(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物の硬化方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240208BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20240208BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L79/00
C08K5/3445
(21)【出願番号】P 2019174724
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 展幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 有馬
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034995(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044719(WO,A1)
【文献】特開平08-176324(JP,A)
【文献】特開2016-032923(JP,A)
【文献】特開2021-050287(JP,A)
【文献】特開2019-116545(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163222(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/164259(WO,A1)
【文献】特開2008-081727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、下記式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物、及び下記式(2)で表されるイミダゾール化合物を含み、前記イミダゾール化合物の含有量が、前記ポリカルボジイミド化合物100質量部に対して0.5~3.0質量部であるエポキシ樹脂組成物を、加熱開始温度20~110℃、昇温速度2~50℃/分、最高加熱温度170~230℃で加熱硬化させる、エポキシ樹脂組成物の硬化方法。
R
1-X
1-R
3-(N=C=N-R
3)
n-X
2-R
2 (1)
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、
水酸基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシ基又はカルボン酸無水物を1つ有する有機化合物から前記官能基を除いた残基である。
R
3は、下記(i)又は(ii)の各ジイソシアネート化合物の1分子から2つのイソシアネート基を除いた2価の残基である。
(i)2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを3/7~7/3のモル比で含むジイソシアネート化合物
(ii)ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、前記有機化合物の前記官能基と、前記ジイソシアネート化合物の前記イソシアネート基との反応により形成される結合である。
nは、2~30の整数を表す。)
【化1】
(式(2)中、R
11は、水素原子、メチル基又はベンジル基である。
R
12は、水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基又はフェニル基である。
R
13は、水素原子又はメチル基である。)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる際の合計加熱時間が60~240分である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化方法。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記ポリカルボジイミド化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、カルボジイミド基が0.1~2.0モルとなる量である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化方法。
【請求項4】
前記式(1)における有機化合物が、モノイソシアネート、モノアルコール、モノアミン、モノカルボン酸及びカルボン酸無水物のうちから選ばれる1種以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の硬化方法。
【請求項5】
前記式(2)におけるR
11が水素原子又はメチル基、R
12がメチル基又はエチル基、R
13が水素原子又はメチル基である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の硬化方法。
【請求項6】
前記イミダゾール化合物が、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、及び2-エチル-4-メチルイミダゾールのうちから選ばれる1種以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボジイミド化合物を含むエポキシ樹脂組成物の硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、電気絶縁性に優れた熱硬化性樹脂であり、その特性を活かして、例えば、電子基板材料や半導体素子の封止材料等の各種電子部品用途で利用されている。このような用途で用いられるエポキシ樹脂には、耐熱性や寸法安定性、ハンドリング性等の種々の特性のさらなる改善が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1に、エポキシ樹脂に、所定のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)由来のポリカルボジイミド化合物を添加することにより、保存安定性に優れ、かつ、ハンドリング性及び成形性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のMDI由来のポリカルボジイミド化合物が添加されたエポキシ樹脂組成物を硬化させた場合、該ポリカルボジイミド化合物の反応性が必ずしも高いものとは言えなかった。このため、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物中には、未反応のポリカルボジイミド化合物が残存し、エポキシ樹脂の加熱時の寸法安定性や耐熱性の向上効果を十分に得られない場合があった。
