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7432506脂質エンベロープウイルスを不活化するための環境適合性の界面活性剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】脂質エンベロープウイルスを不活化するための環境適合性の界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/178 20060101AFI20240208BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240208BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240208BHJP
   C07C 41/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C07C43/178 C CSP
C12N7/00
A61K38/36
A61K39/395 V
A61K38/43
A61K39/00 H
A61K35/76
A61K38/18
A61K39/395 N
C07C41/16
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020523790
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018079721
(87)【国際公開番号】W WO2019086463
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】62/578,648
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/687,023
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファルセット, ジャン-バティスト
(72)【発明者】
【氏名】キンデルマン, ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】チッレ, ビイエルン
(72)【発明者】
【氏名】クライル, トーマス エル.
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094240(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0186094(US,A1)
【文献】CONLEY L. et al.,Evaluation of Eco-Friendly Zwitterionic Detergents for Enveloped Virus Inactivation,BIOTECHNOLOGY and BIOENGINEERING,2016年11月09日,Vol.114, No.4,p.813-820
【文献】TILLER G. E. et al.,Hydrogenation of Triton X-100 Eliminates Its Fluorescence and Ultraviolet Light Absorption while Preserving Its Detergent Properties,ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,1984年,Vol.141,p.262-266
【文献】LI Y. et al.,Microcalorimetric Study on Micellization of Nonionic Surfactants with a Benzene Ring or Adamantane in Their Hydrophobic Chains,J. Phys. Chem. B,2005年,Vol.109,p.16070-16074
【文献】CANTILLO D. et al.,A Scalable Procedure for Light-Induced Benzylic Brominations in Continuous Flow,The Journal of Organic Chemistry,2013年11月21日,Vol.79,p.223-229
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/178
C12N 7/00
A61K 38/36
A61K 39/395
A61K 38/43
A61K 39/00
A61K 35/76
A61K 38/18
C07C 41/16
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物:
【化48】

である化合物であって、式中、mは1に等しく、zは、以下の群:
z=1~5
から選択される整数である、化合物。
【請求項2】
前記化合物が以下の化合物
【化49】

であり、式中、nは、4~16の間の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための方法(ヒトに対する医療行為を除く)であって、
a)界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製するステップと、
b)前記混合物をインキュベートして、前記ウイルスを不活化するステップと
を含み、
前記界面活性剤が、請求項1~2のいずれかに記載の化合物である、方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、環境適合性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)が、溶媒を前記液体に添加することをさらに含み、ステップa)において、前記ウイルスの不活化のための溶媒/界面活性剤の混合物が、前記界面活性剤および前記溶媒を前記液体に添加することによって調製される、請求項3~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、有機溶媒である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記液体が、バイオ医薬生成物および/またはバイオ医薬品薬物を含む、請求項3~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記バイオ医薬品薬物が、
(a)血液因子、免疫グロブリン、置換え酵素、ワクチン、遺伝子治療ベクター、増殖因子または増殖因子受容体;
(b)治療用タンパク質;
(c)第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子、第VII因子もしくは第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子キニノゲン(HMWK)、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリンコファクターII、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI1)、またはプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)である血液因子;ならびに/あるいは
(d)第VIII因子
である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)ステップa)の前またはステップa)とステップb)の間に、前記方法は、前記液体または混合物をデプスフィルターで濾過するステップをさらに含む;
(b)ステップb)において、前記混合物が、少なくとも1時間インキュベートされる、ならびに/あるいは
(c)ステップb)において、前記混合物が、0℃~10℃の間の温度でインキュベートされるか、または前記混合物が、16℃~25℃の間の温度でインキュベートされる、請求項3~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップb)後に、
c)前記バイオ医薬品薬物を精製するステップ
をさらに含み;
(i)前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を前記界面活性剤から分離することを含む;ならびに/あるいは
(ii)前記バイオ医薬品薬物を前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を少なくとも1つのクロマトグラフィー精製によって精製することを含む、請求項7~8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
バイオ医薬品薬物を含む医薬製剤を調製するための方法であって、請求項7~8および10のいずれか一項に記載の方法を含み、前記バイオ医薬品薬物が、前記請求項7~8および10のいずれか一項に記載される通りであり、前記方法は、請求項7~8および10のいずれか一項に記載の方法の後に、前記バイオ医薬品薬物を含む前記医薬製剤を調製するステップをさらに含む、方法。
【請求項12】
脂質エンベロープを有するウイルスの不活化のための方法における界面活性剤の使用であって、前記界面活性剤は、請求項1~2のいずれかに記載の化合物である、使用(ヒトに対する医療行為を除く)
【請求項13】
前記ウイルスの前記不活化のための前記方法が、溶媒/界面活性剤による処理を使用する方法であり、前記溶媒/界面活性剤による処理が、請求項1~2のいずれかに記載の化合物である前記界面活性剤の使用を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ウイルス不活化が、請求項7~8のいずれか一項に記載のバイオ医薬品薬物を含む液体中でのウイルスの不活化である、請求項12~13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
界面活性剤を含む組成物であって、前記界面活性剤は、請求項1~2のいずれかに記載の化合物である、組成物。
【請求項16】
請求項6に記載の有機溶媒をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
以下の一般式(VIII):
【化58】

の化合物を合成するための方法であって、
式中、
Rは、
【化58-1】

であり、
zは1~5であり、
mは、1に等しく、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
A)以下の一般式(IX)のフェノール[式中、Rは、先に記載される通りである]を、
【化59】

以下の一般式(X)のアルコール[式中、Rおよびmは、先に記載される通りである]に変換するステップと、
【化60】

(B)一般式(X)の前記アルコールを、先に記載される通りの一般式(VIII)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含み、
式(VIII)の前記化合物は、以下の化合物:
【化48】

であり、式中、mは1に等しく、zは、以下の群:
z=1~5
から選択される整数である、方法。
【請求項18】
以下の一般式(VIII)の化合物:
【化61】

を合成するための方法であって、
式中、
Rは、
【化61-1】

であり、
zは1~5であり、
mは、1に等しく、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
(1)トルエンを反応させて、以下の一般式(XI)の置換トルエン[式中、Rは、先に記載される通りである]を得るステップと、
【化62】

(2)一般式(XI)の前記置換トルエンを、以下の一般式(XII)の化合物[式中、Rおよびmは、先に記載される通りであり、Xは、ヒドロキシ基、臭素原子、ヨウ素原子および塩素原子を含む群から選択される]に変換するステップと、
【化63】

(3)一般式(XII)の前記化合物を、先に記載される通りの一般式(VIII)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含み、
式(VIII)の前記化合物は、以下の化合物:
【化48】

であり、式中、mは1に等しく、zは、以下の群:
z=1~5
から選択される整数である、方法。
【請求項19】
以下の一般式(VIIIa)の化合物:
【化64】

を合成するための方法であって、
式中、
Rは、
【化64-1】

であり、
zは1~5であり、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
(I)ベンジルアルコールを以下の一般式(XIII)の化合物[式中、Rは、先に記載される通りである]に変換するステップと、
【化65】

(II)一般式(XIII)の前記化合物を、先に記載される通りの一般式(VIIIa)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含み、
式(VIIIa)の前記化合物は、以下の化合物:
【化48】

であり、式中、mは1に等しく、zは、以下の群:
z=1~5
から選択される整数である、方法。
【請求項20】
式(VIII)の前記化合物が、以下の化合物:
【化67】

