(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】誤開封防止容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B65D77/20 G
B65D77/20 L
(21)【出願番号】P 2018186841
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 季和
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌宏
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-271972(JP,A)
【文献】特開2006-096367(JP,A)
【文献】特開平02-219768(JP,A)
【文献】特開2007-204134(JP,A)
【文献】特開2007-217019(JP,A)
【文献】特開2016-040176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 77/30
B65D 77/12
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される環状の接合領域で前記容器本体に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体と
を備える誤開封防止容器であって、
前記接合領域の外周側では、全周にわたって前記容器本体と前記蓋体とを分離する方向の応力に対抗する外側耐応力構造が形成され、
前記接合領域の内周側では、周方向の一部分を除く部分で前記容器本体と前記蓋体とを分離する方向の応力に対抗する内側耐応力構造が形成され、前記周方向の一部分には前記内側耐応力構造が形成され
ず、
前記外側耐応力構造は、前記容器本体を形成する樹脂からなり前記接合領域の外周側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、前記蓋体を形成する樹脂からなり前記第1樹脂溜まり部よりも前記接合領域の外周側に位置する瘤状断面の第2樹脂溜まり部とを含み、
前記内側耐応力構造は、前記容器本体を形成する樹脂からなり前記凹部側に傾いた瘤状断面の第3樹脂溜まり部と、前記蓋体を形成する樹脂からなり前記第3樹脂溜まり部よりも前記凹部側に位置する瘤状断面の第4樹脂溜まり部とを含む、誤開封防止容器。
【請求項2】
前記容器本体は、第1層と、前記第1層に接合され前記接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記蓋体は、前記接合領域に面する第3層と、前記第3層に接合される第4層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記第2層または前記第3層のいずれかが凝集破壊層であり、前記凝集破壊層の凝集強度は前記蓋体と前記容器本体との間の接合強度、前記第1層から前記第4層までのうち前記凝集破壊層以外の各層の凝集強度、ならびに前記第1層と前記第2層との間および前記第3層と前記第4層との間の層間接合強度よりも弱く、
前記
第1樹脂溜まり部は、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からな
り、
前記第2樹脂溜まり部は、前記第3層の樹脂からな
り、
前記
第3樹脂溜まり部は、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からな
り、
前記第4樹脂溜まり部は、前記第3層の樹脂からな
る、請求項1に記載の誤開封防止容器。
【請求項3】
凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される環状の接合領域で前記容器本体に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体と
を備える誤開封防止容器であって、
前記接合領域の外周側では、全周にわたって前記容器本体と前記蓋体とを分離する方向の応力に対抗する外側耐応力構造が形成され、
前記接合領域の内周側では、周方向の一部分を除く部分で前記容器本体と前記蓋体とを分離する方向の応力に対抗する内側耐応力構造が形成され、前記周方向の一部分には前記内側耐応力構造が形成されず、
前記容器本体は、第1層と、前記第1層に接合され前記接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記蓋体は、前記接合領域に面する第3層と、前記第3層に接合される第4層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記第2層または前記第3層のいずれかが凝集破壊層であり、前記凝集破壊層の凝集強度は前記蓋体と前記容器本体との間の接合強度、前記第1層から前記第4層までのうち前記凝集破壊層以外の各層の凝集強度、ならびに前記第1層と前記第2層との間および前記第3層と前記第4層との間の層間接合強度よりも弱く、
前記外側耐応力構造は、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からなり前記接合領域の外周側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、前記第3層の樹脂からなり前記第1樹脂溜まり部よりも前記接合領域の外周側に位置する瘤状断面の第2樹脂溜まり部とを含み、
前記内側耐応力構造は、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からなり前記凹部側に傾いた瘤状断面の第3樹脂溜まり部と、前記第3層の樹脂からなり前記第3樹脂溜まり部よりも前記凹部側に位置する瘤状断面の第4樹脂溜まり部とを含み、
前記第3層が凝集破壊層であ
る誤開封防止容器。
【請求項4】
凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される環状の接合領域で前記容器本体に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体と
を備える誤開封防止容器であって、
