(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】タイヤ接地特性計測装置、タイヤ接地特性計測システム及びタイヤ接地特性計測方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240208BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
B60C19/00 Z
(21)【出願番号】P 2019219594
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】神藏 貴久
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-021012(JP,A)
【文献】特開2018-054492(JP,A)
【文献】特許第3430800(JP,B2)
【文献】特開2007-025922(JP,A)
【文献】特開2018-080974(JP,A)
【文献】特開2019-113511(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092334(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0123897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転可能な円筒状の回転ドラムと、
前記回転ドラムを回転軸周りに回転駆動するドラム駆動手段と、
前記回転ドラムの円筒面に埋設され、前記円筒面に当接するタイヤにかかる応力を測定するセンサ列であって、前記円筒面の回転軸方向に縦列して配置され、独立して応力を測定可能な複数の応力測定領域を有するセンサ列を、前記回転ドラムの回転する周方向に互いに異なる位置に複数備え、複数の前記センサ列がそれぞれ有する前記応力測定領域の前記回転軸方向の位置が、複数の前記センサ列の間において互いに異なる位置に配置される応力測定手段と、
前記応力測定手段が備える複数の前記センサ列のうち少なくとも2列の前記センサ列が測定する応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する処理装置と、
前記処理装置が算出する前記タイヤ接地特性を出力する出力装置
と、
前記センサ列が備える前記応力測定領域が測定する応力を補間により補間後応力情報として算出する補間部とを備え、
前記補間後応力情報における応力の分解能は、前記応力測定領域が測定する応力の分解能より高く、
前記処理装置は、前記補間後応力情報における応力の分解能を合成した、更に分解能が高い応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する
タイヤ接地特性計測装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記センサ列のうち少なくとも2列の前記センサ列が測定する応力に基づいて合成タイヤ接地特性を算出する合成
部を更に備える
請求項1に記載のタイヤ接地特性計測装置。
【請求項3】
前記合成部は、前記補間部が算出する前記補間後応力情報に基づき、前記回転ドラムの前記回転軸方向に補間する補間処理を行うことにより前記合成タイヤ接地特性を算出し、
前記出力装置は、前記合成部が算出する前記合成タイヤ接地特性を出力する
請求項2に記載のタイヤ接地特性計測装置。
【請求項4】
前記補間とは、線形内挿補間である
請求項2又は請求項3に記載のタイヤ接地特性計測装置。
【請求項5】
前記補間とは、スプライン補間である
請求項2又は請求項3に記載のタイヤ接地特性計測装置。
【請求項6】
前記応力測定手段は、前記タイヤにかかる接地力と幅方向せん断応力と周方向せん断応力とを測定可能な3分力センサを含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のタイヤ接地特性計測装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のタイヤ接地特性計測装置と、
車両の変位量及び作用力のうち少なくとも一方と、前記車両が備える車輪の変位量及び作用力のうち少なくとも一方とを、車両走行特性として計測する車両特性計測装置と、
前記タイヤ接地特性計測装置によって計測されるタイヤ接地特性と前記車両特性計測装置によって計測される前記車両の前記車両走行特性とに基づき、前記車両の走行時の挙動を予測する車両挙動シミュレーション装置と
を備えるタイヤ接地特性計測システム。
【請求項8】
回転ドラムを回転軸周りに回転駆動するドラム駆動ステップと、
前記回転ドラムの円筒面に埋設され、前記円筒面に当接するタイヤにかかる応力を測定するセンサ列であって、前記円筒面の回転軸方向に縦列して配置され、独立して応力を測定可能な複数の応力測定領域を有するセンサ列を、前記回転ドラムの回転する周方向に互いに異なる位置に複数備え、複数の前記センサ列がそれぞれ有する前記応力測定領域の前記回転軸方向の位置が、複数の前記センサ列の間において互いに異なる位置に配置される応力測定手段の応力を測定する応力測定ステップと、
前記応力測定ステップにより測定された応力のうち少なくとも2列の前記センサ列により測定された応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する処理ステップと、
前記処理ステップにより算出された前記タイヤ接地特性を出力する出力ステップと
、
前記センサ列が備える前記応力測定領域が測定する応力を補間により補間後応力情報として算出する補間ステップとを含み、
前記補間後応力情報における応力の分解能は、前記応力測定領域が測定する応力の分解能より高く、
前記処理ステップは、前記補間後応力情報における応力の分解能を合成した、更に分解能が高い応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する
タイヤ接地特性計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ接地特性計測装置、タイヤ接地特性計測システム及びタイヤ接地特性計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転ドラムに当接するタイヤの応力分布等の接地特性を測定する技術において、回転ドラムに埋設されたセンサがタイヤにかかる応力を測定し、特定の範囲に当接する応力を合成することにより、タイヤにかかる応力分布を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術によると、回転ドラムの回転軸方向(以降、単に回転軸方向と記載する。)の応力分布の解像度は、回転軸方向に埋設されるセンサ同士の距離により制限される。そのため、回転軸方向の解像度をあげるためには、回転軸方向に埋設されるセンサの間隔を狭めなければならなかった。回転ドラムに埋設されるセンサの間隔は、センサの大きさにより制限される。
