(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 515
(21)【出願番号】P 2019185640
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋一
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056464(JP,A)
【文献】特開2019-160834(JP,A)
【文献】特開2019-125705(JP,A)
【文献】特開2018-073909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、前記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有し、前記第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体を用意し、
前記第1粘着シートを介して
弾性部材が備える第1弾性面に保持された前記複数の積層体の前記第1側面に対して、
剛性押圧体が備える高剛性面による押圧を含む第1条件で、一連の第1サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された
前記第1サイドマージンシートに当接させた弾性体押圧体を、当該弾性体押圧体が前記積層体の間の空間に食い込むように押圧し、前記第1サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第1側面で打ち抜くことによって第1サイドマージン部を形成し、
前記第1サイドマージン部が形成された前記複数の積層体を前記第1粘着シートから第2粘着シートに転写し、
前記第2粘着シート及び前記第1サイドマージン部を介して第2弾性面に保持された前記複数の積層体の前記第2側面に対して、高剛性面による押圧を含み、かつ前記第1条件とは異なる第2条件で、一連の第2サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第2サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、前記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有し、前記第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体を用意し、
前記第1粘着シートを介して第1弾性面に保持された前記複数の積層体の前記第1側面に対して、高剛性面による押圧を含む第1条件で、一連の第1サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第1サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第1側面で打ち抜くことによって第1サイドマージン部を形成し、
前記第1サイドマージン部が形成された前記複数の積層体を前記第1粘着シートから第2粘着シートに転写し、
前記第2粘着シート及び前記第1サイドマージン部を介して第2弾性面に保持された前記複数の積層体の前記第2側面に対して、高剛性面による押圧を含み、かつ前記第1条件とは異なる第2条件で、一連の第2サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第2サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部を
形成し、
前記第2サイドマージンシートを熱圧着するときに、前記第1サイドマージン部を冷却する、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、前記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有し、前記第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体を用意し、
前記第1粘着シートを介して第1弾性面に保持された前記複数の積層体の前記第1側面に対して、高剛性面による押圧を含む第1条件で、一連の第1サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第1サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第1側面で打ち抜くことによって第1サイドマージン部を形成し、
前記第1サイドマージン部が形成された前記複数の積層体を前記第1粘着シートから第2粘着シートに転写し、
前記第2粘着シート及び前記第1サイドマージン部を介して第2弾性面に保持された前記複数の積層体の前記第2側面に対して、高剛性面による押圧を含み、かつ前記第1条件とは異なる第2条件で、一連の第2サイドマージンシートを熱圧着し、
熱圧着された前記第2サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部を
形成し、
