(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240208BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20240208BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B17/08
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2019195793
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 竜志
(72)【発明者】
【氏名】毛利 考宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 允史
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0250431(US,A1)
【文献】国際公開第2019/107044(WO,A1)
【文献】特開2000-227578(JP,A)
【文献】特開2013-190658(JP,A)
【文献】特開2018-200415(JP,A)
【文献】特開平11-133347(JP,A)
【文献】米国特許第07570859(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
G02B 26/10
H04N 5/64
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
表示する映像を生成する映像表示部と、
前記映像表示部からの映像光を投射する投射部と、
前記投射部からの投射光のアイボックスを拡大する映像回転複製部と、
前記映像回転複製部からの映像光をユーザの瞳へ伝達する導光部を有し、
前記映像回転複製部
は、
入射面と出射面
、前記投射部からの映像光を内部へと反射する入射反射面、および、前記導光部の方向へ映像光の一部を反射する少なくとも2つ以上の出射反射面から成る出射反射面群を備え、
前記入射面と前記出射
面が成す角度をθ1とし、
前記出射反射面群に含まれるそれぞれの前記出射反射面と前記出射面の法
線が成す角度をθ2としたとき、前記角度θ1は90°より大きく、前記角度θ2は45°より大きく、前記角度θ1とθ2はθ2×2=θ1の関係を満たすことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記入射反射面の法線と前記出射反射面群のうちの1つの出射反射面の法線は、所定のねじれ角度を有することを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって
、
前記出射反射面群に含まれるそれぞれの前記出射反射面は互いに略平行であって、
前記入射反射面の法線と前記出射反射面群の法線は所定のねじれ角度を有することを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記入射反射面と前記出射反射面それぞれは、前記入射反射面を有した第1プリズムと前記出射反射面それぞれを有した第2プリズムに分離されており、
前記投射部は投射レンズを備え、
前記出射反射面群の面間隔は前記投射レンズの外径よりも小さいことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記投射部からの映像光の出射方向と前記導光部への映像光の入射方向が異なり、前記映像回転複製部を出射した映像光は前記導光部のユーザの瞳がある側の反対側から前記導光部へ入射することを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記入射反射面の法線と前記出射反射面群の法線のねじれ角度は90°であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記導光部は、主要な2つの平行平面を有した平板状で構成され、内部に少なくとも2つ以上の出射反射面を有し、前記2つ以上の出射反射面は互いに平行であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記映像表示部は、
光を出射する光源部と、
前記光源部からの光で照明され仮想的な2次光源となるマイクロレンズアレイと、
映像を生成する小型ディスプレイ部と、
前記マイクロレンズアレイからの光を前記小型ディスプレイ部に集光するコンデンス光学部材と、
前記マイクロレンズアレイからの光を拡散する拡散板を有し、
前記拡散板は、前記コンデンス光学部材と前記小型ディスプレイ部の間に配置されたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記映像表示部は、光路を折り曲げるための折り曲げミラーと、
前記小型ディスプレイ部で反射後の映像光を前記投射部へ導くための偏光分岐素子を備え、
前記折り曲げミラーの反射面面積は前記偏光分岐素子の反射面面積より小さいことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記映像表示部と投射部との間に1/4波長板と所定の偏光を透過する偏光フィルタを備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記導光部は表面掘り込み式の回折格子又は体積ホログラムを備えた導光部であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記映像表示部にデジタルマイクロミラーデバイス方式の小型ディスプレイを搭載し、
