(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
E02D 7/14 20060101AFI20240208BHJP
E02D 7/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E02D7/14
E02D7/16
(21)【出願番号】P 2020057852
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】牧野 博之
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129376(JP,A)
【文献】特開2007-217953(JP,A)
【文献】特開2019-027046(JP,A)
【文献】特開2000-226848(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0030084(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に昇降可能に装着された作業装置と、前記リーダの側面に設けられたリーダ昇降梯子とを備えた杭打機において、
前記リーダは、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結し、隣接するリーダ部材の連結フランジ同士をボルト締結させる複数のフランジ結合部を有し、
前記リーダ昇降梯子は、前記複数のリーダ部材を連結した状態で、複数の梯子部材が前記リーダの側面に上下に連ねて設けられ、
前記梯子部材は、一側端部を前記連結フランジの後端よりも後方側に突出して配置され、
前記リーダ部材の後面側には、前記連結フランジの後端をあらかじめ設定した突出寸法で部分的に突出させた上下左右一対のフランジ突出端が設けられるとともに、各フランジ突出端が接する基準平面と前記連結フランジの後端との間に前記突出寸法分のフランジ隙間が設けられ、
前記梯子部材と前記基準平面との間には、
前記フランジ隙間よりも小さいラダー隙間が設けられていることを特徴とする杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、複数のリーダ部材を連結して形成されるリーダを備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機は、一般に、リーダの側面に梯子(ラダー)を備えており、リーダの前面に沿って昇降するオーガへの掘削スクリューやロッドなどの接続確認や、非常時の補修作業を適時に行えるようになっている。また、長尺のリーダは、輸送に適した長さの複数のリーダ部材に分割して輸送されることから、梯子についてもリーダ部材の分割単位で分割されて、リーダ部材と一体で輸送可能に形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーダ部材を輸送する際には、通常、トラックなどの輸送荷台に横倒しで搭載されることから、不用意に扱って梯子を損傷させるおそれがあった。また、リーダの外形寸法が小さい小型杭打機では、梯子が相対的に大きくなって取付面の内側に収まりきらないという事情もある。そのため、リーダ部材の下に枕木を敷いて空間を作るなど、梯子の損傷を防止するための手当が別途に必要となり、積み込み作業に従事する者の負担になっていた。
【0005】
そこで本発明は、現場移動の際に安全で円滑な輸送を実現するリーダ支持構造を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に昇降可能に装着された作業装置と、前記リーダの側面に設けられたリーダ昇降梯子とを備えた杭打機において、前記リーダは、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結し、隣接するリーダ部材の連結フランジ同士をボルト締結させる複数のフランジ結合部を有し、前記リーダ昇降梯子は、前記複数のリーダ部材を連結した状態で、複数の梯子部材が前記リーダの側面に上下に連ねて設けられ、前記梯子部材は、一側端部を前記連結フランジの後端よりも後方側に突出して配置され、前記リーダ部材の後面側には、前記連結フランジの後端をあらかじめ設定した突出寸法で部分的に突出させた上下左右一対のフランジ突出端が設けられるとともに、各フランジ突出端が接する基準平面と前記連結フランジの後端との間に前記突出寸法分のフランジ隙間が設けられ、前記梯子部材と前記基準平面との間には、前記フランジ隙間よりも小さいラダー隙間が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の杭打機によれば、リーダ部材の後面側に連結フランジの後端を部分的に突出させた上下左右一対のフランジ突出端を設けるとともに、各フランジ突出端が接する基準平面と連結フランジの後端との間に前記突出寸法分のフランジ隙間を設け、さらには梯子部材と基準平面との間にラダー隙間を設けているので、梯子部材をリーダの側面に上下に連ねた使用状態では、その一側端部を連結フランジの後端よりも後方側に位置させて足場機能を十分に確保でき、一方、梯子部材をリーダ部材と一体で分離した部品状態では、4箇所のフランジ突出端を支持部とすることで、例えば、梯子部材を輸送荷台の上面から離して保持できる。これにより、リーダ部材の下に枕木を敷くなどの不安定な作業がなくなり、現場移動の際に安全で円滑な輸送が実現される。
【0008】
