(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20240208BHJP
F24C 3/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F24C3/12 U
F24C3/08 N
(21)【出願番号】P 2020150185
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】柴山 総一郎
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-73256(JP,A)
【文献】特開2006-98030(JP,A)
【文献】特開2002-213750(JP,A)
【文献】特開2007-198619(JP,A)
【文献】特開昭62-141416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00- 3/14
F23D 14/00-14/84
F23N 1/00- 1/10
F23N 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環形状の2つのバーナが同軸上に配置された二重バーナを搭載して、調理容器の底部を加熱するガスコンロにおいて、
前記二重バーナの前記2つのバーナに燃料ガスを供給する燃料ガス供給通路と、
前記燃料ガス供給通路に設けられて、前記二重バーナの前記2つのバーナに供給される前記燃料ガスの合計ガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力を取得する設定火力取得手段と、
前記合計ガス流量が前記設定火力に応じたガス流量となるように前記ガス流量調節手段を制御する制御手段と、
前記ガス流量調節手段よりも下流側の前記燃料ガス供給通路に設けられて、前記二重バーナの一方のバーナと他方のバーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と
を備え、
前記制御手段は、前記設定火力が維持されている状態で、前記燃料ガスの分配比率を周期的に増減させることが可能となっている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記二重バーナは、前記一方のバーナとして親バーナを搭載し、前記他方のバーナとして、前記親バーナよりも最大火力が小さな子バーナを搭載した親子バーナである
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガスコンロにおいて、
前記二重バーナの前記2つのバーナの少なくとも一方には所定の下限ガス流量が設定されており、
前記制御手段は、前記二重バーナの前記2つのバーナの中で前記下限ガス流量が設定されたバーナへの前記燃料ガスのガス流量が、前記下限ガス流量を下回らない範囲で前記分配比率が増減するように、前記分配比率変更手段を制御する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記調理容器が載置される五徳と、
前記五徳上に載置された前記調理容器の大きさを検出する検出手段と
を備え、
前記制御手段は、前記二重バーナの何れのバーナについても、前記燃料ガスのガス流量が、前記調理容器の大きさに応じた上限ガス流量を超えない範囲で前記分配比率が増減するように、前記分配比率変更手段を制御する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記制御手段は、前記設定火力が変更されると、前記燃料ガスの分配比率を所定の標準分配比率で所定の保持時間、保持した後、該保持時間の間に前記設定火力が変更されなかった場合に、前記分配比率を周期的に増減させる
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記制御手段は、増減する前記分配比率の中央値に対して前記分配比率が大きくなる時間比率と、前記中央値に対して前記分配比率が小さくなる時間比率とが異なる態様で、前記分配比率が増減するように前記分配比率変更手段を制御する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記制御手段は、前記分配比率が増減する周期に同期して前記合計ガス流量も増減するように、前記ガス流量調節手段を制御する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記二重バーナの前記2つのバーナは、上下に配置されている
ことを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環形状の2つのバーナが同軸上に配置された二重バーナを搭載するガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
円環形状の2つのバーナが同軸上に配置された二重バーナ(例えば、親バーナと、親バーナよりも最大火力の小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナ)は広く使用されている。この二重バーナを搭載したガスコンロでは、燃料ガスが二重バーナの一方のバーナ(親子バーナの場合は子バーナ)だけに供給されて、そのバーナが単独で燃料ガスを燃焼させる状態(以下、単独燃焼状態)と、燃料ガスが二重バーナの2つのバーナ(親子バーナの場合は親バーナおよび子バーナ)に供給されて、2つのバーナが同時に燃料ガスを燃焼させる状態(以下、同時燃焼状態)とを切り換えることが可能となっている。このため、二重バーナを搭載したガスコンロでは、必要な火力が小さい間は一方のバーナ(親子バーナの場合は子バーナ)の単独燃焼状態とし、大きな火力が必要になったら、2つのバーナ(親子バーナの場合は親バーナおよび子バーナ)の同時燃焼状態に切り換えるようにすることで、広い火力範囲を実現することが可能である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の二重バーナを搭載したガスコンロでは、調理容器の底部を万遍なく加熱することが難しいという問題があった。例えば、代表的な二重バーナである親子バーナの場合では、小火力で加熱する時には、子バーナで小さな炎を形成して加熱するので、炎は主に調理容器の底部の中央付近を炙ることになり、中央付近は加熱することができるが、調理容器の底部の外縁付近は加熱することができない。逆に、大火力で加熱する時には、親バーナおよび子バーナで炎を形成するが、親バーナは子バーナよりも大きな炎を形成して主に調理容器の底部の外縁付近を炙ることになるので、外縁付近は十分に加熱することができるが中央付近は十分に加熱することができない。その結果、火力によって調理容器の底部を加熱する位置に偏りが生じてしまうため、調理容器の底部を万遍なく加熱することが困難となっていた。
【0005】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、二重バーナを用いて調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能なガスコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
円環形状の2つのバーナが同軸上に配置された二重バーナを搭載して、調理容器の底部を加熱するガスコンロにおいて、
前記二重バーナの前記2つのバーナに燃料ガスを供給する燃料ガス供給通路と、
前記燃料ガス供給通路に設けられて、前記二重バーナの前記2つのバーナに供給される前記燃料ガスの合計ガス流量を調節するガス流量調節手段と、
前記ガスコンロの使用者によって設定された設定火力を取得する設定火力取得手段と、
前記合計ガス流量が前記設定火力に応じたガス流量となるように前記ガス流量調節手段を制御する制御手段と、
前記ガス流量調節手段よりも下流側の前記燃料ガス供給通路に設けられて、前記二重バーナの一方のバーナと他方のバーナとの間での前記燃料ガスの分配比率を変更する分配比率変更手段と
を備え、
前記制御手段は、前記設定火力が維持されている状態で、前記燃料ガスの分配比率を周期的に増減させることが可能となっている
ことを特徴とする。
【0007】
かかる本発明のガスコンロにおいては、円環形状の2つのバーナが同軸上に配置された二重バーナを用いて調理容器の底部を加熱するようになっており、二重バーナには燃料ガス供給通路から燃料ガスが供給されている。燃料ガス供給通路にはガス流量調節手段が搭載されており、二重バーナに供給される燃料ガスのガス流量は、ガスコンロの使用者によって設定された設定火力に応じてガス流量に制御されている。燃料ガスは、二重バーナの2つのバーナに分配された後、それぞれのバーナで燃焼することによって、調理容器の底部が加熱される。ここで、本発明のガスコンロでは、設定火力が維持されたまま、二重バーナの2つのバーナで燃料ガスを燃焼させている状態で、2つのバーナに分配される燃料ガスの分配比率を周期的に増減させることが可能となっている。
【0008】
二重バーナの2つのバーナで燃料ガスを燃焼させる際に、2つのバーナに分配される燃料ガスの分配比率を異ならせると、一方のバーナには大きな炎が形成され、他方のバーナには小さな炎が形成される。また、炎が大きくなると、調理容器の底部を加熱する位置は外側に移動し、炎が小さくなると、加熱する位置は内側に移動する。従って、大きな炎を形成するバーナは調理容器の底部の外側の位置を加熱し、小さな炎を形成するバーナは、調理容器の底部の内側の位置を加熱する。そして、大きな炎は小さな炎よりも火力が強いから、調理容器の底部は、大きな炎によって加熱される位置である外側の位置が、主に加熱されることになる。また、2つのバーナでの分配比率の差を大きくすれば、2つのバーナに形成される炎の大きさの差も大きくなり、それに伴って、調理容器の底部の主に加熱される位置は外側に移動する。逆に、2つのバーナでの分配比率の差を小さくすれば、2つのバーナの炎の大きさの差が小さくなり、それに伴って、調理容器の底部の主に加熱される位置は内側に移動する。このような理由から、分配比率を周期的に増減させれば、調理容器の底部の主に加熱される位置が周期的に移動することになるので、調理容器の底部を万遍なく加熱することができる。また、2つのバーナへの燃料ガスの分配比率を周期的に増減させても、二重バーナ全体としてみれば、調理容器の底部を加熱する火力が変動する事態も回避することができる。
【0009】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、二重バーナの一方のバーナを親バーナとし、二重バーナの他方のバーナを、親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとしても良い。
【0010】
親バーナは子バーナよりも最大火力が大きいので、親バーナでは子バーナよりも大きな炎が形成される。従って、調理容器の底部が主に加熱される位置は、親バーナの炎が調理容器の底部を加熱する位置によって決定される。そして、親バーナに供給される燃料ガスが減少する方向に分配比率を変更すれば、親バーナの炎が小さくなるため、調理容器の底部が主に加熱される位置は調理容器の底部の中央方向に移動する。逆に、親バーナへの燃料ガスが増加する方向に分配比率を変更すれば、親バーナの炎が大きくなるため、調理容器の底部が主に加熱される位置は調理容器の底部の外縁方向に移動する。このような理由から、分配比率を周期的に増減させれば、調理容器の底部が主に加熱される位置が周期的に移動することになるので、調理容器の底部を万遍なく加熱することができる。
【0011】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、二重バーナの2つのバーナの少なくとも一方には、所定の下限ガス流量を設定しておいてもよい。そして、燃料ガスの分配比率を増減させる際に、2つのバーナの中で下限ガス流量が設定されたバーナへの燃料ガスのガス流量が下限ガス流量を下回らない範囲で、分配比率を増減させるようにしてもよい。
【0012】
