(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物、グラビアオフセット印刷方法、及び建築板
(51)【国際特許分類】
C09D 11/033 20140101AFI20240208BHJP
C09D 11/10 20140101ALI20240208BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240208BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C09D11/033
C09D11/10
E04F13/08 E
B41M1/10
(21)【出願番号】P 2020100122
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】外山 雅道
(72)【発明者】
【氏名】山東 磨司
(72)【発明者】
【氏名】寒川 忠俊
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083938(JP,A)
【文献】特開2019-116073(JP,A)
【文献】特開平10-046089(JP,A)
【文献】特開2007-112963(JP,A)
【文献】特開2019-065246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
E04F 13/08
B41M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築板のグラビアオフセット印刷に用いられる水性インキ組成物であって、
(A)着色剤と、(B)水分散性樹脂と、(C)水と、(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)が10.5以上である有機溶剤とを少なくとも含み、
前記(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値が10.5以上である有機溶剤の含有量が、3~20質量%であることを特徴とする、建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項2】
前記(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値が10.5以上である有機溶剤が、前記(B)水分散性樹脂に対して1質量%添加時の最低造膜温度(MFT)低下能が3℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項3】
前記(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値が10.5以上である有機溶剤が、炭素数6以下のジオール化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項4】
前記(B)水分散性樹脂が、反応性乳化剤の存在下で重合反応を行って得られたものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項5】
(E)シリコーン系表面調整剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項6】
20℃における表面張力が、19~40mN/mであることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項7】
30℃における粘度が、岩田カップ粘度計で10~50秒であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、被印刷基材に印刷を行うことを特徴とする、グラビアオフセット印刷方法。
【請求項9】
グラビアオフセット印刷において用いられるグラビア版胴および/またはブランケット胴の洗浄を水で行うことを特徴とする、請求項8に記載のグラビアオフセット印刷方法。
【請求項10】
印刷を行う際の前記被印刷基材の温度が、40~70℃であり、かつ、
印刷を行う際の前記被印刷基材の温度と、前記建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下であることを特徴とする、請求項8または9に記載のグラビアオフセット印刷方法。
【請求項11】
基材と、請求項1~7のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物から形成されるインキ層とを有することを特徴とする、建築板。
【請求項12】
前記基材と前記インキ層との間に、着色層をさらに有することを特徴とする、請求項
11に記載の建築板。
【請求項13】
前記インキ層の上に、クリヤー層をさらに有することを特徴とする、請求項
11または
12に記載の建築板。
【請求項14】
前記クリヤー層の上に、オーバーコート層をさらに有することを特徴とする、請求項
13に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築板のグラビアオフセット印刷に特に好適に用いることができる、建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物、グラビアオフセット印刷方法、及び建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の外壁材に用いられる建築板においても、高意匠化が求められている中で、従来のインクジェット印刷による加飾に加えて、グラビアオフセット印刷による加飾が行われるようになってきている。例えば、特許文献1~5には、グラビアオフセット印刷により印刷を施した建築板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-276296号公報
【文献】特開2003-305820号公報
【文献】特開2003-312117号公報
【文献】特開2005-28783号公報
【文献】特開2005-60627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グラビアオフセット印刷は、印刷画像に対応させて、セルと呼ばれる小さい凹状のくぼみが形成されたグラビア版胴の表面にインキを付着・保持させ、ドクターブレードでインキを掻き取った後、画像形成部分のみに残ったインキをブランケット胴に転写し、それを被印刷基材に押し当てて、インキを被印刷基材に転写する印刷方法であり、高精細な画像の印刷物を製造ライン上で大量生産することができる印刷方法である。しかしながら、グラビアオフセット印刷の場合、一般的に、被印刷面が平滑であることが必要、あるいは望ましく、紙や樹脂フィルム等には良好に印刷を行うことができるが、通常、基材が硬質で大きく、かつ、表面に凹凸があり、表面平滑性に劣る建築板には良好に印刷することは困難である。特に連続印刷を行う場合、長時間にわたって印刷を行うと、通常、被印刷基材は前工程において加熱されている、あるいは予め予熱されているため、被印刷基材のみならず、グラビア版胴やブランケット胴上でもインキ組成物が乾燥しやすく、グラビア版胴やブランケット胴上にもインキ組成物が残存して版かぶりが起こったり、セルの凹みの中でインキ組成物が乾燥してしまい、被印刷基材に転写されるインキ量が減少して印刷画像が薄くなり、発色性が低下したりする場合があり、また、グラビア版胴やブランケット胴が十分に洗浄されない場合があり、その結果、印刷画像の画質が低下してしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、建築板に対してもグラビアオフセット印刷で良好に印刷を行うことができ、安定して連続印刷も可能な建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物、及びグラビアオフセット印刷方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、印刷を施した建築板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の各項に関する。
[1] 建築板のグラビアオフセット印刷に用いられる水性インキ組成物であって、
(A)着色剤と、(B)水分散性樹脂と、(C)水と、(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)が10.5以上である有機溶剤とを少なくとも含み、
前記(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値が10.5以上である有機溶剤の含有量が、3~20質量%であることを特徴とする、建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[2] 前記(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値が10.5以上である有機溶剤が、前記(B)水分散性樹脂に対して1質量%添加時の最低造膜温度(MFT)低下能が3℃以下であることを特徴とする、前記項[1]に記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[3] 前記(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値が10.5以上である有機溶剤が、炭素数6以下のジオール化合物であることを特徴とする、前記項[1]または[2]に記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[4] 前記(B)水分散性樹脂が、反応性乳化剤の存在下で重合反応を行って得られたものであることを特徴とする、前記項[1]~[3]のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[5] (E)シリコーン系表面調整剤をさらに含むことを特徴とする、前記項[1]~[4]のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[6] 20℃における表面張力が、19~40mN/mであることを特徴とする、前記項[1]~[5]のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[7] 30℃における粘度が、岩田カップ粘度計で10~50秒であることを特徴とする、前記項[1]~[6]のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物。
