(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ロボットアーム用工具交換装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20240208BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B25J15/04 A
B25J19/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111683
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】102018000006402
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519218442
【氏名又は名称】エフェクト グループ ソチエタ ペル アチオーニ
【氏名又は名称原語表記】EFFECTO GROUP S.P.A.
【住所又は居所原語表記】7 Via Francesco Melzi D’Eril, 20154 MILANO, ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】パトリーニ ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ステファン
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212790(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202018102683(DE,U1)
【文献】特開昭60-123287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ロボットアーム(5)及び工具(6)に連結するよう適合されたロボットアダプタ(1)を備え、
・前記ロボットアダプタ(1)が、その内部に、工具(6)に対するロボットアーム(5)の連結及び分離機構(120)を駆動するためにピストン(116)が摺動可能に配置された空気圧シリンダ(117)を備えた
ロボットアーム用工具交換装置において、
ロボットアダプタ(1)の壁の一つに、少なくとも四つの連通導管(24,25,26,27)が配置され、これらの導管の一端が空気圧シリンダ(117)内に開口し、他端が空気圧シリンダ(117)の外側に開口しており、
該工具交換装置が、さらに、前記連通導管の少なくとも二つ(24,25)に接続された第一差圧センサ(18)と、四つの導管の他の二つ(26,27)に接続された第二差圧センサを備えている
ことを特徴とするロボットアーム用工具交換装置。
【請求項2】
各差圧センサ(18,19)が、少なくとも二つの圧縮空気入力ポートを備え、前記入力ポートが、前記連通導管(24,25,26,27)に流体接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の工具交換装置。
【請求項3】
各差圧センサ(18,19)が、電気処理回路(31)にアナログ又はデジタル出力信号を提供するように適合された、少なくとも一つの出力を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の工具交換装置。
【請求項4】
さらに、工具(6)に接続されるように適合された工具アダプタ(2)を備えている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の工具交換装置。
【請求項5】
さらに、ロボットアダプタ(1)に接続されたロボットアダプタ安全モジュール(8)と、工具アダプタ(2)に接続された工具アダプタ安全モジュール(9)を備えている
ことを特徴とする請求項4に記載の工具交換装置。
【請求項6】
ロボットアダプタ安全モジュール(8)が、安全制御回路(20)を備えている
ことを特徴とする請求項5に記載の工具交換装置。
【請求項7】
安全制御回路(20)が、分離を作動させる側からシリンダ(17)を供給するように適合された分離導管(23)に直列に接続された二つの作動装置(12,13)を備えている
ことを特徴とする請求項6に記載の工具交換装置。
【請求項8】
前記作動装置の一方(12)が、連結を駆動する側からシリンダ(17)を供給するよう適合された連結導管(22)に接続されている
ことを特徴とする請求項7に記載の工具交換装置。
【請求項9】
作動装置が、双安定式空気圧電磁バルブ(12,13)である
ことを特徴とする請求項8に記載の工具交換装置。
【請求項10】
ロボットアダプタ安全モジュール(8)が、追加の安全回路を備え、前記追加
の安全回路が、
前記安全モジュール(8)の空気圧供給空気導管(21)又はロボットアダプタ(1)の空気圧シリンダ(117)に配置された導管の少なくとも二つ(25,26)に接続された二つの圧力センサ(43)と、分離導管(23)に接続され、直列に配置された二つの作動装置(14,15)