一般に、バーナに供給される燃料ガスのガス流量があまりに小さくなると、そのバーナで燃料ガスを安定して燃焼させることが困難となる。従って、二重バーナの2つのバーナの少なくとも一方については、燃料ガスを安定して燃焼させることが可能な下限ガス流量を求めておき、そのバーナへのガス流量が下限ガス流量を下回らない範囲で分配比率を増減させれば、分配比率の増減中でも燃料ガスを安定して燃焼させることが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、五徳上に載置された調理容器の大きさを検出してもよい。そして、燃料ガスの分配比率を周期的に増減させる際には、二重バーナの何れのバーナについても、燃料ガスのガス流量が、調理容器の大きさに応じて決定される上限ガス流量を超えない範囲で、分配比率を増減させるようにしてもよい。
【0014】
二重バーナの何れか一方のバーナへの燃料ガスが増加する方向に分配比率を変更すれば、そのバーナの炎が大きくなるため、調理容器の大きさによっては、炎が調理容器から溢れた状態(いわゆる炎溢れ状態)が起こり得る。また、調理容器の大きさが分かれば、炎溢れ状態とならない上限のガス流量(以下、上限ガス流量)は予め決定することができる。そこで、予め五徳上の調理容器の大きさを検出しておき、二重バーナの何れのバーナについても、燃料ガスのガス流量が調理容器の大きさに応じて決定される上限ガス流量を超えない範囲で、分配比率を増減させるようにすれば、炎溢れ状態が発生することを防止することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、ガスコンロの使用者によって設定火力が変更されると、燃料ガスの分配比率を所定の標準分配比率で所定の保持時間した後、その保持時間の間に設定火力が変更されなかった場合に、分配比率を周期的に増減させるようにしても良い。
【0016】
こうすれば、ガスコンロの使用者が設定火力を調節している途中で燃料ガスの分配比率が増減してしまう事態を回避することができるので、使用者が目的とする設定火力を容易に設定することが可能となる。
【0017】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、増減する分配比率の中央値に対して分配比率が大きくなる時間比率と、中央値に対して分配比率が小さくなる時間比率とが異なる態様で、分配比率を周期的に増減させるようにしてもよい。
【0018】
二重バーナの2つのバーナは、同じガス流量の燃料ガスを燃焼させた場合でも、必ずしも同じように調理容器の底部を加熱するとは限らない。例えば、調理容器の底部までの距離が二重バーナの2つのバーナで違っている場合、底部までの距離が大きいバーナは、距離が小さいバーナに比べて、調理容器の底部を加熱する効率が低くなることが多い。あるいは、2つのバーナで、五徳までの距離が違っている場合、五徳までの距離が近いバーナでは、燃料ガスを燃焼させた熱の一部が五徳に奪われ易いので、五徳までの距離が遠いバーナに比べて、調理容器の底部を加熱する効率が低くなることが多い。加えて、二重バーナの2つのバーナは、調理容器の底部の中で主に加熱する部分が違うから、効率の低いバーナが主に加熱する部分と、効率の高いバーナが主に加熱する部分とで温度差が生じる虞がある。そこで、増減する分配比率の中央値に対して分配比率が大きくなる時間比率と、中央値に対して分配比率が小さくなる時間比率とが異なる態様で、分配比率を周期的に増減させる。こうすれば、調理容器の底部を加熱する効率の低いバーナへのガス流量が、効率の高いバーナへのガス流量よりも大きくなる分配比率(従って、効率の低いバーナで主に加熱する分配比率)については時間比率を大きめにし、逆に、効率の高いバーナへのガス流量が、効率の低いバーナへのガス流量よりも大きくなる分配比率(従って、効率の高いバーナで主に加熱する分配比率)については時間比率を小さめにすることができる。その結果、二重バーナの2つのバーナの中で、効率の低いバーナを主に用いて加熱する部分については、加熱する時間比率を大きめにし、効率の高いバーナを主に用いて加熱する部分については、加熱する時間比率を小さめにすることができるので、調理容器の底部に温度差が生じる虞を防止することができる。
【0019】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、分配比率を増減させる周期に同期して、合計ガス流量も増減させてもよい。
【0020】
上述したように、二重バーナの2つのバーナは、調理容器の底部の中で主に加熱する部分が異なっており、更に、2つのバーナでは、調理容器の底部を加熱する効率が異なる場合がある。このため、分配比率を増減させながら調理容器の底部を加熱した時に、効率の高いバーナへのガス流量が大きくなった分配比率(従って、効率の高いバーナを主に用いて加熱する分配比率)で加熱される部分と、効率の低いバーナへのガス流量が大きくなった分配比率(従って、効率の低いバーナを主に用いて加熱する分配比率)で加熱される部分とで、温度差が生じる虞がある。そこで、分配比率を増減させる周期に同期して、合計ガス流量も増減させることによって、効率の低いバーナへのガス流量が大きくなる時には合計ガス流量を増加させ、効率の高いバーナへのガス流量が大きくなる時に合計ガス流量を減少させる。こうすれば、調理容器の底部を加熱する効率の増減を、合計ガス流量の増減で打ち消すことができるので、調理容器の底部に温度差が生じる虞を防止することができる。
【0021】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、二重バーナの2つのバーナを、上下に配置することとしてもよい。
【0022】
こうすれば、二重バーナの2つのバーナの一方を、他方のバーナの内側に配置する場合に比べて、二重バーナの大きさを小さくすることができる。その結果、小さな調理容器も加熱することが可能なガスコンロを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施例のガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】第1実施例のガスコンロ1に搭載されている親子バーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。
【
図3】親子バーナ10のバーナボディ11bおよびバーナキャップ20の内部構造を示す分解組立図である。
【
図4】親子バーナ10を搭載した一般的なガスコンロ1で、使用者の設定火力に応じて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを分配する様子を示した説明図である。
【
図5】親子バーナ10を搭載した一般的なガスコンロ1では、設定火力に応じて調理容器の底部が偏って加熱されてしまう理由を示した説明図である。
【
図6】第1実施例のガスコンロ1では調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる理由を示した説明図である。
【
図7】第1実施例のガスコンロ1が設定火力に応じて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを供給する様子を示した説明図である。
【
図8】第1実施例のガスコンロ1が、設定火力に応じて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を制御する分配比率制御処理のフローチャートである。
【
図9】第1実施例のガスコンロ1が親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を変動させる態様を例示した説明図である。
【
図10】第1実施例のガスコンロ1が親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を変動させる他の態様を例示した説明図である。
【
図11】第2実施例のガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
【
図12】第2実施例のガスコンロ1が調理容器の大きさを考慮して親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを供給する様子を示した説明図である。
【
図13】第2実施例のガスコンロ1で実行される分配比率制御処理の前半部分を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施例のガスコンロ1で実行される分配比率制御処理の後半部分を示すフローチャートである。
【
図15】第1変形例のガスコンロ1に搭載されている親子バーナ10についての説明図である。
【
図16】第2変形例のガスコンロ1に搭載されている親子バーナ10についての説明図である。
【
図17】第3変形例のガスコンロ1が設定火力に応じて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを供給する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
A.第1実施例 :
図1は、親子バーナ10を搭載した第1実施例のガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
図1に例示したガスコンロ1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに嵌め込んで設置されるビルトインタイプのガスコンロ1であり、箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の開口した上面を覆って設置される天板3とを備えている。
【0025】
コンロ本体2の内部には、後述する親バーナと子バーナとが上下二段に組み合わされた親子バーナ10が、左右に並べて2つ収容されており、これらの親子バーナ10は、天板3に形成された挿通孔から、上部が突出した状態となっている。また、天板3上には、それぞれの親子バーナ10の上部が突出した箇所を囲むようにして五徳4が設置されており、五徳4上に鍋などの調理容器を置くことで、調理容器を下方から親子バーナ10で加熱することが可能となっている。更に、親子バーナ10には、中央を貫通した状態で温度センサ5が内蔵されている。温度センサ5は図示しない付勢バネによって上方に付勢されており、温度センサ5の上部が親子バーナ10の上面中央から突出した状態となっている。そして、五徳4に調理容器を置くと、調理容器の底面が温度センサ5を押し下げることで温度センサ5の上端が調理容器の底面に当接した状態となって、調理容器の温度を検出することが可能となる。尚、親子バーナ10は、本発明における「二重バーナ」の一態様となっている。
【0026】
また、ガスコンロ1の前面にはグリル扉7が設けられており、グリル扉7の奥には図示しないグリル庫やグリルバーナが搭載されている。グリル扉7の右方には、2つの親子バーナ10に対応して2つのコンロ操作ボタン8が設けられており、ガスコンロ1の使用者は何れかのコンロ操作ボタン8を操作することによって、対応する親子バーナ10に点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。また、グリル扉7の左方には、グリル操作ボタン9が設けられており、使用者はグリル操作ボタン9を操作することによって、グリルバーナに点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。
【0027】
図2は、本実施例の親子バーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。図示されるように親子バーナ10は、板金製部材を組み合わせて形成されたバーナ本体11と、略円筒形状のバーナキャップ20とを備えている。バーナ本体11には、略円筒形状のバーナボディ11bと、バーナボディ11bに接続された親混合管12と、親混合管12よりも小径でバーナボディ11bに接続された子混合管13とが形成されている。また、バーナボディ11bの上には、バーナキャップ20が載置されている。更に、バーナキャップ20の中央には挿通孔20hが形成されており、この挿通孔20hには、
図1を用いて前述した温度センサ5が挿通されるようになっている。
【0028】