前記第1及び第2サイドマージンシートの組成が相互に異なる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1及び第2条件では、前記高剛性面の温度、前記高剛性面から加える押圧力、及び前記高剛性面による押圧時間の少なくとも1つが相互に異なる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1及び第2弾性面の弾性率が相互に異なる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部を後付けする積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造過程においてサイドマージン部を後付けする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、薄いサイドマージン部によっても内部電極が露出した積層体の側面を確実に保護することができるため、積層セラミックコンデンサの小型化及び大容量化に有利である。
【0003】
一例として、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法では、内部電極が印刷されたセラミックシートを積層した積層シートを切断し、内部電極が露出した切断面を側面とする複数の積層体を作製する。そして、積層体の側面でセラミックシートを打ち抜くことにより、積層体の側面にサイドマージン部を形成する。
【0004】
また、特許文献1には、積層体の側面に対するサイドマージン部の接着性を高めるために、加熱しながらセラミックシートを打ち抜く手法が開示されている。この構成では、セラミックシートが打ち抜かれずに潰れることを防止するために、打ち抜き時のセラミックシートの温度を転移点未満に留める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加熱しながらセラミックシートを打ち抜く手法では、積層体の角部付近においてセラミックシートに加わる応力が集中するため、サイドマージン部に局所的な変形が生じやすくなる。また、転移点未満の温度では、打ち抜き後のサイドマージン部の積層体の側面に対する接着性を向上させる効果が得られにくい。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、打ち抜き法によって積層体の側面にサイドマージン部を良好に形成可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、上記第1軸と直交する第2軸方向に対向し、上記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有し、上記第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体が用意される。
上記第1粘着シートを介して第1弾性面に保持された上記複数の積層体の上記第1側面に対して、高剛性面による押圧を含む第1条件で、一連の第1サイドマージンシートが熱圧着される。
熱圧着された上記第1サイドマージンシートを上記複数の積層体の上記第1側面で打ち抜くことによって第1サイドマージン部が形成される。
上記第1サイドマージン部が形成された上記複数の積層体が上記第1粘着シートから第2粘着シートに転写される。
上記第2粘着シート及び上記第1サイドマージン部を介して第2弾性面に保持された上記複数の積層体の上記第2側面に対して、高剛性面による押圧を含み、かつ上記第1条件とは異なる第2条件で、一連の第2サイドマージンシートが熱圧着される。
熱圧着された上記第2サイドマージンシートを上記複数の積層体の上記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部が形成される。
【0009】
この構成では、第1及び第2サイドマージンシートを複数の積層体の側面に熱圧着する際に、弾性変形しない高剛性面によって第1及び第2サイドマージンシートを押圧する。これにより、複数の積層体の側面と第1及び第2サイドマージンシートとの間に不均一な応力が加わりにくくなるため、より均一な厚みの第1及び第2サイドマージン部を形成可能となる。
また、第1サイドマージン部は、打ち抜かれる前の第1サイドマージンシートの熱圧着時のみならず、第2サイドマージンシートの熱圧着時にも、加熱により変形しやすい状態で押圧力を受けることとなる。このため、第1サイドマージン部は、第2サイドマージン部よりも薄くなりやすい。この点、この構成では、第1及び第2サイドマージンシートの熱圧着の条件を相互に異ならせることにより、第1及び第2サイドマージン部に厚みの差が生じにくくなるようにすることができる。
【0010】
上記第1及び第2条件では、上記高剛性面の温度、上記高剛性面から加える押圧力、及び上記高剛性面による押圧時間の少なくとも1つが相互に異なってもよい。
上記第1及び第2サイドマージンシートの組成が相互に異なってもよい。
上記第1及び第2弾性面の弾性率が相互に異なってもよい。
これらの構成では、第1及び第2サイドマージン部の厚みを個別に制御しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明によれば、打ち抜き法によって積層体の側面にサイドマージン部を良好に形成可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】上記製造方法のセラミックシート準備工程で準備されるセラミックシートの平面図である。
