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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】横置き型電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/16 20060101AFI20240208BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240208BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H02K1/16 A
H02K1/18 C
H02K1/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019065143
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167813
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光彦
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195488(JP,A)
【文献】特開2007-170402(JP,A)
【文献】特開平08-098462(JP,A)
【文献】特開2007-295764(JP,A)
【文献】特開2012-182926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/16
H02K 1/18
H02K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、前記密閉容器内に収容されている電動機を備え、前記電動機は、固定子と、前記固定子に対して空隙を介して回転可能に配置されている回転子を有し、前記固定子は、軸方向と直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って径方向内側に延在するティース基部および前記ティース基部の径方向内側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部により形成される複数のティース部と、周方向に隣接する前記ティース部によって形成される複数のスロットと、前記各ティース部に巻き付けられている固定子巻線を有し、前記電動機は、前記密閉容器内に横置きされ、前記固定子の固定子外周面の少なくとも一部が、前記密閉容器の容器内周面に接触している横置き型電動機であって、
前記固定子は、6個のスロットを有し、
周方向に隣接する前記ティース部の前記ティース先端部は、ブリッジを有する連結部によって連結されており、
前記ブリッジの径方向に沿った幅の最小値Nが、[0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように設定され、前記ブリッジの周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、[5度≦θ≦8度]を満足するように設定されていることを特徴とする横置き型電動機。
【請求項2】
密閉容器と、前記密閉容器内に収容されている電動機を備え、前記電動機は、固定子と、前記固定子に対して空隙を介して回転可能に配置されている回転子を有し、前記固定子は、軸方向と直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って径方向内側に延在するティース基部および前記ティース基部の径方向内側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部により形成される複数のティース部と、周方向に隣接する前記ティース部によって形成される複数のスロットと、前記各ティース部に巻き付けられている固定子巻線を有し、前記電動機は、前記密閉容器内に横置きされ、前記固定子の固定子外周面の少なくとも一部が、前記密閉容器の容器内周面に接触している横置き型電動機であって、
前記固定子は、9個のスロットを有し、
周方向に隣接する前記ティース部の前記ティース先端部は、ブリッジを有する連結部によって連結されており、
前記ブリッジの径方向に沿った幅の最小値Nが、[0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように設定され、前記ブリッジの周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、[3.3度≦θ≦5.3度]を満足するように設定されていることを特徴とする横置き型電動機。
【請求項3】
密閉容器と、前記密閉容器内に収容されている電動機を備え、前記電動機は、固定子と、前記固定子に対して空隙を介して回転可能に配置されている回転子を有し、前記固定子は、軸方向と直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って径方向内側に延在するティース基部および前記ティース基部の径方向内側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部により形成される複数のティース部と、周方向に隣接する前記ティース部によって形成される複数のスロットと、前記各ティース部に巻き付けられている固定子巻線を有し、前記電動機は、前記密閉容器内に横置きされ、前記固定子の固定子外周面の少なくとも一部が、前記密閉容器の容器内周面に接触している横置き型電動機であって、
前記固定子は、12個のスロットを有し、
周方向に隣接する前記ティースの前記ティース先端部は、ブリッジを有する連結部によって連結されており、
前記ブリッジの径方向に沿った幅の最小値Nが、[0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように設定され、前記ブリッジの周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、[2.5度≦θ≦4度]を満足するように設定されていることを特徴とする横置き型電動機。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の横置き型電動機であって、
前記固定子の外径Fは、[79mm≦F≦106mm]を満足するように設定され、
前記固定子の外径Fに対する内径Eの割合(E/F)は、[53%≦(E/F)≦62%]を満足するように設定され、
前記空隙の間隔Gは、[0.4mm≦G≦0.55mm]を満足するように設定されていることを特徴とする横置き型電動機。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の横置き型電動機であって、
前記固定子は、前記ヨーク部を形成する第1部材と、前記ティース部と前記連結部を形成する第2部材により構成されていることを特徴とする横置き型電動機。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の横置き型電動機であって、
1つの前記ティース部が、回転中心線の真下に配置されていることを特徴とする横置き型電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内に電動機が横置きされている横置き型電動機における固定子巻線の温度上昇を抑制する技術に関する
【背景技術】
【0002】
密閉容器内に水平方向に沿って配置されている、すなわち、回転軸が水平方向に沿って延在している電動機が知られている。このような電動機は、横置き型電動機と呼ばれている。横置き型電動機は、例えば、特許文献1(特開2014-9608号公報)に開示されている。