バーナキャップ20は、上下二段に分割された部材であり、アルミニウム合金あるいは真鍮を用いて、鋳造あるいはダイカストによって形成されている。以下では、バーナキャップ20を構成する上側の部材を上側キャップ部21と称し、下側の部材を下側キャップ部22と称する。図示したように下側キャップ部22の上に上側キャップ部21を載置した状態では、
図2中に拡大して示したように、上側キャップ部21の外周面に複数の上側炎口21fが形成され、更に、下側キャップ部22の外周面には複数の下側炎口22fが形成されている。そして、上側キャップ部21と下側キャップ部22とは、上側炎口21fと下側炎口22fとが互い違いとなる位置で組み合わされるようになっている。
【0029】
また、バーナボディ11bの上にバーナキャップ20を載置すると、下側キャップ部22とバーナボディ11bとの間に、複数の小さな炎口(以下、子炎口22u)が形成されるようになっている。後述するようにバーナボディ11bの内部には、親混合管12が接続された空間と、子混合管13が接続された空間とが形成されている。そして、下側キャップ部22とバーナボディ11bとの間に形成された子炎口22uは、子混合管13が接続された空間に連通している。また、上側キャップ部21に形成された上側炎口21fと、下側キャップ部22に形成された下側炎口22fとは、親混合管12が接続された空間に連通している。このため、後述するように、子混合管13に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスが子炎口22uから流出し、親混合管12に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスが上側炎口21fおよび下側炎口22fから流出することになる。
【0030】
親混合管12および子混合管13には、次のようにして燃料ガスが供給される。先ず、親混合管12はバーナボディ11bに接続されていない側が開口端12oとなっており、子混合管13もバーナボディ11bに接続されていない側が開口端13oとなっている。親混合管12の開口端12oを臨む位置にはガス噴射ノズル43pが設けられており、子混合管13の開口端13oを臨む位置にはガス噴射ノズル43cが設けられている。尚、以下では、親混合管12側に設けられたガス噴射ノズル43pを「親側のガス噴射ノズル43p」と称し、子混合管13側に設けられたガス噴射ノズル43cを「子側のガス噴射ノズル43c」と称することがある。そして、親側のガス噴射ノズル43pには接続パイプ40pが接続されており、子側のガス噴射ノズル43cには接続パイプ40cが接続されている。これら2つの接続パイプ40p、40cは、ガス供給パイプ40から分岐している。
【0031】
ガス供給パイプ40に燃料ガスを供給すると、燃料ガスが接続パイプ40pと接続パイプ40cとに分岐して、親側のガス噴射ノズル43pと子側のガス噴射ノズル43cとに供給される。そして、親側のガス噴射ノズル43pから、親混合管12の開口端12oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスはエジェクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら親混合管12内に流入し、親混合管12内で空気と混合した後、上側炎口21fおよび下側炎口22fから流出する。同様に、子側のガス噴射ノズル43cから、子混合管13の開口端13oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスはエジェクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら子混合管13内に流入し、子混合管13内で空気と混合した後、子炎口22uから流出する。
【0032】
また、ガス供給パイプ40の途中には、燃料ガスのガス流量を調節するためのガス流量調節弁41が取り付けられている。更に、親混合管12に燃料ガスを供給する接続パイプ40pの途中には、接続パイプ40pの通路抵抗を調節するための抵抗調節弁42pが取り付けられており、子混合管13に燃料ガスを供給する接続パイプ40cの途中には、接続パイプ40cの通路抵抗を調節するための抵抗調節弁42cが取り付けられている。以下では、接続パイプ40pに取り付けられた抵抗調節弁42pを「親側の抵抗調節弁42p」と称し、接続パイプ40cに取り付けられた抵抗調節弁42cを「子側の抵抗調節弁42c」と称し、更に、抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42cをまとめて、単に抵抗調節弁42と称することがある。また、ガス流量調節弁41や、親側の抵抗調節弁42p、子側の抵抗調節弁42cとしては、連続的にあるいは複数段階に弁開度を調節することが可能な周知の種々の弁を使用することができるが、第1実施例では、ステッピングモータで駆動されて弁開度を細かく調節することが可能な流量調節弁が使用されている。
【0033】
尚、本実施例では、ガス供給パイプ40、接続パイプ40p、および接続パイプ40cが本発明における「燃料ガス供給通路」に対応する。また、ガス供給パイプ40を流れる燃料ガスの流量が、本発明における「合計ガス流量」に対応し、ガス供給パイプ40に設けられたガス流量調節弁41が、本発明における「ガス流量調節手段」に対応する。更に、抵抗調節弁42(すなわち、抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42c)が、本発明における「分配比率変更手段」に対応する。
【0034】
また、バーナ本体11には、バーナボディ11bの外周面に近接して、点火プラグ30と火炎センサ32とが設けられており、点火プラグ30および火炎センサ32は制御部50に接続されている。更に、点火プラグ30の上方には、バーナキャップ20の外周面から点火ターゲット31が突設されている。制御部50は、接続パイプ40pに設けられた親側の抵抗調節弁42pを全閉状態とした後、点火プラグ30から点火ターゲット31に向かって火花放電させながら、ガス流量調節弁41を開弁させると、子炎口22uから燃料ガスが流出し、その燃料ガスが着火して燃焼が開始される。火炎センサ32は、子炎口22uで生じた炎を検知することが可能となっており、制御部50は子炎口22uの炎を検知することで、燃焼が開始されたことを認識することができる。更に、その状態で親側の抵抗調節弁42pを開弁させると、上側炎口21fおよび下側炎口22fからも燃料ガスが流出し、その燃料ガスが子炎口22uの炎によって着火して、上側炎口21fおよび下側炎口22fでも燃焼が開始される。また、コンロ操作ボタン8やグリル操作ボタン9は制御部50に接続されている。このため、制御部50は、ガスコンロ1の使用者がコンロ操作ボタン8あるいはグリル操作ボタン9を用いて設定した設定火力を取得することが可能となっている。そして制御部50は、ガス供給パイプ40を流れる燃料ガスのガス流量が、設定火力に応じたガス流量となるようにガス流量調節弁41を制御する。尚、本実施例の制御部50は、コンロ操作ボタン8に設定された設定火力を取得して、ガス流量調節弁41や抵抗調節弁42の動作を制御していることから、本発明における「設定火力取得手段」および「制御手段」に対応する。
【0035】
図2に示したように、上側炎口21fおよび下側炎口22fは、子炎口22uに比べて大きな開口面積に設定されている。また、バーナ本体11の内部で上側炎口21fおよび下側炎口22fと連通している親混合管12は、子炎口22uと連通している子混合管13も大径に形成されている。このため、上側炎口21fおよび下側炎口22fでは、子炎口22uよりも多量の燃料ガスを燃焼させて、大火力を発生させることができる。そこで、親子バーナ10は、必要な火力が小さい間は、子炎口22uで燃料ガスを燃焼させておき、大火力が必要になったら、上側炎口21fおよび下側炎口22fでも燃料ガスを燃焼させるような使われ方をする。このことから、親子バーナ10の中の子炎口22uの部分は「子バーナ10C」と呼称され、親子バーナ10の中の上側炎口21fおよび下側炎口22fの部分は「親バーナ10P」と呼称されている。
【0036】
尚、
図2に示したように、本実施例の親子バーナ10は、親バーナ10Pと子バーナ10Cとが、同軸上の上下二段に配置されているものとしているが、親バーナ10Pと子バーナ10Cとは、必ずしも上下二段に配置する必要はなく、例えば円環形状の親バーナ10Pの内側に、親バーナ10Pよりも小径の子バーナ10Cが配置された親子バーナ10とすることもできる。また、本実施例の親子バーナ10は、親バーナ10Pの上側炎口21fと下側炎口22fとが千鳥状に配列されることによって2段の炎口となっているが、これに限らず、親バーナ10Pの上側炎口21fと下側炎口22fとが上下に揃った状態で配列されることによって1段の炎口となっていてもよい。
【0037】
図3は、親子バーナ10のバーナボディ11bおよびバーナキャップ20の内部構造を示した分解組立図である。図示されるように、略円筒形状のバーナボディ11bは、上端側が内向きに折り曲げられることによって、バーナキャップ20を載置する円環状の載置面11aが形成されている。また、バーナボディ11bの内側には、円筒形状の中央筒体14が立設されており、バーナボディ11bと中央筒体14との間に、混合ガスが供給される環状の混合室16が形成されている。
【0038】
更に、バーナボディ11bと中央筒体14との間には、略円筒形状の仕切り筒体15が設けられており、この仕切り筒体15によって、混合室16は仕切り筒体15よりも内側の空間と、仕切り筒体15よりも外側の空間とに分けられている。仕切り筒体15よりも内側の空間が後述する親混合室16pとなり、仕切り筒体15よりも外側の空間が後述する子混合室16cとなる。仕切り筒体15は、バーナボディ11bと同様に板金部材によって形成されており、円筒形状の上端側が内向きに折り曲げられた後、その内側が下向きに折り曲げられることによって短い円筒形状の嵌合面15aが形成されている。
【0039】
バーナキャップ20は、前述したように上側キャップ部21と下側キャップ部22とを備えており、下側キャップ部22はバーナボディ11bの載置面11aの上に載置され、上側キャップ部21は、下側キャップ部22の上に載置されるようになっている。図示されるように、下側キャップ部22は略円環形状の部材であり、内縁部分からは下方に向けて円筒形状の隔壁筒22aが垂設されている。更に、外縁部分の下面(バーナボディ11bの載置面11aに当接する面)には、下側キャップ部22の中心に対して放射状に複数の下段溝22bが形成されている。
【0040】
また、下側キャップ部22の外縁部分には、上方に向けて筒状に突出した上向筒状壁22cが設けられており、上向筒状壁22cの上端面には、上向筒状壁22cの中心に対して放射状に複数の下側溝22dが形成されている。尚、下側溝22dは、五徳4の複数の爪部に対向する位置には設けられていない。加えて、上向筒状壁22cの外周面からは、前述した点火プラグ30の上方の位置に点火ターゲット31が突設されている。
【0041】
一方、上側キャップ部21は円環形状に形成されており、内縁部分からは下方に向けて、図示しない円筒形状の内筒が垂設されている。更に、外縁部分からは下方に向けて筒状の下向筒状壁21aが設けられており、下向筒状壁21aの下端面には、下向筒状壁21aの中心に対して放射状に複数の上側溝21bが形成されている。尚、上側溝21bは、上述した下側溝22dと同様に、五徳4の複数の爪部に対向する位置には設けられていない。
【0042】
上側キャップ部21と下側キャップ部22とは、上側キャップ部21の上側溝21bと、下側キャップ部22の下側溝22dとが重ならないように位置決めされた状態で組み合わされる。このため、上側キャップ部21と下側キャップ部22とを組み合わせてバーナキャップ20を形成すると、上側溝21bが下向筒状壁21aの外周面に開口した部分には上側炎口21fが形成され、下側溝22dが上向筒状壁22cの外周面に開口した部分には下側炎口22fが形成される(
図2参照)。また、上側溝21bと下側溝22dとが重ならないように位置決めされているから、上側炎口21fと下側炎口22fとは互い違いの位置に形成される。
