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特許7432435容器スタック搬送装置、および容器スタック搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】容器スタック搬送装置、および容器スタック搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B25J15/08 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020077853
(22)【出願日】2020-04-25
(65)【公開番号】P2021171880
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 英嗣
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321641(JP,A)
【文献】米国特許第06254156(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B65G 47/80
B65G 47/84-47/86
B65G 47/90-47/96
B65G 57/00-61/00
B66C 1/00- 3/20
B65B 35/00-35/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面を保持する側面保持手段と、
前記容器スタックのうち最下段の容器のフランジを支持するフランジ支持手段と、
前記側面保持手段で前記容器スタックの側面を保持しつつ前記フランジ支持手段で前記フランジを支持した状態で前記容器スタックを搬送する駆動手段と、
前記側面保持手段および前記フランジ支持手段の開閉制御を行う開閉制御手段と、
を備えたことを特徴とする容器スタック搬送装置。
【請求項2】
前記フランジ支持手段は、
前記容器における胴部の少なくとも一部を挟むように前記フランジの下側面を支持可能な支持板と、
前記支持板を前記フランジに対して近接または離間するように移動させる移動機構と、
を含み、
前記支持板は、前記移動機構を介して、前記フランジの下側面と接触して前記容器スタックを支持可能な閉位置と、前記閉位置よりも前記フランジから離間した開位置と、に移動する、請求項1に記載の容器スタック搬送装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記支持板を揺動させる揺動リンクと、
前記揺動リンクを駆動する駆動シリンダと、を含み、
前記支持板は、前記容器スタックの側面の一部と対向して設けられた揺動支点を中心に旋回して前記開位置と前記閉位置とを揺動する、請求項2に記載の容器スタック搬送装置。
【請求項4】
前記側面保持手段は、前記容器スタックの軸方向に延在して前記容器スタックの側面を挟持可能な挟持板を含み、
前記挟持板は、前記容器スタックの側面と接触して挟持する閉ポジションと、前記容器スタックの側面から離間して前記容器スタックの側面が開放された開ポジションと、に移動可能であり、
前記挟持板が前記開ポジションの状態であって且つ前記フランジ支持手段が前記閉位置の状態で搬送前の容器スタックに接近する、請求項2又は3に記載の容器スタック搬送装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段で挟持された前記容器スタックを鉛直方向に対して斜めに傾斜させ、
前記開閉制御手段は、前記容器スタックが傾斜された状態で、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段を制御して前記容器スタックを開放する、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器スタック搬送装置。
【請求項6】
複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面を保持する側面保持手段と、前記容器スタックのうち最下段の容器のフランジを支持するフランジ支持手段と、を有する容器スタック搬送装置を用いた容器スタック搬送方法であって、
未搬送の容器スタックの上方から前記側面保持手段と前記フランジ支持手段とが下降する下降工程と、
前記最下段の容器のフランジと前記フランジ支持手段の支持板が接触した状態で、前記容器スタックの側面を前記側面保持手段で保持する側面保持工程と、
前記側面保持手段で前記容器スタックの側面を保持しつつ前記フランジ支持手段で前記フランジを支持した状態で前記容器スタックを搬送する搬送工程と、
