(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】地盤改良機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2020119745
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 智彦
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3213084(JP,U)
【文献】特開2019-59586(JP,A)
【文献】特開2009-299356(JP,A)
【文献】特開2004-278170(JP,A)
【文献】特開平3-137316(JP,A)
【文献】特開2015-17403(JP,A)
【文献】特開2015-30978(JP,A)
【文献】特開2009-203659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダに沿って昇降する回転駆動装置と、該回転駆動装置に装着されるスクリューシャフトと、該スクリューシャフトの上端に設けられて地盤改良剤の注入ホースが接続されるスイベルジョイントとを備え、前記回転駆動装置に、前記スクリューシャフトに沿って伸縮可能な伸縮ロッドを設け、該伸縮ロッドと前記スイベルジョイントとを連結部材で連結した地盤改良機において、
前記リーダは、鉛直に起立させた作業姿勢と、前記回転駆動装置を下端部に保持した状態から後方に倒伏させた輸送姿勢とに起伏可能に形成され、
前記上部旋回体には、前記リーダの起伏動作に従う前記伸縮ロッドの移動方向を遮らず、かつ、前記輸送姿勢で、前記伸縮ロッドの伸び方向を遮るロッドストッパ部材が設けられていることを特徴とする地盤改良機。
【請求項2】
前記ロッドストッパ部材は、前記輸送姿勢で、前記伸縮ロッドの伸び方向に対向して配置されることによって前記伸縮ロッドの先端部が当接可能な当接面を有し、該当接面は、弾性体で形成されていることを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。
【請求項3】
前記伸縮ロッドは、前記輸送姿勢で、前記伸び方向が水平よりも斜め上向きとなる角度に保持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機に関し、詳しくは、掘削した土砂と注入した地盤改良剤とを撹拌混合して地盤の改良を行う地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築や土木工事では、軟弱地盤を改良するために、掘削した掘削孔にセメントミルクなどの地盤改良剤を注入・撹拌し、地盤を硬化させる地盤改良機が使用されている。この種の地盤改良機は、中空掘削軸であるスクリューシャフトの上端にスイベルジョイントを介して地盤改良剤の注入ホース(グラウトホース)を接続するとともに、下端に掘削刃及び撹拌翼を有する掘削ヘッドを装着し、回転が付与されたスクリューシャフトをリーダに沿って下降させて地盤を掘削しながら、スクリューシャフト内を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッドから噴出させて土砂と地盤改良剤とを撹拌している。
【0003】
回転継手であるスイベルジョイントは、その取付構造上、カップリング(シャフト側)とボディ(ホース側)との間に組み込まれたシール部分の抵抗によってボディ側が連れ回りするおそれがある。こうしたスイベルジョイントの連れ回り防止手段として、地盤改良機には、回転駆動装置に立設した伸縮ロッドと、該伸縮ロッド及びスイベルジョイント間を連結する連結部材とが備わっている。連結部材は、スイベルジョイントのカップリングを回転可能に保持しながら、同時に接続状態の注入ホースも保持する形で構成され、これにより、スイベルジョイントは、そのボディ側が定位置に回転不能に保持され、回転するスクリューシャフトによって連れ回りが生じないようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
連れ回り防止手段を構成する伸縮ロッドは、複数のパイプを順に内嵌したテレスコピック構造を有し、パイプを縮めたときに重なり合うピン挿通孔を使用してピン止めすることにより、リーダに沿って倒した輸送位置において不意に伸びてしまうことを防止している。