とを備えている
ことを特徴とする請求項5~9の何れか一項に記載の工具交換装置。
【請求項11】
さらに、ロボットアダプタ(1)に対する工具アダプタ(2)の連結を検知するように適合された工具存在センサ(44)をさらに備えている
ことを特徴とする請求項5に記載の工具交換装置。
【請求項12】
工具存在センサ(44)が、ロボットアダプタ安全モジュール(8)に設けられ得る
ことを特徴とする請求項11に記載の工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット工学の分野に関し、特に、ロボットアームに連結されるように適合されたロボットアーム用工具交換装置の分野に関する。本発明は、限定するものではないが、特に、安全制御を備えた工具交換装置に関して開発されたものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムは、一つ又はそれ以上の産業用ロボット、又は様々な用途のマニピュレータを備え、三軸又はそれ以上の軸で動作を実行するように自動制御される、又はプログラム可能な装置のアッセンブリである。
【0003】
これらロボットシステムの使用は、物流から塗装、組立又は溶接等、多くの様々な産業用途において、ますます一般的になっている。従って、これらのシステム内では、ロボットが様々な工具を使用して、互いに異なる機能を実行する必要があり、従って、ロボットに、ロボットアームに連結するように特に適合された工具交換装置を設ける必要がある。
【0004】
生産ラインにおける産業用ロボットとロボット工具の統合及び設置は、特定の危険を意味する。国際規格は、既に、これらの危険性を特定しており、安全な作業環境を保証するために、ロボットシステムに関係する者(メーカー、サプライヤー、インテグレーター、ユーザー)が採用しなければならない一連の最小安全要件を想定している。
工具交換装置の連結解除を作動させるために必要な安全要件は、例えば、次の通りである。
・工具交換装置が工具と連結される時(ロボット側と工具側が連結される時)に、それがパーキングステーションにあること。
・工具交換装置がパーキングステーションになく(又は移動している)時、工具は、ロボットアダプタに連結されてなく(ロボットアダプタがフリーである)こと。
【0005】
安全性を保障するためのさらに基本的な条件は、工具交換装置に、その動作に想定される所定のエネルギ(流体圧エネルギ、電気エネルギ、油圧等)が供給されることにある。実際、供給されるエネルギの減少、工具交換装置の設計において確立された基準に基づくエネルギに不足、又は設計値を超えた変動は、短期的又は長期的に、安全でない状態、即ち、非常に危険な状態における分離状態を引き起こす可能性がある。
【0006】
一般に、工具交換装置の製造業者は、安全上の理由から、工具交換装置の動作に必要なエネルギが損失した状態でも分離を防ぐ(機械式又は他のタイプ)の冗長式機構を想定している。しかし、このような解決手段は、安全性を保障するのに十分であることを示すものではなかった。
【0007】
従って、エネルギ供給(例えば、電気エネルギ、油圧エネルギ、空気圧エネルギ又は真空動力供給等)の損失又は変動が、危険な状態をもたらす可能性がある負荷の分離を引き起こさないことを保証することができるロボット工具の設計及び製造が必要とされている。また、分離することが、工具交換装置に関して発生する可能性がある危険な状態を引き起こす可能性がある場合、このようなロボット機器が分離可能な工具の分離が、指定された場所でのみ、又は制御された特定の状態でのみ実行されることを保証することも必要とされている。
【0008】
出願人は、一つ又は複数の安全状態が確認されるまで、工具交換装置自身が分離することができないようにすることを保証する、ロボット機器において工具交換装置に関する安全制御を提供することが可能な解決手段を特定するために、幾つかの実験と研究開発活動を実行した。この解決手段には、必要な安全状態が満たされない限り、工具交換装置に分離コマンドを適用することができないことも含まれる。上記した理由のために、本発明の目的は、このような要件に対する解決手段を提供することになる。
【0009】
上記した目的及び他の目的は、主請求項に定義された技術的特徴を含む本発明の幾つかの実施形態を通して達成される。従属請求項は、本発明の好ましい及び/又は特に有利な態様を定義する。
【発明の開示】
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、
・特に、ロボットアーム及び工具に接続するように適合されたロボットアダプタを備え、
・ロボットアダプタが、その内部に、ツールに対するロボットアームの連結及び分離機構を作動するためにピストンが摺動可能に配置された空気圧シリンダを備えた
ロボットアーム用工具交換装置において、