【0006】
したがって、エポキシ樹脂に添加されたポリカルボジイミド化合物の該エポキシ樹脂に対する反応性の向上が求められていた。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ポリカルボジイミド化合物を含むエポキシ樹脂組成物について、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応性を高めて、該エポキシ樹脂の硬化物の加熱時の寸法安定性や耐熱性をより向上させることができるエポキシ樹脂組成物の硬化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定のポリカルボジイミド化合物を、所定のイミダゾール化合物とともにエポキシ樹脂に添加し、所定の加熱温度条件下で硬化させることにより、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応性を高めることができることを見出したことに基づくものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]エポキシ樹脂、下記式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物、及び下記式(2)で表されるイミダゾール化合物を含むエポキシ樹脂組成物を、加熱開始温度20~110℃、昇温速度2~50℃/分、最高加熱温度170~230℃で加熱硬化させる、エポキシ樹脂組成物の硬化方法。
R
1-X
1-R
3-(N=C=N-R
3)
n-X
2-R
2 (1)
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、イソシアネート基との反応性を有する官能基を1つ有する有機化合物から前記官能基を除いた残基である。
R
3は、下記(i)又は(ii)の各ジイソシアネート化合物の1分子から2つのイソシアネート基を除いた2価の残基である。
(i)2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを3/7~7/3のモル比で含むジイソシアネート化合物
(ii)ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、前記有機化合物の前記官能基と、前記ジイソシアネート化合物の前記イソシアネート基との反応により形成される結合である。
nは、2~30の整数を表す。)
【化1】
(式(2)中、R
11は、水素原子、メチル基又はベンジル基である。
R
12は、水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基又はフェニル基である。
R
13は、水素原子又はメチル基である。)
[2]前記エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる際の合計加熱時間が60~240分である、上記[1]に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化方法。
[3]前記エポキシ樹脂組成物中の前記ポリカルボジイミド化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、カルボジイミド基が0.1~2.0モルとなる量である、上記[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化方法。
[4]前記エポキシ樹脂組成物中の前記イミダゾール化合物の含有量が、前記ポリカルボジイミド化合物100質量部に対して、0.5~10質量部である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化方法。
[5]前記式(1)における有機化合物が、モノイソシアネート、モノアルコール、モノアミン、モノカルボン酸及びカルボン酸無水物のうちから選ばれる1種以上である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の硬化方法。
[6]前記式(2)におけるR
11が水素原子又はメチル基、R
12がメチル基又はエチル基、R
13が水素原子又はメチル基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の硬化方法。
[7]前記イミダゾール化合物が、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、及び2-エチル-4-メチルイミダゾールのうちから選ばれる1種以上である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の硬化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリカルボジイミド化合物を含むエポキシ樹脂組成物において、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応性を高めることができ、加熱時の寸法安定性や耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化方法は、エポキシ樹脂、所定のポリカルボジイミド化合物(A)、及び所定のイミダゾール化合物(B)を含むエポキシ樹脂組成物を、加熱開始温度20~110℃、昇温速度2~50℃/分、最高加熱温度170~230℃で加熱硬化させることを特徴とする。
所定のポリカルボジイミド化合物(A)を、所定のイミダゾール化合物(B)とともにエポキシ樹脂に添加し、上記の加熱温度条件下で硬化させることにより、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性を高めることができる。
