(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ゼリー飲料、ゼリー飲料の製造方法、及び、ゼリー飲料の分離性向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240208BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240208BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20240208BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240208BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240208BHJP
A23F 5/24 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/52
A23L29/238
A23L29/256
A23L29/269
A23F5/24
(21)【出願番号】P 2019142408
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 友香
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108045(JP,A)
【文献】特開2000-014316(JP,A)
【文献】特開2019-062765(JP,A)
【文献】特開平10-155433(JP,A)
【文献】特開2000-333620(JP,A)
【文献】特許第3648597(JP,B2)
【文献】七訂 食品成分表2016,「13 乳類」, 食品番号「13014」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状部とゲル状のゼリー部とを含むとともに、カゼインを含むゼリー飲料であって、
ローカストビーンガム
の含有量が0.50~3.00g/L、カラギーナン
の含有量が0.10~0.75g/L、キサンタンガム
の含有量が0.10~0.75g/L、油脂
の含有量が5~30g/Lであり、カルシウム又はマグネシウムを含有し、
カゼインの含有量が0.66~2.50g/L、又は、15.00g/L以上であるゼリー飲料。
【請求項2】
液状部とゲル状のゼリー部とを含むとともにカゼインを含むゼリー飲料の製造方法であって、
ローカストビーンガム
の含有量が0.50~3.00g/L、カラギーナン
の含有量が0.10~0.75g/L、キサンタンガム
の含有量が0.10~0.75g/L、油脂
の含有量が5~30g/Lであり、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量が0.66~2.50g/L、又は、15.00g/L以上である原料を混合して調合液を調製する調製工程と、
前記調合液を容器に充填する充填工程と、
前記容器に充填された前記調合液を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
を含むゼリー飲料の製造方法。
【請求項3】
カゼインを含むゼリー飲料の分離性向上方法であって、
ローカストビーンガム
の含有量が0.50~3.00g/L、カラギーナン
の含有量が0.10~0.75g/L、キサンタンガム
の含有量が0.10~0.75g/L、油脂
の含有量が5~30g/Lであり、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量が0.66~2.50g/L、又は、15.00g/L以上である原料を混ぜて調合液を調製し、前記調合液を容器に充填した後、前記容器に充填された前記調合液を加熱殺菌するゼリー飲料の分離性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー飲料、ゼリー飲料の製造方法、及び、ゼリー飲料の分離性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食品に対する消費者の嗜好は多様化しており、この多様化した消費者の嗜好を満たすべく様々な種類の商品の開発が進められている。そして、容器詰めされたゼリーを振り崩して飲むタイプのゼリー飲料についても、味覚嗜好性だけでなく、栄養機能性、物理的性状といった様々な観点から、多様なゼリー飲料が提案されている。