所定の領域の光が前記導光部に入射するのを防ぐ遮光部を、前記投射部と前記映像回転複製部の間又は前記映像回転複製部の入射面に備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項13】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
ユーザの位置や姿勢を検出するセンシング部と、
外部装置と通信を行う通信部と、
音声信号の入力または出力を行う音声処理部と、
装置全体の制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項14】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
ユーザの頭の動きを検出する加速度センサと、
ユーザの頭の動きに応じて表示コンテンツを変えるヘッドトラッキング部と、
電力を供給する電力供給部と、
情報を記憶する記憶部と、
外部装置と通信を行う通信部と、
音声信号の入力または出力を行う音声処理部と、
装置全体の制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの頭部に装着され視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも略す)のようなウェアラブルデバイスは、良好な視界の確保や映像の視認性といった表示性能だけでなく、小型であるとともに装着性に優れる構造が要求される。
【0003】
本技術分野における先行技術文献として特許文献1がある。特許文献1には、光を透過させる平面の基板、内部反射全体によって基板中へ光を連結するための光学手段、及び基板に所有される複数の部分反射面を含み、部分反射面が、互いに平行であると共に基板のどの縁に対しても平行ではない構成の光学デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HMDの光学系は、光源部が発する光を小型ディスプレイ部へ伝える照明部を備えた映像表示部と、映像表示部により生成された映像光(虚像)を投射する投射部を有する。HMDがユーザの瞳に対して位置ずれが生じると画面の見切れが生じてしまうため、瞳複製部及び導光部によってアイボックスの拡大を行う一方で、アイボックス拡大により光学系サイズの増加や光学効率の低下という課題が生じる。
【0006】
さらに、映像表示部に配置する小型ディスプレイは一般的に縦横の画面アスペクトの異なる素子である。表示画面として、水平方向のアスペクトの長い映像を表示する場合、投射部の水平面内方向には、小型ディスプレイからの映像光の画面長辺方向が対応して入射する必要がある。この制約により、小型ディスプレイの長辺方向が虚像映像生成部の幅を大型化し、HMDのデザイン性が低下するという課題がある。
【0007】
前記特許文献1においては、光学系のアイボックス拡大や水平方向に長辺のある画像の表示とHMD光学系の小型化・高効率化との両立を図る上で、これらの問題について何ら考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、光学系の小型化・高効率化とアイボックスの拡大とを両立させるHMDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その一例を挙げるならば、ユーザの視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、表示する映像を生成する映像表示部と、映像表示部からの映像光を投射する投射部と、投射部からの投射光のアイボックスを拡大する映像回転複製部と、映像回転複製部からの映像光をユーザの瞳へ伝達する導光部を有し、映像回転複製部は入射面と出射面および少なくとも2つ以上の反射面を備え、入射面と出射面の成す角度が90°より大きい構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学系の小型化・高効率化とアイボックスの拡大とを両立させるHMDを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1におけるHMDのブロック構成図である。
【
図2】実施例1における虚像映像生成部のブロック構成図である。
【
図3】実施例1におけるHMDの使用形態を示す図である。
【
図5】実施例1における映像回転複製部を備えた虚像映像生成部の構成図である。
【
図6】実施例1における映像回転複製部の構成図である。
【
図7】実施例2における映像回転複製部の構成図である。
【
図8】実施例3における映像回転複製部の構成図である。
【
図9】実施例4における映像回転複製部を備えた虚像映像生成部の構成図である。
【
図10】実施例5における虚像映像生成部の構成図である。
【
図11】実施例6における虚像映像生成部の構成図である。
【
図12】実施例7における虚像映像生成部の構成図である。
【
図13】実施例7における映像回転複製部の構成図である。
【
図14】実施例8におけるテレセントリック光学系の概要を示す図である。
【
図15】実施例9における虚像映像生成部の構成図である。
【
図16】実施例10における虚像映像生成部の構成図である。
【
図17】実施例11における虚像映像生成部の構成図である。
【
図18】実施例12におけるHMDの使用例を示す図である。
【
図19】実施例12におけるHMDのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例におけるHMDのブロック構成図である。
