(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】衝撃波式スートブロワおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
F23J 3/00 20060101AFI20240208BHJP
F28G 7/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F23J3/00 Z
F28G7/00 A
F23J3/00 101A
(21)【出願番号】P 2019236169
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 充
(72)【発明者】
【氏名】森田 介斗
(72)【発明者】
【氏名】田代 英之
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/185736(WO,A1)
【文献】特開2004-278921(JP,A)
【文献】特開2005-188918(JP,A)
【文献】特表2017-512126(JP,A)
【文献】Christian Steiner, Manfred Napp and Helen Gablinger,Effizientere Heizflaechenabreinigung durch Explosionsgeneratoren,Energie aus Abfall,ドイツ,TK Verlag GMBH,2012年,Vol. 9,p. 357-370,https://www.vivis.de/2012/01/energie-aus-abfall-band-9/448/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 3/00
F28G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの混合気を燃焼させることにより衝撃波を出力する衝撃波式スートブロワであって、
前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを混合して燃焼させる燃焼室と、
前記燃焼室で生成した燃焼ガスを吐出することにより衝撃波を出力する吐出ノズルを有するスートブロワ本体と、
前記スートブロワ本体に設けられて、不燃性ガスである押圧ガスによって燃焼開始前に前記吐出ノズルの入口を閉鎖し、燃焼開始後に前記吐出ノズルの入口を開放するように構成された開閉機構と、
前記燃料ガスを供給する燃料供給源と、
前記酸化剤ガスを供給する酸化剤供給源と、
前記燃料供給源と前記燃焼室の間に設けられて前記燃料ガスを貯留する燃料貯留タンクと、
前記酸化剤供給源と前記燃焼室の間に設けられて前記酸化剤ガスを貯留する酸化剤貯留タンクと、
前記開閉機構へ前記押圧ガスを供給する押圧ガス供給源から前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクの少なくとも一方へ前記押圧ガスを出力調整用ガスとして供給する出力調整ガス供給路と、
を備える衝撃波式スートブロワ。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃波式スートブロワにおいて、さらに、
前記衝撃波式スートブロワから出力された衝撃力を測定する衝撃力測定器と、
前記衝撃力測定器の測定値に基づいて前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクの少なくとも一方への前記押圧ガスの供給量を制御する制御装置と、
を備える衝撃波式スートブロワ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の衝撃波式スートブロワにおいて、さらに、
前記押圧ガス供給源から前記吐出ノズルへ前記押圧ガスをパージ用ガスとして供給するパージガス供給路を備える衝撃波式スートブロワ。
【請求項4】
請求項
1に記載のスートブロワを運転する方法であって、
前記燃料供給源から前記燃料貯留タンクへ、前記燃料ガスを所定の設定圧力値になるまで供給する過程と、
前記酸化剤供給源から前記酸化剤貯留タンクへ、前記酸化剤ガスを所定の設定圧力値になるまで供給する過程と、
前記押圧ガス供給源から前記出力調整ガス供給路を介して、前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクの少なくとも一方へ前記押圧ガスを所定の設定圧力値になるまで供給する過程と、
前記燃料貯留タンクへのガス供給および前記酸化剤貯留タンクへのガス供給が完了した後、前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクから、各貯留タンクに貯留されたガスを所定時間前記燃焼室へ供給する過程と、
を備える衝撃波式スートブロワの運転方法。
【請求項5】
請求項4に記載の運転方法において、
前記