【0012】
なお、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性は、エポキシ樹脂に添加されたポリカルボジイミド化合物(A)のカルボジイミド基が、エポキシ樹脂の硬化反応の前後で減少した量を指標として確認することができる。具体的には、下記実施例で述べるように、赤外吸収(IR)スペクトル測定におけるカルボジイミド基由来の波長2150cm-1前後の吸光度のピーク高さに基づいて、反応率を求めることができる。
前記反応率が、70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上であれば、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性が高いと言える。
【0013】
[エポキシ樹脂組成物]
本発明の硬化方法に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物(A)及びイミダゾール化合物(B)を含む。
【0014】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂の硬化物の製造効率等の観点から、室温で液状のエポキシ樹脂や固形のエポキシ樹脂を溶剤に溶解させたものが好適に用いられる。前記エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
<ポリカルボジイミド化合物(A)>
本発明の硬化方法に係るエポキシ樹脂組成物中のポリカルボジイミド化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物である。
R1-X1-R3-(N=C=N-R3)n-X2-R2 (1)
【0016】
(R1及びR2)
前記式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に、イソシアネート基との反応性を有する官能基を1つ有する有機化合物から該官能基を除いた残基である。前記有機化合物は、式(1)で表される化合物において、末端イソシアネート基を封止する末端封止剤である。前記R1及び前記R2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0017】
イソシアネート基との反応性を有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシ基、カルボン酸無水物等が挙げられる。前記官能基が水酸基である場合、該官能基とイソシアネート基との反応により、ウレタン結合が形成される。また、前記官能基がアミノ基である場合はウレア結合、イソシアネート基である場合はカルボジイミド結合、カルボキシ基である場合はアミド結合、カルボン酸無水物である場合はイミド結合が、それぞれ形成される。これらの各官能基とイソシアネート基との反応により形成される結合が、前記式(1)におけるX1及びX2に相当する。
【0018】
前記有機化合物としては、例えば、モノイソシアネート、モノアルコール、モノアミン、モノカルボン酸、カルボン酸無水物等が挙げられる。前記有機化合物は、これらのうちの1種単独であっても、2種以上であってもよい。
前記有機化合物がモノイソシアネートである場合は、前記末端イソシアネート基との反応でカルボジイミド結合(カルボジイミド基)が生成することにより、ポリカルボジイミド化合物(A)中のカルボジイミド基の含有割合を高めることができる。
【0019】
前記モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、R3の由来化合物であるジイソシアネート化合物との反応性の観点から、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネートが好ましく、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートがより好ましい。
【0020】
前記モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール、クレゾール、ナフトール等が挙げられる。
前記モノアミンとしては、例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、へプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタン酢酸、安息香酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
前記カルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸等が挙げられる。
【0021】
(R3)
前記式(1)におけるR3は、下記(i)又は(ii)の各ジイソシアネート化合物(B)の1分子から2つのイソシアネート基を除いた2価の残基である。前記式(1)における複数のR3は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
(i)2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)とを30/70~70/30のモル比で含むジイソシアネート化合物(MDI)
(ii)ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)
【0022】
前記(i)における2,4’-MDIと4,4’-MDIとは、2つのベンゼン環にそれぞれ結合するイソシアネート基の結合位置が異なる異性体である。2,4’-MDIは、4,4’-MDIに比べて、2つのイソシアネート基が近い位置にあり、ポリカルボジイミド化する際に、立体障害によって結晶性を低下させやすくするものと考えられる。
【0023】
前記(i)において、2,4’-MDIと4,4’-MDIとのモル比は、該ジイソシアネート化合物を重合して得られるポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性の観点から、30/70~70/30であり、好ましくは40/60~65/35、さらに好ましくは50/50~60/40である。
