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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】容量検出回路、入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240208BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20240208BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240208BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/02 F
G06F3/044
G01R27/26 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020057686
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157545
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雄二
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211898(JP,A)
【文献】特開2015-156159(JP,A)
【文献】特開2014-045475(JP,A)
【文献】特開2006-184273(JP,A)
【文献】特開2012-164082(JP,A)
【文献】特開平08-272529(JP,A)
【文献】特表2008-542760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0245286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0034178(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0042346(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1317227(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第103324366(CN,A)
【文献】特開2021-157546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0302928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0209858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/02
G06F 3/044
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ電極の容量を検出する容量検出回路であって、
前記センサ電極が接続されるセンスピンと、
基準キャパシタと、
前記センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、
前記基準キャパシタの第1端に前記ハイ電圧または前記ロー電圧を印加する第2駆動部と、
前記基準キャパシタの第2端に前記ハイ電圧または前記ロー電圧を印加する第3駆動部と、
前記センスピンと前記基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、
後段回路ブロックの入力と前記基準キャパシタの前記第1端の間に設けられる第2スイッチと、
を備え、
第1フェーズにおいて、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記センスピンに前記ハイ電圧を印加し、前記第2駆動部は前記基準キャパシタの前記第1端に前記ロー電圧を印加し、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にロー電圧を印加し、
第2フェーズにおいて、前記第1スイッチをオンし、前記第2スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にロー電圧を印加し、
第3フェーズにおいて、前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にロー電圧を印加し、
前記第3フェーズにおいて前記第2スイッチを介して前記後段回路ブロックに供給される信号が、前記センサ電極の容量を示すことを特徴とする容量検出回路。
【請求項2】
第4フェーズにおいて、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記センスピンに前記ロー電圧を印加し、前記第2駆動部は前記基準キャパシタの前記第1端に前記ハイ電圧を印加し、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端に前記ハイ電圧を印加し、
第5フェーズにおいて、前記第1スイッチをオンし、前記第2スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にハイ電圧を印加し、
第6フェーズにおいて、前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にハイ電圧を印加し、
前記第6フェーズにおいて前記第2スイッチを介して前記後段回路ブロックに供給される信号が、前記センサ電極の容量を示すことを特徴とする請求項1に記載の容量検出回路。
【請求項3】
センサ電極の容量を検出する容量検出回路であって、