[8] 前記項[1]~[7]のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、被印刷基材に印刷を行うことを特徴とする、グラビアオフセット印刷方法。
[9] グラビアオフセット印刷において用いられるグラビア版胴および/またはブランケット胴の洗浄を水で行うことを特徴とする、前記項[8]に記載のグラビアオフセット印刷方法。
[10] 印刷を行う際の前記被印刷基材の温度が、40~70℃であり、かつ、
印刷を行う際の前記被印刷基材の温度と、前記建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下であることを特徴とする、前記項[8]または[9]に記載のグラビアオフセット印刷方法。
[11] (A)着色剤と、(B)水分散性樹脂と、(C)水とを少なくとも含むインキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、被印刷基材に印刷を行う方法であって、
印刷を行う際の前記被印刷基材の温度が、40~70℃であり、かつ、
印刷を行う際の前記被印刷基材の温度と、前記インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下であることを特徴とする、グラビアオフセット印刷方法。
[12] 基材と、前記項[1]~[7]のいずれかに記載の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物から形成されるインキ層とを有することを特徴とする、建築板。
[13] 前記基材と前記インキ層との間に、着色層をさらに有することを特徴とする、前記項[12]に記載の建築板。
[14] 前記インキ層の上に、クリヤー層をさらに有することを特徴とする、前記項[12]または[13]に記載の建築板。
[15] 前記クリヤー層の上に、オーバーコート層をさらに有することを特徴とする、前記項[14]に記載の建築板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建築板に対してもグラビアオフセット印刷で良好に印刷を行うことができ、安定して連続印刷も可能な建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物、及びグラビアオフセット印刷方法を提供することができる。また、本発明によれば、この建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、印刷を施した建築板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物>
本発明の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」ともいう)は、建築板のグラビアオフセット印刷に用いられる水性インキ組成物であって、(A)着色剤と、(B)水分散性樹脂と、(C)水と、(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)が10.5以上である有機溶剤(以下、単に「(D)高沸点有機溶剤」ともいう)とを少なくとも含み、(D)高沸点有機溶剤の含有量が、3~20質量%である。
【0009】
本発明の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物は、溶剤として、水に加えて、(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)が10.5以上である高沸点有機溶剤を、3~20質量%の範囲で含む。このような(D)高沸点有機溶剤を3~20質量%の範囲で含むことにより、大きく、硬質で、かつ、表面に凹凸があって、表面平滑性に劣る建築板に対してもグラビアオフセット印刷で良好に印刷を行うことができ、長時間にわたって連続印刷を行っても、洗浄性に優れ、インキ組成物がグラビア版胴やブランケット胴上に残存するのを抑制することができ、また、印刷画像の発色性の低下が起こりにくく、高品質の印刷画像を安定に得ることができる。そのため、本発明の建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を用いることにより、建築板に対しても、グラビアオフセット印刷で、安定して連続印刷を行うことが可能である。
【0010】
本発明のインキ組成物は、(A)着色剤を含む。(A)着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
(A)着色剤としては、公知のものいずれも用いることができる。(A)着色剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、黄色酸化鉄、弁柄、ウルトラマリンブルー、ニッケルチタンイエロー、ビスマスイエロー、コバルトブルー、コバルトアルミブルー、ニッケル・チタン系複合酸化物、クロム・チタン系複合酸化物、ビスマス・バナジウム系複合酸化物、コバルト・アルミニウム系複合酸化物、コバルト・アルミニウム・クロム系複合酸化物、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム等の無機顔料や、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アンスラピリミジン系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、ジオキサジン系顔料、アゾ系顔料、ジアゾ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料等の有機顔料等が挙げられる。耐候性等の点からは、無機顔料を用いることが好ましい。無機顔料は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤や、高級脂肪酸金属塩等の公知の処理剤で表面処理されたものであってもよい。また、(A)着色剤として、染料を用いることもできる。なお、色相は、特に限定されず、所望に応じて適宜選択することができる。
【0012】
インキ組成物中の(A)着色剤の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができるが、通常、インキ組成物の全質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。
【0013】
本発明のインキ組成物は、(B)水分散性樹脂を含む。水分散性樹脂を用いることで、水溶性樹脂を用いる場合と比較して、樹脂の分子量を大きくしやすく、疎水性成分を多く配合(重合)できる等から、より良好な特性を有するインキ層を形成することができる。(B)水分散性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
ここで、水分散性樹脂とは、25℃の水に実質的に溶解せずに(例えば、溶解度が50質量%以下)、水中に分散した状態で存在する樹脂を意味する。
【0015】
本発明において用いることができる(B)水分散性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(アクリルスチレン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルアルキド樹脂、アクリルSBR樹脂等の共重合体樹脂も含む)、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル樹脂、SBR樹脂、ポリオレフィン樹脂、アミノ樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
本発明のインキ組成物は建築板用であることから、(B)水分散性樹脂としては、中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
【0017】
なお、ここで、アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー1種以上を構成単位とする樹脂を意味し、それ以外のモノマーを構成単位として含有してもよい。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基[CH2=CH-COO-]またはメタクリロイル基[CH2=C(CH3)-COO-]を意味する。
【0018】
好ましいアクリルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、アリルアクリレート、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸ソーダ、トリメチロールプロパンアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー、並びに、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、テトラエチレングリコールメタクリレート、1,3-ブチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマーや、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。更に、上記のアクリル系モノマー類に加えて、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基を持つα,β-エチレン性不飽和モノマーや、アクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のビニルモノマー等を共重合成分として用いることもできる。
【0019】
本発明において用いる(B)水分散性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、通常、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましい。ここで、数平均分子量とは、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0020】
アクリル樹脂等の(B)水分散性樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法のいずれで製造されていてもよく、例えば、乳化重合、強制乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、ミニエマルション重合等の公知の方法により(B)水分散性樹脂を製造することができる。
【0021】
本発明において用いる(B)水分散性樹脂の製造方法としては、通常、高分子量の樹脂を容易に得ることができるため、乳化重合が好ましい。すなわち、本発明において用いる(B)水分散性樹脂としては、通常、エマルジョン樹脂が好ましい。エマルジョン樹脂は、また、樹脂粒子の水中分散安定性にも優れる傾向がある。なお、乳化重合により得られる(B)水分散性樹脂を含むエマルジョン(樹脂分散液)を、そのまま、本発明のインキ組成物の製造に用いることができる。
【0022】
本発明において用いる(B)水分散性樹脂としては、反応性乳化剤(反応性界面活性剤)の存在下で重合反応を行って得られたものであることが特に好ましい場合がある。反応性乳化剤を用いることにより、樹脂粒子の水中分散安定性をより向上させることができ、その結果として、インキ組成物の安定性をより向上させることができる。また、屋外等の風雨に曝されることもある建築板の使用環境下においても、反応性乳化剤を用いて重合反応を行って得られた(B)水分散性樹脂を含むインキ層は、耐候性、耐水性、耐温水性により優れる傾向がある。
【0023】
なお、ここで、反応性乳化剤とは、分子中にビニル基等の重合性の不飽和結合を有する乳化剤であり、乳化機能を有するだけでなく、分子中にビニル基等の重合性の不飽和結合と親水性基を有する重合性単量体でもある。反応性乳化剤は、重合過程において、少なくともその一部が重合体の一成分として(B)水分散性樹脂に組み込まれる。
【0024】
本発明においては、反応性乳化剤としては、アニオン系反応性乳化剤またはノニオン系反応性乳化剤を用いることが好ましい。アニオン系反応性乳化剤とノニオン系反応性乳化剤を併用することもできる。
【0025】
アニオン系反応性乳化剤としては、例えば、アルキルエーテル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKH-05、KH-10、KH-20、株式会社ADEKA製のアデカリアソープSR-10、SR-10N、SR-20N、花王株式会社製のラテムルPD-104など)、スルフォコハク酸エステル型(市販品としては、例えば、花王株式会社製のラテムルS-120、S-120A、S-180P、S-180A、三洋化成株式会社の製エレミノールJS-2など)、アルキルフェニルエーテル型もしくはアルキルフェニルエステル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンH-2855A、H-3855B、H-3855C、H-3856、HS-05、HS-10、HS-20、HS-30、株式会社ADEKA製のアデカリアソープSDX-222、SDX-223、SDX-232、SDX-233、SDX-259、SE-10N、SE-20Nなど)、(メタ)アクリレート硫酸エステル型(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製のアントックスMS-60、MS-2N、三洋化成工業株式会社製のエレミノールRS-30など)、リン酸エステル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のH-3330PL、株式会社ADEKA製のアデカリアソープPP-70など)などが挙げられる。
【0026】
ノニオン系反応性乳化剤としては、例えば、アルキルエーテル型(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製のアデカリアソープER-10、ER-20、ER-30、ER-40、花王株式会社製のラテムルPD-420、PD-430、PD-450など)、アルキルフェニルエーテル型もしくはアルキルフェニルエステル型(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50、株式会社ADEKA製のアデカリアソープNE-10、NE-20、NE-30、NE-40など)、(メタ)アクリレート硫酸エステル型(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製のRMA-564、RMA-568、RMA-1114など)などが挙げられる。
【0027】
なお、(B)水分散性樹脂の製造条件(重合条件)は特に限定されず、公知の方法に従って、適宜選択することができる。
【0028】
インキ組成物中の(B)水分散性樹脂の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができるが、通常、インキ組成物の全質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0029】
インキ組成物中に含まれる(A)着色剤と(B)水分散性樹脂の含有比率は、特に限定されるものではないが、通常、質量比で、1:0.5~1:50であることが好ましく、1:1~1:30であることがより好ましい。
【0030】
本発明のインキ組成物は、環境面で好ましい水性インキ組成物であって、溶媒(分散媒)として(C)水を含む。
【0031】
インキ組成物中の(C)水の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができるが、通常、インキ組成物の全質量に対して、30~70質量%であることが好ましい。
【0032】
本発明のインキ組成物は、さらに、(D)1気圧における沸点が180℃以上であり、かつ、Hoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)が10.5以上である有機溶剤(高沸点有機溶剤)を含む。(D)高沸点有機溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(D)高沸点有機溶剤の1気圧における沸点は、180℃以上であり、180℃~280℃であることが好ましく、190℃~260℃であることがより好ましい。含まれる有機溶剤の沸点が高いと、具体的には、1気圧における沸点が180℃以上であると、インキ組成物が乾燥しにくくなり、その結果として、インキ組成物は掻き取り性、洗浄性に優れることになり、グラビアオフセット印刷時にインキ組成物がグラビア版胴やブランケット胴上に残存することを抑制することができる。また、長時間にわたって連続印刷を行っても、版かぶりや、印刷画像の発色性の低下が起こりにくく、高品質の印刷画像を安定に得ることができる。一方、有機溶剤の沸点の上限値は、特に限定されないが、通常、280℃以下であることが好ましい。有機溶剤の沸点が高すぎると、インキ組成物が過度に乾燥しにくくなり、形成される塗膜中に有機溶剤が残存しやすく、その上にクリヤー層等の表面保護層を形成すると、積層膜の付着性、耐候性等の物性が低下してくる場合がある。また、インキ組成物の乾燥時間を長くすることは、製造コストが高くなるため、好ましくない。
【0034】
(D)高沸点有機溶剤のHoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)は、10.5以上であり、10.5~18であることが好ましく、11~18であることがより好ましく、11.5~18であることがより好ましい。含まれる有機溶剤のSP値が(B)水分散性樹脂に近いと、有機溶剤が樹脂を膨潤または溶解させやすく、成膜助剤として機能する結果、グラビアオフセット印刷時にインキ組成物がグラビア版胴やブランケット胴上で成膜・硬化してしまい、洗浄性が低下するだけではなく、印刷画像の発色性の低下や印刷画像の劣化にもつながる。一般的に、(B)水分散性樹脂のSP値は10.2以下、例えば8.0~10.2であり、有機溶剤のSP値が10.5以上であると、有機溶剤がインキ組成物に用いられる水分散性樹脂を膨潤または溶解させにくく、グラビアオフセット印刷時のグラビア版胴やブランケット胴上でのインキ組成物の成膜・硬化が抑制され、洗浄性に優れるとともに、印刷画像の発色性の低下や印刷画像の劣化を抑制することができる。一方、有機溶剤のSP値の上限値は、特に限定されないが、通常、18以下であることが好ましい。有機溶剤のSP値が18を超えると、水分散性樹脂との相溶性が悪くなり、印刷過程または乾燥過程において、インキ組成物の分散安定性が低下して、良好に乾燥できなくなったり、画質が低下したりする場合がある。
