(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】トランスデューサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 31/00 20060101AFI20240208BHJP
H02N 1/00 20060101ALI20240208BHJP
H04R 19/02 20060101ALI20240208BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04R31/00 C
H02N1/00
H04R19/02
H04R19/04
(21)【出願番号】P 2018170510
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2017191447
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田原 新也
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】樫本 剛
【審判官】高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-27756(JP,A)
【文献】特開平6-323929(JP,A)
【文献】特開昭63-303525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 - 31/00
G01H 1/00 - 17/00
G01L 1/00 - 1/26
G01L 25/00
H01L 29/84
H01L 49/00 - 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一内面及び第一外面を備え、前記第一内面から前記第一外面に亘って貫通する複数の第一貫通孔を備える
シート状の第一電極シートと、
熱可塑性材料からなる誘電体素材により形成され、第一面が前記第一電極シートの前記第一内面に対向して配置される
シート状の誘電体層と、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分の融着により接合する第一融着層と、
を備え、
前記第一融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分が前記第一電極シートの前記第一内面
の全面に融着することにより、
前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とが対向する全範囲において前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他
の一部分が前記複数の第一貫通孔
に位置し前記第一貫通孔の第一内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第一貫通孔の前記第一内周面とを接合
すると共に、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を閉塞する、トランスデューサ。
【請求項2】
第一内面及び第一外面を備え、前記第一内面から前記第一外面に亘って貫通する複数の第一貫通孔を備える第一電極シートと、
熱可塑性材料からなる誘電体素材により形成され、第一面が前記第一電極シートの前記第一内面に対向して配置される誘電体層と、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分の融着により接合する第一融着層と、
を備え、
前記第一融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分が前記第一電極シートの前記第一内面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他
の一部分が前記複数の第一貫通孔の第一内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第一貫通孔の前記第一内周面とを接合
すると共に、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を閉塞
し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記第一電極シートの前記第一外面の一部に融着することにより、前記第一外面の少なくとも一部を被覆する、トランスデューサ。
【請求項3】
前記第一電極シートは、面方向に伸縮可能であり、
前記誘電体層は、エラストマーにより形成され、
前記第一電極シート及び前記誘電体層により構成される静電シートは、面方向に伸縮可能である、請求項1又は2の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記第一電極シートは、さらに、前記第一貫通孔の開口長さよりも長く形成されると共に、広がり変形によって前記第一電極シートが主方向へ伸張することを許容するスリットを備え、
前記誘電体層を構成する前記誘電体素材
の一部分は、前記スリットの部分に充填されており、前記スリットの前記主方向への広がり変形に伴って前記主方向に伸張する、請求項3に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記第一電極シートは、前記主方向に複数の前記スリットを備える、請求項4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記スリットは、前記主方向に対して角度を有する方向に延在する、請求項4又は5に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記スリットは、前記主方向に直交する副方向において中央部に形成され、且つ、前記副方向において両端部に形成されていない、請求項4-6の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記スリットは、前記主方向に直交する副方向において両端部に形成され、且つ、前記副方向において中央部に形成されていない、請求項4-6の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記スリットは、前記第一電極シートの外縁における2つの位置を結ぶように形成されており、前記第一電極シートによる検出領域を複数に分割する、請求項4-6の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記スリットは、前記第一電極シートが非伸張状態において領域を有して形成されている、請求項4-9の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
前記スリットは、前記第一電極シートが非伸張状態において線状に形成されている、請求項4-9の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項12】
前記スリットは、前記主方向において前記第一貫通孔の開口長さよりも長く形成されると共に、前記主方向に直交する副方向への広がり変形によって前記第一電極シートが前記副方向へ伸張することを許容し、
前記誘電体層は、前記スリットの部分に配置されており、前記スリットの前記副方向への広がり変形に伴って前記副方向に伸張する、請求項4-11の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
前記トランスデューサは、さらに、
前記第一電極シートの前記第一内面と前記誘電体層の前記本体部分との間に挟まれており、且つ、前記第一電極シートの前記第一内面と前記誘電体層の前記本体部分との間から外部に延在する第一リード線を備える、請求項1-12の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
前記第一リード線の導通部は、前記第一貫通孔を介して前記第一電極シートに絡められている、請求項13に記載のトランスデューサ。
【請求項15】
前記トランスデューサは、さらに、
前記第一リード線の導通部と前記第一電極シートとを電気的に接続した状態で固着し、導電性接合材からなる第一固着層を備える、請求項13又は14に記載のトランスデューサ。
【請求項16】
前記トランスデューサは、さらに、
第二内面及び第二外面を備え、前記第二内面から前記第二外面に亘って貫通する複数の第二貫通孔を備え、前記第二内面側が前記誘電体層における前記第一面とは反対側の第二面に対向して配置される
シート状の第二電極シートと、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分の融着により接合する第二融着層と、
を備え、
前記第二融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分が前記第二電極シートの前記第二内面
の全面に融着することにより、
前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートの前記第二内面とが対向する全範囲において前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートの前記第二内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他
の一部分が前記複数の第二貫通孔
に位置し前記第二貫通孔の第二内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第二貫通孔の前記第二内周面とを接合
すると共に、前記第二電極シートの前記複数の第二貫通孔を閉塞する、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項17】
第一内面及び第一外面を備え、前記第一内面から前記第一外面に亘って貫通する複数の第一貫通孔を備える第一電極シートと、
熱可塑性材料からなる誘電体素材により形成され、第一面が前記第一電極シートの前記第一内面に対向して配置される誘電体層と、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分の融着により接合する第一融着層と、
第二内面及び第二外面を備え、前記第二内面から前記第二外面に亘って貫通する複数の第二貫通孔を備え、前記第二内面側が前記誘電体層における前記第一面とは反対側の第二面に対向して配置される第二電極シートと、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分の融着により接合する第二融着層と、
を備え、
前記第一融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材
の一部分が前記第一電極シートの前記第一内面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他
の一部分が前記複数の第一貫通孔の第一内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第一貫通孔の前記第一内周面とを接合
すると共に、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を閉塞