前記センサ電極が接続されるセンスピンと、
基準キャパシタと、
前記センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、
前記基準キャパシタの第1端に前記ハイ電圧または前記ロー電圧を印加する第2駆動部と、
前記基準キャパシタの第2端に前記ハイ電圧または前記ロー電圧を印加する第3駆動部と、
前記センスピンと前記基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、
後段回路ブロックの入力と前記基準キャパシタの前記第1端の間に設けられる第2スイッチと、
を備え、
第4フェーズにおいて、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記センスピンに前記ロー電圧を印加し、前記第2駆動部は前記基準キャパシタの前記第1端に前記ハイ電圧を印加し、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端に前記ハイ電圧を印加し、
第5フェーズにおいて、前記第1スイッチをオンし、前記第2スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にハイ電圧を印加し、
第6フェーズにおいて、前記第1スイッチをオフし、前記第2スイッチをオンし、前記第3駆動部は前記基準キャパシタの前記第2端にハイ電圧を印加し、
前記第6フェーズにおいて前記第2スイッチを介して前記後段回路ブロックに供給される信号が、前記センサ電極の容量を示すことを特徴とする容量検出回路。
【請求項4】
前記後段回路ブロックは、ΔΣ変調器を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の容量検出回路。
【請求項5】
前記後段回路ブロックは、積分器と、前記積分器の出力をデジタル値に変換するA/Dコンバータと、を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の容量検出回路。
【請求項6】
前記基準キャパシタは、可変キャパシタであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の容量検出回路。
【請求項7】
前記基準キャパシタは、
それぞれの一端が前記第2端と接続された複数の容量素子と、
前記複数の容量素子に対応する複数のスイッチであって、各スイッチの一端が前記第1端と接続され、各スイッチの他端が対応する容量素子の他端と接続された、複数のスイッチと、
を含み、前記複数のスイッチのうち、オンであるスイッチの個数に応じて、前記基準キャパシタの容量が可変であることを特徴とする請求項6に記載の容量検出回路。
【請求項8】
前記基準キャパシタは、それぞれの一端が前記第1端と接続された複数の容量素子を含み、前記複数の容量素子それぞれの他端は、前記第2端側において独立しており、
前記第3駆動部は、前記複数の容量素子に対応する複数の駆動ユニットを含み、
各駆動ユニットは、対応する容量素子の前記第2端側の端子に、前記ハイ電圧または前記ロー電圧を印加する使用状態と、不使用状態が切り替え可能であり、
前記複数の駆動ユニットのうち、使用状態である個数に応じて、前記基準キャパシタの容量を切り替えることが可能であることを特徴とする請求項6に記載の容量検出回路。
【請求項9】
前記基準キャパシタは、
それぞれの一端が前記第1端と接続された複数のスイッチと、
前記複数のスイッチに対応する複数の容量素子であって、各容量素子の一端が対応するスイッチの他端と接続されている複数の容量素子と、
を含み、前記複数の容量素子それぞれの他端は、前記第2端側において独立しており、
前記第3駆動部は、前記複数の容量素子に対応する複数の駆動ユニットを含み、
各駆動ユニットは、対応する容量素子の前記第2端側の端子に、前記ハイ電圧または前記ロー電圧を印加する使用状態と、前記ハイ電圧および前記ロー電圧の一方を固定的に印加する不使用状態が切り替え可能であり、
前記複数の駆動ユニットのうち、使用状態である個数に応じて、前記基準キャパシタの容量を切り替えることが可能であることを特徴とする請求項6に記載の容量検出回路。
【請求項10】
前記複数の容量素子はMIM(Metal Insulator Metal)キャパシタであり、少なくとも一部が、トランジスタ素子が集積化される領域とオーバーラップする領域に配置されることを特徴とする請求項7または9に記載の容量検出回路。
【請求項11】
センサ電極の容量を検出する容量検出回路であって、
前記センサ電極が接続されるセンスピンと、
第1基準キャパシタと、
第2基準キャパシタと、
前記センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、
前記第1基準キャパシタの第1端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第2駆動部と、
前記第1基準キャパシタの第2端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第3駆動部と、
前記第2基準キャパシタの第1端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第4駆動部と、
前記第2基準キャパシタの第2端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第5駆動部と、
前記センスピンと前記第1基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、
差動入力を有する後段回路ブロックの第1入力と前記第1基準キャパシタの前記第1端の間に設けられる第2スイッチと、
