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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/02 20060101AFI20240208BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20240208BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E03D9/02
E03D5/10
E03D11/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020043342
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143528
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】榊原 三恵
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有亮
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002621(JP,A)
【文献】特開2006-089762(JP,A)
【文献】特開2017-048570(JP,A)
【文献】特開2004-092278(JP,A)
【文献】特表平06-509618(JP,A)
【文献】特開2018-100491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢と、
洗浄水、及び精油成分を含む殺菌剤を前記便鉢内に供給可能な洗浄装置と、
前記洗浄装置を制御する制御部と、を有し、
前記洗浄装置は、前記便鉢内へ向けて前記殺菌剤を吐出する殺菌剤吐出部を有し、
前記制御部は、トイレ装置が使用後であることを判断してから所定時間経過後に前記殺菌剤を前記便鉢内に吐出させ、滞留させる、トイレ装置。
【請求項2】
前記殺菌剤吐出部は、前記便鉢内の溜水面に向けて前記殺菌剤を直接吐出する、請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記洗浄装置は、洗浄液を前記便鉢内に供給可能であり、
前記便鉢の溜水内において前記洗浄液と前記殺菌剤とが混合された状態となる、請求項1又は2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記洗浄装置は、前記殺菌剤を含む洗浄液を前記便鉢内に向けて吐出する、請求項1又は2に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記洗浄装置は、前記殺菌剤及び洗浄液を貯留するタンクを有する、請求項1から3のいずれかに記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記洗浄装置は、泡発生装置を有し、
前記泡発生装置は、内部で前記洗浄水、前記殺菌剤、洗浄液、及び空気を混合する、請求項1、2、4、及び5のうちいずれかに記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記洗浄装置は、気泡を含んだ洗浄液を前記便鉢内に供給可能である、請求項1から6のいずれかに記載のトイレ装置。
【請求項8】
前記制御部は、夜中の所定時刻に前記殺菌剤を前記便鉢内に吐出させる、請求項1から7のいずれかに記載のトイレ装置。
【請求項9】
前記洗浄装置は、気泡を含んだ洗浄液を前記洗浄水とは別に前記便鉢内に供給可能であり、
前記制御部は、前記トイレ装置が男性の小用便前であると判断すると、前記気泡を含んだ洗浄液を前記便鉢内に吐出し、前記トイレ装置が使用後であると判断すると、前記洗浄水を前記便鉢内に吐出する、請求項1からのいずれかに記載のトイレ装置。
【請求項10】
前記洗浄装置を操作する操作部と、を更に備え、
