IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キトーの特許一覧

<>
  • 特許-吊り金具 図1
  • 特許-吊り金具 図2
  • 特許-吊り金具 図3
  • 特許-吊り金具 図4
  • 特許-吊り金具 図5
  • 特許-吊り金具 図6
  • 特許-吊り金具 図7
  • 特許-吊り金具 図8
  • 特許-吊り金具 図9
  • 特許-吊り金具 図10
  • 特許-吊り金具 図11
  • 特許-吊り金具 図12
  • 特許-吊り金具 図13
  • 特許-吊り金具 図14
  • 特許-吊り金具 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】吊り金具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B66C1/66 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022569821
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043220
(87)【国際公開番号】W WO2022130929
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020207773
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【弁理士】
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理佳
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-186882(JP,A)
【文献】特開平10-25087(JP,A)
【文献】特開2007-162868(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3141516(EP,A1)
【文献】英国特許出願公開第2564114(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷の取付面に固定され、前記荷の吊り作業時に使用される吊り金具であって、
前記荷の取付面の直交方向を軸として回転する回転連結部材と、
前記荷の取付面に設けた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有し、前記回転連結部材を軸支するアンカー金具と、
を備え、
前記回転連結部材は、
本体部と、
前記本体部の上方に設けられたアーチ状の梁部と、
前記本体部の上部に前記梁部を設けることで形成された開口部と、
を有し、
前記梁部の幅方向における両端部に有する2つの側面のうち、少なくともいずれか一方の側面の少なくとも一部は、前記回転連結部材の平面視において、前記梁部の延在方向における前記梁部の中点、又は前記中点から前記延在方向から所定量ずれた位置で外方に突出した形状であることを特徴とする吊り金具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り金具において、
前記側面は、外方に向けて折り曲げた少なくとも2つの平面を接合させて構成され、
前記側面の頂点は、前記回転連結部材の平面視において、前記梁部の延在方向における中点を通り、且つ前記梁部の延在方向と直交する方向に延びる直線上に配置されることを特徴とする吊り金具。
【請求項3】
請求項1に記載の吊り金具において、
前記側面は、外方に向けて折り曲げた少なくとも2つの平面を接合させて構成され、
前記側面の頂点は、前記回転連結部材の平面視において、前記梁部の延在方向における中点から、前記梁部の両端部のいずれか一方の端部側に所定量ずれた位置に配置されることを特徴とする吊り金具。
【請求項4】
請求項1に記載の吊り金具において、
前記開口部は、前記開口部の中心軸が前記回転連結部材の回転軸と直交するように設けられることを特徴とする吊り金具。
【請求項5】
請求項1に記載の吊り金具において、
前記開口部には、前記回転連結部材に係合されるリンクが挿通される
ことを特徴とする吊り金具。
【請求項6】
請求項5に記載の吊り金具において、
前記リンクは、棒部材を、2つの半円弧部と、これら2つの半円弧部とをつなぐ2つの直線部とを有する長円形状に屈曲させたものであり、
前記開口部の直径は、前記棒部材の直径よりも大きく、前記リンクに設けた2つの半円弧部の最大半径よりも小さい
ことを特徴とする吊り金具。
【請求項7】
請求項1に記載の吊り金具において、
前記アンカー金具は、前記回転連結部材を回転自在に連結する金具連結部を有し、
前記金具連結部の上面の外形は、前記本体部の下面の外形よりも大きい
ことを特徴とする吊り金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷の吊り作業や、荷の引き起こし作業や反転作業等を行う際に用いられる吊り金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷の吊り上げ作業、荷の引き起こしや反転作業等を行う際に荷に取り付ける金具として、アイボルト(吊り金具)が用いられる。吊り金具は、雄ねじ部を荷が有する雌ねじ部に螺合し、荷の取付面に締め付けられた状態で使用される。上記作業においてアイボルトに作用する荷重の向きが悪いと、ねじの締め付けが緩む方向に回転し、その状態で使用し続けると、ねじの脱落やねじ部が折れ曲がる又は破断する虞があり危険である。
【0003】
近年では、ねじ部の軸方向を中心として360°回転する保持部と、保持部に揺動自在に軸支されるシャックルを備えた吊り金具や、ねじ部の軸心を中心として360°回転する回転連結部材と、回転連結部材に係合された長円形状のリンクとを有する吊り金具など、自在型の吊り金具が種々提供されている。これら自在型の吊り金具は、荷に締め付けられたねじ部を回転中心として保持部や回転連結部材が回動するため、ねじ部が緩むことがなく、上記事象の発生を防止することができる。
【0004】
例えば、ねじ部の軸心を中心として360°回転する回転連結部材と、回転連結部材に係合されるリンクとを有する吊り金具の場合、回転連結部材に取り付けたリンクは、回転連結部材に対して揺動するだけでなく、リンクの形状に沿って移動することができる構造となっている。したがって、リンクが荷を吊り上げるのに適していない状態のまま、荷を吊り上げてしまう場合があり、荷を吊り上げたときに吊り金具に過度な荷重が懸かり危険である。
【0005】