前記センスピンと前記第2基準キャパシタの第1端の間に設けられた第3スイッチと、
前記後段回路ブロックの第2入力と前記第2基準キャパシタの前記第1端の間に設けられる第4スイッチと、
を備え、
第1フェーズにおいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記ハイ出力状態、前記第2駆動部および前記第3駆動部は前記ロー出力状態、前記第4駆動部、前記第5駆動部は、前記無出力状態となり、
第2フェーズにおいて、前記第1スイッチをオンし、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記ロー出力状態、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第4駆動部、前記第5駆動部は前記無出力状態となり、
第3フェーズにおいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記ロー出力状態、前記第4駆動部および前記第5駆動部は前記ハイ出力状態、前記第2駆動部は前記無出力状態、前記第3駆動部は前記ロー出力状態となり、
第4フェーズにおいて、前記第3スイッチをオンし、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第5駆動部は前記ハイ出力状態、前記第3駆動部は前記ロー出力状態、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第4駆動部は前記無出力状態となり、
第5フェーズにおいて、前記第2スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、前記第1スイッチおよび前記第3スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記ロー出力状態、前記第5駆動部は前記ハイ出力状態、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第4駆動部は前記無出力状態となり、
前記第5フェーズにおいて前記第2スイッチおよび前記第4スイッチを介して前記後段回路ブロックに供給される差動信号が、前記センサ電極の容量を示すことを特徴とする容量検出回路。
【請求項12】
センサ電極の容量を検出する容量検出回路であって、
前記センサ電極が接続されるセンスピンと、
第1基準キャパシタと、
第2基準キャパシタと、
前記センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、
前記第1基準キャパシタの第1端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第2駆動部と、
前記第1基準キャパシタの第2端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第3駆動部と、
前記第2基準キャパシタの第1端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第4駆動部と、
前記第2基準キャパシタの第2端に、前記ハイ電圧を印加するハイ出力状態、前記ロー電圧を印加するロー出力状態、前記ハイ電圧および前記ロー電圧のいずれも印加しない無出力状態が切り替え可能である第5駆動部と、
前記センスピンと前記第1基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、
差動入力を有する後段回路ブロックの第1入力と前記第1基準キャパシタの前記第1端の間に設けられる第2スイッチと、
前記センスピンと前記第2基準キャパシタの第1端の間に設けられた第3スイッチと、
前記後段回路ブロックの第2入力と前記第2基準キャパシタの前記第1端の間に設けられる第4スイッチと、
を備え、
第6フェーズにおいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記ロー出力状態、前記第2駆動部および前記第3駆動部は前記ハイ出力状態、前記第4駆動部、前記第5駆動部は、前記無出力状態となり、
第7フェーズにおいて、前記第1スイッチをオンし、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記ハイ出力状態、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第4駆動部、前記第5駆動部は前記無出力状態となり、
第8フェーズにおいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第1駆動部は前記ハイ出力状態、前記第4駆動部および前記第5駆動部は前記ロー出力状態、前記第2駆動部は前記無出力状態、前記第3駆動部は前記ハイ出力状態となり、
第9フェーズにおいて、前記第3スイッチをオンし、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第4スイッチをオフし、前記第5駆動部は前記ロー出力状態、前記第3駆動部は前記ハイ出力状態、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第4駆動部は前記無出力状態となり、
第10フェーズにおいて、前記第2スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、前記第1スイッチおよび前記第3スイッチをオフし、前記第3駆動部は前記ハイ出力状態、前記第5駆動部は前記ロー出力状態、前記第1駆動部、前記第2駆動部、前記第4駆動部は前記無出力状態となり、
前記第10フェーズにおいて前記第2スイッチおよび前記第4スイッチを介して前記後段回路ブロックに供給される差動信号が、前記センサ電極の容量を示すことを特徴とする容量検出回路。
