(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】三次元金属印刷組成物用の表面添加剤
(51)【国際特許分類】
B22F 1/102 20220101AFI20240208BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240208BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240208BHJP
B22F 10/34 20210101ALI20240208BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240208BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240208BHJP
C08F 220/16 20060101ALI20240208BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20240208BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240208BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240208BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240208BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B22F1/102
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/00 M
B22F1/00 N
B22F1/00 Z
B22F10/28
B22F10/34
B33Y10/00
B33Y70/00
C08F220/16
C08K3/00
C08K3/08
C08L33/02
C08L33/06
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2020040618
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-03-02
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピーエヌ・ヴェルジン
(72)【発明者】
【氏名】カレン・エイ・モファット
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011006(JP,A)
【文献】特開2006-299348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279703(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0252974(US,A1)
【文献】特開2012-133357(JP,A)
【文献】特開2017-197721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0398338(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元金属印刷粉末と、
前記三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分の上に配置された有機ポリマー添加剤と、
任意に、前記三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分の上の無機添加剤と、
を含む組成物であって、
前記有機ポリマー添加剤が、コポリマーであって、該コポリマーが、以下のモノマー、
3~8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーであって、シクロヘキシルメタクリレートである第1のモノマーと、
ジビニルベンゼンを含む第2のモノマーであって、前記コポリマーの質量に基づいて、8質量%より多くかつ40質量%までの量で該コポリマー中に存在する第2のモノマーと、
アミンを含む第3のモノマーであって、前記コポリマーの質量に基づいて、0.1質量%~1.5質量%の量で存在し、かつジメチルアミノエチルメタクリレートである第3のモノマーと、
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマー添加剤が、窒素含有基を有する塩基性モノマーを含み、
前記窒素含有基を有する塩基性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総質量に基づいて、1.5質量%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマー添加剤が、アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酸性基を有する酸性モノマーを含み、そして
前記酸性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総質量に基づいて、4質量%未満の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機ポリマー添加剤が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機ポリマー添加剤が、30ナノメートル~140ナノメートルの体積平均粒径を有するラテックス粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機ポリマー添加剤が、前記三次元金属印刷粉末の質量に基づいて、100質量部当たり、0.01~5質量部の総表面添加量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機ポリマー添加剤が、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって調製されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含み、そして
前記界面活性剤が、45mN/m未満の最小表面張力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機ポリマー添加剤が、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって調製されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記三次元金属印刷粉末が、チタン、アルミニウム、銀、コバルト、クロム、銅、鉄、ニッケル、金、パラジウム、ステンレス鋼、白金、パラジウム、タンタル、レニウム、ニオビウム、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記三次元金属印刷粉末が、金属粉末と非金属粉末との混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記三次元金属印刷粉末が、ハイブリッド粒子を含み、前記ハイブリッド粒子が、金属及び非金属から構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
三次元金属印刷粉末を提供する工程と、
前記三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分の上で有機ポリマー添加剤を噴霧乾燥する工程と、
任意に、前記三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分の上に無機添加剤を更に提供する工程と、
を含む方法であって、
前記有機ポリマー添加剤が、コポリマーであって、該コポリマーが、以下のモノマー、
3~8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーであって、シクロヘキシルメタクリレートである第1のモノマーと、
2つ以上のビニル基を含む第2のモノマーであって、ジビニルベンゼンであり、かつ前記コポリマーの質量に基づいて、8質量%より多くかつ40質量%までの量で該コポリマー中に存在する第2のモノマーと、
アミンを含む第3のモノマーであって、前記コポリマーの質量に基づいて、0.1質量%~1.5質量%の量で存在し、かつジメチルアミノエチルメタクリレートである第3のモノマーと、
を含み、前記有機ポリマー添加剤が、エマルション重合によって調製されることを特徴とする方法。
【請求項13】
三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分の上に有機ポリマー添加剤を有する三次元金属印刷粉末を提供する工程と、
前記有機ポリマー添加剤と任意の無機添加剤とを有する前記三次元金属印刷粉末を、レーザーに露光させて、前記三次元金属印刷粉末を融合させる工程と、
を含む方法であって、
前記有機ポリマー添加剤が、コポリマーであって、該コポリマーが、以下のモノマー、
3~8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーであって、シクロヘキシルメタクリレートである第1のモノマーと、
ジビニルベンゼンを含む第2のモノマーであって、前記コポリマーの質量に基づいて、8質量%より多くかつ40質量%までの量で、該コポリマー中に存在する第2のモノマーと、