すなわち、従来手法によると、回転軸方向の分解能は、センサの物理的な大きさにより制限されるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、回転軸方向の解像度をあげることができるタイヤ接地特性計測装置、タイヤ接地特性計測システム及びタイヤ接地特性計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測装置は、回転軸周りに回転可能な円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラムを回転軸周りに回転駆動するドラム駆動手段と、前記回転ドラムの円筒面に埋設され、前記円筒面に当接するタイヤにかかる応力を測定するセンサ列であって、前記円筒面の回転軸方向に縦列して配置され、独立して応力を測定可能な複数の応力測定領域を有するセンサ列を、前記回転ドラムの回転する周方向に互いに異なる位置に複数備え、複数の前記センサ列がそれぞれ有する前記応力測定領域の前記回転軸方向の位置が、複数の前記センサ列の間において互いに異なる位置に配置される応力測定手段と、前記応力測定手段が備える複数の前記センサ列のうち少なくとも2列の前記センサ列が測定する応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する処理装置と、前記処理装置が算出する前記タイヤ接地特性を出力する出力装置と、前記センサ列が備える前記応力測定領域が測定する応力を補間により補間後応力情報として算出する補間部とを備え、前記補間後応力情報における応力の分解能は、前記応力測定領域が測定する応力の分解能より高く、前記処理装置は、前記補間後応力情報における応力の分解能を合成した、更に分解能が高い応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する。
【0007】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測装置において、前記処理装置は、前記センサ列のうち少なくとも2列の前記センサ列が測定する応力に基づいて合成タイヤ接地特性を算出する合成部を更に備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測装置において、前記合成部は、前記補間部が算出する前記補間後応力情報に基づき、前記回転ドラムの前記回転軸方向に補間する補間処理を行うことにより前記合成タイヤ接地特性を算出し、前記出力装置は、前記合成部が算出する前記合成タイヤ接地特性を出力する。
【0009】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測装置において、前記補間とは、線形内挿補間である。
【0010】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測装置において、前記補間とは、スプライン補間である。
【0011】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測装置において、前記応力測定手段は、前記タイヤにかかる接地力と幅方向せん断応力と周方向せん断応力とを測定可能な3分力センサを含む。
【0012】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測システムは、上述したタイヤ接地特性計測装置と、車両の変位量及び作用力のうち少なくとも一方と、前記車両が備える車輪の変位量及び作用力のうち少なくとも一方とを、車両走行特性として計測する車両特性計測装置と、前記タイヤ接地特性計測装置によって計測されるタイヤ接地特性と前記車両特性計測装置によって計測される前記車両の前記車両走行特性とに基づき、前記車両の走行時の挙動を予測する車両挙動シミュレーション装置とを備える。
【0013】
また、本発明の一態様に係るタイヤ接地特性計測方法は、回転ドラムを回転軸周りに回転駆動するドラム駆動ステップと、前記回転ドラムの円筒面に埋設され、前記円筒面に当接するタイヤにかかる応力を測定するセンサ列であって、前記円筒面の回転軸方向に縦列して配置され、独立して応力を測定可能な複数の応力測定領域を有するセンサ列を、前記回転ドラムの回転する周方向に互いに異なる位置に複数備え、複数の前記センサ列がそれぞれ有する前記応力測定領域の前記回転軸方向の位置が、複数の前記センサ列の間において互いに異なる位置に配置される応力測定手段の応力を測定する応力測定ステップと、前記応力測定ステップにより測定された応力のうち少なくとも2列の前記センサ列により測定された応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する処理ステップと、前記処理ステップにより算出された前記タイヤ接地特性を出力する出力ステップと、前記センサ列が備える前記応力測定領域が測定する応力を補間により補間後応力情報として算出する補間ステップとを含み、前記補間後応力情報における応力の分解能は、前記応力測定領域が測定する応力の分解能より高く、前記処理ステップは、前記補間後応力情報における応力の分解能を合成した、更に分解能が高い応力に基づいて、前記タイヤのトレッド表面のうちの前記回転ドラムに接触する接地領域における特性であるタイヤ接地特性を算出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転軸方向の解像度をあげることができるタイヤ接地特性計測装置、タイヤ接地特性計測システム及びタイヤ接地特性計測方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態におけるタイヤ接地特性計測システムの構成の一例を示すである。
【
図2】実施形態におけるタイヤ接地特性計測装置のタイヤと回転ドラムとを説明するための図である。
【
図3】実施形態におけるタイヤのトレッド表面のうちの回転ドラムに接触する接地領域等を説明するための図である。
【
図4】実施形態における処理装置の機能構成を示す図である。
【
図5】実施形態における第1応力測定手段及び第2応力測定手段の構成の一例を示す図である。
【
図6】実施形態における第1応力測定手段及び第2応力測定手段の配置の一例を示す図である。
【
図7】実施形態における合成タイヤ接地特性を説明するための図である。
【
図8】実施形態における第1応力測定手段が測定する応力に基づく応力分布と、第2応力測定手段が測定する応力とに基づく応力分布を示す図である。
【
図9】実施形態における第1応力測定手段が測定する応力と、第2応力測定手段が測定する応力とに基づき、合成部が生成する応力分布を示す図である。
【
図10】実施形態における処理装置の機能構成の変形例を示す図である。
【
図11】実施形態における線形内挿補間をした場合の合成タイヤ接地特性を説明するための図である。
【
図12】実施形態における第1応力測定手段が測定する応力を線形内挿補間した場合の応力分布と、第2応力測定手段が測定する応力を線形内挿補間した場合の応力分布を示す図である。