【請求項13】
ひとつの半導体集積回路上に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の容量検出回路。
【請求項14】
センサ電極を含み、ユーザの接触した座標近傍のセンサ電極の静電容量が変化するパネルと、
前記センサ電極と接続される請求項1から13のいずれかに記載の容量検出回路と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータやスマートホン、タブレット端末、ポータブルオーディオ機器などの電子機器には、ユーザインタフェースとして、タッチ式の入力装置が搭載される。タッチ式の入力装置としては、タッチパッド、ポインティングデバイスなどが知られており、指やスタイラスを接触あるいは近接することにより様々な入力が可能となっている。
【0003】
タッチ式入力装置は大きく、抵抗膜方式と静電容量方式に分類される。静電容量方式は、ユーザ入力に応じて、複数のセンサ電極が形成する静電容量(以下、単に容量ともいう)の変化を電気信号に変換することにより、ユーザ入力の有無、座標を検出する。
【0004】
静電容量検出方法は大きく、自己容量(Self Capacitance)方式と、相互容量(Mutual Capacitance)方式に分けられる。自己容量方式は非常に高感度であり、タッチのみでなく指の近接を検出可能であるが、水滴の付着をタッチと区別できず、また2点タッチを検出できないという問題がある。一方、相互容量方式は、2点タッチ(あるいはそれ以上のマルチタッチ)を検出可能であり、水滴の影響を受けにくいという利点がある。したがって、用途によって、自己容量方式と相互容量方式が選択され、あるいは両方式が併用される。
【0005】
図1は、従来の自己容量方式のタッチ式入力装置10のブロック図である。タッチ式入力装置10は、タッチパネル12と容量検出回路20を備える。タッチパネル12は、センサ電極SEを含み、センサ電極SEは容量検出回路20のセンスピンSNSと接続される。容量検出回路20は、センサ電極SEとユーザの指2やスタイラスとの間に形成される静電容量Csを検出する。
【0006】
容量検出回路20は、複数のスイッチSW81~SW90と、4個の基準キャパシタCr1~Cr4、A/Dコンバータ22を備える。複数のスイッチSW81~SW90および4個の基準キャパシタCr1~Cr4によって、静電容量Csが差動の電圧信号Vs_p、Vs_nに変換され、A/Dコンバータ22によってデジタル信号に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-132506号公報
【文献】特開2014-45475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基準キャパシタCr1~Cr4はそれぞれ、センサ電極SEが形成する静電容量Csと同程度の容量を有している。近年、タッチパネル12の薄型化が進められており、静電容量Csの容量が増加している。そのため、基準キャパシタCr1~Cr4を半導体チップに集積化する際に、それらの専有面積が増大することとなり、コストアップの要因となっている。
【0009】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、チップ面積を削減した容量検出回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態に係る容量検出回路は、センサ電極が接続されるセンスピンと、基準キャパシタと、センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、基準キャパシタの第1端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第2駆動部と、基準キャパシタの第2端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第3駆動部と、センスピンと基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、後段回路ブロックの入力と基準キャパシタの第1端の間に設けられる第2スイッチと、を備える。
【0011】
一実施の形態に係る容量検出回路は、センサ電極が接続されるセンスピンと、第1基準キャパシタと、第2基準キャパシタと、センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、第1基準キャパシタの第1端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第2駆動部と、第1基準キャパシタの第2端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第3駆動部と、第2基準キャパシタの第1端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第4駆動部と、第2基準キャパシタの第2端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第5駆動部と、センスピンと第1基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、差動入力を有する後段回路ブロックの第1入力と第1基準キャパシタの第1端の間に設けられる第2スイッチと、センスピンと第2基準キャパシタの第1端の間に設けられた第3スイッチと、後段回路ブロックの第2入力と第2基準キャパシタの第1端の間に設けられる第4スイッチと、を備える。
