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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】埋設物防護具および設置構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/09 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E01C23/09 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020075950
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173009
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000222015
【氏名又は名称】株式会社ユアテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】見立 純一
(72)【発明者】
【氏名】深谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸
(72)【発明者】
【氏名】北村 祐介
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-211883(JP,A)
【文献】特開2005-282157(JP,A)
【文献】特開2005-171506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材および前記外殻部材の周方向の少なくとも一部において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されており、
前記内殻部材が合成樹脂製であり、且つ、前記外殻部材が金属製であることを特徴とする埋設物防護具。
【請求項2】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材および前記外殻部材の周方向の少なくとも一部において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されており、
前記空隙は前記内殻部材および前記外殻部材の周方向全体に亘って形成されていることを特徴とする埋設物防護具。
【請求項3】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材および前記外殻部材の周方向の少なくとも一部において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されており、
前記外殻部材の端部が閉塞部材によって閉塞されているとともに、前記内殻部材外面が前記外殻部材内面から周方向全体で離隔するように前記内殻部材の端部が前記閉塞部材に支持されていることを特徴とする埋設物防護具。
【請求項4】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材および前記外殻部材の周方向の少なくとも一部において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されており、
前記内殻部材は略円形の横断面形状を有し、前記外殻部材は略矩形の横断面形状を有することを特徴とする埋設物防護具。
【請求項5】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材および前記外殻部材の周方向の少なくとも一部において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されており、
前記シート部材は、横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記内殻部材に収容されていることを特徴とする埋設物防護具。
【請求項6】
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の埋設物防護具。
【請求項7】
前記外殻部材は、前記内殻部材よりも薄肉であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の埋設物防護具。
【請求項8】
前記内殻部材は合成樹脂製であり、前記外殻部材は金属製であることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の埋設物防護具。
【請求項9】
前記シート部材は、横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記内殻部材に収容されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の埋設物防護具。
【請求項10】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する筒部材と、を備え、
前記シート部材は、横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられ内殻部材に収容されていることを特徴とする埋設物防護具。
【請求項11】
前記シート部材は、前記内殻部材の内部で周方向に転動しないように保持されていることを特徴とする請求項5、9または10に記載の埋設物防護具。
【請求項12】
前記シート部材の折り曲げ姿勢の向きを外部に表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項5および9から11のいずれか一項に記載の埋設物防護具。
【請求項13】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の合成樹脂製の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の金属製の外殻部材と、を備え、
前記外殻部材は、前記内殻部材よりも薄肉であることを特徴とする埋設物防護具。
【請求項14】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具を設置した設置構造であって、
前記埋設物防護具は、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材の少なくとも地上側を向く外面上において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されており、
前記内殻部材が合成樹脂製であり、且つ、前記外殻部材が金属製であることを特徴とする設置構造。
【請求項15】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具を設置した設置構造であって、
前記埋設物防護具は、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記シート部材は、前記埋設物防護具の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記内殻部材に収容され、前記シート部材の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されていることを特徴とする設置構造。
【請求項16】
地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具を設置した設置構造であって、
前記埋設物防護具は、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する筒部材と、を備え、
前記シート部材は、前記埋設物防護具の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記筒部材に収容され、前記シート部材の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されていることを特徴とする設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下埋設物を道路カッター等の土木作業用工具から防護するための埋設物防護具、および、その設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管や配線などの地下埋設物が道路の舗装材の下に埋設されている。道路工事において道路カッターによって舗装材を切断する際、該道路カッターにより誤って地下埋設物を切断等して損傷させることがあった。このような損傷を防止すべく、種々の埋設物防護具が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、回転する舗装切断カッターの刃(道路カッター)を停止させ防護対象埋設物の損傷を阻止する地中埋設防護具を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1の地中埋設防護具は、外装が剛性体からなる中空平板状の箱体(1)内に、この箱体(1)の内底面に敷き詰める形状の高強度繊維シート(2)をスペーサ部材(5)により箱体(1)の底面から浮かせて配置させ、高強度繊維シート(2)上に載置される弾性体(7)が箱体(1)の天井との間で箱体(1)に収納された部材を一時的に押圧保持するように収めたものである。地中埋設物防護具は、防護対象埋設物(15)と舗装路面(12)との間の地中に埋設される。舗装切断カッター刃(11)が該防護具に切り込まれた場合に、該防護具全体が切断される前にカッター刃(11)の溝に高強度繊維シート(2)が絡まり、カッター刃(11)が箱体(1)に作った切溝に次々と高強度繊維シート(2)と供に食い込み、カッター刃(11)の回転に抵抗する。これにより舗装切断カッターの過負荷保護装置が働きカッター刃(11)の回転を止めることで下方に埋設された防護対象埋設物(15)の損傷を防ぐ。
