IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

特許7432444電気化学セルの製造方法および電気化学セル
<>
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図1
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図2
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図3
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図4
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図5
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図6
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図7
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図8
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図9
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図10
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図11
  • 特許-電気化学セルの製造方法および電気化学セル 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電気化学セルの製造方法および電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240208BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240208BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240208BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240208BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240208BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20240208BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/403 A
H01M50/489
H01G11/84
H01M50/474
H01M10/0587
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020099921
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021197202
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】木村 長幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
(72)【発明者】
【氏名】堰合 順弥
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-196276(JP,A)
【文献】特開2005-285429(JP,A)
【文献】特開2004-30938(JP,A)
【文献】特開2014-86293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/40-50/598
H01M 4/00- 4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層された正極体および負極体と、
前記正極体と前記負極体との間に介在するセパレータと、
を有する電極構造体を備えた電気化学セルの製造方法であって、
前記セパレータを形成する帯状のセパレータ用シートが前記正極体および前記負極体の層間から張り出すように、前記セパレータ用シートを挟んで前記正極体および前記負極体を扁平に捲回して捲回体を形成する捲回工程と、
前記捲回体の捲回状態を維持する絶縁テープを前記捲回体に貼り付けるテープ貼付工程と、
前記捲回工程で捲回された前記セパレータ用シートが未切断状態のまま、前記捲回体のうち平面視における角部で前記セパレータ用シートを前記絶縁テープとともに加熱して、前記セパレータ用シートおよび前記絶縁テープを捲回軸方向の内側に後退させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項2】
前記絶縁テープは、熱収縮性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記捲回体を厚さ方向の両側から挟む挟持部材によって前記捲回体を挟んだ状態で、前記捲回体の前記角部に対して前記厚さ方向に交差する方向に加熱用治具を接触させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項4】
交互に積層された正極体および負極体と、
前記正極体と前記負極体との間に介在するセパレータと、
を有する電極構造体を備え、
前記正極体および前記負極体は、前記セパレータを挟んで扁平に捲回され、
前記電極構造体は、前記電極構造体の最外周部に配置されて、前記正極体および前記負極体の捲回状態を維持する絶縁テープをさらに有し、
前記セパレータは、前記正極体および前記負極体の層間から捲回軸方向に張り出した複数層の張り出し部を有し、
前記電極構造体は、平面視における前記電極構造体の外形線に沿って、前記複数層の張り出し部および前記絶縁テープが熱変形した熱変形部を有し、
前記熱変形部は、前記電極構造体における前記捲回軸方向の端部に隣接し、前記端部よりも前記捲回軸方向の内側に位置する、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項5】
前記絶縁テープは、熱収縮性を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルの製造方法および電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
このような電気化学セルにおいては、電池容量並びに充電電流および放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極同士の面積を大きくすることが必要である。電気化学セルの構造としては、セパレータを介して互い違いに積層された負極電極と正極電極とを備えた電極体をケースに収め、電解液を電極体に含浸させた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