図1において、HMD1は、虚像映像生成部101と、制御部102と、画像信号処理部103と、電力供給部104と、記憶部105と、センシング部106と、通信部107と、音声処理部108と、撮像部109と、入出力部91~93とを有する。
【0014】
虚像映像生成部101は、小型ディスプレイ部(マイクロディスプレイ)に表示した映像を虚像として拡大投射して、装着者(ユーザ)の視界に拡張現実(AR:Augmented Reality)や混合現実(MR:Mixed Reality)の映像を表示する。
【0015】
制御部102は、HMD1全体を統括的に制御する。制御部102は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置によってその機能が実現される。画像信号処理部103は、虚像映像生成部101内の表示部に対し、表示用の映像信号を供給する。電力供給部104は、HMD1の各部に対し電力を供給する。
【0016】
記憶部105は、HMD1の各部の処理に必要な情報や、HMD1の各部で生成された情報を記憶する。また、制御部102の機能がCPUによって実現される場合、CPUが実行するプログラムやデータを記憶する。記憶部105は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイスで構成される。
【0017】
センシング部106は、コネクタである入出力部91を介して各種センサと接続され、各種センサによって検出された信号に基づいて、HMD1の姿勢(すなわちユーザの姿勢、ユーザの頭の向き)や、動き、周囲温度等を検出する。各種センサとして、例えば、傾斜センサや加速度センサ、温度センサ、ユーザの位置情報を検出するGPS(Global Positioning System)のセンサ等が接続される。
【0018】
通信部107は、コネクタである入出力部92を介して、近距離無線通信、遠距離無線通信、または有線通信によって、外部の情報処理装置と通信を行う。具体的には、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、移動体通信ネットワーク、ユニバーサルシリアルバス(USB、登録商標)、高精細度マルチメディアインターフェース(HDMI(登録商標))等によって通信を行う。
【0019】
音声処理部108は、コネクタである入出力部93を介して、マイクやイヤホン、スピーカー等の音声入出力装置と接続され、音声信号の入力または出力を行う。撮像部109は、例えば小型カメラや小型TOF(Time Of Flight)センサであり、HMD1のユーザの視界方向を撮影する。
【0020】
図2は、本実施例における虚像映像生成部101のブロック構成図である。虚像映像生成部101は、映像表示部120、投射部121、映像回転複製部122、および導光部123で構成される。映像表示部120は、表示する映像を生成する処理部であって、LEDやレーザなどの光源からの光を図示しない内蔵する小型ディスプレイ部に照射する。小型ディスプレイ部は、映像を表示するための素子であり、液晶ディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス、有機ELディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等が用いられる。投射部121は、映像表示部120の映像光を拡大し、虚像として投射する。映像回転複製部122は映像の回転とアイボックス拡大のための瞳複製を行う。導光部123は、投射部121および映像回転複製部122からの映像光をユーザの瞳20へ伝達する。ユーザは、映像光が瞳20に結像されることで映像を視認できる。
【0021】
図3は、本実施例におけるHMD1の使用形態を示す図である。
図3は、ユーザ2の頭上方向から見下ろした状態を示し、X軸は水平方向、Y軸は垂直方向、Z軸はユーザ2の視線方向である視軸方向である。以後の図面においても、X、Y、Z軸の方向を同様に定義する。
【0022】
HMD1はユーザ2の頭部に装着され、虚像映像生成部101で生成した映像を導光部123を介してユーザの瞳20に伝播させる。その際ユーザ2は、視野内の一部の映像表示領域111に、外界が視認可能な状態(シースルー型)で映像(虚像)を視認できる。
図3では片眼に映像を表示する構成を示しているが、両眼の構成としても構わない。またHMD1は、
図1の撮像部109において、ユーザ2の視野範囲を撮影することも可能である。
【0023】
次に、ミラーアレイ型の導光部123を用いた虚像映像生成部101の従来の構成図を4に示す。
図4において、(a)は、視軸方向であるZ軸方向から見た虚像映像生成部101を示しており、(b)は、垂直方向であるY軸方向から見た虚像映像生成部101を示している。導光部123は主要な2つの平行平面171、172を有した平板状で、かつアイボックスを拡大するために内部に少なくとも2つ以上の部分反射面であるビームスプリッタミラーアレイ173を有する。映像光の一部を反射する反射膜を有したミラーアレイ部126により、投射部121の射出瞳をX軸方向へ複製する機能を有する。また反射信号光に角度ズレが生じないようビームスプリッタミラーアレイ173は互いに略平行であることが望ましい。
【0024】
虚像映像生成部101により形成されるアイボックスは、映像の視認性の観点から2次元方向に拡大されることが望ましい。導光部123は水平方向のみのアイボックス拡大となるので、光学エンジンは垂直方向に光ビーム径の大きな映像光を入力する必要がある。したがって映像表示部120の光学系の当該方向のF値を小さくする必要があり、