【0004】
特許文献2は、道路カッターに対する地下埋設物の切断防護材を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献2の符号を示す。特許文献2の切断防護材(1)は、好ましくは塩化ビニルやポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製のパイプ材(4)の外周に、コンクリート(5)が一定以上の被り厚T(15mm以上)で被覆されており、前記パイプ材(4)の中空部内の長手方向に、道路カッター(3)では切断し難い難切断性でもつれ易い長繊維材(6)を非拘束の状態で複数本挿入して構成されている。地下埋設物(2)を埋設する工事に際し、その地下埋設物(2)よりも少し地表面に近い位置に、且つ同地下埋設物(2)に沿う両側位置に埋設して使用される。その後に発生した道路工事等に際し、作業員が地下埋設物(2)の存在について何の予備知識もなく道路カッター(3)を運転して道路の切断を行った場合でも、カッター(3)が地下埋設物(2)に接近すると、カッター(3)が切断防護材(1)のコンクリート(5)を切断し、更にパイプ材(4)の切断にまで進むと、同パイプ材(4)の中空部内に非拘束状態に挿入された難切断性でもつれ易い長繊維材(6)がほとんど切断されることなくカッター(3)の刃先にまとわりつき、コンクリート(5)の切り口(7)からズルズルと引き出されるような状態となる。その結果、カッター(3)に対する摩擦力が絶大なものとなり、カッター(3)の回転を著しく困難にし、又は停止させる現象を呈して、切断作業は中断するのをやむなきに至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-211883号公報
【文献】特開2004-360867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の地中埋設防護具では、道路カッターで金属製の板材(箱体)を切断すると、切溝に金属バリが発生し易い。それ故、高強度繊維シートは、道路カッターの刃に十分に絡まる前に切溝の金属バリに引っ掛かって切溝から引き出されない場合が多々あることが不具合としてあった。このように、高強度繊維シートが切溝から引き出されなかった場合、刃の回転を止めることができず、地下埋設物の防護機能を確実に発揮できないことが問題であった。他方、特許文献2の切断防護材は、金属板を用いないかわりにコンクリート製の外装材を用いたものである。当該切断防護材では、金属バリの発生による問題は生じない。しかしながら、切断防護材は、15mm厚以上のコンクリートの外装材を必要とすることから、重量および外形が大きくなって取り扱いが不便になることが問題であった。
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一方を解決するためになされたものであり、その目的は、地下埋設物の防護機能をより確実に発揮し、および/または、軽量且つコンパクトで取り扱い容易な埋設物防護具、および、その設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態の埋設物防護具は、地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材および前記外殻部材の周方向の少なくとも一部において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記空隙は前記内殻部材および前記外殻部材の周方向全体に亘って形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記外殻部材は、前記内殻部材よりも薄肉であることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記内殻部材は合成樹脂製であり、前記外殻部材は金属製であることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記外殻部材の端部は、閉塞部材によって閉塞されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記内殻部材外面が前記外殻部材内面から周方向全体で離隔するように前記内殻部材の端部が前記閉塞部材に支持されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記内殻部材は、略円形の横断面形状を有し、前記外殻部材は略矩形の横断面形状を有することを特徴とする。
【0016】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記シート部材は、横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記内殻部材に収容されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一形態の埋設物防護具は、地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する筒部材と、を備え、
前記シート部材は、横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記内殻部材に収容されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記シート部材は、前記内殻部材の内部で周方向に転動しないように保持されていることを特徴とする。
【0019】
本発明のさらなる形態の埋設物防護具は、上記形態の埋設物防護具において、前記シート部材の折り曲げ姿勢の向きを外部に表示する表示部をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の一形態の埋設物防護具は、地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具であって、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の合成樹脂製の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の金属製の外殻部材と、を備え、
前記外殻部材は、前記内殻部材よりも薄肉であることを特徴とする。
【0021】
本発明の一形態の設置構造は、地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具を設置した設置構造であって、
前記埋設物防護具は、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記内殻部材の少なくとも地上側を向く外面上において、前記内殻部材外面と前記外殻部材内面との間に空隙が形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の一形態の設置構造は、地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具を設置した設置構造であって、
前記埋設物防護具は、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する中空筒状の内殻部材と、
前記内殻部材を内部に収容する剛性且つ中空筒状の外殻部材と、を備え、
前記シート部材は、前記埋設物防護具の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記内殻部材に収容され、前記シート部材の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の一形態の記載の設置構造は、地下埋設物を道路カッターから防護するための埋設物防護具を設置した設置構造であって、
前記埋設物防護具は、
前記道路カッターの回転刃と接触したときに前記回転刃に絡みつくように構成されたシート部材と、
前記シート部材を包囲する防水性または低透水性の袋部材と、
前記シート部材を非拘束状態で内部に収容する筒部材と、を備え、
前記シート部材は、前記埋設物防護具の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて前記筒部材に収容され、前記シート部材の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一形態(第0008段落)の埋設物防護具によれば、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、道路カッターの回転刃が剛性の外殻部材を切断し、内殻部材を切り開いてシート部材に到達した後、非拘束状態のシート部材が回転刃によって絡み取られて外殻部材の切れ目に到達し、さらに、外部に引き出されながら回転刃に絡みついて、道路カッターの動作を停止させる。埋設物防護具を内殻部材および外殻部材による2重筒構造の筒部材としたことにより、回転刃が外殻部材を切断した後、内殻部材を切断してシート部材に到達するまでに僅かな時間差が生じる。本発明では、この時間差に加えて、内殻部材と外殻部材との間に空隙が形成されていることにより、回転刃に絡み取られてから外殻部材の切れ目に到達するまでの時間をより長く確保し、シート部材が切れ目から引き出される前段階でのシート部材の回転刃への絡み量を増加させることができる。すなわち、本発明では、外殻部材内部でシート部材が回転刃によって巻き取られることで、コンクリート製の外装材を用いることなく、シート部材を外殻部材の切れ目からより確実に引き出すことが可能となる。したがって、本発明の埋設物防護具は、軽量且つコンパクトで取り扱い容易であるとともに、地下埋設物の防護機能をより確実に発揮するものである。