前記搬送工程の後に、前記側面保持手段と前記フランジ支持手段による前記容器スタックの拘束を解除して前記容器スタックを開放する開放工程と、
を有することを特徴とする容器スタック搬送方法。
【請求項7】
前記支持板は、前記支持板を前記フランジに対して近接または離間するように移動させる移動機構を介して、フランジ下側面と接触して前記容器スタックを支持可能な閉位置と、前記閉位置よりも前記フランジから離間した開位置と、に移動可能であり、
前記下降工程では、前記支持板が前記フランジと接触するように前記閉位置の状態で前記未搬送の容器スタックの上方から下降する、請求項6に記載の容器スタック搬送方法。
【請求項8】
前記開放工程では、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段で挟持された前記容器スタックを鉛直方向に対して斜めに傾斜させた状態で、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段の拘束が解除される、請求項6又は7に記載の容器スタック搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の紙コップなどの容器を積み重ねた容器スタックを搬送する搬送装置および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば食品を収容するカップ容器や飲料を注出するコップ容器が知られている。これらの容器は、例えば紙や樹脂などで形成されており、上下に積み重ねた状態(これを「容器スタック」とも称する)で搬送されることがある。
【0003】
例えば特許文献1や特許文献2においては、容器を積み重ねて構成された容器スタックを保持し得る容器保持具を有する容器保持機構と、上記容器保持機構を移送し得る位置制御機構とを備えた容器搬送装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-136458号公報
【文献】特開2006-187861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献によれば、容器スタックの搬送を自動的にかつ繰り返して行うことができるから、容器スタックを人手によって搬送する場合に較べて能率化が図ることができる。一方で上記特許文献では、位置規制部材73を設けて容器スタック収容空間における両端部を適時封鎖することで、容器スタックの搬送時などに容器スタックの落下などが抑制されている。
【0006】
たしかに上記した特許文献によれば容器スタックを落下させず任意の場所へ搬送できるものの、収容ボックスに収容された容器スタックを把持してから目的場所(例えば容器ホッパなど)への搬送完了まで更なる効率化を図ることと、より確実な落下防止の対策が希求されていた。
【0007】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、容器を上下積み重ねた容器スタックを落下させず更に効率的に目的場所まで搬送することが可能な容器スタック搬送装置および容器スタック搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における容器スタック搬送装置は、(1)複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面を保持する側面保持手段と、前記容器スタックのうち最下段の容器のフランジを支持するフランジ支持手段と、前記側面保持手段で前記容器スタックの側面を保持しつつ前記フランジ支持手段で前記フランジを支持した状態で前記容器スタックを搬送する駆動手段と、前記側面保持手段および前記フランジ支持手段の開閉制御を行う開閉制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記(1)に記載の容器スタック搬送装置においては、(2)前記フランジ支持手段は、前記容器における胴部の少なくとも一部を挟むように前記フランジの下側面を支持可能な支持板と、前記支持板を前記フランジに対して近接または離間するように移動させる移動機構と、を含み、前記支持板は、前記移動機構を介して、前記フランジの下側面と接触して前記容器スタックを支持可能な閉位置と、前記閉位置よりも前記フランジから離間した開位置と、に移動することが好ましい。
【0010】
