(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】強磁性体および巻線を備えるELORAN受信機およびアンテナ、ならびに関連方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/29 20060101AFI20240208BHJP
H01Q 7/08 20060101ALI20240208BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240208BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240208BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240208BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01Q21/29
H01Q7/08
H01Q1/24 Z
H01Q13/08
H01Q21/24
H01P11/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020088544
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-05-22
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520120075
【氏名又は名称】イーグル・テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・イー・パルシェ
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0160370(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0103025(US,A1)
【文献】特開2003-092509(JP,A)
【文献】特開2019-062372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/29
H01Q 7/08
H01Q 1/24
H01Q 13/08
H01Q 21/24
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増強長距離ナビゲーション(eLORAN)受信機であって、
アンテナと、該アンテナに連結されたeLORAN受信機回路とを備え、
前記アンテナが、eLORANブロードキャスト信号を受信するように構成され、
前記アンテナが、
強磁性中間部分、および該強磁性中間部分から外向きに延びる複数の強磁性アームを備える強磁性コアと、
前記複数の強磁性アームの各々を取り囲み、前記eLORA
Nブロードキャスト信号のそれぞれの磁界信号に応答するように構成される個別導電性巻線と、
前記強磁性コアに隣接し、前記eLORANブロードキャスト信号の電界信号に応答するように構成される導電性パッチ素子と、
を備え、前記eLORAN受信機回路が、電界信号振幅および磁界信号振幅の間の差に基づいて位置の誤差を補正する補償係数を適用するように構成される、eLORAN受信機。
【請求項2】
前記eLORAN受信機回路は、電界対磁界振幅比、電界対磁界位相差、および電界対磁界パルス到着時間差を計算するように構成され、
前記eLORAN受信機回路は、前記電界対磁界振幅比、前記電界対磁界位相差、および前記電界対磁界パルス到着時間差に基づいて前記位置を補正するように構成される、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項3】
前記導電性パッチ
素子が前記強磁性コアの第1の側に隣接し、
前記アンテナが、前記強磁性コアの前記第1の側とは反対側にある、前記強磁性コアの第2の側に隣接する導電性接地面を備える、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項4】
前記複数の強磁性アームが整列対に配置される、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項5】
前記アンテナが、前記個別導電性巻線および前記導電性パッチ素子に連結された少なくとも1つの給電点を備える、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項6】
前記導電性パッチ素子がディスク形状である、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項7】
前記複数の強磁性アームが十字形状を画定する、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項8】
前記強磁性コアが、フェライト、粉末鉄、電炉鋼、およびナノ結晶鉄のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のeLORAN受信機。