【0025】
本発明のさらなる形態(第0009段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、防水性または低透水性の袋部材がシート部材を包囲していることにより、地中でシート部材が浸水することを防止し、且つ、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、水に曝される前に回転刃に絡みつくことが可能である。
【0026】
本発明のさらなる形態(第0010段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、周方向全体に亘って空隙が形成されていることから、道路カッターの回転刃が周方向のいずれの外面に接触したとしても、防護機能を安定して発揮することができる。
【0027】
本発明のさらなる形態(第0011段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、外殻部材が内殻部材よりも薄肉であることにより、埋設物防護具の外形をよりコンパクトなものとすることができる。
【0028】
本発明のさらなる形態(第0012段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、内殻部材が合成樹樹脂製であり、外殻部材が金属製であることにより、埋設物防護具を軽量化することができる。
【0029】
本発明のさらなる形態(第0013段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、外殻部材の端部が閉塞部材によって閉塞されていることにより、内部に水や土などが侵入することを防止することができる。
【0030】
本発明のさらなる形態(第0014段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、閉塞部材が内殻部材を外殻部材から浮かせて保持することにより、簡易な構成で周方向全体に亘る空隙を形成することができる。
【0031】
本発明のさらなる形態(第0015段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、埋設物防護具の外形が角型となることから、設置後に埋設物防護具が転がることを防止することができる。さらに、丸型の内殻部材と角型の外殻部材との間に、(丸型同士の場合と比べて)より広い空隙を形成することができ、シート部材の回転刃への絡み量をより増やすことができる。
【0032】
本発明のさらなる形態(第0016段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、シート部材が横断面視において略U字状または略V字状の姿勢をとることから、回転刃が当接したときにシート部材を直状に展開しながら回転刃に巻き付けて外部に容易に引き出すことが可能である。
【0033】
本発明の一形態(第0017段落)の埋設物防護具によれば、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、回転刃が筒部材の筒壁を切り開いてシート部材に到達した後、非拘束状態のシート部材が回転刃によって絡み取られ、そして、筒部材から外部に引き出されながら回転刃に絡みつくことで、道路カッターの動作を停止させる。また、防水性または低透水性の袋部材がシート部材を包囲していることにより、地中でシート部材が浸水することを防止し、且つ、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、水に曝される前に回転刃に絡みつくことが可能である。これにより、シート部材の水濡れによる絡みつき量の低下が抑えられる。さらに、シート部材が横断面視において略U字状または略V字状の姿勢をとることから、回転刃が当接したときにシート部材を直状に展開しながら回転刃に巻き付けて外部に容易に引き出すことが可能である。すなわち、本発明は、上記構成によって、シート部材を筒部材の切れ目からより確実に引き出すことが可能となり、地下埋設物の防護機能をより確実に発揮するものである。
【0034】
本発明のさらなる形態(第0018段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、シート部材が内殻部材の内部で周方向に転動しないように保持されていることから、略U字状または略V字状の開放端を回転刃に当接させ易い位置に配置するように、シート部材の姿勢を維持することができる。
【0035】
本発明のさらなる形態(第0019段落)の埋設物防護具によれば、上記発明の効果に加え、略U字状または略V字状の開放端を回転刃に当接させ易い位置に配置するように、シート部材の姿勢を視覚的に把握することができる。
【0036】
本発明の一形態(第0020段落)の埋設物防護具によれば、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、道路カッターの回転刃が剛性の外殻部材を切断し、内殻部材を切り開いてシート部材に到達した後、非拘束状態のシート部材が回転刃によって絡み取られて外殻部材の切れ目に到達し、さらに、外部に引き出されながら回転刃に絡みついて、道路カッターの動作を停止させる。また、本発明は、シート部材を非拘束状態で内部に収容する合成樹脂製の内殻部材の外方に金属製の外殻部材を配置し、外殻部材を内殻部材よりも薄肉としたことを特徴とする。すなわち、本発明では、埋設物防護具を内殻部材および外殻部材による2重筒構造の筒部材としたことにより、回転刃が外殻部材を切断した後、内殻部材を切断してシート部材に到達するまでに僅かな時間差が生じ、結果として、外殻部材の切れ目から引き出される前段階でのシート部材の回転刃への絡み量を増加させることができる。この絡み量の増加により、シート部材を外殻部材の切れ目からより確実に引き出すことが可能となる。さらに、本発明の埋設物防護具は、外殻部材を内殻部材よりも薄肉としたことにより、軽量且つコンパクトで取り扱い容易に構成されている。
【0037】
本発明の一形態(第0021段落)に記載の設置構造によれば、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、道路カッターの回転刃が剛性の外殻部材を切断し、内殻部材を切り開いてシート部材に到達した後、非拘束状態のシート部材が回転刃によって絡み取られて外殻部材の切れ目に到達し、さらに、外部に引き出されながら回転刃に絡みついて、道路カッターの動作を停止させる。埋設物防護具を内殻部材および外殻部材による2重筒構造の筒部材としたことにより、回転刃が外殻部材を切断した後、内殻部材を切断してシート部材に到達するまでに僅かな時間差が生じる。本発明では、この時間差に加えて、内殻部材と外殻部材との間に空隙が形成されていることにより、シート部材が回転刃に絡み取られてから外殻部材の切れ目に到達するまでの時間または距離をより長く確保し、シート部材が切れ目から引き出される前段階でのシート部材の回転刃への絡み量を増加させることができる。特に、多くの場合、回転刃が埋設物防護具に上方から接触するので、内殻部材の少なくとも地上側を向く外面上において空隙を設けることにより、効果的に絡み量を増加させることができる。すなわち、本発明では、外殻部材内部でシート部材が回転刃によって巻き取られることで、コンクリート製の外装材を用いることなく、シート部材を外殻部材の切れ目からより確実に引き出すことが可能となる。したがって、本発明の設置構造は、地下埋設物の防護機能をより確実に発揮するものである。
【0038】
本発明の一形態(第0022段落)の設置構造によれば、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、道路カッターの回転刃が剛性の外殻部材を切断し、内殻部材を切り開いてシート部材に到達した後、非拘束状態のシート部材が回転刃によって絡み取られて外殻部材の切れ目に到達し、さらに、外部に引き出されながら回転刃に絡みついて、道路カッターの動作を停止させる。埋設物防護具を内殻部材および外殻部材による2重筒構造の筒部材としたことにより、回転刃が外殻部材を切断した後、内殻部材を切断してシート部材に到達するまでに僅かな時間差が生じる。結果として、外殻部材の切れ目から引き出される前段階でのシート部材の回転刃への絡み量を増加させることができる。さらに、本発明では、シート部材は、埋設物防護具の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて内殻部材に収容され、シート部材の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されている。これにより、埋設物防護具に上方から接触した回転刃が略U字状または略V字状の開放端に当接し、シート部材を直状に展開しながら回転刃に巻き付けて、外殻部材の切れ目から外部に容易に引き出すことが可能である。すなわち、本発明では、外殻部材内部でシート部材が回転刃によって巻き取られることで、コンクリート製の外装材を用いることなく、シート部材を外殻部材の切れ目からより確実に引き出すことが可能となる。したがって、本発明の設置構造は、地下埋設物の防護機能をより確実に発揮するものである。