【
図6】上記製造方法の積層工程を示す斜視図である。
【
図7】上記製造方法の切断工程を示す平面図である。
【
図9】上記製造方法のサイドマージン部形成工程で得られる未焼成のセラミック素体の斜視図である。
【
図10】上記製造方法におけるサイドマージン部の形成方法を示すフローチャートである。
【
図11】上記形成方法の第1熱圧着工程を示す部分断面図である。
【
図12】上記形成方法の第1打ち抜き工程を示す部分断面図である。
【
図13】上記形成方法の第2熱圧着工程を示す部分断面図である。
【
図14】上記形成方法の第2打ち抜き工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<積層セラミックコンデンサ10>
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10について説明する。なお、
図1~9には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサ10に対して固定された固定座標系を規定する。
【0014】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0015】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸と直交する第1及び第2端面と、Y軸と直交する第1及び第2側面と、Z軸と直交する第1及び第2主面と、を有する6面体として構成される。
【0016】
各外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0017】
なお、外部電極14,15の形状は、
図1に示すものに限定されない。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面から一方の主面のみに延び、X-Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。また、外部電極14,15は、いずれの主面及び側面にも延出していなくてもよい。
【0018】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0019】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層体16と、第1及び第2サイドマージン部17a,17bと、を有する。積層体16は、Y軸と直交し、Y軸方向に対向する第1及び第2側面S1,S2を有する。また、積層体16は、X軸と直交し、X軸方向に対向する第1及び第2端面と、Z軸と直交し、Z軸方向に対向する第1及び第2主面と、を有する。
【0020】
積層体16は、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。積層体16は、容量形成部18と、カバー部19と、を有する。カバー部19は、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆し、積層体16の第1及び第2主面を構成している。
【0021】
容量形成部18は、複数のセラミック層の間に配置され、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1及び第2内部電極12,13を有する。内部電極12,13は、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、内部電極12,13は、セラミック層を挟んでZ軸方向に対向している。
【0022】
第1内部電極12は、第1外部電極14に覆われた端面に引き出されている。一方、第2内部電極13は第2外部電極15に覆われた端面に引き出されている。これにより、第1内部電極12は第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は第2外部電極15のみに接続されている。
【0023】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の側面S1,S2にそれぞれ露出している。第1サイドマージン部17aは積層体16の第1側面S1を覆い、第2サイドマージン部17bは積層体16の第2側面S2を覆っている。これにより、積層体16の両側面S1,S2における内部電極12,13間の絶縁性を確保することができる。
【0024】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0025】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0026】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)などの組成系で構成してもよい。
【0027】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0028】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5~9は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5~9を適宜参照しながら説明する。