【請求項9】
増強長距離ナビゲーション(eLORAN)受信機回路に連結されるアンテナであって、当該アンテナが、eLORANブロードキャスト信号を受信するように構成され、
強磁性中間部分、および該強磁性中間部分から外向きに延びる複数の強磁性アームを備える強磁性コアと、
前記複数の強磁性アームの各々を取り囲み、前記eLORA
Nブロードキャスト信号のそれぞれの磁界信号に応答するように構成される個別導電性巻線と、
前記強磁性コアの第1の側に隣接し、前記eLORANブロードキャスト信号の電界信号に応答するように構成される導電性パッチ素子と、
前記強磁性コアの前記第1の側とは反対側にある、前記強磁性コアの第2の側に隣接する導電性接地面と、
を備える、アンテナ。
【請求項10】
前記eLORAN受信機回路が、複数の前記磁界信号および前記電界信号に基づいて位置を補正するように構成される、請求項9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記eLORAN受信機回路が、電界対磁界振幅比、電界対磁界位相差、および電界対磁界パルス到着時間差を計算するように構成され、
前記eLORAN受信機回路が、前記電界対磁界振幅比、前記電界対磁界位相差、および前記電界対磁界パルス到着時間差に基づいて前記位置を補正するように構成される、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記複数の強磁性アームが整列対に配置される、請求項9に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記個別導電性巻線および前記導電性パッチ素子に連結された少なくとも1つの給電点をさらに備える、請求項9に記載のアンテナ。
【請求項14】
増強長距離ナビゲーション(eLORAN)受信機を作製するための方法であって、前記eLORAN受信機がeLORANブロードキャスト信号を受信するように構成され、当該方法が、
強磁性中間部分、および該強磁性中間部分から外向きに延びる複数の強磁性アームを備える強磁性コアを形成するステップと、
前記複数の強磁性アームの各々を取り囲み、前記eLORA
Nブロードキャスト信号のそれぞれの磁界信号に応答するように構成される個別導電性巻線を配置するステップと、
前記強磁性コアに隣接し、前記eLORANブロードキャスト信号の電界信号に応答するように構成される導電性パッチ素子を配置するステップと、
電界信号振幅および磁界信号振幅の間の差に基づいて位置の誤差を補正する補償係数を適用するために、eLORAN受信機回路を、前記個別導電性巻線および前記導電性パッチ素子に連結するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、通信システムの分野に関し、具体的には、無線周波数アンテナおよび関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 例えば、超低周波(VLF)、低周波(LF)、中周波(MF)の範囲の無線周波数(RF)通信では、そのような信号を送信するために、比較的大きな地上アンテナタワーが使用される。そのようなアンテナ構成は、その台座で地面に接続されている高さ数百フィートのタワーを含み得、安定のため、多数の張り綱でタワーを地面に接続している。
【0003】
[0003] 中波アンテナシステムの一例が、メンデンホールの米国特許第6,873,300号に開示されている。本特許は、接地地面に対してほぼ垂直に延びる導電性放射マストを含むアンテナシステムを開示している。マストは、それによって動作RF周波数で放射用RFエネルギーを受け取る下方端部と、上方端部とを有する。各々が内側端部および外側端部を有する、複数のN本の放射状導電性ワイヤが設けられている。放射状ワイヤの内側端部は合わせて電気的に接続され、垂直マストの近くに配置されている。放射状ワイヤは、その全長にわたって、接地地面の高さよりも上にあり、垂直マストから外向きに放射状に延びている。放射状ワイヤが動作周波数で共振するようにそのインピーダンスを調整するために、調整可能インダクタなどの同調デバイスが放射状ワイヤに接続されている。
【0004】
[0004] 大規模タワーベースのアンテナが使用される別の例は、長距離ナビゲーション(LORAN)システムなどのナビゲーションシステム用低周波送信局である。LORANは第二次世界大戦中にアメリカとイギリスで開発された。LORAN-Cや、後の増強LOng-RAnge Navigation(eLORAN)の実施を含むその後の実施では、精度と有用性の増強が提供された。より具体的には、eLORANは、90~110kHzの周波数帯域で動作する低周波無線ナビゲーションシステムである。低周波eLORAN送信は、地表を進む一種の表面波である地上波によって伝搬し得る。電離層反射または上空波は、eLORAN波伝搬のもう1つの重要なメカニズムである。典型的な低周波アンテナでは、タワー自体がモノポールアンテナとして使用される。動作波長の結果として600フィート以上になり得るタワーの高さのために、多数の上部ワイヤがタワーの頂部に接続されて共振コンデンサを形成する。これらのワイヤは、トップローディングエレメント(TLE)として知られ、中実錐体に近似し得る。
