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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両用ホイール
(51)【国際特許分類】
   B60B 1/08 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B60B1/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020006798
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112990
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】天野 隆徳
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-274103(JP,A)
【文献】特開2017-001549(JP,A)
【文献】特開2006-347476(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03536308(DE,A)
【文献】欧州特許出願公開第00546307(EP,A1)
【文献】米国特許第01544242(US,A)
【文献】特開2009-096377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられるハブ部(11)と、略円筒形のリム部(12)と、前記リム部の表側および前記ハブ部に接続されたディスク部(13)と、が鋳造により一体的に形成された車両用ホイール(10)であって、
前記ディスク部は、ホイール軸線方向に貫通する窓部(14)と、前記ハブ部と前記リム部とに接続されたスポーク部(131)と、ホイール軸線方向の肉厚が前記スポーク部よりも薄い薄板部(132)と、がホイール軸線方向から見て重複しないように配置され、
前記薄板部は、前記ハブ部、前記リム部および前記スポーク部の少なくとも一部と接続部(19)を介して接続されており、
前記接続部の表側は平坦に形成されており、
前記接続部は、裏側に丸み付または傾斜面が現れる角付の形状を有し、
前記接続部は、前記ハブ部、前記リム部および前記スポーク部の少なくとも一部と接続される側の肉厚が前記薄板部と接続される側の肉厚よりも厚くなるように形成されているとともに、前記接続部の端(190)が前記窓部から露出しており、
前記接続部をホイール半径方向に切断したときに現れる前記接続部の断面積は、前記接続部の端の断面積が前記接続部の他の部位の断面積よりも小さくなるように変化していることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
前記接続部の断面積は、前記窓部から離れるほど大きくなっている請求項1に記載の車両用ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造で一体的に成形され、ディスク部に複数のスポーク部と各スポーク部の間に形成される窓部とを備えた車両用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ホイールとして、従来、特許文献1に記載された技術が知られている。この車両用ホイールでは、ハブ部とリム部との間に広がるディスク部に複数のスポーク部が設けられ、隣接する2つのスポーク部の間に窓部が形成されている。リム部には、スポーク部よりも薄い薄板部が窓部に張り出すように設けられ、薄板部により窓部の一部を遮蔽している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-1549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、肉厚差が大きいリム部と薄板部とを鋳造で一体的に車両用ホイールを成形すると、車両用ホイールの表側面におけるリム部と薄板部との境界部分に、鋳造によるシワが発生しやすい。このため、リム部と薄板部とを接続する接続部の肉厚を、リム部側ほど厚くし、薄板部ほど薄くなるようにして車両用ホイールを成形することが考えられる。こうして成形された車両用ホイールは、接続部により、リム部と薄板部との肉厚差が徐々に変化するので、鋳造によるシワの発生を抑制することが期待できる。
【0005】
しかしながら、薄板部が窓部を部分的に遮蔽している車両用ホイールの場合、窓部を通して薄板部の周縁を視認したとき、そこに肉厚差が徐々に変化する接続部の端が目立ってしまい、車両用ホイールの意匠性に悪影響を及ぼすと想定される。
【0006】
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、接続部が意匠性に及ぼす悪影響を抑えることが可能な車両用ホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ホイール(10)は、車両に取り付けられるハブ部(11)と、略円筒形のリム部(12)と、リム部の表側およびハブ部に接続されたディスク部(13)とが鋳造により一体的に形成される。ディスク部は、ホイール軸線方向に貫通する窓部(14)と、ハブ部とリム部とに接続されたスポーク部(131)と、ホイール軸線方向の肉厚がスポーク部よりも薄い薄板部(132)とがホイール軸線方向から見て重複しないように配置される。薄板部は、ハブ部、リム部およびスポーク部の少なくとも一部と接続部(19)を介して接続される。接続部の表側は平坦に形成されている。接続部は、裏側に丸み付または傾斜面が現れる角付の形状を有する。接続部は、ハブ部、リム部およびスポーク部の少なくとも一部と接続される側の肉厚が薄板部と接続される側の肉厚よりも厚くなるように形成されているとともに、接続部の端(190)が窓部から露出している。そして、接続部をホイール半径方向に切断したときに現れる接続部の断面積は、接続部の端の断面積が接続部の他の部位の断面積よりも小さくなるように変化している。
【0008】
好適には、接続部の断面積は窓部から離れるほど大きくなっている。また、接続部の表側は平坦に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ホイールによれば、車両取付時に視認しにくい接続部を比較的大きく形成してシワの発生を抑制しつつ、窓部に露出して車両取付時に視認しやすい接続部の端を比較的小さく形成して接続部を目立ちにくくしている。そのため、接続部による車両用ホイールの意匠性に及ぼす悪影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す車両用ホイールを正面側から見たときの斜視図である。
図2】車両用ホイールの正面図である。