また、上記(2)に記載の容器スタック搬送装置においては、(3)前記移動機構は、前記支持板を揺動させる揺動リンクと、前記揺動リンクを駆動する駆動シリンダと、を含み、前記支持板は、前記容器スタックの側面の一部と対向して設けられた揺動支点を中心に旋回して前記開位置と前記閉位置とを揺動することが好ましい。
【0011】
また、上記(2)又は(3)に記載の容器スタック搬送装置においては、(4)前記側面保持手段は、前記容器スタックの軸方向に延在して前記容器スタックの側面を挟持可能な挟持板を含み、前記挟持板は、前記容器スタックの側面と接触して挟持する閉ポジションと、前記容器スタックの側面から離間して前記容器スタックの側面が開放された開ポジションと、に移動可能であり、前記挟持板が前記開ポジションの状態であって且つ前記フランジ支持手段が前記閉位置の状態で搬送前の容器スタックに接近することが好ましい。
【0012】
また、上記(1)~(4)のいずれかに記載の容器スタック搬送装置においては、(5)前記駆動手段は、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段で挟持された前記容器スタックを鉛直方向に対して斜めに傾斜させ、前記開閉制御手段は、前記容器スタックが傾斜された状態で、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段を制御して前記容器スタックを開放することが好ましい。
【0013】
さらに上記した課題を解決するため、本発明の一実施形態における容器スタック搬送方法は、(6)複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面を保持する側面保持手段と、前記容器スタックのうち最下段の容器のフランジを支持するフランジ支持手段と、を有する容器スタック搬送装置を用いた容器スタック搬送方法であって、未搬送の容器スタックの上方から前記側面保持手段と前記フランジ支持手段とが下降する下降工程と、前記最下段の容器のフランジと前記フランジ支持手段の支持板が接触した状態で、前記容器スタックの側面を前記側面保持手段で保持する側面保持工程と、前記側面保持手段で前記容器スタックの側面を保持しつつ前記フランジ支持手段で前記フランジを支持した状態で前記容器スタックを搬送する搬送工程と、前記搬送工程の後に、前記側面保持手段と前記フランジ支持手段による前記容器スタックの拘束を解除して前記容器スタックを開放する開放工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記(6)に記載の容器スタック搬送方法においては、(7)前記支持板は、前記支持板を前記フランジに対して近接または離間するように移動させる移動機構を介して、フランジ下側面と接触して前記容器スタックを支持可能な閉位置と、前記閉位置よりも前記フランジから離間した開位置と、に移動可能であり、前記下降工程では、前記支持板が前記フランジと接触するように前記閉位置の状態で前記未搬送の容器スタックの上方から下降することが好ましい。
【0015】
また、上記(6)又は(7)に記載の容器スタック搬送方法においては、(8)前記開放工程では、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段で挟持された前記容器スタックを鉛直方向に対して斜めに傾斜させた状態で、前記側面保持手段及び前記フランジ支持手段の拘束が解除されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器スタックのピックアップから目的場所までのトータルの搬送時間の効率化と、搬送時の容器スタックの落下抑制と、を高い次元で両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の搬送システムを模式的に示した外観斜視図である。
図2】容器スタック搬送装置を側面から見た外観側面図である。
図3】容器スタック搬送方法における状態遷移のうち、未搬送の容器スタックをピックアップする前における容器スタック搬送装置の状態を示す模式図である。
図4】容器スタック搬送方法における状態遷移のうち、未搬送の容器スタックをピックアップする際における容器スタック搬送装置の状態を示す模式図である。
図5】容器スタック搬送方法における状態遷移のうち、未搬送の容器スタックをピックアップした後における容器スタック搬送装置の状態を示す模式図である。
図6】容器スタック搬送方法における状態遷移のうち、未搬送の容器スタックをピックアップした後の搬送時における容器スタック搬送装置の状態を示す模式図である。
図7】容器スタック搬送方法における状態遷移のうち、未搬送の容器スタックを目的場所で開放する際における容器スタック搬送装置の状態を示す模式図である。