そして、このゼリー飲料に関して、例えば、以下のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ムース層とゼリー層が容器内で二層に分離されたゼリー食品を製造する方法であって、油脂を主成分として蛋白質・乳化剤により乳化安定が保たれたクリームとゼリー液とを混合した一液で容器に充填し、前記蛋白質・乳化剤の乳化効果を減殺させて比重差によりムース層とゼリー層とを層分離させることを特徴とする二層ゼリー食品の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ゲル化剤及びその他の添加物からなるゼリー基質と、油脂、乳化剤、タンパク質及びその他の添加物からなるクリーム状水中油型乳化脂とを含み、前記ゼリー基質を加熱溶解した後、前記クリーム状水中油型乳化脂を混合し、クリーム層を上層に分離させた後、固化させた層状ゼリーであって、上記乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとのうち、いずれか一方又は双方、或いはこれらの一方又は双方に有機酸モノグリセライドを添加したものを使用し、当該乳化剤を含むクリーム状水中油型乳化脂が、ゼリー基質に混合した後、油分が分離しない範囲においてクリーム層として、ゼリー層の上方に層状ゼリー全体の体積中40%以下の状態で存在するようにしたことを特徴とする層状ゼリーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-289176号公報
【文献】特開平8-242786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る技術、特許文献2に係る技術は、ムース層(クリーム層)とゼリー層との2層に分かれているものの、全体としてゲル状を呈している。そのため、ムース層とゼリー層とを混じり合うように崩して飲食した場合、消費者はムース層とゼリー層とで異なる香味は感じられるものの、各層の食感はいずれもゲル状の食感であるため、食感に関しては変化を感じられない。
【0007】
本発明者は、1液充填による異なる食感の液状部とゼリー部(ゲル状)とを備えたゼリー飲料の開発を進める過程において、ゼリー飲料の液状部とゼリー部とを明確に分離させるのが困難であることがわかった。
また、本発明者は、ゼリー飲料に対してミルクのコクを付与すべく、ミルクタンパクであるカゼインを含有させることを検討したが、所定量のカゼインを含有させた際、分離性に乏しいことがわかった。
【0008】
そこで、本発明は、分離性が向上したカゼインを含むゼリー飲料、ゼリー飲料の製造方法、及び、ゼリー飲料の分離性向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)液状部とゲル状のゼリー部とを含むとともに、カゼインを含むゼリー飲料であって、ローカストビーンガムの含有量が0.50~3.00g/L、カラギーナンの含有量が0.10~0.75g/L、キサンタンガムの含有量が0.10~0.75g/L、油脂の含有量が5~30g/Lであり、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量が0.66~2.50g/L、又は、15.00g/L以上であるゼリー飲料。
(2)液状部とゲル状のゼリー部とを含むとともにカゼインを含むゼリー飲料の製造方法であって、ローカストビーンガムの含有量が0.50~3.00g/L、カラギーナンの含有量が0.10~0.75g/L、キサンタンガムの含有量が0.10~0.75g/L、油脂の含有量が5~30g/Lであり、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量が0.66~2.50g/L、又は、15.00g/L以上である原料を混合して調合液を調製する調製工程と、前記調合液を容器に充填する充填工程と、前記容器に充填された前記調合液を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、を含むゼリー飲料の製造方法。
(3)カゼインを含むゼリー飲料の分離性向上方法であって、ローカストビーンガムの含有量が0.50~3.00g/L、カラギーナンの含有量が0.10~0.75g/L、キサンタンガムの含有量が0.10~0.75g/L、油脂の含有量が5~30g/Lであり、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量が0.66~2.50g/L、又は、15.00g/L以上である原料を混ぜて調合液を調製し、前記調合液を容器に充填した後、前記容器に充填された前記調合液を加熱殺菌するゼリー飲料の分離性向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゼリー飲料は、カゼインを含有しているものの、分離性を向上させることができる。
【0011】
本発明に係るゼリー飲料の製造方法によると、カゼインを含有しているものの、分離性が向上したゼリー飲料を製造することができる。
また、本発明に係るゼリー飲料の製造方法は、いわゆる1液充填法であることから、製造工程を短縮化できるだけでなく、調合液を容器に充填するまでに、ゲル化させるような処理が必要ないことから、ゲル化した調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要であり、製造適性に非常に優れる。
【0012】
本発明に係るゼリー飲料の分離性向上方法によると、カゼインを含有しているゼリー飲料の分離性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るゼリー飲料、ゼリー飲料の製造方法、及び、ゼリー飲料の分離性向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0014】
