(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240208BHJP
B65D 85/90 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/90
(21)【出願番号】P 2020193676
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】波賀野 賢
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 壮紀
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-24585(JP,A)
【文献】特開平5-63066(JP,A)
【文献】特開平8-230515(JP,A)
【文献】特開2017-224659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面に開口を有し、基板を収納可能な容器本体と、
前記容器本体の前記開口を閉塞する蓋体と、
気体をろ過可能なフィルタ部材と、
前記フィルタ部材を前記容器本体又は前記蓋体の少なくとも一方に着脱可能に係合させる係合部と、を備える基板収納容器において、
前記係合部は、前記フィルタ部材を挿入する挿入孔と、
前記挿入孔の内部で前記フィルタ部材に接触し、前記基板収納容器の内外の連通を遮蔽するシール部と、
前記フィルタ部材を係止する係止爪と、を含み、
前記フィルタ部材は、前記係止爪に係止される第1姿勢と、前記係止爪に係止されない第2姿勢との間を前記挿入孔の内部で傾動可能である、
ことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記フィルタ部材は、前記挿入孔に挿入されて前記第2姿勢となり、前記第2姿勢から前記第1姿勢に傾動されて前記係止爪に係止される、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記フィルタ部材は、前記挿入孔に挿入されて前記第2姿勢を経ることなく前記第1姿勢となり、前記係止爪に係止される、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記係合部は、前記係止爪との間で前記フィルタ部材を前記第1姿勢で係止する平面部と、前記平面部に連なり、前記平面部に対して傾斜する傾斜面部と、を前記挿入孔の周縁に含む、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記挿入孔は、前記シール部が最も狭く、前記シール部から両端に向かって広がる形状である、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記シール部又は前記フィルタ部材の少なくとも一方は、シール性を向上させるためのシール部材を別部材として有する、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項7】
前記シール部材は、弾性部材である、
ことを特徴とする請求項6に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の基板を収納する基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板収納容器は、半導体ウエハなどの基板を内部空間に収納し、倉庫での保管、半導体加工装置間での搬送、工場間での輸送などに使用されている。基板収納容器は、収納された基板が汚染されないように高い密封性を有するが、航空機での輸送時の気圧の変化などにより、基板収納容器の内外間に圧力差が生じることがあった。そのため、基板収納容器は、容器本体又は蓋体に内外の圧力差を調整する内圧調整機構(例えば、フィルタ部材)を備えることが提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1にみられる基板収納容器では、フィルタ部材が、蓋体のドア本体に差し込まれ、ドア本体に係合するドアカバーに設けられた係止部(係止爪)によって、ドア本体とドアカバーとの間に挟持され、固定されている。
【0004】