荷を吊り上げる過程で、環状のリンクと回転連結部材との相互の状態(姿勢)を、荷を吊り上げるのに適した状態に矯正することができる吊り金具も提供されている(特許文献1参照)。この吊り金具の場合、回転連結部材の開口部を、開口部の中心の位置をねじ部の軸方向から所定量ずらして配置し、また、吊り金具の平面視において、環状部の幅を開口部をずらした方向に向けて狭くなるように形成した構造となっている。このような構造を用いることで、荷を吊り上げる過程でリンクが回転連結部材の幅が狭くなる一端側に移動されながら、回転連結部材がねじ部の軸方向を中心として回転する。これら動作を行うことで、環状のリンクと回転連結部材との相互の状態が、荷を吊り上げるのに適した状態に矯正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/029385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した自在型の吊り金具の場合、環状のリンクと回転連結部材との相互の状態が、荷を吊り上げるのに適した状態となるように矯正する場合、環状のリンクは、常に回転連結部材の幅が狭くなる一端側に移動することになる。つまり、回転連結部材の一端側のみがリンクとの摩擦により摩耗しやすく、吊り金具自体の寿命が短くなる恐れがある。また、開口部の中心位置がねじ部の軸心から所定量ずらして配置されているので、偏芯荷重が作用し好ましくない。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、荷を吊り上げる過程で、吊り上げ方向に対する環状のリンクと回転連結部材との相互の状態を矯正する構造で、回転連結部材の一端側のみが摩耗することによる寿命が短くなることを防止可能な吊り金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するに当たり、吊り金具の一態様は、荷の取付面に固定され、前記荷の吊り作業時に使用される吊り金具であって、前記荷の取付面の直交方向を軸として回転する回転連結部材と、前記荷の取付面に設けた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有し、前記回転連結部材を軸支するアンカー金具と、を備え、前記回転連結部材は、本体部と、前記本体部の上方に設けられたアーチ状の梁部と、前記本体部の上部に前記梁部を設けることで形成された開口部と、を有し、前記梁部の幅方向における両端部に有する2つの側面のうち、少なくともいずれか一方の側面の少なくとも一部は、前記回転連結部材の平面視において、前記梁部の延在方向における前記梁部の中点、又は前記中点から前記延在方向から所定量ずれた位置で外方に突出した形状であることを特徴とする。
【0010】
また、前記側面は、外方に向けて折り曲げた少なくとも2つの平面を接合させて構成され、前記側面の頂点は、前記回転連結部材の平面視において、前記梁部の延在方向における中点を通り、且つ前記梁部の延在方向と直交する方向に延びる直線上に配置されるものである。
【0011】
また、前記側面は、外方に向けて折り曲げた少なくとも2つの平面を接合させて構成され、前記側面の頂点は、前記回転連結部材の平面視において、前記梁部の延在方向における中点から、前記梁部の両端部のいずれか一方の端部側に所定量ずれた位置に配置されるものである。
【0012】
また、前記開口部は、前記開口部の中心軸が前記回転連結部材の回転軸と直交するように設けられるものである。
【0013】
また、前記開口部には、前記回転連結部材に係合されるリンクが挿通されるものである。
【0014】
なお、前記リンクは、棒部材を、2つの半円弧部と、これら2つの半円弧部とをつなぐ2つの直線部とを有する長円形状に屈曲させたものであり、前記開口部の直径は、前記棒部材の直径よりも大きく、前記リンクに設けた2つの半円弧部の最大半径よりも小さいことが好ましい。
【0015】
また、前記アンカー金具は、前記回転連結部材を回転自在に連結する金具連結部を有し、前記金具連結部の上面の外形は、前記本体部の下面の外形よりも大きいものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、荷を吊り上げる過程でアンカー金具に対するリンクの姿勢を矯正する構造で、回転連結部材の一端側のみが摩耗することによる寿命が短くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の吊り金具の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す吊り金具を分解して示す斜視図である。
図3】回転連結部材の構造の一例を示す斜視図である。
図4図4(a)は回転連結部材の梁部の側面の構成について説明する平面図、図4(b)は回転連結部材の梁部の幅について説明する平面図である。
図5図4(a)は、図4(b)に示すI-I断面図、図5(b)は、図5(a)に示すII-II断面図である。
図6図5(a)は、リンクの半円弧部が回転連結部材の開口部に挿通された状態でリンクが保持された吊り金具の一例を示す斜視図、図5(b)は、リンクの直線部が回転連結部材の開口部に挿通された状態でリンクが保持された吊り金具の一例を示す斜視図である。
図7図7(a)は、リンクの半円弧部が回転連結部材の開口部に挿通された状態でリンクにz方向の力Hを作用させた場合の吊り金具の一例を示す斜視図、図7(b)は、図7(a)に示す吊り金具のリンク及び回転連結部材の状態を示す断面図である。
図8】リンクにz方向の力Hが作用しなくなった場合の吊り金具の一例を示す斜視図である。
図9図9(a)は、リンクの直線部が回転連結部材の開口部に挿通された状態でリンクにx方向の力Jを作用させた場合の吊り金具の一例を示す斜視図、図9(b)は、図9(a)に示す吊り金具のリンク及び回転連結部材の状態を示す断面図、図9(c)は、図9(a)に示す吊り金具の平面図である。
図10】リンクにx方向の力Jが作用しなくなった場合の吊り金具の一例を示す斜視図である。
図11図9(a)において、リンクに斜め上方に力Kを作用させた場合の吊り金具のリンク及び回転連結部材の状態を示す断面図である。
図12図12(a)は回転連結部材の梁部の側面の他の形態の構成について説明する平面図、図12(b)は回転連結部材の梁部の幅について説明する平面図である。
図13図13(a)は、図12(b)に示すIII-III断面図、図5(b)は、図13(a)に示すIV-IV断面図である。
図14図14(a)は、吊り金具の平面図、図14(b)は、図14(a)に示す吊り金具のリンク及び回転連結部材の状態を示す断面図である。
図15図15(a)は、吊り金具の他の実施の形態を示す斜視図、図15(b)は、図15(a)に示す吊り金具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態の吊り金具の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態では、後述するアーチ状の梁部37の幅をx方向とし、アーチ状の梁部37の両端を結ぶ方向(梁部37の長さ方向)をy方向とし、アーチ状の梁部37の厚さ(高さ)方向をz方向とする。なお、後述する雄ねじ部21の軸方向はz方向と一致する。
【0019】
本実施形態で説明する吊り金具10は、いわゆる吊り金具の一種であり、荷の取付面に固定されて、荷の吊り上げ作業の他、引き起こし作業や反転作業等を行う際に用いられる。
