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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】セグメントコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H02K15/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020146542
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041382
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 遼太
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 秀剛
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-054156(JP,A)
【文献】特開2019-038025(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な一対の直線部およびこれらを繋ぐ山部からなるU字状をなし、前記直線部の自由端に導線が露出したセグメントコイルを製造するための方法であって、
長手方向に送られる長尺の平角線に対し、前記長手方向に沿って間隔を空けて配置した複数の加工機のそれぞれで所定の加工を順次施すことにより、所定長さに切断され、長手方向の両端部に導線が露出したコイル素材を次々に作製する素材作製工程と、
前記コイル素材を折り曲げて前記セグメントコイルを得る曲げ工程と、
前記素材作製工程に導入される前の前記平角線に対し、前記長手方向と直交する方向に突出した突出部を成形する突出部成形工程とを含み、
前記突出部成形工程で成形する前記突出部の突出量を、作製すべきセグメントコイルの全長寸法に応じて変化させることを特徴とするセグメントコイルの製造方法。
【請求項2】
前記突出部を前記コイル素材の長手方向中央部に成形する請求項1に記載のセグメントコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの排出量低減などを目的として、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両が急速に普及しつつある。これら電動車両に搭載される各種モータのうち、特に駆動用モータは小型でかつ高出力であることが望まれる。そこで、この種のモータのステータコイルの形成材料として、ステータコイルの占積率を高め得る平角線(断面略矩形状の導線およびその周囲を被覆する絶縁皮膜からなる皮膜付平角線)が重用される傾向にある。この場合、ステータコイルは、互いに平行な一対の直線部およびこれらを繋ぐ山部からなるU字状をなし、直線部の自由端に導線が露出した複数の平角線(セグメントコイル)を環状のステータコアに装着してから、同相のセグメントコイルの自由端(導線)同士を溶接等の手段によって電気的に接合し、その後、この接合部に絶縁処理を施す、という手順を踏んで作製される。
【0003】
上記のセグメントコイルは、例えば以下のようにして作製される。
平角線が巻き取られたドラム(ボビン)から巻き出され、長手方向に送られる(間欠送りされる)長尺の平角線に対し、まず、皮膜除去用の加工機で絶縁皮膜の除去加工を施し、次いで、皮膜除去用の加工機の下流側に配置された切断加工機で絶縁皮膜が除去された部分に切断加工を施す。これにより、長手方向の両端部に導線が露出した所定長さの平角線(コイル素材)が得られる。その後、このコイル素材を折り曲げ成形し、U字状のセグメントコイルを得る(以上、例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-54156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一のステータコイルを形成するには、全長寸法が互いに異なる複数種のセグメントコイルが必要となるが、一のステータコイルを形成するのに必要な複数種のセグメントコイルは、モータの品質を保証する観点から、同じボビンから巻き出された平角線を用いて形成することが望まれる。そのため、上記態様でコイル素材を作製する場合、作製すべきセグメントコイルの全長寸法に応じて加工機を移動させる(加工機の配置位置を変更する)必要がある。