図14に、特許文献1に開示されている横置き型電動機10が示されている。なお、図14において、矢印で示されている上下方向は鉛直方向を示し、矢印Uで示されている方向は、鉛直方向に沿った上方を示し、矢印Dで示されている方向は、鉛直方向に沿った下方を示している。
図14に示されている横置き型電動機10は、電動機900が、圧縮機構部(図示省略)とともに密閉容器20内に横置きされた状態で収容されている。
電動機900は、固定子910、固定子910の内側に間隙を介して回転可能に配置されている回転子990を有している。固定子910は、複数の電磁鋼板を積層した固定子コアにより構成され、周方向に沿って延在するヨーク部920、ヨーク部920から径方向内側に延在している複数のティース部921(921A~921F)、周方向に隣接するティース部によって形成されている複数のスロット913を有している。ティース部921(921A~922F)は、ヨーク部920から軽方向に沿って径方向内側に延在しているティース基部922(922A~922F)と、ティース基部922(922A~922F)の径方向内側に設けられ、周方向に沿って延在しているティース先端部923(923A~923F)により形成されている。ティース先端部923(923A~923F)の径方向内側に形成されているティース先端面924(924A~924F)によって、回転子990が収容される固定子内側空間が形成される。各ティース部921(921A~921F)のティース基部922(922A~922F)には、固定子巻線(図示省略)が巻き付けられている。固定子910は、密閉容器20内に締り嵌めされている。例えば、固定子910の外周面912の外径を密閉容器20の容器内周面21の内径より少し大きく設定した状態で、固定子910を密閉容器20内に圧入する。これにより、固定子910の外周面912は、密閉容器20の容器内周面21に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-87694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ティース部921のティース基部922に巻き付けられている固定子巻線は、電流が流れることによって熱を発生する。固定子巻線の熱エネルギーは、放熱と伝導によって移動する。放熱による移動量(熱放熱量)は少ない。
ここで、電動機900が横置きされている場合には、例えば、図14に示されているように、ティース部921Aが上方に配置され、ティース部921Dが下方に配置される。
上方に配置されているティース部921Aのティース基部922Aに巻き付けられている固定子巻線の熱エネルギーは、ティース基部922Aに伝導した後、矢印A1で示されているように、ヨーク部920の、ティース基部922Aの上方に配置されている部分に伝導する。さらに、矢印A2で示されているように、密閉容器20の、ティース基部922Aの上方に配置されている部分に伝導する。密閉容器20の容器内周面21と固定子910(ヨーク部920)の外周面912が接触しているため、熱エネルギーは、ヨーク部920から密閉容器20に伝導し易い。このため、上方に配置されているティース部921A(詳しくは、ティース基部922A)に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
一方、下方に配置されているティース部921Dのティース基部922Dに巻き付けられている固定子巻線の熱エネルギーは、ティース基部922Dに伝達した後、矢印D1で示されているように、ティース基部922Dの上方に配置されているティース先端部923Dに伝導する。ここで、矢印D2で示されている、ティース先端部923Dの上方側に形成されているティース先端面924Dから放熱する熱エネルギー(熱放熱量)は少ない。なお、ティース基部922Dから、ティース基部922Dの下方に配置されているヨーク部920にも伝導するが、ティース基部922Dの上方に配置されているティース先端部923Dへの伝導に比べて少ない。このため、下方に配置されているティース部921D(詳しくは、ティース基部922D)に巻き付けられている固定子巻線に発生した熱エネルギーが、伝導しないで蓄積され、固定子巻線の温度が上昇する。固定子巻線の温度が上昇すると、固定子巻線が焼損するおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、電動機が横置きされている横置き型電動機において、固定子巻線の温度上昇を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明~第3発明は、密閉容器と、密閉容器内に横置きされた状態で収容されている電動機を備える横置き型電動機に関する。「電動機が横置き配置されている」という記載は、「電動機の回転軸が水平方向に沿って延在するように配置されている」構成を示す。なお、「水平方向に沿って」という記載は、略水平方向に平行であればよく、厳密に水平方向に平行でなくてもよい。
電動機は、固定子と、固定子に対して空隙を介して回転可能に配置されている回転子を有している。固定子は、軸方向と直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部と、ヨーク部から径方向内側に延在する複数のティース部と、周方向に隣接するティース部によって形成される複数のスロットと、各ティース部に巻き付けられている固定子巻線を有している。ティース部は、ヨーク部から径方向に沿って径方向内側に延在するティース基部と、ティース基部の径方向内側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部により形成されている。ティース先端部の径方向内側に形成されているティース先端面によって、回転子が収容される固定子内側空間が形成される。固定子巻線は、各ティース部のティース基部に巻き付けられる。回転子は、回転軸を有している。回転子としては、永久磁石を有する回転子等の公知の回転子が用いられる。好適には、固定子および回転子は、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成される。
固定子の固定子外周面の少なくとも一部が、密閉容器の容器内周面に接触している。好適には、固定子外周面は、ヨーク外周面により形成される。固定子外周面の少なくとも一部を密閉容器の容器内周面に接触させる方法としては、例えば、固定子を密閉容器内に締り嵌めする方法や、固定子を密閉容器内に収容した状態で、固定子の外周面の少なくとも一部を密閉容器の容器内周面に溶接する方法を用いることができる。固定子を密閉容器内に締り嵌めする方法としては、例えば、圧入方法や焼き嵌め方法等が用いられる。
周方向に隣接するティース部のティース先端部は、連結部によって連結されている。連結部は、好適には、径方向外周側および径方向内周側の少なくとも一方に設けられている凹部とブリッジにより構成される。
周方向に隣接するティース部のティース先端部がブリッジで連結されることによって、横置きされている電動機の、下方に配置されているティース部に巻き付けられている固定子巻線の熱エネルギーが、連結部および他のティース部のティース先端部を介して上方に伝導する。これにより、下方に配置されているティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
そして、第1発明では、固定子は、6個のスロットを有している。また、ブリッジは、径方向に沿った幅の最小値Nが、[0.4mm~0.5mm]の範囲内に([0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように)設定され、周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)θが、[5度~8度]の範囲内に([5度≦θ≦8度]を満足するように)設定される。