であり、式中、nは、4~16の間の整数である、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
(i)ステップ(2)の前記変換するステップが、AIBN(アゾビス(イソブチロニトリル)をラジカル開始剤として使用するラジカル反応である;ならびに/あるいは
(ii)Xが、臭素原子である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
(a)ステップ(2)の前記変換するステップが、N-ブロモスクシンイミド(NBS)を試薬として使用する;
(b)ステップ(3)の前記変換するステップが、TBME(メチル-tert-ブチルエーテル)を溶媒として使用する;
(c)ステップ(3)の前記変換するステップが、少なくとも2時間行われる;
(d)ステップ(3)の前記変換するステップが、5時間を超えずに行われる;ならびに/あるいは
(e)ステップ(3)の前記変換するステップが、3時間行われる、請求項18および21のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、環境適合性の界面活性剤を使用して脂質エンベロープウイルスを不活化するための方法、および環境適合性の界面活性剤を使用してバイオ医薬品薬物を調製するための方法に関する。本発明はまた、環境適合性の界面活性剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
バイオ医薬品薬物の使用は、個体の健康に影響を及ぼす多くの疾患、障害、または状態を処置する方法として、重要性が増し続けている。バイオ医薬品薬物は、典型的には、生物学的流体からの精製によって、または哺乳動物細胞株などの宿主細胞における組換え生成を介して得られる。しかし、このようなバイオ医薬品の生成プロセスでは、ウイルス汚染が著しい問題を引き起こす。ウイルス汚染は、精製を行おうとしている生物学的流体によって、または動物由来の生成物の使用を介して、バイオ医薬品の生成プロセスに導入されるおそれがある。細菌性汚染とは対照的に、ウイルス汚染は、検出困難である。しかし、ウイルス汚染が気付かれず、感染性ウイルスがバイオ医薬品薬物の製剤に組み込まれると、患者にとって著しい健康上の危険性が引き起こされる。したがって、ウイルス不活化は、バイオ医薬品の生成において最も重要である。
【0003】
多くのバイオ医薬品の生成プロセスにおいて、ウイルス不活化のために界面活性剤が使用される。しばしば、これらの界面活性剤は、いわゆる溶媒/界面活性剤(S/D)処理において溶媒と組み合わされる。界面活性剤であるTriton X-100は、市販品のS/D処理のために長年使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年の生態学的研究では、Triton X-100およびその分解生成物が、水生生物の内分泌撹乱物質として潜在的に作用するおそれがあり、環境への影響の観点から懸念が生じていることが示唆されている(2012年12月12日採用の"ECHA Support document for identification of 4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol, ethoxylated as substances of very high concern because, due to their degradation to a substance of very high concern (4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol) with endocrine disrupting properties, they cause probable serious effects to the environment which give rise to an equivalent level of concern to those of CMRs and PBTs/vPvBs"を参照されたい)。結果として、ウイルスを不活化するための代替の環境適合性の界面活性剤が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の説明
本発明は、下記の実施形態を提供することによって、当技術分野における前述の必要を満たし、前述の問題を解決する。
【0006】
Triton-X100の毒性活性は、海洋生物のある特定の内分泌受容体にドッキングする能力を有するフェノール部分から生じる。これと一致して、内分泌撹乱物質の活性のコンピューター予測に確実に基づくと、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤のいずれについても、内分泌撹乱物質として活性であるという証拠は見出されていない。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、還元Triton X-100、還元Triton N-101およびBrij C10などの環境適合性の非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤が、S/D処理において脂質エンベロープウイルスを効率的に不活化することを見出した。本発明者らはまた、S/Dおよび単一界面活性剤による処理において脂質エンベロープウイルスを効率的に不活化する環境適合性の非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を合成した。したがって、本発明者らは、環境適合性の非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤が、脂質エンベロープウイルスを不活化するための本発明の方法において使用できることを見出した。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
以下の一般式(VIII):
【化47】
の化合物であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
mは、1~4の整数を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表す、化合物。
(項目2)
Aが、4~16個のオキシエチレン単位、好ましくは9または10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目1に記載の化合物。
(項目3)
mが、1に等しい、項目1または2に記載の化合物。
(項目4)
Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目1~3のいずれかに記載の化合物。
(項目5)
Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2~4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目1~4のいずれかに記載の化合物。
(項目6)
Rが、4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目1~5のいずれかに記載の化合物。
(項目7)
Rが、2,4,4-トリメチル-ペンタ-2-イル基を表す、項目1~6のいずれかに記載の化合物。
(項目8)
式(VIII)の化合物が以下の化合物:
【化48】
であり、式中、mおよびzは、以下の群:
m=1~4
z=1~5
から独立に選択される整数である、項目1に記載の化合物。
(項目9)
mが、1に等しい、項目8に記載の化合物。
(項目10)
式(VIII)の化合物が以下の化合物
【化49】
であり、式中、nは、4~16の間の整数であり、好ましくはnは、9または10に等しい、項目1に記載の化合物。
(項目11)
以下の構造式
【化50】
を有する29-[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサノナコサン-1-オールが除外されることを条件とする、項目1~10のいずれかに記載の化合物。
(項目12)
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための方法であって、
a)界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製するステップと、
b)前記混合物をインキュベートして、前記ウイルスを不活化するステップと
を含み、
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンエーテルであり、前記界面活性剤が、非フェノール性界面活性剤である、方法。
(項目13)
前記界面活性剤が、環境適合性である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、項目12または13に記載の方法。
(項目15)
前記界面活性剤が、項目1~11のいずれかに記載の化合物である、項目12~14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、項目12~14のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルのシクロアルキル部分が、アルキル置換シクロアルキル部分である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記アルキル置換シクロアルキル部分が、分岐アルキル置換シクロアルキル部分である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンシクロヘキシルエーテルである、項目17~19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルが、複素環式ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルではない、項目17~20のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記界面活性剤が、式(I)による以下の構造:
【化51】
を有し、式中、x、yおよびzは、以下の群:
x=0~5
y=0~5
z=0~20
から独立に選択される整数である、項目12~14および16~21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記界面活性剤が、式(II)による以下の構造:
【化52】
を有する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記界面活性剤が、式(III)による以下の構造:
【化53】
を有し、式中、nは、4~16の間の整数である、項目23に記載の方法。
(項目25)
nが、9または10に等しい、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記界面活性剤が、式(IV)による以下の構造:
【化54】
を有する、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記界面活性剤が、式(V)による以下の構造:
【化55】
を有し、式中、nは、4~16の間の整数である、項目26に記載の方法。
(項目28)
nが、9または10に等しい、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記界面活性剤が、直鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、項目12~14および16のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記界面活性剤が、直鎖ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記界面活性剤が、式(VI)による以下の構造:
【化56】
を有し、式中、xは、15に等しい、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記界面活性剤が、式(VII)による以下の構造:
【化57】
を有し、式中、xは、15に等しく、nは、5~15の間の整数である、項目31に記載の方法。
(項目33)
nが、10に等しい、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記界面活性剤が、前記ウイルスの不活化に適している、項目12~33のいずれかに記載の方法。
(項目35)
ステップa)において、有機溶媒が前記液体に添加されない、項目12~34のいずれかに記載の方法。
(項目36)
ステップa)が、溶媒を前記液体に添加することをさらに含み、ステップa)において、前記ウイルスの不活化のための溶媒/界面活性剤の混合物が、前記界面活性剤および前記溶媒を前記液体に添加することによって調製される、項目12~34のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記溶媒が、有機溶媒である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記溶媒が、トリ-n-ブチルホスフェートである、項目36または37に記載の方法。
(項目39)
ステップa)において、前記界面活性剤以外のさらなる界面活性剤が添加されない、項目12~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記方法において、前記界面活性剤以外のさらなる界面活性剤が添加されない、項目12~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
ステップa)が、さらなる界面活性剤を前記液体に添加することをさらに含む、項目12~38のいずれかに記載の方法。
(項目42)
前記さらなる界面活性剤が、ポリソルベート80である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記液体が、バイオ医薬生成物を含む、項目12~42のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記液体が、バイオ医薬品薬物を含む、項目12~43のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記バイオ医薬品薬物が、ウイルスワクチンではない、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記バイオ医薬品薬物が、血液因子、免疫グロブリン、例えばモノクローナル抗体、置換え酵素、ワクチン、遺伝子治療ベクター、増殖因子または増殖因子受容体である、項目44または45のいずれかに記載の方法。
(項目47)
前記バイオ医薬品薬物が、治療用タンパク質である、項目44~46のいずれかに記載の方法。
(項目48)