図8】容器スタック搬送方法における状態遷移のうち、開放された容器スタックが目的場所内を移動(容器ホッパ内を滑落)する状態を示す模式図である。
図9】本実施形態の容器スタックの搬送方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の容器スタック搬送装置及び搬送方法について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を説明するものであり、本発明を意図せず限定するものではなく、他の公知の構成を適宜補完してもよい。また、以下で詳述する構成以外の構成については、上記した特許文献1や特許文献2を含む公知の搬送機構を援用してもよい。
【0019】
<搬送システム>
図1に、本実施形態における容器スタックの搬送システムを示す。同図に示すとおり本実施形態の搬送システムは、容器スタックCSを把持して任意の位置に搬送可能な容器スタック搬送装置100と、未使用の容器スタックCSが複数本収容された収容ボックス200と、容器スタックCSを構成する容器Cに所望の処理(例えば食品や飲料の充填)を行う処理装置300と、を含んで構成されている。
【0020】
ここで、「容器スタック」とは、図1図2などに示すとおり、複数の容器Cを上下方向に順次積み重ねて構成されたものを言う。より具体的には、本実施形態の容器スタックCSは、積み重ねる上側の容器Cの上端部(フランジCf)以外の胴部と底部のほぼ容器全体を下側の容器C内に順次収納する形で例えば数個~数十個だけ柱状に積み重ねた形態を有する。
【0021】
なお容器Cの材質としては、特に制限はなく公知の材料が適用でき、例えば紙や樹脂あるいは紙に樹脂のコーティングを施したものなどが例示できる。容器Cの形状としても、同様に公知の形状を適用でき、食品用途に適した浅底のカップ形状や飲料用途に適したコップ形状など種々適用でき、開口の形状も円形や四角形などの任意の公知の形状を採用してもよい。またかような容器Cに収容する被収容物としては、例えば納豆やヨーグルトなどの食品や薬効成分を含有する薬剤などの固形物の他に、例えば飲料などの液状物など公知の種々の物質が例示できる。
【0022】
<収容ボックス200>
収容ボックス200は、図1などに示すように、容器スタックCSが搬入または搬出可能な開口面を有する直方体形状の箱である。一例として、本実施形態の収容ボックス200は、横倒し(寝かせた)状態の容器スタックCSを複数本だけ収容できる程度の公知の段ボール箱が例示できる。
【0023】
図1に示すように、収容ボックス200は、容器スタック搬送装置100の近傍までロボットハンドなどの公知の搬送機構(不図示)によって搬送される。この収容ボックス200内には、多数の未搬送の容器スタックCSが互いにほぼ平行になるように径方向に並置されつつ上下に数段だけ重ね合わされた状態で詰め込まれている。なお、これら容器スタックCSは、収容ボックス200内の空間が最小になって輸送時に型崩れしないように、ボックス内で千鳥状に密着した状態で詰められていてもよい。
【0024】
<処理装置300>
処理装置300は、容器スタック搬送装置100を介して新たな容器スタックCSの供給を受ける。かような処理装置300は、上述のとおり容器Cに充填される物質に応じて種々の機能を有する。一例として、本実施形態の処理装置300は、図1に示すように、鉛直方向に対して若干傾斜して鉛直上向きに延びる1又は複数の容器ホッパ301(図示では、第1容器ホッパ301a乃至第4容器ホッパ301dまでの4連構成となっている)と、これらの容器ホッパ301の下方にそれぞれ対向するように配設された複数の容器受け開口302をそれぞれ有している。
【0025】
したがって処理装置300に搬送された容器スタックCSは、この容器ホッパ301を経由して容器受け開口302内へと供給されて、処理装置300の上記した各種の機能に基づいて各種の処理(例えば上記した食品の充填など)が実施される。なお、上記した処理装置300の構造や機能は一例であって、容器スタック搬送装置100から容器スタックCSの搬送を受け得る限り特に制限はなく、公知の種々の機能や構造を有する処理装置300が適用できる。
【0026】
<容器スタック搬送装置100>
次に図1及び図2を参照しつつ、本実施形態における容器スタック搬送装置100の詳細な構成について説明する。
これらの図から理解されるとおり、本実施形態の容器スタック搬送装置100は、側面保持手段10、フランジ支持手段20、駆動手段30、開閉制御手段40、およびフレーム手段50を含んで構成されている。
【0027】