【0020】
図1及び図2に示すように、吊り金具10は、アンカー金具11、回転連結部材12及びリンク13を有する。
【0021】
アンカー金具11は、不図示の荷に取り付けられる部分であり、本実施の形態では、アンカー金具11は、概ね六角ボルトの頭部に凹みを形成した形状に設けられている。アンカー金具11は、雄ねじ部21、アンカー座部22及び金具連結部23を有する。
【0022】
雄ねじ部21は、金具連結部23の下面から、該下面に直交する方向(z方向)に、後述する金具連結部23の挿入空間24とは反対方向に軸心を一致して延出される。雄ねじ部21は、外周面に雄ねじが形成されている軸状の部分である。雄ねじ部21は、荷の取り付け穴に設けられた雌ねじに捻じ込まれる。それにより、アンカー金具11が荷に固定される。
【0023】
アンカー座部22は、金具連結部23の下端側において、金具連結部23と一体化されている。アンカー座部22は、吊り金具10を荷の取付面(図示省略)に固定したときに荷の取付面に当接され、アンカー金具11と荷との間に隙間が発生することを防止する。アンカー座部22は、金具連結部23の下端部に、雄ねじ部21の周囲に円形のリング状として設けられていてもよいし、円盤状に設けられていてもよい。
【0024】
金具連結部23は、工具での操作がしやすいボルトの頭部に相当する部材である。つまり、金具連結部23は、スパナ等の工具に嵌合可能な形状(たとえば六角柱形状)である。したがって、金具連結部23を工具に嵌合させることで、雄ねじ部21を荷の雌ねじに捻じ込むことが容易になり、アンカー金具11を締め付ける際の作業性が向上する。
【0025】
金具連結部23は、回転連結部材12と連結される部分である。金具連結部23は、上面が開口された挿入空間24を有する。挿入空間24は、回転連結部材12の回転軸部33が挿入される。
【0026】
挿入空間24に対面する内周面には、断面が略半円形状の凹部24aが全周に亘って形成されている。凹部24aは、回転連結部材12の回転軸部33が挿入空間24に挿入されたときに、回転連結部材12の回転軸部33に設けた凹部33aと対面してドーナツ形状の通路(図示省略)を形成する。ドーナツ形状の通路には、複数のベアリング球30が配置される。通路内に複数のベアリング球30を配置することで、金具連結部23に対する回転連結部材12の回転を円滑に行うことができる。
【0027】
なお、図示は省略するが、複数のベアリング球30は、アンカー金具11の挿入空間24に回転連結部材12の回転軸部33を挿入した状態で、金具連結部23に設けた雌ねじ孔(図示省略)からドーナツ形状の通路内に挿入される。雌ねじ孔から複数のベアリング球30をドーナツ形状の通路の内部に挿入することで、アンカー金具11と回転連結部材12とが連結され、回転連結部材12がアンカー金具11に軸支された状態となる。なお、雌ねじ孔は、六角孔付きのねじ棒などで封止される。その結果、ベアリング球30が雌ねじ孔から逸脱することを防止することができる。
【0028】
金具連結部23は、挿入空間24の上端部に、挿入空間24に連なる段差部24bを有する。段差部24bは、複数のベアリング球31を全周に亘って配置する。回転連結部材12の回転軸部33を金具連結部23の挿入空間24に挿入すると、段差部24bに配置した複数のベアリング球31は、段差部24bと、回転連結部材12との間に保持される。金具連結部23の段差部24bと回転連結部材12との間に複数のベアリング球31を保持することで、回転連結部材12に作用するラジアル荷重とスラスト荷重とを、ベアリング球31のそれらと分担して回転可能に支持する。
【0029】
回転連結部材12は、リンク13が係合される部材である。回転連結部材12は、アンカー金具11に対して図1中E1方向又はE2方向(回転軸部33の周方向)に回転自在である。図3に示すように、回転連結部材12は、本体部32及び回転軸部33を有する。本体部32は、例えば、回転連結部材12の平面視において、円盤状の本体部32の上面に180°間隔で設けられた2つの隆起部35,36と、2つの隆起部35,36に跨って配置されるアーチ状の梁部37と、を有する。2つの隆起部35,36に跨って梁部37を配置することで、梁部37と2つの隆起部35,36とが、本体部32の上面に環状部を形成する。また、梁部37と2つの隆起部35,36とにより環状部が形成されることで、本体部32は、これらに囲まれた開口部39を有する。回転連結部材12は、連なる2つの面の境界部分に対して、R面取り加工が施されている。
【0030】
2つの隆起部35,36の間には、梁部37の延在方向と直交する方向に凹部(溝部)38が設けられる。凹部38は、梁部37の下方に設けられる開口部39に連なって設けられる。なお、隆起部35,36は、梁部37の側面41,42に向けて上り傾斜した斜面である上面を各々有する。
【0031】
図4(a)に示すように、梁部37は、図4(a)中x方向の両端部に側面41,42を有する。一方の側面41は、吊り金具10の平面視において、2つの平面41a,41bを、本体部32の外周縁(外方)に向けて凸状となるように折曲して接合した形状である。同様にして、梁部37の他方の側面42は、吊り金具10の平面視において、2つの平面42a,42bを、本体部32の外周縁(外方)に向けて凸状となるように折曲して接合した形状である。ここで、側面41の頂点T1及び側面42の頂点T2は、梁部37の延在方向(図4(a)中y方向)における中点に位置する。すなわち、側面41の頂点T1及び側面42の頂点T2は、梁部37の延在方向に直交し、且つ回転連結部材12の回転軸部33の回転軸(軸心)C1を含む平面PL上に配置される。なお、この形態では、梁部37の側面41及び側面42を、2つの平面を本体部32の外周縁(外方)に向けて凸状となるように折曲して接合した形状としているが、梁部37の側面41及び側面42の少なくともいずれか一方の平面を、2つの平面を本体部32の外周縁(外方)に向けて凸状となるように折曲して接合した形状とすることも可能である。
【0032】
2つの側面41及び側面42において、側面41の平面41aと側面42の平面42aとがxy平面上でなす角度θ1、及び側面41の平面41bと側面42の平面42bとがxy平面上でなす角度θ2は、同一角度で、いずれも鋭角である。つまり、図4(b)に示すように、吊り金具10の平面視において、梁部37の図4(b)中x方向における中央部の幅L1は、両端部L2,L3(L2=L3)の幅よりも広くなる。
【0033】
