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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】十字靭帯置換用人工膝
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20240208BHJP
   A61F 2/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61F2/38
A61F2/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019206156
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2020142051
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】16/292,467
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517164899
【氏名又は名称】ジョナサン ピー.ガリーノ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ピー.ガリーノ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-515837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0187635(US,A1)
【文献】特開昭50-072493(JP,A)
【文献】特表2013-501555(JP,A)
【文献】特表2017-535349(JP,A)
【文献】米国特許第7160330(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125280(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0125667(US,A1)
【文献】米国特許第6117175(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029649(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016977(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
A61F 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸展位置と屈曲位置の間を移動するように構成された膝関節プロテーゼにおいて、
大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と;
脛骨に組付けられ前記大腿骨構成要素と係合して前記膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結された第1のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第1のポストと係合するように構成された第1のカム陥凹と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に対して固定的に連結された第2のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第2のポストと係合するように構成された第2のカム陥凹と;
を含み、
各ポストが丸味のある凸状表面を含み、各カム陥凹が丸味のある凹状表面であり、各ポストの半径が、各カム陥凹の半径と同一であるか、又は実質的に同一である、膝関節プロテーゼ。
【請求項2】
前記第1のポストが前記大腿骨構成要素に対し固定的に連結され、前記第2のポストが前記大腿骨構成要素に対し固定的に連結されている、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項3】
前記第1のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結され、前記第2のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結されている、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項4】
前記第1のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結され、前記第2のポストが前記大腿骨構成要素に対して固定的に連結されている、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項5】
前記第1のポストが前記大腿骨構成要素に対して固定的に連結され、前記第2のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結されている、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項6】
前記脛骨構成要素が関節挿入物を含む、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項7】
各ポストが、それぞれのカム陥凹と摺動する形で係合され、さらにこのカム陥凹から連結解除される、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項8】
前記ポストまたは前記カム陥凹のいずれかが、前記大腿骨構成要素または前記脛骨構成要素のいずれかに連結されるように構成された取外し可能な挿入物の一部を成す、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項9】
伸展位置と屈曲位置の間を移動するように構成された膝関節プロテーゼにおいて、
大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と;