前記バイオ医薬品薬物が、血液因子であり、前記血液因子が、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子、第VII因子もしくは第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子キニノゲン(HMWK)、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリンコファクターII、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI1)、またはプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)である、項目44~47のいずれかに記載の方法。
(項目49)
前記バイオ医薬品薬物が、第VIII因子、好ましくは組換えヒト第VIII因子である、項目44~48のいずれかに記載の方法。
(項目50)
前記バイオ医薬品薬物が、免疫グロブリンであり、前記免疫グロブリンが、ヒト血漿由来の免疫グロブリンまたはモノクローナル抗体である、項目44~47のいずれかに記載の方法。
(項目51)
ステップa)の前またはステップa)とステップb)の間に、前記液体または混合物をデプスフィルターで濾過するステップをさらに含む、項目12~50のいずれかに記載の方法。
(項目52)
ステップb)において、前記混合物が、少なくとも1時間インキュベートされる、項目12~51のいずれかに記載の方法。
(項目53)
ステップb)において、前記混合物が、0℃~10℃の間の温度でインキュベートされるか、または前記混合物が、16℃~25℃の間の温度でインキュベートされる、項目12~52のいずれかに記載の方法。
(項目54)
ステップb)後に、
c)前記バイオ医薬品薬物を精製するステップ
をさらに含む、項目44~53のいずれかに記載の方法。
(項目55)
前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を前記界面活性剤から分離することを含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を前記さらなる界面活性剤から分離することを含む、項目54または55に記載の方法。
(項目57)
前記バイオ医薬品薬物を前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を少なくとも1つのクロマトグラフィー精製によって精製することを含む、項目54~56のいずれかに記載の方法。
(項目58)
前記少なくとも1つのクロマトグラフィー精製が、アニオン交換クロマトグラフィーおよび/またはカチオン交換クロマトグラフィーによるものである、項目54~57のいずれかに記載の方法。
(項目59)
バイオ医薬品薬物を調製するための方法であって、項目44~58のいずれか一項に記載の方法を含み、前記バイオ医薬品薬物が、前記項目44~58のいずれか一項に記載される通りである、方法。
(項目60)
項目44~58のいずれか一項に記載の前記方法の後、前記バイオ医薬品薬物を含む医薬製剤を調製するステップをさらに含む、項目59に記載の方法。
(項目61)
脂質エンベロープを有するウイルスの不活化のための方法における、項目12~34のいずれか一項に記載の界面活性剤の使用。
(項目62)
前記使用において、前記界面活性剤以外のさらなる界面活性剤が使用されない、項目61に記載の使用。
(項目63)
前記使用において、有機溶媒が使用されない、項目61または62に記載の使用。
(項目64)
前記ウイルスの前記不活化のための前記方法が、溶媒/界面活性剤による処理を使用する方法であり、前記溶媒/界面活性剤による処理が、項目12~34のいずれか一項に記載の前記界面活性剤の使用を含む、項目61に記載の使用。
(項目65)
前記ウイルス不活化が、項目44~50のいずれか一項に記載のバイオ医薬品薬物を含む液体中でのウイルスの不活化である、項目61~64のいずれかに記載の使用。
(項目66)
項目12~34のいずれか一項に記載の界面活性剤を含む組成物。
(項目67)
項目12~34のいずれか一項に記載の界面活性剤。
(項目68)
項目44~50のいずれか一項に記載のバイオ医薬品薬物をさらに含む、項目66に記載の組成物。
(項目69)
いかなる有機溶媒も含まない、項目66または68に記載の組成物。
(項目70)
項目37および38のいずれか一項に記載の有機溶媒をさらに含む、項目66または68に記載の組成物。
(項目71)
前記界面活性剤以外のいかなるさらなる界面活性剤も含まない、項目66または68~70のいずれかに記載の組成物。
(項目72)
項目41および42のいずれか一項に記載のさらなる界面活性剤をさらに含む、項目66または68~70のいずれかに記載の組成物。
(項目73)
ウイルス不活化のためのキットであって、項目67に記載の界面活性剤または前記項目のいずれかに記載の組成物を含み、項目57~58のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー精製のためのクロマトグラフィー樹脂をさらに含む、キット。
(項目74)
デプスフィルターをさらに含む、項目73に記載のキット。
(項目75)
以下の一般式(VIII):
【化58】
の化合物を合成するための方法であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
mは、1~4の整数を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
A)以下の一般式(IX)のフェノール[式中、Rは、先に記載される通りである]を、
【化59】
以下の一般式(X)のアルコール[式中、Rおよびmは、先に記載される通りである]に変換するステップと、
【化60】
(B)一般式(X)の前記アルコールを、先に記載される通りの一般式(VIII)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含む、方法。
(項目76)
以下の一般式(VIII)の化合物:
【化61】
を合成するための方法であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
mは、1~4の整数を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
(1)トルエンを反応させて、以下の一般式(XI)の置換トルエン[式中、Rは、先に記載される通りである]を得るステップと、
【化62】
(2)一般式(XI)の前記置換トルエンを、以下の一般式(XII)の化合物[式中、Rおよびmは、先に記載される通りであり、Xは、ヒドロキシ基、臭素原子、ヨウ素原子および塩素原子を含む群から選択される]に変換するステップと、
【化63】
(3)一般式(XII)の前記化合物を、先に記載される通りの一般式(VIII)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含む、方法。
(項目77)
以下の一般式(VIIIa)の化合物:
【化64】
を合成するための方法であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
(I)ベンジルアルコールを以下の一般式(XIII)の化合物[式中、Rは、先に記載される通りである]に変換するステップと、
【化65】
(II)一般式(XIII)の前記化合物を、先に記載される通りの一般式(VIIIa)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含む、方法。
(項目78)
Aが、4~16個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目75~77のいずれかに記載の方法。
(項目79)
Aが、8~10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目78に記載の方法。
(項目80)
Aが、9または10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目78に記載の方法。
(項目81)
mが、1に等しい、項目75、76および78~80のいずれかに記載の方法。
(項目82)
Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目75~81のいずれかに記載の方法。
(項目83)
Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2~4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目75~82のいずれかに記載の方法。
(項目84)
Rが、4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目75~83のいずれかに記載の方法。
(項目85)
Rが、2,4,4-トリメチル-ペンタ-2-イル基を表す、項目75~84のいずれかに記載の方法。
(項目86)
式(VIII)の前記化合物が、以下の化合物:
【化66】
であり、式中、mおよびzは、以下の群:
m=1~4
z=1~5
から独立に選択される整数である、項目75~77のいずれかに記載の方法。
(項目87)
mが、1に等しい、項目86に記載の方法。
(項目88)
式(VIII)の前記化合物が、以下の化合物:
【化67】
であり、式中、nは、4~16の間の整数であり、好ましくはnは、9または10に等しい、項目75~77のいずれかに記載の方法。
(項目89)
ステップ(2)の前記変換するステップが、AIBN(アゾビス(イソブチロニトリル)をラジカル開始剤として使用するラジカル反応である、項目76および78~88のいずれかに記載の方法。
(項目90)
Xが、臭素原子である、項目76および78~89のいずれかに記載の方法。
(項目91)
ステップ(2)の前記変換するステップが、N-ブロモスクシンイミド(NBS)を試薬として使用する、項目76および78~90のいずれかに記載の方法。
(項目92)
ステップ(3)の前記変換するステップが、TBME(メチル-tert-ブチルエーテル)を溶媒として使用する、項目76および78~91のいずれかに記載の方法。
(項目93)
ステップ(3)の前記変換するステップが、少なくとも2時間、好ましくは周囲温度で行われる、項目76および78~92のいずれかに記載の方法。
(項目94)
ステップ(3)の前記変換するステップが、5時間を超えずに、好ましくは周囲温度で行われる、項目76および78~93のいずれかに記載の方法。
(項目95)
ステップ(3)の前記変換するステップが、3時間、好ましくは周囲温度で行われる、項目76および78~94のいずれかに記載の方法。
(項目96)
少なくとも100g、少なくとも1kg、少なくとも10kg、少なくとも100kgまたは少なくとも1000kgの前記式(VIII)の前記化合物を得る規模で行われる、項目75~95のいずれかに記載の方法。
【0008】
したがって、本発明は、下記の好ましい実施形態を提供することによって、環境適合性の非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤、ならびに脂質エンベロープウイルスを不活化するための改善された手段を提供する。
項目1. 以下の一般式(VIII):
【化1】
の化合物であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
mは、1~4の整数を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表す、化合物。
項目2. Aが、4~16個のオキシエチレン単位、好ましくは9または10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目1に記載の化合物。
項目3. mが、1に等しい、項目1または2に記載の化合物。
項目4. Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目1~3のいずれかに記載の化合物。
項目5. Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2~4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目1~4のいずれかに記載の化合物。
項目6. Rが、4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目1~5のいずれかに記載の化合物。
項目7. Rが、2,4,4-トリメチル-ペンタ-2-イル基を表す、項目1~6のいずれかに記載の化合物。
項目8. 式(VIII)の化合物が以下の化合物:
【化2】
であり、
式中、mおよびzは、以下の群:
m=1~4
z=1~5
から独立に選択される整数である、項目1に記載の化合物。
項目9. mが、1に等しい、項目8に記載の化合物。
項目10. 式(VIII)の化合物が以下の化合物:
【化3】
であり、式中、nは、4~16の間の整数であり、好ましくはnは、9または10に等しい、項目1に記載の化合物。
項目11. 以下の構造式
【化4】
を有する29-[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサノナコサン-1-オールが除外されることを条件とする、項目1~10のいずれかに記載の化合物。
項目12. 脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための方法であって、
a)界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製するステップと、
b)前記混合物をインキュベートして、前記ウイルスを不活化するステップと
を含み、
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンエーテルであり、前記界面活性剤が、非フェノール性界面活性剤である、方法。
項目13. 前記界面活性剤が、環境適合性である、項目12に記載の方法。
項目14. 前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、項目12または13に記載の方法。
項目15. 前記界面活性剤が、項目1~11のいずれかに記載の化合物である、項目12~14のいずれかに記載の方法。
項目16. 前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、項目12~14のいずれかに記載の方法。
項目17. 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルである、項目16に記載の方法。
項目18. 前記ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルのシクロアルキル部分が、アルキル置換シクロアルキル部分である、項目17に記載の方法。
項目19. 前記アルキル置換シクロアルキル部分が、分岐アルキル置換シクロアルキル部分である、項目18に記載の方法。
項目20. 前記ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルが、ポリオキシエチレンシクロヘキシルエーテルである、項目17~19のいずれかに記載の方法。
項目21. 前記ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルが、複素環式ポリオキシエチレンシクロアルキルエーテルではない、項目17~20のいずれかに記載の方法。