側面保持手段10は、複数の容器Cを積み重ねた容器スタックCSの側面を保持する機能を有している。この側面保持手段10は、より具体的には図2に示すように、容器スタックCSの軸方向(容器Cが積層される方向であって図2では紙面左右方向)に延在して容器スタックCSの側面を挟持可能なブレード状の一対の挟持板を含んで構成されている。この一対の挟持板は、図3(b)などに示すとおり、例えば容器スタックCSの軸方向長さと対応したブレード状を呈し、容器Cの一方の側に位置する基準ブレード板11と、容器Cの他方の側に展開可能な可動ブレード板12と、を有して構成されている。
【0028】
後述するとおり、本実施形態では基準ブレード板11は不動であり、可動ブレード板12が展開して容器Cの胴部を包囲する位置(挟持板が「閉ポジションP3」のとき)または包囲しないで収納される位置(挟持板が「開ポジションP4」のとき)に位置することで容器Cの側面保持が実行/解除されるように構成されている。このように本実施形態の挟持板は、上記基準ブレード板11と可動ブレード板12とが協働することで、容器スタックCSの側面と接触して挟持する閉ポジションP3と、容器スタックCSの側面から離間して容器スタックCSの側面が開放された開ポジションP4と、に移動可能となっている。
【0029】
なお本実施形態では、一対の挟持板のうち一方(本例では基準ブレード板11)が不動としたが、この形態に限られず基準ブレード板11も可動ブレード板12に対応して上記した容器Cの胴部の少なくとも一部を包囲するように可動する構成とされていてもよい。また、本実施形態の挟持板としては、基準ブレード板11と可動ブレード板12のように一対の構成とせず、容器Cが意図せず傾倒しないでその側面を保持可能であれば単一の湾曲板を用いてもよい。
【0030】
また、側面保持手段10における上記挟持板の駆動機構やその余の構成については、例えばシリンダ機構や電動モータなどの公知の種々の駆動機構を適用することができる。一例として、側面保持手段10における上記した駆動機構は、例えば上記した特開2006-187861号公報の容器保持機構における駆動機構を援用してもよい。
【0031】
フランジ支持手段20は、前記した容器スタックCSのうち最下段の容器CのフランジCfを支持するストッパとしての機能を有している。より具体的に本実施形態のフランジ支持手段20は、容器Cにおける胴部の少なくとも一部を挟むようにフランジCfの底部を支持可能な支持板21と、この支持板21を容器CのフランジCfの底部に対して近接または離間するように移動させる移動機構と、を含んで構成されている。
【0032】
本実施形態の支持板21は、例えば金属片や樹脂片などで構成された部材であり、容器スタックCSの一番底部に位置する容器CのフランジCfを下支えする。そのために本実施形態の支持板21は、前記した移動機構を介して、このフランジ下側面と接触して容器スタックCSを支持可能な閉位置P1と、この閉位置P1よりもフランジから離間した開位置P2と、の間で移動可能なように構成されている(例えば図3図5を対比して参照)。
【0033】
なお支持板21の具体的な形状としては、例えば容器CのフランジCfに対応して当該フランジ下側面に沿って湾曲したY字状の外形を備えていることが好ましい。しかしながら支持板21の形状としては、上記した最下段の容器CのフランジCfを下支えして容器スタックCSが落下しなければ特に制限はなく、例えばY字に代えてV字形状としたり、フランジCfの下側面の一部(1箇所または断続的に複数個所)を支持する支持片で支持板21を構成してもよい。
【0034】
かような支持板21を移動させる移動機構の詳細を図2に示す。
同図に示されるように、本実施形態の移動機構は、前記した支持板21を揺動させる揺動リンク22と、この揺動リンク22を駆動する駆動シリンダ23と、を含んで構成されている。より具体的には、揺動リンク22は、基端24が後述するフレーム手段50に回動可能なように設置されるとともに、揺動側端部25が支持板21に対して回転可能に連結されている。なお図2からも明らかなとおり、この基端24は容器CのフランジCfよりも上方に位置している。
【0035】
また、本実施形態の駆動シリンダ23は、基端部26が上記したフレーム手段50に回動可能なように設置されるとともに、作用側の端部が上記した揺動側端部25と連結されている。このように揺動リンク22の基端24が容器CのフランジCfよりもX軸方向フレーム側に位置し、さらに駆動シリンダ23によって揺動側端部25が揺動リンク22の制約下で移動することで支持板21は上記基端24を支点に旋回することが可能となっている。なお、上記した基端24、揺動側端部25および基端部26の構造は、上記した機能を発揮し得る限り特に制限はなく、例えば軸受け機構など公知の機構が適用できる。
