(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B65D77/20 F
(21)【出願番号】P 2020129335
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 季和
(72)【発明者】
【氏名】中野 康宏
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137099(JP,A)
【文献】特開2020-055591(JP,A)
【文献】特開2009-102081(JP,A)
【文献】実開昭60-146077(JP,U)
【文献】特開平03-014476(JP,A)
【文献】特開平03-289467(JP,A)
【文献】特開2006-168805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部および前記凹部の周縁部に形成されるフランジ部を含む容器本体と、
前記凹部の開口を覆い、前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合される蓋体とを備え、
前記フランジ部の周方向の少なくとも一部の区間において、前記フランジ部の内縁から前記接合領域の内縁までの第1の距離が、前記フランジ部の内縁から前記フランジ部の外縁までの第2の距離の30%以上であ
り、
前記接合領域の内縁で前記フランジ部の周方向について接合強度が不均一であり、
前記区間が前記フランジ部の全周の40%以上である容器。
【請求項2】
前記接合領域の内縁は、ローレットシールによって形成される、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
凹部および前記凹部の周縁部に形成されるフランジ部を含む容器本体と、
前記凹部の開口を覆い、前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合される蓋体とを備え、
前記フランジ部の周方向の少なくとも一部の区間において、前記フランジ部の内縁から前記接合領域の内縁までの第1の距離が、前記フランジ部の内縁から前記フランジ部の外縁までの第2の距離の30%以上であり、
前記接合領域の内縁に接する部分が、前記接合領域に互いに孤立した複数の非接合領域を配列したシールによって形成され、
前記区間が前記フランジ部の全周の40%以上である容器。
【請求項4】
前記接合領域の内縁は、穴あきシールによって形成される、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
凹部および前記凹部の周縁部に形成されるフランジ部を含む容器本体と、
前記凹部の開口を覆い、前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合される蓋体とを備え、
前記フランジ部の周方向の少なくとも一部の区間において、前記フランジ部の内縁から前記接合領域の内縁までの第1の距離が、前記フランジ部の内縁から前記フランジ部の外縁までの第2の距離の30%以上であり、
前記接合領域の内縁に不規則な凹凸形状が生じており、
前記区間が前記フランジ部の全周の40%以上である容器。
【請求項6】
前記接合領域の内縁は、丸められた断面形状のシール盤を用いて形成される、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記第1の距離が、前記第2の距離の50%以上である、請求項1
から請求項
6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
前記接合領域の内縁は、前記フランジ部の周方向に沿って非直線状に形成される、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
低温条件下での保管用または輸送用である、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートで形成され、内部空間を形成するカップ状の凹部および凹部の周縁部に形成されるフランジ部を含む容器本体と、樹脂フィルムで形成され、フランジ部に位置する接合領域で容器本体に接合される蓋体とを有する容器が知られている。このような容器に関する技術は、例えば特許文献1および特許文献2のように種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5001962号公報
【文献】特開昭63-00078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような容器を例えば落下させた場合、フランジ部に衝撃が加わることによって容器本体に割れが発生する場合がある。特に、容器に惣菜などの内容物を収納して氷点下のような低温条件下で保管および輸送する場合、樹脂材料のガラス転移温度(ポリプロピレンの場合、約0℃)を下回る温度で衝撃が加えられ、塑性的な挙動によって容器本体に割れが発生する可能性が高い。
【0005】