脛骨に組付けられ前記大腿骨構成要素と係合して前記膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結された第1のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第1のポストと係合するように構成された第1のカム陥凹と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に対して固定的に連結された第2のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第2のポストと係合するように構成された第2のカム陥凹と;
を含み、
前記第1のポストおよび前記第2のポストが、矢状面、前頭面または前記矢状面および前記前頭面の両方で見た場合、交差するように配向されている膝関節プロテーゼ。
【請求項10】
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素が、担持表面において互いに接触し、前記ポストが前記担持表面から離れる方向に延在している、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項11】
伸展位置と屈曲位置の間を移動するように構成された膝関節プロテーゼにおいて、
大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と;
脛骨に組付けられ前記大腿骨構成要素と係合して前記膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結された第1のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第1のポストと係合するように構成された第1のカム陥凹と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に対して固定的に連結された第2のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第2のポストと係合するように構成された第2のカム陥凹と;
を含み、
前記ポストの少なくとも1つおよび前記カム陥凹の1つは、前記膝関節プロテーゼが屈曲位置と伸展位置の間を移動するにつれて前記膝関節プロテーゼの回転をひき起こすように螺旋表面を含んでいる膝関節プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全膝関節置換術(TKR)用に使用される人工膝プロテーゼに関し、より詳細には、人工前十字靭帯(ACL)および/または後十字靭帯(PCL)を有する膝関節プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
全体が参照により本明細書に組込まれているGarinoに対する特許文献1(米国特許出願公開第2017/0252173号明細書)中に記載されている通り、全ての用途のために、人工膝は、概して、3つの主要な構成要素、すなわち大腿骨の遠位端部に取付けられる大腿骨構成要素(図1Aおよび1B)、脛骨の近位端部上に移植される脛骨構成要素(図2Aおよび2B)、および脛骨構成要素上に組付けられ大腿骨構成要素のための摩擦表面を提供する関節挿入物(図3Aおよび3B)を含む。構成要素は、関節および、膝の可動域全体にわたり人間の膝の付随する力学をシミュレートするように設計される。構成要素は概して、変動する寸法(図1A~3Bにおいて寸法A-HおよびJ-Tとして識別)を有する多様な形状で提供されており、こうして、医師は、患者の特異的生体構造に応じて構成要素の最適な組合せを選択できるようになっている。膝のサイズおよび形状は、患者の年令、性別およびサイズを含めたさまざまな要因に左右される。したがって、患者に合わせて人工膝を調整できるように、一般にかなり幅広い構成要素の在庫が入手可能になっている。
【0003】
TKRの場合の通常の膝構築の間、ACLは、全事例の大部分において除去され、選択されたTKR設計に応じて、患者のPCLは保持されるか、またはPCLの失なわれた機能を代用するよう何らかの機構で置換される。PCLが保持される場合でも、多くの場合、膝置換の平衡化を補助するため、外科手術中にPCLの一部分を切断するかまたは部分切断しなければならない。PCLが完全に除去される場合、PCLはポストおよびカム機構によって代用される。
【0004】
TKRは概して、大腿骨構成要素10、脛骨構成要素16および大腿骨構成要素10と相互作用するため脛骨構成要素16の上部組付け用部分20上に存在する関節挿入物22を含む。図1A、1B、3Aおよび3Bを参照すると、ポストおよびカム機構の典型的設計の例示が提供されている。関節挿入物22は、大腿骨構成要素10の開口部12内に突き出す延長部分24を含む。上向きに突出する壁を有するボックス11が、大腿骨構成要素10の内部側に形成され、開口部12と交差する内部領域を含む。延長部分24は、関節が屈曲されたときに開口部12の後部表面14と摩擦接触状態となるように意図された後部表面25を含む。延長部分24が大腿骨構成要素10内の開口部12の後部表面14に接して担持されている場合に生成される抵抗は、健康な後十字靭帯(PCL)によって生じるはずの抵抗をシミュレートするように意図されている。
【0005】
延長部分24の前部表面と開口部12の前部表面の間にカム表面を創出することによって、ACLの機能を部分的に置換するカムおよびポストの機構が製造されてきた。しかしながら、この解決法は、延長部分24の前部側がせいぜい0~20度の屈曲の場合にしか開口部の前部側と接触できないことから、ACLの部分的な代用しか提供しない。
【0006】
別の解決法は、参照により本明細書にその内容が組込まれている特許文献2(米国特許第5,935,133号明細書)中で開示されている材料などのケーブル様の材料で大腿骨構成要素および脛骨構成要素を連結することにある。しかし、この人工的材料は典型的には、PCLを置換するためにのみ使用され、ACLを置換するためには使用されない。
【0007】
解剖学的に適正な置換が欠如していることから、もとの膝に比べると機能性が低いTKRが結果としてもたらされる可能性がある。このことは、外科手術後の理学療法中に支障を発生させ、かつ療法後に身体活動に参加する患者の能力または願望を制限する可能性がある。現代のほぼ全ての全膝置換術は、ACLを犠牲にするか、または膝関節を未熟なカムおよびポスト機構で不適切に代用するため、再建された膝にはACL不全の膝のものに類似する運動機能しか残されない。したがって、正常な膝の運動機能は、なお捉え難いものであり続けている。さらに、ACLとPCL(これらは共に正常な膝の運動学を駆動するものである)の間の適正な相互作用が欠如しているため、TKR再建は、患者にとって比較的正常である膝を作り出す域に達していない状態にとどまっている。