2,4’-MDIと4,4’-MDIとのモル比が30/70未満である場合、これを重合して得られるポリカルボジイミド化合物の結晶性が高くなり、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応性は高くなる傾向にあるものの、有機溶剤への溶解性が低下し、取り扱い難くなる。
一方、前記モル比が70/30を超える場合、前記立体障害が大きくなることにより、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応性が低下しやすい。
【0024】
前記(ii)のHMDIは、4,4’-MDIの2個のベンゼン環をシクロヘキサン環に置き換えた化合物であり、水添MDIとも呼ばれる脂環式ジイソシアネート化合物である。HMDIは、4,4’-MDIと類似の構造を有しており、該ジイソシアネート化合物を重合して得られるポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性を向上させることができる。
【0025】
(X1及びX2)
前記式(1)におけるX1及びX2は、それぞれ独立に、前記有機化合物の前記官能基と、R3の由来化合物であるジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応により形成される結合を表している。前記X1及びX2は、上述したように、前記有機化合物に対応する結合であり、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
前記X1及びX2の結合は、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応点を多くして、該エポキシ樹脂の架橋密度を高める観点から、カルボジイミド結合であることが好ましい。
【0026】
(n)
前記式(1)におけるnは、R3の由来化合物である前記ジイソシアネート化合物同士の重合(脱炭酸縮合反応)により生成したカルボジイミド基の数を指し、重合して得られたポリカルボジイミド化合物における平均値で表す。
前記nは、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性やハンドリング性等の観点から、2~30の数であり、好ましくは3~25、より好ましくは4~20の数である。
前記nが2未満である場合、該ポリカルボジイミド化合物のエポキシ樹脂に対する反応点が少なくなり、該エポキシ樹脂の架橋密度を高めることが困難である。
一方、前記nが30を超える場合、該ポリカルボジイミド化合物がゲル化しやすくなり、エポキシ樹脂に適用する際のハンドリング性に劣る。
【0027】
前記エポキシ樹脂組成物中のポリカルボジイミド化合物(A)の含有量は、所望の寸法安定性や耐熱性等を備えたエポキシ樹脂の硬化物を効果的に得る観点から、前記エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、ポリカルボジイミド化合物(A)のカルボジイミド基が、好ましくは0.1~2.0モル、より好ましくは0.2~1.5モル、さらに好ましくは0.3~1.0モルとなる量であることが好ましい。
前記カルボジイミド基が0.1モル以上であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の加熱時の寸法安定性や耐熱性等において、十分な向上効果が得られる。また、ポリカルボジイミド化合物(A)の添加による効果の向上の観点から、カルボジイミド基が2.0モル以下であれば十分な量である。
【0028】
<ポリカルボジイミド化合物(A)の製造方法>
ポリカルボジイミド化合物(A)は、その製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、下記(a)~(c)に示すような合成方法が挙げられる。
(a)前記R3の由来化合物である前記ジイソシアネート化合物及び前記有機化合物(末端封止剤)を混合して、触媒の存在下でカルボジイミド化反応及び末端封止反応を行う方法
(b)前記ジイソシアネート化合物を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させて、イソシアネート末端ポリカルボジイミドを得た後、次いで、前記有機化合物(末端封止剤)を添加して、末端封止反応を行う方法
(c)前記ジイソシアネート化合物及び前記有機化合物を反応させた後、触媒を添加して、カルボジイミド化反応及び末端封止反応を行う方法
これらの合成方法のうち、前記nの数の制御のしやすさの観点から、(a)の方法が好ましい。
【0029】
(カルボジイミド化反応)
前記カルボジイミド化反応は、例えば、前記ジイソシアネート化合物のカルボジイミド化触媒の存在下での重合(脱炭酸縮合反応)であることが好ましい。
前記カルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド及びこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、反応性や入手容易性等の観点から、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシドが好ましい。
前記カルボジイミド化触媒の使用量は、通常、前記ジイソシアネート化合物100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。
【0030】
前記ジイソシアネート化合物の脱炭酸縮合反応は、溶媒中でも、無溶媒でも行うことができる。使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、ジオキソラン等の脂環式エーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パークレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒中で反応を行う場合、前記ジイソシアネート化合物の濃度は、反応系の均一化の観点から、5~55質量%とすることが好ましく、より好ましくは5~20質量%である。
【0031】
