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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】固定角度ロータ
(51)【国際特許分類】
   B04B 5/02 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B04B5/02 Z
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019148923
(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公開番号】P2020062637
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 120 007.2
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン・クーネルト
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第04014440(DE,C1)
【文献】実開平02-066249(JP,U)
【文献】特表平07-501012(JP,A)
【文献】特表2018-501100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離機(200)のための固定角度ロータ(10;100)であって、ハブ(18;108)とロータ軸(R;R’)とを有するロータ本体(12;102)を有し、前記ハブ(18;108)は前記ロータ軸(R;R’)のまわりに配置され、前記ロータ本体(12;102)では、遠心分離される試料のための少なくとも2つのホルダー(22;104)が前記ロータ軸(R;R’)のまわりに配置され、前記ロータ本体(12;102)は、上側(20;120)と、反対に配置された下側(32;106)とを有し、前記ホルダー(22;104)は前記上側(20;120)に、前記試料を導入するための開口部を有し、
前記固定角度ロータは、前記ロータ本体(12;102)がその下側(32;106)に、少なくとも1つの補強リブ(36、38;114)を有し、
前記少なくとも1つの補強リブ(36;114)のうちの少なくとも1つは、前記ロータ軸(R;R’)に対して径方向に延び、
前記少なくとも1つの補強リブ(36;114)のうちの少なくとも1つは、前記ハブ(18;108)から1つのホルダー(22;104)まで延び、または、前記ハブ(18;108)と前記ホルダー(22;104)とに接続され
前記少なくとも1つの補強リブ(36;114)のうちの少なくとも1つは、前記ホルダー(22;104)の中心軸(Z;Z’)の方向に延びることを特徴とする、固定角度ロータ(10;100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも他の1つ(38)は、前記ロータ軸(R;R’)に対して接線方向に、前記ロータ軸(R;R’)から離間して延びることを特徴とする、請求項1に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも他の1つ(38)は、2つの前記ホルダー(22;104)間に延び、または、2つの前記ホルダー(22;104)と接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも他の1つ(38)は、それぞれの前記ホルダー(22;104)のそれぞれの中心軸(Z;Z’)の方向に延びることを特徴とする、請求項3に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項5】
前記固定角度ロータ(10;100)は、前記ホルダー(22;104)を封入する回転対称形のロータシェル(28;112)を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項6】
前記ホルダー(22;104)は、少なくとも数区域で前記ロータシェル(28;112)に及ぶことを特徴とする、請求項5に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項7】
前記ロータ本体(12;102)はその下側(32;106)に、前記少なくとも1つの補強リブ(36、38;114)に加えて、前記ロータ軸(R;R’)に対して軸方向に延在する、材料を減少させるための少なくとも1つの空洞(42、44;122)を有することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項8】
前記空洞(42、44;122)は、前記ホルダー(22;104)間に配置されることを特徴とする、請求項7に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項9】