セパレータは、対向している電極同士のショートを防止するため、電極同士の積層面全体を覆うように電極よりも大きく形成される。その一方で、電気化学セルの体積効率を確保するためには、電極からはみ出したセパレータの寸法をできる限り小さくする必要がある。例えば、電極よりも十分に大きいセパレータを電極の層間に配置した後、セパレータにおける電極からはみ出した部分を切除することで、電極からはみ出したセパレータの縮小を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-085214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セパレータを電極の外縁に沿って切断すると、電極まで切断するおそれがある。電極まで切断されると、電極の端縁にセパレータが重なっていない状態となり、電気化学セルの内部ショートのリスクが上昇する。また、電極の破片が電極の層間に進入して電極間のショートのリスクが上昇する。したがって、従来技術にあっては、ショートリスクが抑制された電気化学セルを容易に製造するという点で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、ショートリスクが抑制された電気化学セルを容易に製造できる電気化学セルの製造方法、およびショートリスクが抑制された電気化学セルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気化学セルの製造方法は、交互に積層された正極体および負極体と、前記正極体と前記負極体との間に介在するセパレータと、を有する電極構造体を備えた電気化学セルの製造方法であって、前記セパレータを形成する帯状のセパレータ用シートが前記正極体および前記負極体の層間から張り出すように、前記セパレータ用シートを挟んで前記正極体および前記負極体を扁平に捲回して捲回体を形成する捲回工程と、前記捲回体の捲回状態を維持する絶縁テープを前記捲回体に貼り付けるテープ貼付工程と、前記捲回工程で捲回された前記セパレータ用シートが未切断状態のまま、前記捲回体のうち平面視における角部で前記セパレータ用シートを前記絶縁テープとともに加熱して、前記セパレータ用シートおよび前記絶縁テープを捲回軸方向の内側に後退させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、加熱工程において捲回体の端面を後退させて正極体および負極体の外縁に近付けることができる。これにより、正極体および負極体の平面視形状が矩形状でない場合でも、セパレータ用シートを正極体および負極体の外縁に沿って切断することなく捲回体を成形できる。しかも、加熱工程をセパレータ用シートが未切断状態のまま行うので、捲回されたセパレータ用シートを切断する工程を一切省略して、加熱工程において捲回体を成形できる。よって、正極体および負極体がセパレータ用シートとともに切断されるリスクを低減できる。したがって、ショートリスクが抑制された電気化学セルを容易に製造できる。
また、正極体および負極体が切断されるリスクを低減できるので、正極体および負極体の形状の設計自由度が増す。よって、正極体および負極体それぞれを大面積化して電気化学セルの容量増大を図ることができる。さらに、セパレータ用シートの材料費の削減、および製造工程の削減による製造コストの低減を図ることができる。
さらに、加熱工程では捲回体の捲回状態を維持する絶縁テープもセパレータ用シートとともに加熱されるので、テープ貼付工程において絶縁テープを捲回体の広範囲に貼り付けることが可能となる。仮に加熱工程で絶縁テープを加熱しない製造方法を適用すると、捲回体のうち加熱工程で加熱されない範囲のみに絶縁テープを配置する必要がある。このため、捲回体における絶縁テープを貼り付ける範囲が限定的となるので、テープ貼付工程の作業が複雑となり得る。よって、セパレータ用シートを加熱により後退させる工程を有する製造方法において、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0009】
上記の電気化学セルの製造方法において、前記絶縁テープは、熱収縮性を有していてもよい。
【0010】
本発明によれば、加熱工程において絶縁テープを捲回軸方向に収縮させて捲回軸方向の内側に容易に後退させることができる。したがって、電極構造体を所望の形状に容易に成形できる。
【0011】
上記の電気化学セルの製造方法において、前記加熱工程では、前記捲回体を厚さ方向の両側から挟む挟持部材によって前記捲回体を挟んだ状態で、前記捲回体の前記角部に対して前記厚さ方向に交差する方向に加熱用治具を接触させてもよい。
【0012】
本発明によれば、捲回体の角部に対して捲回体の厚さ方向に交差する方向に加熱用治具を接触させた際に、捲回体がその厚さ方向から見て回転するように変位し得るところ、挟持部材によって捲回体を挟むことで捲回体の変位を抑制できる。したがって、加熱工程において捲回体の位置ずれを抑制して、捲回体を所望の形状に成形することができる。
【0013】
本発明の電気化学セルは、交互に積層された正極体および負極体と、前記正極体と前記負極体との間に介在するセパレータと、を有する電極構造体を備え、前記正極体および前記負極体は、前記セパレータを挟んで扁平に捲回され、前記電極構造体は、前記電極構造体の最外周部に配置されて、前記正極体および前記負極体の捲回状態を維持する絶縁テープをさらに有し、前記セパレータは、前記正極体および前記負極体の層間から捲回軸方向に張り出した複数層の張り出し部を有し、前記電極構造体は、平面視における前記電極構造体の外形線に沿って、前記複数層の張り出し部および前記絶縁テープが熱変形した熱変形部を有し、前記熱変形部は、前記電極構造体における前記捲回軸方向の端部に隣接し、前記端部よりも前記捲回軸方向の内側に位置する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、電極構造体は、平面視で捲回軸方向の端部が熱変形部よりも捲回軸方向の外側に突出した形状に形成される。このような形状の電極構造体を形成する際、正極体および負極体の層間から張り出したセパレータを絶縁テープとともに加熱して捲回軸方向の内側に後退させることで熱変形部を形成できる。これにより、セパレータを正極体および負極体の外縁に沿って切断することなく張り出し部を成形できる。よって、正極体および負極体がセパレータとともに切断されるリスクを低減できる。したがって、ショートリスクが抑制された電気化学セルを提供できる。
【0015】
上記の電気化学セルにおいて、前記絶縁テープは、熱収縮性を有していてもよい。
【0016】
本発明によれば、熱変形部を形成する際に、絶縁テープを捲回軸方向に収縮させて捲回軸方向の内側に容易に後退させることができる。このため、電極構造体を所望の形状に容易に成形することできるので、製造コストを低減でき、電気化学セルを安価に提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ショートリスクが抑制された電気化学セルを容易に製造できる電気化学セルの製造方法、およびショートリスクが抑制された電気化学セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の電池の斜視図である。
図2】実施形態の電池の断面図である。
図3】実施形態の電極構造体の平面図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5】実施形態の正極体の捲回前における展開図である。
図6】実施形態の負極体の捲回前における展開図である。
図7】実施形態の電極構造体の製造方法を示すフローチャートである。