【
図13】実施形態における線形内挿補間をした場合の合成タイヤ接地特性に基づく応力分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[タイヤ接地特性計測システム400の構成]
図1から
図3を参照しながら、実施形態に係るタイヤ接地特性計測システム400の一例について説明する。
図1は、実施形態におけるタイヤ接地特性計測システム400の構成の一例を示す図である。同図に示すように、タイヤ接地特性計測システム400は、タイヤ接地特性計測装置100と、車両特性計測装置200と、車両挙動シミュレーション装置300とを備えることができる。
【0017】
[タイヤ接地特性計測装置100の構成]
タイヤ接地特性計測装置100は、タイヤTの接地特性(以降、タイヤ接地特性と記載する。)の計測を行う。タイヤ接地特性は、タイヤTの接地領域における特性を示す。具体的には、タイヤ接地特性とは、各種のセンサから得られる計測値、計測値から算出される各種応力、摩耗エネルギー、すべり量、接地力分布、幅方向せん断応力分布、周方向せん断応力分布等の特性を示す。
【0018】
タイヤ接地特性計測装置100は、回転ドラム1と、ドラム用駆動手段2と、応力測定手段3と、処理装置4と、出力装置4Aと、タイヤ位置制御手段5と、タイヤ用駆動手段6と、タイヤ角制御手段7と、ドラム側回転位置検出手段8と、タイヤ側回転位置検出手段9と、タイヤ空気圧変更手段10とを備える。
【0019】
回転ドラム1は、回転可能に構成された概略円柱形状のドラムである。この一例において、回転ドラム1は、回転軸周りに回転可能な円筒状のドラムである。
【0020】
ドラム用駆動手段2は、回転ドラム1を回転軸周りに回転駆動する。具体的には、ドラム用駆動手段2は、モータ等を含む。ドラム用駆動手段2はドラム軸2Aを備えている。ドラム軸2Aは回転ドラム1に連結されている。ドラム用駆動手段2は、回転ドラム1を回転軸周りに正逆いずれの向きにも回転駆動することができる。また、ドラム用駆動手段2は、回転ドラム1の回転速度を調整することができる。
本実施形態において、回転ドラム1はアウトサイドドラム型であるとして説明するが、回転ドラム1は、インサイドドラム型であってもよい。以降、ドラム用駆動手段2を、ドラム駆動手段とも記載する。
【0021】
応力測定手段3は、回転ドラム1の円筒面1Aに埋設され、回転ドラム1に当接するタイヤTにかかる応力(タイヤ力)を測定する。応力測定手段3は、例えばタイヤTにかかる接地力と幅方向せん断応力と周方向せん断応力とを測定可能な3分力センサを含んで構成することができる。この一例において、応力測定手段3は3分力センサを含んでいるとして説明するが、応力測定手段3は、接地力を測定するセンサと、幅方向せん断応力と周方向せん断応力とを測定する2軸センサとを組み合わせたものであってもよい。
【0022】
応力測定手段3は、複数のセンサ列を含む。
センサ列は、回転ドラム1の円筒面1Aに埋設され、円筒面1Aに当接するタイヤTにかかる応力を測定する。センサ列は、円筒面1Aの回転軸方向に縦列して配置され、独立して応力を測定可能な複数の応力測定領域を有する。
応力測定手段3は、複数のセンサ列を、回転ドラム1の回転する周方向に互いに異なる位置に複数備える。
第1応力測定手段3Aと第2応力測定手段3Bとは、センサ列の一例である。
【0023】
処理装置4は、第1応力測定手段3Aが測定する応力と、第2応力測定手段3Bが測定する応力とに基づいて、タイヤ接地特性を算出する。
処理装置4は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、メモリ等を備えたマイクロコンピュータである。処理装置4のメモリには、測定結果を解析するための、データ解析プログラムが格納される。データ解析プログラムとしては、例えば、汎用数値解析プログラムが用いられる。
処理装置4は、出力装置4Aと接続される。処理装置4は、算出したタイヤ接地特性を、出力装置4Aに提供する。
【0024】
出力装置4Aは、処理装置4が算出するタイヤ接地特性を出力する。出力装置4Aは、例えば液晶表示面を備えており、処理装置4が出力する情報に基づいて、タイヤ接地特性を含む情報を表示する。この一例において、出力装置4Aは、液晶表示面を備えるモニタであるとして説明する。
出力装置4Aが出力する情報は、その他の処理装置4が算出する情報を可視化処理した情報を広く含む。例えば、出力装置4Aが出力する情報は、処理装置4が算出する接地力分布、幅方向せん断応力分布、周方向せん断応力分布等を可視化処理した情報であってもよい。
なお、この一例において、出力装置4Aは、画像表示装置であるとして説明するが、この一例に限られず、出力装置4Aは、プリンタ装置等の情報出力装置として構成されていてもよい。
【0025】
タイヤ位置制御手段5は、回転ドラム1に対するタイヤTの位置を制御する。具体的には、タイヤ位置制御手段5は、回転ドラム1に対するタイヤTの位置を回転ドラム1の回転軸方向及び径方向の双方もしくはいずれか一方に調整可能である。
なお、この一例において、タイヤ位置制御手段5がタイヤTの位置を制御することにより、回転ドラム1に対するタイヤTの位置を調整するが、タイヤTに対する回転ドラム1の位置を制御してもよい。また、タイヤTの位置及び回転ドラム1の位置の双方を制御することにより、タイヤTに対する回転ドラム1の位置を制御してもよい。
タイヤ位置制御手段5は、タイヤTに連結されたスピンドル軸5Aと、タイヤ用駆動手段6と、タイヤ角制御手段7とを備える。
【0026】
タイヤ用駆動手段6は、タイヤTを回転駆動する。この一例において、タイヤ用駆動手段6は、モータ等を含む。タイヤ用駆動手段6は、タイヤTを回転軸周りに正逆いずれの向きにも回転駆動することができる。また、タイヤ用駆動手段6は、タイヤTの回転速度を調整することができる。
スピンドル軸5Aは、タイヤ用駆動手段6の動力をタイヤTに伝える。
【0027】
タイヤ角制御手段7は、回転ドラム1に対するタイヤTの角度を制御する。具体的には、タイヤ角制御手段7は、タイヤTにキャンバ角CAを付与することができる。また、タイヤ角制御手段7は、タイヤTにスリップ角SAを付与することができる。また、タイヤ角制御手段7は、回転ドラム1にタイヤTを当接させることによって、タイヤTに接地力を付与することができる。つまり、タイヤ角制御手段7は、タイヤTのキャンバ角CA、スリップ角SA及び接地力のうち少なくともいずれかを調整することによって、実車のコーナリング時等のタイヤ姿勢をタイヤTに再現することができる。
タイヤTに付与されるキャンバ角CAおよびスリップ角SAのいずれか一方または両方を0°に調整することもできる。タイヤTに付与されるキャンバ角CAおよびスリップ角SAの両方が0°に調整される場合には、実車の直進時のタイヤ姿勢がタイヤTに再現される。
【0028】
ドラム側回転位置検出手段8は、回転ドラム1の回転位置を検出する。具体的には、ドラム側回転位置検出手段8は、回転ドラム1の円筒面1Aに埋設された応力測定手段3の回転位置を検出する。