【0012】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チップ面積を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の自己容量方式のタッチ式入力装置のブロック図である。
図2】実施の形態1に係る容量検出回路を備えるタッチ式入力装置のブロック図である。
図3図3(a)~(f)は、第1フェーズφ~第6フェーズφにおけるC/V変換回路の等価回路図である。
図4図2のC/V変換回路の動作波形図である。
図5】容量検出回路の具体的な構成例を示す図である。
図6】実施の形態2に係る容量検出回路の回路図である。
図7図7(a)~(f)は、第1フェーズφ~第5フェーズφにおけるC/V変換回路の等価回路図である。
図8図8(a)~(f)は、第6フェーズφ~第10フェーズφ10におけるC/V変換回路の等価回路図である。
図9】C/V変換回路の回路図である。
図10】実施例1に係る基準キャパシタCrおよび第3駆動部の回路図である。
図11図11(a)、(b)は、容量検出回路のレイアウトを説明する図である。
図12図12(a)は、実施例2に係る基準キャパシタおよび第3駆動部の回路図であり、図12(b)は、実施例3に係る基準キャパシタおよび第3駆動部の回路図である。
図13】変形例に係る容量検出回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、センサ電極の容量を検出する容量検出回路に関する。容量検出回路は、センサ電極が接続されるセンスピンと、基準キャパシタと、センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、基準キャパシタの第1端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第2駆動部と、基準キャパシタの第2端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第3駆動部と、センスピンと基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、後段回路ブロックの入力と基準キャパシタの第1端の間に設けられる第2スイッチと、を備える。
【0016】
この構成によれば、基準キャパシタの個数を1個に減らすことができ、回路面積を削減できる。
【0017】
容量検出回路は、第1フェーズにおいて、第1駆動部はセンスピンにハイ電圧を印加し、第2駆動部は基準キャパシタの第1端にロー電圧を印加し、第3駆動部は基準キャパシタの第2端にハイ電圧を印加し、第2フェーズにおいて、第1スイッチをオンし、第3駆動部は基準キャパシタの第2端にロー電圧を印加し、第3フェーズにおいて、第2スイッチをオンし、第3駆動部は基準キャパシタの第2端にロー電圧を印加してもよい。
【0018】
また容量検出回路は、第4フェーズにおいて、第1駆動部はセンスピンにロー電圧を印加し、第2駆動部は基準キャパシタの第1端にハイ電圧を印加し、第3駆動部は基準キャパシタの第2端にハイ電圧を印加し、第5フェーズにおいて、第1スイッチをオンし、第3駆動部は基準キャパシタの第2端にハイ電圧を印加し、第6フェーズにおいて、第2スイッチをオンし、第3駆動部は基準キャパシタの第2端にハイ電圧を印加してもよい。
【0019】
後段回路ブロックは、ΔΣ変調器を含んでもよい。
【0020】
後段回路ブロックは、積分器と、積分器の出力をデジタル値に変換するA/Dコンバータと、を含んでもよい。
【0021】
基準キャパシタは、可変キャパシタであり、複数の容量素子と、複数の容量素子の一端と第1端の間に設けられた複数のスイッチと、を含んでもよい。
【0022】
第2駆動部は、複数の容量素子それぞれの他端に、独立してハイ電圧とロー電圧を印加可能であってもよい。
【0023】
基準キャパシタは、複数の容量素子はMIM(Metal Insulator Metal)キャパシタであり、少なくとも一部が、トランジスタ素子が集積化される領域とオーバーラップする領域に配置されてもよい。これにより、チップ面積をさらに小さくできる。
【0024】
本明細書に開示される一実施の形態も、容量検出回路に関する。容量検出回路は、センサ電極が接続されるセンスピンと、第1基準キャパシタと、第2基準キャパシタと、センスピンにハイ電圧またはロー電圧を印加する第1駆動部と、第1基準キャパシタの第1端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第2駆動部と、第1基準キャパシタの第2端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第3駆動部と、第2基準キャパシタの第1端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第4駆動部と、第2基準キャパシタの第2端にハイ電圧またはロー電圧を印加する第5駆動部と、センスピンと第1基準キャパシタの第1端の間に設けられた第1スイッチと、差動入力を有する後段回路ブロックの第1入力と第1基準キャパシタの第1端の間に設けられる第2スイッチと、センスピンと第2基準キャパシタの第1端の間に設けられた第3スイッチと、後段回路ブロックの第2入力と第2基準キャパシタの第1端の間に設けられる第4スイッチと、を備える。
【0025】
この構成によれば、基準キャパシタの個数を2個に減らすことができ、回路面積を削減できる。
【0026】
容量検出回路は、ひとつの半導体集積回路上に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0027】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