第1発明では、6スロットの固定子を有する電動機が横置きされている横置き型電動機において、高い効率を維持しながら、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
また、第2発明では、固定子は、9個のスロットを有している。また、ブリッジは、径方向に沿った幅の最小値Nが、[0.4mm~0.5mm]の範囲内に([0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように)設定され、周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、[3.3度~5.3度]の範囲内に([3.3度≦θ≦5.3度]を満足するように)設定される。
第2発明では、9スロットの固定子を有する電動機が横置きされている横置き型電動機において、高い効率を維持しながら、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
また、第3発明では、固定子は、12個のスロットを有している。また、ブリッジは、径方向に沿った幅の最小値Nが、[0.4mm~0.5mm]の範囲内に([0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように)に設定され、周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、[2.5度~4度]の範囲内に([2.5度≦θ≦4度]を満足するように)設定される。
第3発明では、12スロットの固定子を有する電動機が横置きされている横置き型電動機において、高い効率を維持しながら、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
第1~第3発明の異なる形態では、固定子の外径Fが、[79mm~106mm]の範囲内に([79mm≦F≦106mm]を満足するように)設定され、固定子の外径Fに対する内径Eの割合(E/F)が、[53%~62%]の範囲内に([53%≦(E/F)≦62%]を満足するように)設定され、固定子と回転子の間の空隙の間隔Gが、[0.4mm~0.55mm]の範囲内に([0.4mm≦G≦0.55mm]を満足するように)設定される。
本形態では、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を確実に抑制することができる。
第1~第3発明の異なる形態では、ヨーク部を形成する第1部材と、ティース部と連結部を形成する第2部材により構成される固定子(「分割型固定子」と呼ばれる)を用いている。好適には、第2部材の各ティース部に、絶縁特性を有する樹脂ボビンを介して固定子巻線を巻き付けた状態で、第1部材と第2部材を組み付ける。
本形態では、周方向に隣接するティース部のティース先端部が連結部によって連結されている固定子を容易に製造することができる。
第1~第3発明の異なる形態では、1つのティース部が、回転中心線の真下に配置されている。回転中心線は、回転子の回転軸の中心線を示す。
横置きされている電動機が圧縮機構部とともに密閉容器内に収容されている場合には、密閉容器内の下方に、圧縮機構部の摺動部等を潤滑する潤滑油が貯留されている。ティース部が潤滑油に浸ると、ティース部から漏れ電流が流れる。
本形態では、1つのティース部が回転中心線の真下に配置されていることにより、密閉容器内の下方に貯留されている潤滑油に浸るティース部の数を減少させることができ、ティース部からの漏れ電流を低減することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、横置きされている電動機の固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の横置き型電動機の第1実施形態を示す図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3】第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の分解図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における、連結部のブリッジの幅(径方向に沿った長さ)および角度θ(周方向に沿った長さの中心角度)(機械角度)、電動機の効率、連結部のブリッジにおける[熱放熱量+熱伝導量]の関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の要部拡大図である。
図7】第3実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の要部拡大図である。
図8】第4実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の要部拡大図である。
図9】第5実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の要部拡大図である。
図10】第6実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機の断面図である。
図11】第6実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における、連結部のブリッジの幅(径方向に沿った長さ)および角度θ(周方向に沿った長さの中心角度)(機械角度)、電動機の効率、連結部のブリッジにおける[熱放熱量+熱伝導量]の関係を示すグラフである。
図12】第7実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の要部拡大図である。
図13】第7実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における、連結部のブリッジの幅(径方向に沿った長さ)および角度θ(周方向に沿った長さの中心角度)(機械角度)、電動機の効率、連結部のブリッジにおける[熱放熱量+熱伝導量]の関係を示すグラフである。
図14】従来の横置き型電動機で用いられている電動機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、本明細書中では、「回転中心線」という記載は、電動機の回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子(回転軸)の回転中心を通る回転中心線を示す。「軸方向」という記載は、電動機の回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子(回転軸)の回転中心線の延在方向を示す。「周方向」という記載は、電動機の回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向と直角な方向から見て、回転中心を中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、電動機の回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向と直角な方向から見て、回転中心を通る方向を示す。
【0009】
本発明の横置き型電動機の第1実施形態を、図1図4を参照して説明する。図1は、第1実施形態の横置き型電動機10を示す図であり、図2は、図1のII-II線矢視図である。また、図3は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機を構成する固定子の分解図であり、図4は、図3の要部拡大図である。なお、図1において、矢印で示されている左右方向は水平方向を示し、矢印Rで示されている方向は、水平方向に沿った右側を示し、矢印Lで示されている方向は、水平方向に沿った左側を示している。また、図2において、矢印で示されている方上下向は鉛直方向を示し、矢印Uで示されている方向は、鉛直方向に沿った上方を示し、矢印Dで示される方向は、鉛直方向に沿った下方を示している。