前記脱炭酸縮合反応の反応温度は、適度な反応促進やカルボジイミド基の重合度等に応じて適宜設定される。通常は、40~250℃であることが好ましく、より好ましくは50~230℃、さらに好ましくは60~200℃である。溶媒中で反応を行う場合は、40℃~溶媒の沸点の範囲内の温度であることが好ましい。
また、反応時間は、反応温度やカルボジイミド基の重合度等に応じて適宜設定される。通常、0.5~100時間であることが好ましく、より好ましくは1~80時間、さらに好ましくは2~60時間である。
また、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0032】
(末端封止反応)
前記末端封止反応においては、前記ジイソシアネート化合物の重合体の末端イソシアネート基が、前記有機化合物(末端封止剤)で封止される。例えば、上記(a)の方法においては、カルボジイミド化触媒の存在下で前記ジイソシアネート化合物及び前記有機化合物(末端封止剤)を加熱することにより、前記ジイソシアネート化合物のカルボジイミド化反応とともに、末端封止反応を行うことができる。
【0033】
前記末端封止反応の反応温度は、副反応を抑制し、反応を促進し得る範囲内で適宜設定される。通常、40~250℃であることが好ましく、より好ましくは80~220℃、さらに好ましくは100~200℃である。
また、末端封止反応の反応時間は、反応温度や副反応を抑制し得る範囲内で適宜設定される。通常、0.1~20時間であることが好ましく、より好ましくは0.5~10時間、さらに好ましくは1~3時間である。上記(a)の方法における末端封止反応の時間は、カルボジイミド化反応に要する時間に含まれるものとする。
【0034】
<イミダゾール化合物(B)>
本発明の硬化方法に係るエポキシ樹脂組成物は、下記式(2)で表されるイミダゾール化合物(B)を含む。ポリカルボジイミド化合物(A)を、イミダゾール化合物(B)とともにエポキシ樹脂に添加することにより、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性を高めることができる。
【0035】
【0036】
前記式(2)におけるR11は、水素原子、メチル基又はベンジル基であり、好ましくは、水素原子又はメチル基である。
R12は、水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基又はフェニル基であり、好ましくは、メチル基又はエチル基である。
R13は、水素原子又はメチル基である。
【0037】
イミダゾール化合物の中には、140℃以上の高温領域でなければ、エポキシ樹脂の硬化反応における十分な活性を示さないものもある。これに対して、本発明におけるイミダゾール化合物(B)は、140℃未満の比較的低い温度領域において、エポキシ樹脂の硬化反応における十分な活性を示すものであり、このようなイミダゾール化合物は、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性を効果的に高めることができる。
【0038】
このように、140℃未満、好ましくは70~130℃の比較的低い温度領域でもエポキシ樹脂の硬化反応において十分な活性を示すイミダゾール化合物としては、前記式(2)におけるR11が水素原子又はメチル基であり、R12がメチル基又はエチル基であり、R13が水素原子又はメチル基であることが、より好ましい。
このようなイミダゾール化合物の具体例としては、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記エポキシ樹脂組成物中のイミダゾール化合物(B)の含有量は、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性を効果的に高める観点から、ポリカルボジイミド化合物(A)100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0質量部、さらに好ましくは1.5~3.0質量部である。
【0040】
<その他の成分>
前記エポキシ樹脂組成物は、該エポキシ樹脂組成物の取り扱い容易性、また、使用用途において求められる性能等の観点から、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内において、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物(A)及びイミダゾール化合物(B)以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、充填剤、離型剤、着色剤、難燃剤、消泡剤等のエポキシ樹脂に適用される公知の添加剤や、溶剤等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂組成物が前記添加剤を含む場合、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性の向上効果を妨げないようにする観点から、該エポキシ樹脂組成物(ただし、溶剤を除く。)100質量%中の前記添加剤の合計含有量は、15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0041】
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物(A)、イミダゾール化合物(B)、及び、必要に応じて添加される前記その他の成分を混合することにより得ることができる。このとき、前記エポキシ樹脂組成物の各成分は、別々に添加されてもよく、あるいはまた、予め混合して一剤化されたものを添加してもよい。
【0042】
[エポキシ樹脂組成物の加熱硬化]
本発明の硬化方法においては、前記エポキシ樹脂組成物を、加熱開始温度20~110℃、昇温速度2~50℃/分、最高加熱温度170~230℃で加熱硬化させる。
このような加熱温度条件下で、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性が高まり、加熱時の寸法安定性や耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られる。
【0043】