【0008】
膝関節の力学の複雑性および患者が外科手術後に人工膝に順応することの難しさのため、以前は除去された靭帯によって提供されていた復元力および支持をより正確にシミュレートする解剖学的に適正な膝置換システムが必要とされている。解剖学的に、より適正なTKRを提供する目的で、ACLおよびPCLの両方により提供される機能を再現するプロテーゼの実施形態が所望される。
【0009】
ここで図4を参照すると、元来の解剖学上のACLおよびPCLの場所の上に例示的な人工ACL/PCL靭帯を表わすループ30が描画された状態で、健康な人間の膝が例示されている。ループ30の人工PCLを構成する区分は、点26Aおよび26Bによって境界が示されている。ループ30の人工ACLを構成する区分は、点28Aおよび28Bによって境界が示されている。
【0010】
ここで、Garinoに対する特許文献1中に開示されている実施形態を例示する図5、6Aおよび6Bによると、靭帯44として提供されている人工的材料の連結点26a、26b、28aおよび28bおよび人工靭帯44の輪郭として提供されている連結点間にまたがる長さは、図4に例示されている人間の膝内のACLおよびPCLの寸法および付着点をシミュレートするように構成されている。TKRの大腿骨構成要素10と関節挿入物22を連結するために、少なくとも1つの一定長の人工靭帯を提供することができる。
【0011】
Garinoに対する特許文献1は、これらの複雑性に対する解決法を提供するものの、膝関節の力学を改善するために、この分野における開発は絶えず求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2017/0252173号明細書
【文献】米国特許第5,935,133号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明の一実施形態によると、膝関節プロテーゼは、伸展位置と屈曲位置の間を移動する能力を有する。膝関節プロテーゼは、大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と、脛骨に組付けられるように構成された脛骨構成要素であって、大腿骨構成要素と係合させられて膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素とを含む。第1のポストが、大腿骨構成要素および脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結された、膝関節プロテーゼの伸展位置または屈曲位置のいずれかにおいて第1のポストにより係合されるように構成された第1のカム陥凹が、大腿骨構成要素および脛骨構成要素のうちの他方の上に画定されている。第2のポストが、大腿骨構成要素および脛骨構成要素のうちの一方に対して固定的に連結され、膝関節プロテーゼの伸展位置または屈曲位置のいずれかにおいて第2のポストにより係合されるように構成された第2のカム陥凹が、大腿骨構成要素および脛骨構成要素のうちの他方の上に画定されている。
【0014】
本発明の別の実施形態において、膝関節プロテーゼは、大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と、脛骨に組付けられるように構成された脛骨構成要素であって、大腿骨構成要素と係合させられて膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素とを含む。ポストが、大腿骨構成要素および脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結されており、カム陥凹が、大腿骨構成要素および脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、膝関節プロテーゼの伸展位置または屈曲位置のいずれかにおいて第1のポストにより係合されるように構成されている。人工靭帯が、大腿骨構成要素および脛骨構成要素に対して固定的に連結されて、前十字靭帯または後十字靭帯のいずれかをシミュレートする。ポストおよび靭帯は、矢状面、前頭面または矢状面および前頭面の両方で見た場合、交差するように配向されている。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態において、膝関節プロテーゼは、大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と、脛骨に組付けられるように構成された脛骨構成要素を含む。脛骨構成要素は、大腿骨構成要素と係合して膝関節プロテーゼを形成するように構成されている。大腿骨構成要素および脛骨構成要素は少なくとも部分的に、歯車付き配設によって共に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は次の通りである:
図1A】当業者にとって公知の膝関節プロテーゼのための大腿骨構成要素の側面図である。
図1B図1Aの大腿骨構成要素の底面図である。
図2A】当業者にとって公知の膝関節プロテーゼのための脛骨構成要素の上面図である。
図2B図2Aの脛骨構成要素の側面図である。
図3A】当業者にとって公知の膝関節プロテーゼのための関節挿入物の上面図である。
図3B】脛骨構成要素のベースプレート上に組付けられた図3Bの関節挿入物の前面図である。
図4】ACLおよびPCLの解剖学的場所およびACLおよびPCLを置換するように意図された人工的材料の構成を例示する膝関節の側面図である。
図5】先行技術に係るTKRのための大腿骨構成要素、関節挿入物および人工靭帯の側面図である。
図6A図5のラインI-Iに沿った断面の上面図である。
図6B図5のラインI-Iに沿った断面の底面図である。
図7A】膝関節プロテーゼが伸展位置で示されている、本発明の例示的実施形態に係る、矢状面で見た膝関節プロテーゼの断面側面立面図である。
図7B】膝関節プロテーゼが屈曲位置で示されている、図7Aの膝関節プロテーゼの別の面である。