【0005】
[0005] eLORANは、100kHzなどの低周波数で動作し、送信アンテナの物理的サイズを大きくし得る。しかし、eLORANでは、アンテナの電気的サイズは波長に比べて小さい。物理学的特性により、電気的に小型のアンテナの固定同調帯域幅が制限されることがある。1つの理論は、参考文献“Physical limitations of omnidirectional antennas”,Chu,L.J.(December 1948),Journal of Applied Physics 19:1163-1175に記載されているようなChu Limitであり、上記文献は本明細書で参考文献と称する。Chuの帯域幅限界方程式は、Q=1/kr3であり、ここで、Qは帯域幅に関連する無次元数、kは波数=2π/λ、およびrはアンテナを包囲する球形解析容積の半径である。アンテナ放射帯域幅は、立ち上がり時間の速い鮮明なeLORANパルスを送信することを可能にするため、eLORANにとって非常に重要なものである。
【0006】
[0006] 送信アンテナには高い放射効率が必要であるが、eLORAN受信アンテナには高いアンテナ効率は必要ではない。これは、自然発生的「大気ノイズ」が、eLORANが使用する低周波数で豊富であるからである。大気ノイズはスペクトル割り当てにおいて非常に重要なものであるため、国際電気通信連合によって、報告書“Radio Noise”,Recommendation ITU-R P.372-8,FIG.2“Fa Versus Frequency”としてカタログ化されている。この報告書の曲線Bおよび曲線Aは、100kHzの周波数で、大気ノイズは、静かな自然状態でアンテナ熱ノイズよりも77dB高く、その人工ノイズは、高い人工ノイズ状態でアンテナ熱ノイズよりも140dB高い、すなわち、いわば著しい「静電気」が存在することを示している。受信機ノイズ数値(トランジスタ熱ノイズ)の寄与が約10dBであると仮定し、電気的に小型のアンテナの指向性が1.8dBを超え得ないことを認識すると、静かな状態での自然ノイズを解決するために必要な受信アンテナ増幅率は、等方性に関して、-77+10+1.8=-65dBiまたはデシベルである。したがって、eLORAN周波数では、小型アンテナは受信に十分である。
【0007】
[0007] eLoran送信を受信するアンテナは、電界タイプと磁界タイプとに分類される。電界アンテナはホイップまたはパッチであり得、磁界タイプは円または巻線であり得る。電界タイプは、電流の発散に基づいており、ダイポールおよびモノポールに関連する。磁界タイプは、電流の渦巻きに基づき、したがって、ループおよびハーフループに関連する。電界および磁界の両方のアンテナタイプが、遠距離場電波に応答して、有用な受信を提供する。さらに、電界および磁界の両方のアンテナタイプが、遠距離場電波中に存在する電界および磁界の両方に応答する。
【0008】
[0008] 2つの受信アンテナタイプの間には多くのトレードが存在する。電界アンテナタイプと磁界アンテナタイプの近接場応答間には、重要な違いがある。電界タイプは、強力な放射状電界反応性近接場応答を有する。それとは異なり、磁界タイプは、強力な放射状磁界反応性近接場応答を有する。電界アンテナは、磁界アンテナタイプよりも多くの人工的な電磁干渉(EMI)を捕捉し得る。高電圧送電線などの人間の付属品は、かなりの電荷分離と強い電界EMIとをもたらし、電界タイプの受信アンテナはそれに応答する。しかしながら、電界アンテナタイプは、コンパクトさと感度の点で有用である。磁界受信アンテナでは、局在EMIの除去、電荷蓄積によるP静電気またはノイズの除去、および到来方向情報が改善され得る。磁界アンテナの欠点には、フェライトロッドが使用され得るため、コストの増加が含まれ得る。
【0009】
[0009] グローバルポジショニングシステム(GPS)などの衛星ベースのナビゲーションシステムの台頭に伴い、eLORANなどの地上ベースのナビゲーションシステムの開発やそれへの投資は、最近までほとんどなかった。特に低周波eLORAN信号は、比較的高周波数のGPS信号と比較して、電波妨害やなりすましの影響を受けにくいため、衛星ナビゲーションシステムのバックアップとして、このようなシステムへの新たな関心が高まっている。したがって、特定の用途では、eLORANアンテナシステムのさらなる開発が望ましくなり得る。
【0010】
