の制御システムを含む。
図5Bは、拡張可能な気管内チューブ500の制御ロッド510の回転が、定荷重ばね505の対応する動きを引き起こす仕組みを、例示的な実施形態に従って示した断面図である。図示のように、定荷重ばね505の第1先端部は、固定ロッド515に取り付けられ、この固定ロッドは、シャフトの遠位端に取り付けられている。定荷重ばね505の第2先端部は、制御ロッド510に取り付けられる。制御ロッド510の時計回りの回転は、定荷重ばね505を制御ロッド510の周りに巻き付け、それによって、スプリングが圧縮されることが分かる。同様に、制御ロッド510の反時計回りの回転は、定荷重ばね505を制御ロッド510から巻き戻し、それによって、スプリングが拡張する。代替の実施形態では、拡張及び圧縮を促進するための回転方向は、時計回りの回転が拡張をもたらし、反時計回りの回転が圧縮をもたらすように反転されてもよい。
【0063】
図6~
図13は、圧縮と拡張を容易にするためにトラックシステムと拡張可能なステントを利用する拡張可能な気管内チューブの代替の実施形態を示している。具体的には、
図6Aは、例示的な実施形態に従った、圧縮された(又は拡張されていない)状態の拡張可能な気管内チューブ600の側面図である。
図6Bは、例示的な実施形態に従った、圧縮された状態の拡張可能な気管内チューブ600の拡張可能なセグメント605(ステント635の内側、カフ640の内側の螺旋630を含む)の拡大断面図である。
図6Cは、例示的な実施形態に従った、拡張された状態の拡張可能な気管内チューブ600の側面図である。
図6Dは、例示的な実施形態に従った、拡張可能な気管内チューブ600の拡張可能なセグメント605の拡大状態における拡大断面図である。
【0064】
拡張可能な気管内チューブ600は、呼吸回路及び人工呼吸器に取り付けるための接続部610(又はチューブ・ノズル(tube nozzle))を備える。接続部610は、拡張可能な気管内チューブ600のシャフト(又はチューブ)615の近位端に装着されている。拡張可能なセグメント605の近位端は、シャフト615の遠位端に装着されている。拡張可能なセグメント605の遠位端は、チューブ先端620に取り付けられる。この実施形態では、近位は、接続部610に向かって(すなわち、人工呼吸器に向かって)伸びる方向を指し、遠位は、チューブ先端620に向かって(すなわち、チューブが使用されているときに患者に向かって)伸びる方向を指す。
【0065】
トラック625は、シャフト615及び接続部610に取り付けられている。トラック625は、拡張可能なセグメント605の拡張と圧縮を制御するために使用される。拡張可能な気管内チューブ600の拡張可能なセグメント605は、トラック625に接続されている拡張可能な螺旋630を備える。その結果、トラック625の左右の移動は、拡張可能な螺旋630の左右の移動を引き起こす。具体的には、トラック625の遠位方向への移動は、拡張可能な螺旋630を拡張させ、トラック625の近位方向への移動は、拡張可能な螺旋を圧縮させる。この関係を
図6に示す。具体的には、
図6A(圧縮状態)は、
図6C(拡張状態)よりも、トラック625が接続部610から更に突出していることを示す。拡張可能な螺旋630の操作については、以下により詳細に説明する。
【0066】
拡張可能なセグメント605はまた、拡張可能な螺旋630の外側の周囲に装着されたステント635も含む。このように、ステント635は、拡張可能な螺旋630が拡張し、圧縮されるにつれて拡張し、圧縮する。カフ640は、ステント635の外表面の周りに取り付けられる。カフ640は、シャフト615の遠位端とチューブ先端620の近位端との間に伸びている。ステント635と同様に、カフ640も拡張可能な螺旋630とともに拡張し、圧縮する。拡張可能な気管内チューブ600の個々の要素については、
図7~13を参照してより詳細に記載されている。
【0067】
図7Aは、例示的な実施形態による接続部610の見方である。
図7Bは、例示的な実施形態による接続部610の遠位端700の平面図である。
図7Cは、例示的な実施形態による接続部610の下面図である。
図7Dは、例示的な実施形態による接続部610の近位端705の平面図である。
図7Eは、例示的な実施形態による接続部610の断面図である。
図7は、接続部610の各種の例示的な寸法(インチ単位)を含むことに留意されたい。これらの寸法は、本明細書に記載される実施形態のいずれでも使用することができる。しかしながら、これらの寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)が代替の実施形態で使用され得ることは理解されるべきである。
【0068】