アミンを含む第3のモノマーであって、前記コポリマーの質量に基づいて、0.1質量%~1.5質量%の量で存在し、かつジメチルアミノエチルメタクリレートである第3のモノマーと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、直接金属レーザー焼結、又は電子ビーム溶融を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2種以上の有機ポリマー添加剤を含み、
第1の有機ポリマー添加剤が、第1の平均D50粒径を有し、
第2の有機ポリマー添加剤が、第2の平均D50粒径を有し、そして
前記第1及び第2の平均D50粒径が、少なくとも10ナノメートル異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記三次元金属印刷粉末が、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記三次元金属印刷粉末が、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記三次元金属印刷粉末が、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、三次元金属印刷粉末と、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上の有機ポリマー添加剤と、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上の無機添加剤と、を含む組成物が開示される。
【0002】
更に、三次元金属印刷粉末を提供することと、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を提供することと、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に提供することと、を含むプロセスであって、有機ポリマー添加剤がエマルション重合によって調製される、プロセスが開示される。
【0003】
更に、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を有し、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に有する、三次元金属印刷粉末を提供することと、有機ポリマー添加剤及び任意の無機添加剤を有する三次元金属印刷粉末をレーザーに露光させて、三次元金属印刷粉末を融合させることと、を含む方法が開示される。
【背景技術】
【0004】
積層造形は、コンピュータ制御レーザーを使用して粉末原料を物理的な対象物又は部品に圧密化する層成形プロセスによる層を伴い、コンピュータ制御レーザーは、部品のコンピュータ支援図面(CAD)ジオメトリファイルによってプログラムされる。コンピュータ制御レーザーは、構築層を共に溶融して三次元(3D)対象物を作製するために使用される。構築原料として粉末を使用する多くの異なる積層造形技術が存在する。粉末材料は、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性ポリマーであってもよく、又は粉末は金属粉末であってもよい。いくつか例を挙げると、選択的レーザー焼結(SLS)、選択的レーザー溶融(SLM)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、又は電子ビーム溶融(EBM)などの技術は、構築材料として粉末原料を使用する。これらの製造方法は、粒子床として粉末を含むか、又はノズルを通して粉末を供給する。
【0005】
金属粉末は、自動車、航空機、又は航空宇宙などの様々な産業用の非常に独特かつ複雑な部品を構築するために使用される。金属粉末はまた、整形外科用骨の足場材などの、異なる生物医学的用途で使用するための多孔質部品を構築するためにも使用される。金属粉末の例としては、コバルト、銅、鉄、ニッケル、チタン、316Lステンレス鋼、並びに合金、例えば、Ti6Al4V、TiAlなどのチタン合金、アルミニウム合金、コバルト-クロム合金、ニッケル系超合金などが挙げられる。
【0006】
金属粉末を使用する用途では、金属粉末は、表面が平滑な対象物の形成をもたらす特性を有することが望ましい。粒子の化学的性質、粒径、粒径分布、及び充填密度に加えて、流動性の良好な金属粉末が必要とされ、これは、完成した対象物の表面粗さに影響を与えるためである。
【0007】
金属粉末は、水噴霧、又はガス噴霧、又はプラズマ噴霧によって製造することができる。金属粉末を製造するために使用される環境及び技術に応じて、粒子形状が球状又は不規則になるか、界面化学が吸湿性又は疎水性になるかが変化するであろう。金属粉末がどのように形成されるかにかかわらず、積層造形プロセスの要件を満たすために、粉末の均一な広がり及び良好な充填特性を達成するように、良好な流動性が必要とされる。
【0008】
金属粉末などの微粒子粉末を使用する3D用途では、粉末内の粒子間相互作用に起因して起こり得る多くの深刻な問題がある。これらには、粉末が3Dプリンタ内及び粉末床内で流動可能になる粒子流れ、並びに焼結工程に関して粉末が充填される固さの程度が挙げられる。粒子間力が高いと、流動が悪くなり、粉末を供給する速度が制限されるか、又は粒子が送出システムに詰まることがある。また、粒子間力が高いと、粒子が十分に充填されず、大きな孔及び焼結不足をもたらし、脆弱で、不規則な形状の、表面が粗い、多孔質の最終部品を生じる恐れがある。最終的に、床から得た粉末を再利用することができる。金属粉末の場合、再利用は、部品の形成時に近接して加熱されるために粒子の付着を生じることがある。1回以上の再利用工程の後、粒子流動が悪化することがあり、粒子はまた、塊状に付着し始め、送出システムを減速させるか若しくは詰まらせ、又は不均一で多孔質の脆弱な部品を形成する傾向が更に高まることがある。
【0009】
3D用途に関する当該技術分野では、ナノ粒子シリカ粉末は、粉末の流動を改善し(例えば、「Increasing flowability and bulk density of PE-HD powders by a dry particle coating process and impact on LBM processes」C.Blumel et.al.Rapid Proto J 21(2015)697-704を参照)、したがって最終部品の品質、特に部品の多孔性及び密度を改善し、したがって部品の全体的な強度を改善するための添加剤として使用できることが知られている。しかしながら、シリカの化学的性質は、3D粉末の化学的性質と必ずしも相性が良くなく、したがって必ずしも有効ではない。更に、シリカは難溶性であるため、非常に高温で溶融し、汚染物質として部品の組成物の一部になるであろう。
【0010】
現在利用可能な3D印刷材料は、それらの意図された目的に好適であるが、3D金属粉末の流動及びブロッキングを改善するため、3D粉末の再利用を可能にするため、及び最小限の金属汚染で高密度かつ強固な部品を提供するために、新しい添加剤が依然として必要とされている。
【0011】
上記の米国特許及び特許出願公開のそれぞれの適切な構成要素及びプロセスの態様は、その実施形態において本開示のために選択され得る。更に、本出願全体を通して、様々な刊行物、特許、及び公開された特許出願は、特定の引用によって参照される。本出願において参照される刊行物、特許、及び公開された特許出願の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照により本開示に組み込まれる。
【発明の概要】
【0012】
三次元金属印刷粉末と、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上の有機ポリマー添加剤と、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上の無機添加剤と、を含む組成物が記載される。
【0013】
また、三次元金属印刷粉末を提供することと、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を提供することと、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に提供することと、を含むプロセスであって、有機ポリマー添加剤がエマルション重合によって調製される、プロセスが記載される。
【0014】
また、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を有し、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に有する、三次元金属印刷粉末を提供することと、有機ポリマー添加剤及び任意の無機添加剤を有する三次元金属印刷粉末をレーザーに露光させて、三次元金属印刷粉末を融合させることと、を含む方法が記載される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
三次元(3D)金属印刷粉末の表面上において、シリカ若しくは他の無機添加剤と共に又はその代わりに使用されるための、エマルション重合によって調製されたポリマー表面添加剤が提供される。ポリマー表面添加剤は、3D金属粉末の流動又はブロッキング性能を改善し、したがって製造された部品の密度及び強度を改善する。シリカなどの無機添加剤と比較して、有機添加剤には多くの潜在的な利点がある。第一に、効果的なブレンドのために、3D粉末の有機化学的性質と適合するように、モノマーの有機化学的性質を選択することができる。これは、ポリマーラテックスのマトリックスポリマーを変更することによって、又は酸性若しくは塩基性官能基のいずれかを有するコモノマーの量を変更することによって行うことができる。したがって、疎水性及び酸塩基の化学的性質を必要に応じて調整することができる。有機ラテックス添加剤は、架橋又は非架橋であり得る。有効であるために、添加剤は3D粒子表面上に球状粒子として留まる必要があるが、架橋添加剤は、強引な取り扱いに対してより堅牢である。粒子が平坦になると、表面添加剤としてもはや機能しないであろう。しかしながら、3D印刷におけるほとんどの条件下では、そのような堅牢性は必要とされないことがあり、この場合、本明細書に記載の非架橋有機ポリマーラテックスが表面添加剤として選択される。非架橋有機ポリマーラテックスの利点は、焼結プロセスで溶融するように配合することができ、したがって部品の適切な焼結を妨げる可能性が低いことである。
