(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】医療システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/67 20180101AFI20240208BHJP
【FI】
G16H40/67
(21)【出願番号】P 2019165875
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】清水 仁
(72)【発明者】
【氏名】塚田 央
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088917(JP,A)
【文献】特開2017-012519(JP,A)
【文献】特開2015-210765(JP,A)
【文献】特開2007-328552(JP,A)
【文献】特開2016-129058(JP,A)
【文献】特開2009-211236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0225596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療検査が施された被検者の認証情報と前記医療検査により前記被検者から取得された検査データと
被検者に施された医療検査に対応する時間情報とを含む医療情報を記憶した可搬型記憶装置と、
通信ネットワークに接続された第1情報処理装置と、
前記通信ネットワークの利用可能エリアに移動した前記可搬型記憶装置に記憶された前記医療情報の少なくとも一部を、前記通信ネットワークを介して前記第1情報処理装置に送信する通信装置と
を含み、
前記通信装置は、前記認証情報とともに
前記時間情報を前記第1情報処理装置に送信し、
前記第1情報処理装置は、
被検者毎の識別子を介して少なくとも認証情報、検査データ及び検査歴を管理する医療情報データベースと、
前記通信装置から送信された前記認証情報を前記医療情報データベースと照合する第1照合部と、
前記時間情報を前記医療情報データベースと照合する第2照合部と
を含む、
医療システム。
【請求項2】
前記利用可能エリアに設置され、前記可搬型記憶装置に記憶された情報を受け付ける受付装置と、前記通信装置とを含む第2情報処理装置を更に含む、
請求項1の医療システム。
【請求項3】
前記可搬型記憶装置は、携帯情報端末に搭載された記憶手段であり、
前記通信装置は、前記携帯情報端末に搭載された通信手段である、
請求項1の医療システム。
【請求項4】
前記認証情報に対応する認証情報が前記医療情報データベースに含まれていないとの照合結果が前記第1照合部により得られた場合、前記通信装置は、当該認証情報に関連付けられた検査データを前記第1情報処理装置に送信し、
前記第1情報処理装置は、当該検査データを前記医療情報データベースに保存する、
請求項1の医療システム。
【請求項5】
前記第1情報処理装置は、前記照合結果が得られた場合に、識別子を発行し、前記通信装置から送信された前記認証情報及び前記検査データを当該識別子に関連付けて前記医療情報データベースに保存する、
請求項4の医療システム。
【請求項6】
前記照合結果が得られた場合、前記第1情報処理装置は、発行された前記識別子と前記通信装置から送信された前記認証情報とを前記通信装置に送信し、
前記通信装置は、前記可搬型記憶装置に記憶された検査データのうち、前記第1情報処理装置から送信された前記認証情報に対応する検査データを、前記第1情報処理装置から送信された前記識別子とともに前記第1情報処理装置に送信し、
前記第1情報処理装置は、前記通信装置から送信された前記識別子を参照して当該検査データを医療情報データベースに保存する、
請求項5の医療システム。
【請求項7】
前記通信装置から前記第1情報処理装置に送信された検査データは、前記可搬型記憶装置から削除される、
請求項4~6のいずれかの医療システム。
【請求項8】
前記第2照合部は、前記認証情報に対応する認証情報が前記医療情報データベースに含まれているとの照合結果が前記第1照合部により得られた場合に、前記時間情報を前記医療情報データベースと照合する、
請求項1の医療システム。
【請求項9】
前記時間情報に対応する検査歴が前記医療情報データベースに含まれていないとの照合結果が前記第2照合部により得られた場合、前記通信装置は、当該時間情報に関連付けられた検査データを前記第1情報処理装置に送信し、
前記第1情報処理装置は、当該検査データを前記医療情報データベースに保存する、
請求項8の医療システム。
【請求項10】
前記第1情報処理装置は、前記時間情報に基づいて検査歴を更新する、
請求項9の医療システム。
【請求項11】
前記通信装置から前記第1情報処理装置に送信された検査データは、前記可搬型記憶装置から削除される、
請求項9又は10の医療システム。
【請求項12】
前記時間情報に対応する検査歴が前記医療情報データベースに含まれているとの照合結果が前記第2照合部により得られた場合、当該時間情報に関連付けられた検査データは、前記可搬型記憶装置から削除される、
請求項8の医療システム。
【請求項13】
前記時間情報を生成する時間情報生成手段を更に含む、
請求項1~12のいずれかの医療システム。
【請求項14】
前記時間情報生成手段は、被検者に医療検査が施された日付を前記時間情報として生成する、
請求項13の医療システム。
【請求項15】
前記時間情報生成手段は、前記通信装置に提供するために前記可搬型記憶装置から医療情報の少なくとも一部が読み出された日付を前記時間情報として生成する、
請求項13の医療システム。
【請求項16】
前記時間情報生成手段は、前記通信装置が医療情報の少なくとも一部を前記第1情報処理装置に送信した日付を前記時間情報として生成する、
請求項13の医療システム。
【請求項17】
前記通信装置は、前記可搬型記憶装置に記憶されている認証情報それぞれを前記第1情報処理装置に送信し、
前記第1照合部は、前記通信装置から送信された前記認証情報それぞれを前記医療情報データベースと照合する、
請求項1~16のいずれかの医療システム。
【請求項18】
医療検査装置を更に含み、
前記可搬型記憶装置は、前記医療検査装置により取得された検査データを記憶する、
請求項1~17のいずれかの医療システム。
【請求項19】
前記医療検査装置は、眼科装置である、
請求項18の医療システム。
【請求項20】
前記眼科装置は、スリットランプ顕微鏡である、
請求項19の医療システム。
【請求項21】
前記スリットランプ顕微鏡は、被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして画像群を収集するスキャン部を含み、
前記検査データは、前記画像群を含む、
請求項20の医療システム。
【請求項22】
被検者に施された医療検査に対応する認証情報を生成する認証情報生成手段を更に含む、
請求項1~21のいずれかの医療システム。
【請求項23】
前記認証情報生成手段は、被検者の生体情報を取得する、
請求項22の医療システム。
【請求項24】
前記認証情報生成手段は、生体情報として前眼部画像を取得する、
請求項23の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
出張検診や巡回検診や訪問診療のように、医療機関等の外部において検査や診療が行われることがある。このような医療形態をまとめて「出張検査」と呼ぶことにする。出張検査に利用可能な技術として特許文献1~5に開示されたものが知られている。
【0003】
これらの従来技術は、出張先で使用される医療機器が直接的又は間接的に通信回線に接続されていることが前提となっている。換言すると、これらの従来技術は、ネットワーク環境(通信環境)が良好な地域において出張検査を行うことが前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-306430号公報
【文献】特開2006-271763号公報
【文献】特開2014-26410号公報
【文献】特開2018-27260号公報
【文献】特開2019-16080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ネットワーク環境が悪い地域で出張検査を行う場合も想定される。このような地域として、過疎地、未開発地、災害地、先住民居住地、開発途上国などが挙げられる。これらの地域で実施される出張検査において前述の従来技術を利用することは困難と言える。
【0006】
なお、通信衛星を利用することが考えられるが、医用画像等の医療情報はデータサイズが非常に大きいため、コストやデータトラフィックの観点から実用的とは言えない。更に、個人情報保護の観点からも問題があると言える。
【0007】
本発明の目的は、ネットワーク環境が悪い地域での出張検査にも好適に利用可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムは、医療検査が施された被検者の認証情報と前記医療検査により前記被検者から取得された検査データとを含む医療情報を記憶した可搬型記憶装置と、通信ネットワークに接続された第1情報処理装置と、前記通信ネットワークの利用可能エリアに移動した前記可搬型記憶装置に記憶された前記医療情報の少なくとも一部を、前記通信ネットワークを介して前記第1情報処理装置に送信する通信装置とを含む。
【0009】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムは、前記利用可能エリアに設置され、前記可搬型記憶装置に記憶された情報を受け付ける受付装置と、前記通信装置とを含む第2情報処理装置を更に含んでいてよい。
【0010】
幾つかの例示的な態様において、前記可搬型記憶装置は、携帯情報端末に搭載された記憶手段であってよく、前記通信装置は、前記携帯情報端末に搭載された通信手段であってよい。
【0011】
幾つかの例示的な態様において、前記通信装置は、前記認証情報を前記第1情報処理装置に送信してよく、前記第1情報処理装置は、被検者毎の識別子を介して少なくとも認証情報及び検査データを管理する医療情報データベースと、前記通信装置から送信された前記認証情報を前記医療情報データベースと照合する第1照合部とを含んでいてよい。
【0012】
幾つかの例示的な態様において、前記認証情報に対応する認証情報が前記医療情報データベースに含まれていないとの照合結果が前記第1照合部により得られた場合、前記通信装置は、当該認証情報に関連付けられた検査データを前記第1情報処理装置に送信してよく、前記第1情報処理装置は、当該検査データを前記医療情報データベースに保存してよい。
【0013】
幾つかの例示的な態様において、前記第1情報処理装置は、前記照合結果が得られた場合に、識別子を発行してよく、且つ、前記通信装置から送信された前記認証情報及び前記検査データを当該識別子に関連付けて前記医療情報データベースに保存してよい。
【0014】
幾つかの例示的な態様において、前記照合結果が得られた場合、前記第1情報処理装置は、発行された前記識別子と前記通信装置から送信された前記認証情報とを前記通信装置に送信してよく、前記通信装置は、前記可搬型記憶装置に記憶された検査データのうち、前記第1情報処理装置から送信された前記認証情報に対応する検査データを、前記第1情報処理装置から送信された前記識別子とともに前記第1情報処理装置に送信してよく、更に、前記第1情報処理装置は、前記通信装置から送信された前記識別子を参照して当該検査データを医療情報データベースに保存してよい。
【0015】
幾つかの例示的な態様において、前記通信装置から前記第1情報処理装置に送信された検査データは、前記可搬型記憶装置から削除されてよい。
【0016】
幾つかの例示的な態様において、前記通信装置は、前記認証情報とともに時間情報を前記第1情報処理装置に送信してよく、前記医療情報データベースは、被検者毎の識別子を介して少なくとも認証情報、検査データ及び検査歴を管理してよく、前記第1情報処理装置は、前記時間情報を前記医療情報データベースと照合する第2照合部を含んでよい。
【0017】
幾つかの例示的な態様において、前記第2照合部は、前記認証情報に対応する認証情報が前記医療情報データベースに含まれているとの照合結果が前記第1照合部により得られた場合に、前記時間情報を前記医療情報データベースと照合してよい。
【0018】
幾つかの例示的な態様において、前記時間情報に対応する検査歴が前記医療情報データベースに含まれていないとの照合結果が前記第2照合部により得られた場合、前記通信装置は、当該時間情報に関連付けられた検査データを前記第1情報処理装置に送信してよく、且つ、前記第1情報処理装置は、当該検査データを前記医療情報データベースに保存してよい。
【0019】
幾つかの例示的な態様において、前記第1情報処理装置は、前記時間情報に基づいて検査歴を更新してよい。
【0020】
幾つかの例示的な態様において、前記通信装置から前記第1情報処理装置に送信された検査データは、前記可搬型記憶装置から削除されてよい。
【0021】
幾つかの例示的な態様において、前記時間情報に対応する検査歴が前記医療情報データベースに含まれているとの照合結果が前記第2照合部により得られた場合、当該時間情報に関連付けられた検査データは、前記可搬型記憶装置から削除されてよい。