ロボットアダプタの壁の一つに、少なくとも四つの連通導管が配置され、前記連通導管の一端が空気圧シリンダの内部に開口し、他端が空気圧シリンダの外側に開口され、
前記工具交換装置が、さらに、前記連通導管の少なくとも二つの接続された第一差圧センサと、前記連通導管の他の二つに接続された第二差圧センサとを備えている
ことを特徴とするロボットアーム用工具交換装置が提供される。
【0011】
このような解決手段によって、連結及び分離装置の連結位置及び分離位置だけでなく、より直接的な検知結果を得る中間位置を検知することが可能になり、従って、工具交換装置の安全性を向上させることが可能になる。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、各加圧センサが、少なくとも二つの圧縮空気入力ポートを備え、前記ポートが、前記連通導管に流体結合されている。
【0013】
本発明に別の特徴によれば、各差圧センサが、電気処理回路にアナログ又はデジタル出力を提供するよう特に適合された少なくとも一つの出力を有する。
【0014】
この解決手段によって、システムの危険な障害に繋がる空気圧の損失又は不十分な空気圧を検知し、かつ、その後の分離要求をブロックすることが可能になる。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、工具交換装置は、特に、工具に連結されるように適合された工具アダプタを有する。
【0016】
本発明の別の特徴は、ロボットアダプタに接続されるロボットアダプタ安全制御モジュールと、工具アダプタに接続される工具アダプタ安全工具モジュールとに関する。この解決種案によって、相互監視を行う二つのチャンネルによる安全制御アーキテクチャを実現することが可能になる。
【0017】
本発明の別の特徴は、安全制御回路を備えたロボットアダプタ安全モジュールに関する。
【0018】
この解決手段によって、単一の障害が、安全機能の損失に繋がることを防止することが可能になる。
【0019】
本発明のさらに別の特徴によれば、安全制御回路は、特に、分離を作動する側からシリンダを供給するよう適合された分離導管に直列に接続された二つの作動装置を有する。
【0020】
この解決手段によって、ロボットアームから工具を分離することを防止するための安全状態をさらに向上させるAND空気圧ロジックを実現することが可能になる。
【0021】
本発明のさらに別の特徴によれば、前記作動装置の一方が、特に、連結を作動する側からシリンダを供給するよう適合された連結導管に接続されている。
【0022】
この解決手段により、OR空気圧ロジックを実現することを可能にする。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、作動装置は、双安定式空気圧電磁バルブである。
【0024】
本発明のさらに別の特徴によれば、ロボットアダプタ安全モジュールが追加の安全回路を備え、前記追加の安全回路が、安全制御モジュールの空気圧供給空気導管に接続されるか、又は、ロボットアダプタの空気圧シリンダに配置された連通導管の少なくとも二つに接続される二つの圧力センサと、分離導管に接続され、直列に配置された二つの作動装置とを備えている。
【0025】
本発明の変形例では、二つの圧力センサが、空気圧シリンダの内部の空気圧を感知するために四つの連通導管の二つに接続され、これらのセンサの出力信号がロボットアダプタ安全モジュールによって使用される。
【0026】
この解決手段によって、オペレータが安全制御によって提供された電気安全信号を無視した場合、又は、ユーザーが、それらを安全制御手段と統合せずに、かつ、オペレータが空気の供給がない時に工具交換装置によってロボットを作動させる場合に、工具の危険な分離を防止することが可能になる。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、特に、ロボットアダプタへの工具アダプタの連結を検知するよう適合された少なくとも一つの工具存在センサが設けられる。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、工具存在センサは、ロボットアダプタ安全モジュールに配置され得る。
【0029】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付図面を参照した実施例によって提供される以下の説明からより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるロボットアダプタの概略断面図である。
【
図2】本発明による工具交換装置の概略側面図である。
【
図3】本発明による安全モジュールの概略図である。
【
図4】工具交換装置の安全制御構造の概略図である。
【
図5】本発明による安全モジュールの別の実施例の概略図である。
【