衝撃波式スートブロワから出力された衝撃力を測定する衝撃力測定器の測定値に基づいて、前記押圧ガスの
前記所定の設定圧力値を決定する過程
を備える衝撃波式スートブロワの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波式スートブロワおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばボイラなどの装置に、装置内の機器表面(例えば、過熱器の表面)に付着したダストを除去するために、衝撃波式スートブロワが用いられている(例えば、特許文献1参照)。この衝撃波式スートブロワは、燃料ガスおよび酸化剤ガスを含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させ、この衝撃波を装置の内部空間に放出するように構成されている。この衝撃波により、装置内の機器表面からダストが除去される。
【0003】
一般的に、衝撃波式スートブロワは、燃料ガスと酸化剤ガスを混合して燃焼させる燃焼室と、燃焼室に供給するための燃料ガスおよび酸化剤ガスの各々を貯留しておく燃料ガス貯留タンクおよび酸化剤貯留タンクを備えており、従来、前記燃焼室へのガス供給は、各貯留タンクに燃料ガスおよび酸化剤ガスをそれぞれ所定の設定圧力値になるまで充填し、その後、各貯留タンク内のガスを所定時間(各貯留タンク内の圧力と燃焼室内の圧力が平衡に達するのに十分な時間)燃焼室へ転送することにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衝撃波式スートブロワにおいて、出力される衝撃波の衝撃力は燃焼室内の圧力によって決まるので、上記のように運転される衝撃波式スートブロワでは、設計上出力可能な衝撃波強度の範囲は主として燃料ガス貯留タンクおよび酸化剤貯留タンクの容積によって決まることになる。その場合、当該スートブロワが設置される設備の規模の変更や運用条件の変更等によって、より低い出力で十分になる場合、ランニングコストの無駄が生じる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、動作可能な出力範囲を柔軟に変更可能とすることにより、容易にランニングコストの最適化を図ることができる衝撃波式スートブロワおよびその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明に係る衝撃波式スートブロワは、
燃料ガスと酸化剤ガスとの混合気を燃焼させることにより衝撃波を出力する衝撃波式スートブロワであって、
前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを混合して燃焼させる燃焼室と、
前記燃焼室で生成した燃焼ガスを吐出することにより衝撃波を出力する吐出ノズルを有するスートブロワ本体と、
前記スートブロワ本体に設けられて、不燃性ガスである押圧ガスによって燃焼開始前に前記吐出ノズルの入口を閉鎖し、燃焼開始後に前記吐出ノズルの入口を開放するように構成された開閉機構と、
前記燃料ガスを供給する燃料供給源と、
前記酸化剤ガスを供給する酸化剤供給源と、
前記燃料供給源と前記燃焼室の間に設けられて前記燃料ガスを貯留する燃料貯留タンクと、
前記酸化剤供給源と前記燃焼室の間に設けられて前記酸化剤ガスを貯留する酸化剤貯留タンクと、
前記開閉機構へ前記押圧ガスを供給する押圧ガス供給源から前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクの少なくとも一方へ前記押圧ガスを出力調整用ガスとして供給する出力調整ガス供給路と、
を備える。
【0008】
また、本発明に係る衝撃波式スートブロワの運転方法は、
前記燃料供給源から前記燃料貯留タンクへ、前記燃料ガスを所定の設定圧力値になるまで供給する過程と、
前記酸化剤供給源から前記酸化剤貯留タンクへ、前記酸化剤ガスを所定の設定圧力値になるまで供給する過程と、
前記押圧ガス供給源から前記出力調整ガス供給路を介して、前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクの少なくとも一方へ前記押圧ガスを所定の設定圧力値になるまで供給する過程と、
前記燃料貯留タンクへのガス供給および前記酸化剤貯留タンクへのガス供給が完了した後、前記燃料ガス貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクから、各貯留タンクに貯留されたガスを所定時間前記燃焼室へ供給する過程と、
を備える。
【0009】
この構成によれば、従来から衝撃波式スートブロワの運転に使用されていた不燃性ガスである押圧ガスを利用して、衝撃波式スートブロワの出力を低下させることができる。したがって、設備の規模の変更等によってより低い出力が必要になる場合でも、当該スートブロワを、大幅に仕様変更することなく、容易に適切なランニングコストで使用することが可能になる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る衝撃波式スートブロワにおいて、さらに、前記衝撃波式スートブロワから出力された衝撃力を測定する衝撃力測定器と、前記衝撃力測定器の測定値に基づいて前記燃料貯留タンクおよび前記酸化剤貯留タンクの少なくとも一方への前記押圧ガスの供給量を制御する制御装置とを備えていてもよい。