図4(a)における映像表示部120及び投射部121の寸法A部分が大きくなり、虚像映像生成部101が大型化する。HMDは身に着けて使うという装置としての特性から、重量や、外観のデザイン性も重要な要素であり、商品価値を高めるうえで重要なポイントとなる。
【0025】
加えて、視力補正用の眼鏡を装着したユーザへ対応する場合の課題がある。すなわち、
図4の従来構成では、
図4(b)に示すように、投射部121、映像表示部120が導光部123よりも瞳側にあるため、視力補正用の眼鏡のフロントと丁番をつなぐ角部が投射部121及び映像表示部120と干渉しないためには、投射部121及び映像表示部120をユーザの顔の側面外側に移動させる必要がある。よって、導光部123から出射する映像をユーザの瞳20に届けるためには導光部123の水平方向を長くする必要がある。また、投射部からユーザの瞳までの距離が長くなるとアイボックスは縮小するので、それに応じて垂直方向のアイボックスを広くする必要があり映像表示部120と投射部121の寸法Aが更に増加する。
【0026】
また、
図4(b)に示すように、映像表示部120に配置する小型ディスプレイ部125は一般的に縦横の画面アスペクトの異なる素子である。導光部123から表示する画面として、水平方向に長いアスペクトの映像表示を行う場合、投射部121の水平面内(XZ面)方向には小型ディスプレイから投射部へ入射する映像光の画面長辺方向とが対応する必要がある。この制約により、小型ディスプレイの長辺方向により寸法B部分が大きくなり、映像表示部120が大型化し、HMDのデザイン性を損なう課題がある。
【0027】
このように、HMDでは、アイボックスの拡大及び水平方向に長辺をもつアスペクト画像の表示に対して小型化・高輝度化を両立するうえで課題がある。以下、これらの解決法について説明する。
【0028】
図5は、本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図5において、
図4と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図5において、(a)、(b)は、それぞれ、
図4と同様に、虚像映像生成部101を、Z軸方向から見た場合と、Y軸方向から見た場合を示している。本実施例では映像回転複製部122によって上記課題を解決する。
【0029】
前述したように、虚像映像生成部101により形成されるアイボックスは、映像の視認性の観点から2次元方向に拡大されることが望ましい。アイボックスを2次元に拡大するために、垂直方向は映像回転複製部122によってアイボックスを拡大する。映像回転複製部122は、内部に導光部123の方向へ映像光を反射する、少なくとも2つ以上の部分反射面である出射反射面から成る出射反射面群を備えている。
図5(a)に示すように、本実施例では出射反射面群として131~134を備えた例を示している。これらの出射反射面群131~134は互いに略平行であることが望ましい。また
図5では出射反射面が4枚の構成を示したが必ずしもこれに限定されるものではない。本構成とすることにより投射部121からの映像光のビーム径を小径化できる。したがって、光学系のF値を上げることができ、映像表示部120及び投射部121の前記寸法Aに相当する部分を小型化できる。
【0030】
更に、前記寸法Bの部分を小型化するために、
図5(b)に示すように、小型ディスプレイ部125を投射部121に対して90°回転した構成とした。この場合、投射部121の水平面内(XZ面)において、小型ディスプレイ部125から投射部121へ入射する方向には映像光の画面短辺方向が対応する為、映像表示部120と投射部121の寸法Bを小さくでき、虚像映像生成部101の小型化とデザイン性の向上が図れる。しかしこの場合、視認できる映像は縦方向に長いアスペクトの画面となる課題が生じる。そこで映像回転複製部122には投射部121からの映像光を内部へと反射する入射反射面130を設け、入射反射面130の法線と出射反射面群131~134の法線は所定のねじれ角度を有する構成とすることで、導光部123から視認する画面を所定の角度回転することができる。例えば小型ディスプレイ部125を90°回転した場合は、前記入射反射面の法線と出射反射面群の法線の所定のねじれ角度は90°となる。映像回転複製部122を出射した映像光は導光部に全反射で伝搬できるよう、結合部124を介して導光部123へ入射する。
【0031】
このように、映像回転複製部122を用いた構成とすることで、アイボックスを2次元に拡大しつつ、小型でデザイン性の良い虚像映像生成部101を提供することとができる。なお、導光部と映像回転複製部の瞳複製方向が必ずしも図示した方向でなくてもよく、2次元にアイボックスの拡大を行えればよい。
【0032】
本実施例の構成のさらなる優位点として、視力補正用の眼鏡を装着したユーザも装着可能なHMDとする上で、装置を小型化できる効果がある。すなわち、
図5(b)に示すように、結合部124を介してユーザの瞳20がある側の反対側から導光部123へ映像光を入射することができる。これにより、映像回転複製部122、投射部121、映像表示部120を、従来よりも、導光部123に対して瞳がある反対側に配置できる。よって、従来構成の前述した視力補正用の眼鏡を装着したユーザへ対応する場合の課題に対して、ユーザの視力補正用の眼鏡と干渉することなく、導光部123の水平方向の寸法を従来構成より短くできる。これによりアイボックスの拡大量を減らすことができるため、映像回転複製部のサイズ(特に垂直方向)の抑制や、出射反射面の削減により製造コストを低減できる。
【0033】