なお、上述した角度θ1や角度θ2は、以下に設定される。例えば、上述した角度θ1や角度θ2を大きくすると、リンク13が梁部37の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動する際に、リンク13の移動量が小さくなる他、リンク13が移動する側に位置する回転連結部材12の隆起部(隆起部35又は隆起部36のいずれか)と梁部37との間に生じる隙間にリンク13が食い込みやすくなる。その結果、回転連結部材12は、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する状態(後述する図10参照)まで回転せず、その回転途中で回転を停止してしまう恐れがある。このとき、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢は不安定で、吊り金具10に荷を吊り下げる方向作用する力とは異なる力が作用しリンク13の上記隙間への食い込みが解消されたときに、回転連結部材12が当該回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する状態まで回転するため危険である。
【0034】
一方、角度θ1や角度θ2が小さ過ぎると、リンク13が梁部37の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動させる際に作用する力が小さく、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する状態(後述する図10参照)とする際に、リンク13を必要以上に大きな力で引っ張り、回転連結部材12を回転させる必要がある。
【0035】
したがって、リンク13が梁部37の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動するときのリンク13の移動量や、リンク13が梁部37の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動させる際に作用する力を確保することを鑑みると、角度θ1や角度θ2は、例えば5~25°の範囲であることが好ましく、例えば10~15°の範囲であることが好適である。
【0036】
上述したように、梁部37は、R面取り加工される。したがって、図5(a)及び図5(b)に示すように、梁部37の平面41aと開口部39の内周面39aとの間に、曲面45が形成されている。また、梁部37の平面41bと開口部39の内周面39aとの間に、曲面46が形成されている。これら曲面45,46の間には、これら曲面45,46に連なる曲面47が設けられる。
【0037】
同様にして、梁部37の平面42aと開口部39の内周面(言い換えれば梁部37の下面)39aとの間に曲面48が形成されている。また、梁部37の平面42bと開口部39の内周面39aとの間に、曲面49が形成されている。これら曲面48,49の間には、これら曲面48,49に連なる曲面50が設けられる。
【0038】
梁部37の図4(b)中x方向における中央部の幅L1は、両端部L2,L3(L2=L3)の幅よりも広くなっていることに伴い、曲面46と曲面48との間隔、及び曲面47と曲面49との間隔は、梁部37の中央部における間隔より両端部における間隔の方が狭くなっている。
【0039】
開口部39は、梁部37の延在方向(図3中y方向)及び回転軸部33の軸心C1と直交する方向(図5(a)中x方向)を軸方向として貫通し延在している。図示は省略するが、開口部39は、開口部39の開口断面は円形状で、その中心軸が回転連結部材12の回転中心である回転軸部33の軸心(z方向に沿う軸)と直交するように本体部32に設けられる。開口部39の内周面39aは、開口部39の軸方向における中央部分が開口部39の中心に向けて突出する曲面(円弧面)である。この突出する曲面(円弧面)39aの半径Rは、例えばリンク13の半円弧部13a,13bの曲げ最小半径R1と同一である。また、開口部39における直径の最小値D1(図5(a)参照)は、例えば、リンク13を構成する棒部材の直径D2(図7(b)参照)よりも大きく、直径D2の約1.5倍よりも小さく設定される。なお、開口部39における直径の最小値D1は、リンク13の半円弧部13a,13bの曲げ最大半径R2以下であればよい。ここで、図7(b)において、回転連結部材12は、断面を示すものであるが、図の説明上、煩雑さを解消するために、断面を示すハッチングの記載を省略している。
【0040】
なお、内周面39aの半径Rは、例えばリンク13の半円弧部13a,13bの最小半径と同一としているが、内周面39aの半径は、例えばリンク13の半円弧部13a,13bの最小半径R1よりも小さくしてもよい。
【0041】
図3に示すように、回転連結部材12に設けられる回転軸部33は、本体部32の下部から鉛直方向(図4中-z方向)に延出される。回転軸部33は、上述したアンカー金具11の金具連結部23の挿入空間24に挿入されることで、アンカー金具11に軸支される。回転軸部33は、外周面に、断面が円弧状の凹部33aを有する。凹部33aは、回転軸部33をアンカー金具11の金具連結部23の挿入空間24に挿入したときに、挿入空間24に対面する内周面に設けた凹部24aと対面して、ベアリング球30が配置されるドーナツ形状の通路を形成する。
【0042】
図1又は図2に戻って、リンク13は、例えば荷の吊り上げ作業や、引き起こし作業及び反転作業を行う際に、クレーンのフックや、クレーンのフックに連結されるシャックルなどが係合される。
【0043】
リンク13は、例えば2つの半円弧部13a,13b及びこれら半円弧部13a,13bを繋ぐ2つの直線部13c,13dを有する長円形状の部材である。ここで、半円弧部13a及び半円弧部13bの直径は同一である。したがって、2つの直線部13c及び直線部13dは平行である。なお、リンク13の形状は無端状であればよいので、長円形状に限定されるものではない。また、リンク13は、金属環に限定されるものではなく、ワイヤロープの輪や、スタッドリンクなどでもよい。
【0044】
上述したように、リンク13は、回転連結部材12に連結されている状態で保持される。リンク13は、回転連結部材12の開口部39に挿通された部分を中心として、図1中F1方向又はF2方向に回動する。また、リンク13は、リンク13の延出方向に直交する断面における中心を各々結んだ線を含む平面(図1においては、xz平面)上で、F3又はF4方向に回動する。
【0045】
したがって、図6(a)に示すように、吊り金具10の未使用時や、リンク13に力が作用していない状態では、リンク13の半円弧部13a又は半円弧部13bのいずれかを回転連結部材12の開口部39に挿通した状態で図1中F2方向に所定の角度回動した状態や、図6(b)に示すように、リンク13の直線部13c又は直線部13dのいずれかを回転連結部材12の開口部39に挿通した状態で図1中F2方向に所定量回動した状態で保持される。
【0046】
なお、図6(a)及び図6(b)は、一例を示したものであり、吊り金具10の未使用時や、リンク13に力が作用していない状態におけるリンク13の姿勢は、図6(a)及び図6(b)に限定されるものではない。また、図6(a)及び図6(b)は、荷の上面に吊り金具10を取り付けた場合を例示しているが、荷の側面に吊り金具10を取り付けた場合であっても、リンク13は、リンク13の半円弧部13a又は半円弧部13bのいずれかを回転連結部材12の開口部39に挿通した状態で図1中F2方向に所定の角度回動した状態や、リンク13の直線部13c又は直線部13dのいずれかを回転連結部材12の開口部39に挿通した状態で図1中F2方向に所定量回動した状態で保持されることは言うまでもない。