し、
前記第二融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分が前記第二電極シートの前記第二内面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートの前記第二内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記複数の第二貫通孔の第二内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第二貫通孔の前記第二内周面とを接合すると共に、前記第二電極シートの前記複数の第二貫通孔を閉塞し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記第二電極シートの前記第二外面の一部に融着することにより、前記第二外面の少なくとも一部を被覆する、トランスデューサ。
【請求項18】
請求項1又は2に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記第一電極シートと前記誘電体素材とを積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの前記第一外面側から
加圧及び加熱することにより、前記誘電体素材における前記第一電極シート側の面を溶融して、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを接合する前記第一融着層を形成
し、前記第一電極シートを前記誘電体素材の前記第一面側に埋設する、トランスデューサの製造方法。
【請求項19】
請求項16又は17に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記第一電極シートと前記誘電体素材と前記第二電極シートとを積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの前記第一外面側から
加圧及び加熱することにより、前記誘電体素材における前記第一電極シート側の面を溶融して、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを接合する前記第一融着層を形成し、
前記第一電極シートを前記誘電体素材の前記第一面側に埋設し、
前記積層体に対して前記第二電極シートの前記第二外面側から加熱することにより、前記誘電体素材における前記第二電極シート側の面を溶融して、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートとを接合する前記第二融着層を形成
し、前記第二電極シートを前記誘電体素材の前記第二面側に埋設する、トランスデューサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリマー圧電体に多孔シート状の電極が埋設された圧電素子が開示されている。この圧電素子は、ポリマー圧電体フィルム又はシートの表面をアセトン等の有機溶媒で処理し、その後に処理表面に多孔シート状の電極を積層して圧着することにより製造される。
【0003】
特許文献2には、圧電フィルムと、当該圧電フィルムの両面に配置されるメッシュ状の2枚の電極と、各電極の両外側に板状の剛体からなる2枚の支持板とを備える圧電型振動センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3105645号公報
【文献】特開平5-172839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境対策として、揮発性有機化合物(VOC)の排出の抑制が求められている。そのため、揮散型接着剤を用いないことが求められ、且つ、有機溶媒も用いないことが求められる。
【0006】
また、圧電効果を用いる構造とは異なり、電極間の静電容量を用いたトランスデューサが着目されている。静電型のトランスデューサは、誘電体の材料によって、静電容量が異なる。仮に、ポリマーの誘電体の表面を有機溶媒で処理して電極を圧着した場合には、圧着部位に有機溶媒の成分が残る。残存した有機溶媒の成分が、静電容量に影響を及ぼすおそれがある。その結果、残存した有機溶媒の成分の影響によって、設計どおりの静電容量を得ることができないおそれがある。
【0007】
また、静電型のトランスデューサは、様々な部位に取り付けることを可能とするために、柔軟性のみならず、伸縮性を有することが求められている。例えば、取付対象が自由曲面等のように様々な形状を有しており、平面状に製造されたトランスデューサを取付対象の面に沿って取り付ける場合に、トランスデューサにとって、柔軟性及び伸縮性は非常に重要な要素となる。柔軟性及び伸縮性を有しなければ、自由曲面の取付対象にトランスデューサを綺麗に取り付けることはできない。
【0008】
さらに、上記のように、揮散型接着剤や有機溶媒を用いる場合には、揮散型接着剤や有機溶媒の成分が、トランスデューサの柔軟性及び伸縮性に影響を及ぼすおそれがある。そのため、柔軟性及び伸縮性の観点からも、揮散型接着剤及び有機溶媒を用いないようにすることが求められる。
【0009】
本発明の一つは、揮散型接着剤及び有機溶媒を用いることなく製造できるトランスデューサ及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の一つは、柔軟性及び伸縮性を有するトランスデューサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1.トランスデューサ)
本発明の第一の態様は、第一内面及び第一外面を備え、前記第一内面から前記第一外面に亘って貫通する複数の第一貫通孔を備えるシート状の第一電極シートと、
熱可塑性材料からなる誘電体素材により形成され、第一面が前記第一電極シートの前記第一内面に対向して配置されるシート状の誘電体層と、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分の融着により接合する第一融着層と、
を備え、
前記第一融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分が前記第一電極シートの前記第一内面の全面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とが対向する全範囲において前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記複数の第一貫通孔に位置し前記第一貫通孔の第一内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第一貫通孔の前記第一内周面とを接合すると共に、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を閉塞する、トランスデューサにある。
本発明の第二の態様は、第一内面及び第一外面を備え、前記第一内面から前記第一外面に亘って貫通する複数の第一貫通孔を備える第一電極シートと、
熱可塑性材料からなる誘電体素材により形成され、第一面が前記第一電極シートの前記第一内面に対向して配置される誘電体層と、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分の融着により接合する第一融着層と、
を備え、
前記第一融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分が前記第一電極シートの前記第一内面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記複数の第一貫通孔の第一内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第一貫通孔の前記第一内周面とを接合すると共に、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を閉塞し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記第一電極シートの前記第一外面の一部に融着することにより、前記第一外面の少なくとも一部を被覆する、トランスデューサにある。
本発明の第三の態様は、第一内面及び第一外面を備え、前記第一内面から前記第一外面に亘って貫通する複数の第一貫通孔を備える第一電極シートと、
熱可塑性材料からなる誘電体素材により形成され、第一面が前記第一電極シートの前記第一内面に対向して配置される誘電体層と、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分の融着により接合する第一融着層と、
第二内面及び第二外面を備え、前記第二内面から前記第二外面に亘って貫通する複数の第二貫通孔を備え、前記第二内面側が前記誘電体層における前記第一面とは反対側の第二面に対向して配置される第二電極シートと、
融着材料として前記誘電体層を構成する前記誘電体素材の一部分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と同一材料成分により構成され、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートとを、前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分の融着により接合する第二融着層と、
を備え、
前記第一融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分が前記第一電極シートの前記第一内面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートの前記第一内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記複数の第一貫通孔の第一内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第一貫通孔の前記第一内周面とを接合すると共に、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を閉塞し、
前記第二融着層は、
前記融着材料としての前記誘電体素材の一部分が前記第二電極シートの前記第二内面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートの前記第二内面とを接合し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記複数の第二貫通孔の第二内周面に融着することにより、前記誘電体層の前記本体部分と前記複数の第二貫通孔の前記第二内周面とを接合すると共に、前記第二電極シートの前記複数の第二貫通孔を閉塞し、
前記融着材料としての前記誘電体素材の他の一部分が前記第二電極シートの前記第二外面の一部に融着することにより、前記第二外面の少なくとも一部を被覆する、トランスデューサにある。
【0011】
上記態様によれば、融着材料の融着により、誘電体層の本体部分と第一電極シートとが接合されている。融着材料は、揮散型接着剤及び有機溶媒ではないため、第一のトランスデューサは、揮散型接着剤及び有機溶媒を用いることなく製造することができる。従って、第一のトランスデューサの製造において、VOCの排出の抑制を図ることができる。ここで、第一融着層は、誘電体層の素材の一部分を融着材料として構成される場合、誘電体層とは別の融着材料を用いる場合を含む。