例示的な実施形態では、接続部610はポリエチレンから作られている。別の方法として、異なる材料を用いてもよい。接続部610は、遠位端700と近位端705との間の仕切りとして作用するストッパ710を備える。接続部610がシャフト615に装着されると、ストッパ710の遠位側は、シャフト615の近位端に接触し、接続部610の遠位端700がシャフト615内に延びる距離を確定する。一実施形態では、接続部610の遠位端700は、シャフト615の内部に取り付けられる。接続部610は、摩擦嵌めにより、接着剤により、及び/又は他のいずれかの方法によって、シャフト615に固定することができる。接続部610の近位端705は、当該技術分野で知られているように、接続部610を標準的な呼吸回路及び人工呼吸器に装着することを可能にする一般的な取り付け具とすることができる。
【0069】
接続部610は、接続部610の近位端705を通って、ストッパ710を通って、接続部610の遠位端700を通る、接続部気道715を備える。接続部気道715は、シャフト615の気道と並んでおり、人工呼吸器から空気又は酸素を受けるように設計されている。また、接続部610は、
図6に示されるトラック625を受ける大きさに形成された接続部スロット720を備える。図示されるように、接続部スロット720は、接続部610の遠位端700の側壁に形成される。この側壁は、接続部スロット720を収容するように、様々な厚さを有する(すなわち、側壁の底部は更に厚い)。
図7Eの断面図に最も良くに示されるように、接続部スロット720は、接続部610の遠位端700の底部側から延び、接続部スロット720がシャフト615内に延びるように、遠位端700を通って外に延びる。その結果、接続部スロット720は、接続部610の遠位端700内にある角度で形成され、トラック625は、
図6A及び
図6Cに示されるように、所定の出口角で接続部610の下側から突出する。この出口角は、1つの実施形態において90°とすることができる。あるいは、70°、80°、100°、110°、120°など、異なる角度を使用することもできる。例示的な実施形態では、接続部610の接続部スロット720は、接続部610の近位端705内に伸びていない(すなわち、接続部スロット720は遠位端700に完全に組み込まれている)。
【0070】
上述のように、接続部610は、シャフト615の近位端に取り付けられる。
図8Aは、例示的な実施形態によるシャフト615の部分的に透明な視点である。
図8Bは、例示的な実施形態によるシャフト615の端部図である。
図8Cは、例示的実施形態によるシャフト615の側面図である。1つの実施形態において、シャフト615は、タイゴン(Tygon)から作成することができる。別の方法として、異なる生体適合性材料を用いることができる。
図8は、シャフト615の各種の例示的な寸法(インチ単位)を含むことに留意されたい。これらの寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)が代替の実施形態で使用され得ることは理解されるべきである。
【0071】
シャフト615は、シャフト615の全長に沿って伸びるシャフト気道800を備える。シャフト気道800は、接続部がシャフト615に取り付けられたとき、接続部610の接続部気道715と並ぶ。この配列により、拡張可能な気管内チューブの全長にわたって空気を自由に流すことができる。また、シャフト615は、接続部610がシャフト615に取り付けられたときに、接続部スロット720と整合するシャフトスロット805を含む。図示のように、シャフトスロット805は、シャフト615の側壁に形成される。この側壁は、シャフトスロット805を収容するように、様々な厚さを有し(すなわち、側壁の底部は更に厚い)。一実施形態では、シャフトスロット805は、シャフトスロット805の遠位端がその近位端よりも狭くなるように先細りすることができる。このような構成により、トラック625及び拡張可能な螺旋630の嵌合鋸歯状端部が、トラック625を取り付け又は取り外しできるように、シャフトスロット805内で互いに係合/係合解除するために、シャフトの近位端付近の十分な空間が得られる。例示的な実施形態では、シャフト615はポリマーから作ることができる。別の方法として、異なる生体適合性材料を使用してもよい。
【0072】
図9Aは、例示的な実施形態によるトラック625の斜視図である。
図9Bは、例示的な実施形態によるトラック625の平面図である。
図9Cは、例示的な実施形態によるトラック625の側面図である。
図9Dは、例示的な実施形態によるトラック625の遠位端910の断面図である。例示的な実施形態では、トラック625はナイロンから作られている。代わりに、他の生体適合性材料を使用してもよい。
図9は、トラック625の各種の例示的寸法(インチ単位)を含むことに留意されたい。これらの寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)が代替の実施形態で使用され得ることは理解されるべきである。
【0073】