【0043】
バーナキャップ20をバーナボディ11bに載置する際には、先ず、下側キャップ部22の内縁部分から下方に垂設された隔壁筒22aを、仕切り筒体15の嵌合面15aの内側に挿入しつつ、上側キャップ部21の内縁部分から下方に垂設された図示しない内筒を、中央筒体14の内側に挿入しながら、バーナキャップ20を下降させる。すると、下側キャップ部22の外縁部分の下面に形成された下段溝22bが、バーナボディ11bの載置面11aに当接して、バーナキャップ20がバーナボディ11bに載置される。
【0044】
バーナキャップ20をバーナボディ11bに載置した状態では、下側キャップ部22の隔壁筒22aが仕切り筒体15の嵌合面15aに嵌合し、上側キャップ部21の図示しない内筒が中央筒体14の上部の内周面に嵌合した状態となる。その結果、仕切り筒体15の外側には、仕切り筒体15とバーナボディ11bと下側キャップ部22とで囲まれた子混合室16cが形成される。この子混合室16cは子混合管13と連通している。また、仕切り筒体15の内側には、中央筒体14と仕切り筒体15と隔壁筒22aと上側キャップ部21とで囲まれた親混合室16pが形成される。この親混合室16pは親混合管12と連通している。
【0045】
ガスコンロ1の前面に搭載された2つのコンロ操作ボタン8(
図1参照)は、
図2に示した制御部50に接続されており、更に、制御部50には抵抗調節弁42やガス流量調節弁41も接続されている。ガスコンロ1の使用者がコンロ操作ボタン8を操作することによって、加熱調理に用いる火力を設定すると、制御部50は、使用者が設定した火力(設定火力)を取得する。そして、設定火力に応じてガス流量調節弁41や抵抗調節弁42(すなわち、抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42c)の動作を制御することによって、親子バーナ10で燃料ガスを燃焼させる。
【0046】
例えば、使用者による設定火力が小さい場合は、ガス流量調節弁41を制御してガス供給パイプ40を通過する燃料ガスのガス流量を小さくすると共に、抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42cを制御して、ガス供給パイプ40からの燃料ガスが子バーナ10Cには供給されるが、親バーナ10Pには供給されないようにする。こうすることで、子バーナ10C単独で燃料ガスを燃焼させる状態(単独燃焼状態)に制御することができる。また、設定火力が大きい場合は、ガス流量調節弁41を制御してガス供給パイプ40を通過する燃料ガスのガス流量を大きくすると共に、抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42cを制御して、ガス供給パイプ40からの燃料ガスが親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給されるようにする。こうすることで、親バーナ10Pと子バーナ10Cとが同時に燃料ガスを燃焼させる状態(同時燃焼状態)にすることができる。このように、子バーナ10Cの単独燃焼状態と、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態とを切り換えてやれば、使用者による設定火力に応じて、小火力から大火力までの広い火力範囲を実現することができる。
【0047】
もっとも、子バーナ10Cの単独燃焼状態を、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態に切り換えただけでは、大火力で加熱調理することが可能になるものの、調理容器の底部を万遍なく加熱することができないという問題がある。そこで第1実施例のガスコンロ1では、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cが同時に燃料ガスを燃焼している状態で、親バーナ10Pと子バーナ10Cとに燃料ガスを分配する分配比率を周期的に増減させることによって、調理容器の底部を万遍なく加熱するようにしている。こうしたことが可能となる理由を説明する準備として、親子バーナ10を備える一般的なガスコンロ1で、使用者による設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを分配する様子について説明する。
【0048】
図4は、親子バーナ10を搭載した一般的なガスコンロ1で、使用者による設定火力に応じて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを供給する様子を示した説明図である。図中の横軸は、子バーナ10Cに供給される燃料ガスのガス流量を表しており、図中の縦軸は、親バーナ10Pに供給される燃料ガスのガス流量を表している。このように、子バーナ10Cへのガス流量と親バーナ10Pへのガス流量とを、直交する座標軸に設定すると、親子バーナ10の動作状態を座標点によって表すことができ、設定火力の変更に伴う動作状態の変化は、座標点の移動として表すことができる。そして、一般的なガスコンロ1では、使用者が設定火力を増加させるに従って、座標点が次のように移動する。
【0049】
図4中に示したa点は、設定火力が最小の場合の座標点を表している。前述したように、親子バーナ10は、小火力時には子バーナ10Cが単独で燃料ガスを燃焼させるので、親バーナ10Pへのガス流量は0となる。また、子バーナ10Cには、燃料ガスを安定して燃焼させることが可能な下限のガス流量(下限ガス流量)が存在する。従って、設定火力が最小の場合には、親子バーナ10の動作状態は、親バーナ10Pのガス流量が0で、子バーナ10Cへのガス流量が下限ガス流量となるa点で表される座標点となる。尚、
図4では、子バーナ10Cの下限ガス流量が、一点鎖線によって表示されている。また、親バーナ10Pについても、燃料ガスを安定して燃焼させることが可能な下限ガス流量が存在しており、
図4では、親バーナ10Pの下限ガス流量が二点鎖線によって表示されている。
【0050】
使用者が設定火力を最小火力から増加させた場合には、親バーナ10Pへのガス流量を0に保ったまま、ガス流量調節弁41を通過するガス流量(合計ガス流量)を増加させる。このため、合計ガス流量が増加した分だけ、子バーナ10Cへのガス流量が増加することになり、親子バーナ10の動作状態を表す座標点は、
図4上の座標点はa点から右方向に移動する。
図4中でa点から右方向に伸びる太い実線の矢印は、設定火力の増加に伴って座標点が移動する様子を表している。
【0051】
そして、使用者による設定火力が所定の閾値火力を超えると、子バーナ10Cの単独燃焼状態から、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態に切り換わる。
図4では、親子バーナ10が、子バーナ10Cの単独燃焼状態から親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態に切り換わる様子が、点線の矢印で示されている。矢印の起点であるb点が、子バーナ10Cによる単独燃焼状態を表しており、矢印の終点であるc点が、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態を表している。
【0052】
ここで、c点は次のような座標点となっている。先ず、子バーナ10Cへの燃料ガスのガス流量は、子バーナ10Cの下限ガス流量となっている。また、子バーナ10Cへのガス流量と、親バーナ10Pへのガス流量とを合計した合計ガス流量は、b点での子バーナ10Cへのガス流量と等しくなっている。従って、b点からc点にジャンプしても、子バーナ10Cに単独で供給していた燃料ガスを、親バーナ10Pと子バーナ10Cとに分配するだけで、親子バーナ10全体としての火力が増減することはない。尚、c点での親バーナ10Pへのガス流量は、
図4中で二点鎖線で表示した親バーナ10Pの下限ガス流量よりも大きいので、親バーナ10Pはc点で安定して燃料ガスを燃焼させることが可能である。
【0053】
また、一般的な親子バーナ10では、子側の接続パイプ40cには抵抗調節弁42c(
図2参照)が搭載されておらず、親側の接続パイプ40pには抵抗調節弁42p(
図2参照)の代わりに、単なる開閉弁が搭載されている。親側の接続パイプ40pに搭載された開閉弁を閉弁状態とすれば、子バーナ10Cの単独燃焼状態を実現することができ、開閉弁を開弁状態とすれば、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態を実現することができる。そして、同時燃焼状態での親バーナ10Pと子バーナ10Cとの燃料ガスの分配比率は、親側の接続パイプ40pから親バーナ10Pまでの通路抵抗と、子側の接続パイプ40cから子バーナ10Cまでの通路抵抗との比率によって決まる固定の分配比率となっている。
【0054】
尚、以下では、分配比率を、合計ガス流量の中で子バーナ10Cへのガス流量が占める比率で表すものとする。例えば、
図4中のc点では、合計ガス流量の約15%が子バーナ10Cに供給されているから、この時の分配比率は0.15となる。また、この分配比率の表記方法は、子バーナ10Cに着目して、子バーナ10Cに分配されるガス流量の比率を表記したものとなっている。しかし、子バーナ10Cに着目して分配比率を表記する方法は、必ずしも一般的となっているわけではない。そこで、合計ガス流量を10とした時の「親バーナ10Pへのガス流量」と「子バーナ10Cへのガス流量」との比率によって、分配比率を表記する方法も、必要に応じて併用するものとする。例えば、分配比率0.15を、「親バーナ10Pへのガス流量」と「子バーナ10Cへのガス流量」との比率によって表記すると、8.5:1.5となる。
【0055】
親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態に切り換わった状態から、使用者が更に設定火力を増加させた場合には、ガス流量調節弁41を通過するガス流量を増加させる。その結果、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cのガス流量が同時に増加する。従来の親子バーナ10では、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率は、親側の接続パイプ40pから親バーナ10Pまでの通路抵抗と、子側の接続パイプ40cから子バーナ10Cまでの通路抵抗との比率によって決まっている。従って、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cのガス流量が同時に増加している間も、燃料ガスの分配比率は、c点での分配比率と同じ比率(代表的には分配比率0.15)となる。そして、使用者の設定火力の増加に伴って、その分配比率を保ったまま親バーナ10Pおよび子バーナ10Cのガス流量が増加していき、親バーナ10Pのガス流量が最大流量となるd点に達すると、親子バーナ10の最大火力状態となる。
図4中でc点からd点に伸びる太い実線の矢印は、設定火力の増加に伴って、分配比率0.15の直線上を座標点が移動する様子を表している。
【0056】
従来から用いられる一般的なガスコンロでは、
図4に示した態様で親子バーナ10を動作させている。このため、調理容器の底部の中で親子バーナ10によって加熱される部分に偏りが生じてしまい、しかも、偏って加熱される位置が使用者の設定火力によって変化するため、ガスコンロの使用者が意図したとおりに加熱調理することが難しいという問題が生じる。こうした問題が生じる理由は次のようなものである。
【0057】
図5は、親子バーナ10を搭載した一般的なガスコンロで、調理容器の底部を加熱する様子を示した説明図である。
図5(a)は、
図4中のc点付近に相当する小火力で加熱している状態を表している。
図4を用いて前述したように、c点付近では、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量が小さいので、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cでは小さな炎が形成される。このため、