【0014】
(2.トランスデューサの製造方法)
本発明の第四の態様は、上述した第一の態様又は第二の態様に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記第一電極シートと前記誘電体素材とを積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの前記第一外面側から加圧及び加熱することにより、前記誘電体素材における前記第一電極シート側の面を溶融して、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを接合する前記第一融着層を形成し、前記第一電極シートを前記誘電体素材の前記第一面側に埋設する、トランスデューサの製造方法にある。
本発明の第五の態様は、上述した第三の態様に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記第一電極シートと前記誘電体素材と前記第二電極シートとを積層することにより積層体を形成し、
前記積層体に対して前記第一電極シートの前記第一外面側から加圧及び加熱することにより、前記誘電体素材における前記第一電極シート側の面を溶融して、前記誘電体層の前記本体部分と前記第一電極シートとを接合する前記第一融着層を形成し、前記第一電極シートを前記誘電体素材の前記第一面側に埋設し、
前記積層体に対して前記第二電極シートの前記第二外面側から加熱することにより、前記誘電体素材における前記第二電極シート側の面を溶融して、前記誘電体層の前記本体部分と前記第二電極シートとを接合する前記第二融着層を形成し、前記第二電極シートを前記誘電体素材の前記第二面側に埋設する、トランスデューサの製造方法にある。
【0016】
上記態様のトランスデューサの製造方法によれば、融着材料は、揮散型接着剤及び有機溶媒ではないため、揮散型接着剤及び有機溶媒を用いることなくトランスデューサを製造することができる。従って、トランスデューサの製造において、VOCの排出の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】トランスデューサの構成の概要を示す図である。
【
図4】第一例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図5】第二例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図6】第三例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図7】第四例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図8】第五例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図9】第五例の変形態様のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図10】第六例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図11】第七例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図12】第八例のトランスデューサの製造方法を示す図である。
【
図13】第九例のトランスデューサの斜視図である。
【
図14】第九例のトランスデューサの素材を示す斜視図である。
【
図15】第九例の第一変形態様のトランスデューサの素材を示す斜視図である。
【
図16】第九例の第二変形態様のトランスデューサを示す平面図である。
【
図17】第九例の第三変形態様のトランスデューサを示す平面図である。
【
図18】第九例の第四変形態様のトランスデューサを示す平面図である。
【
図19】第十例のトランスデューサを示す斜視図である。
【
図20】第十例のトランスデューサの素材を示す断面図である。
【
図21】第十例のトランスデューサを示す断面図である。
【
図22】第十例の第一変形態様のトランスデューサを示す断面図である。
【
図23】第十例の第二変形態様のトランスデューサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1.トランスデューサTの基本構成)
トランスデューサTは、静電型である。つまり、トランスデューサTは、電極間の静電容量の変化を利用して、振動や音等を発生させるアクチュエータとして機能させることができる。また、トランスデューサTは、電極間の静電容量の変化を利用して、外部からの押込力等を検出するセンサ、電位を有する導電体の接触又は接近を検出するセンサとして機能させることができる。
【0019】
トランスデューサTがアクチュエータとして機能する場合には、電極に電圧が印加されることにより、電極間の電位に応じて誘電体が変形し、誘電体の変形に伴って振動が発生する。トランスデューサTが押込力検出センサとして機能する場合には、外部からの押込力や振動や音等の入力に起因して誘電体が変形することにより電極間の静電容量が変化し、電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力等を検出する。また、トランスデューサTが接触接近センサとして機能する場合には、電位を有する導電体の接触又は接近により、電極間の静電容量が変化し、変化した電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触又は接近を検出する。
【0020】
トランスデューサTの構成について、以下に、第一例から第八例を例にあげる。まずは、各例のトランスデューサTに共通する基本構成の概要を説明する。トランスデューサTの構成の概要の説明において、
図1を参照する。
【0021】
図1に示すように、トランスデューサTは、上述したように、静電型である。従って、トランスデューサTは、
図1に示すように、第一電極層T1、第二電極層T2、第一電極層T1と第二電極層T2との間(第一電極層T1の第一内面と第二電極層T2の第二内面との間)に配置される誘電体層T3を備える。ただし、種類によっては、トランスデューサTは、第一電極層T1の第一外面を被覆する第一保護層T4、及び、第二電極層T2の第二外面を被覆する第二保護層T5をさらに備える場合がある。
【0022】
ここで、第一電極層T1及び第二電極層T2が、共に、変形可能なシート状に形成されるようにしてもよい。この場合、第一電極層T1及び第二電極層T2を含む部分が、変形可能な静電シートを構成する。また、第一電極層T1は、変形可能なシート状に形成されているのに対して、第二電極層T2は、シート状に形成されておらず、変形不能な任意形状に形成された導電部材とすることもできる。変形不能な導電部材とは、剛性を有する金属等である。この場合、第二電極層T2を除き、第一電極層T1を含む部分が、変形可能な静電シートを構成する。
【0023】
以下の説明において、第一電極層T1及び第二電極層T2が、共に、変形可能なシート状に形成されている場合を例に挙げる。また、第一電極層T1と誘電体層T3との境界部位を第一境界部位T6と称し、第二電極層T2と誘電体層T3との境界部位を第二境界部位T7と称する。
【0024】
(2.各例の概要)
各例のトランスデューサTの構成の概要は、表1,2に示すとおりである。何れの例においても、トランスデューサTは、融着材料の融着により、何れかの構成部材が接合されている。そして、融着材料により形成された部位であって接合対象の部材を融着する部位を融着層と称する。ここで、融着材料は、融着材料が熱によって溶融してその後に固化することにより、他の部材との接合力を発揮する材料である。ただし、融着材料は、揮散型接着剤とは異なる材料であり、有機溶媒を用いることなく、熱によって溶融することができる材料である。つまり、融着材料は、熱可塑性材料である。特に、以下においては、融着材料には、熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。
【0025】
表1,2に示すように、第一例から第四例のトランスデューサTは、第一境界部位T6として第一融着層を有しており、第一電極層T1である第一電極シートと誘電体層T3とが融着により接合されている。第一例及び第二例のトランスデューサTは、さらに、第二境界部位T7として第二融着層を有しており、第二電極層T2である第二電極シートと誘電体層T3とが融着により接合されている。
【0026】
第五例及び第六例のトランスデューサTは、誘電体層T3の内部構成として、第一誘電体層と第二誘電体層を融着により接合する中間融着層を有する。また、第七例及び第八例のトランスデューサTは、誘電体層T3の内部構成として、第一誘電体層と中間誘電体層とを融着により接合する第一中間融着層を有し、且つ、第二誘電体層と中間誘電体層とを融着により接合する第二中間融着層を有する。
【0027】
【0028】
【0029】
(3.第一例)
第一例のトランスデューサ1について、
図2~
図4を参照して説明する。
図2及び
図3に示すように、トランスデューサ1は、第一電極シート21、第二電極シート22、誘電体層23、第一保護層24、及び、第二保護層25により構成される静電シートを備える。なお、第一例のトランスデューサ1は、第二電極シート22及び第二保護層25を備えず、第一電極シート21、誘電体層23及び第一保護層24により構成される静電シートを備えると共に、第二電極層T2(
図1に示す)に相当する変形不能な導電部材(図示せず)を備える構成とすることもできる。
【0030】
第一電極シート21及び第二電極シート22は、導電性の布である。第一電極シート21及び第二電極シート22は、導電性を有しつつ、柔軟性及び面方向への伸縮性を有する。第一電極シート21及び第二電極シート22は、導電性繊維により形成された織物又は不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電性材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレン等の樹脂繊維の表面に、銅やニッケル等をメッキすることにより形成される。
【0031】
第一電極シート21は、繊維により布を形成されることで、複数の第一貫通孔21a(
図3に示す)を備えると共に、柔軟性を有し、面方向に伸縮可能変形である。第一電極シート21と同様に、第二電極シート22は、複数の第二貫通孔22a(
図3に示す)を備える。
【0032】
以下には、第一電極シート21及び第二電極シート22は、導電性織物である場合を例に挙げるが、導電性不織布を適用することもできる。第一電極シート21は、例えば、
図2に示すように、導電性織物の場合には、導電性繊維を縦糸と横糸として織ることにより形成されている。縦糸と横糸により囲まれる領域が、第一貫通孔21aとなる。第二貫通孔22aも同様である。
【0033】