図8】実施形態の捲回工程において捲回機を利用して捲回体を形成する場合の一例を示す図である。
図9】実施形態のテープ貼付工程において絶縁テープが貼り付けられた捲回体を示す平面図である。
図10】実施形態のテープ貼付工程において絶縁テープが貼り付けられた捲回体を示す平面図である。
図11】実施形態の加熱工程で利用する成形装置の一例を示す図である。
図12】実施形態の加熱工程において成形装置を利用して捲回体を成形する場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また以下の説明では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。
【0020】
(電池の構成)
実施形態の電池1の構成について、図1から図6を参照して説明する。
図1は、実施形態の電池の斜視図である。図2は、実施形態の電池の断面図である。
図1および図2に示すように、電池1は、平面視円形状のいわゆるボタン形の電池である。電池1は、正極活物質および負極活物質を有する発電要素の電極構造体40と、電極構造体40に含浸される電解液(図示せず)と、電極構造体40が収容された外装体10と、を備える。
【0021】
(外装体)
外装体10は、電池1の外郭を形成している。外装体10は、電極構造体40が収容される収容部11と、収容部11の外周11aに沿って折り曲げられた封止部12と、を備える。封止部12は、例えば絞り成形によって、収容部11の外周11aに沿って折り曲げられている。
【0022】
また、外装体10は、電極構造体40を間に挟む第1容器20および第2容器30を備える。第1容器20および第2容器30は、それぞれラミネートフィルムにより形成されている。ラミネートフィルムは、金属層(金属箔)と、重ね合わせ面(内側面)に設けられ金属箔を被覆する樹脂製の融着層と、外側面に設けられ金属箔を被覆する樹脂製の保護層と、を有する。金属層は、例えばステンレスやアルミニウム等の外気や水蒸気を遮断する金属材料を用いて形成されている。重ね合わせ面の融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成されている。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等を用いて形成されている。
【0023】
第1容器20は、円形状の第1底壁部21と、第1底壁部21の外周から筒状に延びる第1周壁部22と、を備える。第1底壁部21には、第1貫通孔24が形成されている。例えば、第1貫通孔24は、第1底壁部21の中心に形成されている。
【0024】
第1底壁部21の内面には、第1シーラントリング25を介して銅プレート26が熱融着されている。第1シーラントリング25は、シーラントフィルムをリング状にしたものである。シーラントフィルムは、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
【0025】
銅プレート26の内面は、後述する負極リード3(図3参照)に接続されている。銅プレート26の外面の中央には、ニッケルプレート27が溶接されている。ニッケルプレート27は、第1貫通孔24を貫通して外部に露出され、電池1の負極端子として機能する。また、銅プレート26に代えて、ニッケル製のプレート材を用いることもできる。この場合、ニッケルプレート27を設けなくてもよい。
【0026】
第2容器30は、円形状の第2底壁部31と、第2底壁部31の外周から筒状に延びる第2周壁部32と、第2周壁部32の開口縁から第2周壁部32の外側に向けて折り曲げられて第2底壁部31側に延びる折曲部33と、を備える。
【0027】
第2底壁部31は、電極構造体40を挟んで第1容器20の第1底壁部21とは反対側に配置されている。第2底壁部31は、第1容器20の第1底壁部21よりも外径が僅かに小さくなるように形成されている。第2底壁部31には、第2貫通孔34が形成されている。例えば、第2貫通孔34は、第2底壁部31の中心に形成されている。
【0028】
第2底壁部31の内面には、第2シーラントリング35を介してステンレスプレート36が熱融着されている。ステンレスプレート36は、高耐食性ステンレス鋼により形成されている。第2シーラントリング35は、第1シーラントリング25と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
【0029】
ステンレスプレート36の内面は、後述する正極リード2(図3参照)に接続されている。ステンレスプレート36の外面の中央には、ニッケルプレート37が溶接されている。ニッケルプレート37は、第2貫通孔34を貫通して外部に露出され、電池1の正極端子として機能する。なお、例えば、ステンレスプレート36に代えて、アルミニウム製のプレート材を用いることもできる。また、ニッケルプレート37の溶接に代えて、ステンレスプレート36の外面の中央にニッケルメッキを施してもよい。
【0030】
第2周壁部32は、第2底壁部31の外周から第1容器20の第1底壁部21に向けて延びている。第2周壁部32は、収容部11の外周11aを形成する。折曲部33は、第2周壁部32のうち、第1底壁部21側の端部から第2周壁部32に沿って第2底壁部31側へ筒状に折り曲げられている。折曲部33は、第2周壁部32に対して外側に間隔をおいて配置されている。
【0031】
第2周壁部32は、第1周壁部22の内側で、かつ、折曲部33の内側に配置されている。また、折曲部33は、第1周壁部22の内側に配置されている。折曲部33の融着層と第1周壁部22の融着層とが熱融着されている。
【0032】
折曲部33の融着層と第1周壁部22の融着層とが熱融着されることにより、封止部12が形成される。よって、収容部11の外周が封止部12で封止される。これにより、第1容器20および第2容器30が重ね合わされて外装体10が形成される。封止部12は、収容部11の外側に筒状に形成され、かつ、収容部11の外周11aに沿って折り曲げられている。
【0033】
収容部11には、第1容器20と第2容器30とが重ね合されることにより密封空間が形成される。具体的には、収容部11は、第1底壁部21、第2底壁部31、および第2周壁部32により画成され、平面視で円形状に形成されている。
【0034】
(電極構造体)
図3は、実施形態の電極構造体の平面図である。図4は、図3のIV-IV線における断面図である。なお、図3では、後述する絶縁テープ80を二点鎖線で図示している。
図3および図4に示すように、電極構造体40は、交互に積層されたシート状の正極体50および負極体60と、正極体50と負極体60との間に介在するシート状のセパレータ70と、を備える。正極体50および負極体60は、セパレータ70を挟んで扁平に捲回されている。正極体50および負極体60は、所定の捲回軸線Oを中心として捲回されている。電極構造体40は、収容部11内の密封空間の形状に対応し、電極構造体40の厚さ方向から見た平面視で外形が円形状となるように形成されている。なお、本実施形態では、正極体50および負極体60が交互に積層された部分を電極構造体40と称し、正極リード2および負極リード3は電極構造体40に含まれないものとする。また、以下の説明では、電極構造体40の厚さ方向を単に厚さ方向といい、捲回軸線Oに沿う方向を軸方向といい、厚さ方向および軸方向に直交する方向を軸直方向という。