図6】本発明によるロボットアダプタの別の実施例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図4に示すように、工具交換装置の安全制御構造、即ち、アーキテクチャは、冗長性、即ち、二つの並行なチャンネルによって特徴付けられており、各チャンネルは、各入力装置l1及びl2、各制御ロジックL1、L2、及び各出力装置O1、O2を備えており、これらは、相互接続要素imを介して互いに接続されている。二つのチャンネルの二つの制御ロジックL1及びL2は相互監視「c」を受け、かつ、各出力O1及びO2は、(障害の検出を合理的に実行可能な)障害可能性用チャンネルロジックによって監視「m」を受ける。
【0032】
さらに、単一の障害で安全機能が失われることがない。もしそれが合理的に実行可能な場合、単一の障害は、次の安全機能を要求している間、又は、要求する前に検知されなければならない。
【0033】
本発明の一実施例によれば、
図1~3に示すように、工具交換装置は、加圧空気によって作動され得、特にロボットアーム5に接続されるように適合されたロボットアダプタ1と、特に工具6のハウジングの工具保持プレート7に接続されるように適合された工具アダプタ2とを有し得る。
【0034】
ロボットアダプタ1は、空気圧シリンダ、好ましくは、限定するものではないが、一つのシリンダ17、即ち、空気圧チャンバを備えた二重効果空気圧シリンダ117と、シリンダ17の内部に摺動可能に配置されたピストン116とを備えている。ピストン116は、好ましくは、シール要素、例えば、Oリング118によって、シリンダ17の壁に対して密閉的に設けられた、平坦部分16、即ち、ヘッドを有する。ピストン116は、さらに、係合要素120に接続されるシャフト119を備え、前記係合要素120は、特に、その端部で工具6と係合するように適合されている。以下により明確に示されるように、空気圧シリンダ117は、特に、ロボットアダプタ1及び工具6の連結及び分離機構を動作させるように適合されている。
【0035】
また、工具交換装置は、本発明の範囲から逸脱することなく、手動、電動、油圧又は他の方法で駆動され得ることは勿論である。
【0036】
添付図面に示す空気圧式工具交換装置の場合、分離用空気導管23及び連結用空気導管22から成る一対の空気導管を介して、シリンダ117の内部に空気が供給される。分離用空気導管23及び連結用空気導管22の第一端部は、シリンダ117の内部で開口し、かつ、それらの第二端部は、ロボットアダプタ1の外側に開口している。空気導管22及び23は、空気圧チャンバ17の垂直延長部に沿って設けられる。特に、分離空気導管23は、空気圧チャンバ17の上側部分に対応して配置され、連結空気導管22は、空気圧チャンバ17の下側部分に対応して配置されている。空気は、分離空気導管23及び連結空気導管22を介して、シリンダ117の内部における、双安定又は単安定であり得る、ピストン116のヘッド16の両側に、一つ又は複数の電磁バルブ12及び13によって、選択的に供給される。
【0037】
当然、工具交換装置の動作を変更することなく、従って、それによって本発明の範囲から逸脱することなく、分離空気用に空気導管22を使用し、連結空気用に空気導管23を使用することも可能である。
【0038】
ヘッド16は、使用中に、例えば、限定するものではないが、シリンダ17内のピストン116のストロークの端部に対応する2つの別個の規定された位置を取ることができる。第一位置は、ロボットアダプタ1の工具アダプタ2への連結に対応し、第二位置は、工具アダプタ2のロボットアダプタ1からの分離に対応する。
【0039】
ピストン116の位置を検出することにより、工具交換装置が連結状態にあるか分離状態にあるかを判定することが可能になり、従って、空気圧式工具交換装置の場合、バルブが作動を完了したかどうかを判定することが可能になる。
【0040】
圧縮空気がシリンダ17に到達せずに、ピストン116を作動させなかったり、不完全な又は誤った方法でピストン116を作動させたりする可能性があるので、工具交換装置の安全制御のために、電磁バルブの位置を検出するよりも、ピストン116の位置を検出することが有利である。
【0041】
本発明の特に有利な特徴によれば、連結位置及び分離位置の両方における空気圧シリンダ17内のピストン116の位置、従って、連結機構の位置は、連結位置及び分離位置の両方の位置において、ピストン116のヘッド16の両側で二つのシリンダ部分17の差圧を直接検出することによって監視される。
【0042】
図1に示すように、ロボットアダプタ1は、その側壁の一つに設けられた四つの空気導管24、25、26及び27を備えている。各空気導管24、25、26、27の第一端部はシリンダ17内に開口し、その第二端部はロボットアダプタ1の外側に開口する。二つの第一導管24及び25は、工具交換装置が分離状態にある時にピストン16のヘッド116の位置が、二つの導管24及び25の間の中間に位置するように、空気圧チャンバ17の垂直延長部に沿って設けられる。他の二つの第二導管26及び27は、工具交換装置が分離状態にある時にピストン16のヘッド116の位置が、二つの導管26及び27の間の中間に位置するように、空気圧チャンバ17の垂直延長部に沿って設けられる。
