(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】サイホン排水システムの検査方法、治具
(51)【国際特許分類】
G01M 3/04 20060101AFI20240208BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20240208BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01M3/04 Z
E03C1/12 C
E03C1/122 Z
(21)【出願番号】P 2020203771
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏
(72)【発明者】
【氏名】香川 太平
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-281088(JP,A)
【文献】特開2012-021800(JP,A)
【文献】特開2020-063565(JP,A)
【文献】特表2015-535934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0083168(US,A1)
【文献】登録実用新案第3099815(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
E03C 1/12- 1/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延在し、水回り器具からの排水を流す横引き管と、前記横引き管の下流側に配置され、略鉛直方向に延在する竪管と、前記横引き管と前記竪管とを接続する接続部と、を備えるサイホン排水システムの検査方法であって、
前記接続部に形成された管内清掃用の清掃口から前記横引き管の管内に検査流体を注入させて前記横引き管の流体漏れを検査する横引き管検査工程を含むサイホン排水システムの検査方法。
【請求項2】
前記竪管の流体漏れを検査する竪管検査工程をさらに含む、請求項1に記載のサイホン排水システムの検査方法。
【請求項3】
前記竪管検査工程は、前記横引き管が未接続の状態で前記竪管を検査する、請求項2に記載のサイホン排水システムの検査方法。
【請求項4】
前記清掃口に検査用の治具を配置する配置工程を含む、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のサイホン排水システムの検査方法。
【請求項5】
前記治具は前記清掃口よりも排水方向上流側又は排水方向下流側の管路との隙間を封止する、請求項4に記載のサイホン排水システムの検査方法。
【請求項6】
前記検査流体は空気である、請求項1~5の何れか1項に記載のサイホン排水システムの検査方法。
【請求項7】
横方向に延在し、水回り器具からの排水を流す横引き管と、前記横引き管の下流側に配置され、略鉛直方向に延在する竪管と、を接続しており、管内清掃用の清掃口が形成されている接続部の前記清掃口に配置される治具であって、
前記清掃口よりも排水方向上流側又は排水方向下流側の管路との隙間を封止する封止部と、
前記封止部から前記清掃口に向けて突出している突出部と、
前記突出部及び前記封止部の内側に形成され、前記突出部の前記封止部とは反対側の端部から前記封止部の排水方向上流側の端部にかけて連通しており前記横引き管に向けて開口している流路と、
を有する治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイホン排水システムの検査方法及び治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横方向に延在し水廻り器具からの排水を流す横引き管と、横引き管の下流側に配置され、略鉛直方向に延在する竪管と、横引き管と竪管とを連結する継手と、を備えるサイホン排水システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のサイホン排水システムを施工される建物がテナント用途であり、テナントが未決の状態で該建物が施工される場合、サイホン排水システムの横引き管は未施工とされ、テナントが決まってから継手の上流側に施工される。一方、サイホン排水システムの竪管は、テナントが未決の状態でも施工される。サイホン排水システムの施工の際には、管路の流体漏れの有無を検査する必要がある。竪管はテナントが未決の状態でも施工されるため、竪管はその施工の際に検査流体を注入されて流体漏れの有無を検査される。その後、テナントが決まってから横引き管が施工されると、横引き管はその施工の際に流体漏れの有無を検査される。このように、テナント用途の建物に施工されるサイホン排水システムは、施工の際に流体漏れを2度検査する必要がある。この検査において検査流体が竪管から注入される場合、検査流体が竪管を経由して横引き管に注入されるため、検査流体が横引き管に到達するまでに竪管が検査流体で充満される時間が必要となる。
【0005】