本実施形態の横置き型電動機10は、密閉容器20と、密閉容器20内に収容されている電動機200により構成されている。電動機200は、密閉容器20内に、横置きされている。すなわち、回転軸295が水平方向に沿って延在するように配置されている。
なお、本実施形態の横置き型電動機10では、密閉容器20内に圧縮機構部100も収容されている。
【0010】
圧縮機構部100は、シリンダ110、回転軸295により回転される偏心ロータ120、圧縮室130により構成されている。回転軸295は、軸受部30、40および50により回転可能に支持されている。回転軸295の回転によって圧縮機構部100の偏心ロータ120が回転すると、吸入口22から吸入された冷媒が圧縮室130内で圧縮され、吐出口23から吐出される。
【0011】
電動機200は、固定子210と、固定子210に対して空隙を介して回転可能に配置されている回転子290により構成されている。本実施形態では、空隙の間隔Gは、0.4mm~0.55mmの範囲内に([0.4mm≦G≦0.55mm]を満足するように)設定される。
固定子210は、固定子コア(図示省略)と固定子巻線280を有している。固定子コアは、薄い板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層体により構成される。本実施形態では、電磁鋼板として、厚さKが、0.25mm~0.35mmの範囲内の([0.25mm≦K≦0.35mm]を満足する)電磁鋼板が用いられる。また、電磁鋼板の積層体の積厚寸法Hは、25mm~50mmの範囲内に([25mm≦H≦50mm]を満足するように)設定される。
回転子290は、圧縮機構部100に連結されている回転軸295を有している。回転子290としては、永久磁石を有する回転子等の周知の構成の回転子を用いることができる。
本実施形態では、固定子210の外周面は、少なくとも一部が密閉容器20の容器内周面21に接触している。固定子210の外周面の少なくとも一部を密閉容器20の容器内周面21に接触させる方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、固定子210を密閉容器20内に締り嵌めする方法や、固定子210を密閉容器20内に収容した状態で、固定子の外周面の少なくとも一部を密閉容器の容器内周面に溶接する方法を用いることができる。「締り嵌め」は、穴の内径より少し大きい外径を有する部材を穴に挿入して固定する方法である。締り嵌め方法としては、典型的には、圧入方法や焼き嵌め方法が用いられる。固定子210の外周面の少なくとも一部が密閉容器20の容器内周面21に接触することにより、熱エネルギーが、固定子210のヨーク部221から密閉容器20に容易に伝導する。
【0012】
固定子210は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部221と、ヨーク部221から径方向内側に延在する複数のティース部240と、周方向に隣接するティース部240によって形成される複数のスロット213を有している。ティース部240は、ヨーク部221から径方向に沿って径方向内側に延在するティース基部250と、ティース基部250の径方向内側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部260により形成される。固定子巻線280は、各ティース部240(ティース基部250)に巻き付けられる。
従来の横置き型圧縮機で用いられている電動機では、下方に配置されているティース部に巻き付けられている固定子巻線に熱エネルギーが蓄積され、固定子巻線の温度が上昇するおそれがあった。
本形態では、周方向に隣接するティース部240のティース先端部260を連結部270によって連結している。これにより、下方に配置されているティース部240に巻き付けられている固定子巻線280の熱エネルギーが、連結部270および他のティース部240のティース先端部260を介して上方に伝導し、下方に配置されているティース部240に巻き付けられている固定子巻線280の温度上昇を抑制することができる。
【0013】
本実施形態では、図3および図4に示されているように、固定子210は、第1部材220と第2部材230により構成されている。第1部材220および第2部材230は、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成されている。電磁鋼板の厚さおよび積層体の積厚寸法は、前述したとおりである。
第1部材220は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部221を有している。
ヨーク部221は、ヨーク部内周面222とヨーク部外周面223を有するリング状(筒状)に形成されている。また、ヨーク部221は、ヨーク部内周面222側に、回転中心P側(径方向内側)が開口している溝224が形成されている。後述するティース基部250の端壁251側の部分(外周側の部分)が溝224に挿入されることによって、第1部材220と第2部材230が組み付けられる。
本実施形態では、ヨーク部外周面222が、本発明の「固定子の固定子外周面」に対応する。
本実施形態では、溝224は、図4に示されているように、底壁224a、周方向に沿って一方側に配置されている第1側壁224bおよび周方向に沿って他方側に配置されている第2側壁224cにより形成されている。第1側壁224bと第2側壁224cは、底壁224aの周方向中心と回転中心Pを通る線T(図2参照)に平行(「略平行」を含む)に直線状に延在している。また、底壁224aは、線Tと直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。
【0014】
第2部材230は、ティース部240と連結部270を有している。
ティース部240は、軸方向に直角な断面で見て、径方向に沿って延在するティース基部250と、ティース基部250の径方向内側に連設され、周方向に沿って延在するティース先端部260により形成されている。
ティース基部250は、端壁251と周方向に沿って一方側に形成されている第1側壁252および周方向に沿って他方側に形成されている第2側壁253を有している。第1側壁252と第2側壁253は、端壁251の周方向中心と回転中心Pを通る線(ティース部240の中心線)Tの延在方向に平行に直線状に延在している。端壁251は、線Tと直角な方向に沿って直線状に延在している。
本実施形態では、ティース基部250の端壁251と回転中心Pとの間の距離が、溝224の底壁224aと回転中心Pとの間の距離より少し長く設定されている。また、ティース基部250の第1側壁252と第2側壁253の間隔(幅)が、溝224を形成する第1側壁224bと第2側壁224cとの間の距離より少し小さく設定されている。これにより、ティース基部150の外周側の部分は、ティース基部250の端壁251が、溝224を形成する底壁224aに締り嵌めされ、ティース基部250の第1側壁252および第2側壁253が、溝224を形成する第1側壁224bおよび第2側壁224cに隙間嵌めされる。なお、第1部材220と第2部材230を組み付ける方法は、これに限定されない。例えば、ティース基部250の端壁251を、溝224を形成する底壁224aに隙間嵌めし、ティース基部250の第1側壁252および第2側壁253を、溝224を形成する第1側壁224bおよび第2側壁224cに締り嵌めすることもできる。
【0015】
ティース先端部260は、第1外周壁261、第2外周壁262および内周壁263を有している。第1外周壁261は、ティース基部250の第1側壁252の、径方向内側の端部から、周方向に沿って一方側に、直線状に延在している。第2外周壁262は、ティース基部250の第2側壁253の、径方向内側の端部から、周方向に沿って他方側に、直線状に延在している。内周壁263は、第1外周壁261および第2外周壁262より径方向内側に配置され、周方向に沿って延在している。