なお、第一電極シート21が導電性不織布である場合には、第一貫通孔21aが不規則に形成される。また、第一電極シート21は、導電性布の他に、柔軟性を有し面方向に伸縮可能な薄膜のパンチングメタルを適用することもできる。この場合、第一貫通孔21aは、打ち抜かれた部位となる。また、第一電極シート21は、導電性材料を含有し、複数の貫通孔を備えるエラストマーシート(ゴムシートを含む)を適用することもできる。なお、本例において、エラストマーとは、弾性を有する高分子材料であり、ゴム弾性体、及び、ゴム弾性体以外のゴム状を有する弾性体を含む意味で用いている。
【0034】
第一電極シート21と第二電極シート22は、同程度の大きさに形成されており、対向して配置されている。ここで、第一電極シート21において、第二電極シート22に対向する側の面を第一内面21bとし、第二電極シート22と反対側の面を第一外面21cとする。また、第二電極シート22において、第一電極シート21に対向する側の面を第二内面22bとし、第一電極シート21と反対側の面を第二外面22cとする。
【0035】
誘電体層23は、弾性変形可能な誘電材料により形成される。詳細には、誘電体層23は、熱可塑性エラストマーにより形成されている。誘電体層23は、シート状で、第一電極シート21の外形と同様の外形に形成されている。誘電体層23は、厚み方向に伸縮すると共に、面方向に伸縮する構造を有する。誘電体層23の第一面(
図3の上面)側に、第一電極シート21が配置されており、誘電体層23の第二面(
図3の下面)側に、第二電極シート22が配置されている。誘電体層23の本体部分(主要部分)は、第一電極シート21の第一内面21bと第二電極シート22の第二内面22bとの間に配置されている。
【0036】
ただし、誘電体層23の素材23a(誘電体素材と称する。
図4に示す)の第一面側(
図3の上側)に第一電極シート21が埋設されている。つまり、第一電極シート21における複数の第一貫通孔21aの第一内周面及び第一内面21bに、誘電体素材23aの第一面側の一部分が、第一融着層26として存在している。第一融着層26は、誘電体素材23aの一部分を融着材料として適用しており、第一貫通孔21aの第一内周面と誘電体層23の本体部分との境界部位、及び、第一内面21bと誘電体層23の本体部分との境界部位を、誘電体素材23aの一部分の融着によって接合している。ここで、誘電体層23の本体部分とは、第一電極シート21と第二電極シート22との間に介在する部分を意味する。
【0037】
より詳細には、第一融着層26は、第一内面21bの全面に融着している。すなわち、第一融着層26は、誘電体層23の本体部分と第一内面21bとの対向する全範囲にて融着している。さらに、第一融着層26は、第一貫通孔21aの全体に充填されているため、第一貫通孔21aを閉塞している。つまり、第一融着層26は、第一貫通孔21aの第一内周面の全面に融着している。従って、第一電極シート21と誘電体層23との接合力が非常に高い。
【0038】
さらに、第一電極シート21における第一外面21cに、誘電体素材23a(
図4に示す)第一面側の一部分が、第一保護層24として存在している。第一保護層24の存在により、第一電極シート21が露出しないため、トランスデューサ1の取り扱い性が良好となる。さらに、誘電体素材23aの一部分が、第一電極シート21の糸の全周を囲むように存在するため、第一電極シート21と誘電体層23との接合力は、非常に高い。
【0039】
第一電極シート21と同様に、誘電体素材23aの第二面側(
図3の下側)に第二電極シート22が埋設されている。つまり、第二電極シート22における複数の第二貫通孔22aの第二内周面及び第二内面22bに、誘電体素材23aの第二面側の一部分が、第二融着層27として存在している。第二融着層27は、誘電体素材23aの一部分を融着材料として適用しており、第二貫通孔22aの第二内周面と誘電体層23の本体部分との境界部位、及び、第二内面22bと誘電体層23の本体部分との境界部位を、誘電体素材23aの一部分の融着によって接合している。
【0040】
より詳細には、第二融着層27は、第二内面22bの全面に融着している。すなわち、第二融着層27は、誘電体層23の本体部分と第二内面22bとの対向する全範囲にて融着している。さらに、第二融着層27は、第二貫通孔22aの全体に充填されているため、第二貫通孔22aを閉塞している。つまり、第二融着層27は、第二貫通孔22aの第二内周面の全面に融着している。従って、第二電極シート22と誘電体層23との接合力が非常に高い。
【0041】
さらに、第二電極シート22における第二外面22cに、誘電体素材23aの第二面側の一部分が、第二保護層25として存在している。第二保護層25の存在により、第二電極シート22が露出しないため、トランスデューサ1の取り扱い性が良好となる。さらに、誘電体素材23aの一部分が、第二電極シート22の糸の全周を囲むように存在するため、第二電極シート22と誘電体層23との接合力は、非常に高い。
【0042】
また、第一融着層26及び第二融着層27は、誘電体層23と同一材料成分により構成されている。第一融着層26及び第二融着層27は、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体素材23aの一部分に熱を加えることにより形成されている。つまり、誘電体素材23aの材料成分が実質的に変化することなく、第一融着層26及び第二融着層27が形成されている。このことは、第一融着層26及び第二融着層27に、揮散型接着剤や有機溶媒等が含まれていないことを意味する。
【0043】
次に、
図4を参照して、トランスデューサ1の製造方法について説明する。トランスデューサ1の製造は、一対の加圧加熱用のローラ41,42(加圧加熱部材)を備える。素材1aを搬送する際に、一対のローラ41,42により加圧しながら加熱することで、製品としてのトランスデューサ1が製造される。なお、一対のローラ41,42に代えて、一対のプレス板(図示せず)を用いて、加圧及び加熱を行うこともできる。仮に、トランスデューサ1が第二電極シート22を備えない場合には、
図4の下方のローラ42は、加圧のみを行えばよく、加熱は不要となる。
【0044】
図4の左側に示すように、トランスデューサ1の素材1aとして、(a)第一電極シート21、(b)第二電極シート22、及び、(c)誘電体素材23aを準備する。(a)第一電極シート21、(c)誘電体素材23a、(b)第二電極シート22の順に積層することにより積層体を形成する。積層された素材1a(積層体)を
図4の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。
【0045】
つまり、一対のローラ41,42は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をし、且つ、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、第一のローラ41の熱が、誘電体素材23aの第一面(
図4の上側)に伝達されて、熱が伝達された当該部位が溶融する。第一のローラ41と同様に、第二のローラ42の熱が、誘電体素材23aの第二面(
図4の下側)に伝達されて、熱が伝達された当該部位が溶融する。
【0046】
そうすると、第一電極シート21が、誘電体素材23aの第一面側に埋設され、且つ、第二電極シート22が、誘電体素材23aの第二面側に埋設されている。そして、誘電体素材23aの第一面側の一部分が、溶融した誘電体素材23aが固化することに伴って、第一電極シート21及び第二電極シート22に融着する。
【0047】
このようにして、誘電体素材23aの第一面側の一部分が、第一融着層26を形成し、第一電極シート21の第一貫通孔21aの第一内周面と誘電体層23との境界部位、及び、第一内面21bと誘電体層23との境界部位を接合する。さらに、誘電体素材23aの第一面側の一部分が、第一電極シート21の第一外面21cを被覆する第一保護層24を形成する。誘電体素材23aの第一面側と同様に、誘電体素材23aの第二面側の一部分が、第二融着層27を形成し、第二電極シート22の第二貫通孔22aの第一内周面と誘電体層23との境界部位、及び、第二内面22bと誘電体層23との境界部位を接合する。さらに、誘電体素材23aの第二面側の一部分が、第二電極シート22の第二外面22cを被覆する第二保護層25を形成する。
【0048】
第一例のトランスデューサ1によれば、融着材料の融着により、誘電体層23の本体部分と第一電極シート21とが接合されている。融着材料は、接着剤及び有機溶媒ではないため、トランスデューサ1は、接着剤及び有機溶媒を用いることなく製造することができる。従って、トランスデューサ1の製造において、製造コストを低減でき、且つ、VOCの排出の抑制を図ることができる。
【0049】
ここで、トランスデューサ1において、第一電極シート21及び第二電極シート22が柔軟性及び面方向への伸縮性を有する。さらには、誘電体層23、第一融着層26、第二融着層27、第一保護層24及び第二保護層25は、エラストマーにより形成されている。従って、トランスデューサ1全体として、柔軟性を有し、面方向及び法線方向への伸縮性を有する。そのため、任意形状の取付対象にトランスデューサ1を綺麗に取り付けることができる。
【0050】
さらに、第一融着層26及び第二融着層27が、誘電体素材23aの一部分により構成されることで、誘電体層23と材料成分が同一となる。従って、第一融着層26及び第二融着層27が、誘電体層23の変形を阻害することもない。
【0051】
(4.第二例)
第二例のトランスデューサ2及びその製造方法について、
図5を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図5の左側に示すように、トランスデューサ2の素材2aとして、(a)第一電極シート21、(b)第二電極シート22、(c)誘電体層53、(d)第一融着材料56a、及び、(e)第二融着材料57aを準備する。誘電体層53は、非熱可塑性材料により形成されている。特に、本例においては、誘電体層53は、非熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。さらに、誘電体層53は、非熱可塑性材料のエラストマーの発泡材料が用いられている。つまり、誘電体層53は、シートの法線方向、すなわち、トランスデューサ2の構成部材の積層体の積層方向に連通する孔を有する。
【0053】
つまり、誘電体層53は、一対のローラ41,42から熱が伝達されたとしても溶融しない。なお、誘電体層53には、エラストマーの他に、非熱可塑性材料の不織布等の通気性のよいものを適用することもできる。
【0054】
第一融着材料56a及び第二融着材料57aは、熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、第一融着材料56a及び第二融着材料57aは、誘電体層53とは別材料である。ただし、第一融着材料56a及び第二融着材料57aが固化した状態における弾性率は、誘電体層53と同程度であるとよい。第一融着材料56a及び第二融着材料57aは、例えば粒子状に形成されており、熱が加えられると溶融する。
【0055】
そして、(a)第一電極シート21、(d)第一融着材料56a、(c)誘電体層53、(e)第二融着材料57a、(b)第二電極シート22の順に積層することにより、素材2aからなる積層体を形成する。ただし、本例では、トランスデューサ2の両面同時製造を行う状態として説明するが、片面ずつ製造を行うようにしてもよい。この場合、(a)第一電極シート21、(d)第一融着材料56a及び(c)誘電体層53の順に積層し、これらにより片面を製造し、その後に、(f)片面製造体、(e)第二融着材料57a、(b)第二電極シート22の順に積層し、もう片面を製造することになる。