【0006】
しかしながら、セグメントコイルの全長寸法に応じて加工機の配置位置を変更するようにしたのでは、サイクルタイムの増加が不可避となる。また、加工機の配置位置をスムーズに変更するには、移動容易な可動式の加工機を採用する必要があるが、可動式の加工機は固定式(定点設置式)の加工機に比べて剛性面で劣るため、必要とされる加工精度を確保することが難しい、耐久寿命が短いなどといったデメリットがある。さらに、加工機の配置位置を変更した場合には、平角線の送り量も変更する必要があることから、制御が複雑で高価な加工設備になるという問題もある。
【0007】
以上の実情に鑑み、本発明は、全長寸法が互いに異なる複数種のセグメントコイルを効率良くかつ精度良く製造可能とすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、互いに平行な一対の直線部およびこれらを繋ぐ山部からなるU字状をなし、直線部の自由端に導線が露出したセグメントコイルを製造するための方法であって、長手方向に送られる長尺の平角線に対し、長手方向(送り方向)に沿って間隔を空けて配置した複数の加工機のそれぞれで所定の加工を順次施すことにより、所定長さに切断され、長手方向の両端部に導線が露出したコイル素材を次々に作製する素材作製工程と、コイル素材を折り曲げてセグメントコイルを得る曲げ工程と、素材作製工程に導入される前の平角線に対し、長手方向と直交する方向に突出した突出部を成形する突出部成形工程とを含み、突出部成形工程で成形する突出部の突出量を、作製すべきセグメントコイルの全長寸法に応じて変化させることを特徴とする。なお、本発明でいう「平角線」とは、断面矩形状の導線およびその周囲を被覆する絶縁皮膜からなる皮膜付平角線である。
【0009】
本発明では、素材作製工程に導入される前の長尺の平角線(例えば、ボビンから巻き出された直後の平角線)に対し、その長手方向に対して直交する方向に突出した突出部が成形され、かつ、突出部の突出量は作製すべきセグメントコイルの全長寸法Lに応じて変更される。この場合、突出部の突出量に応じてセグメントコイルの成形用素材であるコイル素材の全長寸法を変更することが可能となるので、各加工機の配置位置(加工機の配置間隔)を変更したり、平角線の送り量を変更したりせずとも、作製すべきセグメントコイルの全長寸法に応じた全長寸法を有するコイル素材を次々に作製することができる。従って、全長寸法が互いに異なる複数種のセグメントコイルを効率良く製造(量産)することができる。なお、コイル素材に成形された突出部は、コイル素材を折り曲げる曲げ工程の実施に伴って消失させることができる。そのため、コイル素材に突出部が成形されていることにより、セグメントコイルの形状精度が低下することはない。
【0010】
本発明を実施する際には、突出部を成形するための加工機を追加的に設け、かつこの加工機のストローク量を都度変更(調整)する必要は生じるものの、これに要するコストや手間は、加工機の配置位置や平角線の送り量等を変更する場合に比べれば格段に少なくて済む。また、本発明を採用すれば、上記のとおり、コイル素材を作製するために用いられる各種加工機の配置位置を変更する必要がなくなるので、加工機としては、可動式よりも加工精度や耐久寿命に優れた定点設置式のものを採用することができる。これにより、全長寸法が互いに異なるコイル素材、ひいてはセグメントコイルを安定的にかつ精度良く量産することができる。
【0011】
上記突出部は、コイル素材の長手方向中央部に成形するのが好ましい。このようにすれば、突出部を、コイル素材を左右対称のU字状に折り曲げるときの位置決めとして活用することができるので、セグメントコイルの形状精度を容易に高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上より、本発明によれば、全長寸法が互いに異なる複数種のセグメントコイルを効率良くかつ精度良く製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)図は、セグメントコイルの平面図、(b)図は、(a)図のZ-Z線矢視拡大断面図である。
図2】セグメントコイルの製造手順を示すフロー図である。
図3】コイル素材を得るための加工設備の全体構造を概念的に示す側面図である。
図4図3に示す加工設備を用いて得られる3種類のコイル素材と、これらコイル素材を展開した状態とを示す図である。