図8】ポストが大腿骨部分上に配置され、カムが脛骨部分上に配置されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図9】1つのポストと1つのカムが大腿骨部分と脛骨部分の各々の上に配置されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図10A】ACLおよびPCLを模倣するポストが脛骨部分上に配置され大腿骨部分上のカムと係合している、矢状面で見た膝関節プロテーゼの実施形態の部分断面図を描いている。
図10B】前頭面で見た図10Aの膝関節プロテーゼを描いている。
図11】ACLおよびPCLを模倣するポストが大腿骨部分上に配置され、脛骨部分上のカムと係合している、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図12】PCLを模倣するポストが脛骨部分上に配置され、大腿骨部分上のカムと係合し、ACLを模倣する人工靭帯が脛骨部分と大腿骨部分の間に配置されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図13】ACLを模倣するポストが脛骨部分上に配置され、大腿骨部分上のカムと係合し、PCLを模倣する人工靭帯が脛骨部分と大腿骨部分の間に配置されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図14】ACLおよびPCLを模倣するポストが大腿骨部分上に配置され、大腿骨部分上のカムと係合している、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図15A】脛骨部分が歯車付き配設により大腿骨部分に結合されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態の側面立面図を描いている。膝関節プロテーゼは、伸展位置で示されている。
図15B】脛骨部分が歯車付き配設により大腿骨部分に結合されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態の側面立面図を描いている。膝関節プロテーゼは、屈曲位置で示されている。
図16A】脛骨部分が歯車付き配設により大腿骨部分に結合され、歯車付き配設が、回転時点での伸展位置への脛骨部分の内側運動をひき起こすように構成されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態の側面立面図を描いている。
図16B】膝関節は、後部側から示されている。
図16C】膝関節は、前部側から示されている。
図17】脛骨部分がポストおよびカム配設によって大腿骨部分に結合されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図18】脛骨部分がポストおよびカム配設によって大腿骨部分に結合されている、矢状面で見た膝関節プロテーゼの変形実施形態を描いている。
図19】脛骨部分がピンおよびスロット配設によって大腿骨部分に結合されている、膝関節プロテーゼの変形実施形態を描く平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、膝関節プロテーゼのさまざまな実施形態を提供する。図中、「A」は、前部側または方向を表わし、「P」は後部側または方向を表わし、「M」は内側側または方向を表わし、関節挿入物は外側側または方向を表わし、「F」は大腿骨構成要素を表わし、「T」は脛骨構成要素(または脛骨構成要素の一部を成す関節挿入物)を表わす。
【0018】
図7Aは、膝関節プロテーゼ100が伸展位置で示されている、本発明の例示的実施形態に係る、矢状面で見た膝関節プロテーゼ100の断面側面立面図である。図7Bは、膝関節プロテーゼ100が屈曲位置で示されている、図7Aの膝関節プロテーゼ100の別の図である。膝関節プロテーゼ100は、図7Aの伸展位置と図7Bの屈曲位置の間で回転する能力を有する。
【0019】
プロテーゼ100は概して、大腿骨構成要素102および脛骨構成要素に対し組付けられているかまたはこの脛骨構成要素の一部を成す関節挿入物104を含む。
【0020】
図7Aおよび7Bに示されている大腿骨構成要素102は、顆状突起を有する大腿骨構成要素(アイテム10のような)または大腿骨構成要素に組付けられたボックス(ボックス11のような)を表わし得る。大腿骨構成要素102の下端部には陥凹108が形成されている。陥凹108は、内側-外側方向に沿って顆状突起106の間に位置設定されている。陥凹108が大腿骨構成要素102の外部表面と交差する場所で、陥凹108の半円形境界において縁部111が形成される。陥凹108は、大腿骨構成要素10内の開口部12と同じ近似場所に位置付けされる。しかしながら開口部12とは異なり、陥凹108は盲であり、平滑で丸味のある内部表面を含む。2つのカム表面110aおよび110b(個別にかまたは集合的にカム表面110と呼ばれる)は、陥凹108の内部表面の相対する端部に形成されている。各カム110は、平滑で丸味のある凹状表面である。カム110の半径は、同じであっても異なっていてもよい。カム110は、関節挿入物104の上部表面から延在する丸みのあるポスト112aおよび112bと相互作用するように構成されている。
【0021】
関節挿入物104は、関節挿入物22に類似したものであり、これらの挿入物の間の主な差異について以下で説明する。関節挿入物104は、担持表面113から延在する2つのポスト112aおよび112b(個別的にかまたは集合的にポスト表面112と呼ばれる)を含む。ポスト112aはACLに対応し、一方、ポスト112bはPCLに対応する。各々の丸味のあるポスト112は、凸状に丸められた表面で終結する。各ポスト112の半径は、各カム110の半径と同一であっても実質的に同じであってもよい。ポスト112の延長部分の高さおよび半径は、噛合するカム110の幾何形状を補完するため、異なるものであっても(図示通り)、同じものであってもよい。この実施形態によると、ACLポスト112aは、PCLポスト112bよりも大きい高さを有する。ポスト112は、担持表面113に直交するそれぞれの軸Zに沿って延在する。代替的には、ポスト112は、軸Zとの関係において斜めに延在し得る。図7Aのポスト112ならびに本明細書中に記載の他の全てのポストは、図示されている通り、関節挿入物22(またはポストが連結されている他の構成要素)と一体になっているか、または機械的ネジ山、ボルト、摩擦、接着剤、セメントまたは、当業者にとって公知である2つの構成要素を共に組付けるための他の任意の手段を用いて、関節挿入物22に連結されていてよい。
【0022】