[ゼリー飲料]
本実施形態に係るゼリー飲料は、液状部とゲル状のゼリー部とを含むとともに、カゼインを含むゼリー飲料であって、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、油脂を含有し、カルシウム又はマグネシウムを含有している。
【0015】
(ゲル化剤:ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム)
本実施形態に係るゼリー飲料は、ゲル化剤として、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガムの3種を含有する。
本発明者は、数多くのゲル化剤を用いて実験を行った結果、この3種の組合せのゲル化剤を用いた場合に、ゼリー飲料を液状部とゲル状のゼリー部とに適切に分離できることを見出した。詳細には、この3種の組合せのゲル化剤を用いた場合、ゲル化剤を含む原料を調合(50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下で調合)した調合液を容器に充填し、加熱殺菌を施し、冷却するだけで、驚くべきことに、ゲル状となるゼリー部から液状部が好適に離水することで、液状、ゲル状の2つの状態を備えることとなる。つまり、本実施形態に係るゼリー飲料は、いわゆる1液充填法(複数ではなく1種類の調合液を使用する方法)によって製造できるだけでなく、調合液を容器に充填するまでに別途加熱処理を施してゲル化させるといった工程も必要ない。その結果、本実施形態に係るゼリー飲料は、製造工程を短縮化できるだけでなく、ゲル化した調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要であり、製造適性に非常に優れた飲料といえる。
【0016】
ローカストビーンガムは、他の2つのゲル化剤と組み合わせて使用することにより、前記のとおり、液状部とゲル状のゼリー部とを適切に分離させるとともに、ゼリー部の固さに影響を与える。
【0017】
ローカストビーンガムの含有量は、0.50g/L以上が好ましく、0.55g/L以上がより好ましく、0.60g/L以上がさらに好ましく、0.65g/L以上が特に好ましい。ローカストビーンガムの含有量が所定量以上であることによって、液状部とゼリー部とをより適切に分離させるとともに、ゼリー部をより固めの状態にすることができる。
また、ローカストビーンガムの含有量は、3.00g/L以下が好ましく、2.50g/L以下がより好ましく、1.00g/L以下がさらに好ましく、0.90g/L以下が特に好ましい。ローカストビーンガムの含有量が所定量を超えると、固くなり2層分離し難くなるためである。
【0018】
カラギーナンは、他の2つのゲル化剤と組み合わせて使用することにより、液状部とゲル状のゼリー部とを適切に分離させるとともに、ゼリー部の固さに影響を与える。なお、カラギーナンは、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナンのいずれの種類でもよいが、ゼリー部の強度を確保する観点から、κ-カラギーナンが好ましい。
【0019】
カラギーナンの含有量は、0.10g/L以上が好ましく、0.20g/L以上がより好ましく、0.30g/L以上がさらに好ましく、0.35g/L以上が特に好ましい。カラギーナンの含有量が所定量以上であることによって、液状部とゼリー部とをより適切に分離させるとともに、ゼリー部をより固めの状態にすることができる。
また、カラギーナンの含有量は、0.75g/L以下が好ましく、0.60g/L以下がより好ましく、0.55g/L以下がさらに好ましく、0.50g/L以下が特に好ましい。カラギーナンの含有量が所定量を超えると、固くなり2層分離し難くなるためである。
【0020】
キサンタンガムは、他の2つのゲル化剤と組み合わせて使用することにより、液状部とゲル状のゼリー部とを適切に分離させるとともに、離水率(ゼリー飲料に占める液状部の割合)に影響を与える。
【0021】
キサンタンガムの含有量は、0.10g/L以上が好ましく、0.20g/L以上がより好ましく、0.25g/L以上がさらに好ましく、0.30g/L以上が特に好ましい。キサンタンガムの含有量が所定量以上であることによって、液状部とゼリー部とをより適切に分離させるとともに、離水率が多過ぎるといった事態を回避することができる。
また、キサンタンガムの含有量は、0.75g/L以下が好ましく、0.60g/L以下がより好ましく、0.50g/L以下がさらに好ましく、0.45g/L以下が特に好ましい。キサンタンガムの含有量が所定量以下であることにより、離水率が多過ぎるといった事態を回避することができる。
【0022】