前記空洞(42、44;122)は、前記ホルダー(22;104)間の、a)ロータシェル(28)と、隣り合う2つのホルダー(22)の壁(29)と、接線方向に延びる補強リブ(38)との間、および/または、b)接線方向に延びる補強リブ(38)と、径方向に延びる隣り合う2つの補強リブ(36)と、前記ハブ(18)との間、および/または、c)ロータシェル(112)と、隣り合う2つのホルダー(104)の壁(124)と、径方向に延びる隣り合う2つの補強リブ(114)と、前記ハブ(18)との間、に配置されることを特徴とする、請求項8に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項10】
前記空洞(42、44;122)は、少なくとも数区域で、ロータシェル(28;112)まで、および/または、前記ハブ(18;108)まで、および/または、ホルダー(22;104)まで、および/または、ロータ室(16;116)を区切る前記ロータ本体の前記上側(20;120)のカバー面(40;118)まで延在することを特徴とする、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項11】
ロータシェル(28;112)の厚さ、および/または、前記補強リブ(36、38;114)の厚さ、および/または、前記ホルダー(22;104)の壁の厚さ、および/または、前記ロータ本体(12;102)のその上側(20;120)での厚さは、少なくとも数区域で、1cm未満または5mm未満または3mm未満であることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項12】
ロータシェル(28;112)の壁、前記少なくとも2つのホルダー(22;104)の壁(29;124)、および/または前記少なくとも1つの補強リブ(36、38;114)には、前記ロータ本体(12;102)の材料厚さに対する勾配(54;132)が少なくとも数区域で存在することを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項13】
ロータシェル(28;112)の壁、前記少なくとも2つのホルダー(22;104)の壁(29;124)、前記少なくとも1つの補強リブ(36、38;114)、および/または、前記空洞(42、44;122)には、前記ロータ本体(12;102)の材料厚さに対する勾配(54;132)が少なくとも数区域で存在する、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項14】
前記勾配(54;132)は前記ロータ軸(R;R’)に対して軸方向に配置され、前記勾配(54;132)は階段状であることを特徴とする、請求項12または請求項13に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項15】
前記勾配(54;132)の段の幅および/または段の高さは、0.5mm~8mm、1mm~6mmまたは2mm~5mmの範囲にあることを特徴とする、請求項12か14のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項16】
前記ロータ本体(12;102)の前記下側(32;106)は、前記補強リブ(36、38;114)および/または空洞(42、44;122)をカバーするカバー(58;136)を有することを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【請求項17】
前記ホルダー(42、44;122)は、遠心分離される前記試料を挿入するための開口部以外は閉鎖されるように構成されることを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の固定角度ロータ(10;100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1の前文に従った固定角度ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機ロータは、遠心分離機、特に実験用遠心分離機で使用され、質量慣性を利用することによってそこで遠心分離された試料の成分を分離する。そうする際、速い分離速度を達成するために、ますますより速い回転速度が使用される。実験用遠心分離機とは、その遠心分離機ロータが、好ましくは少なくとも3,000rpm(毎分回転数)、好ましくは少なくとも10,000rpm、特に少なくとも15,000rpmで動作する遠心分離機であり、通常、台の上に置かれる。それらを作業台に置くことを可能にするために、それらは特に1m×1m×1m未満の形状因子を有し、このため、それらの設置空間は制限される。好ましくは、装置深さは最大70cmに制限される。しかしながら、据置型の遠心分離機(すなわち、それらは、それらを部屋の床に置くことを可能にするために、1m~1.5mの範囲の高さを有する)として形成された実験用遠心分離機も、既知である。
【0003】
そのような遠心分離機は、医学、薬学、生物学、および化学の分野で使用される。