図5】曲げ工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明を適用して製造されるセグメントコイル1の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のZ-Z線矢視拡大断面図である。このセグメントコイル1は、互いに平行な一対の幅広面(フラットワイズ面)および互いに平行な一対の幅狭面(エッジワイズ面)を有する断面矩形状の導線3と、導線3の周囲を被覆する絶縁皮膜4とからなる平角線2(詳細には、長手方向の両端部に導線3が露出した所定長さの平角線2)を、互いに平行な一対の直線部1aと、両直線部1aを繋ぐ山部1bとからなる左右対称のU字状に折り曲げることで得られる。
【0016】
上記のセグメントコイル1は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車などといった電動車両の駆動用モータのステータコイルの形成材料として使用されるものであるが、ステータコイルは、通常、全長寸法Lが互いに異なる複数種のセグメントコイル1を用いて形成される。本発明に係る製造方法は、全長寸法Lが互いに異なる複数種のセグメントコイル1を効率良くかつ精度良く製造可能とした点に特徴がある。以下、本発明に係るセグメントコイル1の製造方法、およびこの製造方法を実施する際に使用される加工設備10について説明する。
【0017】
セグメントコイル1は、図2に示すように、突出部成形工程S1、素材作製工程S2および曲げ工程S3を順に経て得られる。これらの工程S1~S3のうち、突出部成形工程S1および素材作製工程S2は図3に概念的に示す加工設備10を用いて続けて実施され、曲げ工程S3は、加工設備10とは別に設けられた曲げ加工装置を用いて実施される。
【0018】
なお、突出部成形工程S1は、長手方向に送られる長尺の平角線2に、長手方向に対して直交する方向に突出した突出部5を成形する工程、素材作製工程S2は、所定長さに切断され、長手方向の両端部に導線3が露出すると共に長手方向の中央部に上記突出部5が成形されたコイル素材6(図4の紙面左側の図を参照)を得る工程、曲げ工程S3は、コイル素材6を折り曲げることで図1(a)に示すセグメントコイル1を得る工程である。
【0019】
図3は、上記のとおり、突出部成形工程S1および素材作製工程S2を続けて実施するために使用される加工設備10の全体構造を概念的に示す側面図である。同図に示す加工設備10では、ボビン11から巻き出され、図示外の搬送手段によって図中左側から右側に向けて長手方向(水平方向)に間欠送りされる長尺の平角線2に対し、第1エリアA1および第2エリアA2に設けられた複数の加工機のそれぞれで所定の加工が順次施されることにより、図4に示すような種々のコイル素材6、すなわち展開したときの長手方向寸法が互いに異なるコイル素材6が次々に作製される。
【0020】
なお、搬送手段としては、例えば、平角線2をチャッキングした状態で平角線2の長手方向に沿って移動するものが使用される。搬送手段は、切断前の平角線2に送り力を付与する必要があることから、例えば、第2エリアA2に設けられる複数の加工機12~15のうち、平角線2に切断加工を施す第4加工機15よりも上流側に設けられる。平角線2を切断することで作製されたコイル素材6は、人手作業により、あるいは上記搬送手段とは別に設けられる装置により、加工設備10から取り出される。
【0021】
第1エリアA1には、突出部成形工程S1を実施するための加工機、具体的には、長尺の平角線2に上記突出部5を成形するための成形加工機が設けられている。この成形加工機は、水平方向に送られる平角線2の下方に配置された加圧部材16と、加圧部材16を任意のタイミング(ここでは、各コイル素材6の長手方向中央部に突出部5を成形するタイミング)で昇降移動させる図示外の駆動機構とを備えており、加圧部材16のストローク量(図3中に二点鎖線で示す下死点を基準とした上昇移動量)は任意に変更可能となっている。加圧部材16は、これが上昇移動するのに伴って平角線2を上側に加圧する加圧面を有しており、本実施形態の加圧面は逆V字状をなしている。
【0022】