【0056】
図5に戻り説明を続ける。積層された素材2a(積層体)を
図5の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、第一のローラ41は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をする。これにより、第一のローラ41の熱が、第一融着材料56aに伝達されて、第一融着材料56aが溶融する。そうすると、溶融された第一融着材料56aは、第一電極シート21の第一貫通孔21aの少なくとも一部の第一内周面と誘電体層53との境界部位を接合する第一融着層56を形成する。
【0057】
第一融着層56は、さらに、第一電極シート21の第一内面21bの少なくとも一部と誘電体層53との境界部位を接合する。第一融着層56は、誘電体層53と第一内面21bとの対向する全範囲に融着するようにしてもよい。この場合には、高い接合力を有する。一方、第一融着層56は、当該対向する範囲において面方向の一部に隙間を有するようにして融着するようにしてもよい。この場合には、例えば、第一電極シート21とリード線とを半田及び導電性樹脂等の導電性接合材により接合する場合に、導電性接合材が第一電極シート21の広範囲に亘って接合される状態を形成できる。
【0058】
ここで、第一電極シート21の第一外面21cは、第一融着材料56aが存在しないため、露出している。ただし、第一融着材料56aの量を調整することによって、第一外面21cを被覆する第一保護層を形成することもできる。
【0059】
第二のローラ42は、第一のローラ41と同様に、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、第二のローラ42の熱が、第二融着材料57aに伝達されて、第二融着材料57aが溶融する。そうすると、溶融された第二融着材料57aは、第二電極シート22の第二貫通孔22aの少なくとも一部の第二内周面と誘電体層53との境界部位、及び、第二電極シート22の第二内面22bの少なくとも一部と誘電体層53との境界部位を接合する第二融着層57を形成する。ここで、第二電極シート22の第二外面22cは、第二融着材料57aが存在しないため、露出している。ただし、第二融着材料57aの量を調整することによって、第二外面22cを被覆する第二保護層を形成することもできる。
【0060】
以上のようにして製造されるトランスデューサ2は、第一電極シート21、第二電極シート22、誘電体層53、誘電体層53とは別材料により形成される第一融着層56、及び、誘電体層53とは別材料により形成される第二融着層57を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、VOCの排出の抑制を図ることができる。また、他の効果についても同様の効果を奏する。
【0061】
さらに、誘電体層53は、発泡材料又は不織布等により形成されているため、トランスデューサ2の法線方向(積層方向)に連通する孔を有する。また、第一融着層56は、第一電極シート21の第一貫通孔21aが貫通した状態を維持したまま、第一内周面に融着している。さらには、第一融着層56は、第一電極シート21の第一内面21bの一部に融着しており、他の一部と誘電体層53との間において隙間を形成している。また、第二融着層57は、第二電極シート22の第二内面22bの一部に融着しており、他の一部と誘電体層53との間において隙間を形成している。
【0062】
従って、トランスデューサ2は、複数の第一貫通孔21a、複数の第二貫通孔22a、誘電体層53の孔により、トランスデューサ2を構成する静電シートの両面間に亘って連通されている。つまり、静電シートは、静電シートの第一面から第二面に連通されている。これにより、トランスデューサ2を構成する静電シート全体として通気性を有するため、トランスデューサ2を構成する静電シートは、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0063】
(5.第三例)
第三例のトランスデューサ3及びその製造方法について、
図6を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
図6の左側に示すように、トランスデューサ3の素材3aとして、(a)第一電極シート21、及び、(b)第二電極シート22及び誘電体素材63aが一体化された部材を準備する。ここで、誘電体素材63aは、第一例の誘電体素材23aと同様に、熱可塑性エラストマーにより形成されている。
【0065】
誘電体素材63aは、ディップ、スプレー、コーティング等により、第二電極シート22の導電性繊維の全ての表面に付着されることによって、一体的に機械的係合されている。従って、誘電体素材63aは、第二電極シート22の第二貫通孔22aの第二内周面、第二内面22b、及び、第二外面22cの全てに付着している。ここで、誘電体素材63aが付着した状態において、第二貫通孔22aが貫通した状態を維持したまま、第二電極シート22に一体的に機械的係合されている。そして、誘電体素材63aは、第二電極シート22の第二貫通孔22aと同様の方向に(面法線方向及び積層方向)に孔を有すると言える。つまり、第二電極シート22の表面に誘電体素材63aが付着した部材は、織物形状を維持している。
【0066】
続いて、
図6の左側に示すように、(a)第一電極シート21、(b)第二電極シート22及び誘電体素材63aが一体化された部材の順に積層することにより、素材3aからなる積層体を形成する。積層された素材3a(積層体)を
図6の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、一対のローラ41,42は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をし、且つ、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、主として、第一のローラ41の熱が、誘電体素材63aの第一電極シート21側の面(
図6の上側)に伝達されて、熱が伝達された当該部位が溶融する。
【0067】
そうすると、第一電極シート21の一部が、誘電体素材63aに入り込む。そして、誘電体素材63aの一部分が、溶融した誘電体素材63aが固化することに伴って、第一電極シート21に融着する。このようにして、誘電体素材63aの一部分を融着材料として適用された第一融着層66が形成される。つまり、第一融着層66は、誘電体層63の本体部分と同一材料成分により構成されている。第一融着層66は、第一電極シート21の第一貫通孔21aの第一内周面の少なくとも一部と誘電体層63の本体部分との境界部位、及び、第一内面21bと誘電体層63の本体部分との境界部位を接合する。このとき、第一融着層66を形成する誘電体素材63aの一部分は、第一貫通孔21aが貫通した状態を維持したまま、第一貫通孔21aの第一内周面を融着する。
【0068】
また、誘電体素材63aは、予め、第二電極シート22の第二外面22cを被覆している第二保護層65を構成する。なお、第二のローラ42は、加熱しなくてもよい。
【0069】
以上のようにして製造されるトランスデューサ3は、第一電極シート21、第二電極シート22、誘電体層63、誘電体素材63aの一部分により形成される第一融着層66、誘電体素材63aにより形成されている第二保護層65を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、製造コストを低減でき、且つ、VOCの排出の抑制を図ることができる。また、他の効果についても同様の効果を奏する。
【0070】
さらに、誘電体素材63aは、第二電極シート22の第二貫通孔22aが貫通した状態を維持している。また、第一融着層66は、第一電極シート21の第一貫通孔21aが貫通した状態を維持したまま、第一内周面に融着している。従って、トランスデューサ3は、複数の第一貫通孔21a、複数の第二貫通孔22aにより、トランスデューサ3を構成する静電シートの両面間に亘って連通されている。これにより、トランスデューサ3を構成する静電シート全体として通気性を有するため、トランスデューサ3を構成する静電シートは、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0071】
(6.第三例の変形態様)
第三例において、誘電体素材63aは、ディップ、スプレー、コーティング等により、第二電極シート22に付着させた。この他に、第二電極シート22と誘電体素材63aとが一体化された部材を製造するためには、公知の共押し出しを適用することもできる。ただし、この場合には、誘電体素材63aが、第二電極シート22の第二貫通孔22aを閉塞するため、トランスデューサ3は、通気性を有しない。
【0072】
(7.第四例)
第四例のトランスデューサ4及びその製造方法について、
図7を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
図7の左側に示すように、トランスデューサ4の素材4aとして、(a)第一電極シート21、(b)第二電極シート22及び誘電体素材73aが一体化された部材、及び、(c)第一融着材料76aを準備する。誘電体素材73aは、非熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、一対のローラ41,42から熱が伝達されたとしても溶融しない。
【0074】
誘電体素材73aは、第三例と同様に、ディップ、スプレー、コーティング等により、第二電極シート22の導電性繊維の全ての表面に付着されることによって、一体的に機械的係合されている。ここで、誘電体素材73aが付着した状態において、第二貫通孔22aが貫通した状態を維持したまま、第二電極シート22に一体的に機械的係合されている。そして、誘電体素材73aは、第二電極シート22の第二貫通孔22aと同様の方向に(面法線方向及び積層方向)に孔を有すると言える。
【0075】
第一融着材料76aは、熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、第一融着材料76aは、誘電体素材73aとは別材料である。ただし、第一融着材料76aが固化した状態における弾性率は、誘電体素材73aと同程度であるとよい。第一融着材料76aは、粒子状に形成されており、熱が加えられると溶融する。
【0076】
そして、(a)第一電極シート21、(c)第一融着材料76a、(b)第二電極シート22及び誘電体素材73aが一体化された部材の順に積層することにより、素材4aからなる積層体を形成する。積層された素材4a(積層体)を
図7の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、一対のローラ41,42は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をし、且つ、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、主として、第一のローラ41の熱が、第一融着材料76aに伝達されて、第一融着材料76aが溶融する。