遠心分離される試料は試料容器に保管され、そのような試料容器は遠心分離機ロータによって回転される。遠心分離機ロータは典型的には、電気モータによって駆動される垂直駆動シャフトによって回転するよう設置される。遠心分離機ロータと駆動シャフトとの結合は典型的には、遠心分離機ロータのハブによってもたらされる。
【0004】
用途に応じて異なる遠心分離機ロータが使用される。試料容器は試料を直接含んでもよく、または、1つの試料容器内で多数の試料が同時に遠心分離され得るように、試料を含む個々の試料受けが試料容器に挿入される。一般に、固定角度ロータ、スイングアウトロータなどの形態の遠心分離機ロータが既知であり、この発明は、ロータ本体における試料用ホルダーが、典型的には傾斜したロータ軸に対して固定角度で配置されている固定角度ロータに基づいている。より正確には、傾斜はホルダーの開口部から外側に延びる。そのような固定角度ロータは、たとえばDE 38 06 284 C1から既知である。
【0005】
問題は、固定角度ロータの自重により、所望のより速い速度がさらにより高いモータパワーを必要とし、安全上の理由でスチール、チタン、およびアルミニウムなどの高強度材料を使用しなければならない、ということである。
【0006】
繊維複合材料を使用することは、たとえばDE 102 33 536 A1からすでに既知であるが、それによって可能になる重量減少は少なく、ロータ重量は依然として非常に重いため、回転速度を著しく増加させることはできない。
【0007】
この問題を解決するために、多孔性金属からロータ本体を製造し、外部強化材を提供することが、DE 10 2011 107 667 A1で提案された。これはロータ質量がさらに減少されることを可能にし、同じモータパワーで回転速度を向上させるが、強化材は、遠心分離機ロータの外半径上の質量、ひいては運動エネルギーを増加させ、万一衝突が発生した場合に高い衝突エネルギーをもたらし、それは、遠心分離機の遠心分離機容器を包囲する衝突防止を強化することによって補償されるべき安全上のリスクとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】DE 38 06 284 C1
【文献】DE 102 33 536 A1
【文献】DE 10 2011 107 667 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、この発明の目的は、そのような欠点を回避するために固定角度ロータを提案することである。好ましくは、その回転エネルギーは、安全性を高めるためにできるだけ少ないものであるべきであり、遠心分離機ロータを駆動するために必要とされる駆動力は、できるだけ少ないままであるべきである。特に、固定角度ロータは、長時間にわたって極度の負荷に耐え得るべきであり、低コストで製造されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1のような発明に従った固定角度ロータを用いて解決される。有利な追加の形態が、従属請求項および以下の説明において図面とともに示される。
【0011】
発明者は、少なくとも1つの補強リブがロータ本体の下側に配置されれば、この目的が驚くほど単純な方法で解決され得ると認識した。なぜなら、このことは、ロータ本体自体の材料がより少なければ、高速でもロータ本体の構造安定性を保証するためである。
【0012】
この発明の枠組みでは、「補強リブ」とは、ロータ本体の構造安定性を高めるよう機能する物理的なリブまたは棒である。これらのリブまたは棒は、少なくとも1つの長い側面と1つの狭い側面とを有し、それらの長い側面がロータ本体の2つの区域間に連続的に存在する状態で延びている。それらはまた、追加の側面が長い側面とロータ本体との間に存在する状態で延びていてもよいが、そうである必要はない。なぜなら、それらはまた、中空となるように形成されてもよいためである。
【0013】
遠心分離機、特に実験用遠心分離機のための、この発明に係る固定角度ロータは、ハブとロータ軸とを有するロータ本体を有し、ハブはロータ軸のまわりに配置され、ロータ本体内に、遠心分離される試料のための少なくとも2つのホルダーがロータ軸のまわりに配置され、ロータ本体は、上側と、反対に配置された下側とを有し、ホルダーは上側に、試料を導入するための開口部を有し、固定角度ロータは、ロータ本体がその下側に、少なくとも1つの補強リブを有することを特徴とする。
【0014】
1つの有利な追加の形態では、少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも1つは、ロータ軸に対して径方向に延び、有利にはホルダーの方向に延び、特にホルダーの中心軸の方向に延びる、ということが提供される。これは、遠心力が特に十分支持されることを可能にする。この文脈では、「中心軸」とは、遠心分離される試料が挿入される際に沿う仮想中心線である。
【0015】