前記加熱開始温度が20℃未満の場合、また、前記昇温速度が2℃/分未満の場合は、合計加熱時間が長くなり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の製造効率の低下及びコストの増大につながるため好ましくない。
また、前記最高加熱温度が170℃未満の場合は、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性が不十分となりやすく、加熱時の寸法安定性や耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることが困難である。
また、前記加熱開始温度が110℃超の場合、カルボジイミド基とエポキシ基との反応よりも、エポキシ基同士の反応が進行しやすく、ポリカルボジイミド化合物(A)が残存し、硬化反応が均一に進行しにくい。この場合も、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性は十分とは言えず、加熱時の寸法安定性や耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることは困難である。
また、前記昇温速度が50℃/分超の場合、また、前記最高加熱温度が230℃超の場合は、一般的な加熱装置の仕様を逸脱し、実際的でない。
【0044】
前記加熱開始温度は、エポキシ樹脂の融点等を考慮し、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性やエポキシ樹脂組成物の硬化物の製造効率及びコスト等の観点から、好ましくは25~100℃、より好ましくは30~90℃である。
前記昇温速度は、実際の装置の仕様やエポキシ樹脂組成物の硬化物の加熱時の製造効率及びコスト等の観点から、前記昇温速度は、好ましくは3~40℃/分、より好ましくは5~30℃/分である。
前記最高加熱温度は、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性、及びエポキシ樹脂組成物の硬化物の加熱時の寸法安定性や耐熱性等の観点から、好ましくは180~220℃、より好ましくは190~210℃である。
【0045】
上記のような加熱温度条件下で前記エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる際の合計加熱時間は、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する十分な反応性及び硬化物の製造効率等の観点から、60~240分であることが好ましく、より好ましくは90~210分、さらに好ましくは120~180分である。
【0046】
上記のような加熱温度条件下で前記エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させる際、前記最高加熱温度に到達する過程において、所定時間、温度を保持する工程を設けてもよい。
前記エポキシ樹脂組成物が溶剤を含む場合には、良好な品質の硬化物を得る観点から、前記温度を保持する工程で十分に溶剤を揮発させた後、前記最高加熱温度に到達するようにすることが好ましい。この場合の温度保持時間は、溶剤が十分に揮発させることができる程度でよく、好ましくは1~60分、より好ましくは3~30分、さらに好ましくは5~20分である。
【0047】
また、ポリカルボジイミド化合物(A)のエポキシ樹脂に対する反応性を十分に高める観点から、前記最高加熱温度を所定時間、保持することが好ましい。前記最高加熱温度の保持時間は、好ましくは30~210分、より好ましくは40~180分、さらに好ましくは60~150分である。
【0048】
前記エポキシ樹脂組成物の加熱硬化は、公知の手段を用いて行うことができ、注型、積層、圧縮成形、トランスファー成形、フィラメントワインディング法等の成形方法で得られた各種成形品について行われる。前記成形品は、ガラス繊維や炭素繊維等を含む複合材料からなるものであってもよい。
【0049】
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物中の気泡の残留抑制等の観点からは、前記加熱硬化においては加圧することが好ましい。この場合の加圧圧力は、好ましくは0.5~10MPa、より好ましくは1~5MPa、さらに好ましくは2~4MPaである。
【0050】
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物は、加熱時の寸法安定性に優れている。また、はんだ耐熱性、特に、通常のはんだよりも融点が高い(例えば、288℃)鉛フリーはんだの適用に際しても、優れたはんだ耐熱性を示すものである。
したがって、前記硬化物は、電子基板材料や半導体素子の封止材料等の各種電子部品材料等の用途に好適であり、本発明の硬化方法は、これらの用途における各種材料の製造に好適に適用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0052】
[使用化合物]
下記実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物及びその硬化物の製造に用いたポリカルボジイミド化合物、イミダゾール化合物及びエポキシ樹脂を以下に示す。
【0053】
<エポキシ樹脂>
・N-690:「エピクロン(登録商標)N-690」、DIC株式会社製、エポキシ当量214、クレゾールノボラック型
・HP-7200:「エピクロン(登録商標)HP-7200」、DIC株式会社製、エポキシ当量259、ジシクロペンタジエン型
【0054】
<ポリカルボジイミド化合物>
以下のようにして合成したポリカルボジイミド化合物(A1)及び(A2)を用いた。
【0055】
(ポリカルボジイミド化合物(A1)(MDI由来)の合成)
2,4’-MDIと4,4’-MDI(モル比54/46)の混合物(ミリオネート( 登録商標)NM、東ソー株式会社製)100質量部、フェニルイソシアネート6.3質量部、及びカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.6質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、100℃で2時間撹拌した。IRスペクトル測定(測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計「FTIR-8200PC」、株式会社島津製作所製;以下、同様。)にて、波長2270cm-1前後のイソシアネート基による吸収ピークがほぼ消失したことを確認し、ポリカルボジイミド化合物(A1)を得た(式(1)におけるn=16)。ポリカルボジイミド化合物(A1)は、粉砕機で粉砕して粉末状とした。