【0011】
また、上記実施形態に係る衝撃波式スートブロワの運転方法は、前記衝撃力測定器の測定値に基づいて、前記押圧ガスの供給量を決定する過程を備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、衝撃波式スートブロワの出力を直接測定してフィードバックできるので、高い精度で各貯留タンクへの押圧ガス供給量を決定することが可能となり、効率的にランニングコストを最適化することができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る衝撃波式スートブロワにおいて、さらに、前記押圧ガス供給源から前記吐出ノズルへ前記押圧ガスをパージ用ガスとして供給するパージガス供給路を備えていてもよい。この構成によれば、従来から衝撃波式スートブロワの運転に使用されていた安価な押圧ガスをパージに使用することで、パージ専用のコンプレッサ等の機器を別途設けて作動させる必要がなくなるので、さらにランニングコストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、衝撃波式スートブロワにおいて動作可能な出力範囲を柔軟に変更することが可能となり、容易にランニングコストの最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る衝撃波式スートブロワシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2A】
図1の衝撃波式スートブロワシステムに用いられるスートブロワの構造および燃焼開始前までの動作を示す断面図である。
【
図2B】
図1の衝撃波式スートブロワシステムに用いられるスートブロワの構造および燃焼開始後の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る衝撃波式スートブロワ(以下、単に「スートブロワ」と呼ぶ。)1の概略構成を示す。スートブロワ1は、例えば、廃棄物焼却炉の排熱を熱源として利用するボイラに設置されて、ボイラ内の過熱器などの装置に付着したダストを衝撃波SPによって除去するために用いられる。もっとも、スートブロワ1の用途はこれに限定されない。
【0018】
スートブロワ1は、燃料ガスFと酸化剤ガスOとの混合気を燃焼させ、これによって生じた燃焼ガスBを吐出することによって衝撃波SPを出力する。本実施形態では、燃料ガスFとしてメタンガスが、酸化剤ガスOとして酸素ガスが使用されている。もっとも、燃料ガスFおよび酸化剤ガスOはこれらに限定されない。
【0019】
スートブロワ1は、燃焼室3およびこの燃焼室3と一体のスートブロワ本体5を備えている。スートブロワ本体5には、燃焼室3で生成された燃焼ガスBを吐出する吐出ノズル7が設けられている。スートブロワ1は、さらに、燃料供給源である燃料タンク9と、酸化剤供給源である酸化剤タンク11とを備えている。燃料タンク9と燃焼室3との間、つまり燃料タンク9から燃焼室3へ燃料ガスFを供給する燃料供給路13の中途には、燃料貯留タンク15が設けられている。酸化剤タンク11と燃焼室3との間、つまり酸化剤タンク11から燃焼室3へ酸化剤ガスOを供給する酸化剤供給路17の中途には、酸化剤貯留タンク19が設けられている。以下の説明では、便宜上、燃料供給路13のうち、燃料タンク9から燃料貯留タンク15までの部分を第1燃料供給路13aと呼び、燃料貯留タンク15から燃焼室3までの間の部分を第2燃料供給路13bと呼ぶ。同様に、酸化剤供給路17のうち、酸化剤タンク11から酸化剤貯留タンク19までの部分を第1酸化剤供給路17aと呼び、酸化剤貯留タンク19から燃焼室3までの間の部分を第2酸化剤供給路17bと呼ぶ。
【0020】
第1燃料供給路13aおよび第2燃料供給路13bには、それぞれ、第1燃料供給路開閉弁21および第2燃料供給路開閉弁23が設けられており、第1酸化剤供給路17aおよび第2酸化剤供給路17bには、それぞれ、第1酸化剤供給路開閉弁25および第2酸化剤供給路開閉弁27が設けられている。燃料貯留タンク15および酸化剤貯留タンク19には、それぞれ、各貯留タンク15,19内の圧力を測定する燃料貯留タンク圧力測定装置29および酸化剤貯留タンク圧力測定装置31が設けられている。
【0021】
ここで、