また、連結フランジの形状を少し変えるだけの簡単な構造であるため、リーダ自体の重量が大きく増加することはなく、既存品との間でリーダ部材の互換性を確保することも容易である。とりわけ、製造段階では、4箇所のフランジ突出端で支持することで、リーダ部材のハンドリング性が向上し、これに加えて、基準平面を参照した機械加工、例えば、ラックギヤの取付面の切削加工などが精度よく安定して行えることから、安価で製作性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図3は、本発明の杭打機を示す図である。杭打機11は、
図1及び
図2に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、リーダ15の後方で油圧配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ19が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト20が搭載されている。
【0011】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、左右側面には複数の梯子部材を上下に連ねて設けたリーダ昇降梯子21を備えている。また、リーダ15の後面にはシリンダブラケット22を設けており、該シリンダブラケット22に起伏シリンダ16のシリンダロッドが接続ピン23を介して回動可能に連結されている。これにより、油圧で起伏シリンダ16を伸縮作動させて、リーダ15をベースマシン14の前部に略鉛直状に起立させた状態(
図1)や、リーダ15を起伏シリンダ16とともにベースマシン14上に倒伏させた状態(図示せず)に姿勢を変化させることが可能である。
【0012】
また、リーダ15は、前記リーダサポート17に設けられたベースマシン幅方向の支軸24に回動可能に取り付けられた下部リーダ25と、該下部リーダ25の上部に連結される中間リーダ26と、該中間リーダ26の上部に連結される上部リーダ27とに分割形成され、さらに、下部リーダ25は、下部第1リーダ部材25aと下部第2リーダ部材25bとに分割形成され、中間リーダ26は、中間第1リーダ部材26aと中間第2リーダ部材26bとに分割形成され、上部リーダ27は、上部第1リーダ部材27aと上部第2リーダ部材27bとに分割形成されている。
【0013】
各リーダ部材は、隣接する部分において、リーダ15の断面形状に対応した略矩形環状の連結フランジ28a,28a同士を当接させて形成され、かつ、複数のボルト及びナットを使用して安定的に結合されるフランジ結合部28を有して形成されている。各フランジ結合部28は、連結フランジ28aの形状や、ボルト孔のサイズ、配置ピッチなどを共通にした同一構造であり、ボルト及びナットを外してフランジ結合を解除することにより、リーダ部材を多数で、例えば、上部リーダ27について上部第1リーダ部材27aと上部第2リーダ部材27bとの2部材で構成した長尺仕様(
図1)と、リーダ部材を少数で、例えば、上部リーダ27を除き、更には中間第2リーダ部材26bも除いて構成した短尺仕様(図示せず)とに組み替え可能になっている。
【0014】
上部リーダ27の上端部にはアダプタ29を介してトップシーブ30が、下部リーダ25の下部前方には振止部材31がそれぞれ配置されており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品として、複数のラックギヤ部材32aからなるラックギヤ32が、両側面前端部には、複数のガイドパイプ部材33aからなる左右一対のガイドパイプ33,33が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられている。
【0015】
作業装置の一例であるオーガ34は、前記ガイドパイプ33,33に摺接する左右一対のガイドギブ34a,34aが後方に突出して設けられるとともに、前記ラックギヤ32の両側に設けられている歯列32bに歯合する左右一対のピニオン(図示せず)をオーガ昇降用油圧モータ34bで回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。この杭打機11を工事現場で使用する場合には、例えば、施工部材として鋼管杭が使用される。鋼管杭は、ギヤケース34cを貫通して取り付けたドライブロッド35の下端にロッドキャップ(図示せず)を介して連結され、オーガ駆動用油圧モータ34dの駆動を受けて、ロッドキャップを回転させながらオーガ34を降下させることにより地中に圧入される。
【0016】
このように構成された杭打機11を輸送する際には、通常、リーダ15を後方に倒した輸送姿勢でトレーラに積載されるが、輸送条件に応じて、例えば、上部リーダ27を取り外してベースマシン14とは別々に輸送される。このとき、部品状態の上部第1リーダ部材27a及び上部第2リーダ部材27bは、ラックギヤ部材32aが取り付けられた前面を上向きとする横倒し状態で、トラックの荷台(輸送荷台)に搭載される。ここで、各リーダ部材27a,27bの左右側面に備わる梯子部材21a,21aは、安全上必要な幅寸法が求められ、配置についても取付スペースとの関係で制約を受けやすいことから、その一側端部が連結フランジ28aの後端よりも後方側に突出している。そのため、各リーダ部材27a,27bを輸送する際には、梯子部材21aと輸送荷台との接触を回避するための手当が必要となる。
【0017】