ドラム側回転位置検出手段8は、例えばドラム用駆動手段2のドラム軸2Aに配置されたロータリーエンコーダ等である。
【0029】
タイヤ側回転位置検出手段9は、タイヤTの回転位置を検出する。具体的には、タイヤ側回転位置検出手段9は、基準位置に対するタイヤTの回転位置を検出する。
タイヤ側回転位置検出手段9は、例えばタイヤ位置制御手段5のスピンドル軸5Aに配置されたロータリーエンコーダ等である。
【0030】
タイヤ空気圧変更手段10は、タイヤTの空気圧を変更する。タイヤ空気圧変更手段10は、例えばタイヤ角制御手段7がタイヤTのキャンバ角、スリップ角および接地力のうち少なくともいずれか1つを変更している期間中等に、タイヤTの空気圧を変更する機能を有する。
タイヤ接地特性計測装置100は、タイヤ空気圧変更手段10がタイヤTの空気圧を変更することにより、いわゆるパンク発生時における挙動等を予測および把握することができる。
【0031】
[車両特性計測装置200の構成]
車両特性計測装置200は、車体203と車輪202とステアリングホイール205とを有する試験用車両201と、架台装置(サスペンション特性計測装置)210と、制御器(コンピュータ)220とを備える。
架台装置210は、支持部214と、計測器215とを備える。
【0032】
支持部214は、試験用車両201を載置する。この一例において、支持部214は、車体203と車輪202とを独立に変位させることができる。具体的には、支持部214は、車体203と、車輪202とを、試験用車両201の前後方向、左右方向、上下方向、ピッチ方向およびロール方向に独立に変位させる。
なお、支持部214は、車両の走行中にタイヤに発生し得る前後力、横力、コーナリングフォース、スリップ率、スリップ角の発生が実現できるように、車輪202に対して摺動可能であってもよい。
【0033】
計測器215は、車体203の変位量及び作用力のうち少なくとも一方と、車輪202の変位量及び作用力のうち少なくとも一方とを計測する。具体的には、計測器215は、支持部214に作用する作用力を計測する。また、計測器215は、車輪202のキャンバ角、トー角、舵角等を計測する。また、計測器215は、車軸(図示せず)に作用する力またはトルクを計測する。また、計測器215は、サスペンションのストローク、作用力を計測する。
以後、計測器215が測定する車体203の変位量及び作用力のうち少なくとも一方と、車輪202の変位量及び作用力のうち少なくとも一方とを区別しない場合には、車両走行特性と記載する。
【0034】
制御器220は、支持部214によって車体203に付与される変位量と、支持部214によって車輪202に付与される変位量とを制御する。
【0035】
この一例において、試験用車両201は、ステアリングホイール205を駆動して車輪202の舵角を制御する。しかしながら、試験用車両201は、この一例に限られず、ステアリングホイール205を備えず、車輪202の舵角を制御するよう構成してもよい。
【0036】
[車両挙動シミュレーション装置300の構成]
車両挙動シミュレーション装置300は、作業者によって入力された情報に基づいて実車の走行時の挙動を予測する。具体的には、車両挙動シミュレーション装置300は、タイヤ接地特性計測装置100の処理装置4によって算出されたタイヤ接地特性から予測される車両特性と、車両特性計測装置200の計測器215によって計測された車体203の変位量及び作用力のうち少なくとも一方と、車輪202の変位量及び作用力のうち少なくとも一方と(車両走行特性)を車両挙動シミュレーション装置300における車両モデルに反映して、実車の走行時の挙動を予測する。
前記車両特性には、車両位置、操舵角、ピッチ軸、ロール軸、ヨー軸まわりのモーメント、車両速度、車両の慣性パラメータ、接地力、タイヤの軸力等に代表される各種パラメータを含むことができ、タイヤの軸力としてはタイヤの回転軸に作用する6分力を少なくとも含むことができる。6分力とはタイヤの固定軸に作用するX軸、Y軸、Z軸方向に沿う力と、X軸周りに作用するモーメント、Y軸周りに作用するモーメント、Z軸周りに作用するモーメントを指す。
また、車載された電子制御ユニットに対して予測された車両特性にもとづく指令を送信することができる。当該指令には、ホイールスピード、ヨーレート、車両加速度、タイヤの軸上の加速度、前方レーダおよびカメラ等の各種車載されるセンサに代わる模擬信号を含むものとすることができる。
【0037】
車両挙動シミュレーション装置300は、実車の走行時の挙動をシミュレーションするコンピュータであり、演算処理手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAMおよびHDD、通信手段としてのインターフェイスを含み、記憶手段に格納されたプログラムに基づいて動作する。なお、車両挙動シミュレーション装置300は前記処理装置4と併用されてもよい。
【0038】
また、車両挙動シミュレーション装置300は、キーボードやマウス等の入力手段やモニタ等の表示手段を含む。なお、入力手段は、ハンドルおよびアクセル、ブレーキ等からなる運転状態を再現することができるような装置であってもよい。
入力手段は、作業者によって操作される。入力手段は、作業者によって操作されることにより、実車の走行時の挙動の予測に必要なパラメータ等の情報を取得する。
表示手段は、推定された実車の走行時の挙動等を表示する。例えば、表示手段は車両モデルを用いて表示する。
【0039】
図2は、実施形態におけるタイヤ接地特性計測装置100のタイヤTと回転ドラム1とを説明するための図である。同図に示すように、回転ドラム1の円筒面1Aには、タイヤTのトレッド表面T1が当接させられる。
【0040】
タイヤ用駆動手段6は、スピンドル軸5Aを介し、タイヤTを回転させる。タイヤ用駆動手段6は、タイヤ角制御手段7により、回転ドラム1に対するタイヤTの角度を制御する。この一例において、タイヤTは、キャンバ角CAを付与された状態で回転ドラム1に当接している。
【0041】
ドラム用駆動手段2は、ドラム軸2Aを介し、回転ドラム1を駆動させる。回転ドラム1の円筒面1Aに備えられる応力測定手段3は、タイヤTに当接することにより、応力を測定する。
この一例において、応力測定手段3は、回転ドラム1が1回転するごとに1度、タイヤTに当接する。応力測定手段3は、タイヤTに当接するごとに応力を測定する。この一例において、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bは応力測定手段3に含まれるため、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bは、回転ドラム1が1回転するごとに、それぞれ一度ずつタイヤTの応力を測定する。
【0042】
図3は、実施形態におけるタイヤTのトレッド表面T1のうちの回転ドラム1に接触する接地領域T1A等を説明するための図である。