しかしながら、ピン止め構造は簡便であるものの、ロックピンをいつ着脱するかの決定は人の判断にゆだねられており、これを作業現場で適時に行うことは容易でなく、万一、ロックピンをピン挿通孔に差し込んだまま抜き忘れてしまうと、スクリューシャフトを組み付ける際に、伸縮ロッドの伸び方向への移動が妨げられ、連れ回り防止手段の各部を破損させてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、作業性を損なわずに伸縮ロッドの伸長規制を適切に行うことが可能なロッドストッパ部材を備えた地盤改良機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の地盤改良機は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダに沿って昇降する回転駆動装置と、該回転駆動装置に装着されるスクリューシャフトと、該スクリューシャフトの上端に設けられて地盤改良剤の注入ホースが接続されるスイベルジョイントとを備え、前記回転駆動装置に、前記スクリューシャフトに沿って伸縮可能な伸縮ロッドを設け、該伸縮ロッドと前記スイベルジョイントとを連結部材で連結した地盤改良機において、前記リーダは、鉛直に起立させた作業姿勢と、前記回転駆動装置を下端部に保持した状態から後方に倒伏させた輸送姿勢とに起伏可能に形成され、前記上部旋回体には、前記リーダの起伏動作に従う前記伸縮ロッドの移動方向を遮らず、かつ、前記輸送姿勢で、前記伸縮ロッドの伸び方向を遮るロッドストッパ部材が設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、前記ロッドストッパ部材は、前記輸送姿勢で、前記伸縮ロッドの伸び方向に対向して配置されることによって前記伸縮ロッドの先端部が当接可能な当接面を有し、該当接面は、弾性体で形成されていることを特徴としている。さらに、前記伸縮ロッドは、前記輸送姿勢で、前記伸び方向が水平よりも斜め上向きとなる角度に保持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地盤改良機によれば、上部旋回体にリーダの起伏動作に従う伸縮ロッドの移動方向を遮らず、かつ、輸送姿勢で、伸縮ロッドの伸び方向を遮るロッドストッパ部材を設けているので、伸縮ロッドの伸長規制とその規制解除とを、リーダを起伏させるだけの簡単な操作で迅速かつ適切に行うことができる。これにより、輸送中にトレーラの荷台上で伸縮ロッドが伸びてしまうことを確実に防止できるだけでなく、作業開始前の準備時間や作業完了後に現場から搬出する際の準備時間も削減できることから、地盤改良機を扱う者の安全と作業効率の向上とに資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示す地盤改良機であってリーダを起立させた作業姿勢の状態を示す側面図である。
【
図2】地盤改良機に設けられている回り止め装置の一例を示す図である。
【
図3】リーダを倒伏させた輸送姿勢の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図5は、本発明の地盤改良機を示す図である。地盤改良機11は、
図1及び
図2に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ起伏シリンダ16と、前記リーダ15に昇降可能に設けられた回転駆動装置であるオーガ17とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧ポンプなどの機器を収納するエンジン収納ハウス20が設けられ、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ21が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部には地盤改良機11のバランスをとるためのカウンタウエイト22が搭載されている。
【0012】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、前記リーダサポート18に設けられた車体幅方向の支軸23に回動可能に取り付けられている。また、リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ24が、下部前方には、回転駆動される施工部材の振れを防止する開閉可能な振止装置25がそれぞれ備わっており、リーダ15の両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ26,26が、リーダ15の全長に亘って連続的に設けられている。
【0013】
オーガ17は、ギヤケース17aを貫通した施工部材を把持するチャック機構17bと、該施工部材に回転駆動力を付与するオーガ駆動用油圧モータ17cとを備えており、前記ガイドパイプ26,26に摺接する左右一対のガイドギブ17d,17dが後方に突出して設けられ、リーダ15の上下に設けられたスプロケットに掛け渡されるチェーンにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている。
【0014】