【0047】
次に、本実施形態における吊り金具10の作用について説明する。
【0048】
まず、図7(a)に示すように、リンク13の半円弧部13bが回転連結部材12の開口部39に挿通された状態で、且つリンク13の直線部13c,13dの延出方向がz方向に平行となる状態となる場合、リンク13の半円弧部13aに図7中z方向の力Hが作用した場合を説明する。
【0049】
リンク13に図7中z方向の力Hが作用すると、図7(b)に示すように、リンク13は開口部39の内周面39aのうち、梁部37の下面として機能する周面部分に当接され、回転連結部材12を上方に引き上げる。なお、開口部39の内周面39aは、リンク13の半円弧部13a,13bの曲げ最小半径R1と同一である。したがって、リンク13は、半円弧部13bが開口部39の内周面39aのうち、梁部37の下面に位置する部分に線接触した状態となる。この状態では、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢は安定している。
【0050】
このとき、図7(a)中z方向を中心として回転させる力(以下、回転力)F1又は回転力F2のいずれかがリンク13に作用すると、リンク13は、回転力F1又は回転力F2のいずれかが作用する方向に回転する。このリンク13の回転により、リンク13の半円弧部13bは、回転連結部材12の開口部39の内周面39aを押圧する。したがって、回転連結部材12が所定方向(図7(a)中E1方向又はE2方向)に回転する。
【0051】
その後、リンク13の回転力F1又は回転力F2のいずれかが作用しなくなると、リンク13の回転が停止され、同時に、回転連結部材12の回転も停止する。なお、図8は、リンク13に回転力F1が作用してリンク13及び回転連結部材12が90°回転した後の状態を示している。
【0052】
上記説明では、リンク13がz方向への力Hが作用する過程で、リンク13に回転力F1が作用する場合を説明しているが、リンク13に回転力F2が作用する場合も同様である。
【0053】
一方、図9(a)に示すように、リンク13の直線部13dが回転連結部材12の開口部39に挿通された状態、言い換えれば、リンク13の長手方向が、回転連結部材12の回転軸方向と直交する状態で、リンク13の半円弧部13aに図9(c)中x方向の力Jが作用する場合もある。この場合、リンク13の半円弧部13bが、梁部37の下面に設けた曲面47と、開口部39の内周面39aとに当接する(図9(b)中、点P1、P2)。この状態では、リンク13は、回転連結部材12に対してP1、P2の2点で接触しているため、リンク13は不安定な姿勢となる。
【0054】
図9(c)中x方向の力Jが作用している過程で、リンク13に図9(c)中y方向又は-y方向への力が少しでも作用すると、リンク13は、力が作用する方向にずれ、リンク13と回転連結部材12の接触する位置がずれる。その結果、回転連結部材12を図9(c)中E1方向又はE2方向に回転させる。回転連結部材12が回転すると、リンク13は、梁部37の曲面45又は曲面47のいずれか一方の曲面に沿って摺動する。このときに、リンク13は、リンク13の長手方向を軸方向として回転する。つまり、回転連結部材12の図9(c)中E1方向又はE2方向への回転に合わせて、リンク13がリンク13の長手方向を軸として回転する。
【0055】
そして、リンク13の長手方向と、回転連結部材12の梁部37の延在方向とが平行となると、リンク13は回転連結部材12の開口部39の内周面39aと線接触するので、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する(図10参照)。
【0056】
また、リンク13の半円弧部13aに図9(c)中x方向に対して所定の角度傾いた力J1又は力J2が作用する場合も同様である。例えば力J1がリンク13に作用すると、リンク13は、力J1が作用する方向に移動する。したがって、リンク13は、半円弧部13bが梁部37の下面に設けた曲面47に当接した状態から、半円弧部13bが曲面45と当接した状態に変化する。その結果、回転連結部材12がE1方向に回転し、リンク13の半円弧部13bが曲面45に当接される位置が回転連結部材12の外周方向に移動していく。この過程で、リンク13はS1方向に回転する。リンク13のS1方向に回転することで、回転連結部材12もE1方向に回転する。そして、回転連結部材12が例えば90°回転すると、リンク13が回転連結部材12の開口部39の内周面39aと線接触する。このとき、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定し、回転連結部材12及びリンク13の回転が停止する。
【0057】
一方、力J2がリンク13に作用した場合、リンク13はS2方向に回転する。この場合も、リンク13のS2方向に回転することで、回転連結部材12もE2方向に回転する。そして、回転連結部材12が例えば90°回転すると、リンク13が回転連結部材12の開口部39の内周面39aと線接触する。このとき、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定し、回転連結部材12の回転及びリンク13の回転が停止する。
【0058】
なお、リンク13の直線部13dが回転連結部材12の開口部39に挿通された状態で、リンク13の半円弧部13aに図9(a)中x方向に対して45°上方に傾いた力Kが作用する場合もある。
【0059】
この場合、図11に示すように、力Kがリンク13に作用するので、リンク13は、半円弧部13aが半円弧部13bに対して斜め45°上方となる姿勢となる。この状態では、リンク13の半円弧部13aと、曲面47とが当接された状態(点P1が当接する位置を示す)となり、この場合も回転連結部材12に対するリンク13の姿勢は不安定な状態である。
【0060】
このとき、y方向又は-y方向のいずれかの方向に作用する力がリンク13に加わると、リンクは、y方向又は-y方向のいずれかの方向に移動する。その結果、リンク13は、リンク13の半円弧部13aと曲面47とが当接された状態から、リンク13の半円弧部13aと曲面45とが当接された状態又はリンク13の半円弧部13aと曲面46とが当接された状態のいずれかの状態となる。これを受けて、回転連結部材12がE1方向又はE2方向に回転し、回転連結部材12を回転させる。そして、回転連結部材12が例えば90°回転すると、回転連結部材12の開口部39の内周面39aに線接触し、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する。
【0061】