[0010] 上記のように、eLORANシステムの動作周波数と、陸上車両および船舶の典型的な配置とを考えると、eLORANアンテナの設計には、固有の設計問題が存在し得る。特に、eLORANアンテナのモバイルアプリケーションを考えると、アンテナは、小型で耐久性があることが望ましくなり得る。eLORAN受信アンテナが人間の複雑な環境で機能し、正確なナビゲーションおよび時間を提供することは重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011] 概して、eLORAN受信機は、アンテナと、それに連結されたeLORAN受信機回路とを含み得る。アンテナは、強磁性中間部分およびそこから外向きに延びる複数の強磁性アームを備える強磁性コアと、複数の強磁性アームの各々を取り囲む個別導電性巻線とを備え得る。アンテナは、強磁性コアに隣接する導電性パッチ素子をさらに含み得る。
【0012】
[0012] 特に、強磁性コアおよび個別導電性巻線は、複数の磁界信号に応答するように構成され得、導電性パッチ素子は、電界信号に応答するように構成され得る。eLORAN受信機回路は、複数の磁界信号と電界信号とに基づいて位置を補正するように構成され得る。eLORAN受信機回路は、電界対磁界振幅比、電界対磁界位相差、および電界対磁界パルス到着時間差を計算するように構成され得る。eLORAN受信機回路は、電界対磁界振幅比、電界対磁界位相差、および電界対磁界パルス到着時間差に基づいて位置を補正するように構成され得る。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態では、アンテナは、導電性パッチ素子の反対側に導電性接地面を備え得る。複数の強磁性アームは、整列対に配置され得る。アンテナは、個別導電性巻線および導電性パッチ素子に連結された少なくとも1つの給電点を備え得る。
【0014】
[0014] さらに、導電性パッチ素子は、ディスク形状であり得る。複数の強磁性アームは、十字形を画定し得る。強磁性コアは、例えば、フェライト、粉末鉄、電炉鋼、およびナノ結晶鉄のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0015】
[0015] 別の態様は、eLORAN受信機回路に連結されるアンテナに関する。アンテナは、強磁性中間部分およびそこから外向きに延びる複数の強磁性アームを備える強磁性コアと、複数の強磁性アームの各々を取り囲む個別導電性巻線とを備え得る。アンテナは、強磁性コアに隣接する導電性パッチ素子を含み得る。
【0016】
[0016] さらに別の態様は、eLORAN受信機回路に連結されるアンテナを作製する方法に関する。方法は、強磁性中間部分およびそこから外向きに延びる複数の強磁性アームを備える強磁性コアを形成することと、複数の強磁性アームの各々を取り囲む個別導電性巻線を配置することと、を含み得る。方法は、導電性パッチ素子を強磁性コアに隣接して配置することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示によるeLORAN通信システムの概略図である。
【
図2】
図1のeLORAN通信システムのeLORAN受信機である。
【
図3】従来技術による、橋の近くで取得される指示LORAN位置データの図である。
【
図4A】
図2のeLORAN受信機のアンテナの概略斜視図である。
【
図4B】
図2のeLORAN受信機のアンテナの概略側立面図である。
【
図4C】
図2のeLORAN受信機のアンテナの概略上面図である。
【
図5】
図2のeLORAN受信機のアンテナで位置データを補正する方法のフローチャートである。
【
図6】
図2のeLORAN受信機のアンテナの性能の図である。
【
図7】
図2のeLORAN受信機のアンテナを作製する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0026] ここで、本開示のいくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照して、本開示を以下により十分に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書で説明される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完成したものとなるように、そして本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。全体を通して、同じ番号は同じ要素を指す。
【0019】
[0027] まず
図1~
図3を参照して、ここで、本開示によるeLORAN通信システム10を説明する。eLORAN通信システム10は、例示的に、eLORANブロードキャスト信号を送信するように構成されたeLORANブロードキャスト局11を含む。
【0020】
[0028] eLORAN通信システム10の一部ではないが、複数のGPS衛星13a~13cが示されている。複数のGPS衛星13a~13cからのGPS信号の低電力性および高周波数性のために、それぞれのGPS信号は、自然および人工的な干渉(例えば、なりすまし、電波妨害)を受けやすいことを理解されたい。このため、本明細書で詳述するように、eLORAN通信システム10を提供することが役立つ。
【0021】