【0039】
本発明の一形態(第0023段落)の設置構造によれば、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、回転刃が筒部材の筒壁を切り開いてシート部材に到達した後、非拘束状態のシート部材が回転刃によって絡み取られ、そして、筒部材から外部に引き出されながら回転刃に絡みつくことで、道路カッターの動作を停止させる。また、防水性または低透水性の袋部材がシート部材を包囲していることにより、地中でシート部材が浸水することを防止し、且つ、埋設物防護具に道路カッターが接触した際、水に曝される前に回転刃に絡みつくことが可能である。これにより、シート部材の水濡れによる絡みつき量の低下が抑えられる。さらに、本発明では、シート部材は、埋設物防護具の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて内殻部材に収容され、シート部材の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されている。これにより、埋設物防護具に上方から接触した回転刃が略U字状または略V字状の開放端に当接し、シート部材を直状に展開しながら回転刃に巻き付けて、筒部材の切れ目から外部に容易に引き出すことが可能である。すなわち、本発明は、上記構成によって、シート部材を筒部材の切れ目からより確実に引き出すことが可能となる。したがって、本発明の設置構造は、地下埋設物の防護機能をより確実に発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態の埋設物防護具の概略斜視図。
図2図1の埋設物防護具の(a)正面図および(b)平面図。
図3図1の埋設物防護具のA-A横断面図。
図4図1の埋設物防護具の(a)B-B縦断面図、および(b)C-C縦断面図。
図5図1の埋設物防護具の分解斜視図。
図6図1の埋設物防護具の閉塞部材の(a)正面からの斜視図、(b)背面からの斜視図、(c)平面図、(d)側面図および(e)D-D断面図。
図7】本発明の一実施形態の埋設物防護具により道路カッターの回転刃から地下埋設物を防護する態様を示す模式図であって、回転刃が埋設物防護具に接近して外殻部材を切断する段階を示す。
図8】本発明の一実施形態の埋設物防護具により道路カッターの回転刃から地下埋設物を防護する態様を示す模式図であって、回転刃に埋設物防護具のシート部材が絡みついて回転刃の回転を止める段階を示す。
図9】本発明の一実施形態の埋設物防護具による第1の設置構造の概略平面図。
図10図9の第1の設置構造のE-E断面図。
図11】本発明の一実施形態の埋設物防護具による埋設物防護装置の(a)上方から見た斜視図、および(b)下方から見た斜視図。
図12図11の埋設物防護装置の(a)平面図、(b)正面図、および(c)底面図。
図13図12の埋設物防護装置のF-F断面図。
図14図11の埋設物防護装置の一部分解斜視図。
図15図11の埋設物防護装置の基板の(a)上方から見た斜視図、および(b)下方から見た斜視図。
図16図15の基板の(a)平面図、(b)正面図、および(c)底面図。
図17】本発明の一実施形態の埋設物防護装置による第2の設置構造の概略平面図。
図18図17の第2の設置構造のG-G断面図。
図19図17の第2の設置構造のH-H断面図。
図20】本発明の一実施形態の埋設物防護具による別使用例を示す概略断面図。
図21】本発明の別実施形態の埋設物防護装置の埋設物防護具の概略斜視図。
図22図21の埋設物防護具の(a)正面図および(b)平面図。
図23図21の埋設物防護具の(a)I-I横断面図および(b)J-J縦断面図。
図24図21の埋設物防護具により道路カッターの回転刃から地下埋設物を防護する態様を示す模式図であって、回転刃が埋設物防護具に接近して外殻部材を切断する段階を示す。
図25図21の埋設物防護具により道路カッターの回転刃から地下埋設物を防護する態様を示す模式図であって、回転刃が埋設物防護具に接近して外殻部材を切断する段階を示す。
図26】本発明の埋設物防護具の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図または概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0042】
本発明の一実施形態の埋設物防護具100は、道路の舗装材の下に埋設された配線・配管材等の地下埋設物を道路カッター等の土木作業用工具から防護することに用いられる。特には、本実施形態の埋設物防護具100は、舗装材と地下埋設物との間に介在するように埋設され、舗装材を切断する道路カッターが該埋設物防護具100に接触したときに、道路カッターの動作を直接的または間接的に停止させ、道路カッターが地下埋設物に誤って到達することを防止するものである。図1乃至図5を参照して、埋設物防護具100の構成を詳細に説明する。図1は、埋設物防護具100の概略斜視図である。図2(a),(b)は、埋設物防護具100の正面図および平面図である。図3は、埋設物防護具100のA-A横断面図である。図4(a),(b)は、埋設物防護具100のB-B縦断面図およびC-C縦断面図である。図5は、埋設物防護具100の分解斜視図である。
【0043】
埋設物防護具100は、図1から図5に示すように、所定の長さで延在する角棒状の外形状を有する長尺体である。埋設物防護具100は、シート部材101と、該シート部材101を内部に収容する中空筒状の筒部材102とを備える。
【0044】
シート部材101は、埋設物防護具100の長手方向全体に亘って延在する柔軟性のシートである。シート部材101は、図示しないが、展開されたときに矩形状を有しており、筒部材102内部において、横断面視VまたはU字になるように折り曲げられている。本実施形態では、図3に示すように、横断面視において、シート部材101は2重に重ね合わされた上で略U字状または略V字状に折り曲げられている。また、シート部材101は、道路カッターの回転刃と接触したときに回転刃の溝に引っ掛かり、回転刃に絡みつく素材で構成されている。本実施形態では、シート部材101は、高強度繊維シートによって形成され得る。より具体的には、シート部材101は、アラミド繊維の織布もしくは不織布、または、アラミド繊維を混入した織布もしくは不織布等から形成され得る。なお、シート部材が道路カッターの回転刃に絡みつくことが可能であれば、上記素材に限定されないことは言うまでもない。
【0045】
また、シート部材101は、袋部材105によって密封式に包囲されている。袋部材105は、防水性または低浸水性材料からなり、内部への浸水を防止するように機能する。つまり、袋部材105は、地中でシート部材101が浸水することを防止し、埋設物防護具100に道路カッターが接触した際、水に曝される前に(乾燥した状態で)回転刃に絡みつくことを可能とする。当該袋部材105は、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン等の一般的な合成樹脂製の袋から選択され得る。袋部材105は、道路カッターの回転刃が接触した際、すぐに破ける脆弱性を有している。
【0046】
袋部材105内に密封されたシート部材101は、筒部材102内部に非拘束状態で収容されている。非拘束状態とは、シート部材101が、筒部材102に完全に固定されておらず、筒部材102内部で移動または変位可能な状態を意味する。また、シート部材101は、筒部材102(内殻部材103)内面に当接するように構成されている。シート部材101は、略U字状または略V字状に折り曲げられたシート部材101のこわさ(コシまたは弾力)により、折り曲げ姿勢を維持しつつ、筒部材102内部で周方向に転動しないように保持されている。
【0047】
筒部材102は、所定の長さで延在し、両端で開放した二重筒状の筒状体である。筒部材102は、合成樹脂製(または非金属製)の内殻部材103と、該内殻部材103を空隙を隔てて内部に収容する金属製の外殻部材104とから構成されている。つまり、筒部材102は、互いに別体の且つ異なる材質の部材として、その筒壁同士が一体的に接着もしくは接合せずに構成された内殻部材103および外殻部材104による2重筒構造を有する。なお、外殻部材104が金属製筒からなることにより、合成樹脂製の内殻部材103が土圧やアスファルトからの熱で変形することが抑えられる。特には、内殻部材103と外殻部材104との間の空隙によって、熱の伝達がより一層低減される。また、内殻部材103は断面視略円形状の丸型の筒体からなり、外殻部材104は断面視略正方形状の角型の筒体からなる。内殻部材103は、回転刃により比較的切断容易であり、切断面にバリが発生し難い合成樹脂材料からなる。外殻部材104は、道路カッターの回転刃に接触したときにその回転を遅らせる程度の剛性を有し、内殻部材103よりも高い剛性を有する鋼板等により形成される。また、外殻部材104は、内殻部材103よりも薄肉に形成されている。図3および図4に示すように、内殻部材103および外殻部材104は同軸上に配置され、内殻部材103および外殻部材104の周方向全体において、内殻部材103外面と外殻部材104内面との間に空隙が形成されている。この空隙は、筒部材102の長手方向ほぼ全体に亘って連続している。内殻部材103は断面円形状を有し、且つ、外殻部材104は断面矩形状を有することから、図3および図4(b)に示すように、外殻部材104の角部の4箇所において、空隙の大きさ(径方向に沿った内殻部材103外面と外殻部材104内面との間の距離)が最大となる。