また、特許文献2にみられる基板収納容器では、容器本体の側壁に連通管及び抜け落ち防止爪が形成されており、フィルタ部材が、連通管に差し込まれ、抜け落ち防止爪(係止爪)によって、係止固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-024585号公報
【文献】特開平11-233607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィルタ部材が汚染された場合や基板収納容器の洗浄時に、フィルタ部材を取り外して交換する必要がある。しかしながら、上述した構造では、専用治具又は作業者の手で係止爪を外側に変位させて、フィルタ部材を開放させる必要があり、片手で簡単に取り外すことができなかった。
【0007】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、フィルタ部材を簡単に取り外し可能な基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る1つの態様は、一方面に開口を有し、基板を収納可能な容器本体と、前記容器本体の前記開口を閉塞する蓋体と、気体をろ過可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材を前記容器本体又は前記蓋体の少なくとも一方に着脱可能に係合させる係合部と、を備える基板収納容器において、前記係合部は、前記フィルタ部材を挿入する挿入孔と、前記挿入孔の内部で前記フィルタ部材に接触し、前記基板収納容器の内外の連通を遮蔽するシール部と、前記フィルタ部材を係止する係止爪と、を含み、前記フィルタ部材は、前記係止爪に係止される第1姿勢と、前記係止爪に係止されない第2姿勢との間を前記挿入孔の内部で傾動可能なものである。
(2)上記(1)の態様において、前記フィルタ部材は、前記挿入孔に挿入されて前記第2姿勢となり、前記第2姿勢から前記第1姿勢に傾動されて前記係止爪に係止されてもよい。
(3)上記(1)の態様において、前記フィルタ部材は、前記挿入孔に挿入されて前記第2姿勢を経ることなく前記第1姿勢となり、前記係止爪に係止されてもよい。
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つの態様において、前記係合部は、前記係止爪との間で前記フィルタ部材を前記第1姿勢で係止する平面部と、前記平面部に連なり、前記平面部に対して傾斜する傾斜面部と、を前記挿入孔の周縁に含んでもよい。
(5)上記(1)から(4)までのいずれか1つの態様において、前記挿入孔は、前記シール部が最も狭く、前記シール部から両端に向かって広がる形状であってもよい。
(6)上記(1)から(5)までのいずれか1つの態様において、前記シール部又は前記フィルタ部材の少なくとも一方は、シール性を向上させるためのシール部材を別部材として有してもよい。
(7)上記(6)の態様において、前記シール部材は、弾性部材であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルタ部材を簡単に取り外し可能な基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明に係る第1実施形態の基板収納容器を示す平面図である。
【
図1B】本発明に係る第1実施形態の基板収納容器を示す断面図である。
【
図2A】第1実施形態の蓋体のドア本体を示す斜視図である。
【
図2B】第1実施形態の蓋体のドアカバーを示す斜視図である。
【
図5A】係合部における第1姿勢のフィルタ部材を模式化して示す斜視図である。
【
図5B】係合部における第1姿勢のフィルタ部材を模式化して示す断面図である。
【
図5C】係合部における第2姿勢のフィルタ部材を模式化して示す断面図である。
【
図6A】第1実施形態の係合部近傍を示す斜視図である。
【
図6B】第1実施形態の係合部近傍を示す断面図である。
【
図6C】第1実施形態の係合部における固定動作を示す斜視図である。
【
図6D】第1実施形態の係合部における固定動作を示す断面図である。
【
図6E】第1実施形態の係合部における第1姿勢のフィルタ部材を示す斜視図である。
【
図6F】第1実施形態の係合部における第1姿勢のフィルタ部材を示す断面図である。
【
図6G】第1実施形態の係合部における第2姿勢のフィルタ部材を示す斜視図である。
【
図6H】第1実施形態の係合部における第2姿勢のフィルタ部材を示す断面図である。
【
図7A】第2実施形態の係合部近傍を示す斜視図である。