【0029】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
【0030】
セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚みは、焼成後の容量形成部18におけるセラミック層の厚みに応じて調整される。第3セラミックシート103の厚みは適宜調整可能である。
【0031】
図5は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図5には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0032】
図5に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0033】
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0034】
内部電極112,113には、切断線Lyに沿ったX軸方向の隙間が、切断線Ly1本置きに形成されている。第1内部電極112の隙間と第2内部電極113の隙間とはX軸方向に互い違いに配置されている。つまり、第1内部電極112の隙間を通る切断線Lyと第2内部電極113の隙間を通る切断線Lyとが交互に並んでいる。
【0035】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101,102,103を、
図6に示すように積層することにより積層シート104を作製する。積層シート104では、容量形成部18に対応する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層されている。
【0036】
また、積層シート104では、交互に積層されたセラミックシート101,102のZ軸方向上下面にカバー部19に対応する第3セラミックシート103が積層される。なお、
図6に示す例では、第3セラミックシート103がそれぞれ3枚ずつ積層されているが、第3セラミックシート103の枚数は適宜変更可能である。
【0037】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0038】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を、切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成の積層体116を作製する。積層体116は、焼成後の積層体16に対応する。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
【0039】
図7,8は、ステップS03の一例を説明するための模式図である。
図7は、積層シート104の平面図である。
図8は、積層シート104のY-Z平面に沿った断面図である。積層シート104は、例えば発泡剥離シートなどの粘着性のカットシートCによって保持された状態で、切断線Lx,Lyに沿って押し切り刃BLで切断される。
【0040】
まず、
図8(A)に示すように、押し切り刃BLを積層シート104のZ軸方向上方に、先端をZ軸方向下方の積層シート104に向けて配置する。次に、
図8(B)に示すように、押し切り刃BLをZ軸方向下方に、カットシートCに到達するまで移動させ、積層シート104を貫通させる。
【0041】
そして、
図8(C)に示すように、押し切り刃BLをZ軸方向上方に向けて移動させることにより、積層シート104から引き抜く。これにより、積層シート104がX軸及びY軸方向に切り分けられ、Y軸方向に内部電極112,113が露出する第1及び第2側面S1,S2を有する積層体116が形成される。
【0042】
(ステップS04:サイドマージン部形成)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層体116に対し、第1側面S1に未焼成の第1サイドマージン部117aを設け、第2側面S2に未焼成の第2サイドマージン部117bを設ける。これにより、
図9に示すように、内部電極112,113が露出した側面S1,S2がサイドマージン部117a,117bによって覆われた未焼成のセラミック素体111が得られる。
【0043】
本実施形態に係る方法で形成されたサイドマージン部117a,117bでは、局所的な変形を抑制しつつ、積層体116の側面S1,S2に対する高い接着性が得られる。これにより、積層セラミックコンデンサ10の高い信頼性及び歩留まりを実現可能である。ステップS04におけるサイドマージン部117a,117bの形成方法の詳細については後述する。
【0044】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られた
図9に示すセラミック素体111を焼成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS05によって、積層体116が積層体16になり、サイドマージン部117a,117bがサイドマージン部17a,17bになる。
【0045】