前記制御部は、使用者による前記操作部への操作に応じて前記殺菌剤を前記便鉢内に吐出させる、請求項1からのいずれかに記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ装置の便鉢に対し、薬液等を吐出して除菌や殺菌を行う技術が提案されている(例えば、後述する特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-100491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、オゾン水等の薬液を生成して所定時間経過後に便器装置のボウルの内壁面に散布する技術が開示されている。しかし、オゾン水を発生させるには電極等の装置が必要である上、オゾン水は不安定な物質であるため、高頻度でオゾン水を散布する必要がある。上記に加え、薬液をボウルの内壁面に散布する方法では、便鉢の溜水部におけるカビ等の菌類の発生を抑制する効果が十分に得られなかった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、便鉢内に発生するカビ等の菌類の発生を好ましく抑制できるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、便鉢と、洗浄水、及び精油成分を含む殺菌剤を前記便鉢内に供給可能な洗浄装置と、を有し、前記洗浄装置は、前記便鉢内へ向けて前記殺菌剤を吐出する殺菌剤吐出部を有する、トイレ装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態に係るトイレ装置の平面図である。
図2図1の矢印A-A方向に視た実施形態に係るトイレ装置の縦断面図である。
図3図1の矢印A-A方向に視た第3実施形態のトイレ装置の縦断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る泡発生装置の概略図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る泡発生装置の概略図である。
図6】従来のトイレ装置によって抗カビ性試験を行った写真である。
図7】本実施形態のトイレ装置によって抗カビ性試験を行った写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
本実施形態に係るトイレ装置1は、図1及び図2に示すように、便器本体2と、洗浄装置3と、制御部5と、を有する。
【0009】
便器本体2は、汚物を受ける便鉢6と、便器排水路13に設けられた排水トラップ7と、便鉢6に対して開閉する便座(図示省略)及び便蓋(図示省略)と、を有する。便器排水路13は、上昇流路13A及び下降流路13Bから構成され、便鉢6の底部と、排水ソケット14とを連結する。排水ソケット14は排水管(図示省略)と連結される。便座及び便蓋には、それぞれの開閉状態を検知する便座開閉センサ及び便蓋開閉センサが設けられていてもよい。
【0010】
便鉢6の上部には、第1吐出管81及び第2吐出管82が配置される。第1吐出管81及び第2吐出管82は、洗浄水を供給する給水装置16と連結され、洗浄水を吐出する。便鉢6の内壁面上部には、リム流水路91及び吐出口92が形成されており、第1吐出管81から吐出された洗浄水は、リム流水路91に沿って便鉢6内を旋回するように吐出される。第2吐出管82から吐出された洗浄水は、吐出口92を通じて、第1リム流水路91から吐出された洗浄水と合流して便鉢6内に吐出される。第2吐出管82は、上記に加え、例えば後述するエゼクタ15と連結される。第2吐出管82から、エゼクタ15で生成される気泡が吐出される。更に、殺菌剤吐出部としての第2吐出管82は、後述する精油成分を含む殺菌剤(以下、単に「殺菌剤」と記載する場合がある)を、洗浄水とは別に便鉢6内に吐出する。便鉢6の底部には洗浄水が溜まり、溜水面WL1が形成される。
【0011】
上記以外に、トイレ装置1は、後述する制御部5によって各種制御を実行させるための操作部としてのリモートコントローラ(図示省略)を有する。リモートコントローラは、例えばトイレ装置1が設置されるトイレルームの壁面等に取り付けられる。リモートコントローラは、例えば、便器を洗浄するための洗浄スイッチと、人体の局部を洗浄するための人体局部洗浄スイッチを有する。
【0012】
洗浄装置3は、洗浄水及び殺菌剤を便鉢6内に供給可能な装置である。本実施形態においては、洗浄装置3は、洗浄水、洗浄液及び殺菌剤を便鉢6内に供給可能な装置である。本明細書中において、「洗浄水」とは、例えば上水道から取水される水道水等の水を示す。同様に、「洗浄液」とは、界面活性剤等の洗剤や水を電気分解等して生成されるイオン水等、便鉢6の洗浄に用いられる成分を示す。洗浄装置3は、図4に示すように、給水装置16と、泡発生装置としてのエゼクタ15と、洗浄液供給装置18と、殺菌剤吐出部としての第2吐出管82と、を有する。
【0013】