同図において、タイヤTのトレッド表面T1のうち、回転ドラム1に接触する接地領域を、接地領域T1Aとして示す。回転ドラム1とタイヤTとが接触する荷重直下位置は、基準位置Bに設定されている。ドラム側回転位置検出手段8は、基準位置Bに対する第1応力測定手段3Aおよび第2応力測定手段3Bの回転位置を検出する。この一例において、ドラム側回転位置検出手段8は、第1応力測定手段3Aに対する基準位置Bの回転位置、及び第2応力測定手段3Bに対する基準位置Bの回転位置を検出する。
【0043】
ドラム側回転位置検出手段8によって検出された基準位置Bに対する第1応力測定手段3Aの回転位置と、第2応力測定手段3Bの回転位置と、タイヤ側回転位置検出手段9によって検出された基準位置Bに対するタイヤTの回転位置とは、処理装置4に入力される。処理装置4は、基準位置Bに対する応力測定手段3の回転位置と、基準位置Bに対するタイヤTの回転位置とに基づいて、応力測定手段3が当接するタイヤTの周方向位置を算出する。
【0044】
処理装置4は、応力測定手段3によって測定された応力に基づいて、タイヤTのトレッド表面T1のうちの回転ドラム1に接触する接地領域T1Aにおける特性であるタイヤ接地特性を算出する。
【0045】
出力装置4Aは、処理装置4が算出するタイヤ接地特性を含む情報を出力する。具体的には、本実施形態における出力装置4Aは液晶表示面を備えるモニタであるため、接地領域T1Aの接地力分布、幅方向せん断応力分布、周方向せん断応力分布等を可視化処理した情報を表示する。
【0046】
図4は、実施形態における処理装置4の機能構成を示す図である。同図を用いて、処理装置4の機能構成について説明する。
[処理装置4の機能構成]
処理装置4は、第1応力合成部41と、第2応力合成部42と、合成部43と、出力部44とを備える。処理装置4は、第1応力測定手段3Aから、第1応力測定手段3Aが測定する応力を含む情報である第1応力情報SD1を取得する。処理装置4は、第2応力測定手段3Bから、第2応力測定手段3Bが測定する応力を含む情報である第2応力情報SD2を取得する。処理装置4は、ドラム側回転位置検出手段8から、回転ドラム1の回転位置を示す情報を含むドラム回転位置情報DRPを取得する。処理装置4は、タイヤ側回転位置検出手段9から、タイヤTの回転位置を示す情報を含むタイヤ回転位置情報TRPを取得する。
処理装置4は、出力装置4Aに、タイヤTの接地領域T1Aにおける応力分布を示す情報を含む応力分布情報SDDを出力する。
【0047】
第1応力合成部41は、第1応力測定手段3Aから第1応力情報SD1を取得し、ドラム側回転位置検出手段8からドラム回転位置情報DRPを取得し、タイヤ側回転位置検出手段9からタイヤ回転位置情報TRPを取得する。
第1応力合成部41は、第1応力測定手段3Aが接地領域T1Aにおいて当接している期間の応力を合成し、第1応力分布情報SDD1を生成する。第1応力合成部41は、生成した第1応力分布情報SDD1を合成部43に提供する。
【0048】
第2応力合成部42は、第2応力測定手段3Bから第2応力情報SD2を取得し、ドラム側回転位置検出手段8からドラム回転位置情報DRPを取得し、タイヤ側回転位置検出手段9からタイヤ回転位置情報TRPを取得する。
第2応力合成部42は、第2応力測定手段3Bが接地領域T1Aにおいて当接している期間の応力を合成し、第2応力分布情報SDD2を生成する。第2応力合成部42は、生成した第2応力分布情報SDD2を合成部43に提供する。
【0049】
なお、第1応力合成部41及び第2応力合成部42は、測定の際に応力測定手段3がタイヤTの姿勢や速度などの諸条件が同一であり、タイヤTの接地領域T1Aの同一位置に対向することにより、タイヤTの同一位置について複数の測定結果が得られた場合には、それらの測定結果を平均したものを測定結果として用いることが好ましい。
また、ドラム側回転位置検出手段8およびタイヤ側回転位置検出手段9によって回転ドラム1の回転位置とタイヤTの回転位置とを同期させて計測することにより、パタン付きタイヤフットプリント計測(ラグ溝等を含む接地領域T1Aのタイヤ接地特性の算出)を表現することもできる。
【0050】
合成部43は、第1応力測定手段3Aが測定する応力と第2応力測定手段3Bが測定する応力とに基づいて、合成タイヤ接地特性を算出する。
合成部43は、第1応力合成部41から第1応力分布情報SDD1を取得し、第2応力合成部42から第2応力分布情報SDD2を取得する。合成部43は、第1応力分布情報SDD1と、第2応力分布情報SDD2とを合成し、合成タイヤ接地特性を生成する。以降、合成タイヤ接地特性を、応力分布情報SDDとも記載する。
具体的には、応力分布情報SDDは、第1応力分布情報SDD1及び第2応力分布情報SDD2より解像度の高い分布情報である。第2応力測定手段3Bは、第1応力測定手段3Aが回転ドラム1の円筒面1Aに埋設される位置とは、回転ドラム1の回転する周方向に異なる位置に埋設されるため、合成部43は、第1応力測定手段3Aにより測定された応力分布を示した第1応力分布情報SDD1と、第2応力測定手段3Bにより測定された応力分布を示した第2応力分布情報SDD2を用いることにより、解像度の高い応力分布情報SDDを生成することができる。
合成部43は、生成した応力分布情報SDDを出力部44に提供する。
なお、第1応力合成部41および第2応力合成部42の処理で行われる処理を一括して合成部43にて行うことが可能である。
【0051】
出力部44は、合成部43から応力分布情報SDDを取得する。出力部44は、取得した応力分布情報SDDを出力装置4Aに出力する。
【0052】
図5から
図7は、合成部43が応力分布情報SDDを合成する際の手法について説明する図である。
図5から
図7を用いて、第1応力分布情報SDD1と第2応力分布情報SDD2の合成について説明する。
[第1応力分布情報SDD1と第2応力分布情報SDD2の合成について]
図5は、実施形態における第1応力測定手段及び第2応力測定手段の構成を示す図である。同図において、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bの配置をx軸及びy軸の二次元直交座標系によって示す。x軸は、回転ドラム1の回転軸方向である。y軸は、回転ドラム1の回転する周方向である。
【0053】
応力測定手段3は、回転ドラム1の円筒面1Aに備えられる。応力測定手段3は、センサ列(この一例においては、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3B)を含む。複数のセンサ列は、それぞれ応力測定領域を有する。複数のセンサ列が有するそれぞれの応力測定領域は、回転ドラム1の回転軸方向の位置が、複数のセンサ列の間において互いに異なる位置に配置される。
具体的には、第1応力測定手段3Aは、一列に並んで配置された複数の応力測定領域3ANを備える。同図において、応力測定領域3ANは、応力測定領域3A1と、応力測定領域3A2と、応力測定領域3A3と、応力測定領域3A4と、…と、応力測定領域3A99と、応力測定領域3A100とを備えることができる。応力測定領域3ANは、円筒面1Aの回転軸方向(つまり、同図におけるx軸方向)に縦列して配置することができる。応力測定手段3は、縦列して応力測定手段を配置することによりタイヤおよびドラムの回転角の算出を単純化することができる。