【0043】
当然ながら、工具交換装置の動作を変更することなく、従って、それによって本発明の範囲から逸脱することなく、二つの第一導管24及び25を、工具交換装置の分離位置に関連させ、第二導管26及び27を、工具交換装置の連結位置に関連させることも可能である。
【0044】
工具交換装置は、さらに、少なくとも二つの導管24及び25に接続された第一差圧センサ18と、他の二つの導管26及び27に接続された第二差圧センサ19とを備えている。各差圧センサ18及び19は、二つの圧縮空気ポートを有する。
【0045】
差圧センサ18及び19は、指定されたポートが他のポートよりも圧力が高い又は低い場合いにのみ、センサが正又は負の電気信号を返し、その逆はないという意味において、一方向のみに動作する。
【0046】
差圧センサ18及び19のポートの位置で圧力が等しい場合、センサ18及び19は、0値の電気信号を生成する。
【0047】
各差圧センサ18及び19は、アナログ電気出力、例えば電圧若しくは電流、又はデジタル出力、例えば予め更正された閾値の何れかを有し得、かつ、その出力信号を処理するための電気回路31に接続され得る。
【0048】
使用中、連結状態信号を生成する差圧は、空気圧チャンバ17に接続された導管26及び27の間で検出される。導管27は差圧空気圧センサ19のポ-トに接続され、導管26は同じセンサ19の他のポートに接続されている。空気が供給され、連結状態に達すると、導管27は空気を受け入れなくなり、導管26は陽圧を受けることになる。これにより、センサを作動するために必要な差圧が生成され、従って、差圧センサによって電気出力信号が生成される(アナログ又はデジタル)。電気回路を使用して、所望の圧力レベルの閾値を設定することができる。
【0049】
工具交換装置が連結状態にある場合、第二差圧センサ18は、加圧空気導管24及び25を介して空気が供給される。従って、二つのポートは同じ圧力レベルにあり、センサ18は電気出力信号を生成しない。
【0050】
同じ動作が分離状態信号の生成に使用される。導管25は第二圧力センサ18のポートに接続され、導管24は第二圧力センサ18の他のポートに接続される。
【0051】
通常の動作状態の下では、二つの圧力センサ18及び19によって生成される電気信号は反対になり、即ち、各センサが他方のセンサと反対の値を有する出力信号を生成することは明らかである。
【0052】
機械的連結システムが、システムの効果的な連結又は分離のための二つの指定された導管の間で動かなくなり、ピストン116のヘッド16が導管25及び26の間に位置していると、二つのセンサ18及び19のポートでの圧力差が条件を満たさなくなり、通常動作の時の値とは異なる値の電気出力信号が生成される。
【0053】
空気圧がゼロの場合、圧力差も条件を満たさなくなり、再び異常な電気出力信号が生成される。
【0054】
同様に、工具交換装置の製造者によって設定された動作パラメータに従って、空気圧が不十分な場合、圧力差が異常な電気出力信号を生成する。
【0055】
例えば、空気圧チャンバ17で空気損失、又はシール損失が発生した場合、ピストン116のヘッド16の片側と他側との間で、両方の差圧センサのポートに空気が供給され、従って、一方又は両方のセンサの電気信号をアクティブにするのに十分なポート間の差圧条件が作り出されなくなるため、システムは、電気出力信号をアクティブにするために必要な差圧に達することができなくなる。
【0056】
二つの圧力センサからの二つの電気出力信号が反対であるため、二つのセンサの一方が故障した場合、その問題は、次の安全機能要求、即ち、連結又は分離を実行するためのピストンの作動の前又は時に検出される。
【0057】
同様に、二つの出力信号及び動力供給信号の各々の間、又は二つの出力信号間の何れかの電気的短絡は、後続の安全機能要求の前に検出される。
【0058】
ロボットアダプタ1がロボットアーム5に連結されている、ロボット装置の工具変更しない通常の動作状態では、工具6は、工具アダプタ2及び工具支持プレート7を用いてロボットアダプタ1に接続され、空気圧シリンダ117に供給される圧縮空気が安全な連結を補償する。
【0059】
本発明のさらなる技術的特徴によれば、ロボットアダプタ1は、空気圧シリンダ内に配置され、一方がピストン116のヘッド16にあり、他方がシリンダ17の底壁の一つにある弾性要素、好ましくは圧縮ばねを備えている。使用中、工具交換装置における圧縮空気(即ち、安全動作のために必要なエネルギ)が失われると、ロボットアダプタ1における十分に試行された圧縮スプリング(冗長性安全機構)が工具アダプタの分離を防止するので、工具交換装置は連結されたままになる。
【0060】