図2A,2Bを参照して、スートブロワ1の構造および衝撃波SPを発生させるための動作原理を説明する。スートブロワ本体5と一体に設けられた燃焼室3は、詳細には、スートブロワ本体5の両側部から燃焼ガスBの吐出方向に直交するように延びる一対のメイン燃焼室35,35と、一対のメイン燃焼室35,35の間に位置する予備燃焼室37とを有する。一対のメイン燃焼室35,35に、燃料供給路13および酸化剤供給路17が接続されている。一対のメイン燃焼室35,35の間にはシリンダ39が設けられている。シリンダ39内部には、ピストン41がシリンダ39の内周壁に摺動可能に設けられている。スートブロワ本体5のピストン41に対向する部分に、吐出ノズル7の入口を形成する吐出口43が設けられている。すなわち、ピストン41は、燃焼ガスBの吐出方向に移動可能に設けられている。
【0022】
ピストン41の後端部(吐出口43と反対側の端部)に設けられた頭部41aがシリンダ39の内周壁に摺接している。ピストン41の頭部41aとシリンダ39後部の内壁との間の空間には、ピストン41を前方へ押圧するための押圧ガスPが充填されている。押圧ガスPとしては、不燃性のガス(この例では窒素ガス)が使用される。シリンダ39内空間の、ピストン41の頭部41aよりも前方の部分が前記予備燃焼室37を形成している。
図2Aに示す燃焼開始前の状態においては、押圧ガスPの圧力によってピストン41が吐出口43を閉塞している。
【0023】
予備燃焼室37には点火装置45が設けられている。メイン燃焼室35に導入され、
図2Bに示すように予備燃焼室37に流入した燃料ガスFと酸化剤ガスOとの混合ガスが点火装置45によって点火され、予備燃焼室37において混合気の燃焼が開始されると、予備燃焼室37内の圧力上昇によってピストン41が後方へ押し戻され、吐出口43が開放される。吐出口43が開いている間、予備燃焼室37からメイン燃焼室35全体に混合気の燃焼が広がり、これによって生成された燃焼ガスBが吐出ノズル7から排出される。この排出された燃焼ガスBによって衝撃波SPが出力される。
【0024】
このように、本実施形態では、燃焼室3に設けられたピストン41と押圧ガスPが、燃焼開始前に燃焼ガスBの吐出口43を閉鎖し、燃焼開始後に前記吐出口43を開放するように構成された開閉機構47を構成している。
【0025】
スートブロワ1は、前記押圧ガスを、スートブロワ本体5の開閉機構47に供給する押圧ガス供給源である押圧ガスタンク49を備えている。押圧ガスタンク49内の押圧ガスPは、押圧ガス供給路51を介してスートブロワ本体5へ供給される。スートブロワ1は、さらに、押圧ガスタンク49から燃料貯留タンク15および酸化剤貯留タンク19へ、押圧ガスPを出力調整用ガスとして供給する出力調整ガス供給路53を備えている。以下の説明では、押圧ガスタンク49から燃料貯留タンク15への供給路を「第1出力調整ガス供給路53A」と呼び、押圧ガスタンク49から酸化剤貯留タンク19への供給路を「第2出力調整ガス供給路53B」と呼ぶ。
【0026】
図示の例では、第1出力調整ガス供給路53Aは、押圧ガス供給路51の中途から分岐し、第1燃料供給路13aに接続する通路として設けられている。同様に、第2出力調整ガス供給路53Bは、押圧ガス供給路51の中途から分岐し、第1酸化剤供給路17aに接続する通路として設けられている。もっとも、両出力調整ガス供給路53A,53Bは、燃料タンク9、酸化剤タンク11と燃料貯留タンク15、酸化剤貯留タンク19をそれぞれ直接接続するように設けられていてもよい。第1出力調整ガス供給路53Aおよび第2出力調整ガス供給路53Bには、第1出力調整ガス供給路開閉弁55および第2出力調整ガス供給路開閉弁57がそれぞれ設けられている。
【0027】
このように構成されたスートブロワ1を運転する方法について説明する。まず、各貯留タンク15,19の容積を最大限に利用して、当該スートブロワ1において設計された最大域の衝撃力を出力させる場合(以下、「高出力モード」と呼ぶ。)について説明する。最初に、第1燃料供給路開閉弁21および第1酸化剤供給路開閉弁25を開いて、燃料貯留タンク15および酸化剤貯留タンク19の各々を、それぞれ設定した圧力値に達するまで燃料ガスFおよび酸化剤ガスOのみで充填する。次に、第1燃料供給路開閉弁21および第1酸化剤供給路開閉弁25を閉じ、第2燃料供給路開閉弁23および第2酸化剤供給路開閉弁27を開いて、燃料ガスFおよび酸化剤ガスOを燃焼室3へ供給する。燃焼室3への燃料ガスFおよび酸化剤ガスOの供給時において、第2燃料供給路開閉弁23および第2酸化剤供給路開閉弁27は、所定時間(各貯留タンク15,19内の圧力と燃焼室3内の圧力が平衡に達するのに十分な時間)のみ開放されるように設定されている。燃焼室3への燃料ガスFおよび酸化剤ガスOの供給が完了した後、スートブロワ本体5によって衝撃波SPが出力される。
【0028】
次に、押圧ガスPを利用することによって当該スートブロワ1において設計された最大域を下回る衝撃力を出力させる場合(以下、「低出力モード」と呼ぶ。)について説明する。低出力モードにおいては、燃料ガスFと酸化剤ガスOの混合ガスに、不燃性で燃焼に関与しない押圧ガスPを加えることによって、混合ガスの見かけ上の圧力を維持しながら、燃焼により生じる衝撃力を低減させる。
【0029】