本発明は、上記現状を鑑みて成されたものであり、テナント用途の建物におけるサイホン排水システムの横引き管の検査の効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載のサイホン排水システムの検査方法は、横方向に延在し、水回り器具からの排水を流す横引き管と、前記横引き管の下流側に配置され、略鉛直方向に延在する竪管と、前記横引き管と前記竪管とを接続する接続部と、を備えるサイホン排水システムの検査方法であって、前記接続部に形成された管内清掃用の清掃口から前記横引き管の管内に検査流体を注入させて前記横引き管の流体漏れを検査する横引き管検査工程を含む。
【0007】
第1態様に記載のサイホン排水システムの検査方法によれば、テナント用途の建物において、テナントが決まった後で流体漏れを検査する際に、横引き管のみを検査することができるので、サイホン排水システムの検査の効率を向上させることができる。
【0008】
第2態様に記載のサイホン排水システムの検査方法は、第1態様に記載のサイホン排水システムの検査方法において、前記竪管の流体漏れを検査する竪管検査工程をさらに含む。
【0009】
第2態様に記載のサイホン排水システムの検査方法によれば、テナント用途の建物において、テナントが決まる前に竪管を検査できるので、サイホン排水システムの検査の効率を向上させることができる。
【0010】
第3態様に記載のサイホン排水システムの検査方法は、第2態様に記載のサイホン排水システムの検査方法において、前記竪管検査工程は、前記横引き管が未接続の状態で前記竪管を検査する。
【0011】
第3態様に記載のサイホン排水システムの検査方法によれば、テナント用途の建物において、テナントが決まる前に竪管を検査し、テナントが決まった後に横引き管のみを検査することができるので、サイホン排水システムの検査の効率を向上させることができる。
【0012】
第4態様に記載のサイホン排水システムの検査方法は、第1態様~第3態様の何れか一態様に記載のサイホン排水システムの検査方法において、前記清掃口に検査用の治具を配置する配置工程を含む。
【0013】
第4態様に記載のサイホン排水システムの検査方法によれば、テナント用途の建物において、横引き管を施工する作業者が清掃口を用いて横引き管の流体漏れを検査することができるので、サイホン排水システムの検査の効率を向上させることができる。
【0014】
第5態様に記載のサイホン排水システムの検査方法は、第4態様に記載のサイホン排水システムの検査方法において、前記治具は前記清掃口よりも排水方向上流側又は排水方向下流側の管路との隙間を封止する。
【0015】
第5態様に記載のサイホン排水システムの検査方法によれば、治具によって検査流体が竪管に流れることが抑制されるため、サイホン排水システムの検査の効率を向上させることができる。
【0016】
第6態様に記載のサイホン排水システムの検査方法は、第1態様~第5態様の何れか一態様に記載のサイホン排水システムの検査方法において、前記検査流体は、空気である。
【0017】
第6態様に記載のサイホン排水システムの検査方法によれば、検査流体が液体である場合と比して、検査における管内の空気抜きが不要となるので、サイホン排水システムの検査の効率を向上させることができる。
【0018】
第7態様に記載の治具は、横方向に延在し、水回り器具からの排水を流す横引き管と、前記横引き管の下流側に配置され、略鉛直方向に延在する竪管と、を接続しており、管内清掃用の清掃口が形成されている接続部の前記清掃口に配置される治具であって、前記清掃口よりも排水方向上流側又は排水方向下流側の管路との隙間を封止する封止部と、前記封止部から前記清掃口に向けて突出している突出部と、前記突出部及び前記封止部の内側に形成され、前記突出部の前記封止部とは反対側の端部から前記封止部の排水方向上流側の端部にかけて連通しており前記横引き管に向けて開口している流路と、を有する。
【0019】
第7態様に記載の治具によれば、横引き管に向けて開口している流路を有する構成において、清掃口よりも排水方向上流側又は排水方向下流側の管路との隙間が封止されていない構成と比して、流路から横引き管に流入された流体が竪管に流れることが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明に係るサイホン排水システムの検査方法によれば、テナント用途の建物におけるサイホン排水システムの横引き管の検査の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るサイホン排水システムの全体構造を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る接続部を示す一部を断面とした斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る接続部を示す一部を断面とした分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る接続部を上方から見た平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る排水管及び竪管を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る接続部に横引き管が取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る検査用の治具の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る検査用の治具の断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る検査用の治具を挿入された接続部の正面断面図である。