1つの有利な追加の形態では、少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも1つは、1つのホルダーとハブとの間に延び、有利にはホルダーおよびハブと接続される、ということが提供される。この場合、とりわけ、ロータ本体の周囲に関するホルダーの区域に、その隣りよりも多くのロータ本体材料があるならば、遠心力に関して遠心分離機ロータの特別の構造安定性が存在する。
【0016】
1つの有利な追加の形態では、少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも1つは、ロータ軸に対して接線方向に、ロータ軸から離間して延びる、ということが提供される。これは、加速および減速中に力が特に十分支持されることを可能にする。
【0017】
1つの有利な追加の形態では、少なくとも1つの補強リブのうちの少なくとも1つは、2つのホルダー間に延び、有利には2つのホルダーと接続され、特にそれぞれのホルダーのそれぞれの中心軸の方向に延びる、ということが提供される。この場合、とりわけ、ロータ本体の周囲に関するホルダーの区域に、その隣りよりも多くのロータ本体材料があるならば、加速および減速中に作用する力に関して遠心分離機ロータの特別の構造安定性が存在する。
【0018】
1つの有利な追加の形態では、固定角度ロータは、ホルダーを封入する回転対称形のロータシェルを有する、ということが提供される。これは、遠心分離機ロータが空気力学的に封入され、周囲の流体に対する流れ抵抗をほとんど与えない、ということを意味する。
【0019】
1つの有利な追加の形態では、ホルダーは、少なくとも数区域でロータシェルに及ぶ、ということが提供される。この場合、ホルダーを包囲する材料が少なくても、ロータ本体は構造の点で非常に安定している。
【0020】
1つの有利な追加の形態では、ロータ本体はその下側に、少なくとも1つの補強リブに加えて、ロータ軸に対して軸方向に延在する、材料を減少させるための少なくとも1つの空洞を有する、ということが提供される。その結果、固定角度ロータはより少ない質量を有し、それにもかかわらず十分に高い構造安定性を有し、必要とされる駆動力がより少なくなっている。加えて、動作中に固定角度ロータに蓄えられる運動エネルギーは、より少ない。空洞は好ましくは、ホルダー間、特に、a)ロータシェルと、隣り合う2つのホルダーの壁と、接線方向に延びる補強リブとの間、または、b)接線方向に延びる補強リブと、径方向に延びる隣り合う2つの補強リブと、ハブとの間、または、c)ロータシェルと、隣り合う2つのホルダーの壁と、径方向に延びる隣り合う2つの補強リブと、ハブとの間、に配置される。
【0021】
1つの有利な追加の形態では、空洞は、少なくとも数区域で、ロータシェルまで、および/または、ハブまで、および/または、ホルダーまで、および/または、ロータ室を区切るロータ本体の上側のカバー面まで、特にそのような要素を突き破ることなく延在する、ということが提供される。
【0022】
1つの有利な追加の形態では、ロータシェルの厚さ、および/または、補強リブの厚さ、および/または、ホルダーの壁の厚さ、および/または、ロータ本体のその上側での厚さは、少なくとも数区域で、1cm未満、好ましくは5mm未満、特に3mm未満、好ましくは1.5mmである、ということが提供される。その結果、固定角度ロータは依然として、構造の点で特に安定しているが、非常に少ない質量を有する。
【0023】
1つの有利な追加の形態では、ロータシェルの壁、少なくとも2つのホルダーの壁、少なくとも1つの補強リブ、および/または、空洞には、ロータ本体の材料厚さに対する勾配が少なくとも数区域で存在し、これは好ましくはロータ軸に対して軸方向に配置され、勾配は特に階段状である、ということが提供される。この勾配は特に、ロータ軸に対して傾斜する少なくとも数区域で設けられる。これは、ロータ本体の特に安定した補強をもたらし、それが最高負荷にさえ耐え得るようになっている。
【0024】
1つの有利な追加の形態では、勾配の段の幅および/または段の高さは、0.5mm~8mmの範囲、好ましくは1mm~6mmの範囲、特に2mm~5mmの範囲にある、ということが提供される。そのような段の寸法が小さくなるほど、固定角度ロータはより軽量になるが、補強効果もより小さくなる。そのような段の寸法が小さくなるほど、製造労力もより大きくなる。対照的に、段寸法が大きくなるほど、固定角度ロータの重量はより重くなる。特定された範囲については、安定性は十分高く、それにもかかわらず製造労力は少ない、十分な重量減少が存在する。
【0025】
1つの有利な追加の形態では、ロータ本体の下側は、補強リブおよび/または空洞をカバーするカバーを有し、それにより、固定角度ロータは、補強リブおよび/または空洞にもかかわらず、空気力学の点で非常に都合よく形成される、ということが提供される。これは風騒音を回避して風の抵抗を著しく減少させ、それは消費電力を減少させる。加えて、閉鎖された固定角度ロータがカバーによって生成され、それは触覚および清浄性を促進する。カバーは好ましくは、ロータ本体にクランプされ、および/またはねじ留めされる。
【0026】