【
図7B】第2実施形態の係合部近傍を示す断面図である。
【
図7C】第2実施形態のドア本体を示す斜視図である。
【
図7D】第2実施形態のドアカバーを示す断面図である。
【
図7E】第2実施形態の係合部における第2姿勢のフィルタ部材を示す斜視図である。
【
図7F】第2実施形態の係合部における第2姿勢のフィルタ部材を示す断面図である。
【
図8A】第3実施形態の係合部近傍を示す斜視図である。
【
図8B】第3実施形態の係合部近傍を示す断面図である。
【
図8C】第3実施形態のドア本体を示す斜視図である。
【
図8D】第3実施形態のドアカバーを示す断面図である。
【
図8E】第3実施形態の係合部における第2姿勢のフィルタ部材を示す斜視図である。
【
図8F】第3実施形態の係合部における第2姿勢のフィルタ部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0012】
基板収納容器1について説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態の基板収納容器1を示すもので、
図1Aは平面図であり、
図1Bは断面図である。
図2は、第1実施形態の蓋体20を示すもので、
図2Aはドア本体21の斜視図であり、
図2Bはドアカバー22の斜視図である。
【0013】
基板収納容器1は、複数の基板、例えば、直径300mm又は450mmのウエハなどを収納可能なものであり、一方面(例えば、前面)に開口を有する容器本体10と、開口を閉塞する蓋体20と、を備えている。ただし、基板収納容器1は、基板を直接収納するのではなく、基板を収納したキャリアを収納するものであってもよい。
【0014】
容器本体10は、前面の開口と、天面と、背面と、左右の側面と、底面とを有する略直方体のもので、いわゆるフロントオープンボックスタイプのものである。この前面の開口は、次に説明する蓋体20により覆われ、閉塞される。なお、以下の説明において、
図1Aに示すように、容器本体10の天面と底面を結ぶ方向を、天面を「上」とする上下方向といい、左右の側面を結ぶ方向を左右方向という。
【0015】
蓋体20は、容器本体10の開口をシール可能な外形形状及び寸法で形成されるもので、ドア本体21と、ドア本体21の一部を覆うドアカバー22と、を有している。なお、以下の説明において、蓋体20のドア本体21とドアカバー22とを結ぶ方向(容器本体10の前面開口と背面とを結ぶ方向に一致する)を、ドアカバー22を「表」又は「前」とする表裏方向(又は前後方向)という(
図1A参照)。
【0016】
ドア本体21は、一方面が開放され、他方面が容器本体10の開口と対向する略直方体の箱状のものである。なお、ドア本体21の側壁には、容器本体10の開口を閉塞した際、容器本体10の開口周縁壁との間に挟み込まれるガスケット50が取り付けられている(
図1B参照)。
【0017】
ドアカバー22は、ドア本体21に係合し、係止用の爪やネジなどでドア本体21に固定される。このドアカバー22とドア本体21とにより、施錠機構(図示なし)を収納する空間が形成され、施錠機構は半密封状態で蓋体20に収納されることになる。なお、蓋体20で容器本体10の開口を閉塞した場合、施錠機構を収納した空間と、容器本体10の内部空間(基板収納空間)とは、施錠部材よりも容器本体10側に存在するガスケット50により、切り離されている。
【0018】
施錠機構は、施錠部材がドア本体21の外周面よりも外側に出没することで、蓋体20を容器本体10に係止可能とするものである。施錠部材は、ドア本体21の上辺及び下辺の各2か所から出没するように配置されている。なお、施錠機構については、基板収納容器1において一般的なものであるから、より詳細な構造の説明及び図示を省略する。
【0019】
ここで、ドア本体21には、基板収納容器1(容器本体10)の内部空間と外部空間とを連通する連通孔としての挿入孔41が形成されている。この挿入孔41は、
図2Aでは右下の1か所に形成されているが、2か所以上であってもよい。なお、挿入孔41は、後述する係合部140の一部を構成するため、係合部40(140,240,340)とともに説明する。
【0020】