地盤改良機11を使用して地盤改良を行う際には、施工部材としてスクリューシャフトが使用される。スクリューシャフト27は、セメントミルクなどの地盤改良剤が中を通る継足し可能な中空管であり、上端部のアッパーシャフト28を含む長さ方向の複数箇所に前記チャック機構17bに係合するチャック溝27aを備えた角軸部27bが設けられ、下端には掘削刃29a及び撹拌翼29bを有する掘削ヘッド29が装着される。また、アッパーシャフト28の上端にはスイベルジョイント30が取り付けられ、該スイベルジョイント30に注入ホース(グラウトホース)31が接続されている。
【0015】
スイベルジョイント30は、アッパーシャフト28に連結するカップリング30aと、注入ホース31が接続されるボディ30bとが相対回転可能に組み立てられ、スクリューシャフト27が回転してもその回転力が注入ホース31に伝わらないようになっている。もっとも、カップリング30aとボディ30bとの間には、漏れ防止のシールが介在しているため、こうしたシール部分の抵抗によってボディ30b側が連れ回りしてしまうおそれがある。そこで、スイベルジョイント30の連れ回りを防止するための回り止め装置が使用されている。
【0016】
回り止め装置32は、スクリューシャフト27に沿って伸縮可能な伸縮ロッド33をオーガ17に設け、伸縮ロッド33とスイベルジョイント30との間で連結部材34による連結がなされている。
【0017】
伸縮ロッド33は、径の異なる3本のパイプ33a,33b,33cを同軸に摺動可能に連結し、スクリューシャフト27に沿って上方に伸縮可能な状態としたテレスコピック構造に形成されており、最外部の大径パイプ33aの下部がブラケットを介してオーガ17のギヤケース17a側面に固定され、最内部の小径パイプ33cの上端には、前記大径パイプ33aと同じ外径を有する大径部33dが設けられている。また、大径部33dの上端には、大径部33dよりも大径の係止部材33eが設けられている。さらに、大径パイプ33aの上端外周部及び大径部33dの下端外周部には、それぞれ周方向に面取り加工が施され、伸縮ロッド33を縮めた状態で、大径パイプ33aの上端と大径部33dの下端とが互いに当接して、両外周面同士が滑らかに連続するようになっている。
【0018】
連結部材34は、伸縮ロッド33及びスイベルジョイント30間に渡されたアーム本体34aを中心に構成され、伸縮ロッド33の大径パイプ33a及び大径部33dが挿通可能な内径を有するガイド筒34bと、スイベルジョイント30のカップリング30a側をベアリング機構を介して保持する保持部(図示せず)と、注入ホース31を保持するホース保持部34cとを有しており、ガイド筒34b内に伸縮ロッド33が軸方向に移動可能に挿通され、前記係止部材33eによってガイド筒34bが大径部33dの上方へ抜けでることが防止されている。これにより、スイベルジョイント30は、注入ホース31を接続した状態で、ボディ30b側が定位置に回転不能に保持され、回転するスクリューシャフト27によって連れ回りすることはない。
【0019】
以下では、このように形成した地盤改良機11によって、リーダ15よりも長尺のスクリューシャフト27を使用して地盤改良を行う手順を説明する。まず、作業開始前は、リーダ15を鉛直に起立させた作業姿勢の状態で、オーガ17はリーダ15の上部に配置され、スクリューシャフト27の中間角軸部27bがオーガ17のチャック機構17bに係合して把持されるとともに、振止装置25によってスクリューシャフト27が回転可能かつ上下動可能に保持される(
図1)。このとき、スクリューシャフト27の上部はオーガ17の上方に大きく突出した状態となり、下端の掘削ヘッド29は地上に位置した状態となっている。
【0020】
また、スクリューシャフト27の上端に接続されたスイベルジョイント30の高さに応じて連結部材34が上昇した位置になり、これに伴って伸縮ロッド33も最大に伸長した状態(最伸長状態)となっている。さらに、伸縮ロッド33は、中段及び上段のパイプ33b,33cの自重によって収縮する方向に力が作用しているが、連結部材34のガイド筒34b上端が係止部材33eの下面に当接していることによって最伸長状態が維持される。
【0021】
この状態で、オーガ17を作動させてスクリューシャフト27を回転駆動しながらリーダ15に沿って下降させるとともに、スクリューシャフト27を通って送られた地盤改良剤を掘削ヘッド29の先端から掘削孔に噴射することにより、掘削ヘッド29の掘削刃29aで掘削した土砂と地盤改良剤とを掘削ヘッド29の撹拌翼29bで混合する。このとき、伸縮ロッド33は、オーガ17及びスクリューシャフト27と共に下降するので、最伸長状態を保ったままの状態となっている。
【0022】
オーガ17をリーダ15の下部に下降させた後、中間角軸部27bの把持を解除したオーガ17を上昇させて上部角軸部27bを把持する掴み替えを行う。このとき、スクリューシャフト27をその位置に固定しておくために、振止装置25の固定手段によってスクリューシャフト27が把持される。また、オーガ17は、スクリューシャフト27との係合状態を解除して上昇するため、オーガ17の上昇に伴ってスクリューシャフト27の突出量が減少し、オーガ17とスイベルジョイント30との距離が次第に短くなる。