項目22. 前記界面活性剤が、式(I)による以下の構造:
【化5】
を有し、式中、x、yおよびzは、以下の群:
x=0~5
y=0~5
z=0~20
から独立に選択される整数である、項目12~14および16~21のいずれかに記載の方法。
項目23. 前記界面活性剤が、式(II)による以下の構造:
【化6】
を有する、項目22に記載の方法。
項目24. 前記界面活性剤が、式(III)による以下の構造:
【化7】
を有し、式中、nは、4~16の間の整数である、項目23に記載の方法。
項目25. nが、9または10に等しい、項目24に記載の方法。
項目26. 前記界面活性剤が、式(IV)による以下の構造:
【化8】
を有する、項目22に記載の方法。
項目27. 前記界面活性剤が、式(V)による以下の構造:
【化9】
を有し、式中、nは、4~16の間の整数である、項目26に記載の方法。
項目28. nが、9または10に等しい、項目27に記載の方法。
項目29. 前記界面活性剤が、直鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、項目12~14および16のいずれかに記載の方法。
項目30. 前記界面活性剤が、直鎖ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルである、項目29に記載の方法。
項目31. 前記界面活性剤が、式(VI)による以下の構造:
【化10】
を有し、式中、xは、15に等しい、項目30に記載の方法。
項目32. 前記界面活性剤が、式(VII)による以下の構造:
【化11】
を有し、式中、xは、15に等しく、nは、5~15の間の整数である、項目31に記載の方法。
項目33. nが、10に等しい、項目32に記載の方法。
項目34. 前記界面活性剤が、前記ウイルスの不活化に適している、項目12~33のいずれかに記載の方法。
項目35. ステップa)において、有機溶媒が前記液体に添加されない、項目12~34のいずれかに記載の方法。
項目36. ステップa)が、溶媒を前記液体に添加することをさらに含み、ステップa)において、前記ウイルスの不活化のための溶媒/界面活性剤の混合物が、前記界面活性剤および前記溶媒を前記液体に添加することによって調製される、項目12~34のいずれかに記載の方法。
項目37. 前記溶媒が、有機溶媒である、項目36に記載の方法。
項目38. 前記溶媒が、トリ-n-ブチルホスフェートである、項目36または37に記載の方法。
項目39. ステップa)において、前記界面活性剤以外のさらなる界面活性剤が添加されない、項目12~38のいずれか一項に記載の方法。
項目40. 前記方法において、前記界面活性剤以外のさらなる界面活性剤が添加されない、項目12~38のいずれか一項に記載の方法。
項目41. ステップa)が、さらなる界面活性剤を前記液体に添加することをさらに含む、項目12~38のいずれかに記載の方法。
項目42. 前記さらなる界面活性剤が、ポリソルベート80である、項目41に記載の方法。
項目43. 前記液体が、バイオ医薬生成物を含む、項目12~42のいずれかに記載の方法。
項目44. 前記液体が、バイオ医薬品薬物を含む、項目12~43のいずれかに記載の方法。
項目45. 前記バイオ医薬品薬物が、ウイルスワクチンではない、項目44に記載の方法。
項目46. 前記バイオ医薬品薬物が、血液因子、免疫グロブリン、例えばモノクローナル抗体、置換え酵素、ワクチン、遺伝子治療ベクター、増殖因子または増殖因子受容体である、項目44または45のいずれかに記載の方法。
項目47. 前記バイオ医薬品薬物が、治療用タンパク質である、項目44~46のいずれかに記載の方法。
項目48. 前記バイオ医薬品薬物が、血液因子であり、前記血液因子が、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子、第VII因子もしくは第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子キニノゲン(HMWK)、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリンコファクターII、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI1)、またはプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)である、項目44~47のいずれかに記載の方法。
項目49. 前記バイオ医薬品薬物が、第VIII因子、好ましくは組換えヒト第VIII因子である、項目44~48のいずれかに記載の方法。
項目50. 前記バイオ医薬品薬物が、免疫グロブリンであり、前記免疫グロブリンが、ヒト血漿由来の免疫グロブリンまたはモノクローナル抗体である、項目44~47のいずれかに記載の方法。
項目51. ステップa)の前またはステップa)とステップb)の間に、前記液体または混合物をデプスフィルターで濾過するステップをさらに含む、項目12~50のいずれかに記載の方法。
項目52. ステップb)において、前記混合物が、少なくとも1時間インキュベートされる、項目12~51のいずれかに記載の方法。
項目53. ステップb)において、前記混合物が、0℃~10℃の間の温度でインキュベートされるか、または前記混合物が、16℃~25℃の間の温度でインキュベートされる、項目12~52のいずれかに記載の方法。
項目54. ステップb)後に、
c)前記バイオ医薬品薬物を精製するステップ
をさらに含む、項目44~53のいずれかに記載の方法。
項目55. 前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を前記界面活性剤から分離することを含む、項目54に記載の方法。
項目56. 前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を前記さらなる界面活性剤から分離することを含む、項目54または55に記載の方法。
項目57. 前記バイオ医薬品薬物を前記精製するステップが、前記バイオ医薬品薬物を少なくとも1つのクロマトグラフィー精製によって精製することを含む、項目54~56のいずれかに記載の方法。
項目58. 前記少なくとも1つのクロマトグラフィー精製が、アニオン交換クロマトグラフィーおよび/またはカチオン交換クロマトグラフィーによるものである、項目54~57のいずれかに記載の方法。
項目59. バイオ医薬品薬物を調製するための方法であって、項目44~58のいずれか一項に記載の方法を含み、前記バイオ医薬品薬物が、前記項目44~58のいずれか一項に記載される通りである、方法。
項目60. 項目44~58のいずれか一項に記載の前記方法の後、前記バイオ医薬品薬物を含む医薬製剤を調製するステップをさらに含む、項目59に記載の方法。
項目61. 脂質エンベロープを有するウイルスの不活化のための方法における、項目12~34のいずれか一項に記載の界面活性剤の使用。
項目62. 前記使用において、前記界面活性剤以外のさらなる界面活性剤が使用されない、項目61に記載の使用。
項目63. 前記使用において、有機溶媒が使用されない、項目61または62に記載の使用。
項目64. 前記ウイルスの前記不活化のための前記方法が、溶媒/界面活性剤による処理を使用する方法であり、前記溶媒/界面活性剤による処理が、項目12~34のいずれか一項に記載の前記界面活性剤の使用を含む、項目61に記載の使用。
項目65. 前記ウイルス不活化が、項目44~50のいずれか一項に記載のバイオ医薬品薬物を含む液体中でのウイルスの不活化である、項目61~64のいずれかに記載の使用。
項目66. 項目12~34のいずれか一項に記載の界面活性剤を含む組成物。
項目67. 項目12~34のいずれか一項に記載の界面活性剤。
項目68. 項目44~50のいずれか一項に記載のバイオ医薬品薬物をさらに含む、項目66に記載の組成物。
項目69. いかなる有機溶媒も含まない、項目66または68に記載の組成物。
項目70. 項目37および38のいずれか一項に記載の有機溶媒をさらに含む、項目66または68に記載の組成物。
項目71. 前記界面活性剤以外のいかなるさらなる界面活性剤も含まない、項目66または68~70のいずれかに記載の組成物。
項目72. 項目41および42のいずれか一項に記載のさらなる界面活性剤をさらに含む、項目66または68~70のいずれかに記載の組成物。
項目73. ウイルス不活化のためのキットであって、項目67に記載の界面活性剤または前記項目のいずれかに記載の組成物を含み、項目57~58のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー精製のためのクロマトグラフィー樹脂をさらに含む、キット。
項目74. デプスフィルターをさらに含む、項目73に記載のキット。
項目75. 以下の一般式(VIII):
【化12】
の化合物を合成するための方法であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
mは、1~4の整数を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
A)以下の一般式(IX)のフェノール[式中、Rは、先に記載される通りである]を、
【化13】
以下の一般式(X)のアルコール[式中、Rおよびmは、先に記載される通りである]に変換するステップと、
【化14】
(B)一般式(X)の前記アルコールを、先に記載される通りの一般式(VIII)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含む、方法。
項目76. 以下の一般式(VIII):
【化15】
の化合物を合成するための方法であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
mは、1~4の整数を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
(1)トルエンを反応させて、以下の一般式(XI)の置換トルエン[式中、Rは、先に記載される通りである]を得るステップと、
【化16】
(2)一般式(XI)の前記置換トルエンを、以下の一般式(XII)の化合物[式中、Rおよびmは、先に記載される通りであり、Xは、ヒドロキシ基、臭素原子、ヨウ素原子および塩素原子を含む群から選択される]に変換するステップと、
【化17】
(3)一般式(XII)の前記化合物を、先に記載される通りの一般式(VIII)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含む、方法。
項目77. 以下の一般式(VIIIa)の化合物:
【化18】
を合成するための方法であって、
式中、
Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、
Aは、ポリオキシエチレン残基を表し、
前記方法は、
(I)ベンジルアルコールを以下の一般式(XIII)の化合物[式中、Rは、先に記載される通りである]に変換するステップと、
【化19】
(II)一般式(XIII)の前記化合物を、先に記載される通りの一般式(VIIIa)のポリオキシエチレンエーテルに変換するステップと
を含む、方法。
項目78. Aが、4~16個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目75~77のいずれかに記載の方法。
項目79. Aが、8~10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目78に記載の方法。
項目80. Aが、9または10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、項目78に記載の方法。
項目81. mが、1に等しい、項目75、76および78~80のいずれかに記載の方法。
項目82. Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目75~81のいずれかに記載の方法。
項目83. Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2~4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目75~82のいずれかに記載の方法。
項目84. Rが、4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての4個のメチル基を有する炭化水素基を表す、項目75~83のいずれかに記載の方法。
項目85. Rが、2,4,4-トリメチル-ペンタ-2-イル基を表す、項目75~84のいずれかに記載の方法。
項目86. 式(VIII)の前記化合物が、以下の化合物:
【化20】
であり、式中、mおよびzは、以下の群:
m=1~4
z=1~5
から独立に選択される整数である、項目75~77のいずれかに記載の方法。
項目87. mが、1に等しい、項目86に記載の方法。
項目88. 式(VIII)の前記化合物が、以下の化合物である、項目75~77のいずれかに記載の方法
【化21】
[式中、nは、4~16の間の整数であり、好ましくはnは、9または10に等しい]。
項目89. ステップ(2)の前記変換するステップが、AIBN(アゾビス(イソブチロニトリル)をラジカル開始剤として使用するラジカル反応である、項目76および78~88のいずれかに記載の方法。
項目90. Xが、臭素原子である、項目76および78~89のいずれかに記載の方法。
項目91. ステップ(2)の前記変換するステップが、N-ブロモスクシンイミド(NBS)を試薬として使用する、項目76および78~90のいずれかに記載の方法。
項目92. ステップ(3)の前記変換するステップが、TBME(メチル-tert-ブチルエーテル)を溶媒として使用する、項目76および78~91のいずれかに記載の方法。
項目93. ステップ(3)の前記変換するステップが、少なくとも2時間、好ましくは周囲温度で行われる、項目76および78~92のいずれかに記載の方法。
項目94. ステップ(3)の前記変換するステップが、5時間を超えずに、好ましくは周囲温度で行われる、項目76および78~93のいずれかに記載の方法。
項目95. ステップ(3)の前記変換するステップが、3時間、好ましくは周囲温度で行われる、項目76および78~94のいずれかに記載の方法。
項目96. 少なくとも100g、少なくとも1kg、少なくとも10kg、少なくとも100kgまたは少なくとも1000kgの前記式(VIII)の前記化合物を得る規模で行われる、項目75~95のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、17℃±1℃におけるIVIG含有液のS/D処理における低濃度の還元Triton X-100または還元Triton N-101のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.04%~0.06%の還元Triton X-100または還元Triton N-101、0.01%~0.02%のポリソルベート80、0.01%~0.02%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、HIVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF:virus reduction factor)によって示す。還元Triton X-100(「TX-100還元型」)または還元Triton N-101(「TN-101還元型」)を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0010】