1つの有利な追加の形態では、ホルダーは、遠心分離される試料を挿入するための開口部以外は閉鎖されるように構成される、ということが提供される。その結果、固定角度ロータは良好な清浄性および安定性を有する。
【0027】
この発明の特徴および追加の利点を、図面と関連する好ましい例示的な実施形態の説明に基づいて以下に説明する。それにより、以下の事項は単に概略的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の好ましい実施形態に従ったこの発明に係る固定角度ロータの、上からの斜視図である。
図2図1に従ったこの発明に係る固定角度ロータの、下からの斜視図である。
図3図1に従ったこの発明に係る固定角度ロータの、下からの平面図である。
図4図1に従ったこの発明に係る固定角度ロータの断面図である。
図5】第2の好ましい実施形態に従ったこの発明に係る固定角度ロータの、上からの斜視図である。
図6図5に従ったこの発明に従った固定角度ロータの、下からの斜視図である。
図7図5に従ったこの発明に係る固定角度ロータの、下からの平面図である。
図8図5に従ったこの発明に係る固定角度ロータの断面図である。
図9】この発明に係る固定角度ロータを装備した遠心分離機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1~4は、第1の好ましい設計におけるこの発明に係る固定角度ロータ10を示す。
固定角度ロータ10はロータ本体12とカバー14とを有し、それらはそれらの間でロータ室16を封入する、ということが見て分かる。ロータ本体12はハブ18を有し、それは、ロータ軸Rに沿って延在し、実験用遠心分離機の遠心分離機モータの駆動シャフトと通常の態様で結合するよう機能するため、より詳細に図示される必要はない。
【0030】
ロータ本体12では、その上側20にホルダー22が配置され、そこに、遠心分離される試料を有する試料容器が通常の態様で挿入され、遠心分離され得る。試料容器はロータ室16と対応している。ロータ本体12とカバー14との間にはシール23が設けられる。それにより、カバー14とロータ本体12との間の防振が生じ、それは起こり得るガタつきを防止する。シール23が好適に形成されれば、ロータ室16を、固定角度ロータ10の周囲区域24に対して、浮遊粒子が中に入らない態様で密閉することも可能である。
【0031】
ロータ本体12の外周26に関し、ロータ本体12はロータシェル28によって区切られる。ロータシェル28は回転対称となるように形成され、このため遠心分離機ロータを空気力学的に封入する。それにより、実験用遠心分離機における固定角度ロータ10は、周囲の流体に対する流れ抵抗をほとんど与えない。
【0032】
ホルダー22の壁29が少なくとも数区域でロータシェル28と併合し、よってロータシェル28は、ロータシェル28がホルダー22と接線方向に接する区域30で壁29を直接形成することも、見て分かる。ホルダー22の壁29は、遠心分離される試料を挿入するための開口部以外は閉鎖されるように構成される。
【0033】
さらに、ロータ本体12はその下側32に多数の補強リブ36、38を有し、それはハブ18とロータシェル28の下縁34との間に延在する。それにより、第1のタイプの補強リブ36は、ホルダー22とハブ18との間でロータ軸Rに対して径方向に延びている。この補強リブ36はハブ18とホルダー22とを接続し、ホルダー22の中心軸Zの方向に延びる。第2のタイプの補強リブ38は、隣り合うホルダー22間でロータ軸Rに対して接線方向に、すなわちロータ軸Rから離間して延びる。第2のタイプの補強リブ38は2つのホルダー22の各々と接続され、それぞれのホルダー22のそれぞれの中心軸Zの方向に延びる。双方の補強リブ36、38は、ロータ室16を区切るロータ本体12の下側32からロータ本体12の上側20のカバー面40まで延在する。
【0034】
加えて、ロータ本体12はその下側32に、材料を減少させるための多数の空洞42、44を有する。第1のタイプの空洞42は、ロータシェル28と、隣り合う2つのホルダー22の壁29と、第2のタイプの補強リブ38との間に配置される。第2のタイプの空洞44は、第2のタイプの補強リブ38と、隣り合う2つの第1のタイプの補強リブ36と、ハブ18との間に配置される。双方のタイプの空洞は各々、ロータ室16を区切るロータ本体12の下側32からロータ本体12の上側20のカバー面40まで延在する。
【0035】
壁厚は、それらが概して、ロータシェル28については1.7mm、第1のタイプの補強リブ36については6mm、第2のタイプの補強リブ38については5mmになるように形成される。空洞42、44の区域におけるカバー面40の壁厚は、5mm未満、好ましくは1.5mmになる。
【0036】
材料を減少させるための空洞42、44を補強リブ36、38およびロータシェル28と組合せることにより、固定角度ロータ10は、非常に少ない質量を有するものの、構造の点で特に安定しており、必要とされる駆動力がより少ない。加えて、動作中に固定角度ロータ10に蓄えられる運動エネルギーは、比較的少ない。
【0037】