また、応力測定領域3ANは、それぞれ独立して応力を測定可能なセンサである。この一例において、応力測定領域3ANは、それぞれ独立して応力を測定可能な3分力センサであるため、タイヤTにかかる接地力と、幅方向せん断応力と、周方向せん断応力とをそれぞれ独立して測定することができる。
【0054】
第2応力測定手段3Bは、一列に並んで配置された複数の応力測定領域3BNを備える。同図において、応力測定領域3BNは、応力測定領域3B1と、応力測定領域3B2と、応力測定領域3B3と、応力測定領域3B4と、…と、応力測定領域3B99と、応力測定領域3B100とを備えることができる。つまり、この一例において、第2応力測定手段3Bは、100の応力測定領域3BNを備える。応力測定領域3BNは、円筒面1Aの回転軸方向(つまり、同図におけるx軸方向)に縦列して配置することができる。縦列して応力測定手段を配置することによりタイヤおよびドラムの回転角の算出を単純化することができる。
応力測定領域3BNは、それぞれ独立して応力を測定可能なセンサである。この一例において、応力測定領域3BNは、それぞれ独立して応力を測定可能な3分力センサであるため、タイヤTにかかる接地力と、幅方向せん断応力と、周方向せん断応力とをそれぞれ独立して測定することができる。
【0055】
図6は、実施形態における第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bの配置の一例を示す図である。同図において、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bの配置をx軸及びy軸の二次元直交座標系によって示す。x軸は、回転ドラム1の回転軸方向である。y軸は、回転ドラム1の回転する周方向である。
応力測定領域3AN及び応力測定領域3BNの大きさ、並びに応力測定領域3AN及び応力測定領域3BNの位置関係を、応力測定領域3A1及び応力測定領域3B1を用いて説明する。
応力測定領域3A1のy軸方向の長さを符号L11、x軸方向の長さを符号L12とする。この一例において、L11およびL12は同等の長さであるものとする。
ここでL11およびL12の長さは2~8mm(ミリメートル)とすることができる。
【0056】
応力測定領域3BNは、応力測定領域3ANとそれに隣接する応力測定領域3ANの間であって、x軸方向に異なる位置に配置される。例えば、応力測定領域3B1は、応力測定領域3A1とそれに隣接する応力測定領域3A2の間に位置する。応力測定領域3ANのうち、端に位置する応力測定領域3A1と、応力測定領域3BNのうち、端に位置する応力測定領域3B1とのx軸方向の距離を符号L13とする。この一例において、符号L13は1/2×L12である。つまり、応力測定領域3ANと、応力測定領域3BNとは、x軸方向において1/2×L12間隔で交互に配置される。応力測定手段がn列存在する場合には1/n×L12の間隔でずらして配置することにより、センサ中心を等間隔に配置することができるようになるため適切に解像度を向上させることができる。
【0057】
応力測定領域3ANと、応力測定領域3BNとは、一定の距離を離して配置される。応力測定領域3ANと、応力測定領域3BNとの間の距離を符号L14とする。この一例において、符号L14は設置を容易に行うことができる点において小さい方が望ましい。しかし、各々の応力測定領域において、タイヤおよびドラムの回転位置を特定して応力分布を合成することが可能であるため、必ずしも隣り合う位置(L14が小さくなる位置)に応力測定手段を配置しなくてもよい。
【0058】
図7は、実施形態における合成タイヤ接地特性を説明するための図である。同図において、第1応力測定手段3Aが備える応力測定領域3ANを“1列目”として、第2応力測定手段3Bが備える応力測定領域3BNを“2列目”として、合成部43が合成する応力の領域を“結合”として示す。
上述したように、この一例において、応力測定領域3AN及び応力測定領域3BNのx軸方向の長さはL12ある。第1応力測定手段3Aは、N個の応力測定領域3ANを備えるため、ドラムの幅方向にL12×Nの範囲における応力を測定することができる(符号L21)。同様に、第2応力測定手段3Bは、N個の応力測定領域3BNを備えるため、ドラムの幅方向にL12×Nの範囲における応力を測定することができる(符号L22)。
【0059】
合成部43は、センサ列のうち少なくとも2列のセンサ列が測定する応力に基づいて合成タイヤ接地特性を算出する。具体的には、合成部43は、第1応力測定手段3Aが測定する応力に基づく応力分布と、第2応力測定手段3Bが測定する応力に基づく応力分布とを合成し、より解像度が高い応力分布を算出する。この一例において、合成部43は、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bが測定する応力に基づく応力分布の2倍の解像度の応力分布を算出することができる。
【0060】
具体的には、“結合”における合成部43が合成する応力の領域は、“1列目”における第1応力測定手段3Aが備える応力測定領域3ANがL12間隔で測定する応力と、“2列目”における第2応力測定手段3Bが備える応力測定領域3BNがL12間隔で測定する応力とを、1/2×L12間隔で配置することにより、生成される。
例えば、“1列目”における応力測定領域3A1が測定する応力を“結合”における応力測定領域3CA1とし、“2列目”における応力測定領域3B1が測定する応力を“結合”における応力測定領域3CB1とし、“1列目”における応力測定領域3A2が測定する応力を“結合”における応力測定領域3CA2とし、“2列目”における応力測定領域3B2が測定する応力を“結合”における応力測定領域3CB2とする。
このように、合成部43は、応力測定領域3ANがL12間隔で測定する応力と、応力測定領域3BNがL12間隔で測定する応力とを、1/2×L12間隔で交互に配置していくことにより、1/2×L12間隔の解像度をもつ応力分布を算出することができる。この一例において、合成部43が生成する応力分布の範囲はL12×Nである(符号L23)。
【0061】
この一例において、“結合”における合成部43が合成する応力の領域は、応力測定領域3AN及び応力測定領域3BNの境目を跨ぐ情報は含まれない。具体的には、応力測定領域3A1と応力測定領域3A2との境目の応力は、応力測定領域3B1により測定される。このため、本実施形態における応力分布は、センサの中央に近い情報を用いて算出することができる。
【0062】
図8は、実施形態における第1応力測定手段3Aが測定する応力に基づく応力分布と、第2応力測定手段3Bが測定する応力とに基づく応力分布を示す図である。
図8(A)は、第1応力測定手段3Aが測定する応力に基づく応力分布を示す図である。