【0035】
図5は、実施形態の正極体の捲回前における展開図である。
図5に示すように、正極体50は、捲回される前の展開状態で、全体として帯状に形成されている。正極体50は、金属材料により形成された正極集電箔と、正極集電箔の表面に配置された正極活物質と、を備える。正極集電箔は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属箔により形成されている。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。以下、展開状態における正極体50の長手方向を正極長手方向といい、展開状態における正極体50の短手方向を正極短手方向という。
【0036】
正極体50は、正極長手方向に一列に並んで配置された複数の正極本体51と、隣り合う一対の正極本体51を接続する少なくとも1つの正極連結部52と、を有する。複数の正極本体51は、電極構造体40において厚さ方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である。正極連結部52は、電極構造体40の側部において折り返される部分である。図示の例では、正極本体51の数は7個とされ、正極連結部52の数は6個とされている。ただし、正極本体51および正極連結部52の数はこれに限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0037】
複数の正極本体51は、展開状態で、正極短手方向におけるそれぞれの中心が正極長手方向に沿う同一直線上に位置するように配置されている。各正極本体51は、所定の径の円に対し、正極長手方向における両端部を切り欠いた形状に形成されている。
【0038】
正極連結部52は、正極短手方向で複数の正極本体51よりも内側に位置するように形成されている。すなわち、正極連結部52は、正極短手方向で複数の正極本体51よりも小さく形成されている。正極連結部52の外縁は、平面視で内側に窪む円弧状に延びている。正極連結部52の外縁は、正極本体51の外縁の円弧部に接続している。ただし、正極連結部52の外縁は、必ずしも円弧状に延びていなくてもよく、例えば直線状に延びていてもよい。各正極連結部52における正極長手方向の寸法は、捲回状態で外周側に配置される正極連結部52ほど大きくなっている。これにより、展開状態で隣り合う一対の正極本体51の間隔は、捲回状態で外周側ほど大きくなっている。
【0039】
正極体50の一端部には、正極リード2が接続されている。正極リード2は、上述したステンレスプレート36に接続される部分である。正極リード2は、最外周に配置される正極本体51から正極長手方向に沿って延出している。正極リード2は、正極体50の正極集電箔と同一部材により一体的に形成されている。
【0040】
図6は、実施形態の負極体の捲回前における展開図である。
図6に示すように、負極体60は、捲回される前の展開状態で、全体として帯状に形成されている。負極体60は、金属材料により形成された負極集電箔と、負極集電箔の表面に配置された負極活物質と、を備える。負極集電箔は、例えば銅やステンレス等の金属箔により形成されている。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物やグラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAl等である。以下、展開状態における負極体60の長手方向を負極長手方向といい、展開状態における負極体60の短手方向を負極短手方向という。
【0041】
負極体60は、負極長手方向に一列に並んで配置された複数の負極本体61と、隣り合う一対の負極本体61を接続する少なくとも1つの負極連結部62と、を有する。複数の負極本体61は、電極構造体40において厚さ方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である。負極連結部62は、電極構造体40の側部において折り返される部分である。図示の例では、負極本体61の数は7個とされ、負極連結部62の数は6個とされている。ただし、負極本体61および負極連結部62の数はこれに限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0042】
複数の負極本体61は、展開状態で、負極短手方向におけるそれぞれの中心が負極長手方向に沿う同一直線上に位置するように配置されている。各負極本体61は、正極本体51よりも大径の円に対し、負極長手方向における両端部を切り欠いた形状に形成されている。
【0043】
負極連結部62は、負極短手方向で複数の負極本体61よりも内側に位置するように形成されている。すなわち、負極連結部62は、負極短手方向で複数の負極本体61よりも小さく形成されている。負極連結部62の外縁は、平面視で内側に窪む円弧状に延びている。負極連結部62の外縁は、負極本体61の外縁の円弧部に接続している。ただし、負極連結部62の外縁は、必ずしも円弧状に延びていなくてもよく、例えば直線状に延びていてもよい。負極連結部62における負極長手方向の寸法は、捲回状態で外周側に配置される負極連結部62ほど大きくなっている。これにより、展開状態で隣り合う一対の負極本体61の間隔は、捲回状態で外周側ほど大きくなっている。
【0044】
負極体60の一端部には、負極リード3が接続されている。負極リード3は、上述した銅プレート26に接続される部分である。負極リード3は、最外周に配置される負極本体61から負極長手方向に沿って延出している。負極リード3は、負極体60の負極集電箔と同一部材により一体的に形成されている。
【0045】
図3および図4に示すように、正極体50および負極体60は、それぞれの展開状態における短手方向の中心が互いに重なるように配置された状態で捲回されている。複数の正極本体51および複数の負極本体61は、厚さ方向に交互に積層されている。複数の正極本体51および複数の負極本体61は、平面視でそれぞれの中心点が捲回軸線O上で互いに一致するように配置されている。複数の正極連結部52および複数の負極連結部62のそれぞれは、電極構造体40における軸直方向の端部に配置されている。負極体60は、正極体50よりも軸方向の両側に張り出すように配置されている。単一の部材と見なした正極体50および負極体60の全体は、正極本体51および負極本体61が円形状に形成されていることにより、平面視における外縁の一部が軸方向および軸直方向の双方向に交差する方向を向くように形成されている。なお、本実施形態では、負極体60が正極体50よりも軸方向の両側に張り出すように配置されているので、平面視において正極体50および負極体60の全体における外縁は、負極体60の外縁に一致する。
【0046】
セパレータ70は、リチウムイオンを通す特性を有する部材である。セパレータ70は、例えば樹脂ポーラスフィルム等により形成されている。セパレータ70を形成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン等のポリオレフィンを用いることができる。セパレータ70は、正極体50および負極体60の層間全体に配置され、正極体50と負極体60とを絶縁している。セパレータ70は、正極体50および負極体60それぞれの内周面全体に重なるように配置されている。また、セパレータ70は、最外周の負極本体61の直下層から延出して正極体50の最外周部(図示の例では正極連結部52および正極本体51)を覆う第1外周部70aと、最外周の正極本体51の直下層から延出して負極体60の最外周部(図示の例では負極連結部62および負極本体61)を覆う第2外周部70bと、を備える。第1外周部70aは、最外周の正極本体51の少なくとも一部をセパレータ70から露出させるように形成されている。第2外周部70bは、最外周の負極本体61の少なくとも一部をセパレータ70から露出させるように形成されている。