そこで、このようなリーダ15の分割輸送が行われる杭打機11では、安全で円滑な輸送を実現すべく、各リーダ部材の後面側に共通のリーダ支持構造を備えている。以下では、リーダ支持構造について、比較的に長さのある上部第2リーダ部材27bを例に挙げて説明する。
【0018】
リーダ支持構造は、上下一対の連結フランジ28a,28aのフランジ後端28b,28bにおいて、左右フランジ側端28c,28dに近い部分を後方へそれぞれ突出させた上下左右一対のフランジ突出端36を有している。各フランジ突出端36は、製造段階で鋼板から部材取りをするときに、直線状のフランジ後端28bと一体的に切り出され、あらかじめ設定した突出寸法で、例えば20mm突出した位置で、幅方向(左右方向)に直線状に50mm延びている。これにより、リーダ部材27bの後面側には、各フランジ突出端36が接する基準平面Sと、上下一対のフランジ後端28b,28bとの間に前記突出寸法分(20mm)のフランジ隙間C1がそれぞれ設けられる。
【0019】
左右の梯子部材21a,21aは、前記リーダ支持構造の位置に対応してそれぞれ配置されている。具体的には、リーダ部材27bの側面(取付面)及び連結フランジ28aのフランジ面に対して離間させて、その一側端部(縦桟)をフランジ後端28bよりも後方側に突出して配置されている。この取付状態では、梯子部材21aと前記基準平面Sとの間に、例えば12mmの隙間を有するラダー隙間C2を設けている。
【0020】
リーダ部材27bを輸送荷台に搭載するには、まず、クレーン操作によってリーダ部材27bの後面を僅かに後方側に傾けた吊り状態とし、この状態で輸送荷台の上方に移動させる。次に、クレーンを巻下操作してリーダ部材27bの下端を、つまり一端側の左右フランジ突出端36,36を荷台上面に当接させて、リーダ部材27bの回転方向の動きを規制する。その後、リーダ部材27bを横に倒してゆき、他端側の左右フランジ突出端36,36を荷台上面に当接させる。これにより、
図3に示すように、リーダ部材27bが輸送荷台に横倒しとなった状態で、すなわち、4箇所のフランジ突出端36によって作られる基準平面Sと荷台上面Pとが合わさった支持状態で搭載される。その結果、左右の梯子部材21a,21aと荷台上面Pとの間には、梯子部材21aの全長にわたって均一なラダー隙間C2が設けられる。
【0021】
このように、本発明の杭打機11によれば、リーダ部材27bの後面側に連結フランジ28aのフランジ後端28bを部分的に突出させた上下左右一対のフランジ突出端36を設けるとともに、各フランジ突出端36が接する基準平面Sとフランジ後端28bとの間に前記突出寸法分のフランジ隙間C1を設け、さらには梯子部材21aと基準平面Sとの間にラダー隙間C2を設けているので、梯子部材21aをリーダ15の側面に上下に連ねた使用状態では、その一側端部をフランジ後端28bよりも後方側に位置させて足場機能を十分に確保でき、一方、梯子部材21aをリーダ部材27bと一体で分離した部品状態では、4箇所のフランジ突出端36を支持部とすることで、例えば、梯子部材21aをトラックの荷台上面Pからラダー隙間C2分だけ離して保持できる。これにより、リーダ部材27bの下に枕木を敷くなどの不安定な作業がなくなり、現場移動の際に安全で円滑な輸送が実現される。
【0022】
また、連結フランジ28aの形状を少し変えるだけの簡単な構造であるため、リーダ自体の重量が大きく増加することはなく、既存品との間でリーダ部材27bの互換性を確保することも容易である。とりわけ、製造段階では、4箇所のフランジ突出端36で支持することで、リーダ部材27bのハンドリング性が向上し、これに加えて、基準平面Sを参照した機械加工、例えば、ラックギヤ部材32aの取付面の切削加工などが精度よく安定して行えることから、安価で製作性に優れたものである。
【0023】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、フランジ突出端は、連結フランジと一体で形成する他、別途に板片を設けた溶接構造によって形成してもよく、その突出量は、梯子部材との位置関係を考慮して、例えば、フランジ隙間よりも小さいラダー隙間が確保できる程度であればよい。また、所望の支持強度をもたせてフランジ突出端の表面を小さくすれば、機械加工前にバリを除去する作業が短時間で行え、載置台に対する座りも良好なものとなる。さらに、輸送荷台に搭載する際は、一方側の左右フランジ突出端を先に着地させるだけでリーダ部材を安定状態に置くことができるので、積み込み作業に熟練を必要としない点でも有利である。
【符号の説明】
【0024】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管支持部材、19…ジャッキ、20…カウンタウエイト、21…リーダ昇降梯子、21a…梯子部材、22…シリンダブラケット、23…接続ピン、24…支軸、25…下部リーダ、25a…下部第1リーダ部材、25b…下部第2リーダ部材、26…中間リーダ、26a…中間第1リーダ部材、26b…中間第2リーダ部材、27…上部リーダ、27a…上部第1リーダ部材、27b…上部第2リーダ部材、28…フランジ結合部、28a…連結フランジ、28b…フランジ後端、28c,28d…フランジ側端、29…アダプタ、30…トップシーブ、31…振止部材、32…ラックギヤ、32a…ラックギヤ部材、32b…歯列、33…ガイドパイプ、33a…ガイドパイプ部材、34…オーガ、34a…ガイドギブ、34b…オーガ昇降用油圧モータ、34c…ギヤケース、34d…オーガ駆動用油圧モータ、35…ドライブロッド、36…フランジ突出端