トラック625の本体905は、接続部610の接続部スロット720及びシャフト615のシャフトスロット805内に嵌合するサイズとされる。トラック625の遠位端910は、拡張可能な螺旋630上の対応する鋸歯状の端部と一致する鋸歯状の端部915を含む。その結果、伸長可能な螺旋630は、トラック625との固定段階で移動する。図に示すように、遠位端910は、トラック625の本体905と比較して幅がより小さい。このより小さな幅は、トラック625が拡張可能な螺旋630と嵌合し、接続部610の接続部スロット720及びシャフト615のシャフトスロット805内に依然として嵌合することを可能にする。
【0074】
トラック625の近位端900は、トラック625を操作する制御ユニットと係合するように設計されたトラック接続部として形成される。制御ユニットは、拡張可能な気管内チューブ600に取り付けることができるか、又は実施形態に応じて、そこから分離することができる。コントロールユニットは、内蔵トリガを含む段階的ロックシステムとすることができる。トリガが起動されるたびに、トラック625は前方(すなわち、遠位方向)に移動され、所定の位置にロックされ、これにより、拡張可能な螺旋630はまた、接続部スロット720及びシャフトスロット805内で遠位方向に移動する。拡張可能な螺旋630が遠位に移動するにつれて、拡張し、拡張可能なセグメント605全体を拡張させる。したがって、拡張量は、提案された管の利用者によって正確に制御され、所望の直径に維持され得る。1つの実施形態において、トリガの起動に応答してトラック625が移動する距離は、約0.32mm(0.0125インチ)であり得る。或いは、別の距離を用いてもよい。
【0075】
抜管中に拡張可能な部分605を圧縮するために、段階的ロックシステムは外される。一実施形態では、ロックシステムを解除すると、トリガの起動時にトラック625が移動する方向が逆になる。このような実施形態では、利用者は、拡張可能な部分605が圧縮されるまでトリガを繰り返し起動することができる。あるいは、ロックシステムを外すことにより、トラック625がスロット内を自由に移動することができ、これにより、トラック625がユーザによって容易に退縮されることができる。その結果、トラック625は容易に移動でき、拡張機構は抜管によって元の状態にたためられる。例示的な実施形態において、トラック625は、
図6Aに示されるように、接続部610の出口角に適合できるように、少なくとも半可撓性である。
【0076】
図10Aは、例示的な実施形態による拡張可能な螺旋630の全体像である。
図10Bは、例示的な実施形態による拡張可能な螺旋の側面図である。
図10Cは、例示的な実施形態による拡張可能な螺旋630の近位端1000の断面図である。
図10は、拡張可能な螺旋630の様々な例寸法(インチ単位)を含む。これらの寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)が代替の実施形態で使用され得ることは理解されるべきである。
【0077】
拡張性螺旋630は、1つの実施形態においてナイロン及び/又は鋼から作ることができる。別の方法として、異なる材料を用いてもよい。拡張可能な螺旋630は、近位端1000、近位端1000に接続された本体1005、本体1005に接続された螺旋1010(又は螺旋部分)、及びチューブ内に固定されて静止しているように装着されている遠位端1015を含む。例示的な実施形態では、遠位端1015は、ファスナー、クリップ、接着剤、又は他の技術を用いてチューブ先端620に固定されている。別の例示的な実施形態では、拡張可能な螺旋630の本体1005は、約0.05インチの側面長を有する方形のプロファイルを有することができる。代わりに、異なる形状のプロファイル(例えば、円形、長方形、三角形など)及び/又は異なるサイズが、拡張可能な螺旋630の本体1005のプロファイルのために使用され得る。
【0078】
拡張可能な螺旋630の近位端1000は、トラック625の遠位端910上に形成された鋸歯状の端部915と一致するように設計された鋸歯状端部1020を含む。議論されるように、この一致により、拡張可能な螺旋630はトラック625と連動して移動する。拡張可能な螺旋630の遠位端1015は固定されている(すなわち、静止している)ため、近位端1000の遠位方向への移動により、螺旋1010は直径が拡大する。図に示すように、螺旋630の少なくとも一部がステント635内に収まり、これが次にカフ640内に収まる。代替の実施形態では、鋸歯状端部の代わりに、拡張可能な螺旋630及びトラック625は、オフセット方形波パターン等の他の嵌合要素を含むことができる。別の代替実施形態では、トラック625を拡張可能な螺旋630に一体的に取り付けることができる。
【0079】
図11Aは、例示的な実施形態による圧縮状態でのステント635の斜視図である。
図11Bは、例示的な実施形態による圧縮状態でのステント635の側面図である。