【
図10】本発明に係る検査用の治具の変形例の斜視図である。
【
図11】本発明に係る検査用の治具の変形例の断面図である。
【
図12】本発明に係る検査用の治具の変形例及び該治具を挿入された接続部の変形例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図12にしたがって、本発明の実施形態に係るサイホン排水システム20の検査方法について説明する。
【0023】
(サイホン排水システムの概略)
サイホン排水システム20は、
図1に示されるように、複数階で構成された建物10に設けられているものであり、サイホン力を利用して建物10の各階層に設けられた水回り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0024】
建物10は、テナント用途の建物であり、床スラブ14及び仕切壁16で仕切られた、テナント用の複数の専有区10aを有している。また、建物10は、排水を下方へ流す排水管12を備える。排水管12は、建物10の上下方向(鉛直方向)に延在しており、建物10の各階層の床スラブ14を貫通している。排水管12は、夫々の専有区10aの仕切壁16よりも外側、例えばメーターボックス18の中に配置されている。排水管12の中間部には複数の合流継手40が設けられており、複数の合流継手40を介して複数階からの排水が排水管12に流入する。
【0025】
複数の専有区10aには、夫々に水廻り器具11が設けられている。水回り器具11は、一例としてキッチンのシンクであり、水回り器具11の排水方向下流側に接続されたディスポーザー11aと、ディスポーザー11aの排水方向下流側に接続された排水トラップ11bと、を備える。また、水回り器具11は、排水トラップ11bの排水方向下流側に接続されたL字状の配管部材26を備える。配管部材26は、排水トラップ11bに接続されて鉛直方向に延在している鉛直部26aと、床スラブ14の上に配置されて水平方向に延在している水平部26bと、鉛直部26aと水平部26bとを繋ぐ屈曲部26cと、を有する。屈曲部26cは、サイホン排水システム20の横引き管28(詳細は後述)に継手30を介して接続されている。
【0026】
(サイホン排水システム20)
サイホン排水システム20は、横引き管28と、竪管36と、接続部50と、を備えている。横引き管28は、床スラブ14の上に配置されて水平方向に延在している筒状の部材である。横引き管28は、一方の端部が継手30を介して水廻り器具11の屈曲部26cに接続されており、他方の端部がメーターボックス18内に配置されている竪管36に継手32及び接続部50を介して接続されている。すなわち、横引き管28は、仕切壁16を貫通して専有区10a及びメーターボックス18に亘って配置されている。竪管36は、上下方向に延在している筒状の部材であり、メーターボックス18内の床スラブ14を上下方向に貫通するように配置されている。竪管36は、上方の端部が横引き管28の継手30とは反対側の端部に接続部50を介して接続されており、下方の端部が排水管12に合流継手40を介して接続されている。
【0027】
(接続部50)
接続部50は、
図2及び
図3に示されるように、本体部52と、清掃口54と、蓋部56と、を含んで構成されている。本体部52は、略L字状に形成された筒状の部材である。接続部50は、横引き管28の軸方向に沿って延在している水平部52aと、竪管36の軸方向に沿って下方に延在している鉛直部52bと、水平部52aと鉛直部52bとを繋ぐ屈曲部52cと、を有する。水平部52aの内径及び鉛直部52bの内径は、互いに一様である。
【0028】
また、水平部52aの屈曲部52cとは反対側の端部には第1接続部60が形成されている。また、鉛直部52bの屈曲部52cとは反対側の端部には第2接続部62が形成されている。
【0029】
第1接続部60は、本体部52よりも大径の筒状に形成されており、内側に横引き管28と接続されている継手32を挿入することで接続部50と横引き管28とを接続している。第2接続部62は、本体部52よりも大径の筒状に形成されており、内側に竪管36の上方の端部を挿入することで接続部50と竪管36とを接続している。このようにして、接続部50は、横引き管28と竪管36とを接続している。
【0030】
(清掃口54)
清掃口54は、屈曲部52cにおける、水平部52aを挟んで鉛直部52bとは反対側の外壁64に形成され、該部位より上方に突出するように延在している略円筒状の部位である。清掃口54の内径は、水平部52aの内径及び鉛直部52bの内径よりも大径である。また、清掃口54の上方の端部は、開口端54aである。
【0031】