洗浄装置3は、後述する制御部5によって制御されて動作し、便鉢6内に洗浄水、洗浄液及び殺菌剤を供給できる。洗浄装置3によって便鉢6内に供給される殺菌剤は、予め洗浄液と混合されて、後述する洗浄液タンク23に補給され、便鉢6内に供給されることが好ましい。或いは、洗浄液タンク23に対して洗浄液と殺菌剤とを個別に補給して、洗浄液タンク23内で洗浄液と殺菌剤が混合されてもよい。或いは、後述する泡発生装置としてのエゼクタ15内で、洗浄液と殺菌剤が混合されてもよい。或いは、洗浄液が流通する経路内で洗浄液に対して殺菌剤が混入されてもよい。或いは、便鉢6内に洗浄液と殺菌剤とが個別に供給されてもよい。洗浄装置3の上記構成のいずれかにより、便鉢6の溜水内において、洗浄液と殺菌剤とが混合された状態となる。
【0014】
給水装置16は、上水道と連結される給水管(図示省略)から洗浄水を取水し、ポンプ装置(図示省略)によって便鉢6内に洗浄水を供給する。給水装置16は、例えば、トイレ装置1の使用者(以下、単に「使用者」と記載する場合がある)によってリモートコントローラの洗浄スイッチ(図示省略)が操作されることで、第1吐出管81及び第2吐出管82を介して便鉢6に洗浄水を供給する。給水装置16は、図4に示すように、エゼクタ15に対しても洗浄水を供給できる。
【0015】
泡発生装置としてのエゼクタ15は、流路19に設けられる。流路19は、空気と洗浄水と洗浄液とが流通する流路である。流路19は、エゼクタ15以外に上流管21と、下流管22と、空気供給路20と、開閉弁17と、を有する。上流管21は、エゼクタ15よりも上流側に設けられ、下流管22は、エゼクタ15よりも下流側に設けられる。エゼクタ15で生成される気泡を含んだ洗浄液は、下流管22を通じて第2吐出管82に供給される。
【0016】
エゼクタ15は、給水装置16から供給された洗浄水に対して、洗浄液供給装置18から供給される洗浄液及び殺菌剤と、空気供給路20から供給される空気とを混合し、気泡を含んだ洗浄液を生成する。エゼクタ15は、上流側から順に、縮径部15aと、小径部15bと、拡径部15cと、を有する。縮径部15aは、上流側から下流側に向けて徐々に径が小さくなるテーパ形状を有する。縮径部15aには、空気供給路20が接続される。小径部15bは、上流側の縮径部15a及び下流側の拡径部15cと比較して、径が小さい。小径部15bには、洗浄液供給装置18における洗浄液供給路26が接続される。拡径部15cは、上流側から下流側に向けて徐々に径が大きくなるテーパ形状を有する。
【0017】
洗浄液供給装置18は、エゼクタ15に洗浄液及び殺菌剤を供給する。洗浄液供給装置18は、洗浄液タンク23と、洗浄液ポンプ24と、洗浄液供給路25及び26と、を有する。本実施形態において、洗浄液タンク23には、殺菌剤が上記洗浄液と混合されて貯留される。更に好ましくは、洗浄液タンク23には、殺菌剤が予め混入された洗浄液が貯留される。洗浄液タンク23は、洗浄液供給路25を介して洗浄液ポンプ24に接続される。洗浄液ポンプ24は、洗浄液供給路26を介してエゼクタ15に接続される。洗浄液ポンプ24は、洗浄液供給路26を介して洗浄液及び殺菌剤をエゼクタ15に圧送する。
【0018】
空気供給路20は、エゼクタ15に空気を供給する。空気供給路20内の空気は、開閉弁17が開かれている状態で、エゼクタ15に洗浄水が供給されるとエゼクタ15内が負圧になり、エゼクタ15内に引き込まれる。開閉弁17は、空気供給路20の途中に設けられ、空気供給路20を開閉する。開閉弁17は、制御部5と接続される。
【0019】
洗浄装置3の上記構成により、エゼクタ15において気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が生成される。上記気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液は、下流管22を通じて、殺菌剤吐出部としての第2吐出管82から便鉢6内に吐出される。本実施形態においては、洗浄装置3は、洗浄水とは別に上記気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液を供給する。第2吐出管82は、上記気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液を便鉢6における溜水面WLに対して直接吐出する。本明細書において、「直接」とは、殺菌剤等を、便鉢6内を旋回することなく溜水面WLに対して吐出することを意味する。上記により、便鉢6における溜水面WLには気泡と殺菌剤とが滞留する。気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液の吐出は、操作部としてのリモートコントローラの操作により実行可能であってもよい。又は、以下に示す制御部5による制御により吐出されてもよい。