図11Cは、例示的な実施形態による圧縮状態でのステント635の端面図である。
図11で使用される寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)を代替の実施形態で使用することができる。
【0080】
例示的な実施形態では、ステント635は拡張可能なスチールメッシュとして形成することができる。しかしながら、当該技術分野で公知の任意のタイプの拡張性ステントを使用してもよい。例示的な別の実施形態では、ステント635の近位端は、シャフト615の遠位端内に固定することができ、ステント635の遠位端は、チューブ先端620の近位端内に固定することができる。そのように、拡張の間、ステント635の末端は静止したままである。ステントの末端は、摩擦嵌め、接着剤、クリップ、接続部、又は他のいずれかの方法を介して固定することができる。
【0081】
図12Aは、例示的な実施形態によるカフ640の斜視図である。
図12Bは、例示的な実施形態によるカフ640の側面図である。
図12Cは、例示的な実施形態によるカフ640の端の図である。他の図と同様に、
図12で使用される寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)を代替の実施形態で使用することができる。
【0082】
図6に示すように、カフ640(又は拡張可能なカフ)は、シャフト615とチューブ先端620の両方の外表面を包み込み、密着する。密着は、摩擦嵌め、接着剤、又は他の技術を用いて達成することができる。カフ640は、ステント635を受け入れるようなサイズの通路1200を備える。人工呼吸器からの空気はまた、通路1200を通ってチューブ先端620に流れ込む。例示的な実施形態では、カフ640は、ニトリルゴムから作製することができる。あるいは、ポリマーなどの異なる生体適合性材料を使用してもよい。カフ640は、従来の気管内チューブに使用されていたバルーンと本質的に置き換わる。
図12に描かれているように、カフ640は、静止時で圧縮された状態にある。
【0083】
拡張可能なセグメント605を拡張する際、カフ640は、人工気道の周囲に漏れが生じないように患者の気管に接触する。例示的な実施形態では、拡張可能なセグメント605は、気管内の軟骨輪の周囲にそれ自体を形成することによって、気管との最大の接触点まで拡張される。しかし、この最大の接触によって気管に過度の圧力がかかることはない。カフ640が提供する有意な表面積の接触のために、従来の気管内チューブと比較して、気管粘膜上の圧力の量が減少する。加えて、提案されたチューブによって作り出すことが可能な最大圧力が、安全であることが知られている閾値を下回っていることを、試験によって確認した。この最大圧力は、提案されたチューブに使用される材料のサイズと種類によって決まる。例えば、拡張可能な螺旋630の剛性及び/又はカフ640の柔軟性を変化させて、拡張可能なセグメント605が拡張状態において示すことができる最大圧力を変化させることができる。さらに、拡張可能な螺旋630が最大直径にあるとき、ステント635も、その構成により、必然的に最大直径になる。カフ640は、拡張セグメント605のうち、患者と直接接触する唯一の部分であることに注意する。
【0084】
図13Aは、例示的な実施形態によるチューブ先端620の斜視図である。
図13Bは、例示的な実施形態によるチューブ先端620の側面図である。
図13Cは、例示的な実施形態によるチューブ先端620の端面図である。他の図と同様に、
図13で用いられている寸法は単なる例であり、他の寸法(又はサイズ)を代替の実施形態で用いてもよい。
【0085】
チューブ先端620は、ステント635を受け入れるようなサイズの通路1300を備える。また、人工呼吸器からの空気は、通路1300を通って、チューブ先端620の端から抜け出して、患者の中に流れ込む。具体的には、チューブ先端620は、第1開口部1305と、人工呼吸器からの空気がチューブ先端620を離れて患者に入る第2開口部1310とを備える。第1開口部1305は、チューブ先端620の遠位端に位置し、患者の気道への挿入を容易にする角度で先細りに形成されている。第2開口部1310は、チューブ先端620の側壁に位置し、患者の気道内へのチューブの前進をさらに補助するための通気孔として使用される。例示的な実施形態では、チューブ先端620は、挿管の際にスタイレットとして作用するような硬い材料から作ることができる。例えば、チューブ先端620は、ポリエチレン又は高密度ポリエチレン(HDPE)などの硬いポリマーから形成されてもよい。別の方法として、異なる生体適合性材料を使用してもよい。いくつかの実施形態において、チューブ先端620は、前方方向にわずかに湾曲されていてもよい。
【0086】