【0022】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムは、被検者に施された医療検査に対応する時間情報を生成する時間情報生成手段を更に含んでいてよい。
【0023】
幾つかの例示的な態様において、前記時間情報生成手段は、被検者に医療検査が施された日付を前記時間情報として生成してよい。
【0024】
幾つかの例示的な態様において、前記時間情報生成手段は、前記通信装置に提供するために前記可搬型記憶装置から医療情報の少なくとも一部が読み出された日付を前記時間情報として生成してよい。
【0025】
幾つかの例示的な態様において、前記時間情報生成手段は、前記通信装置が医療情報の少なくとも一部を前記第1情報処理装置に送信した日付を前記時間情報として生成してよい。
【0026】
幾つかの例示的な態様において、前記通信装置は、前記可搬型記憶装置に記憶されている認証情報それぞれを前記第1情報処理装置に送信してよく、前記第1照合部は、前記通信装置から送信された前記認証情報それぞれを前記医療情報データベースと照合してよい。
【0027】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムは、医療検査装置を更に含んでよく、且つ、前記可搬型記憶装置は、前記医療検査装置により取得された検査データを記憶してよい。
【0028】
幾つかの例示的な態様において、前記医療検査装置は、眼科装置であってよい。
【0029】
幾つかの例示的な態様において、前記眼科装置は、スリットランプ顕微鏡であってよい。
【0030】
幾つかの例示的な態様において、前記スリットランプ顕微鏡は、被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして画像群を収集するスキャン部を含んでよく、前記検査データは、前記画像群を含んでよい。
【0031】
幾つかの例示的な態様において、被検者に施された医療検査に対応する認証情報を生成する認証情報生成手段を更に含んでよい。
【0032】
幾つかの例示的な態様において、前記認証情報生成手段は、被検者の生体情報を取得してよい。
【0033】
幾つかの例示的な態様において、前記認証情報生成手段は、生体情報として前眼部画像を取得してよい。
【発明の効果】
【0034】
例示的な態様によれば、ネットワーク環境が悪い地域での出張検査にも好適に利用可能な技術を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図2】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図3A】例示的な態様に係る医療システムの動作を説明するための概略図である。
【
図3B】例示的な態様に係る医療システムの動作を説明するための概略図である。
【
図4】例示的な態様に係る医療システムの動作を説明するための概略図である。
【
図5】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図6】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図7A】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図7B】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図8A】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図8B】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図8C】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図8D】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図8E】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図9A】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図9B】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図10A】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図10B】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図10C】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図10D】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図10E】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図11A】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図11B】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図11C】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【
図12】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図13】例示的な態様に係る医療システムの構成を表す概略図である。
【
図14】例示的な態様に係る医療システムの動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
幾つかの例示的な態様について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書にて引用した文献に開示された事項などの任意の公知技術を例示的な態様に組み合わせることができる。
【0037】
例示的な態様に係る医療システムは、ネットワーク環境が良好な地域、すなわち、当該システムにて扱われる情報(医療情報等)の通信を好適に行える地域での出張検査での利用だけでなく、ネットワーク環境が良好でない地域での出張検査にも利用可能である。なお、以下に説明される例示的な態様に係る医療システムの利用分野は出張検査であるが、その利用分野は出張検査には限定されず、本発明の要旨の範囲内において他の医療分野への応用も可能である。
【0038】
例示的な態様に係る医療システムは、少なくとも、可搬型記憶装置、第1情報処理装置、及び通信装置を含む。可搬型記憶装置と通信装置とは、それぞれが別々の装置であってもよいし、双方が単一の装置に組み込まれていてもよい。前者の一例において、可搬型記憶装置は、出張検査のために検者が携行するハードディスクドライブであり、通信装置は、非可搬型のコンピュータである。後者の一例において、可搬型記憶装置は、携帯情報端末に搭載された記憶手段(メモリ)であり、通信装置は、同じ携帯情報端末に搭載された通信手段(通信回路、アンテナ等)である。
【0039】
可搬型記憶装置は、出張検査において取得された情報を記憶する。医療システムに含まれる可搬型記憶装置の個数は任意である。可搬型記憶装置には、各種の医療情報が記憶される。典型的には、出張検査において医療検査が施された被検者の認証情報と、医療検査により被検者から取得された検査データとが、可搬型記憶装置に記憶される。可搬型記憶装置に記憶された認証情報と検査データとは、公知の技術によって互いに関連付けられている。可搬型記憶装置に記憶される情報はこれらに限定されない。例えば、医療検査の実施に関する時間情報を可搬型記憶装置に記憶することができる。
【0040】
可搬型記憶装置は、コンピュータによる処理が可能なデジタルデータを保持する装置であり、メモリ、ストレージデバイスなどとも呼ばれる。可搬型記憶装置の種類は任意である。例えば、可搬型記憶装置は、不揮発性メモリでも揮発性メモリでもそれらの組み合わせでもよいし、ダイナミックメモリでもスタティックメモリでもそれらの組み合わせでもよいし、リードライトメモリでもリードオンリーメモリでもそれらの組み合わせでもよい。また、可搬型記憶装置の容量も任意である。また、可搬型記憶装置に適用される記憶装置技術も任意であり、例えば、半導体メモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置、光磁気記憶装置、又は、それらのいずれか2以上の組み合わせであってよい。
【0041】
可搬型記憶装置は、通信機能を有する装置の一部であってもよいし、そうでなくてもよい。例えば、可搬型記憶装置は、記憶装置単体、通信機器(例えば、スマートフォン等のモバイル機器)に搭載された記憶装置、通信機能を有する装置(例えば、医療検査装置、モバイルコンピュータ)に搭載された記憶装置、又は、通信機能を有しない装置(例えば、医療検査装置、コンピュータ)に搭載された記憶装置であってよい。いずれの場合においても、可搬型記憶装置単体又は可搬型記憶装置が搭載された装置を、単に「可搬型記憶装置」と呼ぶことがある。
【0042】
第1情報処理装置は、通信ネットワークに接続可能な1以上のコンピュータを含む。第1情報処理装置は、例えば、出張検査によって収集された検査データ等の医療情報を管理するためのデータベース(医療情報データベース)を含み、医療情報に関する各種の情報処理を実行するように構成される。例示的な態様に採用される通信ネットワークの方式は任意である。
【0043】
通信装置は、第1情報処理装置と同じ通信ネットワークに接続可能なコンピュータを含む。第1情報処理装置と通信装置とは、通信ネットワークを介した双方向通信が可能である。第1情報処理装置及び通信装置のそれぞれは、典型的には通信ネットワークに有線接続されているが、少なくとも一方が通信ネットワークに無線接続されてもよい。
【0044】
通信装置は、それ自身が、又は他の通信装置を介して、通信ネットワークの利用可能エリアを形成する。幾つかの例示的な態様において、利用可能エリアとは、当該通信ネットワーク上の装置(例えば第1情報処理装置)に向けて、可搬型記憶装置に記憶された情報を送信することが可能なエリアを意味する。利用可能エリアにおける通信ネットワークへの接続形態は、有線接続及び/又は無線接続であってよい。
【0045】
有線接続の場合、例えば、ケーブルの一端が通信装置に接続され、他端が可搬型記憶装置に接続される。通信装置と可搬型記憶装置とは、これらを繋ぐケーブルを介して情報の送受信を行うことができる。例えば、可搬型記憶装置が記憶装置単体である場合、通信装置に有線接続された可搬型記憶装置は、通信装置の周辺機器として扱われる。具体例として、可搬型記憶装置がハードディスクドライブである場合、通信装置に有線接続された可搬型記憶装置は、通信装置の外付けハードディスクドライブとして使用可能である。可搬型記憶装置が他の形態である場合においても同様の構成を採用することができる。
【0046】
無線接続の場合、可搬型記憶装置は、無線通信機能を備えているか、或いは、無線通信機能を有する通信機器とともに使用される。利用可能エリア内に移動した可搬型記憶装置は、当該無線通信機能を用いて通信装置との間に無線通信を確立することができる。例えば、可搬型記憶装置が携帯情報端末のメモリである場合、この携帯情報端末と通信装置との間に無線通信が確立される。可搬型記憶装置が他の形態である場合においても同様の構成を採用することができる。
【0047】
可搬型記憶装置が利用可能エリアに移動されると、通信装置は、可搬型記憶装置に記憶された医療情報の少なくとも一部を読み出し、通信ネットワークを介して第1情報処理装置に送信することができる。
【0048】
このように構成された医療システムによれば、通信ネットワークの利用可能エリア外にて実施された出張検査で収集された医療情報を可搬型記憶装置に記憶し、可搬型記憶装置が利用可能エリア内に移動したときに医療情報を可搬型記憶装置から読み出し、通信ネットワークを介して第1情報処理装置に送信することができる。これにより、通信環境が悪い地域で実施された出張検査で得られた情報を、通信環境が良好な地域から送信することが可能となる。なお、前述したように、従来の技術は、通信ネットワークの利用可能エリア内で出張検査を実施することが前提であるため、この医療システムのようにネットワーク環境が悪い地域では使うことはできず、そもそもそれは想定されていない。
【0049】
このような医療システムの幾つかの例示的な態様を以下に説明する。これらの例示的な態様は、上記の医療システムの具体的な構成を提供するとともに、ネットワーク環境が悪い地域で得られた医療情報を管理する際に生じることが想定される幾つかの問題に対処するための手段も提供する。
【0050】