そのような高い構造安定性は、ロータシェル28の内壁46、ホルダー22の壁29、およびホルダー22の壁29と補強リブ36、38との間の移行部48、50、ならびに空洞42、44に、ロータ軸Rに対して軸方向に配置された勾配54が設けられるという事実によってさらに高められる。それにより、勾配54は階段状になるように形成され、段の幅および段の高さは各々、5mmになる。一方、ホルダー22の下側56には、そのような勾配54が設けられていない。この勾配54は、ロータ本体12の特に安定した補強をもたらし、それが重量の節約にもかかわらず最高負荷に耐え得るようになっている。勾配54はまた、階段状(非連続的)の代わりに連続的に形成されてもよい。
【0038】
加えて、固定角度ロータ10は下部カバー58を有する。下部カバー58は、ハブ18の継手60によってロータ本体12の下側32に固定(クランプ)され、ロータシェル28の突起61上で横方向に支持される(よりよい理解のために、このカバー58は図2および図3には示されていない)。そのようなカバー58を与えられて、補強リブ36、38と空洞42、44とが設けられた固定角度ロータ10は、それにもかかわらず空気力学の点で非常に都合よく形成され、以前の固定角度ロータよりも著しく少ない総重量を有する。
【0039】
図5~8は、この発明に係る固定角度ロータ100の第2の好ましい設計を示す。第1の好ましい設計の固定角度ロータ10との類似点がいくつかあり、相違点のみについて以下に述べる。
【0040】
この固定角度ロータ100では、ロータ本体102は、6個だけではなく10個のより小さい試料用ホルダー104を有する、ということが見て分かる。
【0041】
さらに、ロータ本体102はその下側106に多数の補強リブ114を有し、それはハブ108とロータシェル112の下縁110との間に延在する。しかしながら、補強リブ114のタイプは1つだけであり、それは、ホルダー104と中心ハブ108との間でロータ軸R’に対して径方向に延在し、ロータ室116を区切るロータ本体102の下側106から上側120のカバー面118まで軸方向に延在する。この補強リブ114はまた、ハブ108とホルダー104との間に延び、補強リ114は各々、ハブ108およびホルダー104と接続され、それぞれのホルダー104の中心軸Zの方向に延びる。
【0042】
従って、ロータ本体102には、材料を減少させるための空洞122のタイプも1つだけある。そのような空洞122は、ロータシェル112と、隣り合う2つのホルダー104の壁124と、隣り合う補強リブ114と、ハブ108との間に配置され、ロータ室116を区切るロータ本体102の下側106からロータ本体102の上側120のカバー面118まで延在する。
【0043】
壁厚は、それらが概して、ロータシェル112については1.7mm、補強リブ114については7mm、空洞122の区域におけるカバー面118については5mm未満、好ましくは1.5mmになるように形成される。
【0044】
この固定角度ロータ100も、材料を減少させるための空洞122と補強リブ114およびロータシェル112との組合せにより、非常に少ない質量を有するが、それにもかかわらず構造の点で特に安定しており、必要とされる駆動力がより少ない。加えて、動作中に固定角度ロータ100に蓄えられる運動エネルギーは、比較的少ない。
【0045】
この高い構造安定性は、ロータシェル112の壁126、ホルダー104の壁124、ホルダー104の壁124とロータシェル112との間の移行部128、および補強リブ114とハブ108との間の移行部130、ならびに空洞122に、ロータ軸R’に対して軸方向に配置された勾配132が設けられるという事実によってさらに高められる。それにより、勾配132は同様に階段状になるように形成され、段の幅および段の高さは各々、2mmになる。一方、ホルダー102の下側134には、そのような勾配132が設けられていない。この勾配132は、ロータ本体102の特に安定した補強をもたらし、それが重量の節約にもかかわらず最高負荷に耐え得るようになっている。
【0046】
加えて、固定角度ロータ100は下部カバー136を有する。下部カバー136は、ねじ接続(図示せず)によってロータ本体102の下側106に固定され、ロータシェル112の突起138上で横方向に支持される(よりよい理解のために、このカバー136は図6および図7には示されていない)。そのようなカバー136を与えられて、補強リブ114と空洞122とが設けられた固定角度ロータ100は、それにもかかわらず空気力学の点で非常に都合よく形成され、以前の固定角度ロータよりも著しく少ない総重量を有する。
【0047】
双方の固定角度ロータ10、100では、ロータ本体12、102は、たとえば、CNC機械加工によってブランクから(たとえば、アルミニウムまたはスチール製の丸い材料または落とし鍛造部品から)ロータ本体12、102をフライス加工し、旋削することにより、1つの部品として製造されてもよい。それに代えて、ハブ18、108が独立して製造されてロータ本体12、102に挿入される(たとえばねじ込まれる)複数部品製造もあってもよい。