関節挿入物104は、図7Aの伸展位置と図7Bの屈曲位置の間で大腿骨構成要素102との関係において回転する能力を有する。膝関節プロテーゼ100の伸展位置において、顆状突起は関節挿入物104の担持表面113上に載っていてよく、ポスト112はそのそれぞれのカム110と接して位置付けされる。大腿骨構成要素102が関節挿入物104に対してまたはその逆に回転するにつれて、ポスト112は、陥凹108の縁部111が後部ポスト112の基礎に担持されるまで、カム110の表面に沿って進む。ACLポスト112aは、そのカム110a上に担持されてよい。図示されてはいないものの、膝関節プロテーゼ100に隣接する側副靭帯(MCLおよびLCL)は、関節挿入物104から大腿骨構成要素102が脱出するのを防止している。
【0023】
2つのポスト112および2つのカム110を配設することにより、単一のポストと単一のカムを有する従来の膝関節プロテーゼと比べて、PCLおよびACLの配設がより密に模倣される。
【0024】
上述の通り、陥凹108は、ボックス11と同様に、大腿骨構成要素102に対して取付けることのできる別個の挿入物の中に形成されてよい。異なる陥凹幾何形状を有する一連の挿入物がキットとして提供され得、こうして、患者の特定の生体構造に最も適合した幾何形状を有する挿入物を医療専門家が選択できるようになっている。
【0025】
図8は、ポスト122aおよび122bが大腿骨構成要素124上に配置され、カム128が脛骨構成要素の関節挿入物132上に配置された陥凹130上に画定されている、膝関節プロテーゼ118を描いている。膝関節プロテーゼ118は、ポストとカムの場所が交換されている点を除いて、膝関節プロテーゼ100と類似している。膝関節プロテーゼ118の動作は、膝関節プロテーゼ100の動作と実質的に類似している。図示されてはいないものの、ポスト122aおよび122bは、ボックス11と同様に、大腿骨構成要素124に取付けることのできる別個の挿入物の中に形成され得る。
【0026】
図9は、膝関節プロテーゼ136を描いている。膝関節プロテーゼ136は、1つのポスト138および1つのカム陥凹140が大腿骨構成要素142上に配置され、1つのポスト144および1つのカム陥凹146が脛骨構成要素の関節挿入物148上に配置されているという点を除いて、膝関節プロテーゼ100と類似している。図9に示された伸展位置において、大腿骨構成要素142のポスト138は、脛骨関節挿入物148のカム陥凹146と共に組付けられ、脛骨関節挿入物148のポスト144は、大腿骨構成要素142のカム陥凹140と共に組付けられている。ポスト138は陥凹140の前方に配置されているが、ポスト138および陥凹140の場所を(陥凹146およびポスト144の場所と共に)交換することができるということを理解すべきである。膝関節プロテーゼ136の動作は、膝関節プロテーゼ100の動作と実質的に類似している。
【0027】
図10Aおよび10Bは、膝関節プロテーゼ150の部分断面図の一実施形態を描いている。プロテーゼ150はプロテーゼ100と類似しており、その間の主な差異についてのみ説明する。膝関節プロテーゼ150において、それぞれPCLおよびACLをより密に模倣するポスト152aおよび152b(集合的にポスト152と呼ばれる)は、脛骨部分の関節挿入物154(または脛骨部分自体)の上に配置され、大腿骨構成要素158上に形成されている陥凹157上に配置されたカム156aおよび156b(集合的にカム156と呼ばれる)とそれぞれ係合する。陥凹157は、プロテーゼ150の担持表面155から上向きに延在する。
【0028】
具体的には、関節挿入物154の外側および後部側から大腿骨構成要素158の内側および前部側まで延在するポスト152aは、PCLの場所および幾何形状をより密に模倣する。関節挿入物154の内側および前部側から大腿骨構成要素158の外側および後部側まで延在するポスト152bは、ACLの場所および幾何形状をより密に模倣する。ポスト152aおよび152bは、矢状面で見た場合および前頭面内で見た場合に交差するように配向されているが、ポスト152aおよび152bを、これらの平面のうちの一方において見た場合にのみ交差するように配向することもできる。
【0029】
矢状面内で見た場合の担持表面155との関係における各ポスト152の角度「B」は、図示されているものから変動してよく、ACLまたはPCLの正確な角度を近似するように調整され得る。同様にして、前頭面で見た場合の関節挿入物154の担持表面155との関係における各ポスト152の角度「D」は、図示されているものから変動していてよく、ACLまたはPCLの正確な角度を近似するように調整され得る。角度BおよびDは、図中では誇張されている可能性があることが指摘される。各ポスト152の長さおよび直径は、図示されているものから変動してよく、ACLまたはPCLのものを近似するように調整され得る。各ポスト152は必ずしも、図示されているように長手方向軸に沿って真直ぐに延在している必要はなく、代って、ACLまたはPCLの曲線形状を近似するように湾曲していてよい。
【0030】
各ポスト152は、陥凹157のカム156の凹状表面と回転可能かつ摺動可能な形で係合する凸状の丸味のある表面を含む。ポスト152およびカム156は摺動接触状態にあるが、物理的に互いに分離していることが指摘される。図示されてはいないものの、陥凹157は、大腿骨構成要素158に対して取外し可能な形で取付けられるボックス11のような別個の挿入物の中に形成されてよい。
【0031】
図11は、ポスト159aおよび159bが大腿骨構成要素162上に配置され、脛骨部分の関節挿入物165(または脛骨部分自体)の上に形成されている陥凹163上に配置されたカム161aおよび161bとそれぞれに係合している、という点を除いて膝関節プロテーゼ150と類似である膝関節プロテーゼ160の変形実施形態を描いている。ポストとカムの場所は互換性があるが、ポスト159aおよび159bの場所および幾何形状は、それぞれACLおよびPCLのものを模倣し続けるという点が指摘される。同様に、図9に示された実施形態と同様、図示されてはいないものの、関節挿入物165および大腿骨構成要素162の各々は、1つの角度付きポストおよび1つのカムを含んでいてよい。
【0032】
図12は、膝関節プロテーゼ180の一変形実施形態を描いている。膝関節プロテーゼ180は、膝関節プロテーゼ150と類似しており、以下では、主な差異について説明する。膝関節プロテーゼ180において、PCLを模倣するポスト182は、脛骨部分184の上に配置され、大腿骨部分188上のカム陥凹186と係合する。ACLを模倣する人工靭帯190は、脛骨部分184および大腿骨部分188に固定されている。固定は、図12中、小文字「xxx」で示されている。