フランジ部への衝撃に対して容器本体の割れを防止するために、フランジ部を厚くすることも考えられる。しかしながら、フランジ部を厚くするためには材料である樹脂シートを厚くする必要があり、結果として凹部も含めた全体が厚くなる結果、容器の単価が上昇してしまう。また、樹脂シートの材料処方を変更することによって割れを防止することも考えられるが、剛性や耐熱性などといった容器本体に要求される性能を満たしつつ割れを防止する処方は容易ではない。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂シートの厚みや材料処方に依存することなく、容器本体のフランジ部に衝撃が加わった場合に容器本体に割れが発生するのを防止することが可能な容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]凹部および凹部の周縁部に形成されるフランジ部を含む容器本体と、凹部の開口を覆い、フランジ部に形成される接合領域で容器本体に接合される蓋体とを備え、フランジ部の周方向の少なくとも一部の区間において、フランジ部の内縁から接合領域の内縁までの第1の距離が、フランジ部の内縁からフランジ部の外縁までの第2の距離の30%以上である容器。
[2]区間は合計でフランジ部の全周の20%以上である、[1]に記載の容器。
[3]第1の距離が、第2の距離の50%以上である、[1]または[2]に記載の容器。
[4]接合領域の内縁は、フランジ部の周方向に沿って非直線状に形成される、[1]から[3]のいずれか1項に記載の容器。
[5]接合領域の内縁は、ローレットシールによって形成される、[4]に記載の容器。
[6]接合領域の内縁は、穴あきシールによって形成される、[4]に記載の容器。
[7]接合領域の内縁は、丸められた断面形状のシール盤を用いて形成される、[4]に記載の容器。
[8]低温条件下での保管用または輸送用である、[1]から[7]のいずれか1項に記載の容器。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、フランジ部の外縁付近に力が加えられた場合の剛体的な挙動を利用して、接合領域の内縁付近に作用する力を小さくすることができる。従って、樹脂シートの厚みや材料処方に依存することなく、容器本体のフランジ部に衝撃が加わった場合に容器本体に割れが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る容器の斜視図である。
【
図3】
図2に示す容器のIII-III線に沿った断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態において適用可能な接合領域の例を示すフランジ部の拡大平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態において適用可能な接合領域の例を示すフランジ部の拡大平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態において適用可能な接合領域の例を示すフランジ部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る容器の斜視図であり、
図2は
図1に示す容器の平面図である。図示されるように、容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、カップ状の凹部111と、凹部111の周縁部に形成されるフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合される。これによって、凹部111と蓋体130との間に内部空間SPが形成される。
【0012】
容器本体110は、例えば樹脂組成物で形成される単層のシートまたは多層の積層体を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。具体的には、例えば、容器本体110は、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂組成物で形成される基材層と、オレフィン系樹脂で形成される表面層とを含む積層体で形成されてもよい。この場合、積層体の基材層は、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層および表面下層との間では、例えば剛性が異なる。基材層には、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0013】
一方、容器本体110を形成する積層体の表面層は、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂組成物で形成される。具体的には、例えば、表面層はエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくともいずれかを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物で形成される。この場合、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部から50質量部、特に好ましくは15質量部から40質量部程度、添加すればよい。なお、容器本体110の平面形状は矩形として例示されているが、円形などの他の形状であってもよい。