このように、映像回転複製部122を用いることで、投射レンズからの映像光の出射方向と導光部への映像光の入射方向を異ならせ、かつ導光部の外側から映像光を入力できる構成とすることで、視力補正用の眼鏡を装着したユーザへの対応と小型化及び製造コスト低減を両立できる構成とすることができる。
【0034】
さらに、本実施例における具体的な映像回転複製部122の構成について
図6を用いて説明する。
図6において、(a)は映像回転複製部122の外観図、(b)は映像回転複製部122を出射反射面131~134及び出射面135に平行な方向から見た概略図、(c)は映像回転複製部122を出射面135かつ入射面136に平行な方向から見た外観図である。なお、説明のために、入射反射面130にハッチングを付している。
【0035】
投射部121から入射し入射反射面130で反射した映像光が、出射反射面131~134で反射する前に映像回転複製部122の出射面135へ入射すると、内面全反射により迷光が生じる。幾何学的な構成上、特に出射面135側は入射反射面130から出射反射面までの距離があるので内面反射による迷光が出やすい。
【0036】
そこで、
図6(b)に点線に示したように所定の画角範囲をもつ映像光が入射反射面130で出射面135側へ反射する成分が出ないようにし、かつ画面の回転には影響を与えない幾何学的な構成とするためには、
図6(c)に示すように、入射面136と出射面135の成す角θ1が90°以上であり、
図6(b)に示すように、出射反射面131~134と出射面135の法線と成す角θ2が45°以上とする必要がある。また角度θ1とθ2はθ2×2=θ1の関係を満たすことで、導光部123からの映像の回転や画角のオフセット等へ影響せずに、映像回転複製部122内での映像光伝搬角度を調節して内部での迷光発生を抑制することができる。
【0037】
また、画面の輝度ムラ抑制の観点から、出射反射面131~134の各反射面の間隔L1~L3は夫々、投射部121を構成する投射レンズの外径よりも小さいことが望ましい。これにより映像光は切れ目なく複製されるため輝度ムラを抑制できる。更には投射部121により形成される射出瞳径よりも間隔L1~L3を夫々小さくすることで、より複製される映像光に切れ目がなくなるため輝度ムラを抑制できる。
【0038】
以上のように、本実施例によれば、光学系の小型化・高効率化とアイボックスの拡大とを両立させるHMDを提供できる。
【実施例2】
【0039】
図7は本実施例における映像回転複製部の構成図である。
図7において、
図6と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図7において、
図6と異なる点は、入射反射面130と入射反射面130に最も近い出射反射面134の一部が交差している点である。内部反射による迷光を回避する場合、前記の通り映像光は点線で示したような経路となる為、入射反射面130と出射反射面134の一部に交差があっても実質的な映像品質には影響なく、映像回転複製部122の入射反射面130と出射反射面131~134の距離を縮め小型化することができる。
【0040】
よって、本実施例によれば、より光学系の小型化を図ったHMDを提供できる。
【実施例3】
【0041】
図8は本実施例における映像回転複製部の構成図である。
図8において、
図6と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図8において、
図6と異なる点は、入射反射面130と出射反射面131~134は一体化されずに入射反射面130を有した第1プリズム122aと出射反射面131~134を有した第2プリズム122bに分離されていることである。
図6のように、入射反射面130と出射反射面131~134を一体化したプリズムの作製は、複数反射面の接合と切断の工程が複雑となり製造コストを上昇させる。これに対して、本実施例のように、入射反射面130と出射反射面131~134を分離して、単純な3角プリズムに近い形状の第1、第2プリズムを夫々作製することでコストを抑制できる。
【0042】
よって、本実施例によれば、光学系の小型化・高効率化とアイボックスの拡大とを両立させるとともに、より安価なHMDを提供できる。
【実施例4】
【0043】
図9は本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図9において、
図5と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図9において、
図5と異なる点は、導光部123の構成が異なる点である。
【0044】
図9において、本実施例における導光部123は、回折格子、体積ホログラム、ビームスプリッタアレイ(BSA)等を用いた導光部構成とすることで、シースルー性を備えたHMDとすることができる。
【0045】
図9(a)は導光部123に体積ホログラムを用いている。すなわち、導光部内を伝搬した映像光をユーザの瞳20へ出力する手段として、ミラーアレイではなく体積型ホログラム140により回折する場合の例である。
図9(b)は導光部123が表面掘り込み式回折格子を用いている。導光部への映像光入力手段として表面掘り込み式回折格子141を備え、取り込んだ光を全反射で平行平板内を伝播させ映像光をユーザの瞳20へ出力する手段として、表面掘り込み式回折格子142を用いる場合の例である。
【0046】
よって、本実施例によれば、実施例1での効果を有するとともに、シースルー性を備えたHMDを提供できる。
【実施例5】
【0047】
図10は、本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図10において、