【0036】
換言すれば、本実施形態の支持板21は、上記移動機構によって、容器スタックCSの側面の一部(ただし容器CのフランジCfより上方)と対向して設けられた揺動支点(基端24)を中心に旋回し、前記した開位置P2と閉位置P1との間を揺動するように構成されている。このとき、支持板21は、最下段の容器CのフランジCfよりも軸方向(把持した容器スタックCSが積層される方向、図2におけるZ軸方向)において容器の底面側から旋回してフランジCfの下側面と接触する。これにより、後述する容器スタックCSの開放時にスムーズな開放が実現されるとともに意図しない傾倒も抑制することが可能となっている。
【0037】
なお上述したとおり本実施形態では上記した移動機構を介して支持板21が旋回するように揺動することが望ましいが、本発明は必ずしもこの形態に限定されずともよい。すなわち、例えば上記したスムーズな開放や意図しない傾倒がある程度満足すれば足りるのであれば、支持板21が最下段の容器CのフランジCfにおける側方(真横)からスライド挿入(直線移動)する形態としてもよい。この場合には上記した揺動リンク22は不要となって例えば駆動シリンダ23によって支持板21を直線的に出し入れするだけでよいので部品点数の削減には寄与できる。
【0038】
駆動手段30は、側面保持手段10で容器スタックCSの側面を保持しつつフランジ支持手段20でフランジCfの下側面を支持した状態で容器スタックCSを搬送する機能を有している。より具体的には、本実施形態の駆動手段30は、例えば後述する制御装置CPUによって統括制御される公知の六軸駆動が可能なロボットハンドが例示できる。
【0039】
本実施形態では、この駆動手段30としてのロボットハンドの先端部にフレーム手段50が設けられている。これにより本実施形態では、駆動手段30を介して上記した側面保持手段10やフランジ支持手段20を任意の姿勢に制御したり目的の場所へこれらを位置付けることが可能となっている。
なおフレーム手段50としては、上記した側面保持手段10やフランジ支持手段20を搭載可能であれば特に制限はなく、例えば上記した特開2006-187861号公報などのように金属材や樹脂材を用いた公知のフレーム構造が適用できる。
【0040】
開閉制御手段40は、前記した側面保持手段10における挟持板の開閉および前記したフランジ支持手段20の支持板21の開閉に関する制御を行う。より具体的には、本実施形態の開閉制御手段40は、不図示のメモリや制御装置CPUを備えた公知のコンピューターが例示できる。これにより、例えば本実施形態の挟持板は開ポジションP4と閉ポジションP3の切り替えが可能となり、支持板21は閉位置P1と開位置P2との間を揺動することが可能となっている。
【0041】
<容器スタック搬送方法>
次に図3~9もさらに参照しつつ本実施形態における容器スタック搬送方法について詳述する。この容器スタック搬送方法は、例えば上記したメモリにプログラムとして保存されて制御装置CPUによって実行可能な、側面保持手段10とフランジ支持手段20とを有する容器スタック搬送装置100を用いた搬送方法である。なおこの容器スタック搬送方法のプログラムは、上記メモリに格納される他、クラウドなどのネットワークを介してダウンロードされる形態であってもよい。
【0042】
すなわち図9に示すステップ1では、まず収容ボックス200上に側面保持手段10とフランジ支持手段20とが移動して位置付けられる(第1移動工程)。そして収容ボックス200上に側面保持手段10とフランジ支持手段20とが位置付けられるとき、これら側面保持手段10とフランジ支持手段20の状態は図3に示す「未保持移動モード」に設定される。
【0043】
より具体的に本実施形態では、上記した開閉制御手段40による制御の下で、未保持移動モードとして、側面保持手段10(挟持板)が開ポジションP4の状態であり、且つ、フランジ支持手段20(支持板21)が開位置P2の状態が設定される。なお、本実施形態の未保持移動モードではフランジ支持手段20(支持板21)が開位置P2の状態に設定されているが、これに限られずフランジ支持手段20(支持板21)は閉位置P1の状態に設定されていてもよい。
【0044】
ステップ1後のステップ2では、この収容ボックス200内に収容された未搬送の容器スタックCSの上方から、容器スタックCSの胴部と対向するように、前記した側面保持手段10とフランジ支持手段20とが下降する(下降工程)。そして収容ボックス200内に収容された未搬送の容器スタックCSの上方から側面保持手段10とフランジ支持手段20が下降するときは、これら側面保持手段10とフランジ支持手段20の状態は図4に示す「取出し下降モード」に設定される。
