(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】浸水防止装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240208BHJP
E06B 9/00 20060101ALI20240208BHJP
E02B 7/22 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E06B9/00 Z
E02B7/22
(21)【出願番号】P 2020088036
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】横山 美憲
(72)【発明者】
【氏名】石田 正利
(72)【発明者】
【氏名】浅田 浩二
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079775(JP,A)
【文献】特開2001-525025(JP,A)
【文献】特開2005-188029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E06B 9/00
E02B 7/00 - 7/22
E06B 5/00
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水が想定される位置に堰として設置され、該位置背後への浸水を防止する浸水防止装置であって、
起立して前記堰となる壁面シートと、該壁面シートの下端で連なり接地面に敷設される底面シートとからなるシート材と、
前記シート材の幅方向の両端近傍に設けられ、前記底面シートの接地面に対する平面性と前記壁面シートの起立状態での平面性とを保持するフレームと、
前記フレームに両端が支持され、前記フレームとともに前記シート材の平面性を保持する保形部材と、
前記壁面シート上部と前記底面シートとの間に張設された網状体と、
前記底面シート側のフレームと前記壁面シート側のフレームとの間に着脱自在に掛け渡される角度保持部材と
を備え、
設置時に、前記角度保持部材で前記底面シートに対して前記壁面シートの起立角度を保持させ、
浸水時に、前記網状体で前記壁面シートへの作用水圧による前記壁面シートの転倒モーメントに引張抵抗することを特徴とする浸水防止装置。
【請求項2】
前記シート材の端辺に設けられた連結部材を介して前記浸水防止装置が前記堰の長手方向に連接される請求項1に記載の浸水防止装置。
【請求項3】
前記保形部材は、前記フレーム間に設けられた筒状袋体内に収容され、前記フレームに支持される請求項1に記載の浸水防止装置。
【請求項4】
前記保形部材は、パイプ部材である請求項1または請求項3に記載の浸水防止装置。
【請求項5】
前記底面シートは、前記底面シートに付設された前記フレームの長さより少なくとも100mm以上長く設定された請求項1項に記載の浸水防止装置。
【請求項6】
前記連結部材は、前記シート材の端辺に設けられた線ファスナーと、該ファスナーを覆う防水カバーを前記シート材に連結するレールファスナーとを有する請求項2項に記載の浸水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浸水防止装置に係り、雨水等による浸水発生のおそれのある場所に迅速に組み立てて設置して、背後にある家屋や敷地内への雨水等の浸水を阻止する浸水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲリラ豪雨による都市型水害が多く発生している。河川氾濫による堤防からの浸水だけでなく、たとえば河川氾濫のおそれのない住宅街においても、道路下に設けられている雨水排水経路への浸透能力、排水能力を超えるような短時間での集中的な降雨により、道路が冠水し、その冠水の範囲が沿道の住宅街等に拡大し、各住宅敷地内へ処理できない雨水が流入するという家屋の浸水被害が特徴のひとつである。
【0003】
このような事態に備えて、地下街、地下鉄の集まる市街地では、地下街や地下鉄出入り口などに浸水を食い止める遮水(止水)板などの防災設備を備えている所もある。しかし、一般のビル等では、浸水のおそれのある玄関等の箇所に、所定高さまで土のうを積み上げて簡易な止水堰を作り、浸水を食い止めるような応急的な対策しかとられていない。しかし、土のうは土砂等を袋詰めしたものであり、多数の土のうを事前に製作し、浸水のおそれのある箇所に運んで積み上げなければならず、緊急な浸水対策がとれないのが現状であった。
【0004】