このように、本実施形態の吊り金具10は、荷の取付面に固定され、荷の吊り上げ作業時に使用される吊り金具10であって、荷の取付面の直交方向を軸として回転する回転連結部材12と、回転連結部材12に連結され、荷の吊り上げ作業時に吊下部材が係止されるリンク13と、を備え、回転連結部材12は、本体部32と、本体部32の上方に設けられる梁部37と、梁部37と本体部32との間に設けられ、回転連結部材12に連結するリンク13が挿通される開口部39と、を有し、梁部37の中央部の幅が、両端部の幅よりも広くなるように構成されている。
【0062】
このような構成とすることで、図9に示すように、例えば、リンク13の長手方向が回転連結部材12の回転軸方向に直交する方向にリンク13が位置する姿勢では、リンク13は点P1及び点P2にて回転連結部材12に接触されている。この状態のまま、リンク13と回転連結部材12の位置関係が変わらないとすると、リンク13は、非常に不安定な状態に位置することになる。
【0063】
例えば複数の吊り金具を荷に取り付けて、複数の吊り金具を用いて1つのクレーンで吊り作業を行う際に、リンクが不安定な状態に位置する吊り金具が一つでもあるとすると、荷を吊り上げたときに複数の吊り金具の各々に均等に力が作用しなくなり、荷を吊り上げたワイヤーやチェーンなどが損傷することがあり危険である。
【0064】
これに対して、上記実施形態にて説明した吊り金具10では、梁部37の側面41,42は、回転連結部材12の平面視において、梁部37の延在方向における中央部の幅が、両端部の幅よりも広くなるように、少なくとも2つの平面を組み合わせて外方に向けて折曲されている。このため、回転連結部材12に係合されるリンク13に力を作用させたときに、リンク13が梁部37の長手方向における両端部のいずれか一方に向けて移動して、回転連結部材12を回転させる。この回転により、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が、リンク13の長手方向が回転連結部材12の梁部37の延在方向と平行となる状態に変化させることができる(図10参照)。この状態は、リンク13は回転連結部材12の梁部37に線接触された状態である。したがって、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する。その結果、複数の吊り金具の各々に均等に力が作用するので、荷を吊り上げたワイヤーやチェーンなどが破断することを防止することができる。
【0065】
また、リンク13が梁部37の長手方向における両端部のいずれか一方に向けて移動することから、リンク13の移動方向がリンク13に作用する力の向きによって一方向に限定されなくなる。すなわち、リンク13に作用する力に応じて、図4において、y方向と-y方向の2つの方向にリンク13が移動可能となっている。その結果、リンク13及び梁部37の摩耗度合いが梁部37の延在方向において均等となり、吊り金具10自体の寿命を長寿命化させることができるという作用効果を有する。
【0066】
また、開口部39は、開口部39の中心軸が回転連結部材12の回転軸と直交するように設けられている。
【0067】
回転連結部材12に連結されるリンク13を上方に引っ張る場合、開口部39の中心軸が回転連結部材12の回転軸から離れれば離れるほど、リンク13に作用する鉛直方向の力が小さくなる。一方、開口部39の中心軸が回転連結部材12の回転軸と直交した状態では、リンク13に作用する鉛直方向の力が最も大きくなる。したがって、開口部39の中心軸が回転連結部材12の回転軸と直交させることで、リンク13を上方に引っ張るときにリンク13に作用する力を最大限利用できる。また、開口部39の中心軸が回転連結部材12の回転軸と直交させるように開口部39を設けた場合、開口部39の中心軸が回転連結部材12の回転軸と直交しないように開口部39を設けた場合に比べて、リンク13に作用する負荷を低減することができる。
【0068】
また、リンク13は、2つの半円弧部13a,13bと、これら2つの半円弧部13a,13bをつなぐ2つの直線部13c,13dと、を有する長円形状にした棒部材であり、開口部39の直径は、前記棒部材の直径よりも大きく、前記リンク13の半円弧部13a,13bの最大半径よりも小さくしている。
【0069】
この構成によれば、例えばリンク13を回転連結部材12の梁部37に当接した状態では、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が不安定な姿勢となりやすい。この状態では、リンク13を引っ張ったときに、引っ張る力とは異なる方向の力がリンク13に少しでも作用しただけで、回転連結部材12がそれ自身の軸方向に回転して、リンク13の姿勢を安定した姿勢に矯正することができる。
【0070】
回転連結部材12を軸支するとともに、前記荷の取付面に設けた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部21を有するアンカー金具11を有する。
【0071】
この構成によれば、荷の雌ねじ穴に雄ねじ部21を捻じ込んでアンカー金具11を荷に固定した状態で、そのアンカー金具11を基準として、リンク13にかかる力の向きに応じて、回転連結部材12を自在に回転させることができる。また、回転連結部材12の梁部37が摩耗した場合、吊り金具10全体を交換するのではなく、回転連結部材12及び回転連結部材12に係合するリンク13のみを交換すればよい。
【0072】
なお、上述した形態では、2つの半円弧部と、これら半円弧部を繋ぐ2つの直線部とを有するリンクを一例としているが、大きさが異なる2つの円弧を組み合わせた形状のリンクや、直線部がない円形状、楕円形状などのリンクであってもよい。さらに、一方向に延びる2本の直線部と、一方向と直交する方向に延びる2本の直線部とを、枠状に配置し、これら直線部を4隅に配置された円弧部でつないだ形状のリンクでもあってもよい。すなわち、閉じたリンクの一部を回転連結部材12の開口部39に挿通することで、リンクと回転連結部材とを互いに適度な自由度を持って係合できる形状であればよい。このようなリンクの場合であっても、回転連結部材12の開口部39の直径は、リンクを構成する棒部材の直径より大きく、リンクの円弧部の最大外径よりも小さくすることで、上記実施形態と同様の効果を有することが可能である。
【0073】
上述した形態では、回転連結部材が有する梁部37の側面41,42を、梁部の延在方向における中点の幅が、両端部の幅よりも広くなるように構成している。その一例として、梁部37の側面41,42は、少なくとも2つの平面を組み合わせて外方に向けて折曲される側面の場合を説明した。しかしながら、梁部の側面を、2つの平面を組み合わせて構成する代わりに、梁部の中央部の幅が、両端部の幅よりも広くなるように湾曲した曲面としてもよい。また、2つ以上の曲面を組み合わせて構成してもよい。この場合、2つの曲面は、凹曲面、凸曲面のいずれかを用いることができる。なお、2つの曲面の境界部は、できるだけ線状とすることが好ましい。
【0074】