【0045】
より具体的に本実施形態では、上記した開閉制御手段40による制御の下で、取出し下降モードとして、側面保持手段10(挟持板)が開ポジションP4の状態であり、且つ、フランジ支持手段20(支持板21)が閉位置P1の状態が設定される。このように本実施形態では、側面保持手段10の挟持板が開ポジションP4の状態であって且つフランジ支持手段20の支持板21が閉位置P1の状態で搬送前の容器スタックCSに接近する。換言すれば、本実施形態における下降工程では、支持板21がフランジCfと接触するように閉位置P1の状態で未搬送の容器スタックCSの上方から下降する。
【0046】
すなわち、収容ボックス200内にフランジ支持手段20が挿入されたときに、これと同時に並行して最下段の容器CのフランジCfを支持板21で下支えすることが実現される。これにより、例えば容器スタックCSを側面保持手段10で保持する際に支持板21の揺動時間が省略しつつ規定された正しい位置関係で容器スタックCSをスムーズに保持することが可能となる。さらに図1及び4からも明らかなとおり、本実施形態の支持板21は、収容ボックス200内への挿入時に容器スタックCSの端よりも内側に位置する。したがって、上記した挿入時に支持板21が収容ボックス200と干渉することはないので、収容ボックス200の内寸を容器スタックCSの積層高さとほぼ同じくらいにしても容器スタックCSのスムーズな取り出しが実現できる。
【0047】
続くステップ3では、上記した制御装置CPUにより、不図示の光学センサーなど公知の検出手段を介して側面保持手段10とフランジ支持手段20が容器スタックCSまで到達したか否かが判定される。なお上記した容器スタックCSまでの到達判定の手法としては、上記光学センサーなどによる検知の他、収容ボックス200の位置情報を設定することでロボットハンドへのティーチングを実施することにより下降完了の判定を行うことができる。
【0048】
そして側面保持手段10とフランジ支持手段20の下降が完了したと判定された場合には、開閉制御手段40は、ステップ4において、側面保持手段10を駆動して上記閉ポジションP3の状態となるように制御する(側面保持工程)。この側面保持工程では、前記した最下段の容器CのフランジCfと支持板21とが接触した状態で容器スタックCSの側面が側面保持手段10の上記した挟持板で保持される。
【0049】
そして続くステップ5においては、制御装置CPUは、開閉制御手段40による容器スタックCSの側面保持が完了したか否かが判定されて、この側面保持が完了した場合には次いでステップ6に移行される。
すなわち、ステップ6では、側面保持手段10で容器スタックCSの側面を保持しつつフランジ支持手段20で上記したフランジCfを支持した状態で容器スタックCSを搬送する(搬送工程)。
【0050】
そして収容ボックス200内から容器スタックCSを把持して上昇して目的の場所へ当該容器スタックCSを搬送するときは、これら側面保持手段10とフランジ支持手段20の状態は図5に示す「搬送モード」に設定される。
【0051】
より具体的に本実施形態では、上記した開閉制御手段40による制御の下で、搬送モードとして、側面保持手段10(挟持板)が閉ポジションP3の状態であり、且つ、フランジ支持手段20(支持板21)が閉位置P1の状態が設定される。これにより、側面保持手段10によって容器スタックCSを保持しつつ最下段の容器CのフランジCfを下支えすることで、スムーズな抽出・搬送と意図しない傾倒の抑制とが両立される。
【0052】
なお図6に示すように、搬送工程の少なくとも一部の期間において、駆動手段30は、側面保持手段10及びフランジ支持手段20で挟持された容器スタックCSを鉛直方向に対して斜めに傾斜させて目的の場所へ容器スタックCSを搬送してもよい。これにより、搬送中の容器スタックCSの意図しない傾倒が更に抑制される。
【0053】
次いでステップ7では、搬送先である目的の場所へ容器スタックCSを保持した側面保持手段10及びフランジ支持手段20が到達したか否かが判定される。そして目的の場所へ未だ到達していない場合には上記した搬送動作が継続される一方で、到達した場合にはステップ8へ移行して容器スタックCSの開放動作が実行される。
【0054】