【0016】
本発明の架橋又は非架橋ポリマーラテックス添加剤の使用は、部品を構築する際に優れた粉末流動を可能にするが、高温焼結プロセス中にポリマーラテックス添加剤は燃焼し、部品の汚染物質として残らないであろう。
【0017】
実施形態では、本明細書の有機ポリマー添加剤は、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを含む。本明細書の有機ポリマー表面添加剤は、ポリマー組成物のマトリックスモノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を有することができ、これは、シラン処理シリカの疎水性を模倣し得る疎水性モノマーである。これに、ジビニルベンゼン(DVB)のモノマー組成物を添加してもよく、それによって高架橋構造を生成させ、強引な取り扱いでも球状粒子として残存するであろう硬質粒子を生成する。架橋剤は、架橋を必要としないか又は所望しない場合、配合から除外してもよい。ポリマー添加剤組成物の任意の第3のモノマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)であり得る。DMAEMAは、3D粒子を対象とする用途では任意であるが、例えば、表面金属原子と強く相互作用するであろう窒素基により、潜在的に金属粒子と相性が良いであろう。あるいは、CHMA有機添加剤ラテックスは、β-CEA又はアクリル酸を使用して、酸性官能基を有するように調製されてもよい。酸性基は、表面金属原子と強く相互作用するであろう。あるいは、金属粉末表面とポリマー添加剤との相互作用の強さを低下させることが望ましい場合、官能基を持たず、かつ表面にあまり強く付着しないであろう疎水性CHMAモノマーのみを有することが望ましいであろう。同等のサイズのシリカと比較すると、有機ポリマーラテックスの密度は典型的には1.4g/cm3未満であり、一方のシリカは2.2g/cm3であるため、有機添加剤は、表面を効果的に被覆するために必要な添加剤がシリカと比較して少なく、また他の無機添加剤は密度が更に高いため、比例的により高い添加量を必要とする。
【0018】
本明細書で使用するとき、ポリマー又はコポリマーは、ポリマーが作製されるモノマーによって定義される。したがって、例えば、アクリレートモノマーをモノマー試薬として用いて作製されたポリマーでは、アクリレート部分自体は重合反応のためにもはや存在しないが、本明細書で使用するとき、そのポリマーはアクリレートモノマーを含むと言われる。したがって、本明細書に開示されるプロセスによって作製された有機ポリマー添加剤は、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、ジビニルベンゼン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートを含むモノマーの重合によって調製され得る。得られた有機ポリマー添加剤は、有機ポリマー添加剤を作製するためにシクロヘキシルメタクリレートモノマーを使用したとき、シクロヘキシルメタクリレートを含むと言うことができ、ジビニルベンゼンがそのポリマーのモノマー試薬であるとき、ジビニルベンゼンから構成されるか又はそれを含むなどと言うことができる。したがって、本明細書では、ポリマーは、本明細書の有機ポリマー添加剤を命名するための手段を提供する、構成モノマー試薬のうちの1つ以上に基づいて定義される。
【0019】
ブロッキング性能の場合、3D粉末を再利用することも望ましい。焼結プロセスにおいて加熱源にごく近接していた粉末は、いくらか溶融するために凝集することがある。再利用において、これらの塊は容易に崩壊しないことがあり、その結果、それらは十分にブロックされて事実上付着している。この材料が再利用されると、3D粉末の流動が悪くなることがある。本明細書の実施形態では、有機ポリマーラテックス添加剤は、ブロッキングを改善するために表面添加剤として使用される。
【0020】
実施形態では、ポリマー又はコポリマーを含む有機ポリマー添加剤が提供され、このポリマー又はコポリマーは、約3~約8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーと、2つ以上のビニル基を含む任意の第2のモノマーであって、存在する場合、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約40重量%の量で存在し得る、第2のモノマーと、所望により、アミンを含む第3のモノマーであって、存在する場合、コポリマーの重量に基づいて約0.5重量%~約1.5重量%の量で存在する、第3のモノマーと、を含む。実施形態では、有機ポリマー添加剤は、界面活性剤を更に含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、約45mN/m未満の最小表面張力を有する。
【0021】
本明細書で実施形態において有機ポリマー添加剤又はポリマー若しくはコポリマー有機添加剤とも呼ばれる、有機ポリマー表面添加剤は、エマルション重合を用いて形成されたラテックスである。ラテックスは、高い炭素対酸素(C/O)比を有する少なくとも1種のモノマーを含み、所望により2つ以上のビニル基を有するモノマーが組み合わされ、所望によりアミン官能基を含むモノマーが組み合わされる。水性ラテックスは、次いで乾燥され、他の添加剤の代わりに、又は他の添加剤と共に使用され得る。C/O比が高いモノマーの使用は、良好な相対湿度(RH)安定性を提供し、アミン官能性モノマーの使用は、3D粒子の表面への有機ポリマー添加剤の望ましい付着を提供し得る。DMAEMAは、3D粒子を対象とする用途では任意であるが、潜在的に3D金属粉末と相性が良く、3D金属粉末上の表面金属原子と強く相互作用して、金属粒子表面へのポリマー添加剤の良好な付着をもたらすであろう。あるいは、CHMA有機添加剤ラテックスは、β-CEA又はアクリル酸を使用して、酸性官能基を有するように調製されてもよい。酸性基は、3D粉末の表面金属原子と強く相互作用し、再度ポリマー添加剤を金属粒子表面に効果的に付着させるであろう。あるいは、官能基を持たず、かつ疎水性CHMAモノマーのみを有することが望ましい場合があり、これが所望される場合、ポリマー添加剤と金属粉末の表面との相互作用が低下するであろう。本明細書で実施形態において架橋モノマー又は架橋ビニルモノマーと呼ばれることがある、2つ以上のビニル基を有するモノマーの使用は、ポリマー添加剤に架橋特性を提供し、それによって機械的堅牢性を提供する。
【0022】
実施形態では、有機添加剤は、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーを含むか、又は有機添加剤は、少なくとも1種の架橋性重合性モノマーを含むか、又は有機添加剤は、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーと少なくとも1種の架橋性重合性モノマーとの組み合わせを含む。
【0023】
特定の実施形態では、有機ポリマー添加剤は、架橋性重合性モノマーを含まない。
【0024】
得られた有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、三次元印刷組成物で添加剤として使用されてもよく、その結果得られる三次元印刷組成物に、改善された流動及びブロッキングを含む所望の特性、並びに高密度かつ強固な部品を調製する能力を提供する。本明細書のポリマー添加剤は、他の添加剤と比較してより低密度で使用することができ、チタニア及びシリカなどの酸化物を含む無機添加剤と比較して、同等の表面積を被覆するのに必要な材料が重量ではるかに少ない。本開示のポリマー添加剤はまた、有機ポリマー又はコポリマーの形成に使用されたモノマーに応じて、三次元印刷粉末に、数ある特性の中でも堅牢性、所望の溶融特性などの、広範な特性を提供することができる。
【0025】
上記のように、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、ラテックスの状態であってもよい。実施形態では、有機ポリマー表面添加剤として利用されるラテックスポリマー又はコポリマーは、アクリレート又はメタクリレートなどの高いC/O比を有する第1のモノマーを含み得る。このようなモノマーのC/O比は、約3~約8、実施形態では約4~約7、又は約5~約6であってもよい。実施形態では、高いC/O比を有するモノマーは、脂肪族シクロアクリレートであってもよい。ポリマー添加剤の形成に利用され得る好適な脂肪族シクロアクリレートとしては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0026】