ステップS05における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0046】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS06における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0047】
以上により、積層セラミックコンデンサ10が完成する。この製造方法では、内部電極112,113が露出した積層体116の側面S1,S2にサイドマージン部117a,117bが形成されるため、セラミック素体11における複数の内部電極12,13のY軸方向の端部の位置が、0.5μm以内の範囲で揃う。
【0048】
<サイドマージン部117a,117bの形成方法>
図10は、上記のステップS04におけるサイドマージン部117a,117bの形成方法を示すフローチャートである。
図11~14はサイドマージン部117a,117bの形成方法を説明するための図である。以下、サイドマージン部117a,117bの形成方法について、
図10に沿って、
図11~14を適宜参照しながら説明する。
【0049】
なお、
図11~14には、相互に直交するx軸、y軸、及びz軸が示されている。x軸、y軸、及びz軸は、上記のX軸、Y軸、及びZ軸とは異なり、実空間に対して固定された実空間座標系を規定する。x軸及びy軸は水平方向に延び、つまりx-y平面が水平面となる。z軸は、鉛直方向上下に延びる。
【0050】
(ステップS41:積層体向き変更)
ステップS41では、ステップS03後の複数の積層体116の向きを変更する。つまり、
図8(C)に示すステップS03の直後の状態では、相互に隣接する積層体116の側面S1,S2がY軸方向に近接して対向しているため、各積層体116の側面S1,S1にサイドマージン部117を形成することが困難である。このため、ステップS41では、複数の積層体116の側面S1,S2の向きを水平方向(y軸方向)から鉛直方向(z軸方向)に変更する。
【0051】
複数の積層体116の側面S1,S2の向きを変更する方法としては、例えば、転動法などの公知の方法を用いることができる。転動法では、まず積層体116をカットシートCから伸長性を有する第1粘着シートF1に貼り変え、第1粘着シートF1を伸長させることにより、積層体116のy軸方向の間隔を広げる。
【0052】
そして、複数の積層体116を第1粘着シートF1上においてy軸方向に転動させる。このとき、例えば転動盤などを用いることによって、すべての積層体116を一括して転動させることができる。これにより、積層体116が90°回転し、側面S1,S2をそれぞれz軸方向上方及び下方を向けることができる。
【0053】
ステップS41後の複数の積層体116ではいずれも、z軸方向下方を向いた第2側面S2が第1粘着シートF1に保持され、第1側面S1がz軸方向上方を向いている(
図11(A)参照)。これにより、すべての積層体116におけるz軸方向上方を向いた第1側面S1について一括して第1サイドマージン部117aを形成可能となる。
【0054】
(ステップS42:第1熱圧着)
ステップS42では、ステップS41においてz軸方向上方に向けられた複数の積層体116の第1側面S1に、第1サイドマージン部117aを構成する第1サイドマージンシート117s1を熱圧着する。
図11(A)~(C)は、ステップS42において複数の積層体116の第1側面S1に第1サイドマージンシート117s1を圧着する過程を示す図である。
【0055】
ステップS42では、まず、
図11(A)に示すように、第1粘着シートF1のz軸方向下面を、第1弾性部材D1のz軸方向上面を構成する第1弾性面q1で保持する。そして、複数の積層体116の第1側面S1上に、これらを一括して被覆可能なようにX-Y平面に沿って延びる一連の第1サイドマージンシート117s1を配置する。
【0056】
第1サイドマージンシート117s1は、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1サイドマージンシート117s1の構成は、積層体116の形成のためにステップS01で準備されるセラミックシート101,102,103の構成と同様であっても異なっていてもよい。
【0057】
第1弾性部材D1は、X-Y平面に沿って延びる平板状であり、各種ゴムなどの弾性材料で形成されている。第1弾性面q1は、押圧力を受けていない自由状態において平面状である。なお、第1弾性部材D1が離型シートなどの他のシートを介して第1粘着シートを保持していてもよく、この場合には当該他のシートのz軸方向上面が第1弾性面q1となる。
【0058】
また、第1サイドマージンシート117s1のz軸方向上方には、X-Y平面に沿って延びる平板状の剛体である剛体押圧部材Gが配置される。剛体押圧部材Gは、z軸方向下面を構成する平面である高剛性面pを有する。剛体押圧部材Gは、弾性変形せずに平面形状が保持される高剛性面pによって第1サイドマージンシート117s1を押圧可能である。
【0059】
剛体押圧部材Gは、ステンレスやアルミニウムなどの一般的に剛体に分類される材料で形成される。このため、剛体押圧部材Gには、押圧時の高剛性面pにその影響を無視できる程度の微小な弾性変形が生じることも有り得る。なお、剛体押圧部材Gのz軸方向下面に離型シートなどの他のシートを設けてもよく、この場合には当該他のシートのz軸方向下面が高剛性面pとなる。