前記接合領域の外周側では、全周にわたって前記容器本体と前記蓋体とを分離する方向の応力に対抗する外側耐応力構造が形成され、
前記接合領域の内周側では、周方向の一部分を除く部分で前記容器本体と前記蓋体とを分離する方向の応力に対抗する内側耐応力構造が形成され、前記周方向の一部分には前記内側耐応力構造が形成されず、
前記容器本体は、第1層と、前記第1層に接合され前記接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記蓋体と前記第2層との間の接合強度は、前記第2層と前記第1層との間の層間接合強度よりも強く、
前記容器本体には、前記接合領域の前記凹部側に離隔して並行する前記第2層の欠落部が形成され、
前記外側耐応力構造は、前記フランジ部の外縁で前記蓋体を形成する樹脂が前記第2層の端面に被さるように垂れる樹脂垂れ部が形成されない、樹脂垂れ非形成部を含み、
前記内側耐応力構造は、前記欠落部と前記接合領域との間の間隔が前記周方向の一部分よりも拡張された間隔拡張部を含む誤開封防止容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤開封防止容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体および蓋体からなる食品などの容器において、容器の密封性と、開封性、すなわち開封時に蓋体を容器本体から容易に剥離できるようにすることとを両立することは容易ではない。容器本体と蓋体との間の接合強度を強くすれば密封性は向上するが開封性は低下し、逆に接合強度を弱くすれば開封性が向上する代わりに密封性が低下するためである。このような課題を解決するための技術は、これまでに種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器本体と容器本体のフランジ部に接合される蓋体とからなる容器において、容器本体および蓋体を形成する積層体のいずれかの層の凝集強度を容器本体と蓋体との間の接合強度よりも小さくなるように構成するとともに、容器本体と蓋体との間の接合部の内周縁部近傍に樹脂溜まり部を形成する技術が提案されている。容器本体と蓋体との接合領域では容器本体および蓋体を形成する積層体のいずれかの層を凝集破壊させることで、容器本体と蓋体との間の接合強度を弱めることなく開封性を高めることが可能になる。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、容器本体と容器本体のフランジ部に接合される蓋体とからなる容器において、多層シートで形成された容器本体の内外層の層間接着力を容器本体と蓋体との間の接着力よりも小さくなるように構成するとともに、フランジ部の容器開口部側の内層に切り込みを設ける技術が提案されている。切り込みの外側に形成される容器本体と蓋体との接合領域で容器本体を層間剥離させることで、容器本体と蓋体との間の接合強度を弱めることなく開封性を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5001962号公報
【文献】特開昭63-00078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その一方で、容器については、いわゆるチャイルドレジスタンス機能が求められることもある。これは、例えば子供がアルコール入りの食品などの容器を誤開封したり、店頭で故意に容器が開封されて異物が混入されたりすることを防止するために、あえて開封を困難にする機能である。
【0007】
しかしながら、従来提案されているチャイルドレジスタンス機能つきの容器では、例えば子供のみでなく、大人でも開封方法を知らなければ開封できなかったり、開封自体が困難であったりする課題がある。また、シュリンクフィルムや包装箱に容器を収納する方法もあるが、コスト増加や生産工程増加に繋がるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、材料や生産工程を増やすことなく、また使用時には容易に開封することが可能でありながら、チャイルドレジスタンス機能を実現した誤開封防止容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある観点によれば、凹部および凹部の周縁に沿って形成され周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、フランジ部に形成される環状の接合領域で容器本体に接合されることによって凹部との間に内部空間を形成する蓋体とを備える容器であって、接合領域の外周側では、全周にわたって容器本体と蓋体とを分離する方向の応力に対抗する外側耐応力構造が形成され、接合領域の内周側では、周方向の一部分を除く部分で容器本体と蓋体とを分離する方向の応力に対抗する内側耐応力構造が形成され、周方向の一部分には内側耐応力構造が形成されない容器が提供される。
上記の構成によれば、外側からの開封が困難であることによってチャイルドレジスタンス機能が実現される。その一方で、使用時に内部空間の内圧を上昇させると接合領域の周方向の一部分で容器本体と蓋体との間の接合が破壊されるため、この部分を起点にして容器を容易に開封することができる。
【0010】
上記の容器において、容器本体は、第1層と、第1層に接合され接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、蓋体は、接合領域に面する第3層と、第3層に接合される第4層とを少なくとも含む積層体からなり、第2層または第3層のいずれかが凝集破壊層であり、凝集破壊層の凝集強度は蓋体と容器本体との間の接合強度、第1層から第4層までのうち凝集破壊層以外の各層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱く、外側耐応力構造は、第1層および第2層を形成する樹脂からなり接合領域の外周側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、第3層の樹脂からなり第1樹脂溜まり部よりも接合領域の外周側に位置する瘤状断面の第2樹脂溜まり部とを含み、内側耐応力構造は、第1層および第2層を形成する樹脂からなり凹部側に傾いた瘤状断面の第3樹脂溜まり部と、第3層の樹脂からなり第3樹脂溜まり部よりも凹部側に位置する瘤状断面の第4樹脂溜まり部とを含んでもよい。