なお、ゲル化剤であるローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガムの3種の合計の含有量は、特に限定されないものの、液状部とゲル状のゼリー部とをより明確に分離させ、より優れた食感とする(ゼリー部が固めの食感となる)という観点から、0.70g/L以上が好ましく、1.00g/L以上がより好ましく、1.30g/L以上がさらに好ましい。また、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガムの3種の合計の含有量は、固くなり2層分離し難くなるという観点から、4.50g/L以下が好ましく、4.00g/L以下がより好ましく、3.00g/L以下がさらに好ましい。
【0023】
(液状部)
液状部とは、ゼリー飲料のうち、前記したゲル化剤によってゲル化していない液状の部分、言い換えると、ゲル状のゼリー部から離水した部分であり、主にゲル化しなかった油脂(乳化油脂)等を含んで構成される。なお、ゲル状のゼリー部にも油脂由来の油脂分が含まれることから、当該油脂分の全てが液状部に含まれるものではないが、油脂は、出来る限り液状部に多く含まれている状態が好ましい。
液状部の割合(ゼリー飲料全体に占める割合:含有量、離水率とも言う)は、3質量%以上が好ましく、8.5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、11質量%以上が特に好ましい。液状部の割合が所定割合以上であることにより、消費者はゲル状の部分だけでなく液状の部分を十分に感じることができる。
また、液状部の割合は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。液状部の割合が所定割合以下であることにより、液状の部分が多くなり過ぎてしまいゼリー飲料として好ましくない状態となってしまうのを回避することができる。
なお、本発明に係るゼリー飲料において、油脂分を含んだ液状部は、例えばコーヒーゼリーにおける液状のクリーム様の役割を果たす。
【0024】
(カゼイン)
カゼインとは、乳に由来するミルクタンパクであり、リンタンパクの一種である。そして、カゼインは、ゼリー飲料(特に液状部)にミルクのコクを付与することができる。
カゼインをゼリー飲料に含有させる場合、カゼインを含む乳製品をゼリー飲料に含有させるという態様でもよく、カゼインを含む乳化剤やカゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム)をゼリー飲料に含有させるという態様でもよい。なお、カゼインを含む乳製品の中でゼリー飲料に適用できるものとしては、例えば、牛乳(生乳100%)、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、クリーム、加工乳(脱脂粉乳、クリーム、バターなど使用して加工されたもの)等が挙げられる。
【0025】
本発明者は、カゼインをゼリー飲料に所定量含有させたところ、分離性が大幅に低下してしまうことを確認した。そして、この事象について多くの実験を重ねた結果、カゼインの含有量が分離性に大きな影響を及ぼすことを突き止めた。詳細には、ゼリー飲料のカゼイン量を少なく規制すると、ゼリー部を構成する水溶液と液状部を構成する油脂との乳化安定性の向上を回避することができ、その結果、ゼリー部から好適に油脂を分離させるという作用が発現することを確認した。さらに、ゼリー飲料のカゼイン量をかなり多くすると、一旦、向上した乳化安定性が低下し、その結果、ゼリー部から好適に油脂が分離するという作用が発現することを確認した。つまり、ゼリー飲料のカゼインの含有量を少量側又は多量側に厳密に制御することによって、ゼリー飲料内の乳化安定性を低下させ、分離性を向上できることがわかった。
なお、本願において「分離性が向上している」とは、油脂の大半が液状部に移行している、言い換えると、油脂の大半がゼリー部から分離(除外)できている状態を示している。
【0026】
カゼインの含有量(少量側)は、2.50g/L以下が好ましく、2.30g/L以下がより好ましく、2.00g/L以下がさらに好ましく、1.50g/L以下が特に好ましい。カゼインの含有量を所定値以下とすることによって、乳化安定性が低下し、分離性を向上させることができる。
カゼインの含有量(多量側)は、15.00g/L以上が好ましく、15.50g/L以上がより好ましく、16.00g/L以上がさらに好ましく、16.20g/L以上が特に好ましい。カゼインの含有量を所定値以上とすることによって、乳化安定性が低下し、分離性を向上させることができる。なお、カゼインの含有量(多量側)の上限は、効果が飽和する観点から、例えば、30.00g/L以下、20.00g/L以下、18.00g/L以下が好ましい。
【0027】
(油脂)
本実施形態に係るゼリー飲料は、油脂を含有し、この油脂としては、例えば、以下に示す乳化油脂を挙げることができる。
なお、油脂は、ゼリー飲料において大部分が前記した液状部に含まれることとなる。
【0028】
乳化油脂とは、乳化剤により乳化された油脂であり、乳化植物油脂(植物性乳化油脂)と乳化動物油脂(動物性乳化油脂)を用いることができる。そして、乳化油脂をゼリー飲料に含有させた場合、液状部として油脂分が適切にゼリー部から分離するとともに、液状部とゼリー部とが分離した状態を長く維持する経時安定性にも優れる。