【0060】
剛体押圧部材Gでは、押圧時に第1サイドマージンシート117s1に対して熱を加えるために、高剛性面pが加熱されている。剛体押圧部材Gでは、例えば、内部に設けられたヒータなどによって内側から高剛性面pを加熱することができる。ステップS42における高剛性面pの温度は、第1サイドマージンシート117s1の転移点以上とすることが好ましい。
【0061】
次に、
図11(B)に示すように、剛体押圧部材Gをz軸方向下方に移動させ、高剛性面pによって第1サイドマージンシート117s1をz軸方向下方に押し下げる。これにより、複数の積層体116は、第1粘着シートF1を介して第1弾性面q1を押圧することで、第1弾性部材D1をz軸方向に圧縮変形させる。
【0062】
このとき、剛体押圧部材Gの高剛性面pに押圧された第1サイドマージンシート117s1は、高剛性面pから加わる熱によって軟化した状態で、複数の積層体116の第1側面S1に押し付けられる。これにより、第1サイドマージンシート117s1は、複数の積層体116の第1側面S1に対し、微細な凹凸形状に合わせて柔軟に変形することで密着する。したがって、第1サイドマージンシート117s1では、複数の積層体116の第1側面S1に対する高い接着性が得られる。
【0063】
また、剛体押圧部材Gでは、押圧時に高剛性面pの平面形状が保たれるため、高剛性面pと複数の積層体116の第1側面S1との間において第1サイドマージンシート117s1に均一な圧力が加わる。これにより、剛体押圧部材Gでは、第1サイドマージンシート117s1を、局所的な変形を伴わずに平面形状を保ったまま、複数の積層体116の第1側面S1に良好に熱圧着することができる。
【0064】
更に、
図11(B)に示す状態では、複数の積層体116のz軸方向の寸法にばらつきがある場合にも、各積層体116の第1弾性面q1へのz軸方向下方への沈み込み量の相違によってこのばらつき相殺され、第1側面S1のz軸方向の位置が高剛性面pに沿って揃う。これにより、すべての積層体116の第1側面S1に第1サイドマージンシート117s1を良好に熱圧着することができる。
【0065】
そして、
図11(C)に示すように、剛体押圧部材Gをz軸方向上方に移動させる。これにより、剛体押圧部材Gの高剛性面pが第1サイドマージンシート117s1から離間し、第1粘着シートF1から第1弾性面q1に加わる押圧力が解放され、第1弾性部材D1が弾性回復することで元の厚みに戻る。
【0066】
(ステップS43:第1打ち抜き)
ステップS43では、ステップS42で熱圧着された第1サイドマージンシート117s1を複数の積層体116の第1側面S1で打ち抜く。
図12(A)~(C)は、ステップS43において複数の積層体116の第1側面S1で第1サイドマージンシート117s1を打ち抜く過程を示す図である。
【0067】
ステップS43では、まず、
図12(A)に示すように、第1粘着シートF1のz軸方向下面を、X-Y平面に沿って延びる平板状の剛体である保持部材Hで保持する。保持部材Hは、例えば、金属などで形成することができる。また、第1サイドマージンシート117s1のz軸方向上方には、X-Y平面に沿って延びる平板状の弾性体である弾性体押圧部材Eが配置される。弾性体押圧部材Eは、例えば、各種ゴムや各種エラストマーなどで形成することができる。
【0068】
次に、
図12(B)に示すように、弾性体押圧部材Eをz軸方向下方に第1サイドマージンシート117s1に接触するまで移動させ、更に弾性体押圧部材Eで第1サイドマージンシート117s1をz軸方向下方に押し込む。なお、ステップS43では、ステップS42とは異なり、第1サイドマージンシート117s1に対して熱を加えない。
【0069】
このとき、弾性体押圧部材Eは、複数の積層体116の間の空間に食い込むことにより、第1サイドマージンシート117s1における積層体116の第1側面S1に保持されていない領域をz軸方向下方に押し下げる。これにより、第1サイドマージンシート117s1は、z軸方向に加わるせん断力によって、各積層体116の第1側面S1の輪郭に沿って切断される。
【0070】
そして、
図12(C)に示すように、弾性体押圧部材Eをz軸方向上方に移動させることにより、弾性体押圧部材Eを第1サイドマージンシート117s1から離間させる。このとき、各積層体116の第1側面S1上に残った第1サイドマージンシート117s1が第1サイドマージン部117aとなる。複数の積層体116の間の空間に残った第1サイドマージンシート117s1は除去する。
【0071】
(ステップS44:転写)
ステップS44では、ステップS43で第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116を第1粘着シートF1から第2粘着シートF2に転写する。具体的に、ステップS43後の状態から、まず、複数の積層体116の第1側面S1に形成された第1サイドマージン部117に第2粘着シートF2を貼り付ける。
【0072】
次に、第1及び第2粘着シートF1,F2に挟まれた状態の第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116をz軸方向上下に反転させる。そして、第1粘着シートF1を複数の積層体116の第2側面S2から剥離させる。これにより、複数の積層体116ではいずれも、第2側面S2がz軸方向上方を向く(