【0033】
ポスト182は、関節挿入物184の外側および後部側から大腿骨構成要素188の内側および前部側まで延在して、PCLの場所を模倣する。靭帯190は、関節挿入物184の内側および前部側から大腿骨構成要素188の外側および後部側まで延在して、ACLの場所を模倣する。靭帯190は、ポスト182と異なり、関節挿入物184および大腿骨構成要素188の両方に固定的に連結される。ポスト182および靭帯190は、矢状面見た場合および前頭面で見た場合交差するように配向されているが、ポスト182および靭帯190を、これらの平面のうちの一つで見た場合にのみ交差するように配向することもできる。
【0034】
図13は、靭帯190’およびポスト182’の場所が交換されこうして靭帯190’がPCLを表わしポスト182’がACLを表わすようになっているという点を除いてプロテーゼ180に類似するものである膝関節プロテーゼ192の変形実施形態を描いている。図12および13に代わるものとして、患者の自然のACLまたはPCLが部分膝置換術において保存される場合、ポスト182を完全に削除することができる。
【0035】
本明細書中に示されている靭帯は、ACLまたはPCLに置換するため、人工材料、好ましくは合成繊維または撚糸から形成されており、したがって人工材料は正常な膝の中のACLおよびPCLのそれぞれの配向および場所と同様の形で構成されている。具体的には、構成は、TKR内の人工材料の原点および挿入点が正常な膝内のACLおよびPCLの原点および挿入点に類似することになるようなものである。
【0036】
図14は、PCLポスト202の自由端部が機械的ネジ山であり得る螺旋状突出部204を含むという点を除いて膝関節プロテーゼ150と類似のものである膝関節プロテーゼ200の変形実施形態を描いている。螺旋状突出部204を収容する大腿骨構成要素内のカム206は、螺旋状陥凹208を含む。螺旋状陥凹208は、螺旋状突出部204と相互作用して、膝関節プロテーゼ200が伸展位置と屈曲位置の間を移動するにつれて軸Yを中心としたわずかな回転をひき起こす。わずかな回転は、完全に伸展した状態になったときに実際の膝関節内において感じられるわずかな回転を模倣する。螺旋表面204および208は、代替的には、くさび形、角度付きまたは勾配付き表面の形で提供され得る。
【0037】
「人工的」なる用語は、TKR前の原初の形態での原初の解剖学的ACLまたはPCL靭帯ではないことのみを意味し、合成材料のみの使用に対する限定として解釈されるべきではない。したがって、人工靭帯は、生物学的に創出された材料から作り出された材料などの「天然」材料を含むことができ、かつ/または、合成材料と天然材料のハイブリッドを含むことができる。他の例示的材料には、後脊髄再建における外科的固定のために使用される編組超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ケーブルであるSecure Strand(登録商標)ケーブルとして以前市販されていた材料に類似する製織ポリエチレンの変形形態、UHMWPEおよびNylon6/6.6から作られたSuper Cables(登録商標)(Kinamed,Inc.,Camarillo,CA)として現在市販されている材料、Gore-tex(登録商標)(W.L.Gore and Associates,Inc.Newark,DE,が製造するPTFE繊維)、炭素繊維、または他の類似の製織材料が含まれ得る。
【0038】
本発明のさまざまな実施形態によると、例えば人工靭帯の形での人工材料は、外科手術の時点でTKR内に取込むことができ、または外科手術に先立ってTKRを人工材料と予め組立てることができる。靭帯を脛骨構成要素および大腿骨構成要素に連結するためのさまざまな方法およびデバイスが、Garinoに対する米国特許出願公開第2017/0252173号中に記載されている。この参考文献中で記載されているように、人工靭帯の端部用の係止機構は、いずれかの特定の構成に限定されず、球形リテイナ、金属クリップ、フック、ループ、爪の形をした締結具などを含み得る。
【0039】
上述の実施形態を考慮して、ポスト、カムおよび靭帯を異なる構成要素に対し異なる場所に連結することができる、ということを認識すべきである。したがって、上述の実施形態は、限定的なものとしてみなされるべきではない。
【0040】
図15Aおよび15Bは、脛骨部分302が大腿骨部分304に対してラックアンドピニオンタイプの歯車付き配設によって結合されている、矢状面内で見た場合の膝関節プロテーゼ300の変形実施形態の側面立面図を描いている。図15Aおよび15Bに示された膝関節プロテーゼ300の部分は、膝関節プロテーゼ全体を表わしていないということを理解すべきである。むしろ、図15Aおよび15Bに示された膝関節プロテーゼ300の部分は、脛骨部分302および大腿骨部分304の、ボックス(ボックス11のような)の部域内で互いに接触する部分を表わす。膝関節プロテーゼ300は、図15A中では伸展位置で示され、図15B中では屈曲位置で示されている。脛骨部分302上の歯306は、大腿骨部分304の歯308と噛合し、こうして脛骨部分302の回転は大腿骨部分304の回転をひき起こし、逆も同様となる。
【0041】
図16A~16Cは、脛骨部分402が歯車付き配設によって大腿骨部分404に結合される、膝関節プロテーゼ400の変形実施形態を描いている。膝関節プロテーゼ400は膝関節プロテーゼ300と実質的に類似しており、これらの実施形態間の主な差異について以下で説明する。
【0042】
脛骨部分402は、上に歯406が配置されている丸味のある凸状外部表面を含む。凸状外部表面は、円弧をたどる単純曲線経路を有する後部セグメント406aおよび螺旋経路をたどる前部セグメント406bを含む。螺旋経路は、前部方向で見た場合、内側に延在する。歯も同様に、前部セグメント406bの螺旋経路の軌道をたどる。後部セグメント406aは段階的に前部セグメント406bと交差する。
【0043】