図2図2は、17℃±1℃におけるIVIG含有液のS/D処理における低濃度の還元Triton X-100または還元Triton N-101のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.04%~0.06%の還元Triton X-100または還元Triton N-101、0.01%~0.02%のポリソルベート80、0.01%~0.02%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、PRVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。還元Triton X-100(「TX-100還元型」)または還元Triton N-101(「TN-101還元型」)を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0011】
図3図3は、17℃±1℃におけるIVIG含有液のS/D処理における低濃度のBrij C10のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.04%~0.06%のBrij C10、0.01%~0.02%のポリソルベート80、0.01%~0.02%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、HIVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。Brij C10を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0012】
図4図4は、17℃±1℃におけるIVIG含有液のS/D処理における低濃度のBrij C10のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.04%~0.06%のBrij C10、0.01%~0.02%のポリソルベート80、0.01%~0.02%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、PRVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。Brij C10を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0013】
図5図5は、17℃±1℃におけるIVIG含有液のS/D処理における低濃度のBrij C10のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.04%~0.06%のBrij C10、0.01%~0.02%のポリソルベート80、0.01%~0.02%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。Brij C10を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0014】
図6図6は、1℃±1℃におけるヒト血清アルブミン(HSA)含有液のS/D処理における低濃度のBrij C10のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.08%~0.1%のBrij C10、0.02%~0.03%のポリソルベート80、0.02%~0.03%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、X-MuLVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。Brij C10を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0015】
図7図7は、1℃±1℃におけるHSA含有液のS/D処理における低濃度のBrij C10のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.08%~0.1%のBrij C10、0.02%~0.03%のポリソルベート80、0.02%~0.03%のTnBPを得た(Triton X-100についての既存のデータと比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。Brij C10を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0016】
図8図8は、19℃±1℃におけるHSA含有液のS/D処理における低濃度のBrij C10のウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.08%~0.1%のBrij C10、0.02%~0.03%のポリソルベート80、0.02%~0.03%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、X-MuLVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。Brij C10を使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。
【0017】
図9図9は、17℃±1℃におけるIVIG含有液のS/D処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートのウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.04%~0.06%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、0.01%~0.02%のポリソルベート80、0.01%~0.02%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、PRVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。(A)では、両方の界面活性剤が同一の不活化動態を示すことに留意されたい。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。
【0018】
図10図10は、1℃±1℃におけるヒト血清アルブミン(HSA)含有液のS/D処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートのウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.08%~0.1%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、0.02%~0.03%のポリソルベート80、0.02%~0.03%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、X-MuLVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。
【0019】
図11図11は、19℃±1℃におけるHSA含有液のS/D処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートのウイルス不活化効率を示す。3つの構成成分の混合物を使用して、最終濃度0.08%~0.1%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、0.02%~0.03%のポリソルベート80、0.02%~0.03%のTnBPを得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、X-MuLVを用いる2回の実施(それぞれAおよびB)についてウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを使用するS/D処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用するS/D処理のウイルス不活化と比較した。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。
【0020】
図12図12(A)は、14℃±1℃におけるHSA含有緩衝液の界面活性剤処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100またはBrij C10のウイルス不活化効率を示す。単一界面活性剤による処理を使用して、最終濃度0.09%~0.11%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100またはBrij C10を得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施について平均ウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100(「TX-100還元型」)またはBrij C10を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化と比較した。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートおよび還元Triton X-100は、Triton X-100と同じ不活化動態を有することに留意されたい。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。図12(B)は、14℃±1℃におけるHSA含有緩衝液の界面活性剤処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100のウイルス不活化効率を示す。単一界面活性剤による処理を使用して、最終濃度0.02%~0.04%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施について平均ウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100(「TX-100還元型」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化と比較した。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。
【0021】
図13図13(A)は、17℃±1℃におけるIVIG含有液の界面活性剤処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100のウイルス不活化効率を示す。単一界面活性剤による処理を使用して、最終濃度0.09%~0.11%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施について平均ウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100(「TX-100還元型」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化と比較した。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。図13(B)は、17℃±1℃におけるIVIG含有液の界面活性剤処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100のウイルス不活化効率を示す。単一界面活性剤による処理を使用して、最終濃度0.02%~0.04%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施について平均ウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100(「TX-100還元型」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化と比較した。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。
【0022】
図14図14は、23℃±1℃における第VIII因子含有液の界面活性剤処理における低濃度の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100のウイルス不活化効率を示す。単一界面活性剤による処理を使用して、最終濃度0.09%~0.11%の4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を得た(同濃度のTriton X-100を用いる対照比較)。経時的なウイルス不活化を、BVDVを用いる2回の実施について平均ウイルスクリアランス指数(RF)によって示す。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100(「TX-100還元型」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化を、Triton X-100(「TX-100」)を使用する単一界面活性剤による処理のウイルス不活化と比較した。黒塗り記号は、残りの感染力の値を示し、黒塗りでない記号は、検出限界未満のクリアランス指数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
以下で別段定義されない限り、本発明において使用される用語は、当業者に公知のそれらの一般的な意味に従って理解されよう。
【0024】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的でそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0025】
定義