上述した容器本体10及び蓋体20(ドア本体21及びドアカバー22)は、例えばポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどの合成樹脂から形成することができる。また、これらの樹脂に、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどを添加して、導電性を付与することもできる。
【0021】
つづいて、フィルタ部材60について説明する。
図3は、フィルタ部材60を示すもので、
図3Aは正面図であり、
図3Bは断面図である。
【0022】
フィルタ部材60は、基板収納容器1の内部空間と外部空間との圧力差を調整する内圧調整機構として作用するもので、挿入孔41に挿入され、蓋体20に係止固定されるものである。
【0023】
フィルタ部材60は、一般的に「シリンジフィルタ」と称される構造と同様なもので、気体をろ過するフィルタ61と、フィルタ61を保持するフィルタ保持部材62と、で形成されている。
【0024】
フィルタ61は、四フッ化エチレン、ポリエステル繊維、多孔質フッ素膜又はガラス繊維などからなる分子ろ過フィルタ、あるいは活性炭素繊維などのろ材に化学吸着剤を担持させたケミカルフィルタが使用される。また、フィルタ61の表面又は裏面は、ポリプロピレンやポリエチレンなどで形成される格子状の保護部材が設けられていてもよい。
【0025】
なお、フィルタ61として、例えば、分子ろ過フィルタとケミカルフィルタとを組合せたものを使用することで、基板をパーティクル汚染のみならず有機ガス汚染からも防止することができる。
【0026】
一方、フィルタ保持部材62は、
図3Bに示すように、第1開口621aが形成された第1筒部621と、フィルタ61を収容する収容空間が形成されたボス部623と、第2開口622aが形成された第2筒部622と、から構成されている。
【0027】
第1筒部621は、先端に向かって縮径する略円筒状のものであり、ボス部623の一方の面に突設して形成されている。
【0028】
また、第2筒部622は、略円筒状のものであり、ボス部623の他方の面に突設して形成されている。第2筒部622は、
図3Aに示すように、先端にルアーロック用のリブ624が突出して形成されている。ただし、リブ624に替えて、フランジが形成されたものでもよく、その他の係合手段であってもよい。
【0029】
ボス部623は、略円板状のもので、1又は複数枚のフィルタ61を保持するように、内部が収容空間として中空に形成されている。前述した第1開口621a及び第2開口622aは、ボス部623の収容空間にそれぞれ連通している。
【0030】
上述してきたように、フィルタ部材60は、フィルタ61を挟んで非対称形状であるものの、第1筒部621を挿入孔41に挿入して取り付けられることで、基板収納容器1の外部空間から内部空間に流出入する気体を、フィルタ61を介して、ろ過することができる。
【0031】
なお、フィルタ部材60は、ボス部623の中央付近で分割された2つの部材をあらかじめ形成しておき、相対するボス部623同士の間にフィルタ61を収納し、周縁部を溶着して形成されたものが好ましい。
【0032】
つづいて、第1実施形態の係合部140(後述する第2実施形態の係合部240及び第3実施形態の係合部340)を模式化した係合部40について説明する。
図4は、係合部40を模式化して示すもので、
図4Aは斜視図であり、
図4Bは断面図である。
【0033】
係合部40は、
図4A及び
図4Bに示すように、蓋体20に形成されており、フィルタ部材60を挿入する挿入孔41を有している。この挿入孔41は、フィルタ部材60(の第1筒部621)に接触することで、基板収納容器1の内外の連通を遮蔽するシール部42を内部に含んでいる。
【0034】
また、挿入孔41は、中間付近のシール部42が最も狭く、シール部42から両端に向かって広がる形状であり、蓋体20の表裏方向(挿入孔41の貫通方向)からの断面視で長円形状(場合によっては円形形状)に形成されている。つまり、この挿入孔41は、例えば、ドリルで蓋体20の表裏方向に孔を穿設した後、ドリルの中心軸をある角度(10°~30°程度)傾けて、孔を拡大したような形状をしている。このような挿入孔41の形状により、フィルタ部材60が挿入孔41内で後述するように姿勢変更可能になっている。
【0035】
シール部42は、フィルタ部材60との間のシール性を向上させるためのシール部材を別部材(図示なし)として有していてもよい。例えば、シール部材は、弾性材料から形成される弾性部材であり、Oリングなどであってもよい。
【0036】