【0056】
(ポリカルボジイミド化合物(A2)(HMDI由来)の合成)
HMDI 100質量部、シクロヘキシルイソシアネート6.4質量部、及びカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド1.1質量部を、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、100℃で56時間撹拌した。IRスペクトル測定にて、波長2270cm-1前後のイソシアネート基による吸収ピークがほぼ消失したことを確認し、ポリカルボジイミド化合物(A2)を得た(式(1)におけるn=16)。ポリカルボジイミド化合物(A2)は、粉砕機で粉砕して粉末状とした。
【0057】
<イミダゾール化合物>
・1.2DMZ:1,2-ジメチルイミダゾール;「キュアゾール(登録商標;以下、同様。)1.2DMZ」、四国化成工業株式会社製
・2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール;「キュアゾール 2E4MZ」、四国化成工業株式会社製
・2MZ-H:2-メチルイミダゾール;「キュアゾール 2MZ-H」、四国化成工業株式会社製
・2PHZ-PW:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール;「キュアゾール 2PHZ-PW」、四国化成工業株式会社製
【0058】
(実施例1)
エポキシ樹脂N-690 100質量部に、ポリカルボジイミド化合物(A1) 83質量部、及び1.2DMZ 1.8質量部を添加混合したエポキシ樹脂組成物を、加熱開始温度30℃、昇温速度5℃/分、最高加熱温度200℃で120分保持し、合計加熱時間154分の硬化条件で、ミニテストプレス(株式会社東洋精機製作所製、加圧圧力3.0MPa)にて熱プレスして硬化反応させ、厚さ1mmのシート状のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。
【0059】
(実施例2~10及び比較例1~7)
エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド化合物(A)及びイミダゾール化合物(B)を下記表1に示す種類及び配合量としたエポキシ樹脂組成物を、下記表1に示す各加熱硬化条件にて、実施例1と同様に熱プレスして硬化反応させ、エポキシ樹脂組成物の硬化物をそれぞれ得た。
【0060】
[測定評価]
上記実施例及び比較例で製造したエポキシ樹脂組成物の各硬化物について、以下の各項目の測定評価を行った。これらの測定評価結果を、下記表1にまとめて示す。
【0061】
<反応率>
エポキシ樹脂組成物について、IRスペクトル測定にて、ベンゼン環由来の波長1500cm-1前後の吸光度のピーク高さを基準とし、このピーク高さに対する、カルボジイミド基由来の波長2150cm-1前後の吸光度のピーク高さの比を求めて、これを反応前ピーク強度比P1とした。なお、各ピーク高さは、ベースライン補正した値を用いた。
同様にして、前記エポキシ樹脂組成物を硬化反応させた後の硬化物についても、ピーク高さの比を求めて、これを反応後ピーク強度比P2とした。
そして、反応前ピーク強度比P1及び反応後ピーク強度比P2から、下記式(3)により、反応率X[%]を求めた。
X[%]=(1-P2/P1)×100 (3)
前記反応率Xは、ポリカルボジイミド化合物(A)中のカルボジイミド基のエポキシ樹脂に対する反応性を示しているものであり、数値が大きいほど、該カルボジイミド基の反応性が高いことを表している。
【0062】
<平均線熱膨張係数>
厚さ1mmのシート状のエポキシ樹脂組成物の硬化物から、5mm四方の試験片を切り出した。
この試験片について、熱機械分析装置(「TMA6100」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)にて、10℃/分で昇温し、30~300℃の温度範囲で、試験片の厚み方向の長さの変化を測定し、ガラス転移温度(Tg)及び平均線膨張係数を求めた。30℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度範囲における平均線膨張係数をα1、Tg以上300℃以下の温度範囲における平均線膨張係数をα2とした。
なお、比較例1~3においては、Tgと思われるピークが2つ検出され、低温側のピーク温度を、平均線膨張係数を求める際の基準のTgとした。エポキシ樹脂とポリカルボジイミド化合物(A)とが十分に反応せず、未反応のポリカルボジイミド化合物が多く残存した場合に、ピークが2つ検出されたものと考えられる。
平均線膨張係数は、エポキシ樹脂の種類によって差があるが、値が小さいほど、熱による体積変化が小さく、温度変化に対する寸法安定性に優れたエポキシ樹脂硬化物であると言える。すなわち、エポキシ樹脂の種類が同じである場合、平均熱膨張係数の値が小さいほど、ポリカルボジイミド化合物(A)及びイミダゾール化合物(B)の添加による加熱時の寸法安定性の向上効果が優れていると言える。
【0063】
<はんだ耐熱性>
厚さ1mmのシート状のエポキシ樹脂組成物の硬化物から、5cm四方の試料を切り出した。なお、はんだ耐熱性の評価用試料には、厚さ35μmの銅箔で挟んだ状態で熱プレスして得られた硬化物を用いた。
この試料を288℃のはんだ浴(鉛フリーはんだ)に浸漬し、目視にて視認できる膨れが外観に現れるまでの時間(最長60秒)を耐熱時間として測定した。
前記耐熱時間が50秒を超える場合は、はんだ耐熱性が良好であるものと判定した。
【0064】
【0065】
表1に示した測定評価結果から分かるように、本発明の硬化方法によれば、ポリカルボジイミド化合物(A)のカルボジイミド基のエポキシ樹脂に対する反応性が高く、また、加熱時の寸法安定性に優れ、かつ、はんだ耐熱性にも優れた硬化物が得られることが認められた。