[0029] eLORAN通信システム10は、例示的に、複数の車両14a~14bを含む。図示の実施形態では、複数の車両14a~14bは、例示的に、船舶14aと、陸上車両14bとを含む。複数の車両14a~14bの各々は、例示的に、eLORANブロードキャスト信号を受信および処理するように構成されたeLORAN受信機15a~15bを含む。
【0022】
[0030] 各eLORAN受信機15a~15bは、例示的に、アンテナ16と、それに連結されたeLORAN受信機回路17とを含む。eLORAN受信機15a~15bは、例示的に、eLORAN受信機回路17に連結され、eLORANブロードキャスト信号に基づいて位置/場所データを決定するように構成されたプロセッサ18を含む。理解されるように、eLORAN受信機15a~15bは、複数の受信アンテナのRF出力を受信および処理するために、複数の内部受信機を含み得る。
【0023】
[0031] 当業者には理解されるように、アンテナ16は、磁界および電界アンテナである。電界アンテナは、近接電界に対して強い応答性を有し、磁界アンテナは、近接磁界に対して強い応答性を有する。また、典型的な磁界アンテナは閉電気回路ループであり、電界アンテナは開回路ホイップである。
【0024】
[0032] eLORANで生成される位置データに関するこの問題は、都市圏で最も顕著である。建物、橋、高架、送電線などの特定の構造物は、eLORAN位置データの精度に影響を与え得る。この不正確さの原因は、例えば、再放射、相互誘導、および周辺場である。eLORAN受信信号の影響を受けるパラメータは、電界振幅、磁界振幅、電界位相、磁界位相、分極、着信電波の電界および磁界成分の絶対時間遅延、ならびにクロスループ磁界アンテナで識別されるような到来角である。
【0025】
[0033] 例えば、橋の場合、eLORAN信号は時間的に遅延され、これは、実際の位置よりもeLORANブロードキャスト局11からより離れた位置データを生成する。一方、建物はeLORAN信号を時間的に早め、実際の位置よりもeLORANブロードキャスト局11に近い位置データを生成する。特に、高架および橋は、隣接する1ターンインダクタループアンテナをエミュレートし、一方、建物は、隣接するモノポールコンデンサアンテナをエミュレートする。eLORAN受信アンテナは、これらの隣接「アンテナ」構造に相互連結し、eLORANブロードキャスト信号の受信の問題を引き起こす。
【0026】
[0034] ダイヤグラム60は、隣接する2つの自動車用橋62、64の下を通過する間に、船舶に配備された従来技術のeLORANデバイスについて、経時的に測定された指示位置データを示す。実際の船舶のコースはほぼ直線であり、線68で示されている。軌跡61は、本開示の教示を欠く、従来技術の電界アンテナベースのeLORANナビゲーションシステムからの指示位置を示す。軌跡63は、本開示の教示を欠く、従来技術の磁界アンテナeLORANナビゲーションシステムからの指示位置を示す。特に、データは、図示された橋62、64のような大きな地上構造物の近くで動作した場合の、従来技術システムからのeLORAN位置データに関する潜在的な問題を示す。また、電界システムと磁界システムとの指示位置の精度の差も見られ、それらは同じではない。ダイヤグラム60では、磁界LORANシステムは、電界LORANシステムよりも大きい指示位置誤差を有した。余談であるが、GPS衛星ナビゲーションの指示位置(図示せず)も橋によって劣化した。
【0027】
[0035] そのため、ダイヤグラム60では、例示的な橋62、64の伝搬異常により、eLORANの指示位置跡が実際の位置跡から遠ざかった。よく見ると、電界アンテナと磁界アンテナとによって報告される位置誤差には重要な違いがある。ダイヤグラム60の点65に示されているように、最大指示誤差が橋と橋との間で発生し、そこでは、磁界は、実際の位置の南に110メートルの指示位置誤差を有した。電界は、点67で示されているように、実際の位置の南に30メートルの最大指示位置誤差を有した。指示位置誤差は、2つの要因のために発生した:1)到来LORAN信号と橋との間のカップリング効果、および2)磁界アンテナと橋との間のカップリング効果。橋は大きな寄生ループアンテナとして動作し、高い建物は寄生モノポールアンテナとして動作し得る。実際には、eLORAN受信アンテナが反応性近接場によって近隣の橋や建物に連結され、それら近隣の橋や建物はループまたはモノポールアンテナとして動作し、入射eLORAN波の振幅および位相(またはタイミング)を変更する。
【0028】
[0036] 本開示の電界および磁界アンテナによって結び付けられる主要なパラメータは:
1)電界アンテナの振幅
2)電界アンテナの位相
3)磁界xアンテナの振幅
4)磁界xアンテナの位相
5)磁界yアンテナの振幅
6)磁界yアンテナの位相
である。
【0029】
これらの6つのパラメータは、eLORAN受信機15a、15b現場での近接場状態の評価を提供する。実際、論理テーブルを構築すると、前述の6つの主要なアンテナパラメータのうちの2つ以上を比較することから、2nまたは64個の情報が導出可能であることが分かる。本発明の方法は以下を含む。