【0048】
筒部材102の両端部は、閉塞部材106によってそれぞれ閉塞されている。図6(a)~(e)は、閉塞部材106の正面からの斜視図、背面からの斜視図、正面図、側面図およびD-D断面図である。閉塞部材106は、筒部材102の両端を閉鎖する矩形平板状の閉塞部106aを有する。閉塞部106aは、筒部材102側を向く内面、および、その反対の外面を有する。閉塞部106aの外形状は、外部材104の外周形状と同一である。また、閉塞部106aの内面周縁近傍には、角筒状に延伸する第1連結部106bが設けられている。第1連結部106bは、外殻部材104端部に内挿されて嵌着するように構成されている。さらに、閉塞部106aの内面には、第1連結部106bの内側において、円筒状に延伸する第2連結部106cが設けられている。第2連結部106cは、内殻部材103端部に外挿されて嵌着するように構成されている。すなわち、閉塞部材106は、筒部材102を閉塞するときに、内殻部材103および外殻部材104を併せて保持し、両者を周方向全体に亘って離隔させるように機能する。また、閉塞部材106は、溶接等の手段を用いることなく、内殻部材103および外殻部材104を容易に組み付けることを可能とする。
【0049】
閉塞部106aの外面には、矢印状の表示部107が設けられている。表示部107は、シート部材101の折り曲げ姿勢の向きを外部に表示するものである。換言すると、表示部107は、埋設物防護具100を載置する向きを示している。ここで、表示部107の矢印の向きと、シート部材101の略U字形状または略V字形状の開放端が同じ向きになるように、閉塞部材106が筒部材102に装着される。後述するように、埋設物防護具100は、シート部材101の略U字形状または略V字形状の開放端が上方を向くように設置される。
【0050】
次いで、図7および図8を参照して、道路カッターの回転刃Xが埋設物防護具100に接触したときに、該埋設物防護具100によって道路カッターの動作を停止させる態様について説明する。当該説明において、埋設物防護具100は、例示的に、道路15の表面を舗装する舗装材18の直下且つ地下埋設物12の上方に埋設されている。また、舗装材18と地下埋設物12との間にはコンクリート部17が打設されている。なお、ここで例示する構造は、後述する第1の設置構造10に対応する。
【0051】
道路カッターの回転刃Xが舗装材18を切断しながら直進し、地下埋設物12上方の防護領域に侵入すると、回転刃Xが埋設物防護具100に接触する。図7に示すように、回転刃Xが埋設物防護具100の外殻部材104の上方の角部に接触して、その肉部を切断する。このとき、外殻部材104が剛性材料(鋼材)からなるので、回転刃Xの回転速度が低下する。なお、外殻部材104の切断により、外殻部材104の切れ目には金属バリが形成され得る。
【0052】
回転刃Xがさらに直進すると、回転刃Xが内殻部材103に到達し、内殻部材103の肉部を切削する。内殻部材103は(鋼板と比べて比較的軟質な)合成樹脂材料からなるので、切れ目にバリが形成されにくい。回転刃Xが内殻部材103の内部に到達すると、回転刃Xが非拘束状態のシート部材101に接触する。このとき、回転刃Xは、一般的に斜め上(地上側)からシート部材101に接触するため、シート部材101の折り曲げ姿勢のU字形状またはV字形状の上方を向く開放端が先に回転刃Xに接触し得る。この接触と同時に、袋部材105が即座に破断し、シート部材101の回転刃Xへの絡みつきが始まる。シート部材101は、U字またはV字形状の折り曲げ姿勢から展開されつつ、回転刃Xに絡みつくことが考えられる。
【0053】
そして、図8に示すように、シート部材101が回転刃Xに絡み取られつつ、筒部材102が完全に切断される前に、内殻部材103および外殻部材104の切れ目を通って外部に引き出される。特には、本実施形態の埋設物防護具100において、筒部材102が2重筒構造を有することにより、回転刃Xが外殻部材104を切断した後、内殻部材103を切断するまでに僅かな時間差が生じる。この時間差により、シート部材101が外殻部材104の切れ目に到達する前段階で回転刃Xに絡みつく量を稼ぐことができる。また、当該時間差に加えて、内殻部材103および外殻部材104との間に空隙が存在することによって、シート部材101が外殻部材104の切れ目に到達するまでの間、一定の絡み量が効果的に確保され得る。すなわち、埋設物防護具100は、内殻部材103内の空間だけでなく、内殻部材103および外殻部材104間の空隙の2段構えによるシート材101の自由移動空間を有している。その結果、外殻部材104の切れ目の金属バリによってシート部材101が捕捉される頻度が大幅に低減され得る。そして、シート部材101が外部に引き出されて回転刃Xへと絡みつくことにより、回転刃Xの摩擦抵抗が急激に増加し、回転刃Xが停止するか、あるいは、作業者に回転刃Xの異常または状態変化を気付かせ、道路カッターの動作停止を促すことができる。これにより、作業者は、道路カッターの回転刃Xが地下埋設物12の防護領域に侵入したことに気付いて、地下埋設物12の損傷を避けることができる。
【0054】
なお、折り曲げ姿勢のU字形状またはV字形状の開放端を地上側に向けて配置することにより、他の姿勢(例えば、開放端が下方や側方を向いた姿勢)で配置した場合と比べて、シート部材101が埋設物防護具100の外部に引き出されて回転刃Xを停止させる精度が有意に上がることが発明者らによって確認されている。具体的には、シート部材101の姿勢のみを変更して実験を行ったところ、他の姿勢では、シート部材101が外部に引き出される確率が10回中7回程度の精度であったのに比べて、上記姿勢では、10回中10回の精度で、シート部材101が引き出されて、回転刃Xを停止させることができた。
【0055】
図9および図10を参照して、本発明の一実施形態の第1の設置構造10について説明する。設置構造10は、道路15の地下に埋設された地下埋設物12を道路カッターの回転刃Xから防護するために、複数の埋設物防護具100を道路15の地下に設置した構造体である。図9は、当該設置構造10の概略平面図である。図10は、そのE-E断面図である。
【0056】
本実施形態の設置構造10では、道路15は、図9および図10に示すとおり、砕石または土などによって地下層を形成する路盤16と、該路盤16の一部が掘削された箇所に形成されたコンクリート部17と、該道路15の表層を形成する舗装材18とから構成されている。また、本実施形態では、地下埋設物12は、地中に敷設された2本の配線・配管材として例示される。該設置構造10において、路盤16の掘削溝に配線・配管材などの長尺の地下埋設物12が敷設された上で、当該地下埋設物12を覆って保護するために掘削溝にコンクリート部17が打設されている。そして、道路15の掘削工事の際に地下埋設物12を道路カッターから防護するために、複数の埋設物防護具100が地中に埋設されている。各埋設物防護具100は、シート部材101の折り曲げ姿勢のU字形状またはV字形状の開放端が地上側を向くように配置されている。
【0057】
複数の埋設物防護具100は、図9に示す平面視において、長手方向に延びる地下埋設物12の上方で梯子状に配設されている。本実施形態の設置構造10は、複数の埋設物防護具100が所定のパターンで配列することにより、直進する道路カッターの回転刃から地下埋設物12を防護する防護領域を構築している。特には、複数の埋設物防護具100は、第1の長さを有する第1の埋設物防護具1001と、第1の長さよりも小さい第2の長さを有する第2の埋設物防護具1002とからなる。本実施形態では、第1の長さは、第2の長さの約2倍である。複数の埋設物防護具100のうちの第1の埋設物防護具1001が、地下埋設物12の配設方向に沿って配列し、第2の埋設物防護具1002が、地下埋設物12の配設方向に直交する方向(以下、直交方向)に沿って配列している。第1の埋設物防護具1001は、複数の列(ここでは3列)をなすように配設方向に配列している。また、配設方向に隣接する埋設物防護具1001,1001は、配設方向に部分的に重合するように直交方向に僅かにずれて配列している。他方、第2の埋設物防護具1002は、並列する第1の埋設物防護具100の列間に架け渡されるように配列している。本実施形態では、1つの第1の埋設物防護具1001に対して、2つの第2の埋設物防護具1002が架設されている。すなわち、当該設置構造10は、第1の埋設物防護具1001および第2の埋設物防護具1002が隙間無く格子状に組まれていることから、道路カッターの回転刃が直進して外部から防護領域の内部に侵入する際、回転刃が必ず埋設物防護具100を通過するように構成された配列構造を備えている。
【0058】
また、縦横に並列する埋設物防護具100同士の間隔は、いずれも、道路カッターの回転刃の径以下であることが好ましい。さらに、埋設物防護具100の一格子の対角線上の距離が、道路カッターの回転刃の径以下であることがより好ましい。また、地下埋設物12の埋設深度(道路15表面から地下埋設物12上面までの距離)に応じて、埋設物防護具100の間隔が定められることが好ましい。そうすることにより、道路15の防護領域の真上から回転刃が接近した場合であっても、回転刃が地下埋設物12に接触する前に、回転刃に埋設物防護具100を効果的に接触させることができ、設置構造10がより高い防護性能を発揮することが可能となる。なお、本実施形態の一例として、回転刃の径が550mmであり、地下埋設物12の上面の深さが200mmであり、これらの条件に基づいて、埋設物防護具100の第1の長さが約600mmであり、第2の長さが約300mmであり、埋設物防護具100の断面矩形の一辺が約40mmであり、並列する埋設物防護具100間の間隔が約300mmであるように定められた。