1つの実施形態において、提案された拡張可能な気管内チューブは、1つ以上の温度センサ及び/又はそれに取り付けられた1つ以上の二酸化炭素(CO2)センサを含むこともできる。1つ又は複数の温度センサを使用して、患者の内部温度を監視する。1つ以上の二酸化炭素センサを使用して、患者が吐き出したCO2を識別し、チューブが最初に気管内に留置され、食道内に留置されないことを確認するのを助ける。加えて、このセンサは、OR及びICU内の追加されたモニタによって現在管理されている吸い込み(FiCO2)のCO2及び呼気(ETCO2)のCO2の両方をモニタするために使用することができる。センサは、拡張可能な気管内チューブ内(例えば、シャフト615、拡張可能なセグメント605、及び/又はチューブ先端620内)に取り付けることができる。あるいは、センサは、シャフト615、拡張可能なセグメント605、及び/又はチューブ先端620の外面に取り付けることができる。センサによって感知されたデータは、コンピュータ装置(例えば、スマートフォン、タブレット、ノートなど)に有線又は無線通信を介して送信することができ、利用者は、コンピュータ装置を介してデータを監視することができる。
【0087】
このように、本明細書に記載されるのは、補助的な用具の必要性(すなわち、複数サイズのチューブ、シリンジ、及びスタイレット)、使用前の在庫の有効期限、及び複数のチューブの準備によって生じる廃棄物を減少させながら、気管内挿管の効率を高める拡張可能な気管内チューブである。提案したチューブは、チューブが気管組織に接触する経路による気道刺激の頻度と重症度も低下させる。
【0088】
本明細書に記載されている操作/プロセスのいずれも、少なくとも部分的には、処理装置、記憶装置、送受信機、ユーザインターフェイス等を含む計算システムによって実施され得ることは理解されるべきである。記述された動作/プロセスは、コンピュータシステム記憶装置のようなコンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータ可読命令として実現することができる。プロセッサによって実行されると、コンピュータが読取可能な指示は、コンピュータシステムに、チューブが拡張して圧縮されるようにトラックを操作するための制御ユニットの動作など、ここに記載された動作/プロセスを実行させる。
【0089】
ここで「例示的」という言葉は、例、例証、又は例示として役立つことを意味するために使用される。本明細書に「例示的」として記載される任意の態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるわけではない。さらに、本開示の目的上、また別段の規定がない限り、「a」又は「an」は、「1以上」を意味する。
【0090】
本発明の例示的な実施形態の上述の説明は、例示及び説明の目的のために提示されている。前述した説明は網羅的であることは意図されず、また開示された正確な形態に発明を限定することも意図されず、修正例及び変形例は、前述した教示を考慮して可能であり、又は本発明の実行から得られてもよい。実施態様は、本発明の原理を説明するために、及び本発明の実用的用途として、当業者が様々な実施態様において本発明を利用することを可能にし、また意図する特定の使用に適した様々な改変を行うことを可能にするために、選択され、記載された。本発明の範囲は、本発明に添付されるクレーム及びそれらの当量によって定義されることが意図されている。
なお、本発明の実施形態の態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
気道を有するシャフトと;
前記シャフトの遠位端に取り付けられた拡張可能なセグメントと、を含む、拡張可能な気管内チューブであって、前記拡張可能なセグメントは:
拡張可能な膜と;
前記拡張可能な膜内に配置された定荷重ばねと、を含み;前記定荷重ばねは、前記拡張可能な気管内チューブを患者内に配置することを可能にする圧縮構成と、前記拡張可能な膜が、前記患者の気管とシールを形成して陽圧換気を可能にする拡張構成と、を有する、
拡張可能な気管内チューブ。
[態様2]
前記シャフトの近位端に取り付けられた気道アダプターを更に含み、前記気道アダプターは人工呼吸器に接続する、態様1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様3]
前記定荷重ばねの第一端に取り付けられた制御ロッドを更に含む、態様1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様4]
前記シャフトの本体に形成された制御ロッドポートを更に含み、前記制御ロッドが前記制御ロッドポート内で回転することができるように、前記制御ロッドを収容する、態様3に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様5]
固定ロッドを更に含み、前記固定ロッドが、前記シャフトに対して静止するように前記シャフトの遠位端に取り付けられた、態様3に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様6]