清掃口54の底部である外壁64には、清掃口54と屈曲部52cとを接続する開口66が形成されている。開口66は、平面視で長尺な略矩形状に形成されており、長手方向が横引き管28の軸方向に一致している。また、開口66は、平面視で本体部52の水平部52a及び鉛直部52bと重なる位置に形成されている。具体的には、
図4に示されるように、開口66は、平面視で水平部52a及び鉛直部52bの内径より一回り大きく形成されている。これにより、清掃口54は、開口66を通して水平部52a及び鉛直部52bの内部を視認可能とさせている。また、清掃口54は、洗浄ノズル等の清掃器具(図示省略)を開口66から水平部52aを介して横引き管28の内側に挿入させて横引き管28の内部を洗浄可能とさせている。また、清掃口54は、洗浄ノズル等の清掃器具(図示省略)を開口66から鉛直部52bを介して竪管36の内側に挿入させて竪管36の内部を洗浄可能とさせている。
【0032】
清掃口54の開口端54a側の外周部には、雄ねじ部72が形成されている。また、雄ねじ部72よりも下方の清掃口54の外周部には、Oリング76を装着可能である環状溝74が形成されている。
【0033】
蓋部56は、清掃口54の開口端54aを覆うように設けられた有底円筒状の部材である。蓋部56の内周部には、清掃口54の雄ねじ部72に対応している雌ねじ部56aが形成されている。これにより、蓋部56は清掃口54に脱着可能である。また、蓋部56は、清掃口54に取り付けられているとき、清掃口54の環状溝74に装着されたOリング76と接触する接触部56bを有する。これにより、蓋部56は、清掃口54に取り付けられて水廻り器具11が使用されているとき、清掃口54と蓋部56との隙間を封止する。
【0034】
なお、サイホン排水システム20は、接続部50が横引き管28と接続されていない状態において、第1接続部60の本体部52とは反対側の端部に脱着可能に取り付けられ、該端部を閉鎖することで封止する蓋等の閉鎖部材(図示省略)を備える。
【0035】
(サイホン排水システム20の流体漏れを検査する方法)
次に、本実施形態のサイホン排水システム20の流体漏れを検査する検査方法の手順を以下に説明する。
【0036】
(1)先ず、建物10の施工時において、
図5に示されるように、排水管12が施工された後、合流継手40を介して排水管12と接続されるサイホン排水システム20の竪管36が施工され、竪管36の上方の端部に接続部50が取り付けられる。
【0037】
(2)次に、接続部50の清掃口54及び第1接続部60の夫々に蓋部56及び蓋等の閉鎖部材(図示省略)を取り付けることで、接続部50を封止する。この状態で、排水管12及び竪管36にエアポンプ等の注入手段(図示省略)を用いて空気を注入させることで、排水管12及び竪管36の流体漏れを検査する(第1検査工程)。換言すると、第1検査工程は、横引き管28が未接続の状態で竪管36を検査する。第1検査工程は、竪管検査工程の一例である。また、空気は検査流体の一例である。
【0038】
(3)第1検査工程の結果が良好であり、且つ専有区10aのテナントが決まっている場合は、
図6に示されるように、接続部50の第1接続部60から蓋等の閉鎖部材(図示省略)が取り外され、横引き管28が取り付けられる。その後、横引き管28の排水方向上流側の端部を、蓋等の閉鎖部材(図示省略)で閉鎖することで封止する。
【0039】
(4)次に、接続部50の清掃口54から蓋部56を取り外して開口66を開放させる。その後、
図9に示されるように、接続部50の清掃口54に検査用の治具80を配置する(配置工程)。
【0040】
治具80は、
図9に示されるように、接続部50の清掃口54から水平部52aの管内に挿入される本体部81と、清掃口54内に配置され、清掃口54に配置された本体部81を位置決めする位置決め具90と、を含んで構成されている。また、治具80は、本体部81及び位置決め具90が配置された清掃口54を覆う蓋部92を含んで構成されている。
【0041】
本体部81は、
図7及び
図8に示されるように、略L字状の形状を有する筒状の部材である。本体部81は、横引き管28の軸方向に沿って延在している水平部82と、水平部82の排水方向下流側の端部から竪管36の軸方向に沿って上方に延在している鉛直部84と、を含んで構成されている。
【0042】
水平部82は、外周部が接続部50の水平部52aの内周部と嵌合可能な有底円筒状の部材である。水平部82の排水方向上流側の端部の外周部には、Oリング86が装着可能な環状溝82aが形成されている。また、水平部82の排水方向下流側の端部における上方の外周部には、該外周部から水平部82の内周部にかけて貫通している孔82bが形成されている。また、孔82bの内周壁には、雌ねじ部82cが形成されている。
【0043】