【0035】
なお、本発明において、SP値(溶解パラメータ)とは、Hoy法により求められるSP値を意味し、文献〔K.L.Hoy,J.Paint Technology,42,[541],76(1970)〕に記載された方法に準拠して算出することができる。
【0036】
本発明においては、上記のような(D)高沸点有機溶剤の含有量も重要である。インキ組成物中の(D)高沸点有機溶剤の含有量は、インキ組成物の全質量に対して、3~20質量%であり、4~17質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。(D)高沸点有機溶剤の含有量が3質量%未満であると、十分な洗浄性が得られず、また、印刷画像の発色性の低下や印刷画像の劣化を十分に抑制することができない。一方、(D)高沸点有機溶剤の含有量が20質量%を超えると、形成される塗膜中に有機溶剤が残存しやすくなり、その上にクリヤー層等の表面保護層を形成すると、積層膜の付着性、耐候性等の物性が低下してくる。
【0037】
本発明においては、用いる(D)高沸点有機溶剤の沸点及びSP値、並びに、その含有量の全てを上記範囲内にすることで、建築板に対してもグラビアオフセット印刷で良好に印刷を行うことができ、安定して連続印刷も可能な建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を得ることが可能になる。
【0038】
本発明において用いる(D)高沸点有機溶剤は、(B)水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)をあまり低下させないものが好ましい。具体的には、(D)高沸点有機溶剤が、(B)水分散性樹脂に対して1質量%添加時の最低造膜温度(MFT)低下能が3℃以下であることが好ましく、2℃以下であることがより好ましい。ここで、(D)高沸点有機溶剤の、(B)水分散性樹脂に対して1質量%添加時の最低造膜温度(MFT)低下能は、下記の方法で求められる。
【0039】
<最低造膜温度(MFT)の求め方>
最低造膜温度(MFT)は、JIS K 6828-2:2003に従って、0.5℃/cmの直線的な温度勾配をつけた、表面が平滑なアルミニウム製またはステンレス製の熱板上に、膜厚が0.2mmになるように、試料を均一に塗布し、室温の乾燥空気を流すことによって、試料を乾燥させて造膜し、き裂のない均一な皮膜が形成される部分の境界位置を目視で確認して、その温度をMFTと決定する。
<最低造膜温度(MFT)低下能の求め方>
まず、溶媒(分散媒)が水であり、(B)水分散性樹脂の含有量(固形分)が40質量%であるエマルジョン(ただし、(B)水分散性樹脂を製造する際に用いられた乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤等を含むものであってもよい。)について、上記のようにしてMFTを求め、(B)水分散性樹脂のMFTとする。
次に、(B)水分散性樹脂のMFTを求めるために用いたエマルジョンに、(D)有機溶剤の含有量が(B)水分散性樹脂の含有量の1/100(質量比)に相当する量になるように、(D)有機溶剤を添加・混合して調製したエマルジョン[(D)有機溶剤を(B)水分散性樹脂に対して1質量%添加したエマルジョン]について、上記のようにしてMFTを求め、(D)有機溶剤1質量%添加時のMFTとする。
そして、(B)水分散性樹脂のMFTと(D)有機溶剤1質量%添加時のMFTとの差を、当該(D)有機溶剤の、(B)水分散性樹脂に対して1質量%添加時のMFT低下能とする。
ただし、有機溶剤1質量%添加時のMFT低下能が低く、十分に測定できない場合には、有機溶剤を水分散性樹脂に対して5質量%、または10質量%添加した時のMFT低下能を求め、それを有機溶剤の添加量で割って、有機溶剤1質量%添加時のMFT低下能を算出した。
【0040】
本発明において用いることができる(D)高沸点有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)(1気圧における沸点:197.3℃;SP値:17.19)、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)(1気圧における沸点:188.2℃;SP値:14.9)、1,3-プロピレングリコール(1,3-プロパンジオール)(1気圧における沸点:214.4℃;SP値:15.31)、1,3-ブタンジオール(1気圧における沸点:204℃;SP値:13.8)、1,4-ブタンジオール(1気圧における沸点:230℃;SP値:14.15)、ジエチレングリコール(1気圧における沸点:245℃;SP値:14.45)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(1気圧における沸点:230.6℃;SP値:10.88)、トリエチレングリコール(1気圧における沸点:287.4℃;SP値:13.31)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(1気圧における沸点:271.2℃;SP値:10.8)等が挙げられる。
【0041】
(D)高沸点有機溶剤としては、中でも、炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下のジオール化合物が好ましい。ジオール化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の-O-を含む化合物も好ましいが、アルカンジオールであることがより好ましい。(D)高沸点有機溶剤としては、グリセロール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0042】
本発明のインキ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(D)高沸点有機溶剤以外の有機溶剤、すなわち、1気圧における沸点が180℃未満であるか、Hoy法により求められるSP値(溶解度パラメータ)が10.5未満である有機溶剤をさらに含むこともできる。(D)高沸点有機溶剤以外の有機溶剤も、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
インキ組成物中の(D)高沸点有機溶剤以外の有機溶剤の含有量は、通常、(D)高沸点有機溶剤の質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、また、インキ組成物中に含まれる有機溶剤の全質量に対して、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明のインキ組成物は、(E)シリコーン系表面調整剤をさらに含むことが好ましい。シリコーン系表面調整剤を添加することで、洗浄性がより向上する場合がある。(E)シリコーン系表面調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明において用いることができる(E)シリコーン系表面調整剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルアルキルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンや、オルガノポリシロキサンを変性した変性ポリシロキサン、例えば、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン等のポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等のポリエステル変性ポリシロキサン、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン等のアラルキル変性ポリシロキサン等が挙げられる。ジメチルポリシロキサンアルキレンオキシド等も挙げられる。
【0046】
(E)シリコーン系表面調整剤としては、市販のものを用いることもできる。市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製DC11PA、ST80PA、DC3074、DC3037、SR2402;信越化学工業株式会社製KP-321、KP-324、KP-327、KR-9218、X-40-9220;東芝シリコーン株式会社製TSR165、XR-31B1763;ビックケミー・ジャパン株式会社製BYK-341、BYK-344、BYK-306、BYK-307、BYK-325、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-300、BYK-302、BYK-330、BYK-333、BYK-335、BYK-370、BYK-SILCLEAN3700;楠本化成株式会社製DISPARLON1711、1751N、1761、LS-001、LS-050;共栄社化学株式会社製ポリフローKL-400HF、KL-401、KL-402、KL-403、KL-404等が挙げられる。信越化学工業株式会社KF-6011、KF-6012、KF-6013、KF-6015、KF-6016、KF-6017、KF-6028、KF-6038、KF-6043;エボニック・ジャパン株式会社製TEGO WET240、TEGO WET270等も挙げられる。
【0047】