この土のうによる対策での問題を改善することができる水防壁用袋体が提案されている(特許文献1)。この水防壁用袋体は、取水口と空気抜け口とが形成された細長い三角柱状袋体で、浸水時に止水する水を袋体内に流入させて水防壁とするものである。
【0005】
特許文献1に開示した水防壁用袋体では、水防壁の壁高は袋体内に流入した水量分に応じて決まるため、水防壁の壁高は浸水深さに近い状態にあるため、越波の危険性がある。
【0006】
そこで、このような越波の状況を防止するために、自立した堰壁を備え、浸水時にその水圧を受けて堰壁部が起立して所定の壁高を確保できるようにした浸水防止堰も提案されている(特許文献2)。この浸水防止堰は、底面部と、壁体の剛性と平面性を確保するために、内部に芯材を収容する袋状の芯材収容部を有する堰壁部と、起立した堰壁部と底面部との角度を保持するための規制隔壁部とから構成され、堰壁部は浸水時に、水圧を受けて倒伏状態から起立して壁高の堰を構成して浸水を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-55945号公報
【文献】特開2016ー79775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示された浸水防止堰は、1枚の底面部上に複数個の芯材収容部からなる堰壁部と規制隔壁部とを交互に並べて形成しているため、組立時にすべての芯材収容部の袋体内に板状の芯材を挿入、収容する手間があり、緊急の浸水時に迅速な対応がとれないおそれがある。また、設置後において堰壁部の起立動作は堰壁部に作用する水圧によるため、水深が30cm程度に達する必要があることが実験で確認されている。このため、水深が所定深さに達するまで堰として機能しないという問題がある。
【0009】
また、特許文献1,2の浸水防止堰では、浸水時に流れてきた流木や浮遊物が堰壁部(壁体)に直接衝突して壁体が破損したり、沈殿物が壁体底部に堆積してしまうおそれもある。
【0010】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、浸水時に迅速に設置でき、水深が浅い場合にも確実に浸水防止効果を発揮でき、壁体部が流木や浮遊物によるダメージを直接受けるのを防止できる浸水防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の浸水防止装置は、浸水が想定される位置に堰として設置され、該位置の背後への浸水を防止する浸水防止装置であって、起立して前記堰となる壁面シートと、該壁面シートの下端で連なり接地面に敷設される底面シートとからなるシート材と、前記シート材の幅方向の両端近傍に設けられ、前記底面シートの接地面に対する平面性と前記壁面シートの起立状態での平面性とを保持するフレームと、前記フレームに両端が支持され、前記フレームとともに前記シート材の平面性を保持する保形部材と、前記壁面シート上部と前記底面シートとの間に張設された網状体と、前記底面シート側のフレームと前記壁面シート側のフレームとの間に着脱自在に掛け渡される角度保持部材とを備え、設置時に、前記角度保持部材で前記底面シートに対して前記壁面シートの起立角度を保持させ、浸水時に、前記網状体で前記壁面シートへの作用水圧による前記壁面シートの転倒モーメントに引張抵抗することを特徴とする。
【0012】
前記シート材の端辺に設けられた連結部材を介して前記浸水防止装置が前記堰の長手方向に連接されることが好ましい。
【0013】
前記保形部材は、前記フレーム間に設けられた袋体内に収容され、前記フレームに支持されることが好ましい。
【0014】
前記保形部材は、パイプ部材であることが好ましい。
【0015】
前記底面シートは、前記底面シートに付設された前記フレームの長さより少なくとも100mm以上長く設定することが好ましい。
【0016】
前記連結部材は、前記シート材の端辺に設けられた線ファスナーと、該ファスナーを覆う防水カバーを前記シート材に連結するレールファスナーとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゲリラ豪雨等の発生において、市街地、住宅地等での急激な増水等による家屋、地下街等の浸水防止に迅速に対応でき、浸水被害を確実に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による浸水防止装置の組み立て後を示した概略斜視図。
【
図2】浸水防止装置の折り畳み状態~組み立て時の形状変化を示した状態説明図。
【
図3】
図2に示した浸水防止装置の組み立て時の形状変化を示した側面図。
【
図4】浸水防止装置の使用状態(浸水時)及びシート材への作用水圧分布を模式的に示した側面図。