図5と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図10において、
図5と異なる点は、映像表示部120の具体構成を記載している点である。
【0048】
図10において、映像表示部120は、小型ディスプレイ部125と、光源部が発する光を小型ディスプレイ部125へ伝える照明光学系169からなる。
【0049】
照明光学系169において、光源部として、緑色(G)の光源部150と、赤色(R)及び青色(B)の光源部151を備える。各光源からの光は集光レンズ152,153によって略コリメート化される。各色光源からの略コリメート光は、色合成部154によって合成される。
【0050】
ここでは色合成部154に楔形のダイクロイックミラーを用いた例を示している。ダイクロイックミラーは、R光とB光とG光の略コリメート光を合成して出射する。このとき各色の光軸は必ずしも完全に一致している必要はなく、所定の面で強度分布が略一致するようにあえて光軸をわずかにずらしても構わない。
【0051】
色合成された光は、仮想的な2次光源となるマイクロレンズアレイ155へ入射する。マイクロレンズアレイ155は、色合成部154から出射した略コリメート光束で照明される。マイクロレンズアレイ155を用いることで、小型ディスプレイ部125の所定の範囲のみに光を集めることができる。また、小型ディスプレイ部125上での照明光の輝度分布を均一化できる。
【0052】
折り曲げミラー156は、マイクロレンズアレイ155から小型ディスプレイ部125への光路を折り曲げる作用がある。すなわち、折り曲げミラー156を挿入することで、映像表示部120の寸法Aの長さを短くすることができる。コンデンス光学部材157としてのコンデンスレンズは、マイクロレンズアレイ155のセル像を小型ディスプレイ部125へ結像させる。
【0053】
小型ディスプレイ部125にLCOS(Liquid Crystal On Silicon、登録商標)等を用いる場合は、偏光分岐素子158で映像表示部120と投射部121への光路を切り分ける。
図10では偏光分岐素子158に偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いた例を示す。投射部121は、複数枚からのレンズからなる投射光学系で、小型ディスプレイ部125からの映像光を画角に応じて角度を変えて無限遠または虚像として投射する。投射部121からの映像光は映像回転複製部122を介して導光部123へ入射され、ユーザはシースルー性を確保した状態で映像を視認できる。
【0054】
このように、本実施例によれば、映像表示部120の垂直方向の寸法Aを短縮しつつ画質を向上することができる。
【実施例6】
【0055】
図11は、本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図11において、
図10と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図11において、
図10と異なる点は、偏光フィルタ160、1/4波長板161、偏光フィルタ162、拡散板163を追加している点である。
【0056】
小型ディスプレイ部125にLCOS(Liquid Crystal On Silicon、登録商標)等を用いて、偏光分岐素子158で映像表示部120と投射部121への光路を切り分ける場合、
図11に示すように、所定の偏光で照明するために、偏光フィルタ162を配置して事前に必要な偏光成分のみを取り出すようにする。偏光フィルタ162は、迷光対策やコントラストの点でも有利に作用する。
【0057】
また、偏光フィルタ160と1/4波長板161は、投射部121や導光部123からの戻り光による迷光を抑制する。
【0058】
また、光学系を高効率・高輝度化するために、映像表示部にマイクロレンズアレイを用いることが有効である。これに関して本件発明者は、映像表示部にマイクロレンズアレイを採用した場合、マイクロレンズアレイの共役像が投射レンズの射出瞳にも形成される現象を見出した。すなわち、上記光学系で映像を視認する場合、マイクロレンズアレイ155によって複製された光源150の共役像が、マイクロレンズアレイ155の出射面に形成される。また、マイクロレンズアレイ155の出射面と投射部121の射出瞳は略共役な位置関係にある。よって、投射部121の射出瞳位置には、マイクロレンズアレイ155のレンズセル出射面の共役像と、マイクロレンズアレイ155の出射面に形成された上記光源150の共役像の更なる共役像が形成される。従って、ユーザが導光部123越しに映像を見ると、映像の手前に、マイクロレンズセルの共役像と光源の共役像が重畳されたように見えてしまい、映像の視認性が低下するという課題が生じる。
【0059】
なお、映像回転複製部122及び導光部123はアイボックスを拡大するために投射部121の射出瞳を複製する機能を有するため、複製回数が多いと各共役像が繰り返し重なり合って目立たなくなることもある。一方で、ビームスプリッタミラーアレイ型の導光部123を用いた場合は、他の方式に比べ原理的に複製回数が少なくなり、上記共役像により映像の視認性は大きく低下する。
【0060】
そこで、本実施例では、導光部123で複製された周期的なマイクロレンズアレイ(レンズセル)と光源の共役像を抑制するために、マイクロレンズアレイ155と小型ディスプレイ部125の間に拡散板163を追加している。これにより、小型ディスプレイ部125の拡大像である映像(虚像)の解像度には影響を与えることなく、マイクロレンズセルと光源の共役像のみをぼかして目立たなくすることができる。