具体的には、最初に、第1燃料供給路開閉弁21および第1酸化剤供給路開閉弁25を開いて、燃料貯留タンク15および酸化剤貯留タンク19の各々に、それぞれ設定した中間圧力値に達するまで燃料ガスFおよび酸化剤ガスOのみを供給する。次に、第1燃料供給路開閉弁21および第1酸化剤供給路開閉弁25を閉じ、第1出力調整ガス供給路開閉弁55および第2出力調整ガス供給路開閉弁57を開いて、燃料貯留タンク15および酸化剤貯留タンク19の各々を、それぞれ設定した最終圧力値に達するまで押圧ガスPで充填する。なお、各貯留タンク15,19へのガス供給は、押圧ガスPの供給を先に行い、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給をその後に行ってもよい。このようにして各貯留ガスの充填が完了した後の手順は、高出力モードと同様である。
【0030】
なお、出力調整ガス供給路53は、燃料ガス側および酸化剤ガス側の両方に設けられている必要はなく、いずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0031】
また、本実施形態に係るスートブロワ1は、スートブロワ1によってダスト除去を行う対象機器の設置領域に設けられて、スートブロワ1から出力された衝撃力を測定する衝撃力測定器61と、衝撃力測定器61の測定値に基づいて燃料貯留タンク15および酸化剤貯留タンク19への押圧ガスPの供給量を制御する制御装置63とを備えている。本実施形態では、当該スートブロワ1が設置された設備の規模やその設備の運転状況等に応じて、高出力モードと低出力モードのいずれを選択するのか、および、低出力モードで運転する場合に出力をどの程度低下させるのか(つまり、押圧ガスPの供給量)は、衝撃力測定器61による測定値に基づいて決定する。衝撃力測定器61としては、例えば圧力センサや歪みゲージを使用することができる。衝撃力測定器61は、例えば設置領域の壁面や対象機器に取り付けられる。
【0032】
上記の制御を行う場合、例えば、事前の試験運転によって押圧ガスPの各貯留タンク15,19への供給量と、得られた衝撃力との対応関係をマップや関数として用意しておき、押圧ガスPの供給量をこのようなマップや関数に基づいて決定する。
【0033】
なお、スートブロワ1の出力の決定を衝撃力測定器61による測定値に基づいて行うことは必須ではない。例えば、スートブロワ1をボイラの熱交換器のダスト除去用に使用する場合、押圧ガスPの供給量をボイラの収熱量との関係に基づいて決定してもよい。
【0034】
本実施形態では、スートブロワ1は、さらに、吐出ノズル7へパージ用ガスを供給するパージガス供給路65を備えている。パージガス供給路65は、スートブロワ1が設置される機器の停止時に、押圧ガス供給源から押圧ガスPを吐出ノズル7へ供給する。図示の例では、パージガス供給路65は、押圧ガス供給路51の中途から分岐する通路として設けられている。パージガス供給路には、図示しない開閉弁が設けられている。
【0035】
なお、パージガス供給路65を押圧ガスタンク49から押圧ガスPを吐出ノズル7へ供給する通路として構成することは必須ではない。例えば、パージ専用に別途設けたコンプレッサから空気をパージ用ガスとして吐出ノズル7へ供給してもよい。もっとも、一般的に、スートブロワ1が設置される設備の停止中は、常時パージ用ガスを供給することが好ましい。したがって、従来から衝撃波式スートブロワ1の運転に使用されていた安価な押圧ガスPをパージに使用することにより、パージ専用のコンプレッサ等の機器を別途設けて作動させる必要がなくなるので、さらにランニングコストを抑制することができる。
【0036】
以上説明した本実施形態に係る衝撃波式スートブロワ1およびその運転方法によれば、従来からスートブロワ1の運転に使用されていた不燃性ガスである押圧ガスPを利用して、スートブロワの出力を低下させることができる。したがって、設備の規模の変更等によってより低い出力が必要になる場合でも、当該スートブロワ1を大幅に仕様変更することなく、容易に適切なランニングコストで使用することが可能になる。
【0037】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
なお、本発明の範囲には含まれないが、上述した実施形態に係るスートブロワ1において、出力調整ガス供給路53を備えず、パージガス供給路65を必須の構成要素として備えていてもよい。このような構成のスートブロワ1によっても、パージ専用のコンプレッサ等の機器を別途設けて作動させる必要がなく、ランニングコストを抑制することができるという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 衝撃波式スートブロワ
3 燃焼室
5 スートブロワ本体
7 吐出ノズル
9 燃料タンク(燃料供給源)
11 酸化剤タンク(酸化剤供給源)
15 燃料貯留タンク
19 酸化剤貯留タンク
47 開閉機構
49 押圧ガスタンク(押圧ガス供給源)
53 出力調整ガス供給路
61 衝撃力測定器
63 制御装置
B 燃焼ガス
F 燃料ガス
O 酸化剤ガス
SP 衝撃波