さもなければ、工具交換装置の動作状態において、工具6をロボットアーム5から分離しなければならず、かつ、ロボットアダプタ1に堅固に拘束されるか、又はロボットアダプタ1自身に設けられた制御モジュールにあるロボットアーム5に配置された一つ又は複数の空気圧式作動バルブにコマンド信号を送信する必要がある。
【0061】
本発明では、ロボットアダプタ1が工具アダプタ2に連結され、両方がパーキングステーション30にある場合にのみ、工具交換装置のコマンド信号が、一つ又は複数の分離バルブに送信され得る。
【0062】
他の位置では、分離コマンド信号を、ロボットアダプタ1に送信することができない。
【0063】
この動作は、信号伝送システムによって可能になる。伝送システムは、工具アダプタ2又は、工具アダプタ2若しくは工具6に堅固に拘束されたプレート7に固定されたコマンド信号受信装置10と、パーキングステーション30に設けられたコマンド信号送信装置11とを有する。信号の伝送は、接触式又は非接触式であり得、信号は、機械式、空圧若しくは油圧式、磁気式、誘導式、RFID又は光学式等に関係なく使用され得る。
【0064】
本発明の実施可能な実施例の一つによれば、送信システムは、また、電気的な「領域内」信号39を提供することができる。「領域内」信号39の送信は、送信装置11及び受信装置10がコマンドを送信できるような位置にある時に実行される。
【0065】
この近接信号は、別の機械的、磁気的、光学的、又は電子的なセンサによっても提供され得る。
【0066】
図3に示すように、連結又は分離のためのコマンド信号は、コマンド送信装置11に接続された制御PLC4によって送信される。
【0067】
工具アダプタ2がロボットアダプタ1によって、そのパーキングステーション30に移送されると、送信装置11及び受信装置10が近接状態になり、それにより、最初に、コマンド、即ち、連結信号34又は分離信号33の送信を有効にし、次いで送信を操作できるようにする。
【0068】
本発明の別の好ましい実施例によれば、工具交換装置は、ロボットアダプタ1に接続されたロボットアダプタ安全モジュール8と、工具アダプタ2に接続された工具アダプタ安全モジュール9とを備えている。
【0069】
工具アダプタ2がロボットアダプタ1に接続されている時、工具アダプタ2の工具アダプタ安全モジュール9に配置された電気接点29と、ロボットアダプタ1の安全モジュール8に配置された電気接点28を介して制御信号が送信される。
【0070】
従って、コマンドは、ロボットアダプタ1のロボットアダプタ安全モジュール8に到達し、かつ、ロボットアダプタ安全モジュール8は、安全制御回路20を備えている。安全制御回路20は、安全制御機能を有する電気回路及び/又は空圧式回路であり得る。
【0071】
安全制御により、安全でない状態において工具交換装置が分離をすることが防止される。結果として、本発明の安全制御のアーキテクチャは、(冗長性を実現する)二つのチャンネルを有し、これら二つのチャンネルは、例えば、強制ガイド接点を備えたリレーを用いて、相互間で相互監視を実行する。二つのチャンネルのアーキテクチャによって、単一の故障が安全機能の損失に繋がることを防止することが可能になる。
【0072】
工具交換装置の分離のための全ての安全条件が満たされると、制御ロジックが、安全制御回路20に配置された二つの作動装置にコマンド信号を送信する。作動装置は、例えば、各々が二つのソレノイドを備えた二つの双安定式空気圧電磁バルブ12及び13であり得、そのうちの一方のソレノイドは電気連結コマンド38に接続され、他方のソレノイドは電気分離コマンド36に接続される。
【0073】
電磁バルブ12及び13の出力にある空気導管は、それらの間で空気導管23'と直列に接続されている。第一空気導管23'は、分離を実行する側からシリンダ17に空気を供給するのに適しており、特に、分離空気導管23に空気を供給するのに適している。第二空気導管22'は、連結を実行する側からシリンダ17に空気を供給するのに適しており、特に、連結空気導管22に空気を供給するのに適している。
【0074】
この構成のおかげで、双安定式空気圧電磁バルブ12及び13の両方を作動させる場合のみ、分離空気導管23に空気が供給される(AND空気圧ロジック)。代わりに、空気導管22を介して連結を実行する側からシリンダ17に空気を供給するために、双安定式バルブ連結ソレノイド12及び13の一方のみが作動されるだけでも十分である(OR空気圧ロジック)。
【0075】
作動の監視は、電磁バルブ12及び13の位置を検出するのではなく、ピストンの位置を直接検出することにより行われる。これにより、連結機構のより直接的な、従って、より安全な検出が可能になる。
【0076】
その目的のために、上述した差圧センサ18及び19を備えた検知システムが使用される。
【0077】
また、差圧検知システムによって、空気圧の損失又は不足(危険なシステム障害)を検知することを可能にし、かつ、次の分離要求をブロックする(安全機能要求)。
【0078】