【0023】
これに伴って伸縮ロッド33が縮まってゆき、中段及び上段のパイプ33b,33cは共に大径パイプ33a内に収まった状態になり、小径パイプ33cの上端に設けられた大径部33dの下端が大径パイプ33aの上端に当接することによって伸縮ロッド33が最も収縮した状態(最収縮状態)になる。
【0024】
この最収縮状態でオーガ17が更に上昇すると、オーガ17と同時に伸縮ロッド33が上昇するのに対し、前記保持部でスイベルジョイント30を保持した連結部材34の高さは変わらないため、連結部材34のガイド筒34b内を通って伸縮ロッド33が上昇する。このとき、ガイド筒34bは、大径部33dの外周部から大径パイプ33aの外周部に移動し、更に大径パイプ33aのオーガ17への固定部直上まで移動する。
【0025】
オーガ17の移動によってスクリューシャフト27の把持位置を上部側に切り替えたら、スクリューシャフト27を回転駆動しながら下降させて、掘削ヘッド29の掘削刃29aで掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼29bで混合する。そして、所定深度まで掘削ヘッド29を下降させた後、逆の手順で掘削ヘッドを引き抜くことによって地盤改良作業が終了する。
【0026】
ここで、スクリューシャフト27を引き抜く際には、リーダ15の下端まで下降したオーガ17を、スクリューシャフト27の上部角軸部27bを把持した状態のままリーダ15に沿って上昇させる。このときはオーガ17とスクリューシャフト27とが同時に上昇するので、伸縮ロッド33は最収縮状態、連結部材34のガイド筒34bは大径パイプ33aの外周部に位置したままの状態で上昇する。
【0027】
オーガ17をリーダ15の上部まで上昇させた後、上部角軸部27bの把持を解除したオーガ17を下降させて中間角軸部27bを把持する掴み替えを行うと、スクリューシャフト27は下降せず、連結部材34がスクリューシャフト27の上端部に位置したままでオーガ17のみが下降するので、ガイド筒34bに対して伸縮ロッド33が下降し、ガイド筒34bは大径パイプ33aの外周部から大径部33dの外周部に向かって移動する。そして、ガイド筒34bの上端が係止部材33eの下面に当接すると、ガイド筒34bによって伸縮ロッド33の中段及び上段のパイプ33b,33cが順次持ち上げられて伸長し、最終的には最大に伸長した状態となる。
【0028】
ところで、作業後に現場から地盤改良機11を搬出する際には、あらかじめスイベルジョイント30と注入ホース31との接続が解除され、スクリューシャフト27についてはアッパーシャフト28のみがオーガ17に把持されて、延長用シャフトや掘削ヘッド29などアッパーシャフト28から下側の部品が全て取り外される。その後、オーガ17をリーダ15の下端部(下降限界位置)に移動させると、オーガ位置検出リミットスイッチ(図示せず)からの作動信号を受けて、リーダ起伏シリンダ16の所定量の縮作動を許可する油圧制御がなされる。こうして、
図3に示すように、リーダ起伏シリンダ16を縮めてリーダ15を後方に倒伏させた輸送姿勢とすることで、低床トレーラなどの輸送車の荷台上において高さ寸法を低く抑えることが可能である。
【0029】
こうした地盤改良機11の輸送姿勢において、伸縮ロッド33は、リーダ15と共に水平に近い角度に倒されて最収縮状態を維持しているが、万一、走行中に輸送車が急制動すると、その慣性力で伸縮ロッド33が伸びてしまうおそれがある。そこで、地盤改良機11には、作業性を損なわずに伸縮ロッド33の伸長規制を適切に行うことが可能なロッドストッパ部材35が備わっている。
【0030】
前記ロッドストッパ部材35は、
図4及び
図5に示すように、エンジン収納ハウス20上に設置したハウスカバー36の天板36a上に複数のボルト37を用いて取り付けられたブラケット構造であって、左右一対の側板35a,35aによって伸縮ロッド33の押付け方向に対する強度が高められ、前板35b上部には伸縮ロッド33が伸びようとするときに先端の係止部材33eが当接可能な当たりゴム38が設けられている。ロッドストッパ部材35の具体的な配置は、リーダ15の起伏動作に従う伸縮ロッド33の移動方向を遮らず、かつ、輸送姿勢で、伸縮ロッド33の伸び方向を遮る位置に設けられている。すなわち、左右方向の位置が伸縮ロッド33の軸線を通る垂直平面に置かれ、前後方向の位置がリーダ15の支軸(回動中心)23まわりに円弧移動する最収縮状態の伸縮ロッド33との干渉を避けるとともに、円弧移動した後の輸送位置において、伸縮ロッド33の係止部材33eと当たりゴム38とが、例えば20mm程度の隙間Sを有して互いに近接する位置関係に置かれる。
【0031】
また、輸送位置にある伸縮ロッド33は、リーダ15の倒伏角度に整合した傾斜角度に、言い換えると、伸縮ロッド33の伸び方向が水平よりも斜め上向きとなる角度θとして、例えば5度の傾きをもって保持されている。これに対応してロッドストッパ部材35は、前板35bを傾斜させることによって当たりゴム38の当接面38aを伸縮ロッド33の伸び方向に対向させて配置している。