【0061】
ここで拡散板163の位置は、マイクロレンズアレイ155から離しコンデンスレンズ157に近い位置に配置する。この例ではコンデンスレンズ157直後(図面上側)に配置したが、コンデンスレンズ157の前側(図面下側)でもよい。コンデンスレンズ157に近い位置に配置することで、拡散板163の拡散角を小さくでき、拡散板163挿入による効率低下を抑えつつ、マイクロレンズセルと光源の共役像のみをぼかすことができる。
【0062】
また、拡散板163による偏光への影響を考慮し、偏光フィルタ162の位置を拡散板163の直後に配置する構成としている。その際、拡散板163と偏光フィルタ162を偏光分岐素子158に貼り合わせて、一体化した構成として例示している。
【0063】
一方、拡散板163とコンデンスレンズ157を一体化することも可能である。その場合、拡散板163の代わりにコンデンスレンズ157の表面を砂摺り状の面として、拡散機能を付加した構成としても良い。
【0064】
このように、本実施例によれば、導光部に越しに見える共役像を解消する拡散板を用いることで、映像表示部の照明光学系をマイクロレンズアレイを用いたケーラー照明系とし高効率・高輝度化を実現できる。
【実施例7】
【0065】
図12は、本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図12において、
図11と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図12において、
図11と異なる点は、偏光分岐素子158としてワイヤーグリッドフィルム159を配置した点である。また、ワイヤーグリッドフィルム159が歪まないよう光学的に透明な基板164へ貼り付けた構成を示している。この構成により、偏光分岐素子をワイヤーグリッドフィルムとすることでコストを抑制できる。
【0066】
また、映像表示部120の拡散板163は映像光を拡散させるため共役像の解消に加え、光学系のF値を低下させる効果がある。したがって投射部121のF値も低下させた構成とすることで射出瞳が拡大し、アイボックスが拡大する。この場合、
図13に示したように映像回転複製部122の出射反射面131を1面とする構成としてもよい。これにより、出射反射面を減らすことができ映像回転複製部の製造コストを低減できる。
【実施例8】
【0067】
図14は、本実施例におけるテレセントリック光学系の概要を示す図である。ここでは映像表示部120の構成として、マイクロレンズアレイ155と小型ディスプレイ部125の間に、コンデンス光学部材を配置している。ここではコンデンス光学部材として、単一のコンデンスレンズ157を用いている。またコンデンスレンズ157とマイクロレンズアレイ155の間には折り曲げミラー156を配置している。
【0068】
加えて小型ディスプレイ部125を反射型の液晶ディスプレイとした場合、コンデンスレンズ157と小型ディスプレイ部125の間には、偏光ビームスプリッタやワイヤーグリッドフィルムなどの偏光分岐素子158を配置する必要がある。ここでは偏光分岐素子158として、ワイヤーグリッドフィルム159を光学的に透明な基板164へ貼り付けた構成を示している。
【0069】
テレセントリック光学系とするには、マイクロレンズアレイ155とコンデンスレンズ157の間隔、及びコンデンスレンズ157と小型ディスプレイ部125の間隔が、夫々レンズの焦点距離fとする必要がある。したがって一般的なテレセントリック光学系では、幾何学的な対称性から偏光分岐素子158と折り曲げミラー156の反射面サイズは略同じ面積が必要となる。
【実施例9】
【0070】
図15は、本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図15において、
図11と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図15において、
図11と異なる点は、折り曲げミラー156の反射面面積が偏光分岐素子158の反射面面積よりも小さくした点である。
【0071】
すなわち、導光部123は投射部121の射出瞳の映像光をすべて内部に取り込むことが難しい場合があり、射出瞳の一部の映像光を取り込む場合が多い。これらを鑑みた場合、折り曲げミラー156の有効エリアは偏光分岐素子158の反射面の有効エリアよりも小さいサイズとしても効率の低下がない。
【0072】
よって、本実施例によれば、折り曲げミラー156の反射面を偏光分岐素子158反射面よりも小さな面積とすることで小型化できるという効果がある。
【実施例10】
【0073】
図16は、本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図16において、
図11と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図16において、
図11と異なる点は、小型ディスプレイ部125にデジタルマイクロミラーデバイス型のディスプレイ125Dを用いた点である。デジタルマイクロミラーデバイス型のディスプレイ125Dは偏光の切り分けが不要であり光利用効率を向上できる。
【0074】
図16において、光源部からの照明光は、2枚に分かれたコンデンスレンズ157aへ入射後し、折り曲げミラー156で反射されコンデンスレンズ157bへ入射する。コンデンスレンズ157a、157bを通過した光束は、全反射プリズム165の斜面を通過し、デジタルマイクロミラーデバイス型のディスプレイ125Dに照射される。デジタルマイクロミラーデバイス型のディスプレイ125Dのマイクロミラー面を反射した光束は、角度を変えて再び全反射プリズム165に入射し、斜面を全反射する。全反射した映像光は、投射部121及び映像回転複製部122を通して導光部123へ入射し、ユーザの視野内へ映像を表示する。デジタルマイクロミラーデバイス型のディスプレイ125Dへ斜めに照明光をあてる必要があり、折り曲げミラー156の反射角度を浅くできるため、映像表示部120の垂直方向の寸法Aを縮小できる。