ただし、シール部42に弾性材料から形成されるシール部材が一体化されていてもよく、シール部42を含む挿入孔41全体が弾性材料から形成されてもよく、逆にフィルタ部材60がシール部材を有するものとしてもよい。
【0037】
さらに、挿入孔41のフィルタ部材60の挿入側の周縁には、平坦な平面を有する平面部43と、平面部43に連なり、平面部43に対して挿入孔41側に傾斜する傾斜面を有する傾斜面部44とが形成されている。これら平面部43と傾斜面部44との境界は、挿入孔41に位置している。
【0038】
そして、挿入孔41を挟んだ傾斜面部44の反対側には、フィルタ部材60(のボス部623)を平面部43との間に挟持して係止する係止爪45が設けられている。この係止爪45は、挿入孔41から離れる方向に弾性変形可能に形成されるとともに、平面部43に対向する側が平面であり、反対側が斜面のクサビ状に形成されている。
【0039】
このような係合部40により、フィルタ部材60を係止固定又は固定解除した状態について説明する。
図5Aは係合部40における第1姿勢のフィルタ部材60を模式化して示す斜視図であり、
図5Bは係合部40における第1姿勢のフィルタ部材60を模式化して示す断面図であり、
図5Cは係合部40における第2姿勢のフィルタ部材60を模式化して示す断面図である。
【0040】
図5A及び
図5Bに示すように、フィルタ部材60が係合部40に係止固定された状態では、フィルタ部材60のボス部623は平面部43と係止爪45との間で挟持されており、フィルタ部材60の軸方向が蓋体20の表裏方向に一致する第1姿勢で固定されている。つまり、第1姿勢のフィルタ部材60の軸方向と平面部43を形成する平面とが略直交している。
【0041】
このとき、フィルタ部材60は挿入孔41のシール部42に接触しているため、シール部42以外にフィルタ部材60と挿入孔41との間に空隙があっても、蓋体20の表面及び裏面(基板収納容器1の内外)の連通は遮蔽されている。
【0042】
一方、
図5Cに示すように、フィルタ部材60が係合部40からの係止固定が解除された状態では、フィルタ部材60のボス部623は傾斜面部44に沿って傾いていることで、係止爪45の係止から外れた状態になっており、フィルタ部材60の軸方向が蓋体20の表裏方向に対して傾斜する第2姿勢をとっている。なお、傾斜面部44は、第2姿勢のフィルタ部材60の軸方向と略直交する平面と平行であるか、大きく傾斜していればよい。
【0043】
このときも、フィルタ部材60は挿入孔41のシール部42に接触しているため、シール部42以外にフィルタ部材60と挿入孔41との間に空隙があっても、蓋体20の表面及び裏面(基板収納容器1の内外)の連通は遮蔽されている。
【0044】
ここで、第1実施形態の基板収納容器1に戻って、係合部140の構成について説明する。なお、係合部140は、係合部40を具体化したものであるため、係合部140の各構成についての説明を省略することがある。
図6Aは第1実施形態の係合部140近傍を示す斜視図であり、
図6Bは第1実施形態の係合部140近傍を示す断面図である。
図6Cは第1実施形態の係合部140における固定動作を示す斜視図であり、
図6Dは第1実施形態の係合部140における固定動作を示す断面図である。
図6Eは第1実施形態の係合部140における第1姿勢のフィルタ部材60を示す斜視図であり、
図6Fは第1実施形態の係合部140における第1姿勢のフィルタ部材60を示す断面図である。
図6Gは第1実施形態の係合部140における第2姿勢のフィルタ部材60を示す斜視図であり、
図6Hは第1実施形態の係合部140における第2姿勢のフィルタ部材60を示す断面図である。なお、
図6Aから
図6Hでは、ドアカバー22を取り外した状態で蓋体20を図示している。また、
図6B,D,F,Hの断面図は、
図1AのA-A線で切断したものである。
【0045】
図6A及び
図6Bに示すように、係合部140は、挿入孔141と、シール部142と、平面部143と、傾斜面部144と、係止爪145と、を含み、さらに、ガイド部146を含んでおり、これらは蓋体20のドア本体21に形成されている。
【0046】
ガイド部146は、フィルタ部材60が挿入孔141内で姿勢変更する際に、一方向に傾斜(回動)するように案内するもので、傾斜面部144と係止爪145とを結ぶ上下方向に対して略直交する左右方向の挿入孔141の両側に形成されている。