【0011】
上記の容器において、容器本体は、第1層と、第1層に接合され接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、蓋体と第2層との間の接合強度は、第2層と第1層との間の層間接合強度よりも強く、容器本体には、接合領域の凹部側に離隔して並行する第2層の欠落部が形成され、外側耐応力構造は、フランジ部の外縁で蓋体を形成する樹脂が第2層の端面に被さるように垂れる樹脂垂れ部が形成されない、樹脂垂れ非形成部を含み、内側耐応力構造は、欠落部と接合領域との間の間隔が周方向の一部分よりも拡張された間隔拡張部を含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、材料や生産工程を増やすことなく、また使用時には容易に開封することが可能でありながら、チャイルドレジスタンス機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。
【
図10】樹脂垂れ部について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。
図1(A)に示されるように、容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、略円形の平面形状を有し、カップ状の凹部111と、凹部111の周縁に沿って形成され、周縁から外方に延出するフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される環状の接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。蓋体130は、容器本体110のフランジ部112の周縁から延出して形成されたタブ130Aを含む。後述するように、片側易破壊部(One-way Breakable Section)141において接合領域140における容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊されると、ユーザは
図1(B)に示すようにタブ130Aを摘持して蓋体130を容器本体110から剥がし、容器100を開封することができる。
【0016】
図2は、
図1に示す容器の平面図である。図示されるように、環状の接合領域140の内周側には内側樹脂溜まり部125が形成され、接合領域140の外周側には外側樹脂溜まり部120が形成される。ここで、外側樹脂溜まり部120は接合領域140の全周にわたって環状に形成されるが、内側樹脂溜まり部125は接合領域140の一部、具体的には片側易破壊部141には形成されておらず、全体としてC字状になっている。このように、外周側に外側樹脂溜まり部120が形成されるが、内周側に内側樹脂溜まり部125が形成されないことによって、容器100の内部空間SPの内圧が上昇した際には、
図2(B)に示されるように、片側易破壊部141で接合領域140における容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊される。
【0017】
図3および
図4は、
図2に示す容器の部分断面図である。
図3は
図2に示すIII-III線に沿った、片側易破壊部141の断面図であり、(A)は片側易破壊部141が破壊される前の状態を、(B)は片側易破壊部141が破壊された後の状態を示す。
図4は
図2に示すIV-IV線に沿った、片側易破壊部141以外の部分の断面図である。
【0018】
本実施形態において、容器本体110は、
図3および
図4に示されるように、基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cを含む積層体114を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層114Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面下層114Bは、基材層114Aと表面層114Cとの間にあり、それぞれの層に接合されている。表面層114Cは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。
【0019】
ここで、積層体114の基材層114Aおよび表面下層114Bは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層114Aおよび表面下層114Bとの間では、例えば剛性が異なる。基材層114Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0020】
一方、積層体114の表面層114Cは、例えばエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくともいずれかを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物で形成される。この場合、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部から50質量部、特に好ましくは15質量部から40質量部程度、添加すればよい。
【0021】
なお、図示された例において積層体114は基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cの3つの層を含むが、他の例において積層体114は追加の層を含んでもよい。例えば、積層体114は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の基材層と、基材層同士を接着する接着層とを含んでもよい。接着層は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。また、積層体114は、酸素などを遮断するガスバリア層を含んでもよい。ガスバリア層は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはポリアクリロニトリル(PAN)などで形成される。
【0022】