想定される問題として、被検者の重複や検査日の重複がある。例えば、ネットワーク環境が悪い地域(過疎地、未開発地、災害地、先住民居住地、開発途上国など)での出張検査では、各被検者に個人識別情報が割り当てられていないことが想定されるが、この場合、同じ日に同じ被検者に対して同じ検査を複数回実施してしまうことが有り得る。また、複数の検者が同一の地域を巡回しつつ出張検査を実施することが想定されるが、この場合、異なる日に同じ被検者に同じ検査を複数回実施してしまうことが有り得る。例えば遊牧民や移牧民を対象とした出張検査では、このような検査重複の問題が起こる可能性が特に高いと考えられる。以下の例示的な態様では、これらの問題に対処するために、新規な方法が提案される。
【0051】
以下に例示する態様において、「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路(circuit)や回路構成(circuitry)を含む。例えば、プロセッサは、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムやデータを読み出し実行することで、その態様に係る機能を実現する。或いは、プロセッサは、人工知能やコグニティブ・コンピューティングにおいて用いられる回路を含んでいてよく、典型的には機械学習が適用されたコンピュータシステムを含む。
【0052】
以下、幾つかの例示的な態様について説明する。いずれかの例示的な態様に対して任意の公知技術に基づく変形(付加、置換、省略等)を施すことが可能である。また、これらの例示的な態様のうちのいずれか2つ又はそれ以上を少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。このような組み合わせに対して任意の公知技術に基づく変形を施すことが可能である。
【0053】
<第1の態様>
第1の態様は、例えば、可搬型記憶装置が通信機能を具備しない場合、又は、可搬型記憶装置が通信機能を具備するがそれを通信ネットワークに直接接続しない場合に適用可能である。なお、これら以外の場合に本態様を適用することも可能である。
【0054】
本態様に係る医療システムは、可搬型記憶装置、第1情報処理装置及び通信装置に加え、通信ネットワークの利用可能エリア内に設置された第2情報処理装置を含む。第2情報処理装置は、可搬型記憶装置に保持されている医療情報を第1情報処理装置に転送するための中継装置として機能する。
【0055】
典型的には、可搬型記憶装置は車両等によりネットワーク環境が悪い地域に移動され、そこで実施された出張検査により収集された医療情報が可搬型記憶装置に保存される。出張検査が実施される場所を出張検査サイトと呼ぶことがある。医療情報を保持した可搬型記憶装置は、車両等によって出張検査サイトから利用可能エリアに移動され、中継装置に接続される。中継装置と可搬型記憶装置との接続態様は任意であり、例えば有線接続又は無線接続であってよい。或いは、可搬型記憶装置内の記録メディア(記憶メディア)を取り出し、中継装置(又はその周辺機器としてのドライブ装置)に装着するようにしてもよい。なお、中継装置と可搬型記憶装置とを無線接続する場合などにおいては、可搬型記憶装置が備える通信機能を用いてもよい。また、本態様に係る医療システムに含まれる可搬型記憶装置の個数は任意であり、中継装置の個数も任意である。
【0056】
本態様に係る医療システムの構成の例を
図1に示す。本例の医療システム1000は、T個の可搬型記憶装置3000-tと、(1以上の)中継装置4000と、管理サーバ5000とを含む。ここで、Tは1以上の正の整数であり、tはT以下の正の整数である。以下、T個の可搬型記憶装置3000-tのうちの任意の1つを符号3000で示すことがある。中継装置4000と管理サーバ5000とは、通信ネットワーク1100を介して双方向通信が可能である。中継装置4000は第2情報処理装置の例であり、管理サーバ5000は第1情報処理装置の例である。
【0057】
医療システム1000は、医療検査装置2000を更に含んでもよい。医療検査装置2000は、典型的には、可搬型記憶装置3000とともに出張検査サイトに移動され、被検者に検査を適用して検査データを取得するために用いられる。なお、医療検査装置2000は、出張検査サイトに設置された非可搬型の装置であってもよい。
【0058】
医療システム1000に含まれる医療検査装置2000の個数は任意である。例えば、1つの可搬型記憶装置3000に対して1以上の医療検査装置2000が設けられる。1つの可搬型記憶装置3000に対して2以上の医療検査装置2000が設けられる場合、これらの医療検査装置2000は、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。
【0059】
医療検査装置2000は、医療検査に用いられる任意の種類の装置であってよい。例えば、医療検査装置2000は、眼科装置であってよい。眼科装置としては、眼科測定装置や眼科撮影装置がある。眼科測定装置は、眼の特性を測定するための装置である。
【0060】
眼科測定装置の例として、視力検査装置、眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ)、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウエーブフロントアナライザ(高次収差測定装置)、眼軸長測定装置、視野計、光干渉断層法(optical coherence tomography:OCT)を利用して眼の形態情報や寸法情報を得る光干渉断層計などがある。
【0061】
眼科撮影装置は、眼の画像を得るための装置である。眼科撮影装置の種類としては、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、眼底及び/又は前眼部の形態及び/又は機能を画像化するための光干渉断層計などがある。
【0062】
本態様では、様々な眼科装置のうち最も広く且つ頻繁に使用される装置の1つであるスリットランプ顕微鏡を、医療検査装置2000の例として説明する。スリットランプ顕微鏡は、スリット光で被検眼を照明し、照明された断面を斜方や側方から顕微鏡で観察したり撮影したりするために使用される。スリットランプ顕微鏡の主な用途の1つに前眼部観察がある。前眼部観察において、医師は、スリット光による照明野やフォーカス位置を移動させつつ前眼部全体を観察して異常の有無を判断する。スリットランプ顕微鏡を用いて良好な画像を得るには、照明角度や撮影角度の調整など、微細で煩雑な操作が必要とされる。本態様では、様々な出張検査サイトで検査を行うことが想定されるため、スリットランプ顕微鏡の操作に熟練していない者であっても高品質な画像を得ることが可能なスリットランプ顕微鏡が用いられることが望ましいと考えられる。このような事情を鑑み、後述するスリットランプ顕微鏡が本態様において利用される。また、視覚異常は生活に与える悪影響が大きい一方、ネットワーク環境が悪い地域では白内障等の罹患者が多いと考えられることも、本態様でスリットランプ顕微鏡を用いる理由の1つである。
【0063】
なお、医療検査装置2000は、後述するスリットランプ顕微鏡に限定されず、スリットランプ顕微鏡にも眼科装置にも限定されない。更に、医療検査装置2000は、眼科装置には限定されず、任意の診療科で使用可能な任意の種類の装置であってよい。例えば、医療検査装置2000は、X線診断装置、X線CT装置、超音波診断装置、内視鏡などであってもよい。
【0064】
医療検査装置2000として用いられるスリットランプ顕微鏡の例を
図2に示す。スリットランプ顕微鏡1は、例えば被検眼Eの前眼部撮影に用いられ、照明系2と、撮影系3と、移動機構6と、制御部7と、データ処理部8と、出力部9とを含む。符号Cは角膜を示し、符号CLは水晶体を示す。なお、スリットランプ顕微鏡1は、公知のスリットランプ顕微鏡の任意の要素を更に含んでいてもよい。
【0065】
スリットランプ顕微鏡1は、単一の装置であってもよいし、2以上の装置を含むシステムであってもよい。後者の例として、スリットランプ顕微鏡1は、照明系2、撮影系3、及び移動機構6を含む本体装置と、制御部7、データ処理部8、及び出力部9を含むコンピュータと、本体装置とコンピュータとの間の通信を担う通信デバイスとを含む。コンピュータは、例えば、本体装置とともに設置されてもよいし、ネットワーク上に設置されていてもよい。
【0066】
照明系2は、被検眼Eの前眼部にスリット光を照射する。符号2aは、照明系2の光軸(照明光軸)を示す。照明系2は、従来のスリットランプ顕微鏡の照明系と同様の構成を備えていてよい。例えば、図示は省略するが、照明系2は、被検眼Eから遠い側から順に、照明光源と、正レンズと、スリット形成部と、対物レンズとを含む。
【0067】
照明光源は照明光を出力する。照明系2は複数の照明光源を備えていてよい。例えば、照明系2は、連続光を出力する照明光源と、フラッシュ光を出力する照明光源とを含んでいてよい。また、照明系2は、前眼部用照明光源と後眼部用照明光源とを含んでいてよい。また、照明系2は、出力波長が異なる2以上の照明光源を含んでいてよい。典型的な照明系2は、照明光源として可視光源を含む。照明系2は、赤外光源を含んでいてもよい。照明光源から出力された照明光は、正レンズを通過してスリット形成部に投射される。
【0068】
スリット形成部は、照明光の一部を通過させてスリット光を生成する。典型的なスリット形成部は、一対のスリット刃を有する。これらスリット刃の間隔(スリット幅)を変更することで照明光が通過する領域(スリット)の幅を変更し、これによりスリット光の幅が変更される。また、スリット形成部は、スリット光の長さを変更可能に構成されてもよい。スリット光の長さとは、スリット幅に対応するスリット光の断面幅方向に直交する方向におけるスリット光の断面寸法である。スリット光の幅やスリット光の長さは、典型的には、スリット光の前眼部への投影像の寸法として表現されるが、これには限定されず、例えば、任意の位置におけるスリット光の断面における寸法として表現することや、スリット形成部により形成されるスリットの寸法として表現することも可能である。
【0069】
スリット形成部により生成されたスリット光は、対物レンズにより屈折されて被検眼Eの前眼部に照射される。
【0070】
照明系2は、スリット光のフォーカス位置を変更するための合焦機構を更に含んでいてもよい。合焦機構は、例えば、対物レンズを照明光軸2aに沿って移動させる。対物レンズの移動は、自動及び/又は手動で実行可能である。なお、対物レンズとスリット形成部との間の照明光軸2a上の位置に合焦レンズを配置し、この合焦レンズを照明光軸2aに沿って移動させることによってスリット光のフォーカス位置を変更可能としてもよい。
【0071】
なお、
図2は上面図であり、同図に示すように、本態様では、被検眼Eの軸に沿う方向をZ方向とし、これに直交する方向のうち被検者にとって左右の方向をX方向とし、X方向及びZ方向の双方に直交する方向をY方向とする。典型的には、X方向は左眼と右眼との配列方向であり、Y方向は被検者の体軸に沿う方向である。
【0072】
撮影系3は、照明系2からのスリット光が照射されている前眼部を撮影する。符号3aは、撮影系3の光軸(撮影光軸)を示す。本態様の撮影系3は、光学系4と、撮像素子5とを含む。
【0073】
光学系4は、スリット光が照射されている被検眼Eの前眼部からの光を撮像素子5に導く。撮像素子5は、光学系4により導かれた光を撮像面にて受光する。
【0074】
光学系4により導かれる光(つまり、被検眼Eの前眼部からの光)は、前眼部に照射されているスリット光の戻り光を含み、他の光を更に含んでいてよい。戻り光の例として、反射光、散乱光、蛍光がある。他の光の例として、スリットランプ顕微鏡1の設置環境からの光(室内光、太陽光など)がある。前眼部全体を照明するための前眼部照明系が照明系2とは別に設けられている場合、この前眼部照明光の戻り光が、光学系4により導かれる光に含まれてもよい。
【0075】
撮像素子5は、2次元の撮像エリアを有するエリアセンサであり、例えば、電荷結合素子(CCD)イメージセンサや相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサであってよい。
【0076】
光学系4は、例えば、従来のスリットランプ顕微鏡の撮影系と同様の構成を備えていてよい。例えば、光学系4は、被検眼Eに近い側から順に、対物レンズと、変倍光学系と、結像レンズとを含む。スリット光が照射されている被検眼Eの前眼部からの光は、対物レンズ及び変倍光学系を通過し、結像レンズにより撮像素子5の撮像面に結像される。
【0077】
撮影系3は、そのフォーカス位置を変更するための合焦機構を更に含んでいてもよい。合焦機構は、例えば、対物レンズを撮影光軸3aに沿って移動させる。対物レンズの移動は、自動及び/又は手動で実行可能である。なお、対物レンズと結像レンズとの間の撮影光軸3a上の位置に合焦レンズを配置し、この合焦レンズを撮影光軸3aに沿って移動させることによってフォーカス位置を変更可能としてもよい。
【0078】
照明系2及び撮影系3は、シャインプルーフカメラとして機能する。すなわち、照明光軸2aに沿う物面と、光学系4と、撮像素子5の撮像面とが、いわゆるシャインプルーフの条件を満足するように、照明系2及び撮影系3が構成される。より具体的には、照明光軸2aを通るYZ面(物面を含む)と、光学系4の主面と、撮像素子5の撮像面とが、同一の直線上にて交差する。これにより、物面内の全ての位置(照明光軸2aに沿う方向における全ての位置)にピントを合わせて撮影を行うことができる。