【0020】
制御部5は、洗浄装置3による洗浄水、洗浄液及び殺菌剤の吐出を制御する。制御部5は、開閉弁17を制御すると共に、洗浄液供給装置18による洗浄液及び殺菌剤の供給量を制御する。制御部5は、夜中の所定時刻に便鉢6内に気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が吐出されるように洗浄装置3を制御することが好ましい。上記に加え、制御部5は、使用者のトイレ装置1の使用後、所定時間経過後に、便鉢6内に気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が吐出されるように洗浄装置3を制御することが好ましい。上記により、便鉢6の溜水内に殺菌剤を長時間滞留させることが可能となり、便鉢6の好ましい殺菌効果が得られる。
【0021】
制御部5は、トイレ装置1が使用後であることを判断してから所定時間経過後に気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6内に吐出されるように、洗浄装置3を制御する。制御部5は、図2に示すように、人体検知部としての人感センサ4と接続される。人感センサ4は、人体を検知するセンサであり、例えば赤外線センサである。人感センサ4は、トイレ装置1が設置されるトイレルームに使用者が入室すると、使用者の人体を検知し制御部5に信号を送信する。制御部5は、タイマー装置(図示省略)を有していてもよい。
【0022】
制御部5は、トイレ装置1が使用後であることを以下に示す方法で判断する。制御部5は、例えば、人感センサ4からの信号が受信されなくなること、便蓋開閉センサから取得する信号が開便蓋検知信号から閉便蓋検知信号に切り替わったこと、及び、便器を洗浄するための洗浄スイッチが押され便器洗浄がされたこと、のうち少なくともいずれかにより、トイレ装置1が使用後であることを判断する。制御部5は、上記判断が行われた後、上記タイマー装置により経過時間を測定する。制御部5は、上記判断が行われた後、所定時間経過後に気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6内に吐出されるように、洗浄装置3を制御する。
【0023】
制御部5は、上記タイマー装置によって、時刻を取得可能である。上記により、制御部5は、使用者がトイレ装置1を使用する頻度の低い夜中の所定時刻に、気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6内に吐出されるように、洗浄装置3を制御できる。これにより、便鉢6の溜水内に長時間殺菌剤を滞留させることが可能となり、好ましい殺菌効果が得られる。
【0024】
制御部5は、使用者による操作部であるリモートコントローラへの操作に応じて、気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6内に吐出されるように洗浄装置3を制御できる。制御部5は、例えば使用者によってリモートコントローラの洗浄スイッチ(図示省略)が押された後、所定時間が経過した後に気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6内に吐出されるように、洗浄装置3を制御できる。
【0025】
制御部5は、トイレ装置1が男性の小用便前であることを判断できる。制御部5は、例えばトイレ装置1の便座開閉センサから取得する信号が閉便座検知信号から開便座検知信号に切り替わったことで、上記男性の小用便前であることを判断できる。制御部5は、男性の小用便前であることを判断すると、便鉢6内に飛沫防止用に気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液を吐出する制御を行う。上記に加え、制御部5は、トイレ装置1が使用後であることを判断すると、便鉢6内に洗浄水を吐出する制御を行う。上記2つの制御が行われる場合、トイレ装置1の使用後に便鉢6内に気泡と殺菌剤は滞留しない。上記2つの制御は、日中行われることが好ましい。上記制御により、トイレ装置1の使用頻度の高い日中は殺菌剤及び洗浄液の消費量を低減することができる。