図5(a)に示されるように、親バーナ10Pの炎Fpおよび子バーナ10Cの炎Fcは、調理容器の底部の外縁付近を加熱することができず、もっぱら中央付近を加熱することになる。
【0058】
図5(b)は、
図4中のc点とd点との中間付近に相当する中火力で加熱している状態を表している。設定火力を増加させると、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給されるガス流量が増加するため、親バーナ10Pの炎Fpおよび子バーナ10Cの炎Fcが大きくなる。このため、小火力状態から中火力状態にすると、親バーナ10Pの炎Fpによって加熱される位置が中央付近から外側に移動する。また、子バーナ10Cの炎Fcも大きくなるが、親バーナ10Pの炎Fpに比べると子バーナ10Cの炎Fcの大きさは小さいので、調理容器の底部が加熱される位置は主に親バーナ10Pの炎Fpによって加熱される位置となる。
【0059】
図5(c)は、
図4中のd点付近に相当する大火力で加熱している状態を表している。設定火力を最大火力付近まで増加させると、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量が更に増加するため、親バーナ10Pの炎Fpおよび子バーナ10Cの炎Fcも更に大きくなる。このため、大火力状態にすると、親バーナ10Pの炎Fpによって加熱される位置が更に外側に移動する。尚、この時、子バーナ10Cの炎Fcも大きくなるが、調理容器の底部が加熱される位置は、主に親バーナ10Pの炎Fpによって加熱される位置となる。
図5(c)に示した例では、親バーナ10Pの炎Fpが調理容器の底部の外縁部分を加熱している。
【0060】
以上のように、従来の一般的なガスコンロでは、使用者が設定した設定火力によって、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに形成される炎の大きさが変わり、炎の大きさが変わると、親バーナ10Pの炎Fpが調理容器の底部を加熱する位置が変化する。このため、どのような設定火力に設定された場合でも、調理容器の底部は一部が加熱されることになる。このような理由から、従来の一般的なガスコンロでは、調理容器の底部を万遍なく加熱することが困難となっている。加えて、調理容器の底部は一部が加熱されるだけでなく、設定火力に応じて加熱される位置が移動することになり、この点でも、従来の一般的なガスコンロには、改良すべき点があると考えられる。これに対して第1実施例のガスコンロ1では、以下のようにして親バーナ10Pと子バーナ10Cとに燃料ガスを分配することにより、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となっている。また、調理容器の底部を万遍なく加熱することができるので、当然ながら、設定火力に応じて加熱される位置が移動する事態も生じない。
【0061】
図6は、第1実施例のガスコンロ1が調理容器の底部を万遍なく加熱可能な原理を示した説明図である。
図6では、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの合計ガス流量を一定に保ったまま、燃料ガスの分配比率を異ならせた場合に、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに炎が形成される様子を表している。
【0062】
図6中に示した白い丸印は、燃料ガスの分配比率が0.1(すなわち、「親バーナ10Pへのガス流量」:「子バーナ10Cへのガス流量」=9:1)付近に設定されている状態を表している。分配比率を0.1付近に設定すると、合計ガス流量の内の9割前後の燃料ガスが親バーナ10Pに供給されるので、親バーナ10Pには大きな炎Fpが形成される。
図6で、白い丸印の上方には、親バーナ10Pには大きな炎Fpが形成される様子が示されている。
【0063】
図6中で斜線を付して示した丸印は、燃料ガスの分配比率が0.3(すなわち、「親バーナ10Pへのガス流量」:「子バーナ10Cへのガス流量」=7:3)付近に設定された場合を表している。分配比率を0.3付近に設定すると、0.1付近に設定した場合に比べて、親バーナ10Pへのガス流量が減少するので、親バーナ10Pに形成される炎Fpが小さくなる。その一方で、子バーナ10Cへのガス流量は増加するので、子バーナ10Cの炎Fcは大きくなる。もっとも、この場合でも、親バーナ10Pには子バーナ10Cの2倍以上の燃料ガスが供給されるので、親バーナ10Pには子バーナ10Cよりも大きな炎が形成されている。
図6で斜線を付した丸印の上方には、分配比率を0.3付近に設定した場合に、親バーナ10Pに形成される炎Fp、および子バーナ10Cに形成される炎Fcが示されている。
【0064】
図6中に示した黒い丸印は、燃料ガスの分配比率が0.5(すなわち、「親バーナ10Pへのガス流量」:「子バーナ10Cへのガス流量」=5:5)付近に設定された場合を表している。分配比率を0.5付近に設定すると、分配比率0.3の場合よりも親バーナ10Pへのガス流量が更に減少するので、親バーナ10Pに形成される炎Fpが更に小さくなる。また、親バーナ10Pと子バーナ10Cとにほぼ同量ずつの燃料ガスが供給されるため、子バーナ10Cにも、親バーナ10Pとほぼ同じ大きさの炎Fcが形成されるようになる。
図6で黒い丸印の上方には、分配比率を0.5付近に設定した場合に、親バーナ10Pに形成される炎Fp、および子バーナ10Cに形成される炎Fcが示されている。
【0065】
図6から明らかなように、分配比率を小さくすると調理容器の底部の加熱位置が外側に向かって移動し、分配比率を大きくすると加熱位置が内側に向かって移動する。このことから、使用者によって設定された設定火力での加熱中に、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの分配比率を周期的に変更してやれば、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能になると考えられる。例えば、
図6中に太い破線の矢印で示したように、分配比率を0.1付近から0.5付近まで徐々に増加させることで、調理容器の底部を加熱する位置を外縁付近から中央付近までゆっくりと移動させることができる。その後、
図6中に太い一点鎖線の矢印で示したように、分配比率を0.5付近から0.1付近まで徐々に減少させれば、調理容器の底部の加熱位置を中央付近から外縁付近にゆっくりと移動させることができる。このように分配比率を変更しながら調理容器の底部を加熱してやれば、底部を万遍なく加熱することが可能となる。しかも、分配比率を変更しても、親バーナ10Pのガス流量と、子バーナ10Cのガス流量とを合計した合計ガス流量は変わっていないので、親子バーナ10としての火力が変化することもない。以上が、第1実施例のガスコンロ1で調理容器の底部を万遍なく加熱することを可能とする基本的な考え方である。
【0066】
尚、
図6で、分配比率を0.5よりも大きくしていないのは、分配比率が0.5になると、親バーナ10Pに形成される炎Fpの大きさと、子バーナ10Cに形成される炎Fcの大きさとがほぼ同じになるためである。すなわち、分配比率が0.5より小さい範囲では子バーナ10Cの炎Fcよりも親バーナ10Pの炎Fpの方が大きいので、調理容器の底部の加熱位置は主に親バーナ10Pの炎Fpによって決定されている。このため、分配比率を大きくすることによって親バーナ10Pの炎Fpを小さくするほど、調理容器の底部の加熱位置を内側に向けて移動させることができる。しかし、分配比率が0.5より大きくなると、子バーナ10Cの炎Fcの方が親バーナ10Pの炎Fpよりも大きくなるため、親バーナ10Pの炎Fpを小さくしても、調理容器の底部の加熱位置を内側に向けて移動させることができなくなるためである。寧ろ、子バーナ10Cの炎Fcが大きくなることによって、調理容器の底部の加熱位置が外側に向かって移動することになってしまうことも起こり得るためである。
【0067】
もっとも、親バーナ10Pの炎Fpは、子バーナ10Cの炎Fcよりも調理容器の底部に近い位置で形成されるので、炎の大きさが同じであれば、調理容器の加熱位置に与える影響は、親バーナ10Pの炎Fpの方が子バーナ10Cの炎Fcよりも大きくなる。従って、分配比率が0.5に達した後も、若干程度(例えば、分配比率で0.05程度)であれば、分配比率を増加させることによって調理容器の底部の加熱位置を内側に移動させることが可能である。また、親バーナ10Pと子バーナ10Cとの位置関係によっては、分配比率を更に大きく(例えば0.9程度)する可能性も生じ得る。分配比率を大きくすると親バーナ10Pへのガス流量が小さくなるので、合計ガス流量によっては、親バーナ10Pへのガス流量が下限ガス流量よりも小さくなることも起こり得る。従って、分配比率を更に大きくする場合には、親バーナ10Pへのガス流量が下限ガス流量よりも小さくならない範囲であれば、分配比率を大きくしても良い。
【0068】
図7は、第1実施例のガスコンロ1が、上述した考え方に基づいて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を制御することにより、調理容器の底部を万遍なく加熱する様子を示した説明図である。
図7では、
図4の場合と同様に、子バーナ10Cのガス流量を横軸に取り、親バーナ10Pのガス流量を縦軸に取ることによって、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量が変化する様子を座標点の移動によって表している。
【0069】
尚、
図7中には、右下がりで一点鎖線の直線が複数本、表示されているが、これらの直線は、親バーナ10Pのガス流量と子バーナ10Cのガス流量とを合計した合計ガス流量が一定となる直線(以下、等火力線)を表している。親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへのガス流量を表す座標点の移動が、等火力線に沿った移動であれば、親子バーナ10全体として発生させる火力は変わらない。また、
図7中には、右上がりで実線の直線が複数本、表示されているが、これらの直線は、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率が一定となる直線(以下、等分配比率線)を表している。座標点の移動が、等分配比率線に沿った移動であれば分配比率は変わらないが、等分配比率線を横切るように移動する場合は分配比率が変化する。また、複数本の等分配比率線の中で、太い実線で示した直線は、従来の一般的なガスコンロと同様な値の分配比率(本実施例では、分配比率0.15)の直線である。以下では、この直線が示す分配比率を「標準分配比率」と呼ぶことにする。
【0070】
第1実施例のガスコンロ1でも、子バーナ10Cの単独燃焼状態から、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態に切り換わると、親子バーナ10の動作状態を示す座標点は、
図7中のc点となる。このc点は、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの分配比率が標準分配比率であり、且つ、子バーナ10Cへのガス流量が下限ガス流量となる座標点であるから、一般的なガスコンロについて説明した
図4中のc点と同じ座標点である。そして、第1実施例のガスコンロ1でも、使用者が設定火力を増加させるに従って、座標点は、c点から、太い実線の等分配比率線上を右上に向かって移動して行く。また、使用者が設定火力を減少させると、座標点は等分配比率線上を左下に向かって移動する。こうして使用者が火力を調整した結果、最終的には座標点がe点に移動したものとする。
【0071】
すると、第1実施例のガスコンロ1では、今度は、e点を通過する等火力線に沿って座標点を往復動させる。
図7に示した例では、図中で太い破線の矢印で示したように、分配比率0.15から、分配比率0.5に向かって少しずつ分配比率を増加させていき、分配比率0.5のf点に達したら、今度は図中で太い一点鎖線の矢印で示したように、分配比率を少しずつ減少させていく。分配比率が小さくなるほど、子バーナ10Cのガス流量も小さくなる。そして、子バーナ10Cのガス流量が下限ガス流量まで減少して、座標点がg点に達したら、図中で太い破線の矢印で示したように、再び分配比率を増加させていく。このように、等火力線に沿って分配比率を周期的に変動させれば、