図3】車両用ホイールを背面側から見たときの斜視図である。
図4】車両用ホイールの背面図である。
図5図4のV-V線に沿う断面図である。
図6】接続部の断面積の変化を示す断面図であって、(a)図4のa-a線断面図、(b)図4のb-b線断面図、(c)図4のc-c線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
以下、本発明を自動車に装備されるアルミニウム合金製の車両用ホイールに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1図2に示すように、本実施形態の車両用ホイール10は、自動車の車軸(図示略)に取り付けられるハブ部11と、タイヤが装着される円筒形のリム部12と、リム部12の表側とハブ部11とに接続されたディスク部13とを備え、全体が鋳造により一体的に形成されている。
【0012】
ハブ部11には、ハブ孔111とボルト孔112とが設けられている。ディスク部13は、ハブ部11とリム部12とに接続された5つのスポーク部131と、各スポーク部131の表側面からホイール周方向(図2の矢印方向)の両側に張り出す薄板部132とを備えている。ホイール周方向に隣接する2つの薄板部132の間には、ホイール半径方向に長く開口している短冊形の窓部14が、車両用ホイール10の軸線方向(図5の一点鎖線方向)に貫通するように形成されている。
【0013】
本実施形態では、ディスク部13に5つの窓部14が形成されている。車両用ホイール10を正面側(車両の側面側)から見たとき(図1参照)、窓部14によってディスク部13が5つの略三角形のセグメント13A~13E(図2参照)に分割され、各セグメントの集合により車両用ホイール10の意匠面16が構成されている。
【0014】
図3図5に示すように、ディスク部13のスポーク部131は、車両用ホイール10の全体的な剛性を考慮し、ホイール軸線方向へ比較的厚く形成されている。一方、薄板部132は、車両用ホイール10の全体的な意匠性を考慮し、スポーク部131よりも薄く形成されている。そして、窓部14、スポーク部131および薄板部132が、ホイール軸線方向から見て重複しないように配置されている。
【0015】
また、ホイール軸線方向において、薄板部132の表側はリム部12の表側と同じ高さに形成され、ディスク部13全体の表側面130がホイール周方向に段差のない平滑面となっている。
【0016】
薄板部132のホイール半径方向の内側の端部は、ハブ部11及びスポーク部131に一体的に接続されている。また、薄板部132のホイール半径方向の外側の端部は、リム部12の表側フランジ120に接続部19を介して一体的に接続されている。接続部19の表側は、薄板部132およびリム部12の表側と同じ高さで平坦に形成されている。
【0017】
図4図5に示すように、接続部19の裏側は、窓部14に露出する薄板部132の端面1321からスポーク部131までリム部12の内周面121に沿ってホイール周方向に延びている。本実施形態の接続部19は、裏側に凹形曲面が現れる丸み付の接続部であって、リム部12に接続される側の肉厚が薄板部132と接続される側の肉厚よりも厚くなるように形成されている。接続部19の窓部14側の端190は、窓部14から露出している。
【0018】
図6は、接続部19の形状をより詳細に示すものである。図6において、接続部19とリム部12および薄板部132との境界を二点鎖線で示す。接続部19の断面積は、図4および図6(a)に示すように、スポーク部131に近づく部位ほど大きく、スポーク部131に接する部位で最大となっている。また、図4および図6(c)に示すように、接続部19の端190に近づく部位ほど小さく、窓部14から露出する接続部19の端190の部位で最小になっている。また、図4および図6(b)に示すように、窓部14とスポーク部131との中間部位では、接続部19の断面積が略中程度の大きさになっている。ここで、接続部19の断面積とは、接続部19をホイール半径方向に切断したときに現れる接続部の断面の面積を指す。
【0019】
また、図3図4に示すように、ホイール半径方向における接続部19の幅は、窓部14に近づく部位ほど小さく、スポーク部131に接近する部位ほど大きくなるように変化している。そして、スポーク部131に接続されている部位の接続部19の幅が最も大きくなっており、接続部19の断面積が最大になっている。なお、接続部19の幅の調整で断面積を変化させているが、ホイール軸線方向における接続部19の厚さを、窓部14に近づく部位ほど薄く、スポーク部131に近づく部位ほど厚くなるように変化させてもよい。
【0020】
上記のように構成された本実施形態の車両用ホイール10によれば、ホイール周方向に延びる接続部19の断面積が窓部14から露出する端190で最も小さくなっているため、図1に示すように、ディスク部13の表側から窓部14を見たときに接続部19の端190が目立ちにくくなる。
【0021】
また、接続部19の断面積が窓部14から離れるほど大きくなるように変化しているので、リム部12から薄板部132まで至る部分の肉厚変化を小さくし、鋳造時に接続部19と対応する部位でシワを発生しにくくなる。
【0022】
例えば、接続部19を適用しないディスク部の表側面の大部分を平坦で形成した車両用ホイールは、接続部の端による意匠性の悪影響とディスク部の表側のシワ発生とを両立して対策することが難しい。一方で、本実施形態のように、接続部19を適用した車両用ホイール10は、意匠性の悪影響とディスク部13の表側のシワ発生とを両立して対策でき、ディスク部13の表側面の大部分を平坦面とすることが可能となる。
【0023】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【0024】
(1)上記実施形態では、接続部19がリム部12と薄板部132との接続部位に設けられているが、他の実施形態において、ハブ部と薄板部との接続部の断面積を、窓部から露出する端で最も小さくし、窓部から離れるほど大きくなるように変化させることもできる。
【0025】
(2)上記実施形態では、接続部19が丸み付の接続部であるが(図6参照)、他の実施形態において、接続部19を薄板部132の裏側に傾斜面が現れる角付の接続部とすることも可能である。
【0026】
(3)他の実施形態において、ディスク部の窓部および薄板部の個数ならびに形状を任意に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
10・・・車両用ホイール、11・・・ハブ部、12・・・リム部、
13・・・ディスク部、131・・・スポーク部、132・・・薄板部、
14・・・窓部、19・・・接続部、190・・・接続部の端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6