【0077】
そうすると、溶融された第一融着材料76aは、第一電極シート21の第一貫通孔21aの少なくとも一部の第一内周面と誘電体層73との境界部位、及び、第一電極シート21の第一内面21bの少なくとも一部と誘電体層73との境界部位を接合する第一融着層76を形成する。ここで、第一電極シート21の第一外面21cは、第一融着材料76aが存在しないため、露出している。ただし、第一融着材料76aの量を調整することによって、第一外面21cを被覆する第一保護層を形成することもできる。
【0078】
また、誘電体素材73aは、予め、第二電極シート22の第二外面22cを被覆している第二保護層75を構成する。なお、第二のローラ42は、加熱しなくてもよい。
【0079】
以上のようにして製造されるトランスデューサ4は、第一電極シート21、第二電極シート22、誘電体層73、誘電体層73とは別材料により形成される第一融着層76、及び、誘電体素材73aにより形成される第二保護層75を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、VOCの排出の抑制を図ることができる。さらに、第三例と同様に、トランスデューサ4を構成する静電シート全体として通気性を有するため、トランスデューサ4を構成する静電シートは、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0080】
(8.第五例)
第五例のトランスデューサ5及びその製造方法について、
図8を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
図8の左側に示すように、トランスデューサ5の素材5aとして、(a)第一電極シート21と第一誘電体素材83aが一体化された部材、及び、(b)第二電極シート22と第二誘電体素材84aが一体化された部材を準備する。ここで、第一誘電体素材83a及び第二誘電体素材84aは、第一例の誘電体素材23aと同様に、熱可塑性エラストマーにより形成されている。また、第一誘電体素材83a及び第二誘電体素材84aは、第三例と同様の方法により、第一電極シート21及び第二電極シート22に一体化されている。
【0082】
続いて、
図8の左側に示すように、(a)第一電極シート21及び第一誘電体素材83aが一体化された部材、(b)第二電極シート22及び第二誘電体素材84aが一体化された部材の順に積層する。積層された素材5a(積層体)を
図8の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、一対のローラ41,42は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をし、且つ、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、一対のローラ41,42の熱が、第一誘電体素材83aにおける第二誘電体素材84a側の部位、及び、第二誘電体素材84aにおける第一誘電体素材83a側の部位に伝達されて、熱が伝達された当該部位が溶融する。
【0083】
そうすると、第一誘電体素材83aの一部と第二誘電体素材84aの一部とが、相互に融着する。このようにして、第一誘電体素材83aの一部と第二誘電体素材84aの一部とが融着材料として適用された中間融着層85が形成される。つまり、中間融着層85は、第一誘電体層83及び第二誘電体層84と同一材料成分により構成されている。中間融着層85は、第一誘電体層83と第二誘電体層84とが直接的に接合される。
【0084】
また、第一誘電体素材83aは、予め、第一電極シート21の第一外面21cを被覆している第一保護層86を構成する。また、第二誘電体素材84aは、予め、第二電極シート22の第二外面22cを被覆している第二保護層87を構成する。
【0085】
以上のようにして製造されるトランスデューサ5は、第一電極シート21、第二電極シート22、第一誘電体層83、第二誘電体層84、中間融着層85、第一保護層86、及び、第二保護層87を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、製造コストを低減でき、且つ、VOCの排出の抑制を図ることができる。さらに、トランスデューサ5全体として通気性を有するため、トランスデューサ5は、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0086】
(9.第五例の変形態様)
第五例の変形態様のトランスデューサ6及びその製造方法について、
図9を参照して説明する。第五例との相違点について説明する。
図9に示すように、第一誘電体素材83aは、第一電極シート21の第一外面21cを被覆していない。さらに、第二誘電体素材84aは、第二電極シート22の第二外面22cを被覆していない。そして、トランスデューサ6の素材6aを準備して、第五例と同様に製造する。このようにして製造されたトランスデューサ6は、第五例のトランスデューサ5と概ね共通する。ただし、第一電極シート21の第一外面21c及び第二電極シート22の第二外面22cが露出している。電極の露出を許容することができれば、トランスデューサ6は、十分に効果を発揮する。
【0087】
(10.第六例)
第六例のトランスデューサ7及びその製造方法について、
図10を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0088】
図10の左側に示すように、トランスデューサ7の素材7aとして、(a)第一電極シート21と第一誘電体素材93aが一体化された部材、(b)第二電極シート22及び第二誘電体素材94aが一体化された部材、及び、(c)中間融着材料95aを準備する。第一誘電体素材93a及び第二誘電体素材94aは、非熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、一対のローラ41,42から熱が伝達されたとしても溶融しない。
【0089】
第一誘電体素材93a及び第二誘電体素材94aは、第五例と同様に、ディップ、スプレー、コーティング等により、第一電極シート21及び第二電極シート22に付着されることによって、一体的に機械的係合されている。
【0090】
中間融着材料95aは、熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、中間融着材料95aは、第一誘電体素材93a及び第二誘電体素材94aとは別材料である。ただし、中間融着材料95aが固化した状態における弾性率は、第一誘電体素材93a及び第二誘電体素材94aと同程度であるとよい。中間融着材料95aは、粒子状に形成されており、熱が加えられると溶融する。
【0091】
そして、(a)第一電極シート21及び第一誘電体素材93aが一体化された部材、(c)中間融着材料95a、(b)第二電極シート22及び第二誘電体素材94aが一体化された部材の順に積層することにより、積層体を形成する。積層された素材7a(積層体)を
図10の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、一対のローラ41,42は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をし、且つ、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、主として、一対のローラ41,42の熱が、中間融着材料95aに伝達されて、中間融着材料95aが溶融する。そうすると、溶融された中間融着材料95aは、第一誘電体素材93aと第二誘電体素材94aとを直接的に接合する中間融着層95を形成する。
【0092】
また、第一誘電体素材93aは、予め、第一電極シート21の第一外面21cを被覆している第一保護層96を構成する。また、第二誘電体素材94aは、予め、第二電極シート22の第二外面22cを被覆している第二保護層97を構成する。
【0093】
以上のようにして製造されるトランスデューサ7は、第一電極シート21、第二電極シート22、第一誘電体層93、第二誘電体層94、中間融着層95、第一保護層96、及び、第二保護層97を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、VOCの排出の抑制を図ることができる。さらに、トランスデューサ7を構成する静電シート全体として通気性を有するため、トランスデューサ7を構成する静電シートは、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0094】
(11.第七例)
第七例のトランスデューサ8及びその製造方法について、
図11を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0095】
図11の左側に示すように、トランスデューサ8の素材8aとして、(a)第一電極シート21と第一誘電体素材103aが一体化された部材、及び、(b)第二電極シート22と第二誘電体素材104aが一体化された部材、(c)中間誘電体素材105aを準備する。ここで、第一誘電体素材103a及び第二誘電体素材104aは、非熱可塑性エラストマーにより形成されている。一方、中間誘電体素材105aは、熱可塑性エラストマーにより形成されている。中間誘電体素材105aは、熱可塑性材料のエラストマーの発泡材料が用いられている。つまり、中間誘電体素材105aは、積層方向に連通する孔を有する。また、第一誘電体素材103a及び第二誘電体素材104aは、第三例と同様の方法により、第一電極シート21及び第二電極シート22に一体化されている。
【0096】
続いて、
図11の左側に示すように、(a)第一電極シート21及び第一誘電体素材103aが一体化された部材、(c)中間誘電体素材105a、(b)第二電極シート22及び第二誘電体素材104aが一体化された部材の順に積層することにより、積層体を形成する。積層された素材8a(積層体)を
図11の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、一対のローラ41,42は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をし、且つ、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、一対のローラ41,42の熱が、中間誘電体素材105aにおける第一誘電体素材103a側の部位、及び、中間誘電体素材105aにおける第二誘電体素材104a側の部位に伝達されて、熱が伝達された当該部位が溶融する。
【0097】
そうすると、第一誘電体素材103aの一部が、中間誘電体素材105aに入り込む。そして、中間誘電体素材105aの一部分が、溶融した中間誘電体素材105aが固化することに伴って、第一誘電体素材103aに融着する。このようにして、中間誘電体素材105aの一部分を第一中間融着材料として適用された第一中間融着層106が形成される。つまり、第一中間融着層106は、中間誘電体層105の本体部分と同一材料成分により構成されている。
【0098】