本発明において用いる(E)シリコーン系表面調整剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、1,000~120,000であることが好ましく、8,000~15,000であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量とは、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0048】
インキ組成物中の(E)シリコーン系表面調整剤の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができるが、通常、インキ組成物の全質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0049】
本発明のインキ組成物は、(E)シリコーン系表面調整剤に加えて、あるいは、(E)シリコーン系表面調整剤に代えて、それ以外の表面調整剤、例えば、アクリル系表面調整剤、シリコン変性アクリル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、ビニル系表面調整剤等を含むこともできる。
【0050】
本発明のインキ組成物は、必要に応じて、その他の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、防藻剤、防かび剤、防鼠剤、スリップ剤、金属顔料、パール顔料、体質顔料等を含むことができる。
【0051】
本発明のインキ組成物は、公知の方法により、各成分を均一になるまで撹拌・混合することによって調製することができる。
【0052】
本発明のインキ組成物は、特に限定されるものではないが、20℃における表面張力が19~40mN/mであることが好ましく、25~35mN/mであることがより好ましい。なお、インキ組成物の表面張力の測定方法の詳細については、後述の実施例で説明する。
【0053】
本発明のインキ組成物は、特に限定されるものではないが、30℃における粘度が、岩田カップ粘度計で10~50秒であることが好ましく、15~40秒であることがより好ましい。なお、インキ組成物の粘度の測定方法の詳細については、後述の実施例で説明する。
【0054】
<グラビアオフセット印刷方法>
本発明のグラビアオフセット印刷方法は、上記のような本発明のインキ組成物(建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物)を用い、グラビアオフセット印刷により、被印刷基材に印刷を行うものである。
【0055】
グラビアオフセット印刷は、通常の方法により行うことができる。印刷条件も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0056】
本発明においては、通常、グラビアオフセット印刷において用いられるグラビア版胴および/またはブランケット胴の洗浄を水で行うことが好ましい。
【0057】
また、本発明においては、印刷を行う際の被印刷基材の温度が、40~70℃であり、かつ、印刷を行う際の被印刷基材の温度と、インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下であることが好ましい。印刷を行う際の被印刷基材の温度と、インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、13℃未満であることがより好ましく、10℃以下であることが特に好ましい。印刷を行う際の被印刷基材の温度が、インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)よりも15℃超高いと、インキ組成物が乾燥しやすくなることから、洗浄性が低下し、印刷画像の発色性の低下や印刷画像の劣化が起こりやすくなる。一方、印刷を行う際の被印刷基材の温度が、インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)よりも15℃超低いと、インキ層を良好に成膜しにくくなり、層内に微細な欠陥を生じて、耐候性等の物性が低下してくる場合がある。なお、ここで、印刷を行う際の被印刷基材の温度は、被印刷基材の表面温度を意味する。
【0058】
本発明のインキ組成物以外のインキ組成物を用いる場合であっても、印刷を行う際の被印刷基材の温度が、40~70℃であり、かつ、印刷を行う際の被印刷基材の温度と、インキ組成物中の水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下であることが好ましい。本発明の第2の実施形態のグラビアオフセット印刷方法は、(A)着色剤と(B)水分散性樹脂と(C)水とを少なくとも含むインキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、被印刷基材に印刷を行う方法であって、印刷を行う際の被印刷基材の温度が、40~70℃であり、かつ、印刷を行う際の被印刷基材の温度と、インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下であることを特徴とするものである。
【0059】
本発明において、被印刷基材は、建築板である。被印刷基材は、基材である建築板(建築板基材)のみであってもよいが、後述するように、通常、建築板基材の上に、一つ、または複数の層が形成されているものが好適に用いられる。
【0060】
<建築板>
本発明の建築板は、基材(建築板基材)と、上記のような本発明のインキ組成物(建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物)から形成されるインキ層とを有するものである。本発明の建築板は、基材とインキ層との間に一つ以上の着色層をさらに有していてもよく、また、インキ層の上に一つ以上のクリヤー層をさらに有していてもよく、クリヤー層の上に一つ以上のオーバーコート層をさらに有していてもよい。また、本発明の建築板は、インキ層または着色層等を形成する前に、建築板基材に溶剤系または水系シーラーを塗布して、含浸させてもよい。
【0061】
本発明において用いる建築板基材としては、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択することができる。建築板基材としては、例えば、窯業系サイディングボードやフレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・珪酸カルシウム板、スレート板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、石膏ボード等の窯業系建築板、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、マグネシウム合金、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、錫めっき鋼等の金属建築板、木質建築板等が挙げられる。金属建築板は、表面処理、例えば酸化処理等が施されたものであってもよく、また、建築板基材は、必要に応じて、切削加工や研磨加工等を施したものであってもよい。中でも、本発明は、窯業系建築板に特に好適に適用できる。なお、建築板基材の形状は、通常、板状であるが、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0062】
建築板基材は、必要に応じて、プライマー処理等を施してもよい。
【0063】
特に、窯業系建築板の場合は、通常、シーラーを塗布して、含浸させることが好ましい。シーラーは、特に限定されず、公知のものいずれも用いることができ、有機溶剤系、水系のいずれの形態であってもよく、所望に応じて適宜選択して用いられる。無機シーラーを用いることもできる。シーラーの塗布量も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0064】
シーラーの塗布は、公知の方法で行うことができ、例えば、スプレー法、ロールコート法、ディッピング法(浸漬法)、スクリーン印刷法、ハケ塗り法等で行うことができる。建築板基材(窯業系建築板)にシーラーを塗布した後、通常、基材を乾燥させる。乾燥方法及び乾燥条件も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0065】
必要に応じてシーラーを塗布し、含浸させた後、通常、建築板基材の上に、一つ以上の着色層を形成することが好ましい。
【0066】
着色層は、通常、着色剤と、樹脂とを少なくとも含む。
【0067】
着色層に含まれる着色剤としては、特に限定されず、公知のものいずれも用いることができる。着色層に含まれる着色剤としては、例えば、前述の本発明のインキ組成物に含まれる(A)着色剤と同様のものが挙げられる。着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
着色層の色相は、特に限定されず、所望に応じて適宜選択することができる。本発明のインキ組成物から形成されるインキ層と、着色層とは、同系色であってもよく、非同系色(同系色ではない色)であってもよい。二つ以上の着色層を形成する場合は、それらも、同系色であってもよく、非同系色であってもよい。
【0069】
着色層に含まれる樹脂としては、特に限定されず、バインダー樹脂として建築板の下塗層(下地層)あるいはインク受容層等に通常用いられているものいずれも用いることができる。着色層に含まれる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(アクリルスチレン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂等の共重合体樹脂も含む)、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