なお、加圧部材16の上昇移動に伴って、平角線2のうち突出部5の成形予定部よりも下流側の領域が持ち上げられてしまうと、平角線2に所定形状の突出部5を成形できず、所望のコイル素材6を得ることができなくなるおそれがある。そのため、図示は省略しているが、例えば加圧部材16の下流側(加圧部材16と後述する第1加工機12との間の領域)には、加圧部材16の加圧面が平角線2に当接してから加圧部材16が上昇限に移動するまでの間、平角線2のうち突出部5の成形予定部よりも下流側の領域が持ち上げられるのを規制する規制手段を設けるのが好ましい。これにより、加圧部材16が上昇移動するのに伴ってその加圧面が平角線2に押し付けられると、平角線2に上側に突出した逆V字状(尖頭形状)の突出部5を精度良く成形することができる。
【0023】
加圧部材16のストローク量は、作製すべきセグメントコイル1(コイル素材6)の全長寸法Lに応じて変更される。具体的には、作製すべきセグメントコイル1の全長寸法Lが長くなるにつれて加圧部材16のストローク量を大きくする。そのため、平角線2に成形される突出部5の突出量は、作製すべきセグメントコイル1の全長寸法Lが長くなるほど大きくなる。
【0024】
図示例の加工設備10では、図4の右側図に示すように、全長寸法(展開したときの全長寸法)が互いに異なる3種類のコイル素材6、具体的には、全長寸法L1のコイル素材6Aと、全長寸法L2のコイル素材6A(但し、L2>L1)と、全長寸法L3のコイル素材(但し、L3>L2)とを得る。この場合、[コイル素材6Aを作製するときの加圧部材16のストローク量]<[コイル素材6Bを作製するときの加圧部材16のストローク量]<[コイル素材6Cを作製するときの加圧部材16のストローク量]、という関係式が成立するように加圧部材16のストローク量が変更される。
【0025】
第2エリアA2には、素材作製工程S2を実施するために使用される複数の加工機が長手方向に沿って間隔を空けて配置されている。図示例では、第1加工機12~第4加工機15の計4台の加工機が同一ピッチP1で配置されている。第1加工機12~第4加工機15は、それぞれ、例えば以下のような加工を平角線2に施す。
・第1加工機12:平角線2のうち絶縁皮膜4の除去予定領域(以下、単に「除去予定領域」という)の長手方向両端部に、絶縁皮膜4の除去を容易化するための切れ目を形成する。
・第2加工機13:平角線2のうち除去予定領域に存在する絶縁皮膜4の一部を除去するための加工(例えば、刃型による剥離加工)を施す。
・第3加工機14:平角線2のうち除去予定領域に存在する絶縁皮膜4の残部を除去するための加工(例えば、刃型による剥離加工)を施す。
・第4加工機15:平角線2のうち、絶縁皮膜4が除去された部分の長手方向中央部を切断する。
【0026】
以下、図3に基づいて突出部成形工程S1および素材作製工程S2の実施態様を、また、図5に基づいて曲げ工程S3の実施態様を簡単に説明する。
【0027】
まず、平角線2を巻き取ったボビン11から巻き出された長尺の平角線2に対し、第1エリアA1に設けられた成形加工機(加圧部材16)により突出部5(5A)が成形される。これと同時に、平角線2のうち突出部5(5A)の成形部よりも下流側に位置する絶縁皮膜4の除去予定領域の長手方向両端部に、第2エリアA2に設けられた第1加工機12により切れ目が形成される。上記の成形加工機および第1加工機12による加工が完了すると、長手方向両端部に切れ目が形成された除去予定領域が第2加工機13に導入されるようにして平角線2が下流側に送られる。
【0028】
平角線2のうち切れ目が形成された部分が第2加工機13に導入されると、当該部分に絶縁皮膜4の一部を除去するための加工が第2加工機13により施され、また、平角線2のうち突出部5Aが成形された部分よりも上流側に位置する絶縁皮膜4の除去予定領域には、第1加工機12により切れ目が形成される。これと同時に、平角線2には成形加工機(加圧部材16)により突出部5Aよりも突出量の大きい突出部5(5B)が成形される。以降、各加工機による加工が完了する毎に平角線2が下流側に間欠送りされ、平角線2の長手方向複数箇所に所定の加工が同時に施される。そして、第4加工機15により平角線2に対して切断加工が施されると、長手方向の両端部に導線3が露出すると共に長手方向の中央部に突出部5(5A)が成形されたコイル素材6(6A)が得られる。なお、図3に示す加工設備10では、突出部5Aとは突出量が異なる突出部5B(又は5C)を有するコイル素材6B(又は6C)も得られる。コイル素材6A,6B,6Cの長手方向寸法は同寸である(図4の紙面左側の図を参照)。
【0029】