用語「脂質エンベロープを有するウイルス」、「脂質エンベロープウイルス」および「エンベロープウイルス」は、本明細書において交換可能に使用され、当業者に公知の意味を有する。例えば、脂質エンベロープウイルスは、Herpesviridae、例えば仮性狂犬病ウイルス(PRV)、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルスもしくはエプスタイン-バーウイルス;Hepadnaviridae、例えばB型肝炎ウイルス;Togaviridae、例えばシンドビスウイルス、風疹ウイルスもしくはアルファウイルス;Arenaviridae、例えばリンパ球性(lmphocytic)脈絡髄膜炎ウイルス;Flaviviridae、例えばウエストナイルウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、デングウイルス、C型肝炎ウイルスもしくは黄熱病ウイルス;Orthomyxoviridae、例えばインフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、イサウイルスもしくはソゴトウイルス;Paramyxoviridae、例えばセンダイウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、牛疫ウイルスもしくはイヌジステンパーウイルス;Bunyaviridae、例えばカリフォルニア脳炎ウイルスもしくはハンタウイルス;Rhabdoviridae、例えば水疱性口内炎ウイルスもしくは狂犬病ウイルス;Filoviridae、例えばエボラウイルスもしくはマールブルグウイルス;Coronaviridae、例えばコロナウイルスもしくは重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス;Bornaviridae、例えばボルナ病ウイルス;またはArteriviridae、例えばアルテリウイルスもしくはウマ動脈炎ウイルス;Retroviridae、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ好性ウイルス1(HTLV-1)もしくは異種指向性マウス白血病ウイルス(X-MuLV);Poxviridae、例えばワクシニアウイルスもしくはOrthopoxvirus variolae(痘瘡ウイルス)であり得る。
【0026】
用語「脂質エンベロープを有するウイルスを不活化する」は、本明細書で使用される場合、脂質エンベロープウイルスが細胞に感染する能力を撹乱することを指す。当業者に理解される通り、脂質エンベロープウイルスが細胞に感染する能力、すなわち、脂質エンベロープウイルスの感染力は、典型的に、液体中の感染性ウイルス粒子の数を決定することによってアセスメントされる。したがって、用語「脂質エンベロープを有するウイルスを不活化する」または「脂質エンベロープウイルスを不活化する」は、本明細書で使用される場合、溶液中の感染性ウイルス粒子の数を低減することを指す。
【0027】
本明細書において、用語「Log10低減値」または「LRV」は、用語「ウイルスクリアランス指数」、「クリアランス指数」、「RF」または「R」と交換可能に使用される。一実施形態では、「Log10低減値」または「LRV」は、液体中の感染性ウイルス粒子の低減尺度として使用することができる。本明細書で使用される場合、「Log10低減値」または「LRV」は、ウイルス不活化前の感染性ウイルス粒子の、ウイルス不活化後の感染性ウイルス粒子に対する比の対数(底10)として定義される。LRV値は、所与のタイプのウイルスに特異的である。0を超える任意のLog10低減値(LRV)は、バイオ医薬品の生成方法およびプロセスなどの方法およびプロセスの安全性の改善にとって有益であることが当業者には明らかである。本発明による方法によって達成されるLog10低減値(LRV)は、当業者に公知の通り決定される。例えばLRVは、本発明によるウイルス不活化のための方法に液体を供する前および供した後の、液体中の感染性ウイルス粒子の数を決定することによって決定され得る。
【0028】
当業者は、液体中の感染性ウイルス粒子を測定するための数々の方法を認識されよう。例えば、限定されるものではないが、液体中の感染性ウイルス粒子の濃度は、好ましくは、プラークアッセイまたはTCID50アッセイによって、より好ましくはTCID50アッセイによって測定され得る。「TCID50アッセイ」は、本明細書で使用される場合、組織培養感染用量アッセイを指す。TCID50アッセイは、終点希釈試験であり、ここでTCID50値は、接種細胞培養物の50%に細胞死または病理学的変化を誘導するのに必要なウイルス濃度を表す。
【0029】
用語「サーファクタント(surfactant)」は、本明細書で使用される場合、2種の液体の間または液体と固体の間の表面張力を低減する化合物を指す。サーファクタントは、界面活性剤(detergent)、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および分散剤として作用することができる。
【0030】
本発明と関連して、最初および2番目に言及される溶媒、界面活性剤および/または液体と関連する、「に添加する」、「に添加される」または「に添加された」などの用語は、最初に言及される溶媒、界面活性剤および/または液体が、2番目に言及される溶媒、界面活性剤および/または液体に添加される状況を包含する。しかし、これらの用語は、2番目に言及される溶媒、界面活性剤および/または液体が、最初に言及される溶媒、界面活性剤および/または液体に添加される状況を包含することも意味する。したがって、「に添加する」、「に添加される」または「に添加された」などの用語は、最初に言及される溶媒、界面活性剤および/もしくは液体が、2番目に言及される溶媒、界面活性剤および/もしくは液体に添加されるべきか、またはその逆であるかを特定することを意味しない。
【0031】
当業者に公知の通り、用語「界面活性剤」は、当技術分野で公知のその全般的な意味に従って使用され、特に、脂質膜を透過することができるサーファクタントを含む。例えば、界面活性剤であるTriton X-100およびデオキシコール酸塩は、タンパク質の疎水性セグメントに結合することによって、両親媒性膜タンパク質を可溶化することが示唆されている(Simons et al., 1973を参照されたい)。界面活性剤は、それらの電荷に応じて3つの広範な群に分類される。アニオン性界面活性剤は、アニオン性の、すなわち負電荷の親水性基を含む。例示的なアニオン性界面活性剤は、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウレス硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、セトリミドおよびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドである。カチオン性界面活性剤は、カチオン性の、すなわち正電荷の親水性基を含む。例示的なカチオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウム(trimethlammonium)ブロミド(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)および塩化ベンゼトニウム(BZT)である。用語「非イオン性界面活性剤」は、本明細書で使用される場合、正電荷も負電荷も有していない界面活性剤を指す。例示的な非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステル(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート)、ポリソルベート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(Polyoxyethylen)(20)-ソルビタン-モノオレエート(Tween(登録商標) 80/ポリソルベート80))、ポロキサマー(ポロキサマー407、ポロキサマー188)およびクレモフォールである。本発明による界面活性剤は、好ましい実施形態において特定される通りであり、それには、限定されるものではないが、還元Triton N-101、還元Triton X-100およびBrij C10が含まれる。
【0032】
用語「非フェノール性」は、本明細書で使用される場合、用語「フェノールを含まない」と交換可能に使用される。本発明において使用される場合、非フェノール性界面活性剤は、いかなるフェノール官能基も含有していない界面活性剤を指す。用語「芳香族」は、当業者に公知の意味を有する。芳香族でない界面活性剤は、本発明において使用される場合、いかなる芳香環も含有していない界面活性剤を指す。
【0033】
用語「環境適合性の」は、本明細書で使用される場合、当業者に公知の意味を有する。本発明の好ましい実施形態では、界面活性剤に関する用語「環境適合性の」は、界面活性剤が内分泌撹乱物質として作用しないことを示す。内分泌撹乱物質は、内分泌系の機能を変え、結果的に、無傷生物もしくはその子孫、または(亜)集団の健康に悪影響を引き起こす外因性物質である。当業者は、内分泌撹乱物質を特定する様々な方法を認識されよう。内分泌撹乱物質およびそれらの評価に関するさらなる情報は、例えば、その全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる、2012年12月12日採用の"ECHA Support document for for identification of 4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol, ethoxylated as substances of very high concern because, due to their degradation to a substance of very high concern (4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol) with endocrine disrupting properties, they cause probable serious effects to the environment which give rise to an equivalent level of concern to those of CMRs and PBTs/vPvBs"、またはその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる、世界保健機関の国際化学物質安全性計画によって刊行された冊子"Global Assessment of the Sate-of-the-Science of Endocrine Disruptors"(WHO/PCS/EDC/02.2)に見出すことができる。
【0034】
用語「溶媒」は、本明細書で使用される場合、当業者に公知の意味を有する。本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法において有機溶媒が使用される。特に有用な有機溶媒は、界面活性剤と脂質エンベロープウイルスのリポタンパク質エンベロープとの接触を促進する環境を作り出す。したがって、このような接触を促進する、限定されるものではないが、エーテル、アルコール、ジアルキルホスフェートもしくはトリアルキルホスフェートのようなアルキルホスフェート、またはそれらの任意の組合せを含めた有機溶媒は、本発明の方法において好ましく使用される。
【0035】
本明細書に開示される方法において有用なエーテル溶媒には、式R1-O-R2[式中、R1およびR2は、独立に、酸素原子または硫黄原子を含有することができるC1~C18アルキルまたはC1~C18アルケニル、好ましくはC1~C18アルキルまたはC1~C18アルケニルである]を有する溶媒が含まれる。エーテルの非限定的な例として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、メチル-ブチルエーテル、メチルイソプロピルエーテルおよびメチルイソブチルエーテルが挙げられる。本明細書に開示される方法において有用なアルコール溶媒には、C1~C8アルキル基またはC1~C8アルケニル基を有する溶媒が含まれる。アルコールの非限定的な例として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノールおよびイソペンタノールが挙げられる。本明細書に開示される方法において有用なアルキルホスフェート溶媒には、いずれも酸素原子または硫黄原子を含有することができるC1~C18アルキル基またはC1~C18アルケニル基を有する溶媒が含まれる。アルキルホスフェートの非限定的な例として、ジ-(n-ブチル)ホスフェート、ジ-(t-ブチル)ホスフェート、ジ-(n-ヘキシル)ホスフェート、ジ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ-(n-デシル)ホスフェートまたはエチルジ(n-ブチル)ホスフェートのようなジアルキルホスフェート、およびトリ-(n-ブチル)ホスフェート、トリ-(t-ブチル)ホスフェート、トリ-(n-ヘキシル)ホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェートまたはトリ-(n-デシル)ホスフェートのようなトリアルキルホスフェートが挙げられる。
【0036】
用語「バイオ医薬生成物」は、本明細書で使用される場合、当技術分野で公知であり、その活性物質が、生物学的物質、例えば哺乳動物細胞または微生物によって生成される生物学的物質である、生成物を指す。本明細書で使用される場合、本発明の方法において使用されるバイオ医薬生成物は、最終的に製造された生成物に限定されず、好ましくは製造プロセスの任意の段階の中間生成物も含む。
【0037】
用語「バイオ医薬品薬物」は、本明細書で使用される場合、当業者に公知の意味を有する。バイオ医薬品薬物は、組換えバイオ医薬品薬物および他の供給源由来のバイオ医薬品薬物、例えばヒト血漿から得られたバイオ医薬品薬物の両方を含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「デプスフィルター」は、当技術分野で公知の意味を有する。特に、このようなフィルター(例えば、勾配密度デプスフィルター)は、フィルター材料の厚み内で濾過を達成する。このようなフィルターの一般的なクラスは、複雑な蛇行状迷路の流路を形成するように結合した(またはそうでなければ固定された)繊維の無作為マトリックスを含むものである。これらのフィルターによる粒子の分離は、一般に、繊維マトリックスによる捕捉または繊維マトリックスへの吸着によって生じる。細胞培養ブロスおよび他の原料のバイオ処理のために最も頻繁に使用されているデプスフィルター媒体は、セルロース繊維、DEなどのフィルター助剤、および正電荷樹脂バインダーである。デプスフィルター媒体は、絶対フィルターとは異なり、細孔径よりも大きい粒子および小さい粒子の両方を保持することができる多孔質媒体にわたって粒子を保持する。粒子の保持には、サイズ排除と、疎水性、イオン性および他の相互反応を介する吸着との両方が伴うと考えられる。
【0039】
用語「バイオ医薬品薬物を精製する」は、本明細書で使用される場合、当業者に公知の意味を有し、本発明の混合物に含まれ得る他の物質からバイオ医薬品薬物を分離することを指す。本発明の好ましい実施形態では、用語「バイオ医薬品薬物を精製する」は、本発明の界面活性剤からバイオ医薬品薬物を分離することを指す。
【0040】
用語「クロマトグラフィー」は、当技術分野で公知のその意味に従って使用される。その用語は、混合物中に存在する他の分子から目的の分析物(例えば、バイオ医薬品薬物などの標的分子)を分離する、任意のクロマトグラフィー技術を含む。通常、目的の分析物は、混合物の個々の分子が移動相の影響下で固定媒体中を移動する速度、または結合および溶出プロセスの差異の結果として、他の分子から分離される。
【0041】