特に、本発明のインキ組成物から形成されるインキ層に直接積層される着色層に含まれる樹脂は、インキ層に含まれる樹脂、すなわち、本発明のインキ組成物に含まれる(B)水分散性樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。同種の樹脂を用いることで、より優れた着色層とインキ層との付着性や、その他の特性が得られる傾向がある。
【0071】
着色層中の着色剤の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、1~70質量%とすることができる。
【0072】
着色層中の樹脂(バインダー樹脂)の含有量も、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、30~99質量%とすることができる。
【0073】
着色層は、体質顔料をさらに含むこともできる。
【0074】
着色層に含まれる体質顔料としては、特に限定されず、公知のものいずれも用いることができる。着色層に含まれる体質顔料としては、例えば、タルク、カオリン、クレー、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、珪石粉、シリカ、アロフェン、イモゴライト、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト、ガラスビーズ等が挙げられる。体質顔料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
体質顔料を用いる場合、着色層中の体質顔料の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、1~20質量%とすることができる。着色層中に含まれる着色剤と体質顔料の含有比率も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0076】
着色層は、樹脂ビーズをさらに含むこともできる。ここで、樹脂ビーズとは、着色層中においても粒子形状が維持されている、粒子状の樹脂である。
【0077】
着色層に含まれる樹脂ビーズとしては、特に限定されず、公知のものいずれも用いることができる。着色層に含まれる樹脂ビーズとしては、例えば、アクリル樹脂の粒子、ポリウレタン樹脂の粒子、ポリアミド樹脂の粒子、尿素/ホルムアルデヒド樹脂の粒子、シリコーン樹脂の粒子、フッ素樹脂の粒子、フェノール樹脂の粒子、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂の粒子、アクリロニトリル樹脂の粒子、スチレン樹脂の粒子等が挙げられる。樹脂ビーズは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
樹脂ビーズを用いる場合、着色層中の樹脂ビーズの含有量は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、1~20質量%とすることができる。着色層中に含まれる着色剤と樹脂ビーズの含有比率も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0079】
着色層の平均膜厚(二つ以上の着色層を形成する場合は、すべての着色層の膜厚の合計)は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、1~200μmとすることができる。
【0080】
二つ以上の着色層を形成する場合、着色層と着色層との間に、例えば、珪砂、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等で模様等の加飾を形成することもできる。
【0081】
着色層は、公知の方法により形成することができ、例えば、必要に応じてシーラーを塗布し、含浸させた建築板基材の上に、上記のような着色剤と樹脂と溶剤(水または有機溶剤)とを含み、必要に応じて体質顔料および/または樹脂ビーズをさらに含む着色層形成用塗料組成物を塗布し、乾燥または硬化等により成膜させることにより、形成することができる。
【0082】
着色層形成用塗料組成物は、公知の方法により、各成分を均一になるまで撹拌・混合することによって調製することができる。着色層形成用塗料組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができる。また、着色層形成用塗料組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、成膜助剤、湿潤剤、粘度調整剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤、乳化剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、硬化促進剤等をさらに含むことができる。
【0083】
着色層形成用塗料組成物の塗布は、公知の方法で行うことができ、例えば、スプレー法、エアスプレー法、エアレススプレー法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、ディッピング法(浸漬法)、フローコート法や、静電塗装法等で行うことができる。着色層形成用塗料組成物の塗布条件や、乾燥方法及び乾燥条件、硬化方法及び硬化条件も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0084】
本発明の建築板は、必要に応じてシーラーを塗布し、含浸させた建築板基材の上に、好ましくは建築板基材の上に形成された着色層の上に、上記のような本発明のインキ組成物(建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物)から形成されるインキ層を有する。
【0085】
本発明の建築板のインキ層は、上記のような本発明のグラビアオフセット印刷方法のようにして、すなわち、本発明のインキ組成物を用い、被印刷基材である建築板基材の上に、好ましくは建築板基材の上に形成された着色層の上に、グラビアオフセット印刷を行うことにより形成することができる。本発明のインキ組成物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせたインクセットとして用いてもよい。また、印刷は、2回以上繰り返して行うこともできる。
【0086】
グラビアオフセット印刷は、通常の方法により行うことができる。印刷条件も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0087】
本発明においては、通常、グラビアオフセット印刷において用いられるグラビア版胴および/またはブランケット胴の洗浄を水で行うことが好ましい。
【0088】
また、印刷を行う際の被印刷基材(建築板)の温度は、40~70℃であり、かつ、印刷を行う際の被印刷基材(建築板)の温度と、インキ組成物中の(B)水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)との差の絶対値が、15℃以下、より好ましくは13℃未満、特に好ましくは10℃以下であることが好ましい。
【0089】
インキ層の膜厚は、特に限定されず、使用するグラビアオフセット印刷機、用途等に応じて適宜決めることができる。
【0090】
グラビアオフセット印刷を行い、インキ層を形成した後、必要に応じて、インキ層の上に、表面保護層として、一つ以上のクリヤー層を形成してもよい。インキ層が、建築板基材または着色層の表面の一部にのみ形成されている場合、クリヤー層は、建築板基材または着色層の上にも形成することが好ましい。
【0091】
ここで、クリヤー層は、少なくともその下に形成されているインキ層を視認することが可能な透明性を有する層である。クリヤー層は、その下に形成されているインキ層を視認することができれば、着色されていても、着色されていなくてもよい。
【0092】
クリヤー層は、通常、透明性が高い樹脂を含むことが好ましい。
【0093】
クリヤー層に含まれる樹脂としては、特に限定されず、建築板のクリヤー層あるいは表面保護層等に通常用いられているものいずれも用いることができる。クリヤー層に含まれる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(アクリルスチレン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂等の共重合体樹脂も含む)、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
特に、本発明のインキ組成物から形成されるインキ層に直接積層されるクリヤー層に含まれる樹脂は、必要とされる透明性を有する限り、インキ層に含まれる樹脂、すなわち、本発明のインキ組成物に含まれる(B)水分散性樹脂と同種の樹脂であるか、あるいは、より耐候性に優れる樹脂であることが好ましい。同種の樹脂を用いることで、より優れたクリヤー層とインキ層との付着性や、その他の特性が得られる傾向がある。
【0095】
クリヤー層は、フッ素樹脂パウダーをさらに含むこともできる。ここで、フッ素樹脂パウダーとは、クリヤー層においても粉末(パウダー)形状が維持されている、粉末状のフッ素樹脂である。
【0096】
クリヤー層に含まれるフッ素樹脂パウダーとしては、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定されず、公知のものいずれも用いることができる。フッ素樹脂パウダーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