【0014】
蓋体130は、例えば樹脂組成物で形成される単層または多層のフィルムで形成される。具体的には、例えば、蓋体130は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される外層と、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成されるシール層とを含むフィルム状の積層体で形成されてもよい。他の例では、蓋体をフィルムではなく容器本体110と同様の成形体としてもよい。
【0015】
図3は、
図2に示す容器のIII-III線に沿った断面図である。図示された例において、容器本体110は、基材層114Aおよび表面層114Bを含む積層体を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層114Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。基材層114Aは、例えば剛性が異なる複数の層を含んでもよい。表面層114Bは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。他の実施形態において、容器本体110を形成する積層体は接着層やガスバリア層などの追加の層を含んでもよい。蓋体130は、外層131Aおよびシール層131Bを含むフィルム状の積層体からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。シール層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に向けられる側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。他の実施形態では、蓋体130を形成する積層体にも追加の層が含まれてもよい。
【0016】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、容器本体110のフランジ部112の周方向の少なくとも一部の区間において、フランジ部112の内縁から接合領域140の内縁までの距離r
1が、フランジ部112の内縁からフランジ部112の外縁までの距離r
2の30%以上である。つまり、この区間において、フランジ部112の内縁側の少なくとも30%の領域には接合領域140が形成されず、接合領域140はフランジ部112の外縁側の残りの領域、具体的には70%よりも小さい領域に形成される。距離r
1は距離r
2の40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。上限値は容器本体110と蓋体130とのシール強度を維持する観点から、通常98%である。ここで、フランジ部112の内縁は、容器本体110の表面層114B側において平坦なフランジ部112が形成される領域の内側、すなわち凹部111側の縁である。つまり、容器本体110の形状が平坦なフランジ部112から凹部111へと変化する形状変化点がフランジ部112の内縁になる。一方、フランジ部112の外縁は、同じく容器本体110の表面層114B側において平坦なフランジ部112が形成される領域の外側、すなわち凹部111とは反対側の縁である。図示された例ではフランジ部112の外側にスカート部が形成されるため、内側と同様に形状変化点がフランジ部112の外縁になるが、スカート部が形成されない場合には、フランジ部112の外側の終端がフランジ部112の外縁になる。また、上述の一部の区間とは容器の形状によらず、好ましくはフランジ部112の周方向の20%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上の区間である。上限は100%であり、フランジ部112の全周にわたって上記のように接合領域140が形成されてもよい。
【0017】
本実施形態では、上記のように接合領域140が形成されることによって、例えば
図4に示す参考例の場合に比べて、フランジ部112の外縁付近に力F
1が加えられた場合に接合領域140の内縁付近に作用する力F
2を小さくすることができる。ここで、力F
1は例えば容器100を落下させたときのフランジ部112への衝撃によって生じる力であり、力F
2は力F
1が蓋体130に伝わるときの反作用として生じ、フランジ部112に割れを生じさせる可能性がある力である。力F
1が作用したときのフランジ部112の挙動は剛体的な挙動と弾性体的な挙動の両方を含むが、剛体的な挙動に着目した場合、力F
1が加わるフランジ部112の外縁を力点P
1、力F
2が生じる接合領域140の内縁を作用点P
2、フランジ部112の内縁を支点P
3とする梃子の原理が成り立つ。なお、フランジ部112の内縁が支点P