実施形態ではシクロアクリレートである、高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーは、有機ポリマー添加剤として利用されるポリマー又はコポリマー中に、任意の好適な量又は所望の量で存在してもよい。実施形態では、シクロアクリレートは、ポリマー又はコポリマー中に、コポリマーの約40重量%~コポリマーの約99.4重量%、又はコポリマーの約50重量%~コポリマーの約95重量%、又はコポリマーの約60重量%~コポリマーの約95重量%の量で存在してもよい。実施形態では、第1のモノマーは、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約40重量%~約90重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約45重量%~約90重量%の量で存在する。
【0027】
有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、所望により第2のモノマーを含み、第2のモノマーは架橋モノマーを含む。実施形態では、第2のモノマーは、ビニル基を有する架橋モノマーを含み、特定の実施形態では、2つ以上のビニル基を有する。
【0028】
架橋ビニル含有モノマーとして使用するのに好適なビニル基を有するモノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’-ビス(4-(アクリルオキシ/ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’-ビス(4-(メタクリルオキシ/ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-(メタクリルオキシ/ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、これらの組み合わせなどが挙げられる。特定の実施形態では、架橋モノマーは、ジビニルベンゼンである。
【0029】
本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、所望により有機添加剤を高架橋コポリマーにする第2のモノマーを含む。実施形態では、2つ以上のビニル基を含む第2のモノマーは、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約60重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約10重量%超~約60重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約20重量%超~約60重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約30重量%超~約60重量%の量で存在する。特定の実施形態では、第2のモノマーは、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約40重量%超~約60重量%、又は約45重量%超~約60重量%の量で存在する。
【0030】
実施形態では、有機ポリマー添加剤は、2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーを含み、2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーは、有機ポリマー添加剤中に、有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて0重量%超~約40重量%の量で存在する。
【0031】
別の実施形態では、上記のように、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、架橋モノマーを含有しない。
【0032】
本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、所望によりアミン官能基を含む第3のモノマーを更に含む。アミン官能基を有するモノマーは、アクリレート、メタクリレート、これらの組み合わせなどから誘導され得る。実施形態では、好適なアミン官能性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジプロピルアミノエチルメタクリレート、ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート、ジブチルアミノエチルメタクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0033】
実施形態では、本明細書の有機コポリマー添加剤は、第3のモノマーを含有しない。他の実施形態では、本明細書の有機コポリマー添加剤は、アミン官能性モノマーを含む第3のモノマーを含有する。アミン官能性モノマーは、存在する場合、有機コポリマー中に、コポリマーの約0.1重量%~コポリマーの約40重量%、又はコポリマーの約0.5重量%~コポリマーの約5重量%、又はコポリマーの約0.5重量%~コポリマーの約1.5重量%の量で存在してもよい。
【0034】
実施形態では、有機コポリマー添加剤は、酸性モノマー、塩基性モノマー、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、有機ポリマー添加剤は、窒素含有基を有する塩基性モノマーを含み、窒素含有基を有する塩基性モノマーは、有機ポリマー添加剤中に、有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約1.5重量%未満の量で存在する。他の実施形態では、有機ポリマー添加剤は、アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酸性基を有する酸性モノマーを含み、酸性モノマーは、有機ポリマー添加剤中に、有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約4重量%未満の量で存在する。
【0035】
実施形態では、有機コポリマー添加剤は、疎水性モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレートと、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンとを含む。特定の実施形態では、コポリマー添加剤は、疎水性モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレートと、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンと、窒素含有モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレートとを含む。他の実施形態では、コポリマー添加剤は、架橋性モノマーを含まない。
【0036】
有機ポリマー又はコポリマー表面添加剤を形成する方法は、当業者の理解の範囲内であり、実施形態では、ポリマー添加剤を形成するために利用されるモノマーのエマルション重合を含む。
【0037】
重合プロセスでは、反応物は、混合容器などの好適な反応器に添加されてもよい。適切な量の出発物質を所望により溶媒に溶解してもよく、任意の開始剤を溶液に添加し、少なくとも1種の界面活性剤と接触させてエマルションを形成してもよい。コポリマーは、エマルション(ラテックス)の状態で形成されてもよく、その後、回収されて、三次元印刷組成物用のポリマー添加剤として使用され得る。
【0038】
使用する場合、好適な溶媒としては、水及び/又は有機溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロベンゼン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘプタン、ヘキサン、塩化メチレン、ペンタン、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
実施形態では、有機ポリマー添加剤を形成するためのラテックスは、界面活性剤又は共界面活性剤を含有する水相中で、所望により窒素などの不活性ガス下で調製されてもよい。したがって、実施形態では、有機ポリマー添加剤は、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含む。
【0040】
有機ポリマー又はコポリマーのために選択される界面活性剤は、任意の好適な又は所望の界面活性剤であってもよい。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーであり得る。
【0041】
実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む。
【0042】
特定の実施形態では、本発明のポリマー又はコポリマー表面添加剤のために選択される界面活性剤は、より小さいサイズの粒子の調製を可能にする選択された表面張力を有する界面活性剤であり、実施形態では、ポリマー組成物は、コポリマー及び界面活性剤のラテックス粒子を含み、ラテックス粒子は、70ナノメートル未満の体積平均粒径を有する。
【0043】
有機ポリマー添加剤は、約30ナノメートル~約140ナノメートルの体積平均粒径を有するラテックス粒子を含み得る。実施形態では、本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、Microtrac,Inc.から入手可能なNanotrac NPA252を使用して測定される体積によるD50が、70ナノメートル未満、又は50ナノメートル未満、又は約20~70ナノメートル未満、又は約20~約50ナノメートル、又は約20~50ナノメートル未満の粒径を有する。
【0044】