図13(A)参照)。
【0073】
(ステップS45:第2熱圧着)
ステップS45では、ステップS44においてz軸方向上方に向けられた複数の積層体116の第2側面S2に、第2サイドマージン部117bを構成する第2サイドマージンシート117s2を熱圧着する。
図13(A)~(C)は、ステップS45において複数の積層体116の第2側面S2に第2サイドマージンシート117s2を圧着する過程を示す図である。
【0074】
ステップS45では、まず、
図13(A)に示すように、第2粘着シートF2のz軸方向下面を第2弾性部材D2のz軸方向上面を構成する第2弾性面q2で保持する。そして、複数の積層体116の第2側面S2上に、これらを一括して被覆可能なようにX-Y平面に沿って延びる一連の第2サイドマージンシート117s2を配置する。
【0075】
第2サイドマージンシート117s2は、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第2サイドマージンシート117s2の構成は、第1サイドマージンシート117s1、並びに積層体116の形成のためにステップS01で準備されるセラミックシート101,102,103の構成と同様であっても異なっていてもよい。
【0076】
第2弾性部材D2は、X-Y平面に沿って延びる平板状であり、各種ゴムなどの弾性材料で形成されている。第2弾性面q2は、押圧力を受けていない自由状態において平面状である。なお、第2弾性部材D2が離型シートなどの他のシートを介して第2粘着シートを保持していてもよく、この場合には当該他のシートのz軸方向上面が第2弾性面q2となる。
【0077】
また、第2サイドマージンシート117s2のz軸方向上方には、ステップS42と同様の剛体押圧部材Gが配置される。剛体押圧部材Gでは、押圧時に第2サイドマージンシート117s2に対して熱を加えるために、高剛性面pが加熱されている。ステップS45における高剛性面pの温度は、第2サイドマージンシート117s2の転移点以上とすることが好ましい。
【0078】
次に、
図13(B)に示すように、剛体押圧部材Gをz軸方向下方に移動させ、高剛性面pによって第2サイドマージンシート117s2をz軸方向下方に押し下げる。これにより、複数の積層体116は、第2粘着シートF2及び第1サイドマージン部117aを介して第2弾性面q2を押圧することで、第2弾性部材D2をz軸方向に圧縮変形させる。
【0079】
このとき、剛体押圧部材Gの高剛性面pに押圧された第2サイドマージンシート117s2は、高剛性面pから加わる熱によって軟化した状態で、複数の積層体116の第2側面S2に押し付けられる。これにより、第2サイドマージンシート117s2は、複数の積層体116の第2側面S2に対し、微細な凹凸形状に合わせて柔軟に変形することで密着する。したがって、第2サイドマージンシート117s2では、複数の積層体116の第2側面S2に対する高い接着性が得られる。
【0080】
また、剛体押圧部材Gでは、押圧時に高剛性面pの平面形状が保たれるため、高剛性面pと複数の積層体116の第2側面S2との間において第2サイドマージンシート117s2に均一な圧力が加わる。これにより、剛体押圧部材Gでは、第2サイドマージンシート117s2を、局所的な変形を伴わずに平面形状を保ったまま、複数の積層体116の第2側面S2に良好に熱圧着することができる。
【0081】
更に、
図13(B)に示す状態では、複数の積層体116のz軸方向の寸法にばらつきがある場合にも、各積層体116の第2弾性面q2へのz軸方向下方への沈み込み量の相違によってこのばらつきが相殺され、第2側面S2のz軸方向の位置が高剛性面pに沿って揃う。これにより、すべての積層体116の第2側面S2に第2サイドマージンシート117s2を良好に熱圧着することができる。
【0082】
そして、
図13(C)に示すように、剛体押圧部材Gをz軸方向上方に移動させる。これにより、剛体押圧部材Gの高剛性面pが第2サイドマージンシート117s2から離間し、第2粘着シートF2から第2弾性面q2に加わる押圧力が解放され、第2弾性部材D2が弾性回復することで元の厚みに戻る。
【0083】
(ステップS46:第2打ち抜き)
ステップS46では、ステップS45で熱圧着された第2サイドマージンシート117s2を複数の積層体116の第2側面S2で打ち抜く。
図14(A)~(C)は、ステップS46において複数の積層体116の第2側面S2で第2サイドマージンシート117s2を打ち抜く過程を示す図である。
【0084】
ステップS46では、まず、
図14(A)に示すように、第2粘着シートF2のz軸方向下面を、ステップS43と同様の保持部材Hで保持する。また、第1サイドマージンシート117s1のz軸方向上方には、ステップS43と同様の弾性体押圧部材Eが配置される。
【0085】
次に、
図14(B)に示すように、弾性体押圧部材Eをz軸方向下方に第2サイドマージンシート117s2に接触するまで移動させ、更に弾性体押圧部材Eで第2サイドマージンシート117s2をz軸方向下方に押し込む。なお、ステップS46では、ステップS45とは異なり、第2サイドマージンシート117s2に対して熱を加えない。