上述した形態では、梁部37が有する一方の側面41を構成する2つの平面41a,41bが折曲する位置、及び他方の側面42を構成する2つの平面42a,42bが折曲する位置、つまり、各側面41,42の頂点の位置は、梁部37の延在方向(図4(a)中y方向)における中点である。したがって、図9(c)に示すように、リンク13の直線部13dが回転連結部材12の開口部39に挿通された状態、言い換えれば、リンク13の長手方向が、回転連結部材12の回転軸方向と直交する状態で、リンク13の半円弧部13aに図9(c)中x方向の力Jが作用する場合、リンク13の半円弧部13bが、梁部37の下面に設けた曲面47と、開口部39の内周面39aとに当接した状態で安定する場合もある(図9(b)中、点P1、P2)。この状態で荷を吊り上げた場合、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定しているものの、荷を吊り上げたときに吊り金具10に過度な荷重が懸かり危険である。
【0075】
そこで、回転連結部材の梁部が有する2つの側面の頂点は、梁部の延在方向における中点ではなく、中点からずらした位置に配置することも可能である。以下、リンクの構成については、上述した形態と、同一の符号を付して説明する。
【0076】
図12及び図13に示すように、回転連結部材60は、本体部61及び回転軸部62を有する。本体部61は、例えば、回転連結部材60の平面視において、円盤状の本体部61の上面に180°間隔で設けられた2つの隆起部63,64と、2つの隆起部63,64に跨って配置されるアーチ状の梁部65と、を有する。梁部65を2つの隆起部63,64に跨って配置することで、本体部61は、これらに囲まれた開口部66を有する。2つの隆起部63,64の間には、梁部65の延在方向と直交する方向に凹部(溝部)67が設けられる。凹部67は、梁部65の下方に設けられる開口部66に連なって設けられる。
【0077】
梁部65は、2つの側面71,72を有する。一方の側面71は、回転連結部材60の上面視において、2つの平面71a,71bを、本体部61の外周縁に向けて凸状となるように折曲して接合した形状である。側面71を構成する2つの平面71a,71bが折曲する位置、言い換えれば、側面71の頂点の位置を、梁部65の延在方向における中点(すなわち、回転連結部材60の軸心C2)から、図12(a)中-y方向に、距離L4ずらした位置とする。
【0078】
他方の側面72は、回転連結部材60の上面視において、2つの平面72a,72bを、本体部61の外周縁に向けて凸状となるように折曲して接合した形状である。他方の側面72を構成する2つの平面72a,72bが折曲する位置、言い換えれば、側面72の頂点の位置を、梁部65の延在方向における中点(すなわち、回転連結部材60の軸心C2)から、図12(a)中y方向に、距離L4ずらした位置とする。なお、距離L4は、回転連結部材60に係止されるリンク13の直径の1/10から1/4の範囲に設定される。この場合、図12(b)に示すように、梁部65の両端部の幅L5,L6(L5=L6)は、梁部65の中央近傍における最大幅L7よりも細い。この場合、図12(a)に示すように、平面71aと平面72aとがなす角度θ3と、平面71bと平面72bとがなす角度θ4とは、同一の角度であるが、詳細には、以下に設定される。
【0079】
例えば、上述した角度θ3や角度θ4を大きくすると、リンク13が梁部37の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動する際に、リンク13の移動量が小さくなる他、リンク13が移動する側に位置する回転連結部材60の隆起部(隆起部63又は隆起部64のいずれか)と梁部65との間に生じる隙間にリンク13が食い込みやすくなる。その結果、回転連結部材12は、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する状態(後述する図10参照)まで回転せず、その回転途中で回転を停止してしまう恐れがある。この状態は、回転連結部材60に対するリンク13の姿勢は不安定で、吊り金具10に荷を吊り下げる方向作用する力とは異なる力が作用しリンク13の上記隙間への食い込みが解消されたときに、回転連結部材60が当該回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が安定する状態まで回転するため危険である。
【0080】
一方、角度θ3や角度θ4が小さ過ぎると、リンク13が梁部65の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動させる際に作用する力が小さいので、回転連結部材60に対するリンク13の姿勢が安定する状態(後述する図10参照)まで、リンク13を必要以上に大きな力で引っ張り、回転連結部材12を回転させる必要がある。
【0081】
したがって、角度θ3や角度θ4は、リンク13が梁部65の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動するときのリンク13の移動量や、リンク13が梁部65の延在方向における両端部のいずれか一方の端部へと移動させる際に作用する力を確保することを鑑みると、角度θ3や角度θ4は、例えば5~25°の範囲であることが好ましく、例えば10~15°の範囲であることが好適である。
【0082】
また、この場合も、梁部65は、R面取り加工される。したがって、図13(a)及び図13(b)に示すように、梁部65の平面71aと開口部66の内周面66aとの間に、曲面75が形成されている。また、梁部65の平面71bと開口部66の内周面66aとの間に、曲面76が形成されている。これら曲面75,76の間には、これら曲面75,76に連なる曲面77が設けられる。
【0083】
同様にして、梁部65の平面72aと開口部66の内周面66aとの間に曲面78が形成されている。また、梁部65の平面72bと開口部66の内周面66aとの間に、曲面79が形成されている。これら曲面78,79の間には、これら曲面78,79に連なる曲面80が設けられる。
【0084】
この場合、図14(a)及び図14(b)に示すように、リンク13の半円弧部13bが回転連結部材60の開口部66に挿通され、リンク13の長手方向が、回転連結部材60の梁部65の延在方向、及び回転連結部材60の回転軸方向と直交する状態で、リンク13の半円弧部13aに図14(a)中x方向の力Jが作用する場合、リンク13の半円弧部13aの内周面が、梁部65の側面71及び開口部66の内周面66aとの間の曲面75で、すなわち、図14(b)で示す点P3で当接され、リンク13の半円弧部13bの外周面が、回転連結部材60の開口部66の内周面66aに、図14(b)で示す点P4で当接された状態で保持される。
【0085】