【0047】
図3に示すように、セパレータ70は、正極体50および負極体60の層間から軸方向の両側に張り出した複数層の張り出し部71を有する。張り出し部71は、電極構造体40の軸直方向の一端部から他端部にわたって連続的に設けられている。張り出し部71は、平面視で単一の部材と見なした正極体50および負極体60の全体における外縁のうち軸方向に交差する方向に延びる部分に沿って延びている。
【0048】
ここで、張り出し部71の平面視形状について説明する。張り出し部71の端縁は、軸直方向に沿って直線状に延びる直線部71aと、直線部71aよりも軸方向の内側に位置する側部71bと、を備える。直線部71aおよび側部71bは、電極構造体40の外形線を形成している。直線部71aは、張り出し部71のうち負極体60の軸方向の端部から軸方向に張り出した部分に形成されている。本実施形態では、直線部71aは、捲回軸線O上に配置されている。直線部71aは、電極構造体40における軸方向の端部40a,40bを形成している。側部71bは、直線部71aを挟むように設けられ、直線部71aの両端部から、張り出し部71における軸直方向の端部まで延びている。側部71bは、負極体60の外縁に対して軸方向に略一定の間隔をあけて円弧状に延びている。
【0049】
図3および図4に示すように、電極構造体40は、捲回された正極体50、負極体60およびセパレータ70の捲回状態を維持する絶縁テープ80をさらに備える。絶縁テープ80は、電極構造体40の最外周部に配置されている。絶縁テープ80は、熱収縮性を有する熱可塑性樹脂により形成されている。絶縁テープ80は、例えばポリプロピレンやポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等により形成されている。
【0050】
絶縁テープ80は、セパレータ70を介して正極体50を覆うように配置された第1絶縁テープ81と、セパレータ70を介して負極体60を覆うように配置された第2絶縁テープ82と、を備える。第1絶縁テープ81は、セパレータ70の第1外周部70aの先端縁を跨ぐとともに、セパレータ70を介して最外周の正極本体51および正極連結部52を覆うように、セパレータ70の第1外周部70aおよび最外周の正極本体51に貼り付けられている。さらに、第1絶縁テープ81は、セパレータ70のうち平面視で最外周の正極本体51から張り出した部分に貼り付けられている。第2絶縁テープ82は、セパレータ70の第2外周部70bの先端縁を跨ぐように、セパレータ70の第2外周部70bおよび最外周の負極本体61に貼り付けられている。さらに、第2絶縁テープ82は、セパレータ70のうち平面視で最外周の負極本体61から張り出した部分に貼り付けられている。なお、図4に示す例では、第2絶縁テープ82は、最外周の正極本体51の下層に入り込んでいるが、この点については特に限定されない。
【0051】
図3に示すように、電極構造体40には、熱変形部41および連通部44が形成されている。熱変形部41は、セパレータ70および絶縁テープ80を加熱して熱変形させることにより形成されている。熱変形部41において、セパレータ70の複数層の張り出し部71は、加熱による溶融痕を有する。熱変形部41において、セパレータ70の複数層の張り出し部71のうち少なくとも一部の層の張り出し部71が互いに溶着されていてもよい。熱変形部41において、絶縁テープ80は、加熱による熱収縮痕を有する。例えば、熱収縮痕は、絶縁テープ80における非加熱部よりも厚くなっている。なお図3では、絶縁テープ80を見易くするために絶縁テープ80をセパレータ70よりも僅かに軸方向に大きく図示しているが、実際には熱変形部41において絶縁テープ80の外形線はセパレータ70の外形線に平面視でおおよそ重なっているものとする。
【0052】
熱変形部41は、平面視における電極構造体40の外形線に沿って設けられている。熱変形部41は、張り出し部71の側部71bに形成されている。したがって、熱変形部41は、平面視で負極体60の外縁に沿って延びている。熱変形部41は、電極構造体40における軸方向第1側の第1端部40aに隣接する一対の第1熱変形部42と、電極構造体40における軸方向第2側の第2端部40bに隣接する一対の第2熱変形部43と、を備える。
【0053】
一対の第1熱変形部42は、電極構造体40の第1端部40aを挟んで軸直方向の両側に設けられている。すなわち、一対の第1熱変形部42は、張り出し部71の直線部71aを避けるように設けられている。一対の第1熱変形部42は、軸方向の第1側の張り出し部71における側部71bの全体に設けられている。したがって、一対の第1熱変形部42は、それぞれ第1端部40aよりも軸方向の第2側に位置し、かつ少なくとも張り出し部71における軸直方向の端部に設けられている。
【0054】
一対の第2熱変形部43は、電極構造体40の第2端部40bを挟んで軸直方向の両側に設けられている。すなわち、一対の第2熱変形部43は、張り出し部71の直線部71aを避けるように設けられている。一対の第2熱変形部43は、軸方向の第2側の張り出し部71における側部71bの全体に設けられている。したがって、一対の第2熱変形部43は、それぞれ第2端部40bよりも軸方向の第1側に位置し、かつ少なくとも張り出し部71における軸直方向の端部に設けられている。
【0055】
連通部44は、軸直方向で隣り合う一対の熱変形部41の間であって、張り出し部71の直線部71aに設けられている。すなわち連通部44は、電極構造体40における軸方向の端部40a,40bに設けられている。連通部44は、複数層の張り出し部71の全ての層が互いに溶着されておらず、電極構造体40の内外を連通している。
【0056】
(電池の製造方法)
実施形態の電池1の製造方法について、図7から図12を参照して説明する。
図7は、実施形態の電極構造体の製造方法を示すフローチャートである。
図7に示すように、電極構造体40の製造方法は、捲回工程S10と、テープ貼付工程S20と、加熱工程S30と、を備える。
【0057】
(捲回工程)
図8は、実施形態の捲回工程において捲回機を利用して捲回体を形成する場合の一例を示す図である。
図8に示すように、捲回工程S10では、セパレータ用シート79を挟んで正極体50および負極体60を扁平に捲回して捲回体49を形成する。捲回工程S10では、捲回機90を用いて正極体50、負極体60およびセパレータ用シート79を捲回し、捲回体49を形成する。捲回機90は、巻き芯91と、一対のタッチロール92と、を備える。巻き芯91は、所定の回転軸線Pに沿って一定の幅で延びる平板状の部材である。巻き芯91は、回転軸線P回りに回転可能に設けられている。巻き芯91には、回転軸線Pに沿ってスリット91aが形成されている。スリット91aは、巻き芯91の先端部で開口している。一対のタッチロール92は、巻き芯91を挟んで互いに反対側に配置されている。各タッチロール92は、回転軸線Pに接近離間可能に形成されている。