【0047】
なお、第1実施形態では、平面部143と傾斜面部144とが、挿入孔141の周縁とガイド部146の内側とにそれぞれ分離して形成されているが、一体化されていてもよい。
【0048】
また、係合部140は、フィルタ部材60を固定及び解除を行えるように、ドアカバー22に形成された長円状の開口部23からアクセス可能になっている(
図1A及び
図1B参照)。係合部140が開口部23の内側に位置することで、作業者が意図的に指を差し込まない限り、フィルタ部材60に触れることができないため、不用意なフィルタ部材60の脱落を防止することができる。
【0049】
ここで、第1実施形態におけるフィルタ部材60の固定及び解除方法について説明する。
フィルタ部材60を装着する場合、まず、フィルタ部材60の軸方向が、
図6C及び
図6Dに示すように、蓋体20の表裏方向に一致し、挿入孔141に対向するように配置して準備する。
【0050】
この状態のまま、フィルタ部材60を挿入孔141の方向に移動し続けると、第1筒部621が挿入孔141に挿入され始めるとともに、ボス部623が係止爪145の斜面に当接し、係止爪145を下方に撓ませながら、係止爪145を乗り越えて、
図6E及び
図6Fに示すように、ボス部623が平面部143と係止爪145との間に挟持され、フィルタ部材60が第1姿勢で係合部140に係止固定される。このように、フィルタ部材60は、挿入孔141に挿入されて第2姿勢を経ることなく、直接第1姿勢をとって、係合部140に係止固定される。
【0051】
一方、フィルタ部材60を取り外す場合、ボス部623における係止爪145と反対側(
図6Fにおける上側)をドア本体21に向けて押圧することで、ボス部623が傾斜面部144に沿うように傾き始めながら、シール部142を支点とするテコの原理により係止爪145を若干下側に撓ませて、
図6G及び
図6Hに示すように、係止爪145による係止固定を解除し、フィルタ部材60は第2姿勢となることができる。
【0052】
ただし、第1実施形態の係合部140では、フィルタ部材60を第2姿勢で挿入孔141に挿入し、その後、指で係止爪145を下方に撓ませながら、フィルタ部材60を第1姿勢に変更させて、蓋体20に係止固定することも可能である。つまり、フィルタ部材60は、第2姿勢から第1姿勢に傾動されて、係合部140に係止固定されることもある。
【0053】
つぎに、第2実施形態の係合部240について説明する。上記第1実施形態の係合部140では、係止爪145はドア本体21に形成されていたが、係合部240では、係止爪245がドアカバー222に形成されている点が異なっている。なお、係合部240は、係合部40を具体化したものであるため、係合部240の各構成についての説明を省略することがある。
【0054】
図7Aは第2実施形態の係合部240近傍を示す斜視図であり、
図7Bは第2実施形態の係合部240近傍を示す断面図である。
図7Cは第2実施形態のドア本体221を示す斜視図であり、
図7Dは第2実施形態のドアカバー222を示す断面図である。
図7Eは第2実施形態の係合部240における第2姿勢のフィルタ部材60を示す斜視図であり、
図7Fは第2実施形態の係合部240における第2姿勢のフィルタ部材60を示す断面図である。なお、
図7A,B,D,E,Fの斜視図及び断面図は、
図1AのA-A線に相当する位置で切断したものである。
【0055】
図7A及び
図7Bに示すように、係合部240は、挿入孔241と、シール部242と、平面部243と、傾斜面部244、係止爪245と、を含んでおり、これらは係止爪245を除いてドア本体221に形成されている(
図7C参照)。
【0056】
一方、係止爪245は、上述したようにドアカバー222に形成されている。具体的には、係止爪245は、ドアカバー222の表面側からドア本体221に向かって延び、途中で上方に湾曲した形態で形成されている(
図7D参照)。なお、ドアカバー222には、係合部240にアクセスするための開口部223も形成されている。
【0057】
ここで、第2実施形態におけるフィルタ部材60の固定及び解除方法については、第1実施形態の方法と同じであるため、
図7E及び
図7Fに固定解除状態を図示するが、説明は省略する。
【0058】