蓋体130は、外層131Aおよびシール層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。外層131Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。一方、シール層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に向けられる側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。シール層131Bは、例えばランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成される。本実施形態において、外層131Aとシール層131Bとは互いに接合されている。なお、他の実施形態では、積層体131にも追加の層が含まれてもよい。
【0023】
ここで、
図3および
図4に示されるように、接合領域140の外周側では、片側易破壊部141およびそれ以外の部分の両方を含む全周にわたって外側樹脂溜まり部120が形成される。第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を含む外側樹脂溜まり部120は、後述するように容器本体110と蓋体130とを分離する方向の応力に対抗する外側耐応力構造として機能する。第1樹脂溜まり部121は、積層体114の表面下層114Bおよび表面層114Cを形成する樹脂からなり、接合領域140の外周側に向かって傾いた瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部122は、蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部121よりも接合領域140の外周側に位置する瘤状断面を有する。図示されているように、表面層114Cは、第1樹脂溜まり部121の表面に沿って、かつ第1樹脂溜まり部121と第2樹脂溜まり部122との隙間を通るように形成される。
【0024】
一方、
図4に示されるように、接合領域140の内周側では、片側易破壊部141を除く部分で内側樹脂溜まり部125が形成される。第3樹脂溜まり部123および第4樹脂溜まり部124を含む内側樹脂溜まり部125は、後述するように容器本体110と蓋体130とを分離する方向の応力に対抗する内側耐応力構造として機能する。第3樹脂溜まり部123は、積層体114の表面下層114Bおよび表面層114Cを形成する樹脂からなり、凹部111側に傾いた瘤状断面を有する。第4樹脂溜まり部124は、蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂からなり、第3樹脂溜まり部123よりも凹部111側に位置する瘤状断面を有する。図示されているように、表面層114Cは、第3樹脂溜まり部123の表面に沿って、かつ第3樹脂溜まり部123と第4樹脂溜まり部124との隙間を通るように形成される。
【0025】
図3および
図4に示された例では、積層体114の表面層114Cが、内圧が作用した場合に破壊される凝集破壊層である。表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層体114および積層体131を構成する表面層114C以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層114Cを第2層、シール層131Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、凝集破壊層である第2層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第3層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。なお、本明細書において、凝集強度は、積層体の各層を構成する樹脂を結合させている分子間力(凝集力)によって発揮される強度を意味する。
【0026】
図3(A)に断面を示す片側易破壊部141では、外側樹脂溜まり部120が形成されることによって、容器外側からの開封しようとする力、すなわち容器本体110と蓋体130とを分離する方向の力に対抗することができる。その一方で、片側易破壊部141には内側樹脂溜まり部125が形成されないため、内部空間SPの内圧が上昇し、容器本体110と蓋体130とを分離する方向の力が作用した場合には、
図3(B)に示すように接合領域140で蓋体130に引っ張られた表面層114Cが内周側から破壊されることによって容器本体110と蓋体130との間が分離する。このとき、表面層114Cの一部は蓋体130とともに容器本体110から分離し、表面層114Cの残りの部分は表面下層114B側に残る。
【0027】
一方、
図4に断面を示す、片側易破壊部141以外の部分では、外側樹脂溜まり部120が形成されることによって容器外側からの開封しようとする力に対抗できるのに加えて、内側樹脂溜まり部125が形成されることによって、内部空間SPの内圧にも対抗して容器本体110と蓋体130との間の接合を維持することができる。従って、上述のように、内部空間SPの内圧が上昇した際には、他の部分ではなく片側易破壊部141で容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊される。片側易破壊部141で容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊された後は、ユーザはこの部分を起点にして他の部分でも表面層114Cを凝集破壊させ、蓋体130を容器本体110から引き剥がして容器100を開封することができる。
【0028】
(変形例)
図5は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す断面図である。上記の例との相違として、本変形例では、積層体131のシール層131Bが、内圧が作用した場合に破壊される凝集破壊層である。シール層131Bの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層体114および積層体131のシール層131B以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層114Cを第2層、シール層131Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第3層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第2層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。