3になるのは、フランジ部112から凹部111への形状変化によって容器本体110の力F
1に対する剛性が上がるため、支点P
3よりも内側の凹部111は力F
1による変位がほとんど生じない固定点とみなせるためである。梃子の原理に従って支点P
3回りのモーメントのつりあいを仮定した場合、F
1r
2=F
2r
1であるため、F
2=F
1・(r
2/r
1)になる。従って、r
2/r
1がより小さい
図3の例の方が、同じ力F
1に対して生じる力F
2は小さくなる。
【0018】
具体的には、フランジ部112の内縁から接合領域140の内縁までの距離r1がフランジ部112の内縁からフランジ部112の外縁までの距離r2の30%である場合、r1=0.3r2よりr2/r1=3.3、すなわちF2=3.3F1になる。距離r1が同じ距離r2に対して大きくなるほどF2は小さくなり、距離r1が距離r2の50%である場合にはF2=2.0F1、距離r1が距離r2の80%である場合にはF2=1.25F1になる。従って、距離r1は、容器本体110と蓋体130との間で機能的に十分な接合強度が得られる限りにおいて、より大きい方が好ましい。
【0019】
なお、接合領域140の外縁は、図示された例ではフランジ部112の外縁と一致しているが、この例には限られず、例えば接合領域140の外縁がフランジ部112の外縁よりも内側、すなわち凹部111側にあってもよい。また、接合領域は、必ずしも図示された例のように内縁から外縁まで一様に形成される帯状の領域でなくてもよく、例えば複数の細幅の接合領域が間隔をおいて並行して形成されてもよい。この場合、最も内側に位置する接合領域の内縁が、上記で説明された接合領域の内縁として特定される。このような接合領域の配置は、フランジ部112において容器本体110と蓋体130との間が固定されていない部分が多くなる結果として、衝撃に対してフランジ部112がより弾性体的な挙動をとり、割れが生じにくくなるという点で有利でありうる。
【0020】
上記のように接合領域140がフランジ部112の外縁側に形成されるのは、フランジ部112の周方向の一部の区間であればよく、必ずしも
図1や
図2に示されたようにフランジ部112の周方向の全部の区間について上記のように接合領域140が形成されなくてもよい。例えば、容器100の平面形状が
図1や
図2に示されたような矩形状であり、矩形に長辺と短辺とがある場合は、短辺で相対的に割れが生じやすいため、短辺の区間のみで上記のように接合領域140が形成されてもよい。この場合、上記のように接合領域140が形成される区間の合計はフランジ部112の全周の少なくとも20%以上になる。これらの区間以外では、接合領域140がフランジ部112の内縁側の領域に形成されてもよい。なお、既に述べたように容器本体110の平面形状は矩形に限られず円形などの他の形状であってもよく、容器本体110の平面形状に関わらず、上記のように接合領域140が形成されるのは好ましくはフランジ部112の周方向の20%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上の区間であり、上限は100%である。また、全体として接合領域140がフランジ部112の外縁側に形成される区間であっても、その一部において、フランジ部112の外縁側に形成される帯状の接合領域140から離れて、フランジ部112の内縁側にスポット状の接合領域140が形成されてもよい。
【0021】
図5から
図7は、本発明の一実施形態において適用可能な接合領域の例を示すフランジ部の拡大平面図である。本実施形態では、これらの例を適用することによって接合領域140の内縁がフランジ部112の周方向に沿って非直線状に形成されてもよい。なお、これらの例を適用せず、接合領域140の内縁を直線状に形成した場合であっても、上述のように力F
2が小さくなることによって割れを防止する効果が得られる。
【0022】
図5の例では、接合領域140Aの内縁141に接する部分がローレットシールによって形成される。ローレットシールは、四角錘状の凸部が配列されたシール盤を用いて形成される。接合領域140Aのうち、シール盤に形成される凸部の頂点に対応する領域では接合強度が相対的に高く、凸部の斜面および凸部の谷間に対応する領域では接合強度が相対的に低いため、接合領域140Aの内縁141でフランジ部112の周方向について接合強度が不均一になる。これによって、接合領域140Aの内縁141の一部で上述のような力F
2によって微細な割れが生じたとしても、割れが内縁141に沿って直線状に伝播しにくく、例えばフランジ部112を貫通して容器100の機能を損なうような大きな割れにつながることを防止できる。なお、接合領域140Aの内縁141に接する部分以外では上記のようなローレットシールによる効果は発生しないため、例えば容器100の密封性を高めるために接合領域140Aの外縁側はローレットシールではない通常のシールで形成されてもよい。
【0023】