図8(B)は、第2応力測定手段3Bが測定する応力に基づく応力分布を示す図である。
具体的には、
図8(A)は、第1応力合成部41が、第1応力情報SD1と、ドラム回転位置情報DRPと、タイヤ回転位置情報TRPとに基づいて生成する第1応力分布情報SDD1を可視化処理したタイヤ接地特性の一例である。
図8(B)は、第2応力合成部42が、第2応力情報SD2と、ドラム回転位置情報DRPと、タイヤ回転位置情報TRPとに基づいて生成する第2応力分布情報SDD2を可視化処理したタイヤ接地特性の一例である。
【0063】
図8(A)および
図8(B)の横軸はタイヤTの幅方向を示しており、
図8(A)および
図8(B)の縦軸はタイヤTの周方向を示している。
図8(A)および
図8(B)の上側はタイヤTの踏み側を示しており、
図8(A)および
図8(B)の下側はタイヤTの蹴り側を示している。
図8(A)および
図8(B)に示す一例では、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3BがL12間隔で取得する応力に基づく分布となっている。つまり、同図における解像度はL12間隔である。
【0064】
図9は、実施形態における第1応力測定手段3Aが測定する応力と、第2応力測定手段3Bが測定する応力とに基づき、合成部43が生成する応力分布を示す図である。
具体的には、
図9は、合成部43が第1応力分布情報SDD1と、第2応力分布情報SDD2とに基づいて生成する応力分布情報SDDを可視化処理したタイヤ接地特性の一例である。
【0065】
図9の横軸はタイヤTの幅方向を示しており、
図9の縦軸はタイヤTの周方向を示している。
図9の上側はタイヤTの蹴り側を示しており、
図9の下側はタイヤTの踏み側を示している。
図9に示す例では、第1応力測定手段3AがL12間隔で取得する応力と、第2応力測定手段3BがL12間隔で取得する応力とを合成している応力分布であるため、同図における解像度は1/2×L12間隔である。
【0066】
図10は、実施形態における処理装置4の機能構成の変形例を示す図である。
[処理装置4の機能構成の変形例]
同図を用いて、処理装置40の機能構成について説明する。処理装置40は、処理装置4の変形例である。上述した処理装置4と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。処理装置40は、第1補間部45及び第2補間部46を備える点において、処理装置4とは異なる。
同図を参照しながら、処理装置40が第1補間部45及び第2補間部46を備えることにより、各々の応力測定手段(第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3B)から得られた応力を補間し、補完されたデータを合成する場合について説明する。なお、応力測定手段の数はこの一例に限定されず、複数の応力測定手段を備えるよう構成してもよい。応力測定手段の数が増えた場合、合成された結果に対して一括して補間処理を行うことも可能であるが、各々の応力測定手段の状況を把握できる点およびデータ点数を増やして平均化することができる点において、各々の測定手段から得られた応力を直接補間したデータを用いたほうが好ましいことがある。
【0067】
第1補間部45は、第1応力測定手段3Aから、第1応力測定手段3Aが備える応力測定領域3ANが測定する応力である第1応力情報SD1を取得する。第1補間部45は、取得した第1応力情報SD1を補間により補間後第1応力情報SD1Aとして算出する。この一例において、第1補間部45が行う補間は、線形内挿補間であってもよいし、所定の多項式を用いた多項式補間であってもよい。
第1補間部45は、補間後第1応力情報SD1Aを第1応力合成部41に提供する。
【0068】
第2補間部46は、第2応力測定手段3Bから、第2応力測定手段3Bが備える応力測定領域3BNが測定する応力である第2応力情報SD2を取得する。第2補間部46は、取得した第2応力情報SD2を補間により補間後第2応力情報SD2Aとして算出する。この一例において、第2補間部46が行う補間は、線形内挿補間であってもよいし、スプライン補間であってもよい。
第2補間部46は、補間後第2応力情報SD2Aを第2応力合成部42に提供する。
【0069】
なお、第1補間部45及び第2補間部46を区別しない場合には、補間部とも記載する。補間部が行う補間は、線形内挿補間及び多項式補間に限定されない。例えば、第1補間部45が行う補間は、多項式補間等であってもよい。
線形内挿補間、多項式補間及びスプライン補間を区別しない場合には、補間と記載する場合がある。
【0070】
図11は、実施形態における線形内挿補間をした場合の合成タイヤ接地特性を説明するための図である。同図において、第1応力測定手段3Aが備える応力測定領域3ANを“1列目”として、第1補間部45が補間した後の応力の領域を“1列目線形補間(1/2×L12刻み)”として、第2応力測定手段3Bが備える応力測定領域3BNを“2列目”として、第2補間部46が補間した後の応力の領域を“2列目線形補間(1/2×L12刻み)”として、合成部43が合成する応力の領域を“結合”として示す。
応力測定手段の接地個所×n倍の数になるように補間することで、複数の応力測定手段の情報を容易に補間および合成することができる。すなわち測定領域を1/(応力測定手段の接地個所×n)とするような補間が望ましい。後述の実施形態では応力測定箇所が2か所であるため、2×2とするような補間をしたものを例示する。
【0071】
第1補間部45は、第1応力測定手段3Aが備える応力測定領域3ANによりL12間隔で測定される応力に対して線形内挿補間を適用し、1/4×L12間隔の応力を算出する。同図に示す“1列目線形補間”は、第1補間部45により生成される1/4×L12間隔の応力を示す。
第2補間部46は、第2応力測定手段3Bが備える応力測定領域3ABによりL12間隔で測定される応力に対して線形内挿補間を適用し、1/4×L12間隔の応力を算出する。同図に示す“2列目線形補間”は、第2補間部46により生成される1/4×L12間隔の応力を示す。
【0072】
合成部43は、第1補間部45が算出する1/4×L12間隔の応力に基づく第1応力分布情報SDD1と、第2補間部46が算出する1/4×L12間隔の応力に基づく第2応力分布情報SDD2とに基づき、回転ドラム1の回転軸方向に補間する補間処理を行う。合成部43は、第1応力分布情報SDD1と、第2応力分布情報SDD2とを合成する補間処理を行うことにより、より解像度が高い合成タイヤ接地特性を算出する。
この一例において、合成部43は、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bが測定する応力に基づく応力分布の4倍の解像度の応力分布を算出することができる。
【0073】