【0075】
小型ディスプレイ部125にデジタルマイクロミラーデバイス型のディスプレイ125Dを用いた場合、映像では黒色に表示したい部分の光(以下OFF光と呼ぶ)はデジタルマイクロミラーデバイスによって光軸が傾けられて投射部方向へ進む。このOFF光を投射部が取り込むと表示画面はきちんとした黒色とならず、画面コントラストの低下や迷光の発生要因となる。よって、OFF光が映像回転複製部へ入射しないよう投射部と映像回転複製部の間又は映像回転複製部の入射面にOFF光を遮光する遮光部170を設けることで、コントラストの低下や迷光の発生を抑制できる。
【実施例11】
【0076】
図17は本実施例における虚像映像生成部の構成図である。
図17において、
図10と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図17において、
図10と異なる点は、小型ディスプレイ部125に自発光型のディスプレイ125Oを用いた点である。これにより、照明光学系が不要となり大幅に小型化される。自発光型のディスプレイとしては有機ELディスプレイやマイクロLEDディスプレイを用いればよい。
【実施例12】
【0077】
本実施例では、各実施例で述べたHMDの応用例について説明する。
図18は、本実施例におけるHMDの使用例を示す図である。
【0078】
図18において、ユーザ2の視界には、HMD1からの映像(虚像)表示領域111にコンテンツが表示される。例えば産業機器の点検や組立て等における作業手順201や図面202が表示される。映像表示領域111には限りがあるので、これら作業手順書201や図面202を同時に表示するとコンテンツが小さくなり視認性が悪くなる。そこでユーザ2の頭の向きを加速度センサで検出するヘッドトラッキングを行い、頭の向きに応じて表示コンテンツを変えることで視認性を改善できる。すなわち、
図18において、ユーザ2は左を向いた状態で映像表示領域111に作業手順201が表示されているが、ユーザが右を向くと、映像表示領域111に図面202が表示され、あたかも、作業手順201と図面202を広い視野で視認できる仮想の映像表示領域112があるように表示することができる。
【0079】
これにより、視認性が改善されるとともに、ユーザ2は、作業対象物(機器や工具など)と作業指示を同時に視認しながら作業を実行することができるので、より確実な作業が可能となりミスを低減することができる。
【0080】
図19は、本実施例におけるHMDのブロック構成図である。
図19において、
図1と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図19において、
図1と異なる点は、特にヘッドトラッキング機能を付加した点である。すなわち、HMD1の画像信号処理部103Aには、ヘッドトラッキング部103Hを設けている。ヘッドトラッキング部103Hはセンシング部106Aの加速度センサ106Hの情報をもとにユーザ2の頭の向きを検出し、頭の向きに応じて表示コンテンツを変更する。
【0081】
また、HMDは屋内外で使用する。従って、周囲環境の明るさに応じて表示映像の輝度も調節する必要がある。一例として、センシング部106Aに照度センサ106Mを搭載し、照度センサの出力に応じて画像信号処理部103Aが表示する映像の輝度を調節すればよい。
【0082】
以上、本発明に係る実施例について説明したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記のHMDおよび虚像映像生成部の機能構成は、理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本発明が制限されることはない。HMDおよび虚像映像生成部の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0083】
また、本発明はHMDだけでなく、各実施例で説明した虚像映像生成部の構成を有する他の映像(虚像)表示装置にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0084】
また、ある実施例の構成の一部を実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、101:虚像映像生成部、102:制御部、103:画像信号処理部、104:電力供給部、105:記憶部、106:センシング部、107:通信部、108:音声処理部、109:撮像部、91~93:入出力部、111:映像表示領域、112:仮想の映像表示領域、120:映像表示部、121:投射部、122:映像回転複製部、123:導光部、125:小型ディスプレイ部、130:入射反射面、131~134:出射反射面、135:出射面、136:入射面、140:体積型ホログラム、141、142:表面掘り込み式回折格子、
150、151:光源部、154:色合成部、155:マイクロレンズアレイ、156:折り曲げミラー、157:コンデンスレンズ(コンデンス光学部材)、158:偏光分岐素子、159:ワイヤーグリッドフィルム、160、162:偏光フィルタ、161:1/4波長板、163:拡散板、169:照明光学系、170:遮光部。