【0026】
(精油成分を含む殺菌剤)
洗浄液タンク23に貯留される殺菌剤には、精油成分が含まれる。殺菌剤に精油成分が含まれることで、好ましい殺菌効果が得られ、便鉢6におけるカビ等の菌類の発生を抑制できる。上記に加え、精油成分が芳香性を有することで、トイレ装置1に対し防臭効果やリラックス効果等の付加価値を付与できる。
【0027】
本明細書において、精油成分とは、植物を圧搾や蒸留、抽出等することによって得られる天然精油成分及び人工的に合成された合成精油成分のうち、少なくともいずれかを含む。精油成分としては、テルペン系化合物が含まれることが好ましい。テルペン系化合物としては、例えば、モノテルペン系アルコール、モノテルペン系アルデヒド、モノテルペン系ケトン、モノテルペン系エステル、モノテルペン系炭化水素、セスキテルペン系アルコール、ジテルペン系アルコール等が挙げられる。
【0028】
モノテルペン系アルコールとしては、例えば、ゲラニオール、リナロール、エチルリナロール、シトロネロール、テルピネロール、オイゲノール等が挙げられる。モノテルペン系アルデヒドとしては、例えば、シトラール、シトロネラール、ペリラアルデヒド等が挙げられる。モノテルペン系ケトンとしては、例えば、メントン、カルボン、プレゴン、カンファー、ダマスコン、ネロール等が挙げられる。モノテルペン系エステルとしては、例えば、ゲラニルアセテート、シトロネリルアセテート等が挙げられる。モノテルペン系炭化水素としては、例えば、リモネン等が挙げられる。セスキテルペン系アルコールとしては、例えば、ファルネソール、ネロリドール、ビサボロール等が挙げられる。ジテルペン系アルコールとしては、例えば、フィトール、イソフィトール等が挙げられる。
【0029】
テルペン系化合物としては、特にシトラールが含まれることが好ましい。シトラールとしては、trans体であるゲラニアール及びcis体であるネラールを含む。殺菌剤中において、シトラールは50重量%以上含まれることが好ましく、70重量%以上含まれることがより好ましい。
【0030】
天然精油成分としては、特に制限されず、例えば、レモングラス精油、ラベンダー精油、ペパーミント精油、ジャスミン精油、ネロリ精油、ベルガモット精油、オレンジ精油、ゼラニウム精油、プチグレン精油、レモン精油、シトロネラ精油、シナモン精油、ユーカリ精油、レモンユーカリ精油、タイム精油、ローズオットー精油、ローズマリー精油、ティートゥリー精油、アルベンシスミント精油、ウィンターグリーン精油、キャロットシード精油、クローブリーフ精油、パルマローザ精油、フェンネルスイート精油、メイチャン精油、ユーカリブルーム精油、フランキンセンス精油等が挙げられる。中でも、天然精油成分としてレモングラス精油、ローズオットー精油、ネロリ精油、ラベンダー精油、ペパーミント精油、ティートゥリー精油、タイム精油、キャロットシード精油、クローブリーフ精油、及びメイチャン精油からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれることが好ましく、レモングラス精油、ローズオットー精油、ネロリ精油、ティートゥリー精油、及びメイチャン精油からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれることがより好ましい。特にレモングラス精油が含まれることが好ましい。レモングラス精油等の天然精油成分は、合成精油成分と混合して用いられてもよい。
【0031】
精油成分に含まれるテルペン系化合物によって殺菌効果が得られるメカニズムは、例えば以下のように推定される。テルペン系化合物がカビ等の菌の細胞膜を構成するエルゴステロールに吸着され、細胞のリン脂質膜を崩壊させる。これにより、カビ等の菌の細胞が死滅し、殺菌効果が得られるものと考えられる。
【0032】
[第2実施形態]
以下の説明では、第1実施形態と共通する構成について記載を省略する場合がある。第2実施形態に係るトイレ装置1aは、図5に示すように、洗浄装置3aと、制御部5aとを有する。洗浄装置3aは、エゼクタ15と、洗浄液供給装置18と、殺菌剤供給装置27と、を有する。
【0033】