乳化植物油脂とは、植物由来の油脂が乳化されたものであり、例えば、ナタネ油乳化油脂、米油乳化油脂、大豆油乳化油脂、紅花油乳化油脂、ヒマワリ油乳化油脂等が挙げられる。
乳化動物油脂とは、動物由来の油脂が乳化されたものであり、例えば、予め乳化剤で乳化した、バター、生クリーム、ラード等が挙げられる。
なお、乳化植物油脂と乳化動物油脂とを比較すると、乳化植物油脂を使用したゼリー飲料の方が、液状部が多くなる傾向があるため、ゼリー飲料に対するニーズに応じて両者を選択することができる。
【0029】
ゼリー飲料全体に対する乳化油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、乳化油脂(油脂含量50%)の含有量は、10~60g/Lであり、好ましくは12~45g/Lであり、さらに好ましくは15~40g/Lである。また、ゼリー飲料全体に対する乳化油脂として含有させる油脂の含有量は、5~30g/Lであり、好ましくは6~22.5g/Lであり、さらに好ましくは7.5~20g/Lである。
【0030】
(ゲル状のゼリー部)
ゲル状のゼリー部とは、ゼリー飲料のうち、前記したゲル化剤によってゲル化しているゲル状(固体状又は半固体状)の部分である。
そして、ゲル状のゼリー部は、例えば、コーヒー、抹茶、紅茶、バナナ風味飲料、杏仁風味飲料、イチゴ風味飲料(果実風味飲料)、チーズ風味飲料、汁粉風味飲料(小豆汁)、トマト風味飲料(野菜風味飲料)、スープ類等といった様々な風味を呈する飲料をゲル化させたものである。
ゼリー部の含有量は、前記した液状部や後記する固形物質(具材)等を除いた量であって特に限定されない。
【0031】
(カルシウム)
カルシウムは、液状部をより確実にゲル状のゼリー部から分離(離水)させ、液状部とゼリー部との色(液状部の略白色とゼリー部の白以外の色)のコントラストを強くすることができる物質であり、ゲル化剤によるゲル化を補助する役割を果たす物質(ゲル化補助剤)である。
なお、カルシウムを含有しない場合でも液状部とゼリー部のコントラストはできるが、カルシウムを含有することでよりコントラストを強くすることができる。
【0032】
カルシウムの含有量は、0.13g/L以上が好ましく、0.26g/L以上がより好ましい。カルシウムの含有量が所定量以上であることにより、液状部とゼリー部との色のコントラストをより強くすることができる。
また、カルシウムの含有量の上限は特に限定されないものの、前記した効果が飽和する観点から、例えば、0.52g/L以下であればよい。
【0033】
カルシウム源としては、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、マルトビオン酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
(マグネシウム)
マグネシウムは、液状部をより明確にゲル状のゼリー部から分離(離水)させ、多くの乳化油脂を離水側である液状部とすることによって、液状部とゼリー部との色調(液状部の略白色とゼリー部の白以外の色)のコントラストを非常に強くすることができる物質であり、ゲル化剤によるゲル化を補助する役割を果たす物質(ゲル化補助剤)である。
また、マグネシウムは、原料を混合して調合液を調製した後、調合液に温度的負荷(容器に充填する前の所定の加熱負荷等)がかかろうとも、調合液を加熱してから容器に充填するまでの間に当該調合液に力学的負荷(ライン製造時におけるポンプによる圧力負荷等)がかかろうとも、最終的に得られるゼリー飲料の液状部とゼリー部とを明確に分離させることができる。つまり、マグネシウムは、調合液の状態における温度的負荷や力学的負荷に対する耐性を向上させ、結果として、液状部とゼリー部とが明確に分離した所望のゼリー飲料とすることができる。
【0035】
マグネシウムの含有量は、0.03g/L以上が好ましく、0.05g/L以上がより好ましく、0.1g/L以上がさらに好ましい。マグネシウムの含有量が所定量以上であることにより、液状部とゼリー部との色調の差をより強くすることができるとともに、調合液の温度的負荷や力学的負荷に対する耐性を向上させることができる。
また、マグネシウムの含有量は、前記した効果が飽和する観点、及び、香味が好適なものでなくなる(エグ味が強くなる)という観点から、0.5g/L以下が好ましく、0.4g/L以下がより好ましい。
【0036】
マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
(pH)
本実施形態に係るゼリー飲料のpHは、特に限定されないものの、5.0以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。
ゼリー飲料のpHが所定値以上であることにより、ゼリー部が軟らか過ぎる、又は、固まらないといった事態を回避することができる。
本実施形態に係るゼリー飲料のpHの上限は特に限定されないものの、例えば7.5である。
なお、このゼリー飲料のpHの値は、製品中のpHを指し、詳細には、ゼリー飲料を振って液状部とゲル状のゼリー部とを混合させた後の状態のpHである。そして、pHの値は、市販のpH測定器で測定することができる。