【0079】
本態様では、例えば、少なくとも角膜Cの前面と水晶体CLの後面とによって画成される範囲に撮影系3のピントが合うように、照明系2及び撮影系3が構成される。つまり、
図2に示す角膜Cの前面の頂点(Z=Z1)から水晶体CLの後面の頂点(Z=Z2)までの範囲全体に撮影系3のピントが合っている状態で、撮影を行うことが可能である。Z=Z0は、照明光軸2aと撮影光軸3aとの交点のZ座標を示す。これにより、前眼部の広域にわたる観察が可能となり、白内障による水晶体混濁を初めとする各種の前眼部の異常の検出(診察、解析等)が可能となる。
【0080】
このような条件は、典型的には、照明系2に含まれる要素の構成及び配置、撮影系3に含まれる要素の構成及び配置、並びに、照明系2と撮影系3との相対位置によって実現される。照明系2と撮影系3との相対位置を示すパラメータは、例えば、照明光軸2aと撮影光軸3aとがなす角度θを含む。角度θは、例えば、17.5度、30度、又は45度に設定される。なお、角度θは可変であってもよい。
【0081】
移動機構6は、照明系2及び撮影系3を移動する。移動機構6は、例えば、照明系2及び撮影系3が搭載された可動ステージと、制御部7から入力される制御信号にしたがって動作するアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力に基づき可動ステージを移動する機構とを含む。他の例において、移動機構6は、照明系2及び撮影系3が搭載された可動ステージと、図示しない操作デバイスに印加された力に基づき可動ステージを移動する機構とを含む。操作デバイスは、例えばレバーである。可動ステージは、少なくともX方向に移動可能であり、更にY方向及び/又はZ方向に移動可能であってよい。
【0082】
本態様において、移動機構6は、例えば、照明系2及び撮影系3を一体的にX方向に移動する。つまり、移動機構6は、上記したシャインプルーフの条件が満足された状態を保持しつつ照明系2及び撮影系3をX方向に移動する。この移動と並行して、撮影系3は、例えば所定の時間間隔(撮影レート)で動画撮影を行う。これにより、被検眼Eの前眼部の3次元領域がスリット光でスキャンされ、この3次元領域内の複数の断面に対応する複数の画像(画像群)が収集される。
【0083】
制御部7は、スリットランプ顕微鏡1の各部を制御する。例えば、制御部7は、照明系2の要素(照明光源、スリット形成部、合焦機構など)、撮影系3の要素(合焦機構、撮像素子など)、移動機構6、データ処理部8、出力部9などを制御する。また、制御部7は、照明系2と撮影系3との相対位置を変更するための制御を実行可能であってもよい。
【0084】
制御部7は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、制御プログラム等が記憶されている。制御プログラム等は、スリットランプ顕微鏡1がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。制御部7の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0085】
制御部7は、被検眼Eの前眼部の3次元領域をスリット光でスキャンするために、照明系2、撮影系3及び移動機構6に対して次のような制御を適用することができる。
【0086】
まず、制御部7は、照明系2及び撮影系3を所定のスキャン開始位置に配置するように移動機構6を制御する(アライメント制御)。スキャン開始位置は、例えば、X方向における角膜Cの端部(第1端部)に相当する位置、又は、それよりも被検眼Eの軸から離れた位置である。
図3Aの符号X0は、X方向における角膜Cの第1端部に相当するスキャン開始位置の例を示している。また、
図3Bの符号X0’は、X方向における角膜Cの第1端部に相当する位置よりも被検眼Eの軸EAから離れたスキャン開始位置の例を示している。
【0087】
制御部7は、照明系2を制御して、被検眼Eの前眼部に対するスリット光の照射を開始させる(スリット光照射制御)。なお、アライメント制御の実行前に、又は、アライメント制御の実行中に、スリット光照射制御を行ってもよい。スリット光は、典型的には連続光であるが、断続光(パルス光)であってもよい。パルス光の点灯制御は、撮影系3の撮影レートに同期される。また、スリット光は、典型的には可視光であるが、赤外光であってもよいし、可視光と赤外光との混合光であってもよい。
【0088】
制御部7は、撮影系3を制御して、被検眼Eの前眼部の動画撮影を開始させる(撮影制御)。なお、アライメント制御の実行前に、又は、アライメント制御の実行中に、撮影制御を行ってもよい。典型的には、スリット光照射制御と同時に、又は、スリット光照射制御よりも後に、撮影制御が実行される。
【0089】
アライメント制御、スリット光照射制御、及び撮影制御の実行後、制御部7は、移動機構6を制御して、照明系2及び撮影系3の移動を開始する(移動制御)。移動制御により、照明系2及び撮影系3が一体的に移動される。つまり、照明系2と撮影系3との相対位置(角度θなど)を維持しつつ照明系2及び撮影系3が移動される。典型的には、前述したシャインプルーフの条件が満足された状態を維持しつつ照明系2及び撮影系3が移動される。照明系2及び撮影系3の移動は、前述したスキャン開始位置から所定のスキャン終了位置まで行われる。スキャン終了位置は、例えば、スキャン開始位置と同様に、X方向において第1端部の反対側の角膜Cの端部(第2端部)に相当する位置、又は、それよりも被検眼Eの軸から離れた位置である。このような場合、スキャン開始位置からスキャン終了位置までの範囲がスキャン範囲となる。
【0090】
典型的には、X方向を幅方向とし且つY方向を長手方向とするスリット光を前眼部に照射しつつ、且つ、照明系2及び撮影系3をX方向に移動しつつ、撮影系3による動画撮影が実行される。
【0091】
ここで、スリット光の長さ(つまり、Y方向におけるスリット光の寸法)は、例えば、被検眼Eの表面において角膜Cの径以上に設定される。すなわち、スリット光の長さは、Y方向における角膜径以上に設定されている。また、前述のように、移動機構6による照明系2及び撮影系3の移動距離(つまり、スキャン範囲)は、X方向における角膜径以上に設定されている。これにより、少なくとも角膜C全体をスリット光でスキャンすることができる。
【0092】
このようなスキャンにより、スリット光の照射位置が異なる複数の前眼部画像が得られる。換言すると、スリット光の照射位置がX方向に移動する様が描写された動画像が得られる。このような複数の前眼部画像(つまり、動画像を構成するフレーム群)の例を
図4に示す。
【0093】
図4は、複数の前眼部画像(フレーム群、画像群)F1、F2、F3、・・・、FNを示す。これら前眼部画像Fn(n=1、2、・・・、N)の添字nは、時系列順序を表している。つまり、第n番目に取得された前眼部画像が符号Fnで表される。前眼部画像Fnには、スリット光照射領域Anが含まれている。
図4に示すように、スリット光照射領域A1、A2、A3、・・・、ANは、時系列に沿って右方向に移動している。
図4に示す例では、スキャン開始位置及びスキャン終了位置は、X方向における角膜Cの両端に対応する。なお、スキャン開始位置及び/又はスキャン終了位置は本例に限定されず、例えば、角膜端部よりも被検眼Eの軸から離れた位置であってよい。また、スキャンの向きや回数についても任意に設定することが可能である。
【0094】
データ処理部8は、各種のデータ処理を実行する。処理されるデータは、スリットランプ顕微鏡1により取得されたデータ、及び、外部から入力されたデータのいずれでもよい。データ処理部8は、撮影系3によって取得された画像を処理することが可能である。例えば、撮影系3によって取得された画像に対し、各種補正処理、3次元画像再構成、レンダリングなどを適用することができる。
【0095】
データ処理部8は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、データ処理プログラム等が記憶されている。データ処理プログラム等は、スリットランプ顕微鏡1がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。データ処理部8の機能は、データ処理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0096】
出力部9は、スリットランプ顕微鏡1から情報を出力する。出力部9は、スリットランプ顕微鏡1により取得された画像を可搬型記憶装置3000に出力する。例えば、スリットランプ顕微鏡1と可搬型記憶装置3000とは所定のシリアルバス規格に準拠しており、出力部9は当該規格に準拠したインターフェイスを含む。出力部9は、スリットランプ顕微鏡1と他の装置との間におけるデータ通信を行う通信デバイス、情報を表示する表示デバイス、印刷媒体に情報を記録するプリンターなどを含んでもよい。
【0097】
被検眼Eに対するスリットランプ顕微鏡1のアライメントについて説明する。一般に、アライメントは、被検眼Eの撮影や測定のために好適な位置に装置光学系を配置させる動作である。本態様のアライメントは、
図4に示すような動画像を取得するために好適な位置に照明系2及び撮影系3を配置させる動作である。
【0098】
眼科装置のアライメントには様々な手法がある。以下、幾つかのアライメント手法を例示するが、本態様に適用可能な手法はこれらに限定されない。
【0099】
本態様に適用可能なアライメント手法としてステレオアライメントがある。ステレオアライメントは、2以上の異なる方向から前眼部を撮影可能な眼科装置において適用可能であり、その具体的な手法は、本出願人による特開2013-248376号公報などに開示されている。ステレオアライメントは、例えば次の工程を含む:2以上の前眼部カメラが前眼部を異なる方向から撮影して2以上の撮影画像を取得する工程;プロセッサがこれら撮影画像を解析して被検眼の3次元位置を求める工程;求められた3次元位置に基づいてプロセッサが光学系の移動制御を行う工程。これにより、光学系(本例では照明系2及び撮影系3)が、被検眼に対して好適な位置に配置される。典型的なステレオアライメントでは、被検眼の瞳孔(瞳孔の中心又は重心)の位置が基準とされる。
【0100】
このようなステレオアライメントの他にも、アライメント光により得られるプルキンエ像を利用した手法や、光テコを利用した手法や、アライメント指標を利用した手法など、任意の公知のアライメント手法を採用することが可能である。プルキンエ像を利用した手法や光テコやアライメント指標を利用した手法では、被検眼の角膜頂点の位置が基準とされる。
【0101】
なお、以上の例示を含む従来の典型的なアライメント手法は、被検眼の軸と光学系の光軸とを一致させることを目的として行われるが、本態様では、スキャン開始位置に対応する位置に照明系2及び撮影系3を配置させるようにアライメントを実行することが可能である。
【0102】
本態様におけるアライメントの第1の例として、上記したアライメント手法のいずれかを適用して被検眼Eの瞳孔又は角膜頂点を基準としたアライメントを行った後、予め設定された角膜径の標準値に相当する距離だけ照明系2及び撮影系3を(X方向に)移動することができる。なお、標準値を用いる代わりに、被検眼Eの角膜径の測定値を用いてもよい。
【0103】
第2の例として、上記したアライメント手法のいずれかを適用して被検眼Eの瞳孔又は角膜頂点を基準としたアライメントを行った後、被検眼Eの前眼部の画像を解析して角膜径を測定し、この測定値に相当する距離だけ照明系2及び撮影系3を(X方向に)移動することができる。本例で解析される前眼部の画像は、例えば、撮影系3により得られた前眼部画像、又は、他の画像である。他の画像は、前眼部カメラにより得られた画像、前眼部OCTにより得られた画像など、任意の画像であってよい。
【0104】
第3の例として、ステレオアライメント用の前眼部カメラ又は撮影系3により得られた前眼部の画像を解析して角膜の第1端部を求め、ステレオアライメントを適用してこの第1端部に対応する位置に照明系2及び撮影系3を移動することができる。
【0105】
なお、上記したアライメント手法のいずれかを適用して被検眼Eの瞳孔又は角膜頂点を基準としたアライメントを実行し、これにより決定された位置からスリット光による前眼部スキャンを開始するようにしてもよい。この場合においても、角膜Cの全体をスキャンするようにスキャンシーケンスを設定することができる。例えば、当該アライメントにより決定された位置から左方にスキャンを行った後、右方にスキャンを行うように、スキャンシーケンスが設定される。
【0106】
スリットランプ顕微鏡1は、被検眼Eを固視させるための光(固視光)を出力する固視系を備えていてよい。固視系は、典型的には、少なくとも1つの可視光源(固視光源)、又は、風景チャートや固視標等の画像を表示する表示デバイスを含む。固視系は、例えば、照明系2又は撮影系3と同軸又は非同軸に配置される。固視系は、装置光学系の光路を通じて固視標を被検者に提示する内部固視系、及び/又は、当該光路の外から固視標を被検者に提示する外部固視系を含んでいてよい。
【0107】