実施形態では、本明細書の有機ポリマー組成物は、コポリマー及び界面活性剤のラテックス粒子を含み、ラテックス粒子は、約20ナノメートル~70ナノメートル未満、又は約20ナノメートル~約50ナノメートル、又は約20ナノメートル~50ナノメートル未満の体積平均粒径を有する。
【0045】
実施形態では、界面活性剤は、臨界ミセル濃度で約30ミリニュートン/メートル(mN/m)未満の最小表面張力を有するものが選択される。実施形態では、選択される界面活性剤は、臨界ミセル濃度で約10~30mN/m未満、又は約15~30mN/m未満、又は約15~約25mN/m、又は約15~約21mN/mの最小表面張力を有する。実施形態では、界面活性剤は、臨界ミセル濃度で30mN/m未満、又は約20~約25mN/mの最小表面張力を有する。実施形態では、選択される界面活性剤は、約45mN/m未満の最小表面張力を有する。
【0046】
実施形態では、本明細書の有機ポリマー添加剤は、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含み、界面活性剤は、約45mN/m未満の最小表面張力を有する。
【0047】
実施形態では、有機ポリマー添加剤は、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む。
【0048】
界面活性剤の表面張力は、当該技術分野において既知の任意の好適な又は所望の方法によって測定することができる。例えば、界面活性剤の表面張力は、Attension(登録商標)White Paper及びその中に含まれる参考文献、Susanna Lauren,Biolin Scientific.による表題「Surface and interfacial tension,-what is it and how to measure it」により詳細に記載されているように、液気界面に配置されたプローブにかかる力を測定することに基づく、力による張力測定によって測定することができる。一般的に2つのプローブ構成、du Nouyリング及びWilhelmyプレートが使用される。試料体積が制限される場合には、Wilhelmyプレートの代わりに金属(例えば、白金)ロッドを使用することもできる。表面張力は光学的に測定することもでき、これは光学的張力測定と呼ばれ、ペンダントドロップ形状の分析に基づく。
【0049】
当該技術分野において既知のように、臨界ミセル濃度(CMC)は、その界面活性剤の濃度を超えるとミセルが形成され、系に添加された全ての追加の界面活性剤がミセルになる、界面活性剤の濃度として定義される。
【0050】
当該技術分野において既知のように、ミセルは、液体コロイド中に分散した界面活性剤分子の凝集体(又は超分子集合体)である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒と接触する親水性「ヘッド」領域を有する凝集体を形成し、ミセル中心の疎水性の単一テール領域を封鎖する。
【0051】
上記のように、選択される界面活性剤は、任意の好適な又は所望の界面活性剤であり得る。実施形態では、界面活性剤は、より小さいサイズのコポリマー表面添加剤の所望の特性を達成するように選択される。実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、トリシロキサン、例えば、((CH3)3SiO2)2Si-(CH3)(CH2)3(OCH2CH2)nOH、n=4~12であって、臨界ミセル濃度で20~21mN/mの表面張力を有するもの、オキシエチル化アルコール、C14EO8、C12EO5、及びC10EO4、臭化ジメチルジドデシルアンモニウム(DDAB)、ペルフルオロカルボン酸及びその塩、C6F13COOLi、C7F15COOH、C7F15COONa、C8F17COOH、C8F17COOLi、C8F17COONa、C8F17COONH4、C8F17COONH3C2H4OH、C10F21COOLi、C10F21COONH4、C10F21COONH3C2H4OH、C12F25COOLi、ペルフルオロアルカンスルホン酸の塩、C8F17SO3Li、C8F17SO3Na、C8F17SO3NH4、C8F17SO3NH3C2H4OH、他の特定のフッ素系界面活性剤、例えば、3M(商標)のNovec(商標)FC-4430、FC-4432、FC-4434非イオン性高分子界面活性剤、FC-5120アニオン性フルオロアルキルスルホン酸アンモニウム、特に3M(商標)のノナフルオロブチル[スルホニル]アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸のアンモニア塩、DuPont(商標)のZonyl(登録商標)FSN-100、Zonyl(登録商標)FS-300非イオン性エトキシレート、DuPont(商標)のZonyl(登録商標)FS-500両性ベタイン、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-10ペルフルオロアルキルスルホン酸、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-30非イオン性エトキシレート、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-60アニオン性ブレンド、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-61アニオン性リン酸エステル、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-63アニオン性リン酸エステル、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-64アニオン性リン酸エステル、DuPont(商標)のCapstone(登録商標)FS-65非イオン性からなる群から選択される。高分岐炭化水素界面活性剤、例えば、イソステアリル硫酸Na塩、イソステアリル硫酸テトラプロピルアンモニウム塩、及び(CH3)3CCH2CH(CH3)CH2PO4Naも選択することができる。実施形態では、例えば、ジオクチルアンモニウムスルホサクシネート、ジオクチルトリエチルアミンスルホサクシネート、ジオクチルトリメチルアミンスルホサクシネート、及びジオクチルテトラプロピルアンモニウムスルホサクシネートについて、対イオンの適切な選択により、表面張力を臨界ミセル濃度で30mN/m未満に低下させることができる。S.Alexander et.al,Langmuir 2014,30:3413-3421を参照されたい。生物蓄積及び環境影響に関する潜在的問題に関して、フッ素系界面活性剤の環境問題に対処するために、3Mは、スルホンアミドプロセスによりフッ素系界面活性剤に変換されるノナフルオロブタンスルホニルフルオリド中間体を生成した。これらの新たな材料は、n≦4のペルフルオロアルキル基を有しており、n>4のフッ素系化学物質ほど規制上の観点から懸念されない。Fluorad(商標)の商標で以前に商業化されたものは、現在では、pH8の緩衝水溶液中で10-5~10-3mol/Lの濃度で15~21mN/mの表面張力を有するNovec(商標)に置き換えられている。Farn,R.J.(Ed.),(2006),Chemistry and Technology of Surfactants,Blackwell Publishing Ltd.を参照されたい。実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩である。他の実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0052】
実施形態では、ラテックス分散液を形成するために利用され得る界面活性剤は、ラテックスの全成分、すなわち、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤の約0.1~約15重量%、実施形態では、ラテックスの全成分、すなわち、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤の約0.2~約5重量%、実施形態では、ラテックスの全成分、すなわち、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤の約0.3~約2重量%の量で使用され得る。
【0053】
特定の実施形態では、本明細書のポリマー組成物は、コポリマー及び界面活性剤のラテックス粒子と水とを含むラテックスを含み、界面活性剤は、樹脂、水、界面活性剤、及び開始剤を含む全てのラテックス成分の重量に基づいて、約0.1~約15、又は約0.2~約5、又は約0.3~約2重量%の量で存在する。実施形態では、界面活性剤は、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤を含むラテックス中の全成分の重量に基づいて、約0.3~約2重量%の量で存在する。
【0054】
実施形態では、有機ポリマー添加剤の形成に使用されるラテックスを形成するために、開始剤を添加してもよい。好適な開始剤の例としては、水溶性開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウム、並びに有機溶媒可溶性開始剤、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物、例えば、Vazo(商標)過酸化物、例えば、VAZO 64(商標)、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、VAZO 88(商標)、2-2’-アゾビスイソブチルアミド無水物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。利用され得る他の水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジンジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0055】