【0048】
補強リブ36、38、114の各々が長い側面62、140と狭い側面64、142とを有する、ということが見て分かる。それらはまた、長い側面62、140とロータ本体12、102との間に連続的に延びる1つの追加の側面66、144を有する。それに代えて、追加の側面66、144が長い側面62、140とロータ本体12、102との間に連続的に形成されず、それにより、補強リブ36、38、114は中空となり、隣り合う空洞が互いに連通するものの、これも著しく減少した質量での構造安定性の向上をもたらすであろう、ということも提供されてもよい。
【0049】
図9は、この発明に係る固定角度ロータ10を装備した実験用遠心分離機200を示す。
【0050】
この実験用遠心分離機200は通常の態様で形成されており、コントロールパネル206が前側204に配置されているハウジング202と、遠心分離機容器210を閉鎖するために設けられるカバー208とを含む、ということが見て分かる。遠心分離機モータのシャフト(双方とも図示せず)によって駆動され得る固定角度ロータ10は、遠心分離機容器210に配置される。
【0051】
前述の説明から、この発明が、高速での動作中でも回転エネルギーが比較的少なく、それにより、固定角度ロータを装備した遠心分離機において強化された外装容器を必要とすることなく安全性が著しく高められる、遠心分離機200のための固定角度ロータ10、100を提供する、ということが明らかになっている。同時に、固定角度ロータ10、100を駆動するために必要とされる駆動力は、少ないままである。固定角度ロータ10、100はまた、長時間にわたって極度の負荷に耐える。加えて、固定角度ロータ10、100は、追加の構成部品が必要ないため、コスト効率良く製造可能である。むしろ、ロータ本体12、102の製造中に補強リブ36、38、114を製造することも可能である。最後に、非常に薄いロータシェル28、112を使用することも可能であり、それは試料の温度制御を向上させる。なぜなら、固定角度ロータは、特に主負荷方向において非常に良好な構造安定性を有するためである。
【0052】
別段の指示がない限り、この発明の特徴はすべて、自由に組合されてもよい。また、図面の説明で説明された特徴は、別段の指示がない限り、この発明の特徴としての他の特徴と自由に組合されてもよい。例示的な実施形態の個々の特徴を、例示的な実施形態の他の特徴との組合せに限定することは明らかに、提供されていない。加えて、言い換えられた表現特徴はまた、手続特徴として使用されてもよく、言い換えられた手続特徴は、表現特徴として使用されてもよい。そのような改良も、このように自動的に開示される。
【符号の説明】
【0053】
参照符号のリスト
10:第1の好ましい設計におけるこの発明に係る固定角度ロータ、12:ロータ本体、14:カバー、16:ロータ室、18:ハブ、20:ロータ本体の上側、22:ホルダー、23:カバー14とロータ本体12との間のシール、24:固定角度ロータ10の周囲区域、26:ロータ本体12の外周、28:ロータシェル、29:ホルダー22の壁、30:ロータシェル28がホルダー22と接線方向に接するロータシェル28の区域、32:ロータ本体12の下側、34:ロータシェル28の下縁、36:第1のタイプの補強リブ、38:第2のタイプの補強リブ、40:ロータ室16を区切る上側20のカバー面、42:ロータ本体12における第1のタイプの空洞、44:ロータ本体12における第2のタイプの空洞、46:ロータシェル28の壁、48:ホルダー22の壁29と補強リブ36との間の移行部、50:ホルダー22の壁29と補強リブ38との間の移行部、54:勾配、56:ホルダー22の下側、58:下部カバー、60:継手、61:ロータシェル28の突起、62:補強リブ36、38の長い側面、64:補強リブ36、38の狭い側面、66:補強リブ36、38の追加の側面、100:第2の好ましい設計におけるこの発明に係る固定角度ロータ100、102:ロータ本体、104:ホルダー、106:ロータ本体の下側、108:ハブ、110:ロータシェル112の下縁、112:ロータシェル、114:補強リブ、116:ロータ室、118:上側120のカバー面、120:上側、122:ロータ本体102における空洞、124:ホルダー104の壁、126:ロータシェル112の壁、128:ホルダー104の壁124と補強リブ114との間の移行部、130:補強リブ114とハブ108との間の移行部、132:勾配、134:ホルダー102の下側、136:下部カバー、138:ロータシェル112の突起、140:補強リブ114の長い側面、142:補強リブ114の狭い側面、144:補強リブ114の追加の側面、200:実験用遠心分離機、202:ハウジング、204:ハウジング202の前側、206:コントロールパネル、208:カバー、210:遠心分離機容器、R:ロータ軸、R’:ロータ軸、Z:ホルダー22の中心軸、Z’:ホルダー104の中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9