スリットランプ顕微鏡1により取得可能な画像の種別は、前述した前眼部の動画像(複数の前眼部画像)に限定されない。例えば、スリットランプ顕微鏡1は、この動画像に基づく3次元画像、この3次元画像に基づくレンダリング画像、徹照像などがある。3次元画像は、例えば、それぞれ異なる2次元座標系で定義された複数の前眼部画像を同じ3次元座標系に埋め込むことで構築されるスタックデータ、又は、スタックデータにボクセル化を適用して構築されるボリュームデータ(ボクセルデータ)であってよい。レンダリングは、例えば、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、多断面再構成(MPR)などであってよい。徹照像は、照明光の網膜反射を利用して眼内の混濁や異物を描出する徹照法により得られる画像である。なお、眼底撮影、角膜内皮細胞撮影、マイボーム腺撮影などが可能であってもよい。
【0108】
次に、中継装置4000について説明する。中継装置4000の構成の例を
図5に示す。本例の中継装置4000は、制御部4100と、受付部4200と、通信部4300と、データ処理部4400と、ユーザインターフェイス(UI)4500とを含む。
【0109】
制御部4100は、中継装置4000の各部を制御する。制御部4100は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、制御プログラム等が記憶されている。制御プログラム等は、中継装置4000がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。制御部4100の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0110】
受付部4200は、可搬型記憶装置3000に記憶された情報を受け付ける。受付部4200は、例えば、所定のシリアルバス規格に準拠したインターフェイス、及び、可搬型記憶装置3000から取り出された媒体から情報を読み出すためのドライブ装置の少なくとも一方を含む。
【0111】
通信部4300は、通信ネットワーク1100を介してデータ通信を行うための通信デバイスを含む。
【0112】
データ処理部4400は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部4400は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、データ処理プログラム等が記憶されている。データ処理プログラム等は、中継装置4000がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。データ処理部4400の機能は、データ処理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0113】
ユーザインターフェイス4500は、表示デバイス、操作デバイスなどを含む。
【0114】
中継装置4000が実行可能な処理、及び中継装置4000の要素が実行可能な処理については後述する。
【0115】
次に、管理サーバ5000について説明する。管理サーバ5000の構成の例を
図6に示す。本例の管理サーバ5000は、制御部5100と、医療情報データベース5200と、通信部5300と、データ処理部5400と、ユーザインターフェイス(UI)5500とを含む。
【0116】
制御部5100は、管理サーバ5000の各部を制御する。制御部5100は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、制御プログラム等が記憶されている。制御プログラム等は、管理サーバ5000がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。制御部5100の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0117】
医療情報データベース5200は、各種の医療情報を管理する。典型的には、医療情報は、被検者毎に管理される。各被検者の識別は、例えば、被検者毎に割り当てられた識別子(被検者ID)を用いて行われる。被検者IDの生成及び付与は、例えば管理サーバ5000(データ処理部5400等)により実行される。
【0118】
医療情報データベース5200が管理する医療情報は、典型的には、出張検査において医療検査が施された被検者の認証情報と、医療検査により被検者から取得された検査データとを少なくとも含む。これらに加えて、医療情報データベース5200が管理する医療情報は、その被検者IDが割り当てられた被検者の検査歴を含んでいてよい。
【0119】
本例において、典型的には、認証情報は生体認証情報(バイオメトリクス情報)であり、検査データはスリットランプ顕微鏡1で取得された前眼部画像であり、検査歴は検査日情報である。検査日情報は、被検者に適用された検査に対応する特定の日付(及び時刻)であってよい。例えば、検査日情報は、検査が実施された日付、可搬型記憶装置3000から情報が読み出された日付、中継装置4000から管理サーバ5000に向けて情報が送信された日付、及び、管理サーバ5000が中継装置4000から情報を受信した日付のいずれかであってよい。
【0120】
医療情報データベース5200は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、大容量記憶装置とを含む。補助記憶装置には、データベース管理プログラム等が記憶されている。医療情報データベース5200の機能は、データベース管理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0121】
通信部5300は、通信ネットワーク1100を介してデータ通信を行うための通信デバイスを含む。
【0122】
データ処理部5400は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部5400は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、データ処理プログラム等が記憶されている。データ処理部5400の機能は、データ処理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0123】
ユーザインターフェイス5500は、表示デバイス、操作デバイスなどを含む。
【0124】
管理サーバ5000が実行可能な処理、及び管理サーバ5000の要素が実行可能な処理については後述する。
【0125】
医療システム1000は、検査データの漏れやダブりを防止するための照合処理を行うように構成されてよい。そのための構成の幾つかの例を説明する。
図7Aは、管理サーバ5000に照合機能を設けた場合の構成例を示し、
図7Bは、中継装置4000に照合機能を設けた場合の構成例を示す。医療システム1000は、例えば、
図7Aの構成例の少なくとも一部、
図7Bの構成例の少なくとも一部、又は、
図7Aの構成例の少なくとも一部と
図7Bの構成例の少なくとも一部との組み合わせを含んでよい。
【0126】
図7Aは、管理サーバ5000のデータ処理部5400の構成の例を示す。本例のデータ処理部5400は、認証情報照合部5410と、時間情報照合部5420とを含む。
【0127】
認証情報照合部5410は、中継装置4000から送信された認証情報を医療情報データベース5200と照合する。より具体的には、中継装置4000から或る被検者の認証情報が送信されたとき、認証情報照合部5410は、この認証情報を、医療情報データベース5200に保存されている当該被検者の認証情報と照合する。認証情報が生体認証情報である場合、認証情報照合部5410は、中継装置4000から送信された生体認証情報と、医療情報データベース5200に保存されている当該被検者の生体認証情報とが、同一人のものであるか判定する。本例に適用可能な生体認証技法は任意の公知技法であってよく、例えば、虹彩認証、指紋認証、顔認証、掌形認証、網膜認証、血管認証、音声認証、耳形認証、筆跡認証、リップムーブメント認証、瞬き認証、歩行認証などであってよい。
【0128】
時間情報照合部5420は、中継装置4000から送信された時間情報を医療情報データベース5200と照合する。より具体的には、中継装置4000から或る被検者の検査に関する時間情報が送信されたとき、時間情報照合部5420は、この時間情報を、医療情報データベース5200に保存されている当該被検者の検査歴と照合する。ここで、時間情報の定義は、検査歴に記録される検査日情報の定義と同じでもよいし、異なってもよい。時間情報は、被検者に適用された検査に対応する特定の日付(及び時刻)であってよく、例えば、検査が実施された日付、可搬型記憶装置3000から情報が読み出された日付、中継装置4000から管理サーバ5000に向けて情報が送信された日付、及び、管理サーバ5000が中継装置4000から情報を受信した日付のいずれかであってよい。例えば、時間情報照合部5420は、時間情報が示す日付と同一の検査日が検査歴に記録されているか判定するように構成されてよい。或いは、時間情報照合部5420は、時間情報が示す日付を基準とした特定期間に、検査歴に記録されている検査日のいずれかが属するか判定するように構成されてよい。この特定期間は任意に設定される。他の例として、時間情報照合部5420は、検査歴に記録されている検査日のいずれかを基準とした特定期間に、認証情報が示す日付が属するか判定するように構成されてよい。この特定期間は任意に設定される。
【0129】
図7Bは、中継装置4000のデータ処理部4400の構成の例を示す。本例のデータ処理部4400は、認証情報照合部4410と、時間情報照合部4420とを含む。
【0130】
認証情報照合部4410は、例えば、管理サーバ5000から送信された認証情報と、可搬型記憶装置3000に記憶されている認証情報との間の照合を行う。認証情報照合部4410の照合技法は、認証情報照合部5410のそれと同じであってよい。
【0131】
時間情報照合部4420は、例えば、管理サーバ5000から送信された時間情報と、可搬型記憶装置3000に記憶されている時間情報との間の照合を行う。時間情報照合部4420の照合技法は、時間情報照合部5420のそれと同じであってよい。
【0132】
医療情報が時間情報を含む場合、医療システム1000は、時間情報を生成する手段を含んでよい。時間情報生成手段は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報を生成するように構成される。このような時間情報生成手段の幾つかの例について
図8A~
図8Eを参照しつつ説明する。なお、これらの例の少なくとも1つを医療システム1000に適用することが可能である。
【0133】
2以上の例の時間情報生成手段が適用される場合、2以上の時間情報生成手段を選択的又は並行的に動作させることができる。例えば、医療システム1000が実行する一連の処理のいずれかの段階において時間情報生成手段が時間情報を生成した場合、それよりも下流の段階に位置する時間情報生成手段は時間情報の生成を行わない。つまり、時間情報生成手段は、検査データに時間情報が付帯されていない場合に時間情報の生成を行うように構成されてよい。或いは、全ての時間情報生成手段が時間情報を生成して検査データに付帯させてもよい。
【0134】
図8Aは、時間情報生成手段がスリットランプ顕微鏡1(医療検査装置2000)に設けられる場合の例を示す。本例では、データ処理部8が時間情報生成部81を含む。時間情報生成部81は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報として、被検者に医療検査が施された日付を生成する。
【0135】
時間情報生成部81は、典型的には、タイマーを含む。タイマーは、例えば、或る時点からの経過時間を計測する。計測開始時点の日付や時刻を基準とすることで、時間情報生成部81は、任意の時点における日付や時刻を提供することができる。典型的には、通信ネットワーク1100の利用可能エリア内にスリットランプ顕微鏡1があるときに基準日付や基準時刻が設定され、計測が開始される。
【0136】
被検眼の検査において、制御部7からの制御信号(例えば、前述の撮影制御に対応する制御信号)が時間情報生成部81に入力される。時間情報生成部81は、この制御信号を受けた時点における日付や時刻をタイマーから取得して時間情報を生成するように構成されてよい。生成された時間情報は、被検眼の検査で取得された検査データに関連付けられる。時間情報及び検査データを含む医療情報は、可搬型記憶装置3000に送られて記憶される。
【0137】
図8Bは、時間情報生成手段が可搬型記憶装置3000に設けられる場合の例を示す。本例の可搬型記憶装置3000は、記憶部3010と、制御部3020と、時間情報生成部3030とを含む。記憶部3010には各種データが記憶される。記憶部3010は、典型的には、大容量記憶装置を含む。
【0138】
制御部3020は、可搬型記憶装置3000の各部を制御する。制御部3020は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、制御プログラム等が記憶されている。制御部3020の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0139】