図6を用いて前述した理由から、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる。また、分配比率を変動させる際には、ガスコンロ1の使用者が設定した火力に対応するe点を通過する等火力線に沿って、分配比率を変動させているため、親子バーナ10全体として発生する火力は、使用者によって設定された火力に保たれている。このため、使用者が設定した火力のままで、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる。
【0072】
図8は、第1実施例のガスコンロ1が、使用者によって設定された設定火力で調理容器の底部を万遍なく加熱するために、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を制御する分配比率制御処理についてのフローチャートである。尚、この処理は、第1実施例のガスコンロ1に搭載されている制御部50(
図2参照)によって実行される。また、制御部50は、この処理に並行して、使用者による設定火力に応じてガス流量調節弁41を制御したり、点火プラグ30(
図2参照)を用いて燃料ガスに点火したりする処理も実行している。
【0073】
図8に示したように、分配比率制御処理では先ず初めに、親子バーナ10が燃焼運転中か否かを判断する(STEP1)。ガスコンロ1の制御部50は、親子バーナ10を燃焼運転するための処理も並行して実行しているから、親子バーナ10が燃焼運転中か否かを容易に判断することができる。その結果、燃焼運転中でなかった場合は(STEP1:no)、同じSTEP1の判断を繰り返すことによって、親子バーナ10の燃焼運転が開始されるまで待機状態となる。
【0074】
その後、親子バーナ10の燃焼運転が開始されると、STEP1では「yes」と判断されて、使用者によって設定された設定火力が所定の閾値火力よりも大きいか否かを判断する(STEP2)。ここで、閾値火力とは、親子バーナ10を子バーナ10Cの単独燃焼状態で燃焼運転させるか、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態で燃焼運転させるかを判断するために用いる火力である。すなわち、設定火力が閾値火力よりも小さい場合は、子バーナ10Cの単独燃焼状態とし、設定火力が閾値火力よりも大きい場合は、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態で燃焼運転させるかと判断される。使用者が設定火力を設定するために使用するコンロ操作ボタン8は制御部50に接続されているから、制御部50は使用者が設定した設定火力を認識することができる。
【0075】
その結果、使用者による設定火力が閾値火力よりも小さい場合は(STEP2:no)、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を1.0に制御する(STEP3)。制御部50は、親側の接続パイプ40pに搭載されている抵抗調節弁42pを全閉状態とし、子側の接続パイプ40cに搭載されている抵抗調節弁42cを全開状態とすることによって、分配比率を1.0に制御する。
【0076】
こうして、分配比率を1.0に制御した後は(STEP3)、再び燃焼運転中か否かを判断する(STEP1)。使用者によって燃料運転が停止されていた場合は、燃焼運転中でないと判断し(STEP1:no)、その後は、同じSTEP1の判断を繰り返すことによって、燃焼運転が開始されるまで待機する。これに対して、燃焼運転中であった場合は(STEP1:yes)、再び、設定火力が閾値火力よりも大きいか否かを判断する(STEP2)。その結果、設定火力が閾値火力よりも小さい場合は(STEP2:no)、分配比率を1.0に制御したまま(STEP3)、STEP1に戻って上述した操作を繰り返す。
【0077】
これに対して、設定火力が閾値火力よりも大きかった場合は(STEP2:yes)、今度は、設定火力がその火力に設定されてから、所定の保持時間が経過したか否かを判断する(STEP4)。第1実施例では、保持時間として、5秒間が設定されている。使用者が設定火力を設定した直後は、まだ保持時間が経過していないから、STEP4では「no」と判断されて、この場合は分配比率を、
図6を用いて前述した標準分配比率(第1実施例では0.15)に制御する(STEP5)。制御部50は、親側の抵抗調節弁42pおよび子側の抵抗調節弁42cを何れも全開状態に制御することによって、分配比率を標準分配比率に制御する。また、こうすることによって、親子バーナ10は親バーナ10Pおよび子バーナ10Cの同時燃焼状態となる。
【0078】
こうして、分配比率を標準分配比率に制御した場合も(STEP5)、STEP3で分配比率を1.0に制御した場合と同様に、再び燃焼運転中か否かを判断した後(STEP1)、続く一連の判断および操作を繰り返す。そして、こうした判断および操作を繰り返しているうちに、設定火力が閾値火力よりも大きな火力に設定されてから保持時間が経過したと判断された場合は(STEP4:yes)、今度は、子バーナ10Cが下限ガス流量となるような分配比率の下限値を算出する(STEP6)。分配比率の下限値とは、次のような値である。
【0079】
図7を参照すると、ガスコンロ1の使用者が設定火力を増加させることによって座標点がe点まで移動した後は、e点を通過する等火力線上で座標点が移動することによって、分配比率が増減している。そして、分配比率を減少させるに従って子バーナ10Cのガス流量も減少していき、座標点がg点に達するまで分配比率を減少させると、子バーナ10Cのガス流量が下限ガス流量に達する。このg点での分配比率が、分配比率の下限値となる。分配比率の下限値は、子バーナ10Cのガス流量が下限ガス流量となる分配比率であるから、
(分配比率の下限値)=(子バーナ10Cの下限ガス流量)/(合計ガス流量)
によって算出することができる。ここで、合計ガス流量とは、e点を通過する等火力線に対応する合計ガス流量である。上式中の「子バーナ10Cの下限ガス流量」は固定値であるが、「合計ガス流量」は使用者によって設定された設定火力に応じて増減する。そこで、STEP6では、使用者によって設定された設定火力に応じて、上式を用いて分配比率の下限値を算出する。
【0080】
こうして分配比率の下限値を算出したら、今度は、分配比率の上限値を算出する(STEP7)。ここで、分配比率の上限値とは、子バーナ10Cのガス流量が、最大ガス流量MaxCとなる分配比率である。
図7中で、e点を通過する等火力線と、子バーナ10Cのガス流量=MaxCの直線との交点を考えると、交点での分配比率が、分配比率の上限値となる。分配比率の上限値は、子バーナ10Cのガス流量が最大ガス流量MaxCとなる分配比率であるから、
(分配比率の上限値)=(子バーナ10Cの最大ガス流量)/(合計ガス流量)
によって算出することができる。上式中の「子バーナ10Cの最大ガス流量」は固定値であるが、「合計ガス流量」は設定火力に応じて増減するため、STEP7では設定火力に応じた分配比率の上限値を算出する。
【0081】
続いて、算出した分配比率の上限値が、0.5よりも大きいか否かを判断する(STEP8)。
図6を用いて前述したように、分配比率が0.5になると、親バーナ10Pに形成される炎Fpの大きさと、子バーナ10Cに形成される炎Fcの大きさとがほぼ同じになるため、第1実施例のガスコンロ1では、分配比率の増加が0.5で制限されている。従って、算出した分配比率の上限値が0.5よりも大きかった場合でも、分配比率が0.5を超えて増加しないようにしておく必要がある。そこで、STEP8では、算出した分配比率の上限値が、0.5よりも大きいか否かを判断する。そして、算出した上限値が0.5よりも大きかった場合は(STEP8:yes)、分配比率の変動範囲を、先に算出しておいた下限値から0.5までの範囲に設定する(STEP9)。これに対して、STEP7で算出した上限値が0.5よりも小さかった場合は(STEP8:no)、STEP6で算出した下限値から、STEP7で算出した上限値までの範囲を、分配比率の変動範囲に設定する(STEP10)。
【0082】
こうして燃料ガスの分配比率の変動範囲を設定したら、親側の抵抗調節弁42pの弁開度と子側の抵抗調節弁42cの弁開度とを制御することによって、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスの分配比率を、設定した範囲内で周期的に変動させる(STEP11)。また、分配比率を周期的に変動させる態様としては、予め設定しておいた態様とすることができる。例えば、
図9(a)に例示したように、時間の経過と共に分配比率が連続的に変化する態様で変動させてもよいし、
図9(b)に例示したように、分配比率が段階的に変化する態様で変動させてもよい。
【0083】
以上のようにして分配比率の変動を開始した後は、ガスコンロ1の使用者によって設定火力が変更されたか、あるいは燃焼運転が停止されたか否かを判断する(STEP12)。設定火力が変更されておらず、燃焼運転が停止されてもいない場合は(STEP12:no)、同じSTEP12の判断を繰り返すことによって、設定火力が変更あるいは燃焼運転が停止されるまで待機状態となる。その結果、設定火力の変更あるいは燃焼運転の停止の何れかが行われた場合は(STEP12:yes)、分配比率の変動を停止する(STEP13)。
【0084】
分配比率の変動を終了した後は、処理の先頭に戻って、燃焼運転中か否かを判断する(STEP1)。分配比率の変動を終了した理由が、使用者によって燃焼運転が停止されたためであった場合は、燃焼運転中ではないと判断されるので(STEP1:no)、この場合は同じSTEP1の判断を繰り返すことによって待機状態となる。
【0085】
これに対して、分配比率の変動を終了した理由が、使用者によって設定火力が変更されたためであった場合は、燃焼運転中と判断されるので(STEP1:yes)、使用者によって変更された設定火力が、閾値火力よりも大きいか否かを判断する(STEP2)。その結果、設定火力が閾値火力よりも小さかった場合は(STEP2:no)、分配比率を1.0に変更して(STEP3)、子バーナ10Cによる単独燃焼を開始する。
一方、設定火力が閾値火力よりも大きかった場合は(STEP2:yes)、その設定火力で所定の保持時間が経過したか否かを判断し(STEP4)、保持時間が経過していない場合は(STEP4:no)、分配比率を標準分配比率に制御し(STEP5)、保持時間が経過した場合は(STEP4:yes)、分配比率の変動を開始する(STEP6~STEP11)。
【0086】
第1実施例のガスコンロ1では、以上のような分配比率制御処理を実行することによって、親子バーナ10を用いて調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる。また、分配比率の変動中も、使用者によって設定された設定火力は維持されているので、従来の一般的なガスコンロと同様に、使用者が意図した火力で加熱することができる。
【0087】
尚、前述したように第1実施例のガスコンロ1では、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を周期的に増減している間も、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cで発生する合計の火力は一定の火力に維持されている。しかし、子バーナ10Cの炎Fcは親バーナ10Pの炎Fpに比べて、調理容器の底部から離れた位置に形成される。このため、子バーナ10Cの火力は親バーナ10Pの火力に比べて、調理容器に伝わりにくい傾向がある。すなわち、分配比率を小さくした状態と、大きくした状態とで、親子バーナ10が発生させる火力は同じでも、分配比率が大きくした状態(子バーナ10Cの炎Fcが大きい状態)では調理容器に伝わる火力が小さくなるため、親子バーナ10としての加熱効率が小さくなる傾向がある。その結果、分配比率を小さくした時に加熱される調理容器の外縁付近に比べて、分配比率を大きくした時に加熱される調理容器の中央付近では、親子バーナ10による加熱効率が低くなり、調理容器の温度が低めになってしまう虞がある。そこで、分配比率を変動させる際に、分配比率が大きな値となる時間比率を増加させるような態様で変動させることによって、加熱効率の低下を補うようにしても良い。