【0059】
図10に示すように、各埋設物防護具100は、舗装材18と地下埋設物12との間に設置されている。より具体的には、埋設物防護具100は、コンクリート部17の上部に位置し、舗装材18の下面に隣接する深さで埋設されている。すなわち、舗装材18がない状態で埋設物防護具100の外面の一部が地上に臨むので、道路工事の際、該埋設物防護具100を埋設した場所を把握し易いという利点がある。また、当該設置構造10を構築する際、路盤16の掘削溝に地下埋設物12を敷設した上で該掘削溝にコンクリート材料を充填した後、コンクリート材料が硬化する前に埋設物防護具100を配置することにより、埋設物防護具100を所定の位置に簡単に設置することができるという利点もある。
【0060】
続いて、本実施形態の設置構造10を構築する方法について説明する。まず、道路15の路盤16を掘削して、地下埋設物12を設置する空間として掘削溝を形成する。次に、地下埋設物12を路盤16の掘削溝に配設する。そして、地下埋設物12の周囲にコンクリート部17を形成すべく、路盤16の掘削溝にコンクリート材料を流し込んで充填する。コンクリート材料が硬化する前に、地下埋設物12の上方に防護領域を形成するように、所定のパターンで複数の埋設物防護具100を配置する。このとき、各埋設物防護具100をその上面が上方に露出するようにコンクリート材料に埋め込むことによって、視覚的に確認しながら複数の埋設物防護具100を所定のパターンに基づいて配列することができる。また、表示部107の矢印が上方を向くように各埋設物防護具100を配置する。コンクリート材料が硬化してコンクリート部17が形成された後、路盤16およびコンクリート部17の上面に舗装材18の層を形成することにより、設置構造10を構築することができる。
【0061】
本発明の埋設物防護具は、複数の埋設物防護具を基板上に組み合わせた埋設物防護装置として使用されてもよい。図11乃至図14を参照して、本発明の一実施形態の埋設物防護装置11について説明する。図11(a),(b)は、埋設物防護装置11の上方および下方から見た概略斜視図である。図12(a)~(c)は、埋設物防護装置11の平面図、正面図および底面図である。図13は、埋設物防護装置11のF-F断面図である。図14は、埋設物防護装置11の分解斜視図である。
【0062】
埋設物防護装置11は、図11および図12に示すとおり、筒状に形成された複数の埋設物防護具100と、平面状に延在する基板120と、該埋設物防護具100を基板120に固定するための複数の固定部材130とを備える。図14に示すように、基板120上面に対して、複数の埋設物防護具100が配置され、各埋設物防護具100が複数の固定部材130によって固定されることによって、埋設物防護装置11が組み立てられている。以下、埋設物防護装置11の各構成要素について説明する。
【0063】
埋設物防護装置11を構成する基板120は、長辺および短辺を有する矩形状の板材である。図15(a),(b)は、基板120の上方および下方から見た概略斜視図である。図16(a)~(c)は、埋設物防護装置11の平面図、正面図および底面図である。基板120は、地上側を向くように配置される上面および地下側を向くように配置される下面を有する。本実施形態では、基板120は、ツルハシなどの土木作業用工具による衝撃に耐え得る強度を有する、硬質且つ高強度の合成樹脂材料から形成されている。あるいは、基板120は、合成樹脂材料のかわりに鋼板であってもよい。基板120は、地下埋設物を保護するコンクリート部のかわりに、または、コンクリート部とともに、地下埋設物を地上側から覆って防護するように機能し得る。
【0064】
基板120には、図15および図16に示すように、複数の埋設物防護具100を固定するための複数の固定孔121が設けられている。本実施形態では、複数の固定孔121は、4つの埋設物防護具1001,1002を4辺に固定し、且つ、1つの埋設物防護具1002を短辺に平行に基板120中央に固定するように配置されている。また、基板120は、隣接する(自身と同形状の)基板120,120同士を連結するための連結機構を備える。連結機構は、隣接する基板120,120に亘って、埋設物防護具100,100を一直線に整列可能とするように構成されている。より具体的には、連結機構は、基板10の外周から突出する連結片122と、他の埋設物防護装置11の連結片122の爪部分を収容して該連結片122を突出方向に係止する係止溝123とを有する。連結片122は、基板120の一対の長辺のうちの一方の長辺、および、一対の短辺のうちの一方の短辺に形成されている。係止溝123は、基板120の他方の長辺および他方の短辺に形成されている。連結片122は、基板120外周から延在し、その先端で上面側に折れ曲がった爪部を有する。係止溝123は、基板120の縁辺近傍で下面に凹設された細溝として形成されている。係止溝123は、連結片122の爪部を収容可能なスリット幅を有している。なお、鉤状の連結片122が係止溝123に上下方向に重合することにより、両者が離間し難い。また、係止溝123は、連結片122をその突出方向に直交する方向(スリット長の方向)にスライド可能に収容するように所定のスリット長を有している。すなわち、連結機構は、一の埋設物防護装置11を他の埋設物防護装置11に連結し、且つ、埋設物防護装置11を一直線に整列させることが可能である。あるいは、必要に応じて、係止溝123内で連結片122をスリット長に沿ってスライドさせることにより、隣接する埋設物防護装置11を直交方向にずらして配置することも可能である。
【0065】
固定部材130は、図14に示すように、サドル状の支持金具131、ボルト132およびナット133から構成されている。支持金具131は、埋設物防護具100を上方から拘束するコ字状の支持部131a、および、基板120に固定される固定部131bを有する。図13に示すように、基板120上に配置された埋設物防護具100に支持金具131の支持部131aが被さった状態で、ボルト132の軸が基板120の固定孔121と支持金具131の固定部131bとを下面側から貫通し、基板120の上面側からボルト132の軸先端にナット133が螺着することによって、埋設物防護具100が基板120上面に固定される。換言すると、作業者は、基板120の上面側から固定部材130を操作して、埋設物防護具100を基板120に対して着脱作業を実施することが可能である。
【0066】
以上の説明を踏まえて、埋設物防護装置11の全体構成をより詳細に説明する。本実施形態の埋設物防護装置11において、各埋設物防護具100は、図11および図12に示すように、固定部材130を介して基板120の上面にのみ固定されている。つまり、埋設物防護具100を基板120の上面に配置することで、地上から近接する道路カッターの回転刃を基板120よりも優先的に埋設物防護具100の外面に接触させて、回転刃による基板120の損傷が抑えられる。図13に示すように、シート部材101の略U字形状または略V字形状の開放端が、基板120の上方を向くように配置されている。また、埋設物防護具100は、基板120の矩形状の外周を隙間無く取り囲むように基板120の各辺に固定されている。換言すると、複数の埋設物防護具100の少なくとも一部は、互いに筒軸が平行になるように併設されている。具体的には、基板120の各長辺には、(基板120の長辺に対応する長さを有する)相対的に長尺の第1の埋設物防護具1001が配置され、各短辺には、(基板120の短辺に対応する長さを有する)相対的に短尺の第2の埋設物防護具1002が配置されている。そして、両短辺に配置された第2の埋設物防護具1002の中間には、第2の埋設物防護具1002が追加で配置されている。つまり、基板120の上面には、複数(本実施形態では5本)の埋設物防護具100によって2つの閉塞された格子が形成されている。すなわち、埋設物防護装置11は、第1の埋設物防護具1001および第2の埋設物防護具1002が隙間無く格子状に組まれていることから、道路カッターの回転刃が直進して外部から基板120上に侵入する際、回転刃が必ず埋設物防護具100を通過するように構成された配列構造を備えている。したがって、埋設物防護装置11は、地下埋設物の上方に(1または複数で)設置され、地下埋設物12を防護する防護領域を所定の範囲に亘って形成することが可能である。
【0067】
また、基板120の寸法形状および埋設物防護具100の固定位置は、埋設物防護具100同士の間隔が道路カッターの回転刃の径以下となるように定められている。より好ましくは、基板120に設置された埋設物防護具100の一格子の対角線上の距離が、道路カッターの回転刃の径以下となるように設計される。また、地下埋設物の埋設深度(道路表面から地下埋設物上面までの距離)に応じて、埋設物防護具100の間隔が定められることが好ましい。そうすることにより、道路の防護領域または基板120の真上から回転刃が接近した場合であっても、回転刃が地下埋設物に接触する前に、回転刃に埋設物防護具100を効果的に接触させることができ、埋設物防護装置11がより高い防護性能を発揮することが可能となる。さらに、基板120は、軽量化および取扱性の向上を考慮して、埋設物防護具100の断面寸法よりも薄肉となるように形成された。特に、基板120は、比較的薄肉の合成樹脂材料で形成されたことにより、コンクリート板を用いた場合と比べて軽量である。なお、本実施形態の一例として、回転刃の径が550mmであり、地下埋設物12の上面の深さが200mmであると想定し、これらの条件に基づいて、基板120の厚みが約15mmであり、基板120の長辺が約600mmであり、埋設物防護具100の第1の長さが約600mmであり、基板120の短辺が約380mmであり、第2の長さが約300mmであり、埋設物防護具100の断面矩形の一辺が約40mmであり、隣接する埋設物防護具100間の間隔が約300mmであるように定められた。