また、安全制御ロジックには、例えば、空気圧シリンダ17内のピストン116の不適切な位置取り、圧力損失若しくは不十分な圧力、空気漏れ、又は二つの差圧センサの一方の故障の後の、圧縮空気供給の回復後の予期しない起動に対する保護も組み込まれている。
【0079】
圧縮空気の損失後及び圧縮空気の回収後の再起動は、電気的な「領域内」信号39が高い状態にある場合にのみ可能になる。高い状態は、受信装置10が送信装置11に近い場合にのみ、従って、工具交換装置がパーキングステーション30内にあり、かつ、分離による危険が生じない場合にのみ受信装置10によって生成される。また、電力供給が失われ、かつ、空気圧動力源が存在する場合のその後の回復の状況においては、安全制御の再開は、高い電気的「領域内」信号39によってのみ可能になる。
【0080】
また、安全制御回路20は、(典型的にはロボットシステムにある)マスタ安全制御装置を使用するために、二重電気出力信号42を生成する。この信号は、二つの出力信号のオーバーラップ又は短絡の検出を容易にするために、反対(高い信号及び低い信号又はその逆)である。
【0081】
手動又は半自動の操作段階では、多くの場合、一つ又は複数の供給エネルギ(例えば、空気圧エネルギ)の損失が原因で、安全上の最大のリスクが発生する可能性がある。
【0082】
その目的のために、オペレータが本発明による安全制御によって提供される電気安全信号を無視する場合、又はユーザーがそれらを安全制御手段に統合せず、かつ、オペレータが(工具交換装置の安全のための主要なエネルギ源である)空気が供給されていない状態で工具交換装置を備えたロボットを起動した場合、危険な分離を防止する安全機能も含まれている。
【0083】
これにより、工具交換装置がパーキングステーションにある時に、分離コマンドがアクティブにされる。コマンドの前に空気供給が失われると、工具交換装置は、分離は行わないが、空気の作用に置き換わる冗長的な機械的安全システム(例えば、スプリング)のために、連結は維持されることになる。また、既に分離されていて、空気が失われた場合には、バネのために再連結される。オペレータが空気の損失を警告する安全信号を無視し、工具交換装置を連結した状態でロボットを移動すると、工具交換装置はパーキングステーションの外に持って行かれる。空気供給が戻り、二つの双安定式バルブとそれらの位置を維持するバルブの分離コマンドが既にアクティブになっている場合、空気が分離導管に到達して工具を分離し、従って、重大な危険を引き起こす。
【0084】
この追加の安全機能は、前に定義した回路で実行され得、また、必要に応じて、特別なアプリケーションに対しては、二重チャンネル(冗長)アーキテクチャを持った追加の回路で実現され得る。この種のアーキテクチャにより、単一の障害が、安全機能の損失に繋がることを防止することが可能になる。
【0085】
二つの付加的な圧力センサ43は、両方共、ロボットアダプタ安全制御モジュール8の空気圧供給部21の空気導管に接続される。
【0086】
本発明の実施可能な別の実施例によれば、
図6に示すように、二つの付加的な圧力センサ43は、両方共、シリンダの内部の空気圧を検知するための空気圧シリンダの四つの導管24,25,26,27の少なくとも二つの導管25,26に接続され得る。
【0087】
各圧力センサは、アナログ電気出力(電圧又は電流)、又はデジタル出力(事前更正された閾値)の何れかを有し得、その出力信号を処理するための電気回路に接続され得る。また、これは、二重出力の安全センサでもあり得る。
【0088】
これらの圧力センサの電気信号は、(冗長性を実現するための)二つのチャンネルを持つ制御ロジックに作用し、前記チャンネルは、例えば、強制ガイド接点を有するリレーを用いて、それらの間で相互監視を実行する。この制御ロジックは、相互接続されているか、又は、安全制御回路20の一部である。の一部です。
【0089】
ロボットアダプタ安全制御モジュール8は、また、二つの別の作動装置、例えば、二つの単安定式電磁バルブ14及び15を有し、そのデフォルト位置は、工具交換装置の分離用空気供給導管23の遮断に対応している。二つの別の作動装置14及び15は、空気導管23 'を供給するための双安定式バルブ12及び13の空気圧分離回路に直列であり、その結果、工具交換装置を分離するためには、四つのバルブが適切な状態になければならなくなる。
【0090】
単安定式バルブであるため、電気及び/又は空気圧動力源が失われた場合、バルブは自動的に分離チャンネル遮断位置に戻る。このことは、エネルギが除去された場合に、装置又は装置の一部を安全な状態に持ってくる必要がある電源切断の原理として公知である。
【0091】
安全制御ロジックには、圧縮空気供給の回復後の予期しない起動に対する保護も組み込まれている。
【0092】
圧縮空気の損失後、及びその回復後の再起動は、高電気「領域内」信号39によってのみ可能になり、この状態は、受信装置10が送信ベース11に近い時のみ、従って、工具交換装置がパーキングステーション30内にあり、かつ、分離が何等かの危険を引き起こすことがない時のみ、受信装置10によって生み出される。