【
図5】浸水防止装置を連接して浸水防止壁を構築した状態を示した概略斜視図。
【
図6】
図5に示したシート材端辺の連結部位を拡大して示した部分拡大図。
【
図7】コーナー部、止水端部とを設けた浸水防止装置の設置例を模式的に示した説明図。
【
図8】コーナー部、止水端部に用いられるシートの一例を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の浸水防止装置10の基本ユニットの構成と、その組み立て状態について、
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による浸水防止装置10の基本ユニットとしての基本構成を浸水の流入側から示している。
図2は、浸水防止装置10の設置時及び撤収時における折り畳み状態~起立状態の形状変化を示している。
【0020】
浸水防止装置10は、
図1に示したように、底面シート12と壁面シート13とを構成するシート材と、シート材11の長さ方向の平面性と壁面シート13が起立した状態での剛性とを保持する平板フレーム20と、平板フレーム20に両端が支持され、シート材11の幅方向を保持する保形部材としての保形パイプ15と、壁面シート13の上部と底面シート12との間に張設され、浸水時に壁面シート13に作用する水圧による転倒モーメントに引張抵抗する網状体としてのメッシュシート30とを主構成としている。さらに、基本ユニットとしての浸水防止装置10を長手方向に連結するために、シート材11の両端辺に沿って連結部材35が設けられている。
図1に示した組み立て状態において、壁面シート13の傾斜角α(
図3(c))は、75°に設定されているが、後述する斜材21の長さ、係止角度を適宜調整することで傾斜角αは適宜設定できる。壁面シート13の受ける水圧に有効に抵抗できる角度として実用的には45~90°程度とすることが好ましい。
【0021】
本実施形態に係るシート材11は、底面シート12の長さL1は600~1,600mmで、壁面シート13の長さL2は500~1,500mmで、長さ1,100~3,100mmの1枚のシート材11の中程を折り曲げるようにして使用されている。シート材11には合成樹脂コーティング織布シートが用いられている。織布シートは厚さ0.35mmの防水性を有するシートで、ポリエステル系の基布の両面に、塩化ビニル樹脂が含浸コーティングされた被覆層を有する。この織布シートは柔らかく軽量で、折り曲げ、運搬が容易で取り扱いしやすいため、浸水防止装置10を使用しない場合には、後述するように、折り畳んで倉庫、物置等に保管しておくことが可能で、使用時にも容易に持ち運びすることが可能である。シート材11は、浸水防水装置10の使用部位や規模にもよるが、シート重量は1.0kg/m程度、厚さは耐久性を考慮して0.3~2.0mm程度、好ましくは0.3~1.0mm程度とすることが好ましい。基布にはポリエステル系の他、ポリアミド系、ポリアラミド系、ポリビニルアルコール系又はオレフィン系樹脂の合成繊維糸やケナフ等の天然繊維糸の織布を用いることができる。被覆層はフッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム又はオレフィン樹脂等で構成してもよい。
【0022】
本実施形態の平板フレーム20は、
図1に示したように、底面シート12、壁面シート13それぞれの幅方向の両端辺の近傍に取り付けられた細長のアルミニウム板からなる。装置の設置時における底面シート12の接地面に対する平面性と壁面シート13の起立状態での平面性とを保持する役割を果たす。幅方向の延長が長い場合には、両端だけでなく、中間位置に所定間隔で配置することが好ましい。また、本実施形態では、シート面に袋状部を形成し、その中に平板フレーム20が挿入されているが、ねじ止め等によりシートに固定したり、シート面に貼着させてもよい。平板フレーム20の長さは、壁面シート13側、底面シート12側ともに壁面シート13の長さL2にほぼ等しい。よって底面シート12側では、底面シート12の長さがL1であるので、底面シート12の長さは平板フレーム20よりも100mm程度長くなっている。平板フレーム20のない底面シート12のみの部分12aは控え部となり、接地時における地面との段差を吸収する部位として機能する。本実施形態では、角度保持用の斜材21が、片側の壁面シート13側のフレーム20と底面シート12側のフレーム20との間に取り付けられている。この斜材21は、底面シート12側の一端が底面シート12に対して回動ピン22を介して支持フランジ23に支持され、他端には係止フック24が形成され、壁面シート13を所定角度αに起立させた際に、壁面シート13側のに受け金25に係止することで、壁面シート13を