前記定荷重ばねの第二端が、第一の方向への前記制御ロッドの回転が前記定荷重ばねの拡張を生じ、第二の方向への前記制御ロッドの回転が前記定荷重ばねの圧縮を生じるように、前記固定ロッドに取り付けられる、態様5に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様7]
傾斜ロッドを更に含み、前記傾斜ロッドは、前記傾斜ロッドの回転が前記制御ロッドの回転を引き起こすような角度で、前記制御ロッドに取り付けられる、態様3に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様8]
前記傾斜ロッドと前記制御ロッドとを接続する接続部を更に含み、前記接続部は、前記傾斜ロッドに取り付けられた第1歯車と、前記制御ロッドに取り付けられた第2歯車とを含み、前記第1歯車が前記第2歯車と噛み合うようになっている、態様7に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様9]
ハンドルをさらに含み、前記ハンドルの回転が前記傾斜ロッドの回転をもたらすように、前記ハンドルは、前記傾斜ロッドに取り付けられた、態様7に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様10]
ブジーをさらに含み、前記ブジーが前記拡張可能な膜の遠位端を越えて伸長するように、前記ブジーは、前記シャフトの遠位端に取り付けられた、態様1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様11]
前記シャフトの本体に形成されたセンサポートをさらに含み、前記センサポートが前記シャフトに沿って長さ方向に伸びて前記拡張可能なセグメントへのアクセスを提供する、態様1に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様12]
前記センサポート内にセンサをさらに含み、前記センサが温度センサ又は二酸化炭素センサを含む、態様11に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様13]
前記定荷重ばねが第1の定荷重ばねを含み、さらに、第2の定荷重ばねを含み、前記第2の定荷重ばねは、前記第1の定荷重ばねと前記第2の定荷重ばねとの間に間隙があるように、前記拡張可能な膜内に配置された、態様11に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様14]
前記拡張可能な膜内に溝部をさらに含み、前記溝部が、前記第1の定荷重ばねと前記第2の定荷重ばねとの間の前記間隙に位置し、前記間隙が患者の気道内の軟骨輪を受けるような大きさに形成されている、態様13に記載の拡張可能な気管内チューブ。
[態様15]
拡張可能な気管内チューブを作製する方法であって、前記作製する方法は:
近位端と遠位端を有するシャフトであって、前記シャフトは前記シャフト内を長さ方向に通る気道を有する、シャフトを形成することと;
固定ロッドを前記シャフトの遠位端に装着することと;
前記シャフトの遠位端への拡張可能なセグメントを装着することと、を含み、前記拡張可能なセグメントを装着することは:
定荷重ばねの第一端を前記固定ロッドに取り付けるように定荷重ばねを装着することであって、前記定荷重ばねは、患者内に前記拡張可能な気管内チューブを配置することを可能にする圧縮構成と、前記拡張可能なセグメントが前記患者の気管とのシールを形成して陽圧換気を可能にする拡張構成と、を有する、前記定荷重ばねを装着すること;及び
前記拡張可能な膜が前記定荷重ばねを囲むように前記シャフトに前記拡張可能な膜を装着すること、を含む、
拡張可能な気管内チューブを作製する方法。
[態様16]
前記シャフトを形成することが、更に、前記シャフトの本体内に制御ロッドポートを形成することを含み、前記制御ロッドポートが前記シャフトの遠位端まで伸びる、態様15に記載の方法。
[態様17]
制御ロッドが前記制御ロッドポート内で回転するように、前記制御ロッドポート内に前記制御ロッドを取り付けることを更に備える、態様16に記載の方法。
[態様18]
前記定荷重ばねを装着することは、前記定荷重ばねの第2先端部を前記制御ロッドに装着することを含み、第1の方向への前記制御ロッドの回転は、前記定荷重ばねの拡張をもたらし、第2の方向への前記制御ロッドの回転は、前記定荷重ばねの圧縮をもたらす、態様17に記載の方法。
[態様19]
前記シャフトを形成することが、更に前記シャフトの本体内に1つ以上のセンサポートを形成することを含む、態様15記載の方法。
[態様20]
ブジーが前記拡張可能なセグメントの遠位端を越えて伸長するように、前記シャフトの遠位端に前記ブジーを装着することを更に含む、態様15記載の方法。