【0038】
(温度)
本実施形態に係るゼリー飲料は、温度が高い状態が続くとゼリー部が溶解する可能性があるため、常温状態で保管・保存される製品として取り扱われるのが好ましく、言い換えると、ホット製品ではなくコールド製品として取り扱われるのが好ましい。
【0039】
(アルコール)
本実施形態に係るゼリー飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の所望の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、ラム等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒、清酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記した様々な酒類に果実等を漬け込んだ浸漬酒を使用してもよい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0040】
(その他)
本実施形態に係るゼリー飲料は、前記のとおり、ゼリー部(及び、液状部の一部)を構成する原料として、例えば、コーヒー、抹茶、紅茶、バナナ風味飲料、杏仁風味飲料、イチゴ風味飲料(果実風味飲料)、チーズ風味飲料、汁粉風味飲料(小豆汁)、トマト風味飲料(野菜風味飲料)、スープ類等の各種飲料(又は、各種飲料の一般的な素材・原料)を含有させればよい。
また、本実施形態に係るゼリー飲料は、前記のとおり、様々な風味(香味)を呈する飲料をゲル化させたゼリー部を含むが、当該ゼリー部の風味に適した固形物質(具材)を適宜含有させてもよい。例えば、ゼリー部として抹茶や汁粉風味飲料をゲル化させた場合は、白玉、白玉こんにゃく、小豆等を含有させてもよく、ゼリー部として果実風味飲料や野菜風味飲料をゲル化させた場合は、果実片、野菜片を含有させてもよい。
【0041】
また、本実施形態に係るゼリー飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維、消泡剤、着色料など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。消泡剤としては、乳化剤、シリコン系消泡剤、液状油などを用いることができる。着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。
また、本実施形態に係るゼリー飲料は、乳化剤を含有してもよいが、乳化剤の含有量が多すぎると油脂と水溶液とが乳化し、ゼリー部と液状部との2層に分離し難くなる。よって、乳化剤の含有量は、1.8g/L以下が好ましく、1.5g/L以下、1.0g/L以下がより好ましい。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0042】
[容器詰めゼリー飲料]
本実施形態に係るゼリー飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にゼリー飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器、樽容器、ガラス容器、パウチ容器などを適用することができる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0043】
[ゼリー飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法は、調製工程と、充填工程と、加熱殺菌工程と、を含む。
【0044】
調製工程では、混合タンクに、カゼイン、コーヒー等の各種飲料(又は、各種飲料の原料)、水、ゲル化剤、乳化油脂等の油脂原料、カルシウム源、マグネシウム源、アルコール、pHを調製するための重ソウ、添加剤などを適宜投入して調合液を製造する。
なお、調製工程において、カルシウム源やマグネシウム源は他の原料と一緒に混合するよりも、別途最後に混合した方が液状部とゼリー部とが適切に分離する。よって、調製工程では、カルシウム源やマグネシウム源を最後に混合する、つまり、調製工程で調製した調合液に対して、カルシウム源(カルシウム)やマグネシウム源(マグネシウム)を混合するのが好ましい。
この調製工程において、各原料を前記した所定範囲の量となるように混合し、調製すればよい。
【0045】
充填工程では、調製工程で得られた調合液を容器に充填する。
充填工程での充填方法は、ホットパック充填、アセプティック充填等、公知の方法で行うこともできるが、調合液を50~85℃まで加熱してから容器に充填する方法が好ましく、60~85℃がより好ましく、60~70℃が更に好ましい。
充填時の調合液の加熱温度が50℃以上であることによって、調合液中の残存酸素を適切に脱気することができるとともに、調合液を加熱した後に容器に陰圧充填する充填方法に好適に適用することもできる。また、充填時の調合液の加熱温度が85℃以下であることによって、調合液のゲル化を防止できるため、調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要となる。