図1に示した角度に保持させることができる。支持フランジ23、受け金25はヒンジ(図示せず)を介して底面プレート12、壁面プレート13の所定位置に取り付けられている。本実施形態ではフレームとして、細長の平板を用いているが、円形、楕円形、扁平な長円形、各種の角形断面のパイプ、扁平な不等辺山形鋼等を用いてもよい。その場合には部材の取付位置等を調整して折り畳み時の部材間の干渉を避けることが好ましい。また素材としては、アルミ板の他、帯鋼板、比重1以上の各種の合成樹脂板材、ガラス繊維補強樹脂板材等を使用できる。また、装置構成、配置等については各種のバリエーションが可能である。たとえば、斜材21を両側の平板フレーム20に設けてもよい。回動ピン22、支持フランジ23を壁面プレート13側に、係止フック24、受け金25を底面プレート12側に配置することもできる。
【0023】
保形パイプ15は、平板フレーム20とともにシート材11の幅方向の平面性を保持する部材で、装置の組み立て時にパイプホルダ16内を介して平板フレーム20に取り付けられる。パイプホルダ16は、
図1に示したように、底面フレーム20に1カ所、壁面フレーム20に2カ所に設けられている細長い筒状の袋体である。袋状のパイプホルダ16内に保形パイプ15を挿入することで保形パイプ15を平板フレーム20の両端に支持させることができる。本実施形態では、保形パイプ15の本数は上述したとおりだが、本数、配置位置は装置の大きさ等により適宜設定できる。また、保形パイプとしてアルミニウムパイプが用いられているが、装置各部の所要強度に応じてパイプ肉厚、素材等も適宜選定できる。さらに、設置時の底面シート12の安定を図るために、底面シート12側の保形パイプ15に鋼管パイプ、無垢の鋼棒等を使用して重量増を図ってもよい。
【0024】
メッシュシート30は、壁面シート13上部のパイプホルダ16取り付け位置付近と底面シート12のパイプホルダ16取り付け位置付近との間に張設された、自由に通水可能な目合いのメッシュからなるネット状のシートで、浸水時に壁面シート13に水圧が作用した際に、底面シート12との間の引張部材として機能して、水圧によって生じる壁面シート13に対する転倒モーメントに引張抵抗する(
図4参照)。また、このメッシュシート30は、浸水時に装置に流れてくる流木等の漂流物、浮遊物2や水底で流動して堆積するゴミ等の沈殿物3を捕捉し、これらが壁面シート13や装置の各部に衝突して破損させるのを防止する役割も果たす。本実施形態ではメッシュシート30として目合い2mmのポリエステル基布に塩化ビニル樹脂コーティングされたネットが使用されているが、目合いは2~50mmの範囲で適宜設定してよく、またメッシュシート30としては各種合成樹脂製ネットの他、通水可能な粗い目合いの織物でもよいし、交点を熱溶着したグリッド状ネットでもよい。
【0025】
本実施形態の連結用部材35は、基本ユニットとしての浸水防止装置10を長手方向に複数個連結するためにシート材11の両端辺に沿って設けられた線ファスナー36と、線ファスナー36を覆う防水カバー37の端部を定着させるレールファスナー38とからなる。
図1にはシート材11の手前側の端辺に沿って線ファスナー36の一方のテープと、防水カバー37のレールファスナー38の一方のレールとが並んで取り付けられた状態が示されている。なお、
図1のシート材11の奥側に示された他の端辺にはシート材11にあらかじめ縫着された防水カバー37が示され、線ファスナー36の他方のテープは防水カバー37で覆われている。なお、防水機能を有する線ファスナーを使用する場合には防水カバーは省略できることは言うまでもない。また、レールファスナーに代えて面ファスナー等を使用することできる。
【0026】
本発明の浸水防止装置10の組み立て手順について、
図2各図、
図3各図を参照して説明する。折り畳み状態の浸水防止装置10の基本ユニットを目的箇所に搬入し、各装置10が浸水防止対象(図示せず)を囲んで列をなすように並べて平置き設置する(
図2(a)~(c))。その後、壁面シート13、底面シート12の各パイプホルダ16の袋体内に保形パイプ15を収容して壁面シート13を起立させる(
図3(b))。壁面シート13を所定傾斜角αまで起立させた状態で、斜材21の係止フック24を壁面シート13の受け金25に係止して所定の傾斜角αを保持する。一方、装置10を片付ける場合は、
図2(d)~(a)の手順で保形パイプ15を取り外したシート材11を畳むことでコンパクトな折り畳み形状とすることができる。