【0029】
上記のような接合強度および凝集強度の関係を実現するために、本変形例では、積層体114の表面層114Cと積層体131のシール層131Bとが
図3および
図4に示された例とは異なる材料で形成されうる。具体的には、表面層114Cは、基材層114Aおよび表面下層114Bと同様に、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。また、シール層131Bは、例えばスチレングラフトプロピレン樹脂、または接着性ポリオレフィン樹脂などで形成される。なお、表面層114Cではなくシール層131Bが破壊される点を除けば、内部空間SPの内圧が上昇した際に他の部分ではなく片側易破壊部141で容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊されるのは上記で
図1~
図4を参照して説明した例と同様である。
【0030】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。
図6に示されるように、容器200は、第1の実施形態と同様の容器本体110および蓋体130を含む。第1の実施形態との相違として、本実施形態では、ヒートシールまたは超音波シールなどによる容器本体110と蓋体130との間の接合領域240の形状変化によって片側易破壊部241が形成されている。また、本実施形態では、容器本体110のフランジ部112に、環状の接合領域240の凹部111側に離隔して並行する切込み215が形成される。
【0031】
図7は、
図6に示す容器の平面図である。図示されるように、環状の接合領域240は、片側易破壊部241と片側易破壊部241以外の部分とで異なる幅を有する。具体的には、片側易破壊部241では、接合領域240が幅方向内側に、すなわち容器本体110の凹部111側に突出することによって、接合領域240が幅広になっている。切込み215は環状であるため、片側易破壊部241では、切込み215と接合領域240との間の間隔が他の部分に比べて縮小されている。逆にいえば、片側易破壊部241以外の部分では、切込み215と接合領域240との間の間隔が片側易破壊部241に比べて拡張されている。これによって、容器200の内部空間SPの内圧が上昇した際には、
図7(B)に示されるように、片側易破壊部241で接合領域240における容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊される。
【0032】
図8および
図9は、
図7に示す容器の部分断面図である。
図8は
図7に示すVIII-VIII線に沿った、片側易破壊部241の断面図であり、(A)は片側易破壊部241が破壊される前の状態を、(B)は片側易破壊部241が破壊された後の状態を示す。
図9は
図7に示すIX-IX線に沿った、片側易破壊部241以外の部分の断面図である。
【0033】
本実施形態において、容器本体110は、
図8および
図9に示されるように、基材層214Aおよび表面層214Bを含む積層体114を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層214Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面層214Bは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置する。接合領域240において、蓋体130は積層体214の表面層214Bに接合される。後述するように、接合領域240における蓋体130と表面層214Bとの間の接合強度は、積層体214における基材層214Aと表面層214Bとの間の層間接合強度よりも強い。
【0034】
ここで、積層体214の基材層214Aは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層214Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0035】
一方、積層体214の表面層214Bは、例えばポリオレフィン系樹脂で形成される。ポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、およびブロックポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)、および低密度ポリエチレン(LDPE)のようなポリエチレン系樹脂、ならびに直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などが例示される。
【0036】
なお、図示された例において積層体214は基材層214Aおよび表面層214Bの2つの層を含むが、他の例において積層体214は追加の層を含んでもよい。例えば、積層体214は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の基材層と、基材層同士を接着する接着層とを含んでもよい。接着層は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。また、積層体114は、酸素などを遮断するガスバリア層を含んでもよい。ガスバリア層は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはポリアクリロニトリル(PAN)などで形成される。
【0037】
加えて、容器本体110のフランジ部112には、接合領域240の凹部111側に離隔して並行する切込み215が形成される。切込み215は、表面層214Bの欠落部の例である。図示された例では切込み215がちょうど表面層214Bだけを貫通して基材層214Aには達していないが、切込み215は基材層214Aの一部に達していてもよい。あるいは、切込み215は表面層214Bを貫通せず、表面層214Bが内圧の上昇時に容易に破断される程度の厚さで残されてもよい。なお、切込み215の断面形状は図示された例ではV字形であるが、U字形またはI字形などの他の形状であってもよい。