フッ素樹脂パウダーを用いる場合、クリヤー層中のフッ素樹脂パウダーの含有量は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、0.5~10体積%とすることができる。
【0098】
クリヤー層は、無機粒子、好ましくはビッカース硬度が500以上である無機粒子をさらに含むこともできる。なお、ビッカース硬度は、JIS Z 2244:2009に従って測定することができる。
【0099】
クリヤー層に含まれる無機粒子としては、特に限定されず、公知のものいずれも用いることができる。クリヤー層に含まれる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、ジルコン、ダイヤモンド等が挙げられる。無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
無機粒子を用いる場合、クリヤー層中の無機粒子の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、0.1~30体積%とすることができる。
【0101】
クリヤー層の平均膜厚(二つ以上のクリヤー層を形成する場合は、すべてのクリヤー層の膜厚の合計)は、特に限定されず、適宜選択することができ、例えば、3~40μmとすることができる。
【0102】
クリヤー層は、公知の方法により形成することができ、例えば、インキ層等の上に、上記のような樹脂と溶剤(水または有機溶剤)とを含み、必要に応じてフッ素樹脂パウダーおよび/または無機粒子をさらに含むクリヤー層形成用塗料組成物を塗布し、乾燥または硬化等により成膜させることにより、形成することができる。
【0103】
クリヤー層形成用塗料組成物は、公知の方法により、各成分を均一になるまで撹拌・混合することによって調製することができる。クリヤー層形成用塗料組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができる。また、クリヤー層形成用塗料組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、成膜助剤、湿潤剤、粘度調整剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤、乳化剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、硬化促進剤、体質顔料、艶消し剤等をさらに含むことができる。
【0104】
クリヤー層形成用塗料組成物の塗布は、公知の方法で行うことができ、例えば、スプレー法、エアスプレー法、エアレススプレー法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、ディッピング法(浸漬法)、フローコート法や、静電塗装法等で行うことができる。クリヤー層形成用塗料組成物の塗布条件や、乾燥方法及び乾燥条件、硬化方法及び硬化条件も、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0105】
クリヤー層を形成した後、必要に応じて、クリヤー層の上に、一つ以上のオーバーコート層をさらに形成してもよい。
【0106】
ここで、オーバーコート層とは、クリヤー層の上に形成される機能性層の総称であり、例えば、コロイダルシリカ等による親水層、アルキルシラン等による撥水層、酸化チタン等による光触媒層等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0107】
本発明の建築板は、基材(建築板基材)の上に、グラビアオフセット印刷により、本発明のインキ組成物から形成されるインキ層を有するものであり、高品質の印刷画像を有する。また、インキ層、あるいは所望に応じて形成される着色層とクリヤー層およびオーバーコート層も含む積層膜の付着性、耐候性等の物性にも優れている。そのため、本発明の建築板は、幅広い用途で好適に用いることができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、本実施例において「部」及び「%」は、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0109】
実施例及び比較例において、測定・評価は次の方法で行った。
【0110】
<水分散性樹脂及び有機溶剤のSP値(溶解度パラメータ)>
調製した水分散性樹脂分散液に含まれる水分散性樹脂、及び有機溶剤のSP値は、Hoy法により、つまり、文献〔K.L.Hoy,J.Paint Technology,42,[541],76(1970)〕に記載された方法に準拠して算出した。
【0111】
<水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)>
調製した水分散性樹脂分散液に含まれる水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)は、JIS K 6828-2:2003に従って、水分散性樹脂分散液1~4、6の場合は30~70℃の範囲で、水分散性樹脂分散液5の場合は60~90℃の範囲で、0.5℃/cmの直線的な温度勾配をつけた、表面が平滑なステンレス製の熱板上に、膜厚が0.2mmになるように、調製した水分散性樹脂分散液をアプリケーターを用いて均一に塗布し、室温の乾燥空気を流すことによって樹脂分散液を乾燥させて造膜し、き裂のない均一な皮膜が形成される部分の境界位置を目視で確認して、その温度をMFTとした。なお、測定対象である水分散性樹脂分散液は、いずれも、溶媒(分散媒)が水であり、水分散性樹脂の含有量(固形分)が40質量%であるエマルジョンである。
【0112】
<有機溶剤の水分散性樹脂固形分に対して1質量%添加時の最低造膜温度(MFT)低下能>
有機溶剤の含有量が、水分散性樹脂分散液に含まれる水分散性樹脂の含有量の1/10(質量比)に相当する量になるように、調製した水分散性樹脂分散液に有機溶剤を添加・混合してエマルジョンを調製した。そして、調製したエマルジョンについて、上記の水分散性樹脂のMFT(最低造膜温度)の測定と同様にしてMFT(有機溶剤10質量%添加時のMFT)を求め、その値を有機溶剤の添加量(=10)で割った値を有機溶剤1質量%添加時のMFTとした。
そして、水分散性樹脂のMFTと、有機溶剤1質量%添加時のMFTとの差を算出して、当該有機溶剤の水分散性樹脂に対して1質量%添加時のMFT低下能とした。
【0113】
<インキ組成物の20℃における表面張力>
調製したインキ組成物を20℃に調整した後、協和界面科学製自動表面張力計CBVP-Zを用いて、白金プレート法により、表面張力を測定した。
【0114】
<インキ組成物の30℃における粘度>
調製したインキ組成物を30℃に調整した後、岩田式粘度カップ(NK-2)にすり切れまで入れ、下穴からインキ組成物が連続的に落ちきる時間を測定した。
【0115】
<インキ組成物の水洗浄性>
調製したインキ組成物をグラビアオフセット印刷機にて1時間循環した後、シャワーヘッドから水道水を3分間かけて、グラビア版胴及びブランケット胴からインクを洗い流し、紙ウエスで水分をふき取って、その紙ウエスにインクが付着しているかを目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。なお、評価は、23℃50%RHの雰囲気下で行った。
◎:グラビア版胴及びブランケット胴の両方にインクの付着が確認されない。
○:グラビア版胴またはブランケット胴の一方にインクの付着が僅かに確認できる。
△:グラビア版胴及びブランケット胴の両方に僅かにインクの付着が確認できる。
×:グラビア版胴またはブランケット胴の少なくとも一方に明らかにインクの付着が確認できる。
【0116】
<インキ組成物の発色性>
調製したインキ組成物をグラビアオフセット印刷機にて1時間循環し、循環を始めてから10分後と、1時間後に印刷した画像の濃さを目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。なお、評価は、23℃50%RHの雰囲気下で行った。
○:10分後に印刷した画像と1時間後に印刷した画像に差が見られない。
△:1時間後に印刷した画像の方が、僅かに印刷画像が薄くなっている。
×:1時間後に印刷した画像の方が、明らかに印刷画像が薄くなっている。
【0117】
<建築板の付着性>
作製した建築板の付着性は、JIS K 5600-5-6:1999に準拠して、建築板の積層膜(着色層、インキ層、及びクリヤー層)にカッターナイフを用いて縦横4mm間隔で切れ目を入れ、25升目を作製し、その上にセロテープ(登録商標;ニチバン株式会社製)を貼り付け、指先でしっかりとこすって圧着させた後、セロテープを引きはがし、残存する積層膜の升目を数え、以下の基準に従って評価した。なお、評価は、23℃50%RHの雰囲気下で行った。
○:分類0~1(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがないか、積層膜の残存率が95~99%)である。
△:分類2(積層膜の残存率が85%以上95%未満)である。
×:分類3~5(積層膜の残存率が0%以上85%未満か、それでも分類できないはがれ程度のいずれか)である。
【0118】
<建築板の耐候性>
作製した建築板の耐候性は、ウェザーメーターCi4000(アトラス社製)を用いてJIS K 5600-7-7:2008に準拠して促進耐侯性試験を実施し、試験時間1000時間まで実施した後、その建築板の積層膜の外観を目視で観察し、さらに、上記の<建築板の付着性>と同様にして積層膜の付着性の評価を行い、以下の基準に従って評価した。なお、評価は、23℃50%RHの雰囲気下で行った。