同様にして、大腿骨部分404は、上に歯408が配置されている凸状外部表面を含む。凸状外部表面は、円弧をたどる単純曲線経路を有する後部セグメント408aおよび螺旋経路をたどる前部セグメント408bを含む。螺旋経路は、前部方向で見た場合、内側に延在する。歯も同様に、前部セグメント408bの螺旋経路の軌道をたどるということを理解すべきである。後部セグメント408aは段階的に前部セグメント406bと交差する。
【0044】
後部セグメント408aおよび前部セグメント408bは両方共螺旋軌道をたどるものとして図示され説明されているが、これらのセグメントの1つのみが螺旋軌道をたどることもできる。
【0045】
脛骨部分402上の歯406は、大腿骨部分404の歯408と噛合しており、こうして、脛骨部分402の回転が大腿骨部分404の回転をひき起こし、その逆も同様となる。同様に、脛骨部分402が前部方向に向かって伸展位置まで回転するにつれて、脛骨部分402も同様に内側方向に移動する。脛骨部分402の内側方向へのわずかな回転は、完全に伸展した状態になったときに実際の膝関節内において感じられるわずかな回転を模倣する。内側方向への回転は、噛合する前部部分406bおよび408bの螺旋状幾何形状に起因する。
【0046】
図17は、ポスト502およびカム504の配設によって脛骨部分が大腿骨部分に結合されている、矢状面内で見た場合の膝関節プロテーゼ500の変形実施形態を描いている。膝関節プロテーゼ500は、歯306および308がそれぞれポスト502およびカム504によって置換されている点を除き、膝関節プロテーゼ300と実質的に類似するものである。膝関節プロテーゼ300の歯406および408を、膝関節プロテーゼ500のポストカム配設のようなポストカム配設により同様に置換し得るということを理解すべきである。
【0047】
図18に示されているように、ポスト506およびカム508の配置を、本発明の範囲または精神から逸脱することなく交換することができる。
【0048】
図19は、脛骨部分Tがピン602およびスロット604の配設によって大腿骨部分Fに結合されている膝関節プロテーゼ600の変形実施形態を描く平面図である。膝関節プロテーゼ600は、図19では屈曲位置で示されている。他の実施形態と同様に、図19に示されている膝関節プロテーゼ600の部分は、膝関節プロテーゼ全体ではなく脛骨部分Tおよび大腿骨部分Fの、ボックス(ボックス11のような)の部域内で互いに接触する部分を表わしているにすぎない。
【0049】
この実施形態によると、ピン602は、大腿骨部分F上に配置され、スロット604は脛骨構成要素T上に配置されているが、逆も当てはまり得ると考えられる。ピン602は、スロット604の深さ内へ垂直方向に延在する。動作中、ピン602はスロット604の長さに沿って進む。スロット604は、前部方向で見た場合、内側方向に湾曲する。
【0050】
動作中、脛骨部分Tが前部方向に伸展位置まで回転し、ピン602がスロット604の長さに沿って進むにつれて、脛骨部分Tは同様に内側方向に回転する。内側方向での脛骨部分Tのわずかな回転は、完全に伸展した状態になったときに実際の膝関節内において感じられるわずかな回転を模倣する。内側方向の運動は、スロット604の曲率に起因する。
【0051】
膝関節プロテーゼの構成要素は、同じまたは類似の材料で製造され得る。しかしながら、一般的には、全ての材料は好ましくは不活性で、感染をひき起こす傾向がなく、かつ外科用移植片としての使用のために認可された、他の点では安全なものである。例示的材料としては、ポリエチレン、外科的に認可された金属合金、外科的に認可されたセラミック材料、またはそれらの組合せが含まれる。外科用移植片の分野における任意の周知の材料を用いて、本発明に係るさまざまな実施形態またはその一部分のいずれかを製造することができる。
【0052】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態が図示され説明されてきたが、このような実施形態は一例として提供されているにすぎないということを理解すべきである。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく多くの変形形態、変更および代用を思い付く可能性がある。したがって、添付のクレームは、本発明の精神および範囲内に入る全てのこのような変形形態を網羅する、ということが意図されている。
なお、本開示には以下の態様も含まれる。
〔態様1〕
伸展位置と屈曲位置の間を移動するように構成された膝関節プロテーゼにおいて、
大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と;
脛骨に組付けられ前記大腿骨構成要素と係合して前記膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結された第1のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第1のポストと係合するように構成された第1のカム陥凹と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に対して固定的に連結された第2のポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記第2のポストと係合するように構成された第2のカム陥凹と;
を含む膝関節プロテーゼ。
〔態様2〕
前記第1のポストが前記大腿骨構成要素に対し固定的に連結され、前記第2のポストが前記大腿骨構成要素に対し固定的に連結されている、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様3〕
前記第1のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結され、前記第2のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結されている、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様4〕
前記第1のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結され、前記第2のポストが前記大腿骨構成要素に対して固定的に連結されている、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様5〕
前記第1のポストが前記大腿骨構成要素に対して固定的に連結され、前記第2のポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結されている、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様6〕