殺菌剤供給装置27は、エゼクタ15に殺菌剤を供給する。殺菌剤供給装置27は、殺菌剤タンク28と、殺菌剤ポンプ29と、殺菌剤供給路30及び31と、を有する。殺菌剤タンク28は、精油成分を含む殺菌剤を貯留する。殺菌剤タンク28は、殺菌剤供給路30を介して殺菌剤ポンプ29に接続される。殺菌剤ポンプ29は、殺菌剤供給路31を介してエゼクタ15に接続される。例えば、エゼクタ15の小径部15bに殺菌剤供給路31が接続される。殺菌剤ポンプ29は、殺菌剤供給路31を介して殺菌剤をエゼクタ15に圧送する。エゼクタ15内では、洗浄液と殺菌剤とが混合され、上記気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6に吐出される。
【0034】
制御部5aは、殺菌剤ポンプ29と接続される。制御部5aは、便鉢6内に吐出される洗浄液及び殺菌剤の量を制御する。制御部5aは、殺菌効果の高いタイミングにのみ、洗浄液及び殺菌剤が便鉢6内に吐出されるように洗浄装置3aを制御できる。例えば、制御部5aは第1実施形態と同様、タイマー装置(図示省略)を内蔵し、使用者のトイレ装置1の使用頻度の高い日中は気泡を含んだ洗浄液のみが吐出されるように洗浄装置3aを制御できる。制御部5aは、使用者のトイレ装置1の使用頻度の低い夜中は気泡と殺菌剤を含んだ洗浄液が便鉢6に吐出されるように洗浄装置3aを制御できる。
【0035】
制御部5aは、例えば使用者によって洗浄スイッチ(図示省略)が押された際には洗浄水のみが便鉢6内に吐出されるように洗浄装置3aを制御できる。制御部5aは、使用者によって洗浄スイッチが押されてから所定時間経過後には、洗浄液と共に殺菌剤が便鉢6内に吐出されるように洗浄装置3aを制御できる。
【0036】
上記第2実施形態に係るトイレ装置1aは、殺菌剤を洗浄液タンク23に貯留せず、殺菌剤タンク28にのみ貯留できる。上記構成により、洗浄装置3aは、殺菌効果の高いタイミングにのみ、洗浄液と共に殺菌剤を便鉢6内に吐出できる。従って、便鉢6の溜水内に長時間殺菌剤を滞留させることができ、十分な便鉢6の殺菌効果が得られる。上記に加えて、殺菌剤の使用量を低減できるため、ランニングコストを低減できる。
【0037】
[第3実施形態]
第3実施形態のトイレ装置1bにおける洗浄装置3bは、図3に示すように、便鉢6内の溜水面WL1に向けて殺菌剤を直接噴霧する殺菌剤吐出部としての噴霧装置31を有する。噴霧装置31は、殺菌剤タンク及び殺菌剤ポンプ(図示省略)と、噴射ノズル(図示省略)とを有する。噴射ノズルは、殺菌剤タンクから供給される殺菌剤を、例えば霧状に散布して便鉢6内に噴霧する。
【0038】
制御部5bは、噴霧装置31と接続されており、噴霧装置31によって便鉢6内に噴霧される殺菌剤の量を制御できる。制御部5bは、第1実施形態と同様、タイマー装置を有し、使用者のトイレ装置1の使用後に、便鉢6内に殺菌剤が吐出されるように、噴霧装置31を制御することが好ましい。
【0039】
上記第3実施形態に係るトイレ装置1bは、第2実施形態と同様、制御部5bによって殺菌効果の高いタイミングにのみ、洗浄液及び殺菌剤が便鉢6内に吐出されるように洗浄装置3bを制御できる。これにより、第2実施形態のトイレ装置1aと同様の効果が得られる。上記に加え、第3実施形態に係るトイレ装置1bは、殺菌剤を便鉢6内の溜水面WLに向けて直接噴霧する噴霧装置31を有するため、殺菌剤を溜水面WL1全体に均一に吐出できる。上記に加え、気泡を含んだ洗浄液が吐出された後に殺菌剤を吐出できる。これにより、溜水面WLに貯留された気泡の上部に均一に殺菌剤を吐出できる。従って、殺菌剤を溜水面WLの表面付近に保ちやすくなる。このため好ましい殺菌効果が得られる。
【0040】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。上記実施形態2及び実施形態3では、制御部5a、5bは、気泡を含んだ洗浄液と共に殺菌剤が便鉢6内に吐出されるように洗浄装置3を制御するものとして説明したが、上記に限定されない。制御部5a、5bは、殺菌剤のみが便鉢6内に吐出されるように洗浄装置を制御してもよい。
【0041】
[殺菌性(抗カビ性)評価]
上記実施形態に係る精油成分を含む殺菌剤を用い、以下の方法で殺菌性(抗カビ性)の評価を行った。
【0042】
(ペーパーディスク法)
ペーパーディスク法によって、抗カビ性評価を行った。使用菌種としてクラドスポリウム(Cladosporium sphaerospermum、NBRC6348)を用いた。胞子濃度10個/mLに調整したクラドスポリウムをPDA培地上に塗抹し、ペーパーディスクを載せて試験を行った。上記ペーパーディスク上に洗浄液としての泡剤(界面活性剤)及び、泡剤に加えて殺菌剤としてのレモングラス精油4重量%を添加したサンプルをそれぞれ所定量(10μL、20μL、30μL)滴下し、28℃で7日間培養を行った。培養後の阻止帯の大きさについて、以下の基準を設け抗カビ性評価を行った。結果を表1に示す。