ティース先端部260の内周壁263は、回転中心Pを中心とする円弧形状を有し、回転子290の外周面291と対向する固定子210の内周面を形成する。
ティース先端部260の内壁部263により、本発明の「ティース先端面」が形成される。
【0016】
連結部270は、周方向に沿って隣接するティース部240の先端部260を連結する。連結部270は、径方向内側に配置されている内周壁と径方向外側に配置されている外周壁により形成されるブリッジ273を有している。
なお、以下では、周方向に沿って隣接するティース部240のうち、周方向に沿って一方側に配置されているティース部240を「周方向一方側のティース部240」といい、周方向に沿って他方側に配置されているティース部240を「周方向他方側のティース部240」という。周方向に沿って隣接するティース先端部260、ティース先端部260の内周壁263についても同様である。
本実施形態では、連結部270は、周方向一方側のティース先端部260の第2外周壁262と周方向他方側のティース先端部260の第1外周壁261の間に形成され、径方向外側に開口している凹部271を有している。凹部271は、底壁271aと第1側壁271bおよび第2側壁271cにより形成されている。第1側壁271bは、周方向に沿って一方側に形成され、第2側壁271cは、周方向に沿って他方側に形成されている。第1側壁271bおよび第2側壁271cは、底壁271aの周方向中心と回転中心Pを通る線(連結部の中心線)Sの延在方向と平行(「略平行」を含む)に延在している。底壁271aは、線Tと直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。
また、連結部270は、周方向一方側のティース先端部260の内周壁263と周方向他方側のティース先端部260の内周壁263の間に形成されている連結壁272を有している。連結壁272は、周方向一方側の内周壁263と周方向一方側の端部272Aで連結され、周方向他方側の内周壁263と周方向他方側の端部272Bで連結されている。本実施形態では、連結壁272は、内周壁263と同じ円弧形状を有している。すなわち、連結壁272は、内周壁263の延在方向に沿って延在している。
本実施形態では、円弧状に延在する連結壁272が、ブリッジ273の内周壁を形成し、直線状に延在する、凹部271の底壁271aが、ブリッジ273の外周壁を形成する。
なお、第1側壁271bおよび第2側壁271cは、線Sの延在方向に対して傾斜する方向に延在するように形成してもよいし、曲線(例えば、円弧)に沿って延在するように形成してもよい。
【0017】
電動機200における固定子巻線の温度上昇抑制効果について、図2を参照して説明する。図2に示されている電動機200の固定子210は、スロット213の数が6個である6スロットの固定子として構成されている。また、図2では、ティース部240Aが鉛直方向に沿って上方に配置され、ティース部240Dが、鉛直方向に沿って下方に配置されている状態を示している。
上方に配置されているティース部240Aのティース基部250Aに巻き付けられている固定子巻線の熱エネルギーは、図14に示されている従来の固定子910と同様に、ティース基部250Aに伝導した後、矢印A1で示されているように、ヨーク部221の、ティース基部250Aの情報に配置されている部分に伝導する。さらに、ヨーク部221の上方に配置されている、固定子210の外周面(ヨーク部外周面)223と容器内周面21が接触している密閉容器20に伝導する。これにより、上方に配置されているティース部240A(ティース基部250A)に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇が抑制される。
下方に配置されているティース部240Dのティース基部250Dに巻き付けられている固定子巻線の熱エネルギーは、ティース基部250Dに伝導した後、矢印D1で示されているように、ティース基部250Dの上方に配置されているティース先端部260Dに伝導する。本実施形態では、周方向に隣接するティース先端部が連結部270(ブリッジ273)により連結されている。このため、ティース先端部260Dに伝導した熱エネルギーは、矢印D3で示されているように、連結部(ブリッジ273)を介して周方向一方側に隣接するティース先端部260Eおよび周方向他方側に隣接するティース先端部260Cに伝道する。さらに、上方に配置されているティース部240Aのティース先端部260Aおよびティース基部250Aに伝導する。なお、矢印D2で示されている、ティース先端部260Dの上方側に形成されている内周壁263D(ティース先端面)から放熱する熱エネルギー(熱放熱量)は少ない。また、ティース基部250Dから、ティース基部250Dの下方に配置されているヨーク部221に伝導する熱エネルギーの量も少ない。これにより、下方に配置されているティース部240D(ティース基部250D)に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができる。
【0018】
ここで、下方に配置されているティース部240Dにおける熱エネルギーの移動量は、ブリッジ273における熱放電量と熱伝導量の和([熱放電量+熱伝導量])に依存する。また、ブリッジ273における[熱放電量+熱伝導量]は、ブリッジ273の径方向に沿った幅と周方向に沿った長さによって規定される。
一方、ブリッジ273の径方向に沿った幅と周方向に沿った長さが変化すると、磁束量が変化して電動機の効率が変化する。
【0019】
電動機200における、連結部270を構成するブリッジ273の径方向に沿った幅および周方向に沿った長さ、電動機200の効率、ブリッジ273における[熱放熱量+熱伝導量]の関係を、図5に示されているグラフを用いて説明する。
なお、ブリッジ273の径方向に沿った幅は、図4に示されているように、ブリッジ273を形成する内周壁(連結壁272)と外周壁(凹部271の底壁271a)の間の径方向に沿った幅の最小値Nで表されている。また、ブリッジ273の周方向に沿った長さLは、ブリッジ273の内周壁を構成する連結壁272の周方向一方側の端部272Aと周方向他方側の端部272Bの間の周方向に沿った長さLの中心角度(一方側の端部272Aと回転中心Pを通る線と、他方側の端部272Bと回転中心Pを通る線とによって形成される角度)θ(機械角度)で表わされている。
図5において、横軸は、ブリッジ273の径方向に沿った幅の最小値N(mm)を示し、左側縦軸は、電動機200の効率(%)を示し、右側縦軸は、ブリッジ273における[熱放熱量+熱伝導量](W)を示している。また、太線のグラフは、効率を示すグラフであり、細線のグラフは、[熱放熱量+熱伝導量]を示すグラフである。また、短い一点鎖線、実線、短い破線、長い一点鎖線、長い破線および二点鎖線は、それぞれ、ブリッジ273の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)を4度、5度、6度、7度、8度、9度に設定した場合のグラフである。
【0020】
図5から理解できるように、角度θが4度に設定されている場合には、ティース部240間の距離が短くなり、漏れ磁束が多くなって磁束量が低下する。この場合、同一トルクを維持するために多くの電流を電動機200に供給する必要があり、銅損が増加する結果、電動機200の効率が低下する。また、幅が0.4mmを超えると、電動機200の効率が急激に低下している。
角度θが5度~8度の範囲内に設定されている場合には、ティース部240間の距離が長くなり、漏れ磁束量が少なくなる。このため、幅が増加しても電動機200の効率は大きく低下していない。なお、幅が0.5mmを超えると、電動機200の効率が急激に低下している。