なお、本実施形態に係るゼリー飲料は、調合液の状態における温度的負荷に対する耐性に優れることから、この50~85℃での充填という方法を適用するのが好適である。
また、この充填工程S2において、ホモジナイズを行っても行わなくてもよいが、ゲル強度の観点から行わないほうが望ましい。
【0046】
加熱殺菌工程では、容器に充填された調合液を加熱殺菌(例えば、レトルト殺菌)する。加熱の温度については、例えば、F0=4以上(例えば、35程度)の殺菌であればよく、温度は110℃以上であればよい。加熱の温度は、好ましくは121~125℃であり、加熱の時間については、例えば、10~30分であればよい。
この加熱殺菌工程の加熱処理によって、調合液のゲル化剤が溶解する。そして、加熱殺菌工程の後、容器に充填された調合液の温度が低下する過程において、液状部とゲル状のゼリー部とに分離することになる。
なお、このようにして製造されたゼリー飲料は、容器内部の下側にゲル状のゼリー部が形成され、ゼリー部の上側に液状部が形成される。よって、消費者は、ゼリー飲料を消費する前に、容器を適宜振ることにより、ゼリー部が所望のサイズとなるように破砕させることができる。
【0047】
調製工程、充填工程、加熱殺菌工程にて行われる各処理は、各種飲料を製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
【0048】
[ゼリー飲料の分離性向上方法]
次に、本実施形態に係るゼリー飲料の分離性向上方法を説明する。
本実施形態に係るゼリー飲料の分離性向上方法は、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、油脂、カゼインを含有し、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量を所定量に調製した原料を混合して調合液を調製し、前記調合液を容器に充填した後、前記容器に充填された前記調合液を加熱殺菌する。
なお、本実施形態に係るゼリー飲料の分離性向上方法における各処理は、前記した「ゼリー飲料の製造方法」において説明した内容と同じであり、各成分の含有量等については、前記した「ゼリー飲料」において説明した内容と同じである。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るゼリー飲料(ゼリー飲料の製造方法、ゼリー飲料の分離性向上方法)は、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、油脂を含有し、カルシウム又はマグネシウムを含有し、カゼインの含有量を所定の値に特定していることから、カゼインを含有していても、分離性を向上させることができる。
また、本実施形態に係るゼリー飲料(ゼリー飲料の製造方法、ゼリー飲料の分離性向上方法)は、原料を混合して調合液を調製した後、調合液を加熱してから容器に充填するまでの間に当該調合液に温度的負荷や力学的負荷がかかろうとも、分離性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るゼリー飲料(ゼリー飲料の製造方法、ゼリー飲料の分離性向上方法)は、消費者が飲む前に振り崩しの作業を要するゼリー飲料(ゼリー部を振り崩すことで飲用に適した状態となる飲料)に適しており、消費者が適宜ゼリー部の大きさを調整可能である。そして、この振り崩しの作業によって、ゼリー部を不均一な形状・大きさとすることができ、液状のクリームが当該ゼリー部に絡み合うこととなる。その結果、従来のムース状のクリームがゼリー部の上に載っているだけのものと比較して、液状部(液状のクリーム)とゼリー部とがしっかりと絡み合い、ゼリー飲料として非常に好適なものとなる。また、消費者による振り崩しが行われるまでは液状部(液状のクリーム)とゼリー部とが混ざり合うことがなく、消費者による振り崩しによって混ざるため、あたかも消費者が当該ゼリー飲料を飲む直前に液状のクリームをかけたような斬新な見た目と本物感を容器詰めゼリー飲料において演出することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法は、いわゆる1液充填法であるとともに、調合液を容器に充填するまでにゲル化させるといった工程も必要ない。その結果、本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法は、製造工程を短縮化できるだけでなく、ゲル化した調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要であり、製造適性に非常に優れる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0053】
(サンプルの準備)
下記表に示すような含有量となるように、インスタントコーヒー(粉末状)、上白糖、乳化植物油脂(ナタネ油乳化油脂、油脂含量約50%)、ローカストビーンガム、κ-カラギーナン、キサンタンガム、乳化剤(カゼインは含まず)、重ソウ、牛乳、冷凍生クリーム、クリーム原料、カゼインナトリウム、水を適宜混合し、最後に、硫酸マグネシウム(硫酸マグネシウム1g中、マグネシウム0.099g)、又は、乳酸カルシウム(乳酸カルシウム1g中、カルシウム0.13g)を混合してサンプル液を準備した。ここまで、冷調合(50℃以下)で準備した。