【0032】
このようなロッドストッパ部材35を備えた地盤改良機11は、リーダ15を鉛直に起立させた作業姿勢では、スクリューシャフト27の上部角軸部27b、つまりアッパーシャフト28をオーガ17によって把持した状態で、伸縮ロッド33がその自重によって最収縮状態に維持される。しかし、たとえ最収縮状態であっても、オーガ17がリーダ15の下端部に移動していない状態(オーガ未格納状態)では、オーガ位置検出リミットスイッチによる検出が行われず、リーダ15の倒伏操作を行うことができない。こうした安全装置により、作業姿勢から輸送姿勢へ移行する際の伸縮ロッド33とロッドストッパ部材35との接触が未然に回避される。
【0033】
オーガ17をリーダ15の下端部に移動させた格納状態でリーダ起伏シリンダ16を縮める操作を行うと、リーダ15の倒伏動作に従って伸縮ロッド33がハウス20の上方へ移動し、リーダ起伏シリンダ16が収縮限界まで作動した位置において輸送姿勢となる。このとき、伸縮ロッド33は、リーダ15に沿う上向きの傾斜を有するとともに、係止部材33eがロッドストッパ部材35の当たりゴム38に対して向き合う位置に保持される。一方、リーダ起伏シリンダ16を伸ばす操作を行ってリーダ15を前方に起仰させると、伸縮ロッド33は作業姿勢においてもなお、最収縮状態に維持されている。その後、伸縮ロッド33は、スクリューシャフト27を組み立てるときに、各パイプ33a,33b,33cが順に上方へ伸ばされ、最伸長状態においてスイベルジョイント30の連れ回り防止機能を発揮する。
【0034】
このように、本発明の地盤改良機11によれば、上部旋回体13にリーダ15の起伏動作に従う伸縮ロッド33の移動方向を遮らず、かつ、輸送姿勢で、伸縮ロッド33の伸び方向を遮るロッドストッパ部材35を設けているので、伸縮ロッド33の伸長規制とその規制解除とを、リーダ15を起伏させるだけの簡単な操作で迅速かつ適切に行うことができる。これにより、輸送中にトレーラの荷台上で伸縮ロッド33が伸びてしまうことを確実に防止できるだけでなく、作業開始前の準備時間や作業完了後に現場から搬出する際の準備時間も削減できることから、地盤改良機11を扱う者の安全と作業効率の向上とに資するものである。
【0035】
また、ロッドストッパ部材35が当たりゴム38からなる当接面38aを有するとともに、該当接面38aが伸縮ロッド33の伸び方向に対向して配置されることによって伸縮ロッド33の先端部が当接可能に形成されているので、当たりゴム38の弾性力によってロッドストッパ部材35への衝撃を抑えることができ、ロッドストッパ部材35の損傷防止にも効果的である。さらに、輸送姿勢において、伸縮ロッド33をその伸び方向が水平よりも斜め上向きとなる角度である輸送位置に保持するので、リーダ15の起伏動作や輸送中の振動による悪影響をなくして伸縮ロッド33を最収縮状態で安定させることができ、ひいてはロッドストッパ部材35の形状の小型化や設置スペースの縮小にも寄与するものとなる。
【0036】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、ロッドストッパ部材は、安価で製作も容易な板材から形成することが好適であるが、これに限られず、角パイプなどの形鋼材を組み合わせて形成したものなどが採用できる。また、当接面には弾性体である当たりゴムの他、軟質の樹脂や軟鋼のような柔らかい金属などから形成することができる。さらに、ロッドストッパ部材の設置は、ハウス上であればブラインドナットの締め付けによる締結で後改造も容易であるが、これに限られず、例えば、伸縮ロッドがより長尺になれば、これに対応して上部旋回体のより後部側に設置するなど、地盤改良機の仕様に応じた様々な設置態様が考えられる。
【符号の説明】
【0037】
11…地盤改良機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…リーダ起伏シリンダ、17…オーガ、17a…ギヤケース、17b…チャック機構、17c…オーガ駆動用油圧モータ、17d…ガイドギブ、18…リーダサポート、19…運転室、20…エンジン収納ハウス、21…ジャッキ、22…カウンタウエイト、23…支軸、24…トップシーブ、25…振止装置、26…ガイドパイプ、27…スクリューシャフト、27a…チャック溝、27b…角軸部、28…アッパーシャフト、29…掘削ヘッド、29a…掘削刃、29b…撹拌翼、30…スイベルジョイント、30a…カップリング、30b…ボディ、31…注入ホース、32…回り止め装置、33…伸縮ロッド、33a,33b,33c…パイプ、33d…大径部、33e…係止部材、34…連結部材、34a…アーム本体、34b…ガイド筒、34c…ホース保持部、35…ロッドストッパ部材、35a…側板、35b…前板、36…ハウスカバー、36a…天板、37…ボルト、38…当たりゴム、38a…当接面