用語「クロマトグラフィー樹脂」および「クロマトグラフィー媒体」は、本明細書において交換可能に使用され、混合物中に存在する他の分子から目的の分析物(例えば、バイオ医薬品薬物などの標的分子)を分離する、任意の種類の相(例えば、固相)を指す。通常、目的の分析物は、混合物の個々の分子が移動相の影響下で固定固体相中を移動する速度、または結合および溶出プロセスの差異の結果として、他の分子から分離される。様々なタイプのクロマトグラフィー媒体の例として、例えば、カチオン交換樹脂、カチオン交換膜、親和性樹脂、アニオン交換樹脂、アニオン交換膜、疎水性相互作用樹脂およびイオン交換モノリスが挙げられる。
【0042】
用語「医薬製剤」は、本明細書で使用される場合、当業者に公知の意味を有し、患者に投与するのに適した任意の製剤を指す。医薬製剤は、当技術分野で公知の方法に従って調製することができる。例えば、製剤に存在する任意のバイオ医薬品薬物について、当業者は、緩衝液、安定剤、サーファクタント、抗酸化剤、キレート剤および/または防腐剤等を含めた好ましい追加の成分を選択し、添加することができよう。
【0043】
用語「溶媒/界面活性剤の混合物」は、本明細書で使用される場合、当業者に公知の意味を有する。好ましい実施形態では、本発明に従って使用される溶媒/界面活性剤の混合物は、水以外の少なくとも1つの溶媒および少なくとも1つの界面活性剤を含有する。本発明に従って使用される溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、最も好ましくはトリ-n-ブチルホスフェートである。混合物に含有される様々な溶媒および/または界面活性剤の数は、特に限定されない。例えば、溶媒/界面活性剤の混合物は、トリ-n-ブチルホスフェート、ポリソルベート80および本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤から構成され得る。
【0044】
用語「の間」は、本発明において数値範囲を示すために使用される場合、それぞれの範囲の示されている下限および上限を含むことを理解すべきである。例えば、温度が0℃~10℃の間であると示される場合、これは、0℃および10℃の温度を含む。同様に、変数xが、例えば4~16の間の整数であると示される場合、これは、整数4および16を含む。
【0045】
用語「1時間」は、本明細書で使用される場合、正確に60分に限定されないことを理解すべきである。本明細書で使用される場合、用語「1時間」は、60分±5分、好ましくは60分±2分に関すると理解すべきである。
【0046】
実施形態
脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法は、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製するステップと、前記混合物をインキュベートして、前記ウイルスを不活化するステップとを含む。前述の通り、用語「脂質エンベロープを有するウイルスを不活化する」は、本明細書で使用される場合、溶液中の感染性ウイルス粒子の濃度を低減することを指す。脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法では、その方法が、少なくとも1つのウイルスについて少なくとも1のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも2のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも3のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも4のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも5のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも6のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも7のLog10低減値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスについて少なくとも8のLog10低減値(LRV)、最も好ましくは少なくとも1つのウイルスについて少なくとも4のLog10低減値(LRV)を達成することが好ましい。当然のことながら、少なくとも1つのウイルスについていかなるLog10低減値(LRV)も、例えばバイオ医薬品の生成プロセスの安全性を改善するので、有益であることが当業者に明らかである。本発明に従って言及されるLRVは、エンベロープウイルスのLRVである。
【0047】
本発明の方法は、一般に、脂質エンベロープウイルスを不活化するためのものであるが、本発明による界面活性剤は、例えば非エンベロープウイルスがそれらの複製サイクル中の一部の段階で脂質エンベロープを獲得する場合には、このような非エンベロープウイルスも不活化し得ることを理解すべきである。したがって、用語「脂質エンベロープを有するウイルスを不活化する」は、本発明の方法において、脂質エンベロープを有するウイルスに加えて、非エンベロープウイルスも不活化され得る可能性を排除することを意味しない。
【0048】
脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法では、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製し、前記混合物をインキュベートして、前記ウイルスを不活化する。本発明の方法の前記液体は、溶液、懸濁液、またはいくつかの懸濁液および/もしくは溶液の混合物を含めた、任意の種類の液体またはいくつかの液体の混合物であり得ることを理解すべきである。例えば、それに限定されるものではないが、本発明による前記液体は、血液であってよく、または血液もしくは血液画分を含有することができ、血漿であってよく、または血漿もしくは血漿画分を含有することができ、血清であってよく、または血清もしくは血清画分を含有することができ、細胞培養培地であってよく、または細胞培養培地を含有することができ、緩衝液であってよく、または緩衝液を含有することができる。液体は、プロセス中間体、例えばバイオ医薬品薬物の調製におけるプロセス中間体であってもよい。
【0049】
本発明による液体は、脂質エンベロープを有するウイルスを含有していてよく、または脂質エンベロープを有するウイルスを含有することが疑われ得る(例えば、液体が血液であるか、または血液もしくは血液画分を含有する場合、血漿であるか、または血漿もしくは血漿画分を含有する場合、血清であるか、または血清もしくは血清画分を含有する場合、あるいは液体が、細胞培養で生成されたバイオ医薬品薬物を含有する場合)。本発明のすべての他の実施形態による本発明の好ましい実施形態では、本発明による前記液体は、脂質エンベロープを有するウイルスを含有する。本発明による前記液体における脂質エンベロープを有する前記ウイルスの起源は、特に限定されない。例えば、ウイルスは、本発明による液体を調製するために使用され得るヒト血液に由来してよく、または本発明による液体を調製するために使用され得るヒト血漿に由来してよく、または本発明による液体を調製するために使用され得るヒト血清に由来してよく、または本発明による液体を調製するために使用され得る細胞培養培地に由来してよい。特に、ウイルスが、本発明による液体を調製するために使用される細胞培養培地に由来する場合、そのウイルスは、ウシ血清アルブミンなどの前記細胞培養培地の動物由来の構成成分に由来し得る。
【0050】
脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法では、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製する。前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。
【0051】
ポリオキシエチレンエーテルは、当業者に公知であり、式Aによる以下の構造を有する
【化22】
[式中、nは、1に等しいか、または1よりも大きい]。
【0052】
当業者に明らかであるように、ポリオキシプロピレンエーテルは、本発明によるポリオキシエチレンエーテルと非常に類似した特性を有することができる。したがって、本発明の他のすべての実施形態に従って、例えば、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法では、ポリオキシエチレンエーテルは、ポリオキシプロピレンエーテルによって置き換えることができる。
【0053】
ポリオキシプロピレンエーテルも、当業者に公知であり、式Bによる以下の構造を有する
【化23】
[式中、nは、1に等しいか、または1よりも大きい]。
【0054】
本明細書で言及される場合、本発明による「ポリオキシエチレンエーテル」は、好ましくは、当技術分野におけるその一般的な意味に従うポリオキシエチレンエーテルである。あるいは、本発明によるポリオキシエチレンエーテルは、ポリオキシエーテル分子の総数の一部、好ましくは大部分がポリオキシエチレンエーテル分子であるが、ポリオキシエーテル分子の総数の別の一部、好ましくは少数が、オキシエチレンおよびオキシプロピレン単位を含む混合ポリマー、ならびに/またはオキシプロピレン単位を含むポリマーである、ポリオキシエーテルであってもよい。この場合、用語「ポリオキシエーテル分子の総数の大部分が、ポリオキシエチレンエーテル分子である」は、ポリオキシエーテル分子の総数の少なくとも50%が、ポリオキシエチレンエーテル分子であることを意味する。好ましくは、ポリオキシエーテル分子の総数の少なくとも60%が、ポリオキシエチレンエーテル分子である。より好ましくは、ポリオキシエーテル分子の総数の少なくとも70%が、ポリオキシエチレンエーテル分子である。さらにより好ましくは、ポリオキシエーテル分子の総数の少なくとも80%が、ポリオキシエチレンエーテル分子である。さらにより好ましくは、ポリオキシエーテル分子の総数の少なくとも90%が、ポリオキシエチレンエーテル分子である。最も好ましくは、ポリオキシエーテル分子の総数の少なくとも95%が、ポリオキシエチレンエーテル分子である。しかしあるいは、本発明によるポリオキシエチレンエーテルは、大部分(例えば、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%)のオキシエチレン単位および少数のオキシプロピレン単位を含む、混合ポリオキシエーテルであってもよい。
【0055】
本発明の方法に従って使用するための界面活性剤は、非フェノール性である。本発明のすべての他の実施形態による別の実施形態では、本発明の方法に従って使用するための界面活性剤は、芳香族ではない。
【0056】
本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤は、エトキシル化反応によって合成することができる。エトキシル化は、アルコールエトキシレート(別名ポリオキシエチレンエーテル)を作製するために、アルコール(あるいはアミンを使用することができる)で実施される工業プロセスである。反応は、エチレンオキシドを、高温(例えば、約180℃)および高圧下(例えば、1~2バールの圧力下)で、触媒として働く塩基(例えば、水酸化カリウム、KOH)を用いてアルコールに通すことによって進行する。このプロセスは、非常に発熱性である。
【化24】
【0057】
この反応によって、広い多分散性の繰り返し単位長を有する生成物が形成される(先の式におけるnの値は、平均ポリマー長である)。
【0058】
実験室規模では、最初に、アルコールのヒドロキシ基から良好な脱離基(例えば、Cl、Br、I、OMsまたはOTf)を形成し、次に、この基質をモノ脱プロトン化ポリエチレングリコールと反応させることによって、ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を生成することができる。あるいは、良好な脱離基(例えば、Cl、Br、I、OMsまたはOTf)をポリエチレングリコール鎖上に導入することができ、それを第2のステップで脱プロトン化アルコールと反応させる。
【化25】
【0059】
ポリオキシエチレンエーテルを合成するための例示的な方法は、例えば、それらの全体があらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第1,970,578号およびDi Serio et al. (2005)に詳説されている。
【0060】
TX-100、還元Triton N-101、還元Triton X-100およびBrij C10は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであるが(すなわち、エトキシル化反応がエチレンオキシドガスを用いて実施される)、プロピレンオキシドを使用して工業規模で類似の反応(すなわち、プロポキシル化)を実施することも可能である。その差は、PEG鎖におけるメチル基の置換だけであろう。
【化26】
【0061】
エトキシル化およびプロポキシル化は、同じプロセスで合わせることもでき、オキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を含む混合ポリマーであるポリオキシエーテルなどの混合生成物を生じる。
【0062】
Triton-X100の毒性活性は、海洋生物のある特定の内分泌受容体にドッキングする能力を有するフェノール部分から生じる。芳香環とPEG鎖の間にメチレン基を挿入することによって、Triton-X100のフェノール官能基は、新しい構造にはもはや存在しない。さらに、環境に放出された後、PEG鎖が切断されると、曝露されたベンジルアルコールは、対応する安息香酸に容易に酸化する。この代謝産物は、フェノール誘導体とは完全に異なる極性および幾何構造を有し、それによって、内分泌受容体の任意の阻害を防止する。
【0063】
先の考察に基づいて、本発明者らは、非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルを合成し、それらの抗ウイルス活性を試験した(実施例4~10を参照されたい)。したがって、本発明はまた、以下の一般式(VIII)の非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルを提供する。
【化27】
【0064】
式(VIII)において、Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、mは、1~4の整数を表し、Aはポリオキシエチレン残基を表し、但し、必要に応じて、以下の構造式を有する29-[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサノナコサン-1-オールが除外されることを条件とする。
【化28】
【0065】
式(VIII)において、Rは、2~12個、好ましくは2~8個、より好ましくは2~6個、最も好ましくは4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数の、好ましくは2~6個、最も好ましくは4個のメチル基を有する炭化水素基を表す。
【0066】