3:阻止帯の大きさがペーパーディスクの直径よりも大きい
2:阻止帯の大きさがペーパーディスクの直径と同程度
1:阻止帯の大きさがペーパーディスクの直径よりも小さい、又は阻止帯が形成されない
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、泡剤に加えてレモングラス精油を添加したサンプルを滴下したペーパーディスクの周囲には、泡剤のみを滴下したペーパーディスクの周囲と比較して直径の大きい阻止帯が形成された。これにより、泡剤と共に精油成分を含む殺菌剤が存在することで、好ましい殺菌効果が得られることが確認された。
【0045】
(テストピースを用いた迅速試験)
便鉢6を含む便器本体2に用いられる衛生陶器のテストピースを用い、人工的に作成した水垢に対してカビ等の菌を発生させる迅速試験を以下の方法で行い、抗カビ性を評価した。人工的に水垢を作成する理由は、便鉢6等にカビ等の菌が繁殖するメカニズムは、便鉢6等に発生した水垢に対し汚れが堆積され、上記汚れに対してカビ等の菌が繁殖するものと考えられるためである。
【0046】
先ず、プラスチック製のカップにテストピースを立てかけ、テストピースの一部が浸るように水を注ぎ、45℃の温度条件下で7日間放置し、テストピース上に水垢を作成した。水は1日1回補給を行った。次に、上記水垢を作成したテストピースを滅菌カップに入れて立てかけ、胞子濃度10個/mLに調整したクラドスポリウムを混合した培養液、及び所定のサンプル液を滅菌カップに投入し、テストピースの一部が液に浸るようにした。上記滅菌カップを28℃の温度条件下で4日間培養した。以下の表2におけるサンプル液Aは、培養液のみからなり、サンプル液Bは、培養液と泡剤(界面活性剤)とを混合したものであり、サンプル液Cは、培養液と泡剤(界面活性剤)及びレモングラス精油4重量%を混合したものである。培養後のテストピースの外観について、以下の基準を設け抗カビ性評価を行った。結果を表2に示す。
3:カビ等の菌の繁殖が目視でほとんど確認されない
2:カビ等の菌の繁殖が目視で間欠的に確認される
1:カビ等の菌の繁殖が目視で連続的に確認される
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、培養液と共に泡剤及びレモングラス精油を混合したサンプル液Cは、培養液のみを混合したサンプル液Aや、培養液と共に泡剤のみを混合したサンプル液Bと比較して、テストピース表面への菌の繁殖が抑制される結果を示した。これにより、泡剤と共に精油成分を含む殺菌剤が存在することで、衛生陶器に対するカビ等の菌の発生を抑制できることが確認された。
【0049】
(トイレ装置を用いた実地試験)
トイレ装置を用い、一般家庭において実地試験を行った。先ず、トイレ装置の洗浄・殺菌を行わずにトイレ装置の便鉢内にカビを発生させた。次に、メラミンスポンジを用いて、上記発生したカビの清掃を行った。上記カビの清掃後のトイレ装置に対し、それぞれ以下の条件で実地試験を行った。
【0050】
図6は、上記カビの清掃後のトイレ装置に対し、トイレ装置の使用後に水のみで洗浄を行った実地試験例を示す。図6は、上記水のみの洗浄でトイレ装置の清掃は行わず3週間が経過した後のトイレ装置を撮影した写真である。図7は、上記カビの清掃後の本実施形態に係るトイレ装置において、気泡と殺菌剤を便鉢内に吐出した実地試験例を示す。図7は、毎日夜中に1回、気泡を含んだ洗浄液及び精油成分を含む殺菌剤を便鉢内に吐出し、清掃は行わず3週間が経過した後のトイレ装置を撮影した写真である。図7に示すように、本実施形態に係る気泡を含んだ洗浄液及び殺菌剤を便鉢内に吐出するトイレ装置は、目視でカビ等の菌の繁殖が確認されず、図6に示す水のみで洗浄を行うトイレ装置と比較して、便鉢内のカビ等の菌の発生が抑制される結果を示した。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b トイレ装置、3、3a、3b 洗浄装置、31 噴霧装置(殺菌剤吐出部)、4 人感センサ(人体検知部)、5、5a、5b 制御部、6 便鉢、10 ジェット吐出口(泡発生装置)、15 エゼクタ、18 洗浄液供給装置、82 第2吐出管(殺菌剤吐出部)、WL 溜水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7