すなわちステップ8では、側面保持手段10とフランジ支持手段20による容器スタックCSの拘束(側面保持&フランジ下支え)を解除して容器スタックCSを開放する(開放工程)。より具体的に、開放工程では、図7に示すように側面保持手段10及びフランジ支持手段20で挟持された容器スタックCSを鉛直方向に対して斜めに傾斜させた状態でこれら側面保持手段10とフランジ支持手段20による拘束が解除されることが好ましい。
【0055】
なお前記した搬送工程で側面保持手段10及びフランジ支持手段20で拘束された容器スタックCSが鉛直方向に対して斜めに傾斜している場合には、開放工程においても引き続いて上記した傾斜状態が維持されることが好ましい。
【0056】
図7及び図8に容器スタックCSの拘束解除の手順(一例)とその後の状態遷移を示す。
すなわち図7に示すとおり、本実施形態においては、容器スタックCSの開放に際してはまず側面保持手段10の挟持板が上記した開ポジションP4の状態に移行する(図7における左側の状態)。これにより、容器スタックCSはフランジ支持手段20によって支持された状態となる。このとき、上述したとおり本実施形態では容器スタックCSが鉛直方向に対して斜めに傾斜しているため、引き続いて側面保持手段10の傾斜に倣って当該挟持板との接触は維持される。
【0057】
そして側面保持手段10の挟持板が上記した開ポジションP4の状態に移行した後、次いでフランジ支持手段20の支持板21が上記した揺動支点(基端24)を中心に旋回して閉位置P1から開位置P2の状態へ移行する(図7における右側の状態)。これにより、上記した下支えが解除された容器スタックCSは、図8に示すように、ブレード状の挟持板上を滑落しながら容器ホッパ301内へと滑り落ちることになる。このとき、上述したとおり支持板21は旋回してフランジCfから遠ざかるように揺動するため、容器スタックCSの滑落動作が不安定とならず前側へ傾倒してしまうことなどが抑制される。
【0058】
以上説明した実施形態は本発明の趣旨を具現化した一例であり、本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてもよい。さらには本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で公知の構造や手法を適宜追加して変形してもよい。
【0059】
例えば本実施形態では、フランジ支持手段20によって容器スタックCSのうち最下段の容器CのフランジCfを支持するストッパとしての機能していたが、これに加えて最上段の容器C図2参照)のフランジCfを上方からカバーする機構を更に設けてもよい。これにより、搬送時などにおける容器スタックCSの傾倒をさらに抑制することが可能となる。
【0060】
また、フランジ支持手段20は、容器スタックCSのうち最下段の容器CのフランジCfを支持することに加え、さらに最下段の容器Cと最上段の容器Cの間における1又は複数のフランジCfの底部をさらに支持する追加の支持板21を有していてもよい。これにより、容器スタックCSをさらに安定して下支えすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、ブレード状の側面保持手段10は容器スタックCSの軸方向に沿った直線形状となっていたが、この形状に限られず上記した傾倒が発生しない範囲において緩やかな曲面状を呈する形状となっていてもよい。
【0062】
また、本実施形態において、容器ホッパ301内に残存する容器の数量を検出する公知のセンサーを設け、このセンサーの検出結果に基づいて容器Cが不足している容器ホッパ301内に新たな容器スタックCSを容器スタック搬送装置100が投入するように構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態では図1に示すように2つの容器スタックCSが並置されるようにそれぞれ側面保持手段10及びフランジ支持手段20で拘束して目的の場所まで搬送したが、単一の容器スタックCSを搬送したり、3つ以上の任意の容器スタックCSを同時に搬送するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ピックアップから目的場所までの搬送時間の効率化と落下抑制とを高い次元で両立した容器スタックの搬送装置を実現するのに適している。
【符号の説明】
【0065】
100 容器スタック搬送装置
10 側面保持手段
20 フランジ支持手段
30 駆動手段
40 開閉制御手段
50 フレーム手段
200 収容ボックス
300 処理装置
301 容器ホッパ
302 容器受け開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9