開始剤は、好適な量、例えば、モノマーの約0.1~約8重量パーセント、又は約0.2~約5重量パーセントで添加することができる。
【0056】
エマルションを形成する際、当業者の理解の範囲内の任意の手段を利用して、出発物質、界面活性剤、任意の溶媒、及び任意の開始剤を組み合わせることができる。実施形態では、反応混合物は、温度を約10℃~約100℃、又は約20℃~約90℃、又は約45℃~約75℃に維持しながら、約1分間~約72時間、実施形態では約4時間~約24時間混合され得る。
【0057】
当業者であれば、反応条件、温度、及び開始剤の添加量の最適化を変化させて、様々な分子量のポリマーを生成することができ、また同等の技術を使用して、構造的に関連した出発物質を重合し得ることを理解するであろう。
【0058】
本開示のポリマー添加剤を有する、得られたラテックスは、約3~約8、実施形態では約4~約7のC/O比を有し得る。
【0059】
本開示のポリマー添加剤を有する、得られたラテックスは、当業者の理解の範囲内の任意の手段を利用して、三次元金属印刷粉末に適用され得る。実施形態では、三次元金属印刷粉末は、ポリマー添加剤を含むラテックスに浸漬されるか又はラテックスで噴霧されてもよく、したがってラテックスでコーティングされ、次いでコーティングされた粒子を乾燥させて、ポリマーコーティングを残すことができる。実施形態では、有機ポリマー添加剤は、ミル内で混合又はブレンドするなど、任意の好適な又は所望の方法で、所望の三次元金属印刷粉末とブレンドされてもよい。
【0060】
他の実施形態では、3D金属粉末の添加剤として利用されるポリマー又はコポリマーを形成したら、濾過、乾燥、遠心分離、噴霧乾燥、これらの組み合わせなどを含む、当業者の理解の範囲内の任意の技術によってラテックスから回収してもよい。
【0061】
実施形態では、一旦得られたら、3D金属粉末用の添加剤として利用されるコポリマーは、例えば、凍結乾燥(所望により真空中で)、噴霧乾燥、これらの組み合わせなどを含む、当業者の理解の範囲内の任意の方法によって粉末形態に乾燥されてもよい。次いで、本開示の乾燥ポリマー添加剤は、機械的固着及び/又は静電引力を含むがこれらに限定されない当業者の理解の範囲内の任意の手段を利用して、3D金属粉末に適用されてもよい。
【0062】
本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、以前の有機トナー添加剤よりもサイズが小さい。実施形態では、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、70ナノメートル未満の平均又はメジアン体積平均粒径(d50)を有する。実施形態では、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、約20ナノメートル~70ナノメートル未満、又は約20ナノメートル~約65ナノメートル、又は約20~約60ナノメートル、又は約20~約50ナノメートルの平均又はメジアン粒径(d50)を有する。特定の実施形態では、本明細書のコポリマー添加剤は、50ナノメートル未満、例えば、約20~50ナノメートル未満の平均又はメジアン粒径(d50)を有する。
【0063】
実施形態では、組成物は、直径約70ナノメートル~約250ナノメートルの粒径を有する有機架橋表面添加剤を含む、第2のより大きな有機ポリマー又はコポリマー添加剤を更に含んでもよい。これらのより大きな粒子のコポリマー表面添加剤は、直径約70ナノメートル~約250ナノメートル、又は直径約80ナノメートル~約200ナノメートル、又は約80~約115ナノメートルの平均又はメジアン粒径(d50)を有し得る。有利なことに、本開示の教示は、所望の粒径、すなわち実施形態では本明細書に記載のコポリマーのサイズに到達するのを容易にする。
【0064】
有機架橋表面添加剤を含む第2のより大きなサイズのコポリマー有機添加剤が存在する場合、3D印刷粉末の100重量部に基づいて、約0.05重量部~約5重量部、又は約0.2重量部~約0.4重量部、又は0.3重量部~約1.5重量部の量で存在し得る。
【0065】
三次元印刷粉末組成物は、有機ポリマー又はコポリマー添加剤の平均D50粒径が少なくとも10ナノメートル異なる、2種以上のエマルション重合ラテックス有機ポリマー又はコポリマー添加剤を含んでもよい。実施形態では、三次元印刷組成物は、2種以上の有機ポリマー添加剤を含み、第1の有機ポリマー添加剤は、第1の平均D50粒径を有し、第2の有機ポリマー添加剤は、第2の平均D50粒径を有し、第1及び第2の平均D50粒径は、少なくとも約10ナノメートル異なる。
【0066】
有機ポリマー添加剤として利用されるコポリマーは、実施形態では、それらの高架橋の性質により、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に溶解しない。したがって、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)を測定することができない。
【0067】
有機ポリマー添加剤として利用されるポリマー又はコポリマーは、約45℃~約200℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。実施形態では、有機ポリマー添加剤は、約85℃~約140℃、実施形態では約100℃~約130℃のガラス転移温度を有する。
【0068】
実施形態では、本明細書のプロセスは、三次元金属印刷粉末を提供することと、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を提供することと、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に提供することと、を含み、有機ポリマー添加剤はエマルション重合によって調製される。
【0069】
金属粒子
実施形態では、本明細書の3D粉末は、金属粉末又は金属含有粉末を含む。積層造形用の金属粉末は、水噴霧、ガス噴霧、又はプラズマ噴霧によって製造される。例えば、「Additive Manufacturing of Metals」,D.Herzog et al,Acta.Materialia,117(2106)371-392)を参照されたい。金属粉末を製造するためのプロセスが異なると、粒子形態、粒径、及び化学組成などの粉末特性が異なる。水噴霧は、典型的には鋼に使用されるが、チタンなどの反応性材料には好適ではない。水噴霧は低コストであるが、粒子は数マイクロメートル~最大約500マイクロメートルのサイズで変化し、不規則な形状をとる。不規則な形状は、充填密度を低下させる。水噴霧された金属粒子は、より高い酸素含有量を有し、粒子表面上に酸化物層が形成されることにより、粉末の流動が低下し、バルク組成及び機械的特性が変化する。水噴霧の欠点を克服するために、ガス噴霧を使用して、積層造形用の金属粉末を製造する。酸化の危険性は、アルゴン又は窒素などの不活性雰囲気を実施することによって低減される。ガス噴霧は、チタンなどの反応性金属に使用される。不活性雰囲気で冷却するため、金属と周囲ガスとの熱伝導により、球状の粉末粒子が形成される。
【0070】
任意の好適な又は所望の三次元金属印刷粉末を選択することができる。実施形態では、三次元金属印刷粉末は、金属、金属合金、又はこれらの組み合わせであり得る。実施形態では、三次元金属印刷粉末は、チタン、アルミニウム、銀、コバルト、クロム、銅、鉄、ニッケル、金、パラジウム、ステンレス鋼、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む。例示的な合金としては、Ti6Al4V、TiAlなどのチタン合金、アルミニウム合金、コバルト-クロム合金、ニッケル系超合金などが挙げられる。
【0071】
更なる実施形態では、三次元金属印刷粉末は、アルミニウム及びアルミニウム合金、ステンレス鋼、工具鋼、チタン及びチタン合金、銅及び銅合金、黄銅、コバルトクロム(コバルトクロミウムとしても知られる)合金、ニッケル鉄合金、ニッケルクロム超合金、貴金属、例えば、金、白金、パラジウム、及び銀(これらは、宝石製造などの用途にも使用され得る)、エキゾチック金属粉末、例えば、パラジウム、タンタル、及びレニウム、並びにニオビウムからなる群から選択される金属を含む。実施形態では、3D印刷粉末に利用され得る特定の金属粉末としては、ステンレス鋼金属粉末、例えば、316L(低炭素)、17-4PH、熱間及びマルエージング鋼;低密度アルミニウム合金、例えば、AlSi10Mg及びAlSi12、AlSi7Mg0.6、6061及び7075シリーズアルミニウム合金;コバルトクロム合金、例えば、ASTM F75 CoCr;チタン合金、例えば、Ti6Al4V及びTi6Al4V(ELI)であり、Ti6Al4Vは6%アルミニウム及び4%バナジウムであるチタン合金;グレード1~4で入手可能な非合金の市販の純チタン;ニッケルクロム超合金、例えば、Inconel(登録商標)718及びInconel(登録商標)625;ニッケル鉄合金、例えば、FeNi36又は米国では64FeNiであり、Invar(登録商標)としても知られているもの;ニッケル鉄コバルト合金、例えば、Kovar(登録商標)であり、Fernico 1と組成的に同一であるニッケルコバルト第一鉄合金が挙げられる。
【0072】