【0027】
図4は、浸水時における本発明の浸水防止装置10の使用状態を示している。同図に示したように、この浸水防止装置10では、壁面シート13に浸水の水深に相当する静水圧P1が作用し、壁面シート13を転倒させるように矢印方向回りの転倒モーメントMが作用する。この転倒モーメントMに抵抗するように、メッシュシート30には引張力Tが生じるが、底面シート12に定着されているメッシュシート30の下端が鉛直水圧P2の作用によって堅固に保持されている底面シート12に定着されているため、メッシュシート30は引張抵抗材として機能し、壁面シート13の安定が保持される。
【0028】
また、
図4に示したように、メッシュシート30は水面近くに浮く流木やゴミなどの浮遊物2や水底近くの沈殿物3が壁面シート13に衝突したりするのを防止する役割を果たす。また、浸水がおさまって浸水防止装置10を撤収する際に、メッシュシート30に捕捉されたゴミ等を分別して容易に取り除くことができる。
【0029】
図5は、
図1に示した基本ユニットとしての浸水防止装置10を複数個(図では3個のみを示しているが、所望の壁体長に相当とする個数)横方向に並べて連接して浸水防止壁を構築した状態を示している。隣接した浸水防止装置同士を連接する際は、
図6に連結部材35の各部を拡大して示したように、隣接する浸水防止装置10のシート材の端辺に設けられた連結部材35の線ファスナー36同士を噛合して連結する。そして、線ファスナー36による連結部位を防水カバー37で覆って防水カバー37の端部に取り付けられたレールファスナー38のレールと、隣接する装置10のシート材11の端辺近傍に取り付けられたレールファスナー38のレールとを連結して、装置の連接部位の防水性を確保する。
【0030】
図7は、建物1の出入り口2から建物内への浸水を防止するために、本発明の浸水防止装置10を、出入り口2を囲むように設置した適用例を示している。同図に示した浸水防止装置10では、隣接する装置が直角をなすように配置される箇所において、コーナー部を構成するコーナーシート40が浸水防止装置10のシート材11の端部に取り付けられている。さらに、建物1の外壁面3に面する浸水防止装置10の端部(以下、止水端部と記す。)には、建物1の外壁面3と浸水防止装置10との間の止水を果たすために、端部シート45が浸水防止装置10のシート材11の端部に取り付けられている。
【0031】
図8両図は、コーナーシート40、端部シート45の展開状態を示した正面図である。コーナーシート40、端部シート45は、浸水防止装置10のシート材11と同じ素材で、浸水防止装置10の各部寸法に合致した寸法に製造されたオプション部品である。
【0032】
コーナーシート40は、
図8(a)に示したように、設置時にコーナー部の底面となる底面シート40aと、底面シート40と一体形成された、コーナー部の壁面となる壁面シート40bとからなる。コーナーシート40の両端辺には、浸水防止装置10のシート材の端辺に設けられた線ファスナー36と噛合可能な線ファスナー36が取り付けられている。
図7に示した適用例では、コーナー部が直角をなすように浸水防止装置10が設置されるため、底面シート40は、対向した斜辺が直角(θ=90°)をなす略台形形状となっている。よって、設置時におけるコーナー部のなす角度に応じた角度θを有する形状の底面シートとすればよい。
【0033】
端部シート45は、
図8(b)に示したような長方形形状のシート材で、片方の端辺に、浸水防止装置10のシート材の端辺に設けられた線ファスナー36と噛合可能な線ファスナー36が取り付けられている。
図7に示した適用例では、建物1の外壁面3と浸水防止装置10との間の止水を果たすために、建物1に面する浸水防止装置10のシート材の端部に接続され、装置10と外壁面3との距離を調整した長さの底面と壁面とを構成する調整しろ45aと、建物1の外壁面3と密着する面45bとが形成されるように、タック45cを作って折り畳まれている。なお、調整しろ45aが決まるように浸水防止装置10を設置できる場合には、あらかじめ端部シート45を、外壁面3に密着する面、底面シート、壁面シートが一体となった立体形状に作っておくこともできる。
【0034】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 浸水防止装置
11 シート材
12 底面シート
13 壁面シート
15 保形パイプ
20 フレーム
21 斜材
30 メッシュシート
35 連結部材
36 線ファスナー
37 防水カバー
38 レールファスナー
40 コーナーシート
45 端部シート