以上のようにして得られたコイル素材6は、曲げ工程S3に導入される。曲げ工程S3では、図5に示すような曲げ加工装置(成形金型)、すなわち成形すべきセグメントコイル1の形状に対応した成形面を有するパンチ21およびダイ22を用いてコイル素材6に折り曲げ加工を施すことにより、図1(a)に示すU字状のセグメントコイル1が得られる。
【0030】
以上で説明したように、本発明では、素材作製工程S2が実施される前の長尺の平角線2(ボビン11から巻き出された直後の平角線2)に対し、その長手方向に対して直交する方向に突出した突出部5を成形する素材作製工程S1が実施され、同工程S1では、作製すべきセグメントコイル1の全長寸法Lに応じて突出部5の突出量が変更される。この場合、突出部5の突出量に応じて、セグメントコイル1の成形用素材であるコイル素材6の全長寸法を変更することが可能となるので(図4の紙面右側の図を参照)、素材作製工程S2を実施するために設けられる加工機12~15の配置位置を変更したり、平角線2の送り量を変更したりすることなく(要するに、加工機12~15の配置間隔を一定ピッチP1に保った状態で)作製すべきセグメントコイル1の全長寸法に応じた全長寸法を有するコイル素材6を次々に作製することができる。従って、全長寸法が互いに異なる複数種のセグメントコイル1を効率良く製造することができる。
【0031】
なお、コイル素材6に成形された突出部5は、コイル素材6をU字状に折り曲げる曲げ工程S3の実施に伴って消失させることができる。そのため、コイル素材6に突出部5が成形されていることにより、セグメントコイル1の形状精度が低下することはない。むしろ、図4の紙面左側の図に示すように、突出部5をコイル素材6の長手方向中央部に成形しておけば、突出部5を、コイル素材6をU字状に折り曲げるときの位置決めとして活用することができるので、セグメントコイル1の形状精度を高める上で有利となる。
【0032】
本発明を実施するに当たっては、突出部5を成形するための成形加工機(加圧部材16等)を追加的に設け、かつ加圧部材16のストローク量を都度変更(調整)する必要は生じるものの、これに要するコストや手間は、加工機12~15の配置位置や平角線2の送り量等を作製すべきセグメントコイル1の全長寸法に応じて変更する場合に比べれば格段に少なくて済む。また、本発明を採用すれば、上記のとおり、コイル素材6を作製するために用いられる各種加工機12~15の配置位置を変更する必要がなくなるので、加工機12~15としては、可動式よりも加工精度や耐久寿命に優れた定点設置式のものを採用することができる。従って、全長寸法が互いに異なるコイル素材6、ひいてはセグメントコイル1を安定的にかつ精度良く量産することができる。
【0033】
以上のことから、本発明に係るセグメントコイル1の製造方法によれば、同じボビン11から巻き出された平角線2を用いる場合でも、全長寸法Lが互いに異なる複数種のセグメントコイル1を効率良くかつ精度良く製造(量産)することができる。これにより、所定の品質を具備したステータコイル、ひいては電動モータを安定的に作製することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1の製造方法について説明を行ったが、本発明に係るセグメントコイル1の製造方法には、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。
【0035】
例えば、素材作製工程S2で絶縁皮膜4を除去するために平角線2に対して順次実施した加工の手順はあくまでも一例であり、その他の加工手順で(その他の加工機を用いて)絶縁皮膜4が除去される場合もある。
【0036】
また、以上で説明した実施形態では、逆V字状(尖頭形状)の突出部5を平角線2に成形するようにしたが、突出部5の形状は任意に選択することができる。但し、突出部5を曲げ工程S3の実施時における位置決めとして活用することを考慮すると、突出部5は逆V字状に成形するのが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
1 セグメントコイル
2 平角線(皮膜付平角線)
3 導線
4 絶縁皮膜
5、5A、5B、5C 突出部
6、6A、6B、6C コイル素材
10 加工設備
12、13、14、15 加工機
16 加圧部材
A1 第1エリア
A2 第2エリア
L セグメントコイルの全長寸法
S1 突出部成形工程
S2 素材作製工程
S3 曲げ工程
図1
図2
図3
図4
図5