【0030】
a)磁界xアンテナと磁界yアンテナとの位相差を比較することにより、(曖昧さ1の)到来角を決定すること;
b)電界アンテナの振幅を磁界xおよび磁界yチャンネルの振幅に加算することにより、到来角の曖昧さ(a)を除去すること;
c)磁界アンテナ振幅に相対的な電界振幅の増大により、近隣の橋への近接性および方向を示すこと;
d)電界振幅に相対的な磁界振幅の増大により、近隣の建物またはタワーへの近接性および方向を示すこと;
e)電界アンテナ振幅と磁界xおよび磁界yのアンテナ振幅との差に基づく補償係数を適用することにより、タイミングおよび指示位置の誤差を補正すること;ならびに
f)電界アンテナ位相と磁界xおよび磁界yのアンテナ位相との差に基づく補償係数を適用することにより、タイミングおよび指示位置の誤差を補正すること。
【0031】
[0037] また、eLORAN受信機15a、15bは、影響が最も少ないeLORAN送信局を有利として、近接場の近接効果によって最も影響を受けるeLORAN送信局の近隣人工構造物への寄与を除去することも可能である。これは、電界アンテナ対磁界アンテナの相対的な振幅および位相の異常を評価して、最もタイミング誤差のある局と後続のプロセッサとを決定することで行われ、これには、共分散行列の検出が含まれ得る。1つのeLORAN送信局から送信されたパルスは、隣接する構造物へ連結する近接場の影響を受け得ないが、別のものは受ける。特に、アップシグナル局信号は、近隣構造物による影響が最も少なく、例えば、近隣障害物の中またはそばを通過しなかったeLORAN送信局信号は、時間的に最も誤差が少なく、選択され得る。2つの交差した磁界アンテナは、到来方向を提供する。
【0032】
[0038] ここで
図4A~
図4Cおよび
図5を参照すると、アンテナ16は、これらのeLORAN位置精度問題に対するアプローチを提供し得、例示的に、強磁性中間部分21と、そこから外向きに延びる複数の強磁性アーム22a~22dとを備える強磁性コア20を備える。複数の強磁性アーム22a~22dの各々は、円筒形である。他の実施形態では、例えば、長方形箱形状または円錐などの他の形状を使用することができる。
【0033】
[0039] 複数の強磁性アーム22a~22dは、例示的に、整列対に配置され、正弦放射パターンおよび余弦放射パターンを生成するための十字形状を画定する(すなわち、整列対は互いに実質的に直交する:90°±10°)。強磁性コア20は、例えば、フェライト、粉末鉄、電炉鋼、およびナノ結晶鉄のうちの少なくとも1つを含む実質的にバルク状の非導電性強磁性コアであり得る。
【0034】
[0040] アンテナ16は、複数の強磁性アーム22a~22dの各々を取り囲む個別導電性巻線23a~23dを含む。個別導電性巻線23a~23dの各々は、例示的に、らせん形状に巻かれている。いくつかの実施形態では、各導電性巻線23a~23dは、銅、アルミニウム、銀、および金(すなわち、合金)のうちの少なくとも1つを含む金属巻線を含む。
【0035】
[0041] アンテナ16は、強磁性コア20に隣接する導電性パッチ素子24を含む。おそらく
図4Cで最もよく分かるように、導電性パッチ素子24は、ディスク形状、特に円形ディスク形状である。
【0036】
[0042] 特に、強磁性コア20および個別導電性巻線23a~23dは、複数の磁界信号に応答するように構成されている。導電性パッチ素子24は、電界信号に応答するように構成されている。導電性パッチ素子24は、接地した電気閉回路またはループではないので、導電性パッチ素子は磁界に影響を与えない。
【0037】
[0043] アンテナ16では、合計3つのチャンネルが使用可能である。おそらく
図4Cで最もよく分かるように、強磁性コア20および個別導電性巻線23a~23d、ならびに導電性パッチ素子24は中心に集中され、その位相がチャンネルを中心に集中させる。例示的な実施形態では、アンテナ16は、6インチ×6インチ×3インチのサイズを含み、車両プラットフォームに容易に設置することができる。
【0038】
[0044] eLORAN受信機回路17は、複数の磁界信号と電界信号とに基づいて位置を補正するように構成されている。もちろん、これはプロセッサ18と協働してもよいが、いくつかの実施形態では、この補正アルゴリズムは、eLORAN受信機回路17内でのみ実行され得る。いくつかの用途では、eLORAN受信機回路17とプロセッサ18とが統合され得る。
【0039】
[0045] フローチャート40を参照すると、eLORAN受信機回路17は、電界対磁界アンテナチャンネル重みを測定するように構成されている。(ブロック41~42)。より具体的には、電界および磁界アンテナチャンネル重みは、振幅、位相、およびパルスタイミング差を含み得る。eLORAN受信機回路17は、電界および磁界アンテナチャンネル重みが誤差なし範囲内にあるかどうかを決定するように構成され、そうであれば、補正は必要ない。(ブロック43~44)。一方、電界および磁界アンテナチャンネル重みが誤差なし範囲内にない場合は、位置補正アルゴリズムが実行される。(ブロック45)。