最後に、第3実施形態の係合部340について説明する。上記第2実施形態の係合部240では、係止爪245が蓋体20の上下方向に弾性変形する(撓む)ことで、固定状態を解除するように形成されていたが、係合部340では、係止爪345が上下方向に直交する左右方向に弾性変形する(撓む)ことで、固定状態を解除するように形成されている点が異なっている。なお、係合部340は、係合部40を具体化したものであるため、係合部340の各構成についての説明を省略することがある。
【0059】
図8Aは第3実施形態の係合部340近傍を示す斜視図であり、
図8Bは第3実施形態の係合部340近傍を示す断面図である。
図8Cは第3実施形態のドア本体321を示す斜視図であり、
図8Dは第3実施形態のドアカバー322を示す断面図である。
図8Eは第3実施形態の係合部340における第2姿勢のフィルタ部材60を示す斜視図である。
図8Fは第3実施形態の係合部340における第2姿勢のフィルタ部材60を示す断面図である。なお、
図8A,B,D,E,Fの斜視図及び断面図は、
図1AのA-A線に相当する位置で切断したものである。
【0060】
図8A及び
図8Bに示すように、係合部340は、挿入孔341と、シール部342と、平面部343と、傾斜面部344、係止爪345と、を含んでおり、これらは係止爪345を除いてドア本体321に形成されている(
図8C参照)。
【0061】
一方、係止爪345は、
図8D(
図8A参照)に示すように、ドアカバー322の上下方向に対して略直交する左右方向の挿入孔341の両側(
図8Aでは左側の係止爪345のみ図示)に形成されている。なお、ドアカバー322には、係合部340にアクセスするための開口部323も形成されている。
【0062】
2つの係止爪345は、開口部323の内周面から内側に突出して形成されたリブ部から円弧状の係止片としてそれぞれ形成されており、先端が挿入孔341の中心(フィルタ部材60が第1姿勢にある場合の軸心位置)よりも若干上方に位置している。これら2つの係止爪345が外側に弾性変形することで、係止爪345同士の間が広がるようになっている。
【0063】
また、2つの係止爪345が形成されたリブ部には、係止爪345に係止されたフィルタ部材60がフィルタ部材60の軸方向(蓋部材の表裏方向)へ抜け落ちるのを防止する抜け止め爪347が形成されている。この抜け止め爪347は係止爪345とともにフィルタ部材60を蓋体20に係止するため、抜け止め爪347は係合部340(又は係止爪345)の一部ということもできる。
【0064】
つづいて、第3実施形態の係合部340におけるフィルタ部材60の固定及び解除方法について説明する。
フィルタ部材60を装着する場合、
図8E及び
図8Fに示すように、フィルタ部材60を第2姿勢で挿入孔341に挿入した状態では、フィルタ部材60は、2つの係止爪345に接触した状態であり、抜け止め爪347には接触していない。
【0065】
その後、フィルタ部材60を第2姿勢から第1姿勢に回動していくと、ボス部623は2つの係止爪345間を押し広げながら、ボス部623が係止爪345を乗り越えて、左右両側の係止爪345に係止されるとともに、下方の抜け止め爪347に係止され、フィルタ部材60が第1姿勢で係合部340に係止固定される。
【0066】
一方、フィルタ部材60を取り外す場合、第1実施形態のときと同様に、ボス部623における抜け止め爪347と反対側(
図8Fにおける上側)をドア本体321に向けて押圧することで、係止爪345及び抜け止め爪347による係止固定を解除し、フィルタ部材60は第2姿勢となることができる。
【0067】
以上説明したとおり、本発明に係る各実施形態の基板収納容器1は、一方面に開口を有し、基板を収納可能な容器本体10と、容器本体10の開口を閉塞する蓋体20と、気体をろ過可能なフィルタ部材60と、フィルタ部材60を蓋体20に着脱可能に係合させる係合部40(140,240,340)と、を備える基板収納容器1において、係合部40(140,240,340)は、フィルタ部材60を挿入する挿入孔41(141,241,341)と、挿入孔41(141,241,341)の内部でフィルタ部材60に接触し、基板収納容器1の内外の連通を遮蔽するシール部42(142,242,342)と、フィルタ部材60を係止する係止爪45(145,245,345)と、を含み、フィルタ部材60は、係止爪45(145,245,345)に係止される第1姿勢と、係止爪45(145,245,345)に係止されない第2姿勢との間を挿入孔41(141,241,341)の内部で傾動可能なものである。