鉛直部84は、水平部82の孔82bに取り付けられており、上方に延在している略円筒状の部材である。鉛直部84の下方の端部の外周部には、水平部82の雌ねじ部82cに対応している雄ねじ部84aが形成されている。また、鉛直部84の上方の端部には、エアポンプ等の注入手段(図示省略)と接続可能な略円筒状のカップリング84bが取り付けられている。鉛直部84は、雄ねじ部84aを水平部82の雌ねじ部82cに締結することで、孔82bを封止した状態で水平部82に取り付けられる。なお、鉛直部84と水平部82との締結においては、締結部である雄ねじ部84a又は雌ねじ部82cにシールテープ等の封止材(図示省略)を用いることが好ましい。また、鉛直部84は、下方の端部が水平部82の内周部から突出しないように水平部82に取り付けられる。このように、本体部81は、カップリング84bの上方の端部から鉛直部84を介して水平部82の環状溝82a側の端部にかけて連通しており、内側を空気が流入可能な流路88を有している。
【0044】
本体部81は、
図9に示されるように、水平部82の環状溝82aにOリング86が装着されている状態で、水平部82の環状溝82a側の端部から接続部50の水平部52aの内側に挿入される。このとき、Oリング86が装着されている水平部82は、水平部82と接続部50の水平部52aとの隙間を封止する。換言すると、治具80の水平部82は、清掃口54よりも排水方向上流側の管路との隙間を封止する。水平部82は、封止部の一例である。また、このとき、本体部81は、鉛直部84の一部が開口66から突出するように挿入される。換言すると、鉛直部84は、水平部82から清掃口54に向けて突出している。鉛直部84は、突出部の一例である。また、このとき、本体部81の流路88は、水平部82側の部分が横引き管28に向けて開口している。
【0045】
位置決め具90は、その外周部が清掃口54の内周部と嵌合する、肉厚の略円盤状の部材である。位置決め具90の中央部には、本体部81の鉛直部84の外周部が嵌合する貫通孔90aが形成されている。位置決め具90は、外周部が清掃口54の内周部と嵌合して且つ貫通孔90aが鉛直部84の外周部と嵌合することで、本体部81の鉛直方向まわりの位置を位置決めする。
【0046】
蓋部92は、本体部81が配置された清掃口54の開口端54aを覆うように設けられた有底円筒状の部材である。蓋部92の内周部には、清掃口54の雄ねじ部72に対応している雌ねじ部92aが形成されている。これにより、蓋部92は清掃口54に脱着可能である。また、蓋部92は、清掃口54に取り付けられているとき、清掃口54の環状溝74に装着されたOリング76と接触する接触部92bを有する。これにより、蓋部92は、清掃口54に取り付けられて水廻り器具11が使用されているとき、清掃口54と蓋部92との隙間を封止する。また、蓋部92は、端面の中央部に清掃口54から突出している鉛直部84の外周部が嵌合する貫通孔92cが形成されている。これにより、治具80は、本体部81の鉛直部84及びカップリング84bが清掃口54から突出して且つ清掃口54を封止した状態で清掃口54に配置される。なお、貫通孔92cまわりには、オイルシール等の封止部材が設けられていることが好ましい。
【0047】
(5)接続部50の清掃口54に治具80が配置された後、カップリング84bにエアポンプ等の注入手段(図示省略)を接続し、治具80を介して横引き管28の管内に空気を注入させる。換言すると、接続部50に形成された清掃口54から横引き管28の管内に空気を注入させる。このように、接続部50の清掃口54から横引き管28に空気を注入させることで、横引き管28の流体漏れを検査する(第2検査工程)。第2検査工程は、横引き管検査工程の一例である。
【0048】
(6)第2検査工程の結果が良好であった場合、接続部50の清掃口54から治具80を取り外し、清掃口54に蓋部56を取り付けて清掃口54を封止する。その後、
図1に示されるように、専有区10aに水廻り器具11が施工され、横引き管28と接続される。
【0049】
以上が、本実施形態のサイホン排水システム20の検査方法の手順である。
【0050】
(作用及び効果)
次に、本実施形態のサイホン排水システム20の検査方法の作用及び効果について説明する。なお、この説明において、実施形態に対する比較形態を記載するときに、サイホン排水システム20と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0051】
サイホン排水システム20が施工される建物10は、複数の専有区10aを有するテナント用途の建物である。テナント用途の建物である建物10は、専有区10aが未決の状態でも施工される。専有区10aが未決である場合、サイホン排水システム20の横引き管28は未施工とされ、専有区10aが決まってから施工される。一方、サイホン排水システム20の竪管36は、テナントが未決の状態でも排水管12と共に施工される。サイホン排水システム20の施工の際には、管路の流体漏れの有無を検査する必要がある。竪管36はテナントが未決の状態でも施工されるため、竪管36はその施工の際に検査流体を注入されて流体漏れの有無を検査される。その後、テナントが決まってから横引き管28が施工されると、横引き管28はその施工の際に流体漏れの有無を検査される。このように、テナント用途の建物10に施工されるサイホン排水システム20は、施工の際に流体漏れを2度検査する必要がある。この検査において検査流体が竪管36から注入される場合、検査流体が竪管36を経由して横引き管28に注入されるため、検査流体が横引き管28に到達するまでに竪管36が検査流体で充満される時間が必要となる。