図2は、実施の形態1に係る容量検出回路200を備えるタッチ式入力装置100のブロック図である。タッチ式入力装置100は、パネル110および容量検出回路200を備える。タッチ式入力装置100は、ユーザの指2(あるいはスタイラス)によるタッチ操作を検出するユーザインタフェースである。
【0031】
パネル110は、タッチパネルあるいはスイッチパネルであり、ひとつ、あるいは複数のセンサ電極SEを含む。本実施の形態においては1個のセンサ電極SEに対応する部分のみが示される。
【0032】
ホストプロセッサ120は、タッチ式入力装置100が搭載される機器、装置、システムを統合的に制御する。容量検出回路200は、各センサ電極SEの静電容量を検出し、ホストプロセッサ120に伝送する。なお、容量検出回路200は、検出した静電容量Csをしきい値と比較することにより、タッチの有無を検出し、タッチの有無をホストプロセッサ120に送信してもよい。
【0033】
容量検出回路200は、センスピンSNS、C/V変換回路210、A/Dコンバータ220、インタフェース回路230を備える。
【0034】
センスピンSNSには、センサ電極SEが接続される。C/V変換回路210は、センサ電極SEが形成する静電容量Csを電圧信号Vsに変換する。A/Dコンバータ220は、電圧信号Vsをデジタル信号Dsに変換する。インタフェース回路230は、デジタル信号Dsをホストプロセッサ120に送信する。
【0035】
C/V変換回路210は、静電容量Csを電圧信号に変換するフロントエンド回路であり、第1駆動部212、第2駆動部214、第3駆動部216、第1スイッチSW11、第2スイッチSW12、基準キャパシタCr、コントローラ218を備える。
【0036】
第1駆動部212は、センスピンSNSにハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。ハイ電圧Vはたとえば電源ラインAVDDの電源電圧VDDであり、ロー電圧VLは接地ラインGNDの接地電圧VGND(=0V)である。
【0037】
第2駆動部214は、基準キャパシタCrの第1端e1にハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。
【0038】
第3駆動部216は、基準キャパシタCrの第2端e2にハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。
【0039】
第1駆動部212、第2駆動部214、第3駆動部216はそれぞれ、ハイサイドスイッチMHとローサイドスイッチMLを含む。
【0040】
第1スイッチSW11は、センスピンSNSと基準キャパシタCrの第1端e1の間に設けられる。第2スイッチSW12は、後段のA/Dコンバータ220の入力と基準キャパシタCrの第1端e1の間に設けられる。
【0041】
コントローラ218は、第1駆動部212、第2駆動部214、第3駆動部216および第1スイッチSW11、第2スイッチSW12を制御する。本実施の形態において、コントローラ218は、C/V変換回路210の状態を、第1フェーズφ~第6フェーズφで切り替える。図3(a)~(f)は、第1フェーズφ~第6フェーズφにおけるC/V変換回路210の等価回路図である。第1フェーズφ~第3フェーズφが1回のセンシングの単位であり、第4フェーズφ~第6フェーズφが1回のセンシングの単位である。
【0042】
図3(a)に示すように、第1フェーズφにおいて、第1駆動部212はセンスピンSNSにハイ電圧Vを印加し、第2駆動部214は基準キャパシタCrの第1端e1にロー電圧Vを印加し、第3駆動部216は基準キャパシタCrの第2端e2にロー電圧 を印加する。このとき、基準キャパシタCrの電荷量Qrは0,静電容量Csの電荷量QsはV×Csとなる。
【0043】
図3(b)に示すように、第2フェーズφにおいて、第1スイッチSW11をオンし、第3駆動部216は基準キャパシタCrの第2端e2にロー電圧Vを印加する。この状態で、静電容量Csと基準キャパシタCrの転送が起こり、電荷量Qs,Qrが平滑化される。
Cs×V=(Cs+Cr)×Vs
このときの内部電圧Vsは、式(1)で表される。
Vs=Cs/(Cs+Cr)×V …(1)
【0044】
図3(c)に示すように、第3フェーズφにおいて、第2スイッチSW12をオンし、第3駆動部216は基準キャパシタCrの第2端e2にロー電圧Vを印加する。これによりセンス電圧Vsが、後段のA/Dコンバータ220に供給される。
【0045】
図3(d)に示すように、第4フェーズφにおいて、第1駆動部212はセンスピンSNSにロー電圧Vを印加し、第2駆動部214は基準キャパシタCrの第1端e1にハイ電圧Vを印加し、第3駆動部216は基準キャパシタCrの第2端e2にハイ電圧Vを印加する。このとき、基準キャパシタCrの電荷量Qrは0、静電容量Csの電荷量Qsは0となる。
【0046】
図3(e)に示すように、第5フェーズφにおいて、第1スイッチSW11をオンし、第3駆動部216は基準キャパシタCrの第2端にハイ電圧Vを印加する。この状態で、内部電圧Vsは、式(2)で表される。
Vs=Cr/(Cs+Cr)×V
=V-Cs/(Cs+Cr)×V …(2)
【0047】
図3(f)に示すように、第6フェーズφにおいて、第2スイッチSW12をオンし、第3駆動部216は基準キャパシタCrの第2端e2にハイ電圧Vを印加する。これによりセンス電圧Vsが、後段のA/Dコンバータ220に供給される。
【0048】