【0068】
すなわち、本実施形態に係る埋設物防護装置11は、複数の長手状の埋設物防護具100が基板120に対して固定されていることにより、直進する道路カッターの回転刃を埋設物防護具100が辺で受け止めて、地下埋設物12を効率的に防護することができる。したがって、本実施形態の埋設物防護装置11は、従来のように埋設物防護具100(例えば、鋼板、高強度繊維シート)を地下埋設物12の上部領域一帯に敷き詰めることなく、基板120を当該領域に設置するだけで、閉鎖された枠状に組まれた埋設物防護具100によって、各辺の内側に地下埋設物12の防護領域を簡単且つ効率的に画定することを可能とする。
【0069】
次に、図17乃至図19を参照して、埋設物防護装置11による第2の設置構造10’について説明する。設置構造10’は、道路15の地下に埋設された地下埋設物12を道路カッターの回転刃Xから防護するために、複数の埋設物防護装置11を道路15の地下に設置した構造体である。図17は、当該設置構造10’の概略平面図である。図18および図19は、そのG-G断面図およびH-H断面図である。
【0070】
本実施形態の設置構造10’では、道路15は、図17乃至図19に示すとおり、砕石または土などによって地下層を形成する路盤16と、砂または良質土からなる埋め戻し部19と、該道路15の表層を形成する舗装材18とから構成されている。また、本実施形態では、同様に、地下埋設物12は、地中に敷設された2本の配線・配管材として例示される。該設置構造10’において、路盤16の掘削溝に配線・配管材などの長尺の地下埋設物12が敷設された上で、当該地下埋設物12を覆って保護すべく掘削溝に砂または良質土が充填されて埋め戻し部19が形成されている。そして、道路15の掘削工事の際に地下埋設物12を道路カッターやツルハシなどの土木作業用工具から防護するために、複数の埋設物防護装置11が地中に埋設されている。各埋設物防護装置11において、埋設物防護具100は、シート部材101の折り曲げ姿勢のU字形状またはV字形状の開放端が地上側を向くように配置されている。
【0071】
複数の埋設物防護装置11は、図17に示す平面視において、配設方向に長手状に延びる地下埋設物12の上方で直線的に配設されている。複数の埋設物防護装置11は、配設方向に沿って隙間無く敷き詰められている。また、地下埋設物12の配設方向に亘って、複数の埋設物防護具100(第2の埋設物防護具1002)が途切れることなく一直線上に連続的に整列している。さらに、配設方向に直交する方向(以下、直交方向という)に沿って、複数の埋設物防護具100(第1の埋設物防護具1001)が並列している。すなわち、本実施形態の設置構造10’は、複数の埋設物防護具100が所定のパターンで配列することにより、直進する道路カッターの回転刃から地下埋設物12を防護する防護領域を構築している。そして、当該設置構造10’は、第1の埋設物防護具1001および第2の埋設物防護具1002が隙間無く格子状に組まれていることから、道路カッターの回転刃が直進して外部から防護領域の内部に侵入する際、回転刃が必ず埋設物防護具100を通過するように構成されている。
【0072】
また、図18に示すように、埋設物防護装置11が舗装材18の直下に配置され、その結果として、各埋設物防護具100が舗装材18と地下埋設物12との間に設置されている。より具体的には、埋設物防護装置11は、埋め戻し部19の上層の路盤16の上部に位置し、埋設物防護具100の上面が舗装材18の下面に隣接する深さで埋設されている。すなわち、舗装材18がない状態で埋設物防護具100の外面の一部が地上に臨むので、道路工事の際、該埋設物防護具100を埋設した場所を把握し易いという利点がある。また、図18に示すように、基板120が、コンクリート部の代わりに、地下埋設物12を地上側から覆うことにより、ツルハシなどの土木作業用工具から地下埋設物12を防護するように機能する。したがって、本実施形態の設置構造10’では、埋設物防護具100および基板120が協働して地下埋設物12を効果的に防護している。さらに、図19に示すように、各埋設物防護装置11は、配設方向に隣接する埋設物防護装置11に対して連結機構(連結片122および係止溝123)を介して連設されている。連結機構を用いて複数の埋設物防護装置11を連結することにより、複数の埋設物防護装置11および埋設物防護具100を容易に直線状に整列することが可能である。なお、図示の例では、基板120の長辺側に形成された連結機構を介して基板120,120同士が連結されているが、これに代えて、または、これに加えて、短辺側に形成された連結機構を介して基板120,120が連結されてもよい。あるいは、長辺側の連結機構、短辺側の連結機構を交互に用いる等によって、任意のパターンで基板120,120同士を連結してもよい。
【0073】
続いて、本実施形態の第2の設置構造10’を構築する方法について説明する。まず、道路15の路盤16を掘削して、地下埋設物12を設置する空間としての掘削溝を形成する。次に、掘削溝に砂または良質土を充填しつつ、地下埋設物12を路盤16の掘削溝に配設する。そして、地下埋設物12の上に砂または良質土を充填し、埋め戻し部19を形成する。次いで、埋め戻し部19の上方に掘り出した路盤材を再度充填する。地下埋設物12の上方に防護領域を形成するように、地下埋設物12の配設方向に沿って直線的に複数の埋設物防護装置11を連結させつつ配置する。連結機構は、直交方向への基板120のずれを許容することから、基板120同士の連結作業が容易となる。複数の埋設物防護装置11を地下埋設物12の上に配列した後、各埋設物防護具100の上面が上方に露出するように基板120の上に路盤材を被せる。そして、路盤16上面に舗装材18の層を形成することにより、設置構造10’を構築することができる。
【0074】
図20は、本実施形態の埋設物防護具100の別使用例を示している。図20に示すように、埋設物防護具100は、道路の地下に電線共同溝を形成するとともに内部に電線類12を収容可能なトラフ13と一体化されてもよい。ここで、トラフ13内部の電線類が地下埋設物12に該当する。トラフ13は、トラフ本体13aとトラフ蓋13bとから構成される。複数の埋設物防護具100が、上記基板に相当するトラフ蓋13bの上面に一体的に固定されている。すなわち、当該トラフ13において、複数の埋設物防護具100およびトラフ蓋13bが上述した埋設物防護装置11として機能し得る。したがって、トラフ13は、埋設物防護装置11または埋設物防護具100を備えることで、内部の電線類を道路カッターの回転刃から防護することを可能とする。
【0075】
以下、本発明に係る一実施形態の埋設物防護具100の作用効果について説明する。
【0076】
本実施形態の埋設物防護具100によれば、埋設物防護具100に道路カッターが接触した際、道路カッターの回転刃が剛性の外殻部材104を切断し、内殻部材103を切り開いてシート部材101に到達した後、非拘束状態のシート部材101が回転刃によって絡み取られて外殻部材104の切れ目に到達し、さらに、外部に引き出されながら回転刃に絡みついて、回転刃の回転を停止させる。当該埋設物防護具100において、筒部材102が2重筒構造を有することにより、回転刃が外殻部材104を切断した後、内殻部材103を切断するまでに僅かな時間差が生じる。この時間差に加えて、内殻部材103と外殻部材104との間に空隙が形成されていることにより、シート部材101が回転刃に絡み取られてから外殻部材104の切れ目に到達するまでの時間または距離をより長く確保し、シート部材101が切れ目から引き出される前段階でのシート部材101の回転刃への絡み量を増加させることができる。さらに、シート部材101は、埋設物防護具100の横断面視において、略U字状または略V字状に折り曲げられて内殻部材103に収容され、シート部材101の略U字形状または略V字形状の開放端が地上側を向くように配置されている。これにより、埋設物防護具100に上方から接触した回転刃が略U字状または略V字状の開放端に当接し、シート部材101を直状に展開しながら回転刃に巻き付けて、外殻部材104の切れ目から外部に容易に引き出すことが可能である。すなわち、本実施形態の埋設物防護具100によれば、外殻部材104の内部でシート部材101が回転刃によって効果的に巻き取られることで、コンクリート製の外装材を用いることなく、シート部材101を外殻部材104の切れ目からより確実に引き出すことが可能となる。さらに、本実施形態の埋設物防護具100は、外殻部材104を内殻部材103よりも薄肉としたことにより、従来のコンクリート製の外装材を用いたものと比べて軽量且つコンパクトで取り扱い容易に構成されている。したがって、本実施形態の埋設物防護具100は、軽量且つコンパクトで取り扱い容易であるとともに、地下埋設物12の防護機能をより高い精度で発揮するものである。