また、幅が9度に設定されている場合には、ティース先端部260の内周壁263の周方向に沿った長さが短くなり、トルクに寄与する磁束が減少する。このため、電動機の効率が低下している。
このことから、ブリッジ273の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、5度~8度の範囲内に設定されている場合には、ブリッジ273の径方向に沿った幅の最小値Nが、0.5mm以下の範囲内において効率を高めることができることが理解できる。
一方、ブリッジ273における[熱放熱量+熱伝導量]は、角度θが4度~9度に設定されている場合、幅が0.4mmより小さい領域では少ないが、幅が0.4mmを超えると飽和している。
このことから、ブリッジ273の径方向に沿った幅の最小値Nが、0.4mm以上の領域において、連結部270を構成するブリッジ273における[熱放熱量+熱伝導量]が増加させることができることが理解できる。
以上の点から、固定子210のスロット213の数が6個(6スロットの固定子)である電動機200が横置きされている場合には、周方向に隣接するティース先端部260を連結する連結部270のブリッジ273の径方向に沿った幅の最小値Nを、0.4mm~0.5mmの範囲内に([0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように)設定し、ブリッジ273の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)を、5度~8度の範囲内に([5度≦θ≦8度]を満足するように)設定することにより、高い効率を維持しながら、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができることが理解できる。
【0021】
周方向に隣接するティース先端部を連結する連結部の構成は、変更可能である。
第2実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における連結部の構成を、図6を参照して説明する。
第2実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機の固定子は、第1部材と第2部材330により構成されている。第2部材330以外の構成は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200の固定子210と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態における連結部370は、連結部270と同様に、周方向一方側のティース先端部360の第2外周壁362と周方向他方側のティース先端部360の第1外周壁361の間に、底壁371a、第1側壁371bおよび第2側壁371cにより形成されている、径方向外側に開口している凹部371を有している。底壁371aは、線Tの延在方向と直角な方向に直線状に延在している。第1側壁371bおよび第2側壁371cは、線Sの延在方向に平行に延在している。
また、連結部370は、周方向一方側のティース先端部360の内周壁363と周方向他方側のティース先端部360の内周壁363の間に形成されている連結壁372を有している。本実施形態では、連結壁372は、凹部371の底壁371aと平行(「略平行」を含む)に、すなわち、線Sと直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。
本実施形態では、直線状に延在する連結壁372が、ブリッジ373の内周壁を形成し、直線状に延在する、凹部371の底壁371aが、ブリッジ373の外周壁を形成する。
なお、第1側壁371bおよび第2側壁371cは、線Sの延在方向に対して傾斜する方向に延在するように形成してもよいし、曲線(例えば、円弧)に沿って延在するように形成してもよい。
【0022】
第3実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における連結部の構成を、図7を参照して説明する。
第3実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機の固定子は、第1部材と第2部材430により構成されている。第2部材430以外の構成は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200の固定子210と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態における連結部470は、連結部270と同様に、周方向一方側のティース先端部460の第2外周壁462と周方向他方側のティース先端部460の第1外周壁461の間に、底壁471a、第1側壁471bおよび第2側壁471cにより形成されている、径方向外側に開口している凹部471を有している。本実施形態では、底壁471aは、回転中心Pを中心とする円弧形状を有している。第1側壁471bおよび第2側壁471cは、線Sに平行に延在している。
また、連結部470は、周方向一方側のティース先端部460の内周壁463と周方向他方側のティース先端部460の内周壁463の間に形成されている連結壁472を有している。本実施形態では、連結壁472は、曲線状に延在している。好適には、連結壁472は、回転中心Pを中心とする円弧形状を有している。
本実施形態では、円弧状に延在する連結壁472が、ブリッジ473の内周壁を形成し、円弧状に延在する、凹部471の底壁471aが、ブリッジ473の外周壁を形成する。
なお、第1側壁471bおよび第2側壁471cは、線Sの延在方向に対して傾斜する方向に延在するように形成してもよいし、曲線(例えば、円弧)に沿って延在するように形成してもよい。
【0023】
第4実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における連結部の構成を、図8を参照して説明する。
第4実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機の固定子は、第1部材と第2部材530により構成されている。第2部材530以外の構成は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200の固定子210と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態における連結部570は、周方向一方側のティース先端部560の内周壁563と周方向他方側のティース先端部560の内周壁563の間に、底壁572a、第1側壁572bおよび第2側壁572cにより形成されている、径方向内側に開口している凹部572を有している。底壁571aは、底壁571aの周方向中心と回転中心Pを通る線(連結部の中心線)Sと直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。第1側壁572bおよび第2側壁572cは、線Sの延在方向に平行に延在している。
また、連結部570は、周方向一方側のティース先端部560の第2外周壁562と周方向他方側のティース先端部560の第1外周壁561の間に形成されている連結壁571を有している。連結壁571は、周方向一方側の第2外周壁562と周方向一方側の端部571Aで連結され、周方向他方側の第1外周壁561と周方向他方側の端部571Bで連結されている。本実施形態では、連結壁571は、凹部572の底壁572aと平行(略平行)を含む)に延在している。すなわち、連結壁571は、線Sの延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。