【0052】
一方、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、接続部50に形成された清掃口54から横引き管28の管内に空気を注入させて横引き管28の流体漏れを検査する第2検査工程を含んでいる。よって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、テナント用途の建物10において、テナントが決まった後で流体漏れを検査する際に、横引き管28のみを検査することができるので、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0053】
また、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、竪管36の流体漏れを検査する第1検査工程を含んでいる。よって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、テナント用途の建物10において、テナントが決まる前に竪管36を検査できるので、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0054】
また、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、第1検査工程において、横引き管28が未接続の状態で竪管36を検査する。したがって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、テナント用途の建物10において、テナントが決まる前に竪管36を検査し、テナントが決まった後に横引き管28のみを検査することができる。よって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、テナント用途の建物10において、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0055】
また、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、清掃口54に検査用の治具80を配置する配置工程を含んでいる。したがって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、横引き管28の施工する作業者が、横引き管28と同じ階層に配置されている接続部50の清掃口54に治具80を配置して横引き管28の流体漏れを検査することができる。よって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、テナント用途の建物10において、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0056】
また、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、治具80が清掃口54よりも上流側の管路との隙間を封止する。よって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、治具80によって検査流体が竪管36に流れることが抑制されるため、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0057】
また、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、検査流体が空気である。よって、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、検査流体が液体である場合と比して、検査における管内の空気抜きが不要となるので、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0058】
また、実施形態の治具80は、清掃口54よりも排水方向上流側の管路との隙間を封止する水平部82と、横引き管28に向けて開口している流路88と、を有する。よって、実施形態の治具80は、第1検査工程において、清掃口54よりも排水方向上流側又は下流側の管路との隙間が封止されていない構成と比して、流路88から横引き管に流入(注入)された空気が竪管36に流れることが抑制される。すなわち、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、治具80を用いることで、サイホン排水システム20の検査の効率を向上させることができる。
【0059】
以上のとおり、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0060】
例えば、実施形態のサイホン排水システム20は、接続部50が略L字状に形成されている本体部52を含んで構成されているものとした。しかしながら、本発明に係る接続部は、清掃口54が形成されているのであれば、本体部52の形状が略L字状のものに限定されない。例えば、本発明に係る接続部150は、