【0077】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。各実施形態または変形例において、下二桁の符番が共通する構成要素は、特定のない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0078】
(1)本発明の埋設物防護装置において、埋設物防護具は上記実施形態の態様に限定されない。図21乃至図25を参照して、別実施形態の埋設物防護具200について説明する。埋設物防護具200は、上記実施形態と同様に、舗装材と地下埋設物との間に介在し、舗装材を切断する道路カッターが該埋設物防護具200に接触したときに、道路カッターの動作を直接的または間接的に停止させるものである。図21は、埋設物防護具200の概略斜視図である。図22(a),(b)は、埋設物防護具200の正面図および平面図である。図23(a),(b)は、埋設物防護具200のI-I横断面図、J-J縦断面図である。図24および図25は、埋設物防護具200により道路カッターの回転刃から地下埋設物を防護する態様を示す模式図である。
【0079】
埋設物防護具200は、図21から図23に示すように、所定の長さで延在する角棒状の外形状を有する長尺体である。埋設物防護具200は、シート部材201と、該シート部材201を包囲する袋部材205と、該シート部材201を内部に収容する中空筒状の筒部材202と、該筒部材202の両端部を閉塞する閉塞部材206と、を備える。ここで、シート部材201、袋部材205および閉塞部材206の構成は、上記埋設物防護具100のものと共通であるので、その説明を省略する。筒部材202は、所定の長さで延在し、両端で開放した非金属製(具体的には合成樹脂製)の角型筒状体である。この筒部材202は、丸型筒状体であってもよい。袋部材205内に密封されたシート部材201は、筒部材202内部に非拘束状態で収容されている。シート部材201は、筒部材202の筒壁内面に当接するように構成されている。シート部材201は、略U字状または略V字状に折り曲げられたシート部材201のこわさ(コシまたは弾力)により、折り曲げ姿勢を維持しつつ、筒部材102内部で周方向に転動しないように保持されている。埋設物防護具200は、シート部材201の略U字形状または略V字形状の開放端が上方を向くように設置されることが好ましい。なお、筒部材202は、道路カッターの回転刃に接触したときにその回転を遅らせる程度の剛性を有し、比較的高い剛性を有する鋼板等の金属材料で形成されてもよい。
【0080】
次いで、図24および図25を参照して、道路カッターの回転刃Xが埋設物防護具200に接触したときに、該埋設物防護具200によって道路カッターの動作を停止させる態様について説明する。当該説明において、埋設物防護具200は、例示的に、埋設物防護装置21の一部として基板220の上面に固定され、道路25の表面を舗装する舗装材28の直下且つ地下埋設物22の上方に埋設されている。
【0081】
道路カッターの回転刃Xが舗装材28を切断しながら直進し、地下埋設物22上方の防護領域に侵入すると、回転刃Xが埋設物防護具200に接触する。図24に示すように、回転刃Xが埋設物防護具200の筒部材202の上方の角部に接触して、その肉部を切断する。回転刃Xが筒部材202の内部に到達すると、回転刃Xが非拘束状態のシート部材201に接触する。このとき、回転刃Xは、一般的に斜め上(地上側)からシート部材201に接触するため、シート部材201の折り曲げ姿勢のU字形状またはV字形状の上方を向く開放端が先に回転刃Xに接触し得る。この接触と同時に、袋部材205が即座に破断し、シート部材201の回転刃Xへの絡みつきが始まる。シート部材201は、U字またはV字形状の折り曲げ姿勢から展開されつつ、回転刃Xに絡みつくことが考えられる。そして、図25に示すように、シート部材201が回転刃Xに絡み取られつつ、筒部材202が完全に切断される前に、筒部材202の切れ目を通って外部に引き出される。そして、シート部材201が外部に引き出されて回転刃Xへと絡みつくことにより、回転刃Xの摩擦抵抗が急激に増加し、回転刃Xが停止するか、あるいは、作業者に回転刃Xの異常または状態変化を気付かせ、道路カッターの動作停止を促すことができる。これにより、作業者は、道路カッターの回転刃Xが地下埋設物22の防護領域に侵入したことに気付いて、地下埋設物22の損傷を避けることができる。
【0082】
したがって、本実施形態の埋設物防護具200は、袋部材205によるシート部材201の水濡れ防止、および、シート部材201の筒部材202内部での折り曲げ姿勢の効果により、従前の構成と比べて、少なくとも地下埋設物の防護機能をより高い精度で発揮するものである。
【0083】
(2)上記実施形態の埋設物防護具の筒部材の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、本発明の埋設物防護具の筒部材は、角型の内殻部材と角型の外殻部材との組み合わせ、丸型の内殻部材と丸型の外殻部材との組み合わせなど任意の形状から選択されてもよく、また、細部において種々の形態を取り得る。
【0084】
図26(a)の埋設物防護具300は、角型の内殻部材303と角型の外殻部材304とからなる筒部材302を備える。シート部材301は、筒部材302内部に非拘束状態で収容されている。当該筒部材302において、内殻部材303および外殻部材304が互いに連結されておらず、外殻部材304の内部で内殻部材303が自由に移動可能である。そして、外殻部材304の底壁上に内殻部材303が載置されている。内殻部材303および外殻部材304の断面視寸法が異なることにより、埋設物防護具300を載置したら、その断面視上部に内殻部材303外面および外殻部材304内面との間に空隙が形成されている。換言すると、内殻部材303の地上側を向く外面上において、内殻部材303外面と外殻部材304内面との間で空隙が形成されている。すなわち、埋設物防護具300は、周方向の一部に形成された空隙により、上記実施形態と同様に、地下埋設物の防護機能を発揮することが可能となる。なお、筒部材302の端部は、閉塞されていてもよく、または、開放されていてもよい。
【0085】
また、図26(b)の埋設物防護具400は、三角型の内殻部材403と円型の外殻部材404とからなる筒部材402を備える。シート部材401は、筒部材402内部に非拘束状態で収容されている。筒部材402において、内殻部材403の三角形の各頂点が外殻部材404の内面に接することにより、内殻部材403および外殻部材404が互いに固定されている。そして、周方向の接点以外の箇所において、内殻部材403外面および外殻部材404内面との間に空隙が形成されている。すなわち、埋設物防護具400は、周方向の一部に形成された空隙により、上記実施形態と同様に、地下埋設物の防護機能を発揮することが可能となる。
【0086】
(3)上記実施形態の埋設物防護具の各構成要素の材質は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲に含まれる限りにおいて、その材質の変更が可能である。
【0087】
(4)本発明の埋設物防護具において、袋部材が省略されてもよい。ただし、袋部材が省力された場合において、筒部材の内部空間が水密に保たれることが好ましい。シート部材の浸水による劣化を防ぎ、または、シート部材が道路カッターの回転刃に対して滑って絡み付き難くなる虞を軽減させるためである。
【0088】
(5)本発明の埋設物防護具において、シート部材は略U字状または略V字状の折り曲げ姿勢で筒部材の内部に収容されていなくてもよい。例えば、シート部材が断面視において直状に延びていてもよい。また、表示部が省略されてもよい。
【0089】
(6)上記実施形態の設置構造において、埋設物防護具または埋設物防護装置が地下埋設物の上方且つ舗装材の下に埋設されているが、埋設物防護具の設置位置はこれに限定されない。埋設物防護具または埋設物防護装置は、地下埋設物の地上側または上方に設置されればよく、例えば、道路表面に載置されても、同様に地下埋設物を道路カッターから防護することが可能である。
【0090】
(7)上記実施形態の設置構造において、地下埋設物は配線・配管材などの長尺体であるが、その形態は本実施形態に限定されない。例えば、地下埋設物は、電気通信機器を地中で収容する筐状の地下構造物であってもよい。
【0091】
(8)上記実施形態の埋設物防護具では、表示部が閉塞部材の閉塞部外面に形成されたが、本発明は上記形態に限定されない。例えば、表示部は、筒部材外面に形成されてもよい。また、表示部は、上記実施形態のような矢印状に限定されず、シート部材の向きを視覚的に表示可能であればいかなる形態をとってもよい。
【0092】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0093】
10 埋設物設置構造
11 埋設物防護装置
12 地下埋設物
15 道路
16 路盤
17 コンクリート部
18 舗装材
19 埋め戻し部
100 埋設物防護具
101 シート部材
102 筒部材
103 内殻部材(筒部材)
104 外殻部材(筒部材)
105 袋部材
106 閉塞部材
106a 閉塞部
106b 第1連結部
106c 第2連結部
107 表示部
120 基板
121 固定孔
122 連結片(連結機構)
123 係止溝(連結機構)
130 固定部材
131 支持金具
131a 支持部
132b 固定部
132 ボルト
133 ナット
X 道路カッターの回転刃
図1
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