【0088】
図10は、分配比率が大きな値となる時間比率が増加するような変動態様を例示した説明図である。
図10(a)には、分配比率を連続的に変化させる場合の変動態様が例示されている。図中に一点鎖線で示した分配比率の中央値に対して、分配比率が大きくなる程、時間比率が大きくなり、分配比率が小さくなる程、時間比率が小さくなっている。また、
図10(b)には、分配比率を段階的に変化させる場合の変動態様が例示されている。この場合も、図中に一点鎖線で示した分配比率の中央値に対して、分配比率が大きくなると時間比率も大きくなり、分配比率が小さくなると時間比率も小さくなっている。従って、
図9を用いて前述した変動態様の代わりに、
図10に例示するような変動態様を記憶しておき、
図8のSTEP11で分配比率の変動を開始する際には、このような態様で変動させるようにしても良い。こうすれば、分配比率の違いによる加熱効率の違いを補うことができるので、調理容器の底部をより一層万遍なく加熱することが可能となる。
【0089】
B.第2実施例 :
上述した第1実施例のガスコンロ1では、使用者によって設定された設定火力で加熱を開始してから所定の保持時間(たとえば5秒間)が経過した後は、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を周期的に変動させている。こうすることで、親バーナ10Pの炎Fpの大きさを周期的に変化させることができ、調理容器の底部を万遍なく加熱することができる。もっとも、調理容器の大きさが小さい場合には、親バーナ10Pの炎Fpが大きくなった時に、炎が調理容器から溢れる状態(いわゆる炎溢れ状態)になることがある。そこで、予め調理容器の大きさを検出しておき、燃料ガスの分配比率を変動させる際には、親バーナ10Pの炎Fpが炎溢れ状態とならない範囲で、分配比率を変動させるようにしても良い。以下では、このような第2実施例のガスコンロ1について説明する。
【0090】
図11は、第2実施例のガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
図11に例示した第2実施例のガスコンロ1は、
図1を用いて前述した第1実施例のガスコンロ1に対して、天板3に複数の調理容器検知センサ6が搭載されている点で異なるが、その他の点については第1実施例のガスコンロ1と同様である。そこで、第2実施例では、第1実施例と同様な構成については、第1実施例と付番を共通化することによって説明を省略する。
【0091】
図11に示されるように、第2実施例のガスコンロ1の天板3には、親子バーナ10の中心位置から放射状に複数の調理容器検知センサ6が搭載されている。調理容器検知センサ6としては、光センサや超音波センサなどを用いることができるが、第2実施例のガスコンロ1では超音波センサが用いられている。尚、
図11では、放射状に配列された調理容器検知センサ6の列には、それぞれ調理容器検知センサ6が3つずつ配置されているものとして表示しているが、より多数の調理容器検知センサ6を配置してもよい。それぞれの列では、親子バーナ10の中心位置から、それぞれの調理容器検知センサ6までの距離は異なるが、列同士を比較すると、親子バーナ10の中心位置から対応する調理容器検知センサ6までの距離は同じとなっている。
【0092】
これらの調理容器検知センサ6は、制御部50(
図2参照)に接続されている。このため制御部50は、五徳4上に調理容器が置かれると、複数の調理容器検知センサ6の出力に基づいて、調理容器の大きさを検出することができる。例えば、五徳4上に置いた調理容器が中径の調理容器であった場合には、親子バーナ10の中心位置から一番外側の調理容器検知センサ6は、調理容器よりも外側の位置となる。このため、調理容器検知センサ6から上方に向けて超音波を発射しても、超音波は調理容器の外側を通過してしまい、超音波が反射して戻って来ないので、調理容器検知センサ6は調理容器を検出することができない。
【0093】
これに対して、その内側の調理容器検知センサ6は、上方に調理容器の底面が存在する状態となっている。このため、調理容器検知センサ6から上方に向けて超音波を発射すると、調理容器の底面で超音波が反射して戻ってくるため、調理容器検知センサ6は調理容器を検出するができる。このことから、親子バーナ10の中心位置から一番外側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できないが、その内側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できる場合は、五徳4上には中径の調理容器が置かれているものと判断することができる。
【0094】
五徳4上に小径あるいは大径の調理容器が置かれた場合にも、同様にして、調理容器の大きさを判断することができる。例えば、一番内側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できるが、その外側の調理容器検知センサ6では調理容器を検出できない場合は、五徳4上の調理容器は小径の調理容器と判断することができる。また、一番外側の調理容器検知センサ6でも調理容器を検出できる場合は、五徳4上の調理容器は大径の調理容器と判断することができる。
【0095】
以上では、調理容器検知センサ6が超音波センサであり、調理容器検知センサ6から超音波を発射して、調理容器で反射して戻って超音波を調理容器検知センサ6で検出することによって、調理容器を検出するものとして説明した。しかし、調理容器検知センサ6として光センサを採用して、調理容器検知センサ6から上方に向けて光を発射し、調理容器で反射して戻って光を調理容器検知センサ6で検出することによって、調理容器を検出してもよい。あるいは、五徳4上に置かれた調理容器の画像をガスコンロ1の使用者が撮影し、その画像を制御部50が取得して解析することによって、調理容器の大きさを検出するようにしても良い。尚、第2実施例の調理容器検知センサ6は、本発明における「検出手段」に対応する。
【0096】
何れの方法を用いた場合でも、五徳4上に置かれた調理容器の大きさを検出することができれば、炎溢れ状態になる親バーナ10Pのガス流量を推定することができる。従って、親バーナ10Pのガス流量が炎溢れ状態となるガス流量を超えない範囲で、燃料ガスの分配比率を変動させれば、分配比率を変動させたことが原因で炎溢れ状態が発生する事態を回避することができる。
【0097】
図12は、第2実施例のガスコンロ1が、上述した考え方に基づいて親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を制御する様子を示した説明図である。
図12では、第1実施例のガスコンロ1について示した
図7に対して、親バーナ10Pの炎Fpが炎溢れ状態となるガス流量(以下、上限ガス流量)を示す破線が追加されている。
【0098】
図12でも、前述した
図7と同様に、ガスコンロ1の使用者が設定火力を調整すると、親子バーナ10の動作状態を示す座標点は、図中に太い実線で示した等分配比率線上を移動する。そして、使用者が火力調整を完了した時に座標点がe点にあったとすると、e点を通過する等火力線に沿って座標点が往復動するように、燃料ガスの分配比率を変動させることになる。
【0099】
分配比率を増加させる場合は、図中で太い破線の矢印で示したように、標準分配比率から、分配比率0.5に向かって少しずつ分配比率を増加させて行く。そして、分配比率0.5となるf点に達したら、今度は図中で太い一点鎖線の矢印で示したように、分配比率を少しずつ減少させていく。分配比率が小さくなるほど、親バーナ10Pのガス流量は大きくなる。そして、座標点がh点に達した時点で、親バーナ10Pのガス流量が、炎溢れ状態の虞が生じる上限ガス流量に達する。そこで、再び分配比率を増加させることによって、座標点をh点からf点に向かって移動させていく。このようにすれば、炎溢れ状態とならない範囲で分配比率を変動させて、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる。
【0100】
尚、
図12に示した例では、分配比率の下限値は、親バーナ10Pに分配されるガス流量が、親バーナ10Pで炎溢れ状態が発生するガス流量(すなわち、上限ガス流量)となる分配比率に決定されている。しかし、上限ガス流量の値は、調理容器が大きくなるに従って大きくなる。従って、調理容器が十分に大きい場合は、分配比率の下限値は、親バーナ10Pの上限ガス流量ではなく、(前述した
図7と同様に)子バーナ10Cの下限ガス流量で制限されることになる。
【0101】
図13および
図14は、第2実施例のガスコンロ1に搭載された制御部50が実行する分配比率制御処理のフローチャートである。
図13および
図14に示した第2実施例の分配比率制御処理は、
図8を用いて前述した第1実施例の分配比率制御処理に対して、調理容器の大きさを検出して分配比率の下限値を算出している点が異なるが、その他については同様である。そこで、以下では、第1実施例との相違点を中心として、第2実施例の分配比率制御処理について説明する。
【0102】
図13に示したように、第2実施例の分配比率制御処理でも、先ず初めに親子バーナ10が燃焼運転中か否かを判断する(STEP51)。その結果、燃焼運転中でなかった場合は(STEP51:no)、同じSTEP51の判断を繰り返すことによって、親子バーナ10の燃焼運転が開始されるまで待機状態となる。
【0103】
親子バーナ10の燃焼運転が開始されると、STEP51では「yes」と判断して、設定火力が所定の閾値火力よりも大きいか否かを判断する(STEP52)。その結果、設定火力が閾値火力よりも小さい場合は(STEP52:no)、燃料ガスの分配比率を1.0に制御した後(STEP53)、処理の先頭に戻って、再び燃焼運転中か否かを判断し(STEP51)。これに対して、設定火力が閾値火力よりも大きかった場合は(STEP52:yes)、その設定火力で所定の保持時間(例えば、5秒間)が経過したか否かを判断する(STEP54)。
【0104】
その結果、まだ保持時間が経過していない場合は(STEP54:no)、分配比率を標準分配比率に制御する(STEP55)。続いて、第2実施例の分配比率制御処理では、五徳4上に置かれた調理容器の大きさを検出する(STEP56)。
図11を用いて前述したように、調理容器の大きさは、天板3上に搭載された調理容器検知センサ6を用いて検出することができる。
【0105】
分配比率を標準分配比率に制御した場合も(STEP55)、STEP53で分配比率を1.0に設定した場合と同様に、再び燃焼運転中か否かを判断して(STEP51)、続く一連の判断および操作を繰り返す。そして、こうした判断および操作を繰り返しているうちに、保持時間が経過したと判断したら(STEP54:yes)、STEP56で検出しておいた調理容器の大きさに対応する親バーナ10Pの上限ガス流量を取得する(STEP57)。親バーナ10Pの上限ガス流量とは、親バーナ10Pが炎溢れ状態となるガス流量である。親バーナ10Pの炎Fpの大きさは、ガス流量が増加するほど大きくなるから、調理容器の大きさが分かっていれば、親バーナ10Pが炎溢れ状態となるガス流量を決定することができる。STEP57では、STEP56で検出しておいた調理容器の大きさに対する上限ガス流量を取得する。
【0106】
続いて、こうして取得した親バーナ10Pの上限ガス流量に対応する分配比率の下限値(第1下限値)を算出する(STEP58)。第1下限値は、設定火力に対応する合計ガス流量の中から、親バーナ10Pに分配されるガス流量が上限ガス流量となる分配比率であるから、
(第1下限値)=(親バーナ10Pの上限ガス流量)/(合計ガス流量)
によって算出することができる。
【0107】
こうして分配比率の第1下限値を算出したら、今度は、子バーナ10Cの下限ガス流量に対応する分配比率の下限値(第2下限値)を算出する(STEP59)。第2下限値は、設定火力に対応する合計ガス流量の中から、子バーナ10Cに分配されるガス流量が下限ガス流量となる分配比率であるから、