【0068】
これにより、フィルタ部材60の姿勢を変更することで、フィルタ部材60を係止固定又は係止の解除を簡単に行うことができる。そのため、専用治具を用いる必要がなく、作業者は、両手はもちろん片手でもフィルタ部材60の着脱作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0069】
各実施形態のフィルタ部材60は、挿入孔41(141,241,341)に挿入されて第2姿勢となり、第2姿勢から第1姿勢に傾動されて係止爪45(145,245)に係止される。また、第1及び第2実施形態のフィルタ部材60は、挿入孔41(141,241)に挿入されて第2姿勢を経ることなく第1姿勢となり、係止爪45(145,245)に係止される。これにより、作業者の作業性に応じて、いずれかの係止方法を選択設定することができる。
【0070】
各実施形態の係合部40(140,240,340)は、係止爪45(145,245,345)との間でフィルタ部材60を第1姿勢で係止する平面部43(143,243,343)と、平面部43(143,243,343)に連なり、平面部43(143,243,343)に対して傾斜する傾斜面部44(144,244,344)と、を挿入孔41(141,241,341)の周縁に含んでいる、これにより、フィルタ部材60は、傾斜面部44(144,244,344)に向かって押圧されることで、第2姿勢をとることができる。
【0071】
各実施形態の挿入孔41(141,241,341)は、シール部42(142,242,342)が最も狭く、シール部42から両端に向かって広がる形状である。これにより、フィルタ部材60は、挿入孔41(141,241,341)内で姿勢を変更することができる。
【0072】
各実施形態のシール部42(142,242,342)又はフィルタ部材60の少なくとも一方は、シール部材を別部材として有しており、シール部材は、弾性部材である。これにより、基板収納容器1のシール性及びフィルタ部材60と挿入孔41(141,241,341)の密着性を向上させることができ、基板収納容器1の内外間の空気の供給又は排出はフィルタ部材60を介することになる。また、シール部42が劣化した場合に、簡単に交換することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0074】
(変形例)
上記各実施形態では、係合部40(140,240,340)は蓋体20に形成されていたが、容器本体10の底面などに形成されてもよい。なお、係合部240,340を容器本体10に形成する場合は、ドアカバー222,322のような別部材を容器本体10の外側に設けて、当該別部材に係止爪245,345を形成するとよい。
【0075】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、係止爪145,245が下方に形成され、傾斜面部144,244が上方に形成されていたが、例えば互いに逆側に形成するように、挿入孔141,241を中心にある角度回転させたようなものであってもよく、さらに、互いに左右方向に形成されてもよい。同様に、第3実施形態では、係止爪345が左右に形成され、傾斜面部344が上方に形成され、抜け止め爪347が下方に形成されていたが、例えば上下を逆に形成してもよく、挿入孔341を中心にある角度回転させたようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 基板収納容器
10 容器本体
20 蓋体、21,221,321 ドア本体、22,222,322 ドアカバー、23,223,323 開口部
40 係合部、41 挿入孔、42 シール部、43 平面部、44 傾斜面部、45 係止爪
140 係合部、141 挿入孔、142 シール部、143 平面部、144 傾斜面部、145 係止爪、146 ガイド部
240 係合部、241 挿入孔、242 シール部、243 平面部、244 傾斜面部、245 係止爪、246 ガイド部
340 係合部、341 挿入孔、342 シール部、343 平面部、344 傾斜面部、345 係止爪、347 抜け止め爪
50 ガスケット
60 フィルタ部材、61 フィルタ、62 フィルタ保持部材、621 第1筒部、621a 第1開口、622 第2筒部、622a 第2開口、623 ボス部、624 リブ