時間情報生成部3030は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報として、被検者に医療検査が施された日付を生成する。時間情報生成部3030は、
図8Aの時間情報生成部81と同様の機能及び構成を有していてよい。
【0140】
被検眼の検査において、医療検査装置2000(スリットランプ顕微鏡1)から検査データが可搬型記憶装置3000に入力される。制御部3020は、この検査データが入力されたことを時間情報生成部3030に通知する。時間情報生成部3030は、この通知を受けた時点における日付や時刻をタイマーから取得して時間情報を生成するように構成されてよい。生成された時間情報は制御部3020に送られる。制御部3020は、時間情報生成部3030から入力された時間情報を、医療検査装置2000から入力された検査データに関連付ける。制御部3020は、時間情報及び検査データを含む医療情報を記憶部3010に記憶させる。
【0141】
図8Cは、可搬型記憶装置3000とともに携行される時間情報生成装置の例を示す。本例の可搬型記憶装置3000は、記憶部3010と、制御部3020とを含む。これらは
図8Bに示したものと同じ機能及び構成を有していてよい。
【0142】
時間情報生成装置6000は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報として、被検者に医療検査が施された日付を生成する。時間情報生成部3030は、
図8Aの時間情報生成部81と同様の機能及び構成を有していてよい。
【0143】
被検眼の検査において、医療検査装置2000(スリットランプ顕微鏡1)から検査データが可搬型記憶装置3000に入力されると、制御部3020は、この検査データが入力されたことを時間情報生成装置6000に通知する。時間情報生成装置6000は、この通知を受けた時点における日付や時刻をタイマーから取得して時間情報を生成するように構成されてよい。生成された時間情報は制御部3020に送られる。制御部3020は、時間情報生成装置6000から入力された時間情報を、医療検査装置2000から入力された検査データに関連付ける。制御部3020は、時間情報及び検査データを含む医療情報を記憶部3010に記憶させる。
【0144】
図8Dは、時間情報生成手段が中継装置4000に設けられる場合の例を示す。本例では、データ処理部4400が時間情報生成部4410を含む。時間情報生成部4410は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報として、可搬型記憶装置3000から医療情報の少なくとも一部が読み出された日付を生成する。時間情報生成部4410は、
図8Aの時間情報生成部81と同様の機能及び構成を有していてよい。なお、
図8Cに示す例と同様に、中継装置4000の周辺機器としての時間情報生成装置を設けてもよい。
【0145】
可搬型記憶装置3000からの情報の読み出し前、読み出し中、又は読み出し後に、中継装置4000の制御部4100は、時間情報生成部4410から現時点における日付や時刻を取得する。例えば、制御部4100は、読み出し制御信号を受付部4200に送るとともに、時間情報生成部4410から現時点における日付や時刻を取得する。制御部4100は、時間情報生成部4410から入力された時間情報を、受付部4200が可搬型記憶装置3000から読み出した情報に関連付ける。
【0146】
中継装置4000は、これらの情報を含む医療情報を管理サーバ5000に送信することができる。この場合、時間情報生成部4410は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報として、中継装置4000が医療情報の少なくとも一部を管理サーバ5000に送信した日付を生成することができる。
【0147】
図8Eは、時間情報生成手段が管理サーバ5000に設けられる場合の例を示す。本例では、データ処理部5400が時間情報生成部5410を含む。時間情報生成部5410は、被検者に施された医療検査に対応する時間情報として、中継装置4000が医療情報の少なくとも一部を管理サーバ5000に送信した日付を生成する。換言すると、時間情報生成部5410は、管理サーバ5000から送信された情報を管理サーバ5000が受信した日付を生成する。なお、
図8Cに示す例と同様に、管理サーバ5000の周辺機器としての時間情報生成装置を設けてもよい。
【0148】
中継装置4000から送信された情報を通信部5300が受信すると、制御部5100は、時間情報生成部5410から現時点における日付や時刻を取得する。制御部54100は、時間情報生成部5410から入力された時間情報を、通信部5300が受信した情報に関連付ける。制御部5100は、これらの情報を含む医療情報を医療情報データベース5200に記憶させることができる。
【0149】
前述したように、医療情報は認証情報を含む。医療システム1000は、認証情報を生成する手段を含んでよい。認証情報生成手段は、被検者に施された医療検査に対応する認証情報を生成するように構成される。生成された認証情報は、検査データに関連付けられる。本態様の医療情報は、認証情報と検査データとを少なくとも含み、上記の時間情報を更に含んでよい。
【0150】
認証情報生成手段の幾つかの例について
図9A及び
図9Bを参照しつつ説明する。なお、これらの例の少なくとも1つを医療システム1000に適用することが可能である。
【0151】
図9Aは、認証情報生成手段がスリットランプ顕微鏡1(医療検査装置2000)に設けられる場合の例を示す。本例では、データ処理部8が認証情報生成部82を含む。
【0152】
認証情報生成部82は、典型的には、生体認証情報(バイオメトリクス情報)を生成する。例えば、スリットランプ顕微鏡1は、撮像素子5により取得された前眼部画像を含む認証情報を生成する。この認証情報は、1以上の前眼部画像であってよい。この前眼部画像は、スリット光の投影像を含んでもよいし、含まなくてもよい。つまり、スリット光が投射されているときに前眼部画像を取得してもよいし、スリット光が投射されていないときに前眼部画像を取得してもよい。前者の場合、例えば、認証情報生成部82は、スリット光を用いた前眼部スキャンで得られた画像群のいずれかを認証情報とすることができる。後者の場合、スリットランプ顕微鏡1は、スリット光を用いた前眼部スキャンとは別に前眼部撮影を行い、これにより取得された前眼部画像を認証情報とすることができる。認証情報としての前眼部画像は、例えば、虹彩認証、血管認証などに用いられる。
【0153】
制御部7は、少なくとも認証情報と検査データとを含む医療情報を出力部9に送る。出力部9は、制御部7の制御の下に、この医療情報を可搬型記憶装置3000に送る。
【0154】
図9Bは、医療検査装置2000(スリットランプ顕微鏡1)及び可搬型記憶装置3000とともに用いられる認証情報生成装置の例を示す。認証情報生成装置7000は、典型的には、生体認証情報(バイオメトリクス情報)を生成する。
【0155】
例えば、認証情報生成装置7000は、虹彩認証のための虹彩画像(前眼部画像)を取得するカメラ、指紋認証のために指先をスキャンする指紋スキャナ、顔認証のための顔画像を取得するカメラ、掌形認証のために掌をスキャンする掌スキャナ、網膜認証のために網膜画像を取得するカメラ、血管認証のために所定の身体部位を撮影/スキャンする装置、音声認証のために音声を録音するレコーダ、耳形認証のために耳画像を取得するカメラ、筆跡認証のために筆跡を記録する装置、リップムーブメント認証のために発話時の唇を動画撮影するカメラ、瞬き認証のために眼を動画撮影するカメラ、及び、歩行認証のために身体を動画撮影するカメラのうち、いずれかを含んでいてよい。
【0156】
制御部7は、被検者について生成された認証情報と当該被検者から得られた検査データとを少なくとも含む医療情報を出力部9に送る。出力部9は、制御部7の制御の下に、この医療情報を可搬型記憶装置3000に送る。
【0157】
医療システム1000の動作の幾つかの例を説明する。
【0158】
【0159】
まず、検者は、例えば医療検査装置2000(スリットランプ顕微鏡1)及び可搬型記憶装置3000を載せた車両で出張検査サイトへ移動する。このとき、時間情報生成装置6000及び/又は認証情報生成装置7000を携行してもよい。通信ネットワーク1100の利用可能エリア内に時間情報生成装置6000があるときに基準日付や基準時刻を設定してもよい。
【0160】
図10Aを参照する。出張検査サイトにおいて、検者は、医療検査装置2000を用いて被検者の検査を行うことで、その被検者の検査データが取得される(S1)。更に、その被検者について、認証情報の生成(S2)と、時間情報の生成(S3)とが実行される。なお、検査データの取得、認証情報の生成、及び時間情報の生成を行うタイミングや順序は任意である。
【0161】
医療検査装置2000又は可搬型記憶装置3000は、その被検者についての検査データ、認証情報及び時間情報を、その被検者の医療情報として管理することができる。例えば、医療検査装置2000又は可搬型記憶装置3000は、その被検者の医療情報ファイルを作成し、その被検者についての検査データ、認証情報及び時間情報をこの医療情報ファイルに格納する。このようにして得られた被検者の医療情報は、可搬型記憶装置3000に記憶される(S4)。
【0162】
出張検査サイトにいる全ての被検者の医療情報が得られるまでステップS1~S4が繰り返される(S5:Yes)。全ての被検者の医療情報が得られたら(S5:No)、検者は、医療検査装置2000、可搬型記憶装置3000等を車両に載せて中継サイトへ移動する(S6)。中継サイトは、可搬型記憶装置3000に記憶された医療情報を管理サーバ5000へ送るためのサイトである。本態様の中継サイトは、例えば、中継装置4000が設置されている施設である。なお、他の出張検査サイトを経由して中継サイトへ移動してもよい。その場合、その出張検査サイトにおいてステップS1~S5の工程が実行される。
【0163】
次に
図10Bを参照する。出張検査サイトで収集された医療情報を記憶した可搬型記憶装置3000が中継サイトに到着したら、中継装置4000に可搬型記憶装置3000を接続する(S11)。前述したように接続態様は任意である。
【0164】
中継装置4000は、可搬型記憶装置3000から認証情報及び時間情報を読み出す(S12)。このとき、中継装置4000は、1つの医療情報から認証情報及び時間情報を読み出してもよいし、2以上の医療情報のそれぞれから認証情報及び時間情報を読み出してもよい。同じ医療情報から読み出された認証情報及び時間情報は互いに関連付けられている。
【0165】
中継装置4000は、ステップS12で可搬型記憶装置3000から読み出された認証情報及び時間情報を、通信ネットワーク1100を介して管理サーバ5000に転送する(S13)。
【0166】
管理サーバ5000は、ステップS13で中継装置4000から送信された認証情報及び時間情報を受信する。管理サーバ5000は、
図7Aの認証情報照合部5410により、この認証情報を医療情報データベース5200と照合する(S14)。つまり、認証情報照合部5410は、ステップS13で中継装置4000から送信された認証情報に対応する認証情報が医療情報データベース5200に含まれているか判定する。そのために、例えば、認証情報照合部5410は、ステップS13で中継装置4000から送信された認証情報と、医療情報データベース5200中の各認証情報とを照合することで、中継装置4000から送信された認証情報と同じ被検者に対応する認証情報を医療情報データベース5200から探索する。
【0167】
ステップS14の照合に成功しなかった場合(S15:No)、つまり、中継装置4000から送信された認証情報と同じ被検者に対応する認証情報が医療情報データベース5200から探索されなかった場合、動作は
図10CのステップS21に移行する。なお、ステップS14の照合に成功しなかったことは、当該被検者の医療情報が医療情報データベース5200に未だ保存されていないことを意味する。
【0168】
一方、ステップS14の照合に成功した場合(S15:Yes)、つまり、当該被検者の医療情報が医療情報データベース5200に既に保存されている場合、時間情報照合部5420は、ステップS13で中継装置4000から送信された時間情報を医療情報データベース5200と照合する(S16)。時間情報照合部5420は、ステップS13で中継装置4000から送信された時間情報に対応する時間情報(検査歴)が医療情報データベース5200に含まれているか判定する。そのために、例えば、時間情報照合部5420は、ステップS13で中継装置4000から送信された時間情報と、ステップS14で医療情報データベース5200から探索された認証情報に関連付けられた1以上の検査歴とを照合することで、中継装置4000から送信された時間情報に対応する時間情報を当該被検者の医療情報のうちから探索する。
【0169】