そして、サンプル液を表に示す温度となるように加熱し、容器(広口缶)に充填した後、容器に対して、123℃、20分の加熱殺菌を施した。なお、充填時において、ホモジナイズは行わなかった。
その後、常温まで冷却した後、容器を振らずにそのまま容器内のサンプル液を透明のコップに移した。
【0054】
(試験内容:分離性)
各サンプルについて、評価者3名が下記評価基準に則って「分離性」について、4段階評価で各々評価を行い、最終的な評価を各パネルがディスカッションして決定した。
なお、分離性は、目視にて評価を行った。
【0055】
(分離性:評価基準)
◎:液状部とゼリー部との色のコントラストが非常に明確であり、液状部は白色、ゼリー部は黒色を呈し、液状部とゼリー部との境も明確である。
〇:液状部とゼリー部との色のコントラストが明確であり、液状部は白色、ゼリー部は黒色を呈しているが、液状部とゼリー部との境がぼやけている。
△:液状部とゼリー部との色のコントラストがあまり明確ではなく、ゼリー部が黒色ではなく茶色を呈している、または、ゼリー部にやや白色が混在している。
×:液状部とゼリー部との色のコントラストがなく、液状部とゼリー部とがほとんど同じ色を呈している、または、ゼリー部に白色が混在しているのが目立つ。
【0056】
なお、「分離性」の判断基準は上記のとおりであって、実施例で使用した油脂が白色を呈し、ゼリー部を構成する液体が黒色を呈することを考慮すると、「分離性が良い(向上している)」とは、液状部に油脂の大半が存在している状態(油脂が適切に液状部に移行している状態)を示し、「分離性が悪い(向上していない)」とは、ゼリー部にも油脂が存在している状態(油脂が液状部に適切に移行されておらずゼリー部にも混ざってしまっている状態)を示している、ということができる。
【0057】
(試験内容:離水率)
各サンプルの内容量(質量)を計測した後、各サンプルから液体のみを採取し、離水量(液体部分の質量)を計測した。そして、各サンプルの離水率(=離水量/内容量×100)を算出した。
【0058】
表に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
(結果の検討:表1について)
表1のサンプル1-2からサンプル1-10は、カゼインの含有量の少ないものから多いものの順で並べたものであるが、カゼインの含有量が少量に規制されているサンプルは分離性に優れ(◎又は〇)、カゼインの含有量が少し多くなると分離性に劣り(×)、さらにカゼインの含有量が多くなると分離性に優れる(◎)という結果となった。
このように、表1の結果から、カゼインの含有量が少量であって乳化安定性が向上していない少量側のサンプル1-2~1-5(特に1-2~1-4)と、カゼインの含有量がかなり多く乳化安定性が低下してしまった多量側のサンプル1-10について、本発明の効果(分離性に優れる)が得られることが確認できた。
また、表1の結果から、本発明の効果は、乳製品やカゼイン塩の種類に左右されるものではなく、「カゼインの含有量」に基づくものであることが確認できた。
なお、サンプル1-1は、カゼインを含まないサンプルであって参考例である。
【0063】
(結果の検討:表2について)
表2は、カゼインナトリウムを使用して、本発明の効果に対する「カゼインの含有量」の影響を確認した結果であり、サンプル2-2からサンプル2-10は、カゼインの含有量の少ないものから多いものの順で並べたものである。
表2の結果から、表1の結果と同様、カゼインの含有量が少量であって乳化安定性が向上していない少量側のサンプル2-2~2-4(特に2-2~2-3)と、カゼインの含有量がかなり多く乳化安定性が低下してしまった多量側のサンプル2-10について、本発明の効果(分離性に優れる)が得られることが確認できた。
なお、サンプル2-1は、カゼインを含まないサンプルであって参考例である。
【0064】
(結果の検討:表3について)
表3のサンプル3-1~3-4は、油脂(乳化植物油脂)を含有していないサンプルである。
これらのサンプル3-1~3-4の結果から、カゼインの含有量がいくらであろうとも、そもそも油脂を含有していない場合は本発明の効果が得られないことが確認できた。
また、表3のサンプル3-5~3-8は、牛乳を使用して、本発明の効果に対する「カゼインの含有量」の影響を確認した結果であり、表1、2の結果と同様、カゼインの含有量が少量であって乳化安定性が向上していない少量側のサンプル3-5について、本発明の効果(分離性に優れる)が得られることが確認できた。
また、表3のサンプル3-9~3-10は、カルシウムを添加したものであるが、マグネシウムを添加したサンプル3-5、3-6と比較すると明らかなように、マグネシウムを添加した場合であろうとカルシウムを添加した場合であろうと同様の傾向となる(カゼインの含有量に応じて本発明の効果が得られる)ことが確認できた。