前記脛骨構成要素が関節挿入物を含む、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様7〕
各ポストが丸味のある凸状表面を含み、各カム陥凹が丸味のある凹状表面である、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様8〕
各ポストが、それぞれのカム陥凹と摺動する形で係合され、さらにこのカム陥凹から連結解除される、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様9〕
前記ポストまたは前記カム陥凹のいずれかが、前記大腿骨構成要素または前記脛骨構成要素のいずれかに連結されるように構成された取外し可能な挿入物の一部を成す、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様10〕
前記第1のポストおよび前記第2のポストが、矢状面、前頭面または前記矢状面および前記前頭面の両方で見た場合、交差するように配向されている、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様11〕
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素が、担持表面において互いに接触し、前記ポストが前記担持表面から離れる方向に延在している、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様12〕
前記ポストの少なくとも1つおよび前記カムの1つは、前記膝関節プロテーゼが屈曲位置と伸展位置の間を移動するにつれて前記膝関節プロテーゼの回転をひき起こすように螺旋表面を含んでいる、態様1に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様13〕
伸展位置と屈曲位置の間を移動するように構成された膝関節プロテーゼにおいて、
大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と;
脛骨に組付けられるように構成された脛骨構成要素であって、前記大腿骨構成要素と係合して前記膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの一方に固定的に連結されたポスト、および前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素のうちの他方の上に画定され、前記膝関節プロテーゼの前記伸展位置または前記屈曲位置のいずれかにおいて前記ポストと係合するように構成されたカム陥凹と;
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素に対して固定的に連結されて、前十字靭帯または後十字靭帯のいずれかをシミュレートする人工靭帯と;
を含み、
前記ポストおよび前記靭帯が、矢状面、前頭面または前記矢状面および前記前頭面の両方で見た場合、交差するように配向されている、
膝関節プロテーゼ。
〔態様14〕
前記ポストが前記大腿骨構成要素に対して固定的に連結され、前記カム陥凹が前記脛骨構成要素内に画定されている、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様15〕
前記ポストが前記脛骨構成要素に対して固定的に連結され、前記カム陥凹が前記大腿骨構成要素内に画定されている、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様16〕
前記ポストおよび前記靭帯が、前記矢状面および前記前頭面の両方において交差するように配向されている、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様17〕
前記脛骨構成要素が関節挿入物を含む、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様18〕
各ポストが丸味のある凸状表面を含み、各カム陥凹が丸味のある凹状表面である、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様19〕
前記ポストが、カム陥凹と摺動する形で係合され、さらにこのカム陥凹から連結解除される、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様20〕
前記ポスト、前記カム陥凹または前記靭帯が、前記大腿骨構成要素または前記脛骨構成要素のいずれかに連結されるように構成された取外し可能な挿入物の一部を成す、態様13に記載の膝関節プロテーゼ。
〔態様21〕
伸展位置と屈曲位置の間を移動するように構成された膝関節プロテーゼにおいて、
大腿骨に組付けられるように構成された大腿骨構成要素と;
脛骨に組付けられるように構成された脛骨構成要素であって、前記大腿骨構成要素と係合して前記膝関節プロテーゼを形成するように構成された脛骨構成要素と;
を含み、
前記大腿骨構成要素および前記脛骨構成要素が少なくとも部分的に、歯車付き配設によって共に連結されている、膝関節プロテーゼ。
〔態様22〕
前記脛骨構成要素の歯車が前記大腿骨構成要素の歯車と噛合し、前記歯車の少なくとも1つが螺旋軌道をたどって、前記膝関節プロテーゼが前記伸展位置へと移動させられるにつれて内側方向への前記脛骨構成要素の運動をひき起こす、態様21に記載の膝関節プロテーゼ。
〔符号の説明〕
【符号の説明】
【0053】
10 大腿骨構成要素
12 開口部
16 脛骨構成要素
20 上部組付け用部分
22 関節挿入物
24 延長部分
25 後部表面
30 ループ
44、190 靭帯
100、118、150、192、200、3000、400、500 膝関節プロテーゼ
102、124、142、150、158、162、188 大腿骨構成要素
104、132、148、154 関節挿入物
106 顆状突起
108、130、140、146、157、163 陥凹
110、128、156、504、508 カム
111 縁部
112、122、138、144、152、182、502、506 ポスト
113、155 担持表面
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19