(第2下限値)=(子バーナ10Cの下限ガス流量)/(合計ガス流量)
によって算出することができる。
【0108】
続いて、STEP58で算出した第1下限値が、STEP59で算出した第2下限値よりも大きいか否かを判断する(STEP60)。すなわち、
図12を用いて前述したように、分配比率を変動させる範囲の下限値は、親バーナ10Pの炎Fpが炎溢れ状態となる上限ガス流量によって決まる場合と、子バーナ10Cで安定して燃焼を継続させることが可能な下限ガス流量によって決まる場合とが存在する。そこで、親バーナ10Pの上限ガス流量から算出した第1下限値と、子バーナ10Cの下限ガス流量から算出した第2下限値とを比較することによって、何れが分配比率の変動範囲の下限値になるかを判断する。その結果、第1下限値の方が第2下限値よりも大きかった場合は(STEP60:yes)、第1下限値を変動範囲の下限値に設定する(STEP61)。これに対して、第1下限値の方が第2下限値よりも小さかった場合は(STEP60:no)、第2下限値を変動範囲の下限値に設定する(STEP62)。
【0109】
こうして分配比率を変動させる変動範囲の下限値を設定したら、今度は、子バーナ10Cが最大ガス流量MaxCとなる分配比率の上限値を算出する(STEP63)。
図7を用いて前述した第1実施例と同様に、子バーナ10Cが最大ガス流量MaxCとなる分配比率の上限値は、
(分配比率の上限値)=(子バーナ10Cの最大ガス流量)/(合計ガス流量)
によって算出することができる。
【0110】
続いて、算出した分配比率の上限値が、0.5よりも大きいか否かを判断する(
図14のSTEP64)。その結果、分配比率の上限値が0.5よりも大きかった場合は(STEP64:yes)、分配比率の変動範囲を、
図13のSTEP61またはSTEP62で設定しておいた下限値から0.5までの範囲に設定する(STEP65)。これに対して、STEP63で算出した上限値が0.5よりも小さかった場合は(STEP64:no)、
図13のSTEP61またはSTEP62で設定しておいた下限値から、STEP63で算出した上限値までの範囲を、分配比率の変動範囲に設定する(STEP66)。
【0111】
こうして燃料ガスの分配比率の変動範囲を設定したら、設定した範囲内で分配比率を周期的に変動させる(STEP67)。分配比率を周期的に変動させる態様としては、
図9あるいは
図10に例示した態様とすることができる。そして、分配比率の変動を開始した後は、ガスコンロ1の使用者によって設定火力が変更されたか、あるいは燃焼運転が停止されたか否かを判断し(STEP68)、設定火力の変更も、燃焼運転の停止もされていない場合は(STEP68:no)、同じSTEP68の判断を繰り返すことによって待機状態となる。
【0112】
その結果、設定火力の変更あるいは燃焼運転の停止の何れかが行われた場合は(STEP68:yes)、分配比率の変動を停止した後(STEP69)、処理の先頭に戻って、燃焼運転中か否かを判断する(
図13のSTEP51)。第2実施例のガスコンロ1では、以上のような分配比率制御処理を実行することによって、炎溢れ状態を発生させることなく、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる。
【0113】
C.変形例 :
上述した第1実施例および第2実施例には、幾つかの変形例が存在する。以下では、これらの変形例について、第1実施例および第2実施例との相違点について簡単に説明する。
【0114】
C-1.第1変形例 :
上述した第1実施例および第2実施例では、親側の接続パイプ40pに搭載された抵抗調節弁42pと、子側の接続パイプ40cに搭載された抵抗調節弁42cとを制御することによって、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を変更するものとして説明した。しかし、親側の抵抗調節弁42pおよび子側の抵抗調節弁42cは、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスの分配比率を変更していることに過ぎない。従って、親側の接続パイプ40pに抵抗調節弁42pを搭載し、子側の接続パイプ40cに抵抗調節弁42cを搭載する代わりに、ガス供給パイプ40が親側の接続パイプ40pと子側の接続パイプ40cとに分岐する位置に、燃料ガスの分配比率を変更する分配弁を設けることとしてもよい。
【0115】
図15には、このような分配弁45を備える第1変形例の親子バーナ10が示されている。第1変形例の親子バーナ10は、
図2を用いて前述した第1実施例および第2実施例の親子バーナ10に対して、親側の抵抗調節弁42pおよび子側の抵抗調節弁42cが、分配弁45に変更されている点で異なるが、その他の点については、第1実施例および第2実施例と同様である。
【0116】
分配弁45は、1つの流入ポートと2つの流出ポートを備え、内部で移動する弁体を備えた周知の分配弁である。分配弁45は、内蔵されている弁体を移動させると、一方の流出ポートの開口面積が増加し、それに伴って他方の流出ポートの開口面積が減少するようになっている。流入ポートにはガス供給パイプ40が接続されており、一方の流出ポートには親側の接続パイプ40pが接続され、他方の流出ポートには子側の接続パイプ40cが接続されている。そして、制御部50は分配弁45の弁体の位置を制御可能となっている。
【0117】
このような第1変形例の親子バーナ10では、制御部50が分配弁45の弁体の位置を制御することによって、ガス供給パイプ40から分配弁45に流入した燃料ガスを、適切な比率で、親側の接続パイプ40pおよび子側の接続パイプ40cに分配することができる。その結果、前述した第1実施例および第2実施例と同様にして分配比率を周期的に変動させることによって、調理容器の底部を万遍なく加熱することが可能となる。
【0118】
C-2.第2変形例 :
また、前述した第1実施例および第2実施例では、ガス供給パイプ40に搭載されたガス流量調節弁41が、燃料ガスの合計ガス流量を制御し、親側の接続パイプ40pに搭載された抵抗調節弁42p、および子側の接続パイプ40cに搭載された抵抗調節弁42cが、燃料ガスの分配比率を制御するものとして説明した。従って、親バーナ10Pに供給されるガス流量は、ガス流量調節弁41および抵抗調節弁42pで制御され、子バーナ10Cに供給されるガス流量は、ガス流量調節弁41および抵抗調節弁42cで制御されることになる。
【0119】
しかし、親側の抵抗調節弁42pに親バーナ10Pへのガス流量を調節する機能を持たせ、子側の抵抗調節弁42cに子バーナ10Cへのガス流量を調節する機能を持たせれば、ガス流量調節弁41を不要とすることもできる。
【0120】
図16には、このような第2変形例の親子バーナ10が示されている。第2変形例の親子バーナ10は、
図2を用いて前述した第1実施例および第2実施例の親子バーナ10に対して、ガス供給パイプ40にガス流量調節弁41が搭載されていない点で異なっている。この第2変形例の親子バーナ10では、親バーナ10Pへのガス流量および子バーナ10Cへのガス流量を独立して増減させることが可能となるが、制御部50が抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42cを適切に制御することで、第1実施例あるいは第2実施例と同様に動作させることが可能となる。尚、上述した第2変形例の抵抗調節弁42pおよび抵抗調節弁42cは、本発明における「分配比率変更手段」に対応すると同時に、「ガス流量調節手段」にも対応する。
【0121】
C-3.第3変形例 :
前述した第1実施例および第2実施例では、使用者によって設定火力が設定されると、その設定火力を維持したまま、分配比率を変動させるものとして説明した。しかし、前述したように、分配比率が小さい状態では、調理容器から遠くの位置に形成される親バーナ10Pの炎Fpは大きくなっているが、調理容器の近くの位置に形成される子バーナ10Cの炎Fcが小さくなっているため、加熱効率が低下する傾向にある。逆に、分配比率が大きい状態では、調理容器から遠くに形成される親バーナ10Pの炎Fpは小さくなっているが、調理容器の近くに形成される子バーナ10Cの炎Fcが大きくなっているため、加熱効率が上昇する傾向にある。以上のような理由から、調理容器の底部の中で、分配比率が小さい状態(親バーナ10Pの炎Fpが大きな状態)で加熱される部分は、加熱効率が低いために温度が上がりにくい傾向が生じる。逆に、分配比率が大きな状態(子バーナ10Cの炎Fcが大きな状態)で加熱される部分は、加熱効率が高いため温度が上がり易くなり、調理容器の底部に温度分布が生じてしまう可能性がある。
【0122】
そこで、使用者によって設定された設定火力を維持したまま、分配比率を変動させるのではなく、分配比率が小さい場合は設定火力よりも火力が大きくなり、分配比率が大きい場合は設定火力よりも火力が小さくするようにして、分配比率を変動させてもよい。
【0123】
図17は、こうした第3変形例のガスコンロ1が分配比率を変動させる様子を示した説明図である。
図17でも、第1実施例のガスコンロ1について示した
図7と同様に、使用者が設定した設定火力に対応するe点から分配比率を変動させている。しかし、前述した
図7では、e点を通過する等火力線上のf点とg点との間で分配比率を変動させているのに対して、
図17では、e点を通過する等火力線から外れたi点とj点との間で分配比率を変動させている。そして、e点での分配比率(標準分配比率)から分配比率が大きくなるに従って、合計ガス流量が減少する方向に座標点が外れて行き、標準分配比率から分配比率が小さくなるに従って、合計ガス流量が増加する方向に座標点が外れて行くようになっている。
【0124】
こうすれば、分配比率を変動させることによって、親子バーナ10の加熱効率が変動したとしても、分配比率が大きくなって加熱効率が上昇する場合には、合計ガス流量を減少(従って、親子バーナ10の発生火力を減少)させることによって、加熱効率の上昇を補償することができる。また、分配比率が小さくなって加熱効率が低下する場合には、合計ガス流量を増加(従って、親子バーナ10の発生火力を増加)させることによって、加熱効率の低下を補うことができる。その結果、調理容器の底部に僅かな温度分布が生じる虞も回避することが可能となる。
【0125】
以上、各種の実施例および各種の変形例の親子バーナ10を搭載したガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0126】
例えば、上述した各種の実施例および各種の変形例では、親バーナ10Pと、親バーナ10Pよりも最大火力が小さな子バーナ10Cを備える親子バーナ10がガスコンロ1に搭載されているものとして説明した。しかし、ガスコンロ1は、親子バーナ10の代わりに、大きさや最大火力が同等な2つのバーナを上下に配置した二重バーナを搭載したガスコンロ1であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、 4…五徳、
5…温度センサ、 6…調理容器検知センサ、 7…グリル扉、
8…コンロ操作ボタン、 9…グリル操作ボタン、 10…親子バーナ、
10C…子バーナ、 10P…親バーナ、 11…バーナ本体、
11a…載置面、 11b…バーナボディ、 12…親混合管、
12o…開口端、 13…子混合管、 13o…開口端、 14…中央筒体、
15…筒体、 15a…嵌合面、 16…混合室、 16c…子混合室、
16p…親混合室、 20…バーナキャップ、 20h…挿通孔、
21…上側キャップ部、 21a…下向筒状壁、 21b…上側溝、
21f…上側炎口、 22…下側キャップ部、 22a…隔壁筒、
22b…下段溝、 22c…上向筒状壁、 22d…下側溝、
22f…下側炎口、 22u…子炎口、 30…点火プラグ、
31…点火ターゲット、 32…火炎センサ、 40…ガス供給パイプ、
40c…接続パイプ、 40p…接続パイプ、 41…ガス流量調節弁、
42c…抵抗調節弁、 42p…抵抗調節弁、 43c…ガス噴射ノズル、
43p…ガス噴射ノズル、 45…分配弁、 50…制御部。