【0040】
[0046] eLORAN受信機回路17は、電界対磁界振幅比、電界対磁界位相差、および電界対磁界パルス到着時間差を計算するように構成されている。(ブロック46)。eLORAN受信機回路17は、予想伝搬誤差および必要な補正係数の検索テーブルにアクセスするように構成されている。(ブロック47~48)。検索テーブルは、電界チャンネル振幅、電界チャンネル位相、NS磁界チャンネル振幅、NS磁界チャンネル位相、EW磁界Hチャンネル振幅、およびEW磁界チャンネル位相のうちの1つ以上を含む、複数の入力パラメータを含む。
【0041】
[0047] eLORAN受信機回路17は、誤差が補正可能範囲内にある場合、電界対磁界振幅比、電界対磁界位相差、および電界対磁界パルス到着時間差に基づいて位置を補正するように構成されている。(ブロック49、51~52)。誤差が補正可能範囲内にない場合、eLORAN受信機回路17は、外挿位置を計算し(すなわち、位置が以前のeLORAN位置データに基づいて経時的に外挿される場合)、それが不可能な場合は、誤差またはNULL位置を表示するように構成されている。(ブロック50、52)。
【0042】
[0048] 図示の実施形態では、アンテナ16は、導電性パッチ素子24の反対側に導電性接地面25を含む。おそらく
図4Cで最もよく分かるように、導電性接地面25は、ディスク形状、特に円形ディスク形状である。
【0043】
[0049] おそらく
図4Bで最もよく分かるように、アンテナ16は、例示的に、導電性接地面25と導電性パッチ素子24との間に延びる垂直支持体26を含む。
図4Aを再び参照すると、アンテナ16は、例示的に、個別導電性巻線23a~23dおよび導電性パッチ素子24に連結された複数の給電点27a~27dを備える。
【0044】
[0050] ここでさらに
図6を参照すると、ダイヤグラム61は、電界対磁界振幅比と到達時間誤差差、遅延(μsで示される)との対比を示す。電界対磁界比が377、またはそれに近い場合は、近隣に障害物がないことを示す。電界対磁界比377は、電波遠距離場インピーダンスであり、開放エリアにおける電界対磁界比である。示されているように、電界振幅に急激な低下があり、電界対磁界比の低下は頭上に障害物があることを示す。強度は低下するが、電界はこれらの環境でより正確である。磁界(2つの磁界アンテナ、X軸およびY軸、NSおよびEW)は、到来角推定値を提供し、デバイスが配向を突然変更していないことを示し、位置外挿を可能にする。電界は、渓谷や高層ビルの間で最も影響を受け、磁界はより重度に重み付けされ得る。磁界は、橋などの閉ループ構造の影響を最も強く受け、そのような環境では、電界がより重度に重み付けされ得る。磁界の到来角は、eLORAN送信機場所の方向を示す。ダイヤグラム60の関係は、eLORAN通信システム10が使用するための補正係数を含む関係を含むダイヤグラム60を用いて、eLORAN通信システム10に事前にプログラムし得る。地理的領域が異なれば、ダイヤグラム60の動作がわずかに異なる場合があるため、異なるダイヤグラム60の係数が異なる地理的領域に使用され得る。
【0045】
[0051] ここで
図7を参照すると、別の態様は、eLORAN受信機回路17に連結されるアンテナ16を作製する方法に関する。ここで、方法をフローチャート70を参照して説明する。方法は、強磁性中間部分21およびそこから外向きに延びる複数の強磁性アーム22a~22dを備える強磁性コア20を形成することと、複数の強磁性アームの各々を取り囲む個別導電性巻線23a~23dを配置することと、を含む。(ブロック71~72、74)。方法は、導電性パッチ素子24を強磁性コア20に隣接して配置することを含む。(ブロック76、78)。
【0046】
[0052] 通信システムに関連するその他の機能は、以下の同時係属出願に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み入れられる:Serial No.16/013,106,titled“ELORAN RECEIVER WITH FERROMAGNETIC BODY AND RELATED ANTENNAS AND METHODS,”Attorney Docket No.GCSD-2971(62529)、およびSerial No.15/980,857,“TOWER BASED ANTENNA INCLUDING MULTIPLE SETS OF ELONGATE ANTENNA ELEMENTS AND RELATED METHODS,”Attorney Docket No.GCSD-2979(62519)。
【0047】
[0053] 本開示の多くの変更および他の実施形態が、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、変更および実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図されていることが理解される。