【0038】
蓋体130は、外層231Aおよびシール層231Bを含むフィルム状の積層体231からなる。外層231Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体230に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。シール層231Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に面する側に位置し、接合領域240で容器本体110を構成する積層体214の表面層214Bに接合される。ここで、積層体231の外層231Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。また、積層体231のシール層231Bは、例えばランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成される。
【0039】
ここで、
図8および
図9に示されるように、接合領域240の外周側では、片側易破壊部241およびそれ以外の部分を含む全周にわたって、フランジ部112の外縁に樹脂垂れ部が形成されない(樹脂垂れ非形成部)。樹脂垂れ部は、
図10に樹脂垂れ部232として示されるように、フランジ部112の外縁で蓋体130を構成する積層体231のシール層231Bの樹脂が容器本体110を構成する積層体214の表面層214Bの端面に被さるように垂れる部分であり、例えばヒートシールで接合領域240を形成するときにフランジ部112の外縁まで熱を加えることによって形成される。このような樹脂垂れ部232が形成されると、ユーザが蓋体130の端部を摘持して容器本体110と蓋体130とを分離する方向の力を加えた場合に、表面層214Bが蓋体130に引っ張られて基材層214Aから剥離し、これによって容易に蓋体130を容器本体110から引き剥がして容器200を開封することができる。これに対して、本実施形態では、樹脂垂れ部が形成されないため、ユーザが蓋体130の端部を摘持して容器本体110と蓋体130とを分離する方向の力を加えても、応力が蓋体130と表面層214Bとの間に形成される接合領域240の端部240Eに集中し、フランジ部112の外縁で表面層214Bを基材層214Aから剥離させる方向には作用しない。これによって、接合領域240の外周側では、容器本体110と蓋体130との間の接合強度によって容器本体110と蓋体130とを分離する方向の応力に対抗することが可能になる。つまり、本実施形態では、接合領域240の外周側における樹脂垂れ非形成部が外側耐応力構造として機能する。
【0040】
一方、
図8および
図9に示されるように、接合領域240の内周側では、片側易破壊部241以外の部分において、切込み215と接合領域240との間の間隔d2が片側易破壊部241における切込み215と接合領域240との間の間隔d1よりも拡張されている(d1<d2)。ここで、内部空間SPの内圧が上昇した場合、応力は蓋体130と表面層214Bとの間に形成される接合領域240の端部240Fに集中する。従って、端部240Fと切込み215との間の距離が近ければ、蓋体130に引っ張られた表面層214Bが切込み215を起点にして基材層214Aから剥離し、それによって容器本体110と蓋体130との間が分離する。一方、接合領域240の端部240Fと切込み215との間の距離が遠ければ、端部240Fに内圧による応力が作用しても表面層214Bは基材層214Aから剥離せず、従って容器本体110と蓋体130との間は分離しない。これによって、本実施形態では、内部空間SPの内圧が上昇した場合、片側易破壊部241以外の部分では内圧による容器本体110と蓋体130とを分離する方向の応力に対抗することが可能であり、結果として片側易破壊部241で容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊される。つまり、本実施形態では、片側易破壊部241以外の部分で切込み215と接合領域240との間の間隔が片側易破壊部241よりも拡張された間隔拡張部(間隔d2の部分)が、内側耐応力構造として機能する。
【0041】
上記の第1の実施形態と同様に、片側易破壊部241で容器本体110と蓋体130との間の接合が破壊された後は、ユーザはこの部分を起点にして他の部分でも表面層214Bを基材層214Aから剥離させ、切込み215に沿って蓋体130を容器本体110から引き剥がして容器200を開封することができる。
【0042】
上記の各実施形態において、内部空間SPの内圧は、例えば内容物(図示せず)が水分を含有した食品などである場合に、電子レンジを用いて内容物を加熱したときの水蒸気の発生によって上昇する。あるいは、内部空間SPの内圧は、ユーザが内部空間SPを形成する容器本体110の凹部111または蓋体130の面を押圧したときに、内部空間SPが圧縮されることによって上昇する。いずれの場合も、容器100は使用時に内容物の加熱やユーザによる所定の力以上での押圧といった操作がされるまでは外側からの開封が困難であるが、使用時の操作によって内部空間SPの内圧を上昇させて内側から片側易破壊部141で接合が破壊された後は、片側易破壊部141を起点にして容易に開封することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
100…容器、110…容器本体、111…凹部、112…フランジ部、114…積層体、114A…基材層、114B…表面下層、114C…表面層、120…外側樹脂溜まり部、121…第1樹脂溜まり部、122…第2樹脂溜まり部、123…第3樹脂溜まり部、124…第4樹脂溜まり部、125…内側樹脂溜まり部、130…蓋体、130A…タブ、131…積層体、131A…外層、131B…シール層、140…接合領域、141…片側易破壊部、200…容器、214…積層体、214A…基材層、214B…表面層、215…切込み、230…蓋体、231…積層体、231A…外層、231B…シール層、240…接合領域、240E…端部、240F…端部、241…片側易破壊部、SP…内部空間。