ここで、梁部65の側面71は、梁部65の延在方向における中点から、図12(a)中-y方向に距離L4ずらした位置を頂点としている。また、梁部65の側面72は、梁部65の延在方向における中点から、図12(a)中y方向に距離L4ずらした位置を頂点としている。したがって、リンク13の半円弧部13aに図14(a)中x方向の力Jが作用する場合、リンク13は、回転連結部材60に対してP3、P4の2点で接触しているが、リンク13にx方向の力Jが作用した場合、リンク13が当接される、回転連結部材60の平面71aと開口部66の内周面66aとの間の曲面75には、x方向の力Jのうち、曲面75に垂直な力が作用する。したがって、リンク13がx方向の力Jが作用すると、回転連結部材60が、図14(a)中、E3方向に回転する。この回転により、回転連結部材12に対するリンク13の姿勢が、リンク13の長手方向が回転連結部材60の梁部65の延在方向と平行となる状態に変化させることができる。
【0086】
なお、リンク13に-x方向の力が作用した場合には、リンク13が当接される、回転連結部材60の平面72aと開口部66の内周面66aとの間の曲面79には、x方向の力Jのうち、曲面79に垂直な力が作用して、回転連結部材60が、図14中E4方向に回転する。このように、梁部65の側面71,72を2つの平面を折曲した側面とした場合、2つの平面の頂点を梁部の延在方向における中点からずらした場合であっても、中点に配置した場合と同様の効果を得ることができる。
【0087】
上記に説明した吊り金具10は、回転連結部材12の梁部37に係合するリンク13に、クレーンのフック、ワイヤロープや、クレーンのフックに連結されるシャックルなどを係合させる構造としているが、リンク13が回転連結部材12の梁部37に係合していない吊り金具であってもよい。この場合、クレーンのフック、ワイヤロープや、クレーンのフックに連結されるシャックルは、回転連結部材12の梁部37に直接係合する。また、回転連結部材12ではなく、回転連結部材60を用いた吊り金具の場合も同様にして、リンク13が回転連結部材60の梁部65に係合していない吊り金具であってもよい。
【0088】
上記に説明した吊り金具10では、回転連結部材12に設けた回転軸部33をアンカー金具11の金具連結部23の挿入空間24に挿入することで、回転連結部材12はアンカー金具11に対して回転自在に保持されている。これとは逆に、例えば、回転連結部材に挿通孔を、アンカー金具の台座部の上面に回転軸部を各々設け、回転連結部材の挿通孔にアンカー金具の回転軸部を挿通することで、回転連結部材をアンカー金具に対して回転自在に保持するようにしてもよい。
【0089】
例えば、図15(a)及び図15(b)に示すように、吊り金具81は、回転連結部材82と、アンカー金具83とを有する。回転連結部材82は、本体部85と、本体部85の上方に設けられたアーチ状の梁部86と、を有し、梁部86の延在方向における両端部が本体部85に接合されることで、本体部85と梁部86との間に開口部87が形成される。回転連結部材82の側面視(図15(b)中xz平面視)において、梁部86の延在方向における両端部と本体部85とが接合される部分は、アンカー金具83の中心軸線(詳細には、アンカー金具83の雄ねじ部92の中心軸線C3)に向けて湾曲している。また、本体部85には、上面から下面にかけて挿通孔88が設けられ、後述する回転軸部95が挿通される。ここで、本体部85の下面の外形形状は、例えば円形状である。
【0090】
アンカー金具83は、回転連結部91と、当該回転連結部91に延在する雄ねじ部92とを有する。アンカー金具83が有する回転連結部91は、六角形状の台座部94と、当該台座部94の上面から上方に突出し、回転連結部材82の挿通孔88に挿通される回転軸部95とを有する。図示は省略するが、回転連結部材82の挿通孔88に対面する内周面と、回転軸部95の外周面とに凹部を各々設け、回転連結部材82の挿通孔88に回転軸部95を挿通したときに、これら凹部によりドーナツ状の空間を形成する。そして、回転連結部材82は、上述した挿通孔88に対面する内周面に向けて形成されたねじ孔(図示省略)が設けられており、このねじ孔を介して、当該空間に複数のベアリング球を挿入する。これにより、回転連結部材82は、アンカー金具83に回転自在に連結される。なお、上記ねじ孔は、六角ねじ89により封止される。
【0091】
回転軸部95には、当該回転軸部95の上面に、六角穴95aが設けられる。六角穴95aには、例えば不図示の六角レンチが挿入され、六角レンチを雄ねじ部92の中心軸線C3を中心として回転させることで、アンカー金具83を荷に締結する、又は緩めることが可能となる。
【0092】
上述したように、回転連結部材82の本体部85の下面の外形形状は円形状である。また、アンカー金具83の台座部94は六角柱形状である。このとき、例えば台座部94の上面の外形は、本体部85の下面の外形よりも大きい。つまり、本体部85の下面の直径をD3とし、台座部94の最小幅をW1とすると、台座部94の最小幅W1は、本体部85の下面の直径D3よりも大きい。また、上述したように、回転連結部材82は、梁部86の両端部と本体部85との接合部分において、アンカー金具83の中心軸線(詳細には、アンカー金具83の雄ねじ部92の中心軸線C3)に向けて湾曲している。したがって、作業者が手で吊り金具81を荷に締結する作業を行う場合、台座部94を掴みやすくなる。また、作業者が手で台座部94を掴んだ状態で、アンカー金具83の雄ねじ部92を荷の雌ねじ部にある程度締め付ける、又はある程度緩めたアンカー金具83を回転させて荷から取り外す作業が行いやすくなる。また、スパナの口部(口径部)に台座部94を挿入させることが容易になるので、吊り金具を荷に締結する作業や、荷から吊り金具を取り外す作業が行いやすくなる。
【0093】
なお、上記に説明した実施の形態にて示す吊り金具10は、梁部37の側面41を構成する2つの平面41a,41bの間に設けられる稜線の延在方向が例えば図1中z方向に平行となるように平面41a,41bを折曲させ、梁部37の側面41を梁部37の延在方向における中点を外方に突出させた形状としている。しかしながら、上記稜線の延在方向は、図1中z方向に平行である必要はなく、例えば、稜線の延在方向がyz平面又はxz平面のいずれかに含まれ、且つ図1中z方向に対して所定の角度傾斜する方向となるように、2つの平面41a,41bを外方に折曲させることが可能である。この場合、梁部37の延在方向における中点、又は中点から所定量ずれた位置で、側面41が外方に突出していればよい。また、説明は省略するが、梁部37の側面42についても、梁部37の側面41と同様の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…吊り金具
11…アンカー金具
12,60…回転連結部材
13…リンク
32,61…本体部
37,65…梁部
39,66…開口部
39a,66a…内周面
41,42,71,72…側面
45,46,47,48,49,50,75,76,77,78,79,80…曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15