【0058】
捲回工程S10では、最初に巻き芯91のスリット91aに帯状のセパレータ用シート79を通した状態で巻き芯91を半周程度回転させる。これにより、巻き芯91におけるスリット91aを挟む両部にセパレータ用シート79が巻き付けられるとともに、回転軸線Pに沿う方向(以下、捲回軸方向という)から見てセパレータ用シート79がZ状に配置される。なお、セパレータ用シート79は、電極構造体40のセパレータ70を形成する帯状の部材であって、捲回軸方向に直交する方向に延びている。セパレータ用シート79の捲回軸方向の寸法は、後に行う加熱工程S30でセパレータ用シート79と絶縁テープ80とが熱変形して後退する場合に、セパレータ用シート79同士が溶着せず連通部44が形成される程度となるように、完成状態の電極構造体40におけるセパレータ70の軸方向の寸法よりも僅かに大きくなっている。例えば、図9および図10に示すように、セパレータ用シート79の捲回軸方向の寸法は、後述する溶融ラインWの最大間隔と同程度とすることができる。このような寸法の一例として、セパレータ用シート79の捲回軸方向の寸法を12mmとして、加熱工程S30において電極構造体40の幅が10.6mm程度となるよう熱収縮させることができる。
【0059】
次いで、正極体50の端部を巻き芯91とセパレータ用シート79との間に挿入するとともに、負極体60の端部を正極体50とは巻き芯91を挟んだ反対側で巻き芯91とセパレータ用シート79との間に挿入する。この際、正極体50および負極体60それぞれの長手方向が捲回軸方向に直交するように、正極体50および負極体60を配置する。また、正極体50および負極体60がセパレータ用シート79から捲回軸方向にはみ出さないように、正極体50および負極体60を配置する。この状態で巻き芯91を回転軸線P回りに回転させることで、正極体50、負極体60およびセパレータ用シート79が巻き芯91に巻き取られ、回転軸線Pを中心として扁平に捲回される。これにより、正極本体51および負極本体61はそれぞれ巻き芯91と平行に配置され、正極連結部52および負極連結部62はそれぞれ巻き芯91の側縁に沿って折り返される。また、セパレータ用シート79は、正極体50および負極体60の層間から捲回軸方向の両側に張り出す。捲回体49における捲回軸方向の両端面は、セパレータ用シート79のみによって形成される。捲回体49の外形は、平面視で矩形状に形成される。なお、捲回時には一対のタッチロール92が捲回体49を挟むように捲回体49の外周面に常時接触し、正極体50、負極体60およびセパレータ用シート79を密に捲回している。
【0060】
次いで、セパレータ用シート79を所定の長さで切断した後、捲回体49から巻き芯91を捲回軸方向に引き抜く。セパレータ用シート79は、最外周の正極本体51の少なくとも一部を絶縁テープ80の貼り付け代としてセパレータ用シート79から露出させるとともに、最外周の負極本体61の少なくとも一部を絶縁テープ80の貼り付け代としてセパレータ用シート79から露出させる長さで切断される。
【0061】
(テープ貼付工程)
図9および図10は、実施形態のテープ貼付工程において絶縁テープが貼り付けられた捲回体を示す平面図である。なお、図9および図10では、絶縁テープ80を二点鎖線で図示している。
図9および図10に示すように、テープ貼付工程S20では、捲回体49の捲回状態を維持する一対の絶縁テープ80を捲回体49に貼り付ける。なお、本工程は上述した巻き芯91を捲回体49から引き抜く作業に先立って行ってもよい。その場合、巻き芯91を捲回体49から引き抜く作業は、次の加熱工程S30の前に行うことが望ましい。テープ貼付工程S20では、セパレータ用シート79の各先端縁79a,79bを跨ぐように捲回体49の外周面に一対の絶縁テープ80を貼り付ける。この際、正極リード2および負極リード3を避けて捲回体49に一対の絶縁テープ80を貼り付ける。一対の絶縁テープ80は、第1絶縁テープ81および第2絶縁テープ82を備える。
【0062】
図9に示すように、セパレータ用シート79および正極体50に第1絶縁テープ81を貼り付ける。この際、正極体50の最外周部を覆うセパレータ用シート79の先端縁79aを跨ぐように、かつセパレータ用シート79を介して正極体50のうち最外周の正極本体51および正極連結部52を覆うように第1絶縁テープ81を貼り付ける。第1絶縁テープ81をその長手方向が捲回軸方向に沿うように配置する。第1絶縁テープ81のうち平面視における捲回体49に貼り付けられた状態での角部81cを、平面視で正極体50および負極体60から捲回体49の角部49cに向けて張り出すように配置する。図示の例では、第1絶縁テープ81のうち平面視における4つの角部81cを平面視で正極体50および負極体60から張り出させている。本実施形態では、第1絶縁テープ81における捲回軸方向の両端縁を、平面視でセパレータ用シート79における捲回軸方向の端縁に重ねている。なお図9では、第1絶縁テープ81を見易くするために第1絶縁テープ81をセパレータ用シート79よりも僅かに捲回軸方向に大きく図示している。図10における第2絶縁テープ82についても同様である。
【0063】
図10に示すように、セパレータ用シート79および負極体60に第2絶縁テープ82を貼り付ける。この際、負極体60の最外周部を覆うセパレータ用シート79の先端縁79bを跨ぐように、かつセパレータ用シート79を介して最外周の負極本体61を覆うように第2絶縁テープ82を貼り付ける。第2絶縁テープ82をその長手方向が捲回軸方向に沿うように配置する。本実施形態では、第2絶縁テープ82として第1絶縁テープ81よりも幅狭のものを用いている。第2絶縁テープ82のうち平面視における捲回体49に貼り付けられた状態での角部82cを、平面視で正極体50および負極体60から捲回体49の角部49cに向けて張り出すように配置する。図示の例では、第2絶縁テープ82のうち平面視における4つの角部82cを平面視で正極体50および負極体60から張り出させている。本実施形態では、第2絶縁テープ82における捲回軸方向の両端縁を、平面視でセパレータ用シート79における捲回軸方向の端縁に重ねている。
【0064】
(加熱工程)
加熱工程S30では、捲回工程S10で捲回されたセパレータ用シート79が未切断状態のまま、捲回体49のうち平面視における角部49cでセパレータ用シート79を絶縁テープ80とともに加熱して、セパレータ用シート79および絶縁テープ80を捲回軸方向の内側に後退させる。具体的には、図9および図10に示すように、捲回体49の4つの角部49cを加熱して、捲回体49における捲回軸方向の端縁を絶縁テープ80とともに捲回軸方向の内側に溶融ラインWまで後退させる。例えば、捲回体49に捲回軸方向の外側からヒータを当てて、捲回体49における捲回軸方向の端縁を絶縁テープ80とともに溶融ラインWまで後退させる。ヒータの温度は、セパレータ用シート79が融点程度の温度となるように設定される。
【0065】