具体的には、“結合”における合成部43が合成する応力の領域は、“1列目線形補間”における第1補間部45が算出する1/4×L12間隔の応力に基づく応力と、“2列目線形補間”における第2補間部46が算出する1/4×L12間隔の応力とが回転ドラム1の周方向に重複している部分(符号L33に示す範囲)に関しては、第1補間部45が算出する1/4×L12間隔の応力と、第2補間部46が算出する1/4×L12間隔の応力との平均の値を用いる。
例えば、応力測定領域3C1Cは、応力測定領域3A1Cと応力測定領域3B1Aとの平均の値を用いる。応力測定領域3C1Cから3C100Cについても同様である。
【0074】
第1応力測定手段3Aと、第2応力測定手段3Bとは、回転ドラム1の回転軸方向に1/2×L12ずらして配置されるため、“1列目線形補間”における第1補間部45が算出する1/4×L12間隔の応力に基づく応力と、“2列目線形補間”における第2補間部46が算出する1/4×L12間隔の応力とが回転ドラム1の周方向に重複しない部分が存在する(符号L34及び符号L35に示す範囲)。これらの部分については、1列目線形補間1個(1/2×L12刻み)”における第1補間部45が算出する1/4×L12間隔の応力に基づく応力又は“2列目線形補間1個(1/2×L12刻み)”における第2補間部46が算出する1/4×L12間隔のいずれか一方の応力を、そのまま用いることができる。
例えば、応力測定領域3C1A及び応力測定領域3C1Bには、応力測定領域3A1A及び3A1Bをそれぞれ適用し、応力測定領域3C100D及び応力測定領域3C101Aには、応力測定領域3B100B及び3B100Cをそれぞれ適用することができる。
【0075】
図12は、実施形態における第1応力測定手段3Aが測定する応力を線形内挿補間した場合の応力分布と、第2応力測定手段3Bが測定する応力を線形内挿補間した場合の応力分布を示す図である。
図12(A)は、第1応力測定手段3Aが測定する応力を線形内挿補間した場合の応力分布を示す図である。
図12(B)は、第2応力測定手段3Bが測定する応力を線形内挿補間した場合の応力分布を示す図である。
【0076】
具体的には、
図12(A)は、第1応力合成部41が、補間後第1応力情報SD1Aと、ドラム回転位置情報DRPと、タイヤ回転位置情報TRPとに基づいて生成する第1応力分布情報SDD1を可視化処理したタイヤ接地特性の一例である。
図12(B)は、第2応力合成部42が、補間後第2応力情報SD2Aと、ドラム回転位置情報DRPと、タイヤ回転位置情報TRPとに基づいて生成する第2応力分布情報SDD2を可視化処理したタイヤ接地特性の一例である。補間後第1応力情報SD1Aと、補間後第2応力情報SD2Aとを区別しない場合には、補間後応力情報とも記載する。
【0077】
図12(A)および
図12(B)の横軸はタイヤTの幅方向を示しており、
図12(A)および
図12(B)の縦軸はタイヤTの周方向を示している。
図12(A)および
図12(B)の上側はタイヤTの踏み側を示しており、
図12(A)および
図12(B)の下側はタイヤTの蹴り側を示している。
【0078】
図13は、実施形態における線形内挿補間をした場合の合成タイヤ接地特性に基づく応力分布を示す図である。具体的には、
図13に示す一例は、合成部43が、補間後第1応力情報SD1Aに基づく第1応力分布情報SDD1と、補間後第2応力情報SD2Aに基づく第2応力分布情報SDD2とに基づいて生成する応力分布情報SDDを可視化処理した合成タイヤ接地特性の一例である。
同図では、処理装置40が第1補間部45及び第2補間部46を備えない場合(
図8参照)に比べ、4倍の解像度を有している。つまり、同図における解像度は、1/4×L12間隔である。
【0079】
[実施形態の効果のまとめ]
以上説明したように、本実施形態のタイヤ接地特性計測装置100は、回転ドラム1の円筒面1Aに第1応力測定手段3Aと、第2応力測定手段3Bとを備える。第1応力測定手段3Aと、第2応力測定手段3Bとは、回転ドラム1の回転軸方向に異なる位置にずらして配置される。
処理装置4は、回転ドラム1の回転軸方向に異なる位置に配置された第1応力測定手段3Aと、第2応力測定手段3Bとに基づいてタイヤ接地特性を算出する。したがって、本実施形態のタイヤ接地特性計測装置100は、第2応力測定手段3Bを備えない場合に比べ、回転軸方向の解像度を上げることができる。
【0080】
また、上述した実施形態によれば、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bは、独立して応力を測定可能な複数の応力測定領域を備える。第2応力測定手段3Bがそなえる応力測定領域3BNは、第1応力測定手段3Aがそなえる応力測定領域3ANと、それに隣接する応力測定領域3ANとの間に配置される。
したがって、合成部43は、応力測定領域3ANが測定する応力と、応力測定領域3BNが測定する応力とを交互に配置することにより、2倍の解像度を有する応力分布を算出することができる。つまり、タイヤ接地特性計測装置100は、応力測定手段を設置個所倍の解像度の高い応力分布を容易に算出することができる。
【0081】
また、上述した実施形態によれば、タイヤ接地特性計測装置100は、合成部43と、第1補間部45と、第2補間部46とを備える。タイヤ接地特性計測装置100は、第1補間部45と、第2補間部46とを備えることにより、第1応力測定手段3Aが測定する第1応力情報SD1及び第2応力測定手段3Bが測定する第2応力情報SD2を線形内挿補間する。合成部43は線形内挿補間された補間後第1応力情報SD1Aと、補間後第2応力情報SD2Aとを合成することにより、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bが備えるセンサの数より解像度の高い応力分布を算出することができる。
【0082】
また、上述した実施形態によれば、第1補間部45及び第2補間部46が行う線形内挿補間は、線形内挿補間である。したがって、タイヤ接地特性計測装置100は、高速に処理を行うことができる。
【0083】
また、上述した実施形態によれば、第1応力測定手段3A及び第2応力測定手段3Bは、3分力センサを含む。したがって、タイヤ接地特性計測装置100は、タイヤTにかかる接地力と、幅方向せん断応力と、周方向せん断応力とを測定することができる。
【0084】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…回転ドラム
2…ドラム用駆動手段
2A…ドラム軸
3…応力測定手段
3A…第1応力測定手段
3B…第2応力測定手段
4…処理装置
4A…出力装置
5…タイヤ位置制御手段
5A…スピンドル軸
6…タイヤ用駆動手段
7…タイヤ角制御手段
8…ドラム側回転位置検出手段
9…タイヤ側回転位置検出手段
10…タイヤ空気圧変更手段
100…タイヤ接地特性計測装置
200…車両特性計測装置
201…試験用車両
202…車輪
203…車体
205…ステアリングホイール
210…架台装置
214…支持部
215…計測器
220…制御器
300…車両挙動シミュレーション装置
T…タイヤ
T1…トレッド表面
T1A…接地領域