第一誘電体素材103aと同様に、第二誘電体素材104aの一部が、中間誘電体素材105aに入り込む。そして、中間誘電体素材105aの一部分が、溶融した中間誘電体素材105aが固化することに伴って、第二誘電体素材104aに融着する。このようにして、中間誘電体素材105aの一部分を第二中間融着材料として適用された第二中間融着層107が形成される。つまり、第二中間融着層107は、中間誘電体層105の本体部分と同一材料成分により構成されている。
【0099】
このようにして、第一誘電体素材103aと第二誘電体素材104aとは、中間誘電体層105、第一中間融着層106及び第二中間融着層107を介して、間接的に接合されている。
【0100】
また、第一誘電体素材103aは、予め、第一電極シート21の第一外面21cを被覆している第一保護層108を構成する。また、第二誘電体素材104aは、予め、第二電極シート22の第二外面22cを被覆している第二保護層109を構成する。
【0101】
以上のようにして製造されるトランスデューサ8は、第一電極シート21、第二電極シート22、第一誘電体層103、第二誘電体層104、中間誘電体層105、第一中間融着層106、第二中間融着層107、第一保護層108、及び、第二保護層109を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、VOCの排出の抑制を図ることができる。さらに、トランスデューサ8全体として通気性を有するため、トランスデューサ5は、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0102】
(12.第八例)
第八例のトランスデューサ9及びその製造方法について、
図12を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
図12の左側に示すように、トランスデューサ9の素材9aとして、(a)第一電極シート21と第一誘電体素材113aが一体化された部材、及び、(b)第二電極シート22と第二誘電体素材114aが一体化された部材、(c)中間誘電体層115、(d)第一中間融着材料116a、及び、(e)第二中間融着材料117aを準備する。
【0104】
第一誘電体素材113a、第二誘電体素材114a及び中間誘電体層115は、非熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、一対のローラ41,42から熱が伝達されたとしても溶融しない。
【0105】
第一誘電体素材113a及び第二誘電体素材114aは、第五例と同様に、ディップ、スプレー、コーティング等により、第一電極シート21及び第二電極シート22に付着されることによって、一体的に機械的係合されている。
【0106】
第一中間融着材料116a及び第二中間融着材料117aは、熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。つまり、第一中間融着材料116a及び第二中間融着材料117aは、第一誘電体素材113a、第二誘電体素材114a及び中間誘電体層115とは別材料である。ただし、第一中間融着材料116a及び第二中間融着材料117aが固化した状態における弾性率は、第一誘電体素材113a、第二誘電体素材114a及び中間誘電体層115と同程度であるとよい。中間融着材料95aは、粒子状に形成されており、熱が加えられると溶融する。
【0107】
そして、(a)第一電極シート21及び第一誘電体素材113aが一体化された部材、(d)第一中間融着材料116a、(c)中間誘電体層115、(e)第二中間融着材料117a、(b)第二電極シート22及び第二誘電体素材114aが一体化された部材の順に積層することにより、積層体を形成する。ただし、本例では、トランスデューサ9の両面同時製造を行う状態として説明するが、片面ずつ製造を行うようにしてもよい。この場合、(a)第一電極シート21及び第一誘電体素材113aが一体化された部材、(d)第一中間融着材料116a、(c)中間誘電体層115の順に積層し、これらにより片面を製造し、その後に、(f)片面製造体、(e)第二中間融着材料117a、(b)第二電極シート22及び第二誘電体素材114aが一体化された部材の順に積層し、もう片面を製造することになる。
【0108】
図12に戻り説明を続ける。積層された素材9a(積層体)を
図12の右側へ搬送して、一対のローラ41,42の間に進入させる。つまり、第一のローラ41は、第一電極シート21の第一外面21c側から加圧及び加熱をする。これにより、第一のローラ41の熱が、第一中間融着材料116aに伝達されて、第一中間融着材料116aが溶融する。そうすると、溶融された第一中間融着材料116aは、第一誘電体素材113aと中間誘電体層115とを接合する第一中間融着層116を形成する。
【0109】
第一のローラ41と同様に、第二のローラ42は、第二電極シート22の第二外面22c側から加圧及び加熱をする。これにより、第二のローラ42の熱が、第二中間融着材料117aに伝達されて、第二中間融着材料117aが溶融する。そうすると、溶融された第二中間融着材料117aは、第二誘電体素材114aと中間誘電体層115とを接合する第二中間融着層117を形成する。
【0110】
また、第一誘電体素材113aは、予め、第一電極シート21の第一外面21cを被覆している第一保護層118を構成する。また、第二誘電体素材114aは、予め、第二電極シート22の第二外面22cを被覆している第二保護層119を構成する。
【0111】
以上のようにして製造されるトランスデューサ9は、第一電極シート21、第二電極シート22、第一誘電体層113、第二誘電体層114、中間誘電体層115、第一中間融着層116、第二中間融着層117、第一保護層118、及び、第二保護層119を備える。この製造方法においても、第一例と同様に、VOCの排出の抑制を図ることができる。さらに、トランスデューサ9全体として通気性を有するため、トランスデューサ9は、通気性を必要とする場所に設置することが可能となる。
【0112】
(13.第九例)
第九例のトランスデューサ10を構成する静電シート及びその製造方法について、
図13及び
図14を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここで、第九例のトランスデューサ10は、第一例のトランスデューサ2の変形態様として説明する。ただし、第九例のトランスデューサ10の特有の構成、すなわち第一電極シート121及び第二電極シート122を、他の例における第一電極シート21及び第二電極シート22に置換することもできる。
【0113】
図13に示すように、トランスデューサ10は、第一電極シート121、第二電極シート122、誘電体層23、第一保護層24、及び、第二保護層25により構成される静電シートを備える。
図14に示すように、第一例と同様に、(a)第一電極シート121、(b)誘電体素材23a、(c)第二電極シート122の順に積層することにより、積層体を形成する。続いて、一対のローラ41,42(
図4に示す)により加圧及び加熱を行うことにより、
図13に示すように、第一電極シート121及び第二電極シート122が、誘電体素材23aに埋設されている。このようにして、トランスデューサ10を構成する静電シートが製造される。
【0114】
ここで、第一電極シート121は、第一例における第一電極シート21と実質的に同様の導電性の布である。ただし、第一電極シート121は、
図13及び
図14に示すように、複数の第一スリット121dを備える点において、第一例における第一電極シート21と相違する。
【0115】
第一電極シート121は、主方向に配列された複数の第一スリット121dを備える。ここで、主方向とは、第一電極シート121の所定方向を意味する。
図13においては、主方向は、第一電極シート121の長手方向である場合を例にあげる。つまり、主方向は、
図13に示すA方向である。また、副方向は、主方向に対して角度を有する方向、例えば、主方向に直交する方向等である。例えば、
図13においては、副方向は、第一電極シート121の短手方向、すなわち、
図13に示すB方向とする。
【0116】
第一スリット121dは、
図13及び
図14に示すように、第一電極シート121が非伸張状態において領域を有して形成されてもよい。当該領域の形状は、円、楕円、正方形、長方形、平行四辺形、台形、三角形、その他の多角形、任意の線により囲まれた形状等、種々の形状とすることができる。また、第一スリット121dは、第一電極シート121が非伸張状態において、線状に形成されてもよい。
【0117】
図13及び
図14においては、第一スリット121dは、副方向に延在する楕円形状に形成されている。つまり、第一スリット121dは、副方向において、第一貫通孔21aの開口長さよりも長く形成されている。さらに、第一スリット121dは、第一電極シート121において、副方向において中央部に形成されている。つまり、第一スリット121dは、第一電極シート121の副方向の両端部に形成されておらず、副方向の両端部から距離を有する。そして、第一スリット121dは、第一スリット121dの主方向への広がり変形によって、少なくとも第一電極シート121が主方向へ伸張することを許容する。
【0118】
ここで、第一スリット121dは、主方向においても、第一貫通孔21aの開口長さよりも長く形成されている。従って、第一スリット121dは、第一スリット121dの副方向への広がり変形によって、第一電極シート121が副方向へ伸張することも許容する。
【0119】
第二電極シート122は、第一電極シート121と同様である。つまり、第二電極シート122は、
図14に示すように、複数の第二スリット122dを備える点において、第一例における第二電極シート22と相違する。そして、第二スリット122dは、第一スリット121dと同様である。
【0120】
そして、エラストマーにより形成されている誘電体層23は、第一スリット121dに対応する部分及び第二スリット122dに対応する部分に充填されている。第一スリット121dに対応する部分とは、第一スリット121dの内部、第一スリット121dに対して法線方向の領域を含む。
【0121】
従って、トランスデューサ10を構成する静電シートが主方向に伸張される場合に、第一スリット121dが広がり変形し、且つ、第一スリット121dに対応する部分の誘電体層23が伸張する。さらに、第二スリット122dが広がり変形し、且つ、第二スリット122dに対応する部分の誘電体層23が伸張する。このようにして、トランスデューサ10を構成する静電シートは、主方向に大きく伸張可能となる。さらに、当該静電シートは、副方向にも伸張可能となる。ただし、副方向への伸長量は、主方向への伸張量よりも小さい。
【0122】
本例におけるトランスデューサ10を構成する静電シートは、三次元形状の物体の表面を被覆する場合に有用である。つまり、当該静電シートを伸張させながら当該物体の表面に配置することで、当該静電シートが当該物体の表面に沿って配置される。つまり、静電シートを綺麗に且つ容易に配置することができるため、静電シートにより被覆した状態において、当該物体の意匠性を良好とすることができる。当該トランスデューサ10は、例えば、ポインティングデバイスであるマウスの表面、車両のステアリングホイールの表面、車両のドアノブ、車両のシフトレバー等に適用できる。
【0123】
(14.第九例の第一変形形態)
第九例の第一変形態様のトランスデューサ11を構成する静電シートについて、