図12に示されるように、本体部152が横引き管28の軸方向に沿って延在している筒状の部材であり、本体部152の外周部の上方から清掃口154が突出して形成されている構成を有するものであってもよい。この接続部150を備えるサイホン排水システム120において、竪管36は、L字状に屈曲している継手140を介して接続部150と接続されている。
【0061】
また、実施形態のサイホン排水システム20の検査方法は、検査流体として空気を用いるものとした。しかしながら、本発明に係るサイホン排水システム20の検査方法は、検査流体として水等の液体を用いてもよい。
【0062】
また、実施形態の治具80は、略L字状の本体部81を含んで構成されており、接続部50よりも排水方向上流側の管路との隙間を封止するものとした。しかしながら、本発明に係る治具の本体部81は、略L字状のものに限定されず、接続部150の形状に合わせて接続部50よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止する構成を有するものであってもよい。例えば、本発明に係る治具の本体部81は、実施形態の接続部50において、竪管36の軸方向に沿って延在しており、接続部50の鉛直部52b、すなわち接続部50よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止する構成を有するものであってもよい。また、本発明に係る治具は、上記した接続部150において、接続部150よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止する構成を有するものであってもよい。本発明に係る治具の他の実施形態であり、接続部150よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止する構成を有する治具180を用いたサイホン排水システム120の検査方法を以下に説明する。なお、この説明において、実施形態のサイホン排水システム20と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0063】
サイホン排水システム120は、
図12に示されるように、実施形態のサイホン排水システム20の接続部50に代わって、上記した清掃口154が形成されている接続部150を備える。またサイホン排水システム120は、流体漏れの検査における配置工程において、清掃口154に検査用の治具180を配置する。
【0064】
治具180は、
図12に示されるように、実施形態の治具80の本体部81に代わって、接続部150の清掃口154から本体部152の排水方向下流側の管内に挿入される本体部181を含んで構成されている。
【0065】
本体部181は、
図10及び
図11に示されるように、実施形態の本体部81の水平部82に代わって、水平部182を含んで構成されている。水平部182は、接続部150の本体部152の軸方向に沿って延びており、排水方向下流側の端部の外周部が接続部150の本体部152の排水方向下流側の内周部と嵌合可能な円柱状の部材である。水平部182の排水方向下流側の外周部には、Oリング86が装着可能な環状溝182aが形成されている。また、水平部182の排水方向上流側の端部における上方の外周部には、鉛直部84を取り付け可能な孔182bが形成されている。また、水平部182の排水方向上流側の端面には、孔182bにまで連通している孔182dが形成されている。このように、本体部181は、カップリング84bの上方の端部の開口から鉛直部84を介して水平部182の孔182dにかけて連通しており、空気が流入可能な流路188を有している。
【0066】
本体部181は、
図12に示されるように、水平部182の環状溝182aにOリング86が装着されている状態で、水平部182の環状溝182a側の端部から接続部150の排水方向下流側の管内に挿入される。このとき、Oリング86が装着されている水平部182は、水平部182と接続部150の本体部152との隙間を封止する。換言すると、治具180は、清掃口154よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止する。水平部182は、封止部の一例である。また、このとき、水平部182の孔182dは、排水方向上流側に向いている。換言すると、流路188は、横引き管28に向けて開口している。以上の点以外については、治具180は、治具80と同様の構成とされている。治具180は、清掃口154よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止することで、検査流体が竪管36に流れることを抑制する。治具180は、清掃口154よりも排水方向下流側の管路との隙間を封止した状態でエアポンプ等の注入手段(図示省略)と接続され、注入手段(図示省略)から注入された空気を孔182dから横引き管28に注入させる。これにより、注入手段(図示省略)から注入された空気が竪管36に流れることが抑制される。
【符号の説明】
【0067】
11…水廻り器具、20…サイホン排水システム、28…横引き管、36…竪管、50…接続部、54…清掃口、80…治具、82…水平部(封止部の一例)、84…鉛直部(突出部の一例)、88…流路