〇:膨れ、白化、クラック等の外観異常が見られず、付着性が分類0~1(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがないか、積層膜の残存率が95~99%)である。
△:膨れ、白化、クラック等の外観異常が見られず、付着性が分類2~3(積層膜の残存率が65%以上95%未満)である。
×:膨れ、白化、クラック等の外観異常が見られ、付着性が分類4~5(積層膜の残存率が0%以上65%未満か、それでも分類できないはがれ程度のいずれか)である。
【0119】
〔実施例1~36、比較例1~14〕
<水分散性樹脂分散液1、2、4、5の調製>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水250部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロンKH10」;反応性界面活性剤)3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、表1に示す配合で別容器中で撹拌混合して予め調製した乳化物(A)を4時間かけて連続滴下した。滴下終了後、80℃で5時間撹拌を続けた後、室温まで冷却し、28%アンモニア水でpH8.5に調整して、水分散性樹脂の分散液1、2、4、5(樹脂1、2、4、5)を得た。
【0120】
<水分散性樹脂分散液3の調製>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水250部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノールN-08」;非反応性界面活性剤)3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、表1に示す配合で別容器中で撹拌混合して予め調製した乳化物(A)を4時間かけて連続滴下した。滴下終了後、80℃で5時間撹拌を続けた後、室温まで冷却し、28%アンモニア水でpH8.5に調整して、水分散性樹脂の分散液3(樹脂3)を得た。
【0121】
<水分散性樹脂分散液6の調製>
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水250部、炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)1部、及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロンKH10」;反応性界面活性剤)3部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を添加した。次いで、表1に示す配合で別容器中で撹拌混合して予め調製した乳化物(A)を2時間かけて連続滴下し、その後、表1に示す配合で別容器中で撹拌混合して予め調製した乳化物(B)を2時間かけて連続滴下した。滴下終了後、80℃で5時間撹拌を続けた後、室温まで冷却し、28%アンモニア水でpH8.5に調整して、水分散性樹脂の分散液6(樹脂6)を得た。
【0122】
調製した水分散性樹脂の分散液1~6に含まれる水分散性樹脂(樹脂1~6)のSP値(溶解度パラメータ)とMFT(最低造膜温度)を測定した結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
なお、表1中の数値は質量部であり、表1中の略語は、次のとおりである。
・MMA:メチルメタクリレート
・EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
・ST:スチレン
・MAA:メタクリル酸
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
・KBM503:3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
・KH10:第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロンKH10」
・NF08:第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノールN-08」
【0124】
<着色層形成用塗料組成物1~7の調製>
表2に示す配合の原料成分と、チタニアビーズとを混合した後、ビーズミルで均一に分散した。分散後、チタニアビーズを取り除き、着色層形成用塗料組成物1~7(塗料1~7)を得た。
【0125】
【表2】
なお、表2中の数値は質量部であり、樹脂1~6(調製した水分散性樹脂分散液1~6)以外の表2中の原料成分は、次のとおりである。
・白色顔料:酸化チタン
・黒色顔料:カーボンブラック
・赤色顔料:赤色酸化鉄
・黄色顔料:黄色酸化鉄
・青色顔料:酸化コバルト
・ウレタン樹脂:株式会社アデカ製、商品名「アデカボンタイターHUX-401」;固形分37%のウレタン樹脂エマルション
・成膜助剤:ブチルセロソルブ
・シリコーン系表面調整剤:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK347」
・粘度調整剤:ダウケミカルカンパニー社製、商品名「プライマルASE-60」(ポリカルボン酸系増粘剤)
・防腐剤:ロンザ・ジャパン株式会社製、商品名「プロキセルDAC」(ベンツイソチアゾリン系防腐剤)
・消泡剤:ビックケミー・ジャパン株式会社、商品名「BYK-1785」(シリコーン系消泡剤)
【0126】
<インキ組成物1~38の調製>
表3~6に示す配合の原料成分と、ジルコニアビーズ(φ0.5mm)とを混合した後、ビーズミルで均一に分散した。分散後、ジルコニアビーズを取り除き、インキ組成物1~38(インキ1~38)を得た。
【0127】
調製したインキ組成物に含まれる有機溶剤の1気圧における沸点とSP値(溶解度パラメータ)と水分散性樹脂固形分に対して1質量%添加時の最低造膜温度(MFT)低下能、及びインキ組成物の20℃における表面張力と30℃における粘度を測定した結果を表3~6に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【表6】
なお、表3~6中の数値は質量部であり、樹脂1~6(調製した水分散性樹脂分散液1~6)と有機溶剤と水以外の表3~6中の原料成分は、次のとおりである。
・白色顔料:酸化チタン
・黒色顔料:カーボンブラック
・黄色顔料:黄色酸化鉄
・赤色顔料:赤色酸化鉄
・青色顔料:酸化コバルト
・シリコーン系表面調整剤:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK347」
・粘度調整剤:ダウケミカルカンパニー社製、商品名「プライマルASE-60」(ポリカルボン酸系増粘剤)
・防腐剤:ロンザ・ジャパン株式会社製、商品名「プロキセルDAC」(ベンツイソチアゾリン系防腐剤)
・消泡剤:サンノプコ株式会社製、商品名「SNデフォーマー1314」(シリコーン系消泡剤)
・紫外線吸収剤:BASF株式会社製、商品名「Tinuvin1130」(ベンズトリアゾール系紫外線吸収剤)
・光安定剤:BASF株式会社製、商品名「Tinuvin292」(ヒンダードアミン系光安定剤)
【0132】
<建築板の製造>
縦150mm×横70mm×厚さ4mmのスレート板(TP技研株式会社製)の表面に、エアスプレーを用いて、水系シーラー(大日本塗料株式会社製、製品名「水性マイティーシーラーマルチ」)を塗布量が100g/m2となるように塗装し、室温で2時間乾燥させて、基材を作製した。
【0133】
次いで、基材の表面温度が60℃になるように調整した状態で、基材のシーラーを塗装した面に、エアレススプレーを用いて、表7~11に示す着色層形成用塗料組成物1~7(塗料1~7)を塗布量が120g/m2(乾燥膜厚30μm相当)となるように塗装した。塗装後、80℃で10分間乾燥させて、着色層を形成した。なお、基材の表面温度の測定は、赤外線放射型非接触温度計を用いて行った。
【0134】
次いで、基材の表面温度を表7~11に示す温度に調整した状態で、基材の着色層を形成した面に、グラビアオフセット印刷機を用いて、表7~11に示すインキ組成物1~38(インキ1~38)を塗装した。その後、80℃で10分間乾燥させて、インキ層を形成した。なお、基材の表面温度の測定は、赤外線放射型非接触温度計を用いて行った。
【0135】
次いで、基材の表面温度が60℃になるように調整した状態で、基材のインキ層を形成した面(印刷面)に、水性アクリルクリヤー塗料(大日本塗料株式会社製、製品名「Vセラン」)を塗布量が80g/m2(乾燥膜厚25μm相当)となるように塗装した。塗装後、80℃で20分間乾燥させて、表面保護層(クリヤー層)を形成した。なお、基材の表面温度の測定は、赤外線放射型非接触温度計を用いて行った。
【0136】
建築板の製造に用いたインキ組成物の水洗浄性と発色性、作製した建築板の付着性と耐候性を測定した結果を表7~11に示す。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によれば、建築板に対してもグラビアオフセット印刷で良好に印刷を行うことができ、安定して連続印刷も可能な建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物、及びグラビアオフセット印刷方法を提供することができる。また、本発明によれば、この建築板用グラビアオフセット印刷インキ組成物を用い、グラビアオフセット印刷により、印刷を施した建築板を提供することができる。