積層造形用の金属粉末は、様々な供給源から購入することができる。TruForm(商標)の名称で販売されている積層造形用粉末は、Praxair,Inc.から入手可能である。例えば、ワールドワイドウェブでhttp://www.praxairsurfacetechnologies.com/en/components-materials-and-equipment/materials/additive-manufacturing-powdersを参照されたい。Osprey(商標)の名称で販売されている金属合金及び粉末は、Sandvik ABから入手可能である。例えば、ワールドワイドウェブでhttps://www.materials.sandvik/en/products/metal-powder/list-of-materials/を参照されたい。多くの他の企業が3D印刷に好適であり得る金属粉末を供給しており、例えば、タンタル粉末を供給するGlobal Advanced Metals;空気噴霧アルミニウム粉末及び火工アルミニウム粉末を供給するSri Kaliswari Metal Powders;コバルト、鉄、ニッケル、及びチタン粉末を供給するAstro Alloys;球状鉄系、ニッケル系、コバルト系、モリブデン系、及びタングステン系粉末を供給するPOLEMA;ステンレス鋼、Inconel(登録商標)、Invar(登録商標)、Kovar(登録商標)、アルミニウム合金、銅及び合金などの粉末を供給するCNPC;球状噴霧金属粉末を製造するValimet;ニッケル合金、コバルト合金、及び鉄合金粉末を供給するHoganas AMPERPRINT(登録商標);METASPHERE球状金属粉末;VDM Metals Alloy 36、Alloy 625、Alloy 718、又はAlloy 82粉末;US Metal Powders(USMP)微細アルミニウム粉末;アルミニウム粉末を供給する、日本拠点のToyo Aluminium KKにより設立された世界的製造及び供給ネットワークであるToyal Groupに属するToyal Europe;チタン合金、超合金、アルミニウム合金、特殊鋼及び高融点金属を含む、ガス噴霧による粉末を製造するAMC Powders;Powmet超高純度金属粉末;Hilderbrand & Cie SAの3D製造用の貴金属ろう付け及びはんだ付け用粉末;歯科及び医療産業用粉末を製造するMD Alloys;チタン及び他の反応性又は高融点合金、例えば、ニッケル超合金及びニオビウムから金属粉末を製造するAP&C;並びにタングステン、モリブデン、タンタル、ニオビウム、及びレニウム粉末を製造するH.C.Starckが挙げられる。
【0073】
実施形態では、3D印刷粉末は、1種以上の非金属粉末、例えば、ポリアミド、高密度ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリアルカノエート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、及びポリエチレン-高密度、並びにこれらの組み合わせからなる群のメンバーと、金属粉末又は金属含有粉末、例えば、金属、金属合金、又はこれらの組み合わせとの、組み合わせを含む。ポリアミドの一般的な名称は、ナイロンである。例えば、ポリアミドPA12は、ナイロン12としても知られており、ポリアミドPA6は、ナイロン6としても知られている。
【0074】
更なる実施形態では、三次元金属印刷粉末は、チタン、アルミニウム、銀、コバルト、クロム、銅、鉄、ニッケル、金、パラジウム、ステンレス鋼、白金、パラジウム、タンタル、レニウム、ニオビウム、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む。
【0075】
一実施形態では、本明細書の3D印刷粉末は、金属粉末と非金属粉末との混合物を含む。
【0076】
別の実施形態では、本明細書の3D印刷粉末は、ハイブリッド粒子を含み、ハイブリッド粒子は金属及び非金属から構成される。
【0077】
実施形態では、三次元金属印刷粉末は、非金属3D粉末と、チタン、アルミニウム、銀、コバルト、クロム、銅、鉄、ニッケル、金、パラジウム、ステンレス鋼、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属と、を含む。実施形態では、三次元金属印刷粉末は、非金属3D粉末と、1種以上の金属合金、例えば、Ti6Al4V、TiAlなどのチタン合金、アルミニウム合金、コバルトクロム合金、ニッケル系超合金などと、を含む。
【0078】
更なる実施形態では、三次元金属印刷粉末は、非金属と1種以上の金属合金とを含むハイブリッド粒子からなる3D印刷粉末を含む。実施形態では、これは、結合剤及び金属又は金属合金を含むことができる。具体的な例は、アルミニウムで充填されたPLA(ポリ乳酸)結合剤であり得る、Alumideであり、又はアルミニウムで充填されたポリアミド、例えば、ガラスビーズ及びアルミニウム充填ポリアミド12(PA12)である、Prodways PA12-GFX 2550である。
【0079】
有機ポリマー表面添加剤組成物は、有機ポリマー表面添加剤が、3D印刷粉末の重量に基づいて約0.05重量%~約2重量%、又は約0.2重量%~約1.4重量%、又は約0.3重量%~約1重量%の量で存在するように、3D印刷粉末と組み合わされてもよい。特定の実施形態では、約20ナノメートル~70ナノメートル未満の体積平均粒径を有する有機ポリマー表面添加剤は、基材の3D印刷粉末の100重量部に基づいて、約0.05重量部~約2重量部の量で存在する。実施形態では、ポリマー組成物は、3D粉末粒子の表面積の約5%~約100%、又は約10%~約100%、又は約20%~約50%を被覆してもよい。
【0080】
実施形態では、有機ポリマー添加剤は、三次元金属印刷粉末の重量に基づいて約0.01~約5重量部の総表面添加量を有する。
【0081】
実施形態では、三次元印刷粉末及び有機ポリマー添加剤は、次式に従って混合物を形成するように組み合わされる。
0.2<(w●D●P)/(0.363●d●p)<1.2
【0082】
式中、三次元金属印刷粉末について、Dは、マイクロメートル単位の粉末のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm3単位の真嵩密度であり、有機ポリマー添加剤について、dは、ナノメートル単位のD50平均粒径であり、pは、グラム/cm3単位の真嵩密度であり、wは、百分率単位の混合物に添加される重量である。
【0083】
実施形態では、本明細書の3D印刷組成物は、所望又は必要に応じて、上記の本開示の有機ポリマー又はコポリマー添加剤に加えて、他の任意の添加剤を含有してもよい。
【0084】
また、流動助剤添加剤を含む、3D金属印刷粉末用外添剤粒子とブレンドすることもできる。これらの添加剤の例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、これらの混合物等の金属酸化物、Aerosil(登録商標)などのコロイド状及び非晶性シリカ、金属塩、及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はUNILIN 700などの長鎖アルコールを含む脂肪酸の金属塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。実施形態では、本明細書の3D印刷組成物は、ステアリン酸塩、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるクリーニング添加剤を更に含む。
【0085】
実施形態では、湿度感受性の低減又は電荷制御のために、シリカ、チタニア、又はアルミナを3D金属粉末表面に適用してもよい。実施形態では、シリカは、粉末流動、水吸着の低減、及びブロッキング温度の向上のために、3D粉末表面に適用され得る。チタニアは、粉末流動の改善、水吸着の低減のために、又は3D粒子を互いに付着させ得る3D粉末の帯電を低減するために、適用され得る。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸マグネシウムも、所望により、表面の潤滑性を提供するための外添剤として使用されてもよく、これは、粉末流動を助けることに加えて、水吸着を低減することができる。実施形態では、Ferro Corporationから入手される、Zinc Stearate Lとして知られる市販のステアリン酸亜鉛を使用してもよい。外部表面添加剤は、コーティングと共に、又はコーティングなしで使用されてもよい。
【0086】
実施形態では、3D印刷組成物は、シリカ表面添加剤、チタニア表面添加剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを更に含む。実施形態では、3D印刷組成物は、シリカ添加剤、チタニア添加剤、又はこれらの組み合わせを含み、シリカ又はチタニア添加剤のうちの少なくとも1つは疎水処理を有し、実施形態では、シリカ又はチタニア添加剤のうちの1つ以上は、ポリジメチルシロキサン疎水処理を有する。
【0087】
これらの外添剤のそれぞれは、3D金属印刷粉末の約0百分率~約3百分率、実施形態では、3D金属印刷粉末の約0.25百分率~約2.5百分率の量で存在してもよいが、添加剤の量はこれらの範囲外であってもよい。実施形態では、3D金属印刷粉末は、例えば、約0百分率~約3百分率のチタニア、約0百分率~約3百分率のシリカ、及び約0百分率~約3百分率のステアリン酸亜鉛を含んでもよい。
【0088】
実施形態では、本開示の有機ポリマー添加剤に加えて、3D印刷組成物はまた、3D金属印刷粉末の約0.05重量部~約5重量部、実施形態では、3D金属印刷粉末の約0.2重量部~約2重量部の量でシリカを有してもよく、かつ3D金属印刷粉末の約0重量部~約3重量部、実施形態では、3D金属印刷粉末の約0.1重量部~約1重量部の量でチタニアを有してもよい。