ステップS16の照合に成功しなかった場合(S17:No)、つまり、中継装置4000から送信された時間情報に対応する時間情報が当該被検者の医療情報のうちから探索されなかった場合、動作は
図10DのステップS31に移行する。なお、ステップS16の照合に成功しなかったことは、可搬型記憶装置3000に記憶されている当該被検者の検査データが医療情報データベース5200に未だ保存されていないことを意味する。
【0170】
一方、ステップS16の照合に成功した場合(S17:Yes)、中継装置4000から送信された時間情報に対応する時間情報が当該被検者の医療情報のうちから探索された場合、動作は
図10EのステップS41に移行する。なお、ステップS16の照合に成功したことは、可搬型記憶装置3000に記憶されている当該被検者の検査データが医療情報データベース5200に既に保存されていることを意味する。
【0171】
次に
図10Cを参照する。
図10CのステップS21は、ステップS14の照合に成功しなかった場合(S15:No)、つまり、当該被検者の医療情報が医療情報データベース5200に未だ保存されていないと判断された場合に実行される。
【0172】
ステップS21において、管理サーバ5000は、例えば制御部5100、データ処理部5400又は医療情報データベース5200により、当該被検者の識別子(被検者ID)を発行する(S21)。
【0173】
次に、管理サーバ5000は、例えば制御部5100又は医療情報データベース5200により、ステップS21で発行された被検者IDに対応する記憶領域を医療情報データベース5200内に作成する(S22)。
【0174】
次に、管理サーバ5000は、例えば制御部5100又は医療情報データベース5200により、ステップS22で作成された記憶領域に、ステップS13で中継装置4000から送信された認証情報及び時間情報を格納する(S23)。医療情報データベース5200に格納された時間情報は検査歴として扱われる。
【0175】
次に、管理サーバ5000は、ステップS23で当該被検者IDに対応する記憶領域に保存された認証情報と、ステップS14及びS16の照合結果とを、通信ネットワーク1100を介して中継装置4000に送信する(S24)。
【0176】
中継装置4000は、ステップS24で管理サーバ5000から送信された認証情報及び照合結果を受信する。中継装置4000等は、この照合結果(認証情報の照合及び時間情報の照合の双方に失敗したこと)に対応し、次のような処理を実行する。
【0177】
中継装置4000は、受信した認証情報に対応する検査データを可搬型記憶装置3000に要求する(S25)。可搬型記憶装置3000は、ステップS25の要求に応じ、当該認証情報に対応する検査データを管理サーバ5000に送る(S26)。中継装置4000又は可搬型記憶装置3000は、中継装置4000により読み出された検査データに対応する医療情報を、可搬型記憶装置3000から削除する(S27)。中継装置4000は、ステップS26で可搬型記憶装置3000から送られた検査データを受け付ける(S28)。
【0178】
例えば、中継装置4000は、まず、可搬型記憶装置3000に記憶されている認証情報のうちから、受信した認証情報と同じ認証情報を特定する。更に、中継装置4000は、特定された認証情報に関連付けられた検査データ、つまり、特定された認証情報が属する医療情報に含まれる検査データを、可搬型記憶装置3000から読み出す。
【0179】
中継装置4000は、ステップS28で取得された検査データを認証情報とともに管理サーバ5000に転送する(S29)。
【0180】
管理サーバ5000は、ステップS29で中継装置4000から送信された検査データ及び認証情報を受信する。管理サーバ5000は、受信した認証情報と、医療情報データベース5200中の認証情報との照合により、受信した認証情報に対応する記憶領域(ステップS22を参照)を特定する。管理サーバ5000は、特定された記憶領域に、ステップS29で中継装置4000から送信された検査データを格納する(S30)。これにより、当該被検者に対応する医療情報データベース5200中の記憶領域に、当該被検者の検査データを保存することができる。以上で、本動作例に係る処理は終了となる(エンド)。
【0181】
なお、ステップS24において、認証情報の代わりに又はそれに加えて、ステップS21で発行された被検者IDを中継装置4000に送信してもよい。その場合、ステップS29において、認証情報の代わりに又はそれに加えて、被検者IDを管理サーバ5000に送信することができる。更に、ステップS30において、被検者IDを用いて、当該被検者に対応する記憶領域を特定することができる。
【0182】
次に
図10Dを参照する。
図10DのステップS31は、ステップS16の照合に成功しなかった場合(S17:No)、つまり、可搬型記憶装置3000に記憶されている当該被検者の検査データが医療情報データベース5200に未だ保存されていないと判断された場合に実行される。なお、当該被検者に対応する記憶領域は、既に、医療情報データベース5200に作成されている。
【0183】
ステップS31において、管理サーバ5000は、例えば制御部5100又は医療情報データベース5200により、当該被検者に対応する記憶領域に、ステップS13で中継装置4000から送信された時間情報を格納する(S31)。医療情報データベース5200に格納された時間情報は検査歴として扱われる。
【0184】
また、ステップS13で中継装置4000から送信された認証情報を当該記憶領域に格納してもよい。例えば、ステップS13で中継装置4000から送信された認証情報で検査歴を更新することができる。検査歴の更新は、例えば、過去の認証情報(検査歴)を新たな認証情報で置換すること、又は、新たな認証情報を検査歴リストに追加することであってよい。
【0185】
次に、管理サーバ5000は、当該被検者の認証情報と、ステップS14及びS16の照合結果とを、通信ネットワーク1100を介して中継装置4000に送信する(S32)。
【0186】
中継装置4000は、ステップS32で管理サーバ5000から送信された認証情報及び照合結果を受信する。中継装置4000等は、この照合結果(認証情報の照合に成功し、時間情報の照合に失敗したこと)に対応し、次のような処理を実行する。
【0187】
中継装置4000は、受信した認証情報に対応する検査データを可搬型記憶装置3000に要求する(S33)。可搬型記憶装置3000は、ステップS33の要求に応じ、当該認証情報に対応する検査データを管理サーバ5000に送る(S34)。中継装置4000又は可搬型記憶装置3000は、中継装置4000により読み出された検査データに対応する医療情報を、可搬型記憶装置3000から削除する(S35)。中継装置4000は、ステップS34で可搬型記憶装置3000から送られた検査データを受け付ける(S36)。
【0188】
中継装置4000は、ステップS33~S36で可搬型記憶装置3000から読み出された検査データを認証情報とともに管理サーバ5000に転送する(S37)。
【0189】
管理サーバ5000は、ステップS37で中継装置4000から送信された検査データ及び認証情報を受信する。管理サーバ5000は、受信した認証情報と、医療情報データベース5200中の認証情報との照合により、受信した認証情報に対応する記憶領域を特定する。管理サーバ5000は、特定された記憶領域に、ステップS37で中継装置4000から送信された検査データを格納する(S38)。これにより、当該被検者に対応する医療情報データベース5200中の記憶領域に、当該被検者の検査データを保存することができる。以上で、本動作例に係る処理は終了となる(エンド)。
【0190】
なお、ステップS32において、認証情報の代わりに又はそれに加えて、当該被検者の被検者IDを中継装置4000に送信してもよい。その場合、ステップS37において、認証情報の代わりに又はそれに加えて、被検者IDを管理サーバ5000に送信することができる。更に、ステップS38において、被検者IDを用いて、当該被検者に対応する記憶領域を特定することができる。
【0191】
次に
図10Eを参照する。
図10EのステップS41は、ステップS16の照合に成功した場合(S17:Yes)、つまり、可搬型記憶装置3000に記憶されている当該被検者の検査データが医療情報データベース5200に既に保存されていると判断された場合に実行される。なお、当該被検者に対応する記憶領域は、既に、医療情報データベース5200に作成されている。
【0192】
ステップS41において、管理サーバ5000は、当該被検者の認証情報と、ステップS14及びS16の照合結果とを、通信ネットワーク1100を介して中継装置4000に送信する(S41)。
【0193】
中継装置4000は、ステップS41で管理サーバ5000から送信された認証情報及び照合結果を受信する。中継装置4000等は、この照合結果(認証情報の照合に成功し、時間情報の照合にも成功したこと)に対応し、次のような処理を実行する。
【0194】
中継装置4000は、受信した認証情報に対応する医療情報の削除を可搬型記憶装置3000に要求する(S42)。可搬型記憶装置3000は、ステップS42の要求に応じ、当該認証情報に対応する医療情報を削除する(S43)。以上で、本動作例に係る処理は終了となる(エンド)。
【0195】
以上に説明した第1の動作例に係る処理(工程)が、可搬型記憶装置3000に格納されている医療情報それぞれ(認証情報それぞれ)について実行される。つまり、第1の動作例に係る任意の処理(工程)が、可搬型記憶装置3000に記憶されている全ての被検者の医療情報に対して逐次に適用される。
【0196】
以上に説明した第1の動作例では、認証情報の照合及び時間情報の照合を管理サーバ5000が行っている。次に説明する第2の動作例では、中継装置4000が時間情報の照合(検査歴の照合)を実行する。第2の動作例を
図11A~
図11Cに示す。第1の動作例における任意の事項を第2の動作例に適用することができる。
【0197】
図11Aに示す動作は、第1の動作例のステップS6(
図10A)に続いて実行される。まず、出張検査サイトで収集された医療情報を記憶した可搬型記憶装置3000が中継装置4000に接続される(S51)。中継装置4000は、可搬型記憶装置3000から認証情報を読み出す(S52)。中継装置4000は、ステップS52で可搬型記憶装置3000から読み出された認証情報を、通信ネットワーク1100を介して管理サーバ5000に転送する(S53)。
【0198】
管理サーバ5000は、ステップS53で中継装置4000から送信された認証情報を受信する。管理サーバ5000は、
図7Aの認証情報照合部5410により、この認証情報を医療情報データベース5200と照合する(S54)。
【0199】
ステップS54の照合に成功しなかった場合(S55:No)、動作は
図11BのステップS61に移行する。一方、ステップS54の照合に成功した場合(S55:Yes)、動作は
図11CのステップS71に移行する。
【0200】
次に
図11Bを参照する。まず、管理サーバ5000は、当該被検者の識別子(被検者ID)を発行する(S61)。次に、管理サーバ5000は、この被検者IDに対応する記憶領域を医療情報データベース5200内に作成する(S62)。次に、管理サーバ5000は、新たに作成された当該被検者に対応する記憶領域に、ステップS53で中継装置4000から送信された認証情報を格納する(S63)。
【0201】
次に、管理サーバ5000は、当該被検者の被検者IDと、ステップS63で当該記憶領域に保存された認証情報と、ステップS54の照合結果とを、通信ネットワーク1100を介して中継装置4000に送信する(S64)。
【0202】
中継装置4000は、ステップS64で管理サーバ5000から送信された被検者ID、認証情報及び照合結果を受信する。中継装置4000等は、この照合結果(認証情報の照合に失敗したこと)に対応し、次のような処理を実行する。
【0203】
中継装置4000は、受信した認証情報に対応する検査データを可搬型記憶装置3000に要求する(S65)。可搬型記憶装置3000は、当該認証情報に対応する検査データを管理サーバ5000に送る(S66)。中継装置4000又は可搬型記憶装置3000は、この検査データに対応する医療情報を可搬型記憶装置3000から削除する(S67)。中継装置4000は、ステップS66で可搬型記憶装置3000から送られた検査データを受け付ける(S68)。
【0204】
中継装置4000は、ステップS28で取得された検査データを被検者IDとともに管理サーバ5000に転送する(S69)。なお、被検者IDの代わりに又はそれに加えて認証情報を送信してもよい。
【0205】
管理サーバ5000は、ステップS69で中継装置4000から送信された検査データ及び被検者IDを受信する。管理サーバ5000は、受信した被検者IDに対応する医療情報データベース5200内の記憶領域を特定する。管理サーバ5000は、特定された記憶領域に、ステップS69で中継装置4000から送信された検査データを格納する(S70)。これにより、当該被検者に対応する医療情報データベース5200中の記憶領域に、当該被検者の検査データを保存することができる。以上で、本動作例に係る処理は終了となる(エンド)。
【0206】