【0086】
このとき、弾性体押圧部材Eは、複数の積層体116の間の空間に食い込むことにより、第2サイドマージンシート117s2における積層体116の第2側面S2に保持されていない領域をz軸方向下方に押し下げる。これにより、第2サイドマージンシート117s2は、z軸方向に加わるせん断力によって、各積層体116の第2側面S2の輪郭に沿って切断される。
【0087】
そして、
図14(C)に示すように、弾性体押圧部材Eをz軸方向上方に移動させることにより、弾性体押圧部材Eを第2サイドマージンシート117s2から離間させる。このとき、各積層体116の第2側面S2上に残った第2サイドマージンシート117s2が第2サイドマージン部117bとなる。複数の積層体116の間の空間に残った第2サイドマージンシート117s2は除去する。
【0088】
そして、サイドマージン部117a,117bが形成された複数の積層体116を第2粘着シートF2から剥離させる。これにより、
図9に示す未焼成のセラミック素体111が得られ、上記のステップS04に係るサイドマージン部形成工程が完了する。
【0089】
(熱圧着の条件の詳細)
本実施形態では、上記のとおり、ステップS42において第1サイドマージン部117aの積層体116の第1側面S1への接着性を高めるための第1熱圧着を行い、ステップS45において第2サイドマージン部117bの積層体116の第2側面S2への接着性を高めるための第2熱圧着を行う。
【0090】
ところが、第2サイドマージン部117bよりも前に形成される第1サイドマージン部117aには、第1熱圧着のみならず第2熱圧着における熱及び押圧力の影響も加わる。このため、積層体116において、第1側面S1に形成される第1サイドマージン部117aが、第2側面S2に形成される第2サイドマージン部117bよりも薄くなりやすい。
【0091】
これに対し、本実施形態では、サイドマージン部117a,117bの厚みの差を抑制するために、ステップS42における第1熱圧着と、ステップS45における第2熱圧着と、を異なる条件で行う。つまり、第1熱圧着の第1条件と第2熱圧着の第2条件とがそれぞれ、サイドマージン部117a,117bに厚みの差が生じにくくなるようにそれぞれ設定される。
【0092】
第1熱圧着の第1条件と第2熱圧着の第2条件とでは、サイドマージンシート117s1,117s2の変形の態様に影響を及ぼす任意の要素のうち少なくとも1つを異ならせることができる。このような要素としては、例えば、高剛性面pの温度、高剛性面pから加える押圧力、及び高剛性面pによる押圧時間などが挙げられる。これにより、サイドマージン部117a,117bの厚みを各別に制御することが可能となる。
【0093】
また、サイドマージン部117a,117bの厚みを各別に制御するために、サイドマージンシート117s1,117s2の組成を異ならせることもできる。例えば、サイドマージンシート117s1,117s2では、バインダや溶剤などの有機成分の量を異ならせることができる。つまり、サイドマージンシート117s1,117s2では、有機成分を多くするほど柔軟性を高くすることができ、有機成分を少なくするほど柔軟性を低くすることができる。
【0094】
更に、サイドマージン部117a,117bの厚みを各別に制御するために、第1熱圧着に用いる第1弾性部材D1の第1弾性面q1と、第2熱圧着に用いる第2弾性部材D2の第2弾性面q2と、で弾性率を異ならせることもできる。つまり、弾性面q1,q2の弾性率を高くするほどサイドマージンシート117s1,117s2に対して押圧力を急激に加えることができ、弾性面q1,q2の弾性率を低くするほどサイドマージンシート117s1,117s2に対して押圧力を緩やかに加えることができる。
【0095】
加えて、第2熱圧着では、第1サイドマージン部117aを変形しにくくするために、第1サイドマージン部117aを冷却することができる。例えば、
図13(B)に示す状態において、第2弾性部材D2の第2弾性面q2を冷却することで、第2粘着シートF2を介して第1サイドマージン部117aを冷却することができる。これにより、剛体押圧部材Gの高剛性面pから第2サイドマージンシート117s2に加わる熱によって、第1サイドマージン部117aが昇温しにくくなる。
【0096】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0097】
例えば、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明したが、本発明の製造方法は積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0098】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16…積層体
17a,17b…サイドマージン部
18…容量形成部
19…カバー部
101,102,103…セラミックシート
104…積層シート
111…セラミック素体
112,113…内部電極
116…積層体
117…サイドマージン部
117s1,117s2…サイドマージンシート
S1,S2…側面
F1,F2…粘着シート
G…剛体押圧部材
p…高剛性面
D1,D2…弾性部材
q1,q2…弾性面
E…弾性体押圧部材
H…保持部材