図15を参照して説明する。上記の第九例のトランスデューサ10を構成する静電シートにおいては、第一電極シート121が第一スリット121dを備え、第二電極シート122が第二スリット122dを備えることとした。この他に、
図15に示すように、トランスデューサ11を構成する静電シートにおいては、第一電極シート121は第一スリット121dを備え、第二電極シート22は第二スリットを備えないようにしてもよい。
【0124】
この場合、当該静電シートにおいて、第一面側の剛性と第二面側の剛性とに差をつけることができる。例えば、三次元形状の物体の表面に当該静電シートを配置する場合において、当該物体の表面が、凸形状である場合とする。この場合、第一スリット121dを有する第一電極シート121が物体の表面側に位置するようにし、第二スリットを有しない第二電極シート22が物体の内部側に位置するようにする。このようにすることで、静電シートを綺麗に且つ容易に配置することができる。
【0125】
(15.第九例の第二変形態様)
第九例の第二変形態様のトランスデューサ12を構成する静電シートについて、
図16を参照して説明する。上記の第九例のトランスデューサ10を構成する静電シートにおいては、第一スリット121d及び第二スリット122dが、副方向の中央部に形成されている。これに対して、トランスデューサ12を構成する静電シートにおいては、
図16に示すように、第一電極シート221の第一スリット221d及び第二電極シート222の第二スリット222dが、副方向の両端部に形成されており、副方向の中央部に形成されていない。この場合も、第九例のトランスデューサ10と同様の効果を奏する。
【0126】
(16.第九例の第三変形態様)
第九例の第三変形態様のトランスデューサ13を構成する静電シートについて、
図17を参照して説明する。トランスデューサ13を構成する静電シートにおいて、誘電体層323には、副方向の両端に切欠323a,323bが形成されている。
【0127】
第一電極シート321において、第一スリット321dは、線状に形成されている。第二電極シート322において、第二スリット322dも、線状に形成されている。切欠323a,323bから離れた位置においては、第一スリット321d及び第二スリット322dが、副方向に延びる線状に形成されている。一方、切欠323a,323bに近接する位置においては、第一スリット321d及び第二スリット322dは、主方向及び副方向に角度を有する方向(主方向に対して傾斜方向)に延びるように形成されている。
【0128】
副方向に延びる第一スリット321d及び第二スリット322dは、第九例における第一スリット121d及び第二スリット122dとほぼ同様に作用する。一方、傾斜方向に延びる第一スリット321d及び第二スリット322dは、切欠323a,323bにおける応力集中を抑制するように作用する。従って、誘電体層323の形状に応じて、第一スリット321d及び第二スリット322dの位置及び延在方向を設定すると良い。
【0129】
(17.第九例の第四変形態様)
第九例の第四変形態様のトランスデューサ14を構成する静電シートについて、
図18を参照して説明する。トランスデューサ14を構成する静電シートにおいて、第一電極シート421は、複数種の第一スリット421d1,421d2,421d3を備える。第一スリット421d1は、副方向において、第一電極シート421の外縁における2つの位置(両端位置)を結ぶように形成されている。第一スリット421d2は、主方向において、第一電極シート421の外縁における2つの位置(両端位置)を結ぶように形成されている。つまり、2種の第一スリット421d1,421d2は、第一電極シート421による検出領域を複数(4つ)に分割している。ここで、2種の第一スリット421d1,421d2は、直線状を例示したが、曲線、折れ曲がり線等、任意の線を採用することができる。
【0130】
さらに、第一スリット421d3は、分割された各領域において、副方向に延在する楕円形状に形成されている。ただし、第一スリット421d3は、第九例にて説明したように、任意の形状とすることができる。そして、第二電極シート422は、第一電極シート421と同様に形成されている。
【0131】
本例によれば、検出領域を複数に分割する場合に有効である。このように検出領域を分割したとしても、トランスデューサ14を構成する静電シートは、1つであるため、1部品化による種々の効果を奏する。
【0132】
(18.第十例)
第十例のトランスデューサ15について、
図19を参照して説明する。第一例と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここで、第十例のトランスデューサ15は、第一例のトランスデューサ2の変形態様として説明する。ただし、第十例のトランスデューサ15の特有の構成、すなわち第一リード線526及び第二リード線527を追加する構成、他の例に適用することもできる。
【0133】
図19に示すように、トランスデューサ15は、第一電極シート21、第二電極シート22、誘電体層23、第一保護層24、第二保護層25、第一リード線526、及び、第二リード線527により構成される静電シートを備える。
【0134】
第一リード線526は、導線を絶縁材により被覆する本体部526aと、導線が露出する導通部526bとを備える。第一リード線526の本体部526aの先端側は、第一電極シート21の第一内面21b側に配置されている。第一リード線526の導通部526bも、第一電極シート21の第一内面21b側に配置されている。つまり、第一リード線526の本体部526aの先端側及び導通部526bのどちらもが、第一電極シート21と誘電体層23の本体部分との間に挟まれている。第一リード線526の本体部526aが、第一電極シート21と誘電体層23の本体部分との間から外部へ延在している。そして、第一リード線526の導通部526bが、第一電極シート21に電気的に接続されている。
【0135】
第二リード線527は、導線を絶縁材により被覆する本体部527aと、導線が露出する導通部527bとを備える。第二リード線527の本体部527aの先端側は、第二電極シート22の第二内面22b側に配置されている。第二リード線527の導通部527bも、第二電極シート22の第二内面22b側に配置されている。つまり、第二リード線527の本体部527aの先端側及び導通部527bのどちらもが、第二電極シート22と誘電体層23の本体部分との間に挟まれている。第二リード線527の本体部527aが、第二電極シート22と誘電体層23の本体部分との間から外部へ延在している。そして、第二リード線527の導通部527bが、第二電極シート22に電気的に接続されている。
【0136】
トランスデューサ15を構成する静電シートの製造方法について、
図20及び
図21を参照して説明する。
図20に示すように、(a)第一電極シート21、(b)第一リード線526、(c)誘電体素材23a、(d)第二リード線527、(e)第二電極シート22の順に積層することにより、積層体を形成する。続いて、一対のローラ41,42(
図4に示す)により加圧及び加熱を行うことにより、
図21に示すように、第一電極シート21及び第一リード線526が、誘電体素材23aの第一面側に埋設されている。また、第二電極シート22及び第二リード線527が、誘電体素材23aの第二面側に埋設されている。このようにして、トランスデューサ15を構成する静電シートが製造される。
【0137】
図21に示すように、第一リード線526及び第二リード線527が存在する部位においても、トランスデューサ15を構成する静電シートの厚みが他の部位に比べて極端に厚くなることを抑制できる。従って、静電シートの意匠性を良好とすることができる。さらに、第一電極シート21と第一リード線526との電気的に接続するための半田や導電性樹脂等の導電性接合材が不要となる。その結果、低コスト化を図ることができる。
【0138】
(19.第十例の第一変形態様)
第十例の第一変形態様のトランスデューサ16を構成する静電シートについて、
図22を参照して説明する。トランスデューサ16において、第一リード線526の導通部526bが、第一貫通孔21aを介して第一電極シート21に絡められている。このようにして、両者の電気的な接続状態を確実なものとすることができる。製造時には、予め導通部526bと第一電極シート21が絡められた状態にし、その後に、一対のローラ41,42による加圧及び加熱によって、誘電体層23の本体部分に融着される。
【0139】
また、第二リード線527の導通部527bも、第二貫通孔22aを介して第二電極シート22に絡められている。このようにして、両者の電気的な接続状態を確実なものとすることができる。また、製造時には、予め導通部527bと第二電極シート22が絡められた状態にし、その後に、一対のローラ41,42による加圧及び加熱によって、誘電体層23の本体部分に融着される。
【0140】
(20.第十例の第二変形態様)
第十例の第二変形態様のトランスデューサ17を構成する静電シートについて、
図23を参照して説明する。トランスデューサ17は、さらに、第一リード線526の導通部526bと第一電極シート21を電気的に接続した状態で固着する第一固着層728を備える。第一固着層728は、半田又は導電性樹脂等の導電性接合材からなる。一対のローラ41,42による加圧及び加熱の前に、予め、第一固着層728により、第一リード線526の導通部526bと第一電極シート21とを固着してもよい。また、一対のローラ41,42による加圧及び加熱の後に、第一固着層728により、第一リード線526の導通部526bと第一電極シート21とを固着してもよい。これにより、第一電極シート21と第一リード線526の導通部526bとの電気的な接続が確実となる。
【0141】
トランスデューサ17は、さらに、第二リード線527の導通部527bと第二電極シート22を電気的に接続した状態で固着する第二固着層729を備える。第二固着層729については、第一固着層728と同様である。
【符号の説明】
【0142】
1-17:トランスデューサ、21,121,221,321,421:第一電極シート、21a:第一貫通孔、21b:第一内面、21c:第一外面、22,122,222,322,422:第二電極シート、22a:第二貫通孔、22b:第二内面、22c:第二外面、23,53,63,73,323:誘電体層、23a,63a,73a:誘電体素材、24,86,96,108,118:第一保護層、25,65,75,87,97,109,119:第二保護層、26,56,66,76:第一融着層、27,57:第二融着層、56a,76a:第一融着材料、57a:第二融着材料、83,93,103,113:第一誘電体層、83a,93a,103a,113a:第一誘電体素材、84,94,104,114:第二誘電体層、84a,94a,104a,114a:第二誘電体素材、85,95:中間融着層、95a:中間融着材料、105,115:中間誘電体層、105a:中間誘電体素材、106,116:第一中間融着層、107,117:第二中間融着層、116a:第一中間融着材料、117a:第二中間融着材料、121d,221d,321d,421d1,421d2,421d3:第一スリット、122d,222d,322d:第二スリット、526:第一リード線、527:第二リード線、728:第一固着層、729:第二固着層