以上がタッチ式入力装置100の構成である。続いてその動作を説明する。図4は、図2のC/V変換回路210の動作波形図である。第1フェーズφにおいて、スイッチMH1がオンとなり、センスピンSNSの電圧VSNSがハイ電圧V=VDDとなる。またスイッチML2およびML3がオンとなり、内部電圧Vsがロー電圧V=0Vとなる。続く第2フェーズφにおいて第1スイッチSW11がオンとなり、静電容量Csと基準キャパシタCrの間で電荷が転送され、内部電圧Vsが、式(1)で表される電圧レベルに安定化される。そして第3フェーズφにおいて第2スイッチSW12がオンとなり、内部電圧Vsが、後段に供給される。
【0049】
第4フェーズφにおいて、スイッチML1がオンとなり、センスピンSNSの電圧VSNSがロー電圧V=0Vとなる。またスイッチMH2およびMH3がオンとなり、内部電圧Vsがハイ電圧V=VDDとなる。続く第5フェーズφにおいて第1スイッチSW11がオンとなり、静電容量Csと基準キャパシタCrの間で電荷が転送され、内部電圧Vsが、式(2)で表される電圧レベルに安定化される。そして第6フェーズφにおいて第2スイッチSW12がオンとなり、内部電圧Vsが、後段に供給される。
【0050】
以上が容量検出回路200の動作である。この容量検出回路200は、基準キャパシタCrを1個に減らすことができるため、回路面積を小さくできる。
【0051】
図5は、容量検出回路200の具体的な構成例を示す図である。A/Dコンバータ220は、ΔΣ変調器であり、デジタル信号Dsはオーバーサンプリングされたビットストリームである。
【0052】
一般的にΔΣ変調器は、減算器221、積分器222、コンパレータ226、D/Aコンバータ224を含む。この構成では、キャパシタCfbが、減算器221およびD/Aコンバータ224の機能を担っている。キャパシタCfbによって、ビットストリームDsに応じたハイ電圧あるいはロー電圧が、A/Dコンバータ220の入力にフィードバックされ、C/V変換回路210からのセンス電圧Vsとの差分に相当する信号成分が、積分器222に入力される。積分器222は、差分を積算する。コンパレータ226は、積分器222の出力を、基準電圧と比較し、ビットストリームに変換する。積分器222のキャパシタCINTの両端には、4個のスイッチが設けられており、第3フェーズφ3で得られた電圧Vsを処理する期間と、第6フェーズφで得られた電圧Vsを処理する期間とで、キャパシタCINTの極性が反転される。
【0053】
なお、A/Dコンバータ220の構成は、図5のそれに限定されず、さまざまな形式、方式のA/Dコンバータを用いることができる。
【0054】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る容量検出回路300の回路図である。容量検出回路300は、C/V変換回路310およびA/Dコンバータ330を備える。A/Dコンバータ330は差動入力を有する。
【0055】
センスピンSNSには、センサ電極SEが接続される。C/V変換回路310は、第1駆動部312、第2駆動部314、第3駆動部316、第4駆動部318、第5駆動部320、コントローラ322、第1スイッチSW21~第4スイッチSW24を備える。
【0056】
第1駆動部312は、センスピンSNSにハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。第2駆動部314は、第1基準キャパシタCr1の第1端e1にハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。第3駆動部316は、第1基準キャパシタCr1の第2端e2にハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。第4駆動部318は、第2基準キャパシタCr2の第1端e1にハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。第5駆動部320は、第2基準キャパシタCr2の第2端e2にハイ電圧Vまたはロー電圧Vを印加する。
【0057】
第1駆動部312~第5駆動部320はそれぞれ、ハイサイドスイッチMHおよびローサイドスイッチMLを含む。第1スイッチSW21は、センスピンSNSと第1基準キャパシタCr1の第1端e1の間に設けられる。第2スイッチSW22は、A/Dコンバータ220の差動入力の第1入力と第1基準キャパシタCr1の第1端e1の間に設けられる。
【0058】
第3スイッチSW23は、センスピンSNSと第2基準キャパシタCr2の第1端e1の間に設けられる。第4スイッチSW24は、A/Dコンバータ220の第2入力と第2基準キャパシタCr2の第1端e1の間に設けられる。
【0059】
コントローラ322は、第1駆動部312~第5駆動部320と、第1スイッチSW21~第4スイッチSW24を制御する。
【0060】
図7(a)~(f)は、第1フェーズφ~第5フェーズφにおけるC/V変換回路310の等価回路図である。図7(a)、(b)の第1フェーズφ,第2フェーズφは、図3(a)、(b)の第1フェーズφ,第2フェーズφに対応する。第2フェーズφ2において、式(1a)の内部電圧Vs1が生成される。
Vs1=Cs/(Cs+Cr1)×V …(1a)
【0061】
図7(c)、(d)の第3フェーズφ,第4フェーズφは、図3(d)、(e)の第4フェーズφ,第5フェーズφに対応する。第4フェーズφにおいて、式(2a)の内部電圧Vs2が生成される。
Vs2=V-Cs/(Cs+Cr2)×V …(2a)
【0062】
図7(e)の第5フェーズφにおいて、第2スイッチSW22および第4スイッチSW24がオンとなり、差動信号Vs1,Vs2が、後段のA/Dコンバータ330に供給される。
【0063】
図8(a)~(f)は、第6フェーズφ~第10フェーズφ10におけるC/V変換回路310の等価回路図である。図8(a)、(b)は、図7(a)、(b)の処理を、極性を反転して行ったものであり、式(1b)の内部電圧Vs1が生成される。