本実施形態では、直線状に延在する、凹部572の底壁572aが、ブリッジ573の内周壁を形成し、直線状に延在する連結壁571が、ブリッジ573の外周壁を形成する。
なお、連結壁571の形状および凹部572の底壁572a底部の形状については、第1実施形態や第3実施形態のような形状の組み合わせを採用することもできる。
【0024】
第5実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機における連結部の構成を、図9を参照して説明する。
第5実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機の固定子は、第1部材と第2部材630により構成されている。第2部材630以外の構成は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200の固定子210と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態における連結部670は、周方向一方側のティース先端部660の第2外周壁662と周方向他方側のティース先端部660の第1外周壁661の間に、底壁671a、第1側壁671bおよび第2側壁671cにより形成されている、径方向外側に開口している凹部671を有している。底壁671aは、底壁671aの周方向中心と回転中心Pを通る線(連結部の中心線)Sと直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。第1側壁671bおよび第2側壁671cは、線Sの延在方向に平行に延在している。
また、連結部670は、周方向一方側のティース先端部660の内周壁663と周方向他方側のティース先端部660の内周壁663の間に、底壁672a、第1側壁672bおよび第2側壁672cにより形成されている、径方向内側に開口している凹部672を有している。底壁672aは、線Sと直角(「略直角」を含む)な方向に沿って直線状に延在している。第1側壁672bおよび第2側壁672cは、線Sの延在方向に平行に延在している。
本実施形態では、直線状に延在する、凹部672の底壁672aが、ブリッジ673の内周壁を形成し、直線状に延在する、凹部671の底壁671aが、ブリッジ673の外周壁を形成する。
なお、凹部671の底壁671a、凹部672の底壁672aの少なくとも一方を、円弧形状に形成することもできる。
また、第1側壁671b、672bおよび第2側壁671c、672cは、線Sの延在方向に対して傾斜する方向に延在するように形成してもよいし、曲線(例えば、円弧)に沿って延在するように形成してもよい。
【0025】
本発明の横置き型電動機の第6実施形態に用いられている電動機700を、図10を参照して説明する。
本実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機700は、固定子710と回転子790を有している。
固定子710は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200の固定子210と同様に、ヨーク部721を有する第1部材720と、ティース基部750およびティース先端部760により形成されるティース部740と連結部770を有する第2部材730により構成されている。
本実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機700は、スロット713の数が9個である、すなわち、9スロットの固定子710を有している点が第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200と相違しているだけである。このため、詳しい説明は省略する。
【0026】
電動機700における、連結部770を構成するブリッジ773の径方向に沿った幅および周方向に沿った長さ、電動機700の効率、ブリッジ773における[熱放熱量+熱伝導量]の関係を、図11に示されているグラフを用いて説明する。
図11において、横軸は、ブリッジ773の径方向に沿った幅の最小値N(mm)を示し、左側縦軸は、電動機700の効率(%)を示し、右側縦軸は、ブリッジ773における[熱放熱量+熱伝導量](W)を示している。また、太線のグラフは、効率を示すグラフであり、細線のグラフは、[熱放熱量+熱伝導量]を示すグラフである。また、一点鎖線、実線、破線および二点鎖線は、それぞれ、ブリッジ773の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)を2.7度、3.3度、5.3度、6度に設定した場合のグラフである。図11では、角度θが3.3度~5.3度の範囲内に設定された場合のグラフは省略している。
【0027】
図11から理解できるように、角度θが2.7度に設定されている場合には、ティース部740間の距離が短くなり、漏れ磁束が多くなって磁束量が低下する。この場合、同一トルクを維持するために多くの電流を電動機700に供給する必要があり、銅損が増加する結果、電動機700の効率が低下する。また、幅が0.4mmを超えると、電動機700の効率が急激に低下している。
角度θが3.3度、5.3度に設定されている場合には、ティース部740部間の距離が長くなり、漏れ磁束量が少なくなる。このため、幅が増加しても電動機700の効率は大きく低下していない。なお、幅が0.5mmを超えると、電動機700の効率が急激に低下している。角度θが、3.3度~5.3度の範囲内設定されている場合のグラフの特性は、同様の特性を示す。
また、幅が6度に設定されている場合には、ティース先端部760の内周壁763の周方向に沿った長さが短くなり、トルクに寄与する磁束が減少する。このため、電動機700の効率が低下している。
このことから、ブリッジ773の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、3.3~5.3度の範囲内に設定されている場合には、ブリッジ773の径方向に沿った幅の最小値Nが、0.5mm以下の範囲内において効率を高めることができることが理解できる。
一方、ブリッジ773における[熱放熱量+熱伝導量]は、角度θが2.7度~6度に設定されている場合、幅が0.4mmより小さい領域では少ないが、幅が0.4mmを超えると飽和している。
このことから、ブリッジ773の径方向に沿った幅の最小値Nが、0.4mm以上の領域において、連結部770を構成するブリッジ773における[熱放熱量+熱伝導量]が増加させることができることが理解できる。
以上の点から、固定子710のスロット713の数が9個(9スロットの固定子)である電動機700が横置きされている場合には、周方向に隣接するティース先端部760を連結する連結部770のブリッジ773の径方向に沿った幅の最小値Nを、0.4mm~0.5mmの範囲内に([0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように)設定し、ブリッジ773の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)を、3.3度~5.3度の範囲内に([3.3度≦θ≦5.3度]を満足するように)設定することにより、高い効率を維持しながら、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができることが理解できる。
【0028】
本発明の横置き型電動機の第7実施形態に用いられている電動機800を、図12を参照して説明する。
本実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機800は、固定子810と回転子890を有している。