溶融ラインWの全体は、平面視で正極体50および負極体60よりも捲回軸方向の外側に設定されている。溶融ラインWは、平面視での捲回体49の各角部49cに対する正極体50および負極体60側に設定されている。溶融ラインWの一部は、平面視で絶縁テープ80に交差している。これにより、加熱工程S30では、平面視における捲回体49の各角部49cでセパレータ用シート79が溶融されるとともに、絶縁テープ80が熱収縮する。溶融ラインWは、平面視で単一の部材と見なした正極体50および負極体60の全体における外縁に沿って延びている。溶融ラインWは、平面視で捲回体を中心とする円弧状に延びている。溶融ラインWは、セパレータ用シート79のうち負極体60の軸方向の端部から捲回軸方向に張り出した部分で分断されている。これにより、捲回体49における捲回軸方向の端縁の一部は、セパレータ用シート79同士が溶着していない状態となる。以上により、熱変形部41および連通部44を有する電極構造体40が形成される。
【0066】
図11は、実施形態の加熱工程で利用する成形装置の一例を示す図である。
本実施形態では、図11に示す成形装置100を用いて加熱工程S30を行う。成形装置100は、捲回体49が載置されるステージ101と、ステージ101に載置された捲回体49をステージ101側に押圧してステージ101とともに捲回体49を挟む押さえ部材103と、捲回体49に接触するヒータ108と、を備える。
【0067】
ステージ101には、捲回体49をその厚さ方向の一方側から支持する平坦な支持面101aと、支持面101aから垂直に起立するとともに支持面101aの法線方向から見て直線状に延在するガイド面101bと、が形成されている。以下、ガイド面101bの延在方向を第1方向L1と定義し、支持面101aの面方向のうち第1方向L1に直交する方向を第2方向L2と定義し、第1方向L1および第2方向L2に直交する方向を第3方向L3と定義する。支持面101aには、捲回体49が捲回軸方向を第1方向L1に沿わせ、かつ捲回体49の厚さ方向を第3方向L3に一致させた状態で配置される。ガイド面101bには、捲回体49のうち平面視で捲回軸方向に沿って延びる一方の側縁が接触または近接している。
【0068】
押さえ部材103は、捲回体49に圧接する圧接部104を備える。より詳細には、押さえ部材103は、ステージ101に対して固定的に配置されてステージ101の支持面101aに対向するアーム105と、アーム105の先端に支持されて頭部が圧接部104とされたボルト106と、を備える。ボルト106は、第3方向L3に沿って配置され、頭部をステージ101の支持面101aに向けた状態でアーム105に回転可能に螺着されている。ボルト106を回転させることで、頭部をステージ101の支持面101aに接近させて、ステージ101上の捲回体49をステージ101と頭部とによって挟む。
【0069】
ヒータ108は、第3方向L3において捲回体49よりも大きいブロック状に形成されている。ヒータ108は、一対設けられて、それぞれ第1方向L1に変位する。一対のヒータ108は、ステージ101と押さえ部材103とによって挟まれた捲回体49を中心にして、ステージ101の支持面101aおよびガイド面101bに沿って互いに接近離間可能とされている。各ヒータ108は、捲回体49に接触する接触面108aを有する。接触面108aは、第3方向L3から見て第2方向L2の中間部が第1方向L1に窪むように、溶融ラインWと同等の曲率半径の円弧状に延びている。接触面108aは、捲回体49における捲回軸方向の端縁よりも第2方向L2および第3方向L3の双方向に大きく形成されている。
【0070】
図12は、実施形態の加熱工程において成形装置を利用して捲回体を成形する場合の一例を示す図である。
図12に示すように、捲回体49をステージ101と押さえ部材103(いずれも図11参照)とによって挟んだ状態で一対のヒータ108を互いに接近させるように移動させると、捲回体49に対して一対のヒータ108の接触面108aが第1方向L1に接触する。接触面108aは円弧状に窪んでいるので、捲回体49の角部49c(図9および図10参照)がヒータ108の接触面108aに接触して加熱される。さらにヒータ108の移動を継続すると、セパレータ用シート79が溶融するとともに絶縁テープ80が熱収縮して熱変形部41が形成され、捲回体49がヒータ108の接触面108aの形状に倣った形状となる。そして、接触面108aの最奥部が捲回体49に接触する直前でヒータ108の移動を停止させることで、ヒータ108は捲回体49における捲回軸方向の端縁の中間部に接触しない。これにより、ヒータ108は、捲回体49をその捲回軸方向の端縁の一部を避けて加熱できる。捲回体49の端縁における非加熱部は、セパレータ用シート79同士が溶着していない連通部44となる。ただし、捲回体49における捲回軸方向の端縁の中間部は、ヒータ108からの放射熱によって熱変形し、捲回軸方向の内側に後退してもよい。
以上により電極構造体40が形成される。
【0071】
上述した工程を経て製造された電極構造体40を電解液とともに外装体10に収容する。電解液は、電極構造体40の連通部44を通じて電極構造体40の内部に導入される。これにより、電池1が形成される。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態の電極構造体40の製造方法は、捲回体49の捲回状態を維持する絶縁テープ80を捲回体49に貼り付けるテープ貼付工程S20と、捲回工程S10で捲回されたセパレータ用シート79が未切断状態のまま、捲回体49のうち平面視における角部49cでセパレータ用シート79を絶縁テープ80とともに加熱して、セパレータ用シート79および絶縁テープ80を捲回軸方向の内側に後退させる加熱工程S30と、を備える。
【0073】
この製造方法によれば、加熱工程S30において捲回体49の端面を後退させて正極体50および負極体60の外縁に近付けることができる。これにより、正極体50および負極体60の平面視形状が矩形状でない場合でも、セパレータ用シート79を正極体50および負極体60の外縁に沿って切断することなく捲回体49を成形できる。しかも、加熱工程S30をセパレータ用シート79が未切断状態のまま行うので、捲回されたセパレータ用シート79を切断する工程を一切省略して、加熱工程S30において捲回体49を成形できる。よって、正極体50および負極体60がセパレータ用シート79とともに切断されるリスクを低減できる。したがって、ショートリスクが抑制された電池1を容易に製造できる。
【0074】
また、正極体50および負極体60が切断されるリスクを低減できるので、正極体50および負極体60の形状の設計自由度が増す。よって、正極体50および負極体60それぞれを大面積化して電池1の容量増大を図ることができる。さらに、セパレータ用シート79の材料費の削減、および製造工程の削減による製造コストの低減を図ることができる。
【0075】
さらに、加熱工程S30では捲回体49の捲回状態を維持する絶縁テープ80もセパレータ用シート79とともに加熱されるので、テープ貼付工程S20において絶縁テープ80を捲回体49の広範囲に貼り付けることが可能となる。仮に加熱工程で絶縁テープを加熱しない製造方法を適用すると、捲回体のうち加熱工程で加熱されない範囲のみに絶縁テープを配置する必要がある。このため、特に捲回された正極体および負極体の平面視形状が矩形状でない場合には、捲回体における絶縁テープを貼り付ける範囲が限定的となるので、テープ貼付工程の作業が複雑となり得る。よって、本実施形態のようにセパレータ用シート79を加熱により後退させる工程を有する製造方法において、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0076】