Vs1=V-Cs/(Cs+Cr1)×V…(1b)
【0064】
図8(c)、(d)は、図7(c)、(d)の処理を、極性を反転して行ったものであり、式(2b)の内部電圧Vs2が生成される。
Vs2=Cs/(Cs+Cr2)×V …(2b)
【0065】
図8(e)の第10フェーズφ10において、第2スイッチSW22および第4スイッチSW24がオンとなり、差動信号Vs1,Vs2が、後段のA/Dコンバータ330に供給される。
【0066】
なお、当業者によれば、図7図8のフェーズの順序は、入れ替え可能であることが理解される。
【0067】
以上が容量検出回路300の動作である。この容量検出回路300は、基準キャパシタを4個から2個に減らすことができるため、回路面積を小さくできる。
【0068】
続いて、基準キャパシタCrの具体的な構成例について説明する。ここでは実施の形態1のC/V変換回路210を例とするが、実施の形態2のC/V変換回路310についても同様の説明が適用される。
【0069】
図9は、C/V変換回路210の回路図である。基準キャパシタCrの容量は、検出対象の静電容量Csと同程度であることが好ましい。容量検出回路200には、さまざまなサイズや厚みのパネル110と組み合わせて利用できる汎用性が求められるため、基準キャパシタCrを、可変キャパシタで構成するとよい。そして基準キャパシタCrの容量値は、製品ごとに、静電容量Csと同程度となるように調整できるようになっている。
【0070】
図10は、実施例1に係る基準キャパシタCrおよび第3駆動部216の回路図である。基準キャパシタCrは、複数(この例では4個)の容量素子Ce1~Ce4を含む。複数の容量素子Ce1~Ce4は、第1端e1側において共通に接続される。
【0071】
第3駆動部216は、複数の容量素子Ce1~Ce4に対応する駆動ユニットDU1~DU4に分割して構成される。複数の駆動ユニットDU1~DU4のうち、いくつかを使用し、残りを不使用とすることで、基準キャパシタCrの容量を切り替えることができる。不使用の駆動ユニットDUは、ハイサイドスイッチ、ローサイドスイッチが両方オフに固定される。
【0072】
図11(a)、(b)は、容量検出回路200のレイアウトを説明する図である。基準キャパシタCrは、MIM(Metal Insulator Metal)キャパシタで構成される。図11(a)のレイアウトでは、基準キャパシタCrは、トランジスタが形成されるアクティブ領域400とは別のパッシブ領域402に形成されている。
【0073】
図11(b)は、基準キャパシタCrの一部、あるいは全部が、トランジスタが形成されるアクティブ領域400とオーバーラップして形成される。図10の構成を採用した場合に、図11(b)のレイアウトをとると、以下の問題が発生する。不使用の容量素子Ceが存在する場合、その第2端側はハイインピーダンスとなる。そうすると、その容量素子Ceが、寄生容量としてアクティブ領域の回路と結合する。この結合は、ノイズの増大や、静電容量の検出精度の低下などの問題を引き起こす。
【0074】
図12(a)は、実施例2に係る基準キャパシタCrおよび第3駆動部216の回路図である。基準キャパシタCrは、複数の容量素子Ce1~Ce4と、複数の容量素子Ce1~Ce4の第1端e1側に挿入されたスイッチSWe1~SWe4を含む。第3駆動部216の構成は、図10と同様である。
【0075】
スイッチSWe1~SWe4を追加することにより、不使用の容量素子Ceと、アクティブ領域内の回路の結合は、このスイッチSWeによって切断される。不使用の容量素子Ceに関しては、第2端e2側を、駆動ユニットDUによってハイ電圧またはロー電圧に固定しておくことができる。その結果、図11(b)に示すように、MIM容量を、アクティブ領域とオーバーラップして配置した場合に、ノイズの回り込みを低減し、検出精度の低下を抑制できる。これにより、チップ面積を削減できる。
【0076】
図12(b)は、実施例3に係る基準キャパシタCrおよび第3駆動部216の回路図である。基準キャパシタCrは、複数の容量素子Ce1~Ce4と、複数の容量素子Ce1~Ce4の第1端e1側に挿入されたスイッチSWe1~SWe4を含む。第3駆動部216は、容量素子Ce1~Ce4ごとに分割されておらず、それらに対して共通に1個、設けられている。
【0077】
実施形態では、C/V変換回路210の後段回路ブロックが、A/Dコンバータの場合を説明したが、その限りでない。図13は、変形例に係る容量検出回路200Aの回路図である。この変形例において、C/V変換回路210の後段回路ブロックは、積分器240およびA/Dコンバータ220を備える。C/V変換回路210の出力信号は、積分器240による積算処理により増幅され、A/Dコンバータ220によってデジタル値に変換される。
【符号の説明】
【0078】
100 タッチ式入力装置
110 パネル
SE センサ電極
120 ホストプロセッサ
Cs 静電容量
Cr 基準キャパシタ
200 容量検出回路
210 C/V変換回路
212 第1駆動部
214 第2駆動部
216 第3駆動部
218 コントローラ
220 A/Dコンバータ
230 インタフェース回路
SW11 第1スイッチ
SW12 第2スイッチ
300 容量検出回路
310 C/V変換回路
312 第1駆動部
314 第2駆動部
316 第3駆動部
318 第4駆動部
320 第5駆動部
SW21 第1スイッチ
SW22 第2スイッチ
SW23 第3スイッチ
SW24 第4スイッチ
Cr1 第1基準キャパシタ
Cr2 第2基準キャパシタ
322 コントローラ
330 A/Dコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13