【0093】
反対に、圧力センサ43からの二つの入力信号に一貫性がない場合、入力の電力供給が残っている限りシステムはブロックされます。
【0094】
これにより、二つの圧力センサ43のうちの一方の故障を即座に検出することが可能になる。
【0095】
入力の電力供給が再開されると、(出力の電力供給によって開始される)空気圧は典型的には存在せず、従って、圧力センサ43からの信号が一致しない場合、オペレータの介入によって故障が解決されるか、又は、ロボットアダプタ安全モジュール8が新しい完全に動作するものに交換されるまで、システムは再びブロックされる。
【0096】
この第二安全機能のロジックの監視は、第一安全機能の監視と直列であり、即ち、これらは、一緒に、ユーザーの安全制御装置の使用のために、反対のロジックを持つ二重電気出力信号42を生成し、短絡又は二つの出力信号の重複の検知を容易にする。
【0097】
本発明の別の実施例によれば、
図5に示すように、工具交換装置は、さらに、少なくとも工具存在センサを有し、該工具存在センサは、特に、ロボットアダプタ1への工具アダプタ2の連結を検知するように適合されている。
図5に示されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、工具存在センサは、二重チャンネルセンサ又は2信号チャンネルセンサを有し得る。
【0098】
工具存在センサ44は、機械式、誘導式若しくは磁気式、RFID、光学式又は他の任意の形式と関係なく使用され得る。
【0099】
図5に示すように、工具存在センサ44は、ロボットアダプタ安全モジュール8に配置され得、工具存在センサ44の出力は、安全制御回路20に接続され得る。
【0100】
工具存在センサ44によって、工具交換装置の二つの異なる状態、即ち、工具アダプタ2がロボットアダプタ1に連結されている状態、又は、工具アダプタ2がロボットアダプタ1に連結されていない状態を区別することが可能になる。
【0101】
例えば、圧縮空気が失われた後、冗長型機械式安全システム(例えば、ばね)が、連結及び分離機構17を連結位置まで動かす。
【0102】
圧縮空気の回復後、工具アダプタ2がロボットアダプタ1に連結されている場合、前記連結及び分離機構17を作動させることは非常に危険である。他方、工具アダプタ2がロボットアダプタ1に連結されていない場合、圧縮空気の回復後、前記連結及び分離機構17を分離位置に動かすことは安全である。
【0103】
圧縮空気回復後のこの問題に対する一つの解決手段は、冗長型機械式安全システム(例えば、ばね)により動かされる位置、即ち、連結位置に、連結及び分離機構17を残すことである。しかしながら、この解決手段は、ロボットアダプタ1が、自動的に、パーキングステーション30に置かれている工具アダプタ2と連結する必要がある場合には、他の機械的問題を引き起こす。
【0104】
工具存在センサ44は、ロボットアダプタ1が、圧縮空気の供給を失う前の状態に戻すことができるか否かを判断するためのロジックによって使用され得る。本発明では、さらなる追加のセンサ44によって、安全制御回路20が、工具アダプタ2がロボットアダプタ1と連結されているか否かを判断することを可能にし、従って、圧縮空気の回復後に、自動的に、かつ、安全に、前記機構17を分離位置に動かすことを可能にする。
【0105】
上述した構成要素は全て、機械的に等価な他の要素に置き換えることができる。同様に、使用される材料、並びに、付随する形状及び寸法は、添付の特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく、必要に応じて任意に決められ得る。
【符号の説明】
【0106】
1 ロボットアダプタ
2 工具アダプタ
3 送信装置及び受信装置
4 制御PLC
5 ロボット
6 工具
7 工具支持プレート
8 ロボットアダプタ安全モジュール
9 工具アダプタ安全モジュール
10 受信装置
11 送信装置
12 双安定式バルブ
13 双安定式バルブ
14 単安定式バルブ
15 単安定式バルブ
16 ピストンヘッド
17 連結及び分離機構作動シリンダ
18 第一差圧センサ
19 第二差圧センサ
20 安全制御回路
21 空気圧供給部
22 連結空気導管
23 分離空気導管
24 導管
25 導管
26 導管
27 導管
28 ロボットアダプタ側安全モジュール電気接点
29 工具アダプタ側安全モジュール電気接点
30 パーキングステーション
31 差圧センサ検知電気回路
32 GND出力の電力供給
33 分離コマンド
34 連結コマンド
35 出力電力供給
36 分離コマンド
37 GND出力の電力供給
38 連結コマンド
39 「領域内」信号
40 入力電力供給
41 GND入力の電力供給
42 安全電気信号
43 空気供給に接続された圧力センサ
44 工具存在センサ
116 ピストン
117 空気圧シリンダ
118 Oリング
119 シャフト
120 連結及び分離機構