絶縁テープ80は、熱収縮性を有する。このため、加熱工程S30において絶縁テープ80を捲回軸方向に収縮させて捲回軸方向の内側に容易に後退させることができる。したがって、電極構造体40を所望の形状に容易に成形できる。そして、電極構造体40の製造コストを低減でき、電池1を安価に提供することが可能となる。
【0077】
加熱工程S30では、ステージ101および押さえ部材103によって捲回体49を挟んだ状態で、捲回体49の角部49cに対して捲回体49の厚さ方向に交差する方向にヒータ108を接触させる。この製造方法によれば、捲回体49の角部49cに対して捲回体49の厚さ方向に交差する方向にヒータ108を接触させた際に、捲回体49がその厚さ方向から見て回転するように変位し得るところ、ステージ101および押さえ部材103によって捲回体49を挟むことで捲回体49の変位を抑制できる。したがって、加熱工程S30において捲回体49の位置ずれを抑制して、捲回体49を所望の形状に成形することができる。
【0078】
セパレータ用シート79の捲回軸方向の寸法は、セパレータ70の捲回軸方向の寸法よりも僅かに大きくなっている。このため、捲回後のセパレータ用シートの切断を前提として捲回軸方向においてセパレータ70よりも大きいセパレータ用シートを用いる場合と比較して、セパレータ用シート79の使用量の削減を図ることができる。
【0079】
本実施形態の電極構造体40は、平面視における電極構造体40の外形線に沿って、セパレータ70の複数層の張り出し部71および絶縁テープ80が熱変形した熱変形部41を有する。熱変形部41は、電極構造体40における軸方向の端部40a,40bに隣接し、端部40a,40bよりも軸方向の内側に位置する。この構成によれば、電極構造体40は、平面視で端部40a,40bが熱変形部41よりも軸方向の外側に突出した形状に形成される。このような形状の電極構造体40を形成する際、正極体50および負極体60の層間から張り出したセパレータ70を絶縁テープ80とともに加熱して軸方向の内側に後退させることで熱変形部41を形成できる。これにより、セパレータ70を正極体50および負極体60の外縁に沿って切断することなく張り出し部71を成形できる。よって、正極体50および負極体60がセパレータ70とともに切断されるリスクを低減できる。したがって、ショートリスクが抑制された電池1を提供できる。
【0080】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、電気化学セルの一例として、二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、電気二重層キャパシタおよび一次電池等に上述した構成を適用してもよい。また、電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池であってもよい。
なお、電気二重層キャパシタに上述した構成を適用する場合、電気二重層キャパシタは機能上正負の区別がない一対の電極を備えるが、一方の電極を上記負極体と同様に構成し、他方の電極を上記正極体と同様に構成すればよい。
【0081】
また、上記実施形態では、負極体60が正極体50よりも軸方向の両側に張り出すように、負極体60が正極体50よりも大きく形成されている。しかしながら、正極体および負極体の大小関係はこれに限定されず、例えば正極体および負極体が同形同大に形成されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、電極構造体40の第1端部40aおよび第2端部40bの両方に連通部44が設けられているが、連通部44は電極構造体40の第1端部40aおよび第2端部40bのうち少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0083】
また、上記実施形態では、電極構造体40が平面視で円形状に形成されているが、これに限定されない。本発明は、平面視で電極構造体の外形線の一部が軸方向および軸直方向の双方向に交差する方向に延びる形状を有する場合に適用できる。つまり、電極構造体は、長軸または短軸が軸方向に沿う長円形状や、対角線の1つが軸方向に沿う菱形状等に形成されていてもよい。これらの構成であっても、正極体および負極体の層間から張り出したセパレータを絶縁テープとともに溶融させて軸方向の内側に収縮させて熱変形部を形成することで、電極構造体の外形線のうち軸方向および軸直方向の双方向に交差する方向に延びる部分を形成できる。
【0084】
また、上記実施形態では、外装体10の第1容器20および第2容器30の両方がラミネートフィルムにより形成されている。しかしながらこれに限定されず、第1容器および第2容器の一方が、ステンレスやアルミニウム等からなる金属缶により形成されていてもよい。
【0085】
また、電極構造体を軸方向から見た場合の絶縁テープの貼り付け範囲は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では第1絶縁テープ81がセパレータ70を介して最外周の正極本体51および正極連結部52を覆うように配置されているが、第1絶縁テープはセパレータ70を介して最外周の正極本体51のみを覆うように配置されていてもよい。また、上記実施形態では、図9に示すように、第1絶縁テープ81のうち平面視における4つの角部81cが平面視で正極体50および負極体60から張り出すように第1絶縁テープ81を配置して、第1絶縁テープ81における各角部81cに対応する4箇所で溶融ラインWに交差している。しかし、第1絶縁テープは、平面視における少なくとも1つの角部が平面視で正極体50および負極体60から張り出して溶融ラインWに交差するように配置されていればよい。第2絶縁テープについても同様である。
【0086】
また、上記実施形態では、絶縁テープ80を加熱工程で熱収縮させて成形しているが、絶縁テープの成形方法はこれに限定されない。絶縁テープを加熱工程で溶融させて所望の形状に成形してもよい。この場合、熱変形部41において、絶縁テープはセパレータ70の張り出し部71に溶着されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、加熱工程S30においてヒータ108の接触面108aの最奥部が捲回体49に接触する直前でヒータ108の移動を停止させることで連通部44を形成しているが、連通部44の形成方法がこれに限定されない。例えば、接触面108aの最奥部を捲回体49に軽く接触させてもよい。この場合であっても、捲回体49における捲回軸方向の端縁の中間部は、ヒータ108によって捲回軸方向の内側に強く押圧されないので、少なくともセパレータ用シート79の全層が互いに溶着することを抑制できる。
【0088】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…電池(電気化学セル) 40…電極構造体 40a…端部 40b…端部 41…熱変形部 49…捲回体 49c…角部 50…正極体 60…負極体 70…セパレータ 71…張り出し部 79…セパレータ用シート 80…絶縁テープ 101…ステージ(挟持部材) 103…押さえ部材(挟持部材) 108…ヒータ(加熱用治具) S10…捲回工程 S20…テープ貼付工程 S30…加熱工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12