【0089】
本明細書の3D印刷組成物は、任意の好適な又は所望のプロセスに使用することができる。3D印刷組成物は、レーザービーム溶融印刷プロセス又は選択的レーザー焼結プロセスで使用することができる。任意の三次元プリンタ又はSLSプリンタのタイプを用いることができる。
【0090】
実施形態では、本明細書の方法は、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を有し、所望により、三次元金属印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に有する、三次元金属印刷粉末を提供することと、有機ポリマー添加剤及び任意の無機添加剤を有する三次元金属印刷粉末をレーザーに露光させて、三次元金属印刷粉末を融合させることと、を含む。また、本明細書に記載の3D印刷組成物を提供することと、3D印刷組成物をレーザーに露光させて印刷粉末を融合させることとを含む、選択的レーザー焼結方法も提供される。実施形態では、印刷方法は、選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、直接金属レーザー焼結、又は電子ビーム溶融を含む。
【0091】
有機ポリマーラテックス添加剤は、エマルション重合によって生成された。5ガロンの作業高を、77℃で1時間、後処理し、次いで2時間で87℃まで昇温した後、℃で1時間処理した。2Lの作業高を、77℃で1時間、後処理した。
【0092】
70ナノメートルを超える粒径は、流動を低下させることがあるが、優れた耐ブロッキング性を提供することが発見された。約70ナノメートル未満の粒径は、流動の改善をもたらし、同様にいくらかの耐ブロッキング性を提供するであろう。実施形態では、小さいサイズのラテックス、すなわち実施形態では直径約47ナノメートルのラテックスを調製し、3D粒子の流動の改善を実証した。
【0093】
5ガロンのポリマーラテックスの調製プロセス。ポリマーラテックスを、半連続的starve-fedエマルション重合プロセスによって合成した。可搬式タンク中で、922.14グラムの20.9% Tayca BN2060(ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン性乳化剤)溶液及び3.591キログラムの脱イオン水を含有する界面活性剤溶液に、2.671キログラムのシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、0.9キログラムのジビニルベンゼン55%技術グレード(DVB-55)、及び28.81グラムの2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)のモノマーを混合することにより、乳化されたモノマー混合物を調製した。
【0094】
5ガロンの反応槽中で、395.2グラムの20.9% Tayca BN2060溶液を9.265キログラムの脱イオン水と混合することにより、別の水相混合物を調製し、次いで225rpmで連続混合しながら77℃に加熱した。3%の乳化モノマーを反応器に添加し、最低15分間混合することにより、ポリマーシードを調製した。反応器の温度が約77℃に達した後、0.403キログラムの脱イオン水及び13.83グラムの過硫酸アンモニウム(APS)の開始剤溶液を7分間かけて添加し、シード粒子を重合させた。15分の待機時間後、残りの乳化モノマーを、制御された供給速度で反応器に2時間にわたって添加して、ポリマーシード粒子を重合及び成長させた。モノマー供給が完了したら、反応器を反応温度で更に1時間保持した後、2時間かけて87℃の高温まで昇温し、更に2時間保持して、残留モノマー濃度を低下させた。反応後プロセス中、pHを5.5~6.0に維持するように、ラテックスを0.1M水酸化ナトリウム(NaOH)溶液で緩衝化した。次いで、ラテックスを室温まで冷却し、5マイクロメートルの溶着ポリプロピレンフィルタバッグを通して排出した。得られた生成物は、約20重量%の固形分を含有する水性ポリマーラテックスであった。ラテックスの最終粒径は、47ナノメートルであった。粒径は、Nanotrac NPA252を使用して、以下の設定を用いて測定した。分布-体積、数列-Geom 4 Root、残差-有効、粒子屈折率-1.59、透明性-透明、及び粒子形状-球状。
【0095】
5ガロンのラテックスを、Yamato Scientific Co.から入手可能なデュアル液体ノズルDL41スプレードライヤーを使用して、以下の乾燥条件を用いて噴霧乾燥した。
【0096】
噴霧圧力:4kgf/cm2
サンプル供給速度:3(0.6リットル/分)
温度:140℃
アスピレータ流速:4m3/分
【0097】
表1は、有機ポリマー添加剤の実施例の配合を示す。表2は、プロセスパラメータを示す。表3は、粒径及び残留モノマーを示す。
【表1】
【0098】
【0099】
【0100】
有機ポリマー添加剤ブレンド。数学的に、球状の有機表面添加剤がより大きな粒子表面を被覆するための一般的な理想式は、以下によって与えられる。
0.2<(w●D●P)/(0.363●d●p)<1.2
【0101】
式中、3D粉末について、Dは、マイクロメートル単位のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm3単位の真密度であり、有機エマルション重合ラテックスについて、dは、ナノメートル単位のD50平均サイズであり、pは、グラム/cm3単位の真密度であり、wは、pph単位の混合物に添加される重量である。
【0102】
一般に、流動又はブロッキング性の範囲に対して有効な添加剤の量は、全被覆の約0.2~1.2であり得る。0.2の値は、表面の0.2が被覆されていることを示し、1の値は、表面の全被覆を示す。粒子がいくらかの表面粗さを有するか、又は真球状ではない場合、それらの表面積は、サイズ及び密度に基づいて予想されるよりも高いため、幾分高い被覆率を必要とするであろうことから、式に示されるように、1.2ほど高い値が求められ得る。
【0103】
金属粉末が本発明の有機ポリマー添加剤を使用して優れた流動を有するために、表面積被覆率の範囲が決定されており、金属粉末とブレンドすべき有機添加剤の質量は、上記の式に従って確定される。
【0104】
流動性の評価。粒子形状は、流動性粉末を誘導するために球状であることも望ましい。粒子流動を得るために、空気を含んだ嵩密度及びタップ嵩密度を測定し、次にそのデータを使用してハウスナー比(HR)を計算する。材料がハウスナー比(HR)<1.25を有すると、流動性粉末挙動を示し、適度な流動性としては1.25~1.5であり、HR>1.5は、高い凝集力による流動化問題を有する流動性の悪い粉末を意味する。粒子密度は、粒子形状によって影響される流動床密度に影響を与える。粉末流動の代替的な測定値は安息角であり、安息角が小さいほど粉末の流動は良くなる。以下の表4は、R.L.Carr,Evaluating Flow Properties of Solids,Chem.Eng.1965,72,163-168に従って流動を分類する。
【0105】
【0106】
実施例11
流動の改善のために有機添加剤を有するチタン合金粒子。実施例10の有機ポリマー添加剤の乾燥粒子を0.10pphで、粒径44マイクロメートル及び粒子真密度4.43g/cm3のチタン-アルミニウム合金粒子Ti-6Al-4Vの50グラムに添加し(「Influence of Particle Size on Properties of Ti-6Al-4V Alloy Prepared by High-Velocity Compaction」,Z-Q.Yan et.,Al Trans.Nonferrous Met.Soc.China,23(2013)361-365)、実験用SKM Millで13,500rpmで30秒間混合する。これは、上記の式に従って、基材のTi-6Al-4V粒子の100%の表面積被覆率を与える。ブレンド工程が完了した後、ブレンドされた材料を250マイクロメートルのステンレス鋼ふるいを通して篩分けし、流動及び安息角について評価する。本発明の有機ポリマー表面添加剤を有するTi-6Al-4V粒子の流動性能は、より低いハウスナー比及び/又はより低い安息角を含む、改善された粒子流動性能を示すと予想される。
【0107】
実施例12
流動の改善のために有機添加剤を有するステンレス鋼粒子。実施例10の有機ポリマー添加剤の乾燥粒子を0.485pphで、Pacific Metals Co.Ltd.,Tokyo,Japanから入手可能な粒径5マイクロメートル及び真粒子密度7.8971g/cm3のチタン-アルミニウム合金粒子316Lステンレス鋼粒子の50グラムに添加し(「Sintering Study of 316L Stainless Steel Metal Injection Molding Parts Using Taguchi Method:Final Density」,C.H.Ji et.al,Al.Materials Science and Engineering A311(2001),74-82を参照)、実験用SKM Millで13,500rpmで30秒間混合する。これは、基材の316Lステンレス鋼粒子の100%の表面積被覆率を与える。ブレンド工程後、ブレンドされた材料を150マイクロメートルのステンレス鋼ふるいを通して篩分けし、その後、流動及び安息角について評価する。本発明の有機ポリマー表面添加剤を有するステンレス鋼粒子の流動性能は、より低いハウスナー比及び/又はより低い安息角を含む、改善された粒子流動性能を示すと予想される。