図6の例では、接合領域140Bの内縁141に接する部分が穴あきシールによって形成される。穴あきシールは、例えば特開2020-055591号公報に記載されているように、接合領域140Bに互いに孤立した複数の非接合領域を配列したシールである。穴あきシールの場合、非接合領域が存在することによって、接合領域140Bの内縁141の平面形状が直線状にならず、非接合領域の部分が凹んだ形状になる。これによって、
図5の例と同様に、接合領域140Bの内縁141の一部で微細な割れが生じたとしても、割れが内縁141に沿って直線状に伝播して大きな割れにつながることを防止できる。
図6の例でも、接合領域140Bの外縁側は穴あきシールではない通常のシールで形成されてもよい。
【0024】
図7の例では、接合領域140Cの内縁141に接する部分が、例えば特許第5001962号公報に記載されたような丸められた断面形状のシール盤を用いて形成される。この場合、シール時の押圧によって樹脂が押し出されることによって、接合領域140Cの内縁141に不規則な凹凸形状が生じる。なお、このようにして形成された接合領域140Cを指す一般的な名称はないが、縦断面において樹脂が押し出されていること、および
図7に示したような平面形状において不規則な凹凸形状が生じていることによって、丸められた断面形状のシール盤を用いて形成された接合領域140Cを識別することができる。これによって、
図5の例と同様に、接合領域140Cの内縁141の一部で微細な割れが生じたとしても、割れが内縁141に沿って直線状に伝播して大きな割れにつながることを防止できる。
【0025】
以上で説明したように、本実施形態に係る容器100では、フランジ部112の外縁付近に力F1が加えられた場合の剛体的な挙動を利用して、接合領域140の内縁付近に作用する力F2を小さくすることができる。従って、樹脂シートの厚みや材料処方に依存することなく、容器本体110のフランジ部112に衝撃が加わった場合に容器本体110に割れが発生するのを防止することができる。既に述べたように、例えば氷点下のような低温条件下では樹脂材料が塑性的な挙動をしやすいため、例えば低温条件下での保管用または輸送用に、本実施形態に係る容器を有利に用いることができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の実施例として、低温条件下での落下試験を行った結果について説明する。試験では、上記で
図1および
図2を参照して説明したような平面形状が矩形の容器を3個用意し、段ボール箱に格納して-20℃条件下で約40時間保管した。その後、箱ごと落下させて、容器に割れが発生するか否かを検証した。なお、試験は、ヤマト包装技術研究所(https://www.yamato-pti.co.jp/test/drop.html)が規定する落下試験方法に従って実施した。具体的には、落下の高さは80cm(非常に大きな外力が加わる場合を想定したレベルIで、箱の総重量が10kg未満の場合)とし、落下回数は計10回(箱の底面に接する角1回、底面と右側面とに接する稜1回、底面と正面とに接する稜1回、正面と右側面とに接する稜1回、箱の6面すべてについて各1回)とした。試験は実施例および比較例のそれぞれについて3箱ずつ実施し、フランジ部に非貫通の割れが生じたもの、フランジ部を貫通する割れが生じたもの、および凹部に割れた生じたものの数を記録した。実施例では、容器の平面形状の短辺部において、
図3に示した例でr
1=6.5mm、r
2=8.5mmとなる(距離r
1は距離r
2の76%)ような接合領域を形成し、接合領域の内縁はローレットシール(シール温度220℃)で形成した。一方、比較例では、容器の平面形状の短辺部において
図4に示した例でr
1=2.0mm、r
2=8.5mmとなる(距離r
1は距離r
2の24%)ような接合領域を形成し、接合領域の内縁は通常のシール(シール温度190℃)で形成した。なお、実施例、比較例とも容器本体および蓋材の材料は共通である。これらの例において、容器本体はいずれもポリプロピレンを主成分とする基材層および表面層を含む積層体で形成され、蓋体はPETフィルムで形成される外層、ナイロンフィルムで形成される中間層、およびポリプロピレンを主成分とするシール層を含む3層の積層体で形成される。試験の結果を表1に示す。
【0027】
【0028】
表1に示されるように、実施例ではフランジ部および凹部ともに割れは発生しなかった。一方、比較例では、凹部では割れが発生しなかったものの、フランジ部では割れが発生し、割れがフランジ部を貫通する場合も多くあった。これらの割れは、いずれも接合領域の内縁に沿って発生していた。上記の結果から、本発明の実施形態に係る容器では、落下の衝撃によって容器本体のフランジ部で接合領域の内縁に沿って発生する割れを有効に防止できることがわかる。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0030】
100…容器、110…容器本体、111…凹部、112…フランジ部、114A…基材層、114B…表面層、130…蓋体、131A…外層、131B…シール層、140,140A,140B,140C…接合領域、141…内縁、F1…力、F2…力、SP…内部空間、r1…距離、r2…距離。