なお、ステップS68において認証情報に対応する時間情報及び検査データを可搬型記憶装置3000から読み出し、ステップS69において時間情報と検査データと被検者ID(及び/又は認証情報)とを送信し、ステップS70において時間情報及び検査データを保存するようにしてもよい。例えば、ステップS70において、検査歴の追加又は更新が行われる。
【0207】
次に
図11Cを参照する。まず、管理サーバ5000は、当該被検者に対応する記憶領域から検査歴を読み出す(S71)。次に、管理サーバ5000は、当該被検者の被検者IDと、認証情報と、ステップS71で読み出された検査歴と、ステップS54の照合結果とを、通信ネットワーク1100を介して中継装置4000に送信する(S72)。
【0208】
中継装置4000は、ステップS72で管理サーバ5000から送信された被検者ID、認証情報、検査歴及び照合結果を受信する。中継装置4000等は、この照合結果(認証情報の照合に成功したこと)に対応し、次のような処理を実行する。
【0209】
中継装置4000は、時間情報照合部4420により、ステップS72で管理サーバ5000から送信された検査歴と、可搬型記憶装置3000に記憶されている時間情報とを照合する(S73)。例えば、中継装置4000は、受信した認証情報に基づいて当該被検者に対応する時間情報を特定し、特定された時間情報と当該検査歴との間の照合を実行する。
【0210】
ステップS73の照合に成功しなかった場合(S74:No)、動作はステップS75に移行する。一方、ステップS73の照合に成功した場合(S74:Yes)、動作はステップS77に移行する。
【0211】
ステップS73の照合に成功した場合(S74:Yes)、中継装置4000又は可搬型記憶装置3000は、当該認証情報に対応する検査データに対応する医療情報を、可搬型記憶装置3000から削除する(S77)。
【0212】
一方、ステップS73の照合に成功しなかった場合(S74:No)、中継装置4000は、受信した認証情報に対応する検査データを可搬型記憶装置3000に要求する(S75)。可搬型記憶装置3000は、ステップS75の要求に応じ、当該認証情報に対応する検査データを管理サーバ5000に送る(S76)。中継装置4000又は可搬型記憶装置3000は、中継装置4000により読み出された検査データに対応する医療情報を、可搬型記憶装置3000から削除する(S77)。中継装置4000は、ステップS76で可搬型記憶装置3000から送られた検査データを受け付ける(S78)。
【0213】
中継装置4000は、ステップS75~S78で可搬型記憶装置3000から読み出された検査データを被検者IDとともに管理サーバ5000に転送する(S79)。
【0214】
管理サーバ5000は、ステップS79で中継装置4000から送信された検査データ及び被検者IDを受信する。管理サーバ5000は、受信した被検者IDに基づいて当該被検者の記憶領域を特定し、ステップS79で中継装置4000から送信された検査データをこの記憶領域に格納する(S80)。これにより、当該被検者に対応する医療情報データベース5200中の記憶領域に、当該被検者の検査データを保存することができる。以上で、本動作例に係る処理は終了となる(エンド)。
【0215】
なお、ステップS78において認証情報に対応する時間情報及び検査データを可搬型記憶装置3000から読み出し、ステップS79において時間情報と検査データと被検者ID(及び/又は認証情報)とを送信し、ステップS80において時間情報及び検査データを保存するようにしてもよい。例えば、ステップS80において、検査歴の追加又は更新が行われる。
【0216】
以上に説明した第2の動作例に係る処理(工程)が、可搬型記憶装置3000に格納されている医療情報それぞれ(認証情報それぞれ)について実行される。つまり、第2の動作例に係る任意の処理(工程)が、可搬型記憶装置3000に記憶されている全ての被検者の医療情報に対して逐次に適用される。
【0217】
第1又は第2の動作例によれば、当該被検者から同一検査日に取得された検査データが既に医療情報データベース5200に保存されているか確認できる。そして、未だ医療情報データベース5200に保存されていない場合にのみ、当該被検者から新たに取得された検査データを中継装置4000を介して管理サーバ5000に送ることができる。
【0218】
このような処理を可搬型記憶装置3000内の認証情報それぞれについて行うことで、可搬型記憶装置3000に記憶されている各検査データについて、同一被検者の同一検査日の検査データが既に医療情報データベース5200に保存されているか確認することができ、未だ医療情報データベース5200に保存されていない検査データのみを医療情報データベース5200に保存することができる。よって、被検者及び検査日の双方を基準として漏れもダブりも無いように医療情報データベース5200を構築することが可能である。このように、本態様により提供される技術は、ネットワーク環境が悪い地域における出張検査の好適化に寄与する。
【0219】
なお、第1又は第2の動作例に係る処理の対象とならない医療情報が可搬型記憶装置3000に記憶されている場合も想定される。このような医療情報を削除することも可能であるが、削除せずに可搬型記憶装置3000に残しておくことや、他の装置(例えば中継装置4000又はその周辺機器)に記憶しておくことも可能である。
【0220】
第1及び第2の動作例は、可搬型記憶装置3000に記憶された情報を逐次に読み出して処理を行っている。典型的には、第1及び第2の動作例は、可搬型記憶装置3000に記憶された医療情報を被検者毎に逐次に読み出して処理を行っている。
【0221】
これに対し、可搬型記憶装置3000に記憶された医療情報を全て読み出してから処理を行うように医療システム1000を構成してもよい。その場合、例えば、可搬型記憶装置3000に記憶されている全てのデータを中継装置4000又はその周辺機器に移行する。可搬型記憶装置3000内の全てのデータの移行が完了したら、中継装置4000と可搬型記憶装置との間の接続を解除する。移行されたデータは全て可搬型記憶装置3000から削除される。その後、例えば、
図10BのステップS13以降の処理(第1の動作例)、又は、
図11AのステップS53以降の処理(第2の動作例)が実行される。
【0222】
<第2の態様>
第1の態様では、可搬型記憶装置3000に記憶されているデータを管理サーバ5000に送るために中継装置4000を経由しているが、幾つかの例示的な態様では、中継装置4000が用いられない。本態様では、そのような医療システムの例を説明する。なお、第1の態様に係る任意の事項を本態様に組み合わせることが可能である。
【0223】
図12に示す医療システム1000Aは、T個の携帯情報端末8000-tと、第1の態様と同様の機能及び構成を有する管理サーバ5000とを含む。ここで、Tは1以上の正の整数であり、tはT以下の正の整数である。以下、T個の携帯情報端末8000-tのうちの任意の1つを符号8000で示すことがある。医療システム1000Aは、医療検査装置2000を更に含んでもよい。
【0224】
符号1100は、通信ネットワーク1100の利用可能エリアを示す。本例では、典型的には、利用可能エリア内において通信ネットワーク1100に無線接続が可能である。利用可能エリア内にある携帯情報端末8000は、通信ネットワーク1100を介して管理サーバ5000との間においてデータ通信が可能である。
【0225】
携帯情報端末8000の構成例を
図13に示す。本例の携帯情報端末8000は、制御部8100と、記憶部8200と、通信部8300と、データ処理部8400と、ユーザインターフェイス(UI)8500とを含む。携帯情報端末8000は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、ノートパソコンなどであってよい。
【0226】
制御部8100は、携帯情報端末8000の各部を制御する。制御部8100は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、制御プログラム等が記憶されている。制御プログラム等は、携帯情報端末8000がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。制御部8100の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。制御部8100は、第1の態様における中継装置4000の制御部4100と同様の機能及び同様の構成を備えていてよい。
【0227】
記憶部8200は、第1の態様の可搬型記憶装置3000の代替である。記憶部82000は、医療検査装置2000を用いて医療検査が施された被検者の認証情報と、この医療検査により当該被検者から取得された検査データとを少なくとも含む医療情報を記憶する。医療情報には、医療検査に対応する時間情報が含まれてもよい。
【0228】
通信部8300は、通信ネットワーク1100を介してデータ通信を行うための通信デバイスを含む。
【0229】
データ処理部8400は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部8400は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置などを含む。補助記憶装置には、データ処理プログラム等が記憶されている。データ処理プログラム等は、携帯情報端末8000がアクセス可能なコンピュータや記憶装置に記憶されていてもよい。データ処理部8400の機能は、データ処理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0230】
データ処理部8400は、認証情報照合部、時間情報照合部、認証情報生成部、及び、時間情報生成部のいずれかを含んでいてよい。これらの要素のそれぞれは、第1の態様における対応要素と同様の機能及び同様の構成を備えていてよい。データ処理部8400は、第1の態様における中継装置4000のデータ処理部4400と同様の機能及び同様の構成を備えていてよい。
【0231】
ユーザインターフェイス8500は、表示デバイス、操作デバイスなどを含む。
【0232】
医療システム1000Aの動作について説明する。医療システム1000Aの動作の例を
図14に示す。
図14に示す一連の工程は、例えば、第1の態様の
図10Aに示す一連の工程の代わりに実行される。
【0233】
まず、検者は、例えば医療検査装置2000(スリットランプ顕微鏡1)及び携帯情報端末8000を載せた車両で出張検査サイトへ移動する。このとき、時間情報生成装置6000及び/又は認証情報生成装置7000を携行してもよい。
【0234】
出張検査サイトにおいて、検者は、医療検査装置2000を用いて被検者の検査を行うことで、その被検者の検査データが取得される(S81)。更に、その被検者について、認証情報の生成(S82)と、時間情報の生成(S83)とが実行される。なお、検査データの取得、認証情報の生成、及び時間情報の生成を行うタイミングや順序は任意である。
【0235】
医療検査装置2000又は携帯情報端末8000は、その被検者についての検査データ、認証情報及び時間情報を、その被検者の医療情報として管理することができる。このようにして得られた被検者の医療情報は、携帯情報端末8000の記憶部8200に記憶される(S84)。
【0236】
出張検査サイトにいる全ての被検者の医療情報が得られるまでステップS81~S84が繰り返される(S85:Yes)。全ての被検者の医療情報が得られたら(S85:No)、検者は、医療検査装置2000、携帯情報端末8000等を車両に載せて中継サイトへ移動する(S86)。中継サイトは、可搬型記憶装置3000に記憶された医療情報を管理サーバ5000へ送るためのサイトである。本態様の中継サイトは、利用可能エリア内の任意のサイトであってよい。なお、他の出張検査サイトを経由して中継サイトへ移動してもよい。その場合、その出張検査サイトにおいてステップS81~S85の工程が実行される。
【0237】
出張検査サイトで収集された医療情報を記憶した携帯情報端末8000が中継サイトに入ると、携帯情報端末8000は、通信ネットワーク1100を介した管理サーバ5000との間の通信を確立する(S87)。通信確立後、本例の動作は、第1の態様における
図10BのステップS12、又は、
図11AのステップS52に移行する。ステップS12又はS52以降において実行される処理は、第1の態様のそれと同様であってよい。
【0238】
このような本態様により提供される技術は、第1の態様と同様に、ネットワーク環境が悪い地域における出張検査の好適化に寄与する。
【0239】
以上に説明した幾つかの態様は本発明の例示に過ぎない。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を上記の態様に対して適宜に施すことが可能である。
【符号の説明】
【0240】
1000、1000A 医療システム
1100 通信ネットワーク
1200 利用可能エリア
2000 医療検査装置
3000 可搬型記憶装置
4000 中継装置
5000 管理サーバ
8000 携帯情報端末