固定子810は、第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200の固定子210と同様に、ヨーク部821を有する第1部材820と、ティース基部850およびティース先端部860により形成されるティース部840と連結部870を有する第2部材830により構成されている。
本実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機800は、スロット813の数が12個である、すなわち、12スロットの固定子810を有している点が第1実施形態の横置き型電動機で用いられている電動機200と相違しているだけである。このため、詳しい説明は省略する。
【0029】
電動機800における、連結部870を構成するブリッジ873の径方向に沿った幅および周方向に沿った長さ、電動機800の効率、ブリッジ873における[熱放熱量+熱伝導量]の関係を、図13に示されているグラフを用いて説明する。
図13において、横軸は、ブリッジ873の径方向に沿った幅の最小値N(mm)を示し、左側縦軸は、電動機800の効率(%)を示し、右側縦軸は、ブリッジ873における[熱放熱量+熱伝導量](W)を示している。また、太線のグラフは、効率を示すグラフであり、細線のグラフは、[熱放熱量+熱伝導量]を示すグラフである。また、一点鎖線、実線、破線および二点鎖線は、それぞれ、ブリッジ873の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)を2度、2.5度、4度、4.5度に設定した場合のグラフである。図13では、角度θが2.5度~4度の範囲内に設定された場合のグラフは省略している。
【0030】
図13から理解できるように、角度θが2度に設定されている場合には、ティース部840間の距離が短くなり、漏れ磁束が多くなって磁束量が低下する。この場合、同一トルクを維持するために多くの電流を電動機800に供給する必要があり、銅損が増加する結果、電動機800の効率が低下する。また、幅が0.4mmを超えると、電動機800の効率が急激に低下している。
角度θが2.5度、4度に設定されている場合には、ティース部840間の距離が長くなり、漏れ磁束量が少なくなる。このため、幅が増加しても電動機800の効率は大きく低下していない。なお、幅が0.5mmを超えると、電動機800の効率が急激に低下している。角度θが、2.5度~4度の範囲内設定されている場合のグラフの特性は、同様の特性を示す。
また、幅が4.5度に設定されている場合には、ティース先端部860の内周壁863の周方向に沿った長さが短くなり、トルクに寄与する磁束が減少する。このため、電動機800の効率が低下している。
このことから、ブリッジ873の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)が、2.5度~4度の範囲内に設定されている場合には、ブリッジ873の径方向に沿った幅の最小値Nが、0.5mm以下の範囲内において効率を高めることができることが理解できる。
一方、ブリッジ873における[熱放熱量+熱伝導量]は、角度θが2度~4.5度に設定されている場合、幅が0.4mmより小さい領域では少ないが、幅が0.4mmを超えると飽和している。
このことから、ブリッジ873の径方向に沿った幅の最小値Nが、0.4mm以上の領域において、連結部870を構成するブリッジ873における[熱放熱量+熱伝導量]が増加させることができることが理解できる。
以上の点から、固定子810のスロット813の数が12個(12スロットの固定子)である電動機800が横置きされている場合には、周方向に隣接するティース先端部860を連結する連結部870のブリッジ873の径方向に沿った幅の最小値Nを、0.4mm~0.5mmの範囲内に([0.4mm≦N≦0.5mm]を満足するように)設定し、ブリッジ873の周方向に沿った長さの中心角度θ(機械角度)を、2.5度~4度の範囲内に([2.5度≦θ≦4度]を満足するように)設定することにより、高い効率を維持しながら、下方に配置されるティース部に巻き付けられている固定子巻線の温度上昇を抑制することができることが理解できる。
【0031】
なお、図5図11図12に示されているグラフの特性は、固定子の外径F(図2参照)が、79mm~106mmの範囲内に([79mm≦F≦106mm]を満足するように)設定され、固定子の外径Fに対する固定子の内径E(図2参照)の割合(E/F)が、53%~62%の範囲内に([53%≦(E/F)≦62%]を満足するように)設定され、固定子と回転子の間の空隙の間隔Gが、0.4mm~0.55mmの範囲内に([0.4mm≦G≦0.55mm]を満足するように)設定されている場合に同様の傾向を示す。
【0032】
横置きされている電動機が圧縮機構部とともに密閉容器内に収容されている場合には、密閉容器内の下方に、圧縮機構部の摺動部等を潤滑する潤滑油が貯留されている。ティース部が潤滑油に浸ると、ティース部から漏れ電流が流れるおそれがある。
このため、1つのティース部を、回転中心線Pの真下に配置するのが好ましい。この場合、潤滑油に浸るティース部の数を減少させることができ、漏れ電流を低減することができる。
【0033】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
連結部を構成するブリッジの形状としては、第1実施形態~第5実施形態のブリッジの形状や、他の種々の形状を用いることができる。
電動機としては、種々の型式の電動機を用いることができる。
実施形態では、密閉容器内に、電動機を圧縮機構部とともに収納したが、他の被駆動装置とともに収納してもよいし、電動機単独で収納してもよい。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 横置き型電動機
20 密閉容器
21 容器内周面
22 吸入口
23 吐出口
30、40、50 軸受部
100 圧縮機構部
200、700、800、900 電動機
210、710、810、910 固定子
213、713、813、913 スロット
220、720、820 第1部材
221、721、821、920 ヨーク部
222、722、822 ヨーク部内周面
223、723、823、923 ヨーク部外周面
224 溝
224a 底面
224b、224c 側面
230、330、430、530、630、730、830 第2部材
240、240A~240F、340、440、540、640、740、840、921A~921F ティース部
250、250A~250F、350、450、550、650、750、850、922A~922F ティース基部
251、351、451、551、651 端壁
252、253、352、353、452、453、552、553、652、653 側壁
260、260A~260F、360、460、560、660、760、860、923A~923F ティース先端部
261、262、361、362、461、462、561、562、661、662 外周壁
263、363、463、563、663 内周壁
270、370、470、570、670、770、870 連結部
271、371、471、572、671、672 凹部
271a371a、471a、572a、671、672a 底面
271b、271c、371b、371c、471b、471c、572b、572c、671b、671c、672b、672c 側面
272、372、472、571 連結壁
272A、272B、372A、372B、472A、472B、571A、571B 端部
273、373、473、573、673 ブリッジ
280 固定子巻線
290、790、890、990 回転子
291、791、891、991 回転子外周面
295、795、895、995 回転軸
924A~924F ティース先端面
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
図12
図13
図14