好ましくは、Rは、2~12個、好ましくは2~8個、より好ましくは2~6個、最も好ましくは4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2個のメチル基を有する炭化水素基;2~12個、好ましくは2~8個、より好ましくは2~6個、最も好ましくは4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての4個のメチル基を有する炭化水素基;または2~12個、好ましくは2~8個、より好ましくは2~6個、最も好ましくは4個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての6個のメチル基を有する炭化水素基を表す。
【0067】
最も好ましくは、Rは、2,4,4-トリメチル-ペンタ-2-イル基を表す。
【0068】
式(VIII)において、mは、1~4の整数、好ましくは1~2の整数、最も好ましくは整数1を表す。
【0069】
式(VIII)において、Aは、ポリオキシエチレン残基、好ましくは2~20個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基、より好ましくは4~16個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基、さらにより好ましくは8~12個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基、最も好ましくは9または10個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す。
【0070】
一般式(VIII)の化合物の好ましい実施形態は、Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2~4個のメチル基を有する炭化水素基を表し、mが、1~2の整数を表し、Aが、8~12個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、化合物である。
【0071】
一般式(VIII)の化合物の別の好ましい実施形態は、Rが、2~6個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての2~4個のメチル基を有する炭化水素基を表し、mが、整数1を表し、Aが、8~12個のオキシエチレン単位を含むポリオキシエチレン残基を表す、化合物である。
【0072】
一般式(VIII)の化合物の特に好ましい実施形態は、以下の化合物:
【化29】
であり、式中、mおよびzは、以下の群:
m=1~4、好ましくはmは、1に等しく、
z=1~5
から独立に選択される整数である。
【0073】
一般式(VIII)の化合物の別の特に好ましい実施形態は、以下の化合物:
【化30】
であり、式中、nは、4~16の間の整数であり、好ましくはnは、9または10に等しい。
【0074】
式(VIII)の化合物は、一般に公知の合成法、例えばVogel's Textbook of Practical Organic Chemistry (5th Edition, 1989, A.I. Vogel, A.R. Tatchell, B.S. Furnis, A.J. Hannaford, P.W.G. Smith)に記載されているものによって合成され得る。例えば、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートは、一般式(VIII)の基Rに対応する置換基を含むフェノールを、対応する安息香酸またはホモ安息香酸に変換し、アルコール基に酸基を還元し、アルコールを反応させてポリエチレングリコールエーテル(ポリオキシエチレンエーテル;POEエーテルとしても公知)を形成することによって調製することができる。本明細書では、エチレンオキシドまたは適切なポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコールエーテル官能基を導入するための基礎として働くことができる(スキーム1;個々の転換を行うのに有効な実験手順の代表例は、例えば、Bioorganic & Medicinal Chemistry, 16(9), 4883-4907, 2008、Journal of Medicinal Chemistry, 48(10), 3586-3604, 2005、Journal of Physical Chemistry B, 107(31), 7896-7902; 2003、Journal of Nanoparticle Research, 15(11), 2025/1-2025/12, 12 pp., 2013、およびPCT国際出願第2005016240号、2005年2月24日に見出すことができる)。
【0075】
【化31】
【0076】
あるいは、一般式(VIII)の化合物は、トルエンをアルキル化した後、ベンジル位のメチル基の官能化およびさらなる反応によってポリエチレングリコールエーテルを形成することによって入手することができる(スキーム2;個々の転換を行うのに有効な実験手順の代表例は、例えば、Russian Journal of Applied Chemistry, 82(6), 1029-1032, 2009、Journal of Organic Chemistry, 79(1), 223-229, 2014、およびChemistry - A European Journal, 23(60), 15133-15142, 2017)に見出すことができる)。ベンジルアルコールを直接的にアルキル化して、ポリエチレングリコールエーテル官能基を導入するのに適した中間体を得ることも想定される(スキーム3;対応する転換のための実験手順の代表例は、例えば、Russian Journal of Organic Chemistry, 51(11), 1545-1550, 2015に見出すことができる)。
【0077】
【化32】
【0078】
【化33】
【0079】
式(VIII)による構造を有する先のポリオキシエチレンエーテルは、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用することができる。
【0080】
前述の通り、当業者に明らかであるように、ポリオキシエチレンエーテルの合成では、通常、広い多分散性のポリオキシエチレン(polyoxytheylene)繰り返し単位長を有する生成物が得られる。したがって、ポリオキシエチレン繰り返し単位の数が、本発明のポリオキシエチレンエーテルについて示されている場合、この数は、平均ポリオキシエチレン繰り返し単位長を指す。平均ポリオキシエチレン繰り返し単位長は、試料のすべてのポリオキシエチレンエーテル分子のポリオキシエチレン繰り返し単位の平均数を指す。例えば、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法の一実施形態では、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製し、前記界面活性剤は、式(III)による以下の構造を有するポリオキシエチレンエーテルであり得る
【化34】
[式中、nは、10に等しい]。
【0081】
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法のこの実施形態では、先の式(III)のn=10は、本発明による液体に添加されるすべてのポリオキシエチレンエーテル分子のポリオキシエチレン繰り返し単位の平均数である。
【0082】
脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用されるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤は、平均数2~100、2~50、2~20、または4~16、または9もしくは10のポリオキシエチレン繰り返し単位を有する。好ましくは、ポリオキシエチレン繰り返し単位の平均数は、4~16、より好ましくは9または10、最も好ましくは10である。
【0083】
当業者に明らかであるように、本発明によるポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンエーテル界面活性剤において、メチル基は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン部分の末端ヒドロキシ基に付加され得る(すなわち、末端ヒドロキシ基はブロックされ得る)。末端ヒドロキシ基のこのようなブロックにより、合成を容易にすることができる。このことは、エトキシル化またはプロポキシル化によって作製されていない化合物、例えば先のスキーム1またはスキーム2に従って作製された化合物にとって、特に有用である。メチルでブロックされたポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン部分を有する構造は、以下の例示的な構造によって示される通り、通常、mPEG誘導体と呼ばれる。
【化35】
【0084】
当業者に明らかであるように、ポリオキシプロピレンエーテルの合成では、通常、やはり広い多分散性のポリオキシプロピレン繰り返し単位長を有する生成物が得られる。したがって、ポリオキシプロピレン繰り返し単位の数が、本発明によるポリオキシプロピレンエーテルについて示されている場合、この数は、平均ポリオキシプロピレン繰り返し単位長を指す。ポリオキシエチレンエーテルについて先に記載される通り、平均ポリオキシプロピレン繰り返し単位長は、試料のすべてのポリオキシプロピレンエーテル分子のポリオキシプロピレン繰り返し単位の平均数を指す。
【0085】
本発明に従って使用されるポリオキシプロピレンエーテル界面活性剤は、平均数2~100、2~50、2~20、または5~15、または9もしくは10のポリオキシプロピレン繰り返し単位を有する。好ましくは、ポリオキシプロピレン繰り返し単位の平均数は、5~15、より好ましくは9または10、最も好ましくは10である。
【0086】
本発明の一実施形態では、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用されるポリオキシエチレンエーテルは、式(II)による以下の構造を有する。
【化36】
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、先の式(II)によって表される化合物は、商業的に利用可能な還元Triton X-100(CAS番号92046-34-9)である。
【0088】
本発明の一実施形態では、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用されるポリオキシエチレンエーテルは、式(IV)による以下の構造を有する。
【化37】
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、先の式(IV)によって表される化合物は、商業的に利用可能な還元Triton N-101(CAS番号123359-41-1)である。
【0090】
本発明の一実施形態では、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用されるポリオキシエチレンエーテルは、式(VI)による以下の構造を有する
【化38】
[式中、xは、15に等しい]。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、先の式(VI)によって表される化合物は、商業的に利用可能なBrij C10(CAS番号9004-95-9)である。
【0092】
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法における本発明の他のすべての実施形態によれば、ポリオキシエチレンエーテルは、モノオキシエチレンエーテルによって置き換えることもできる。本発明の好ましい実施形態では、前記モノオキシエチレンエーテルは、式Cによる以下の構造:
【化39】
を有し、式中、x、yおよびzは、以下の群:
x=0~5
y=0~5
z=0~20
から独立に選択される整数である。
【0093】
好ましくは、前記モノオキシエチレンエーテルは、式Dによる以下の構造、
【化40】
または式Eによる以下の構造
【0094】
【化41】
を有する。
【0095】
本発明の他のすべての実施形態によれば、本発明はまた、本発明によって提供されるポリオキシエチレンエーテルに対応するモノオキシエチレンエーテルを提供する。本発明の好ましい実施形態では、前記モノオキシエチレンエーテルは、式Fによる以下の構造を有する
【化42】
[式中、Rは、2~12個の炭素原子の直鎖、および前記直鎖上の置換基としての1つまたは複数のメチル基を有する炭化水素基を表し、mは、1~4の整数を表し、Aは、ポリオキシエチレン残基を表す]。
【0096】
別の好ましい実施形態では、式Fのモノオキシエチレンエーテルは、以下の化合物である。
【化43】
【0097】
式Fによる構造を有する先のモノオキシエチレンエーテルは、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用することができる。
【0098】
脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法では、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製する。本発明の一実施形態では、ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を液体に添加して、液体中、最終濃度約0.03%(w/w)~10%(w/w)、好ましくは約0.05%(w/w)~10%(w/w)、より好ましくは0.1%(w/w)~10%(w/w)、さらにより好ましくは約0.5%(w/w)~5%(w/w)、最も好ましくは約0.5%(w/w)~2%(w/w)のポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を得る。
【0099】
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法の好ましい実施形態では、その方法において使用されるポリオキシエチレンエーテルは、脂質エンベロープを有する前記ウイルスを不活化するのに適している。不活化は、本明細書で使用される場合、脂質エンベロープウイルスが細胞に感染する能力を撹乱することを指す。当業者に明らかであるように、脂質エンベロープウイルスが細胞に感染する能力、すなわち、脂質エンベロープウイルスの感染力は、典型的に、溶液中の感染性ウイルス粒子の数を決定することによってアセスメントされる。溶液中の感染性ウイルス粒子の数を決定するための例示的な方法は、本明細書に記載される。
【0100】
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法における一実施形態では、界面活性剤および溶媒を液体に添加するステップは、前記ウイルスを不活化するための溶媒/界面活性剤の混合物を調製するやり方で行われる。好ましくは、前記溶媒は、有機溶媒であり、さらにより好ましくは、前記溶媒は、トリ-n-ブチルホスフェートである。界面活性剤の濃度、ならびに溶媒のタイプおよび濃度は、例えば、液体中に存在する潜在的なウイルス、所望のLRV、液体中に存在し得るバイオ医薬品薬物の特性、および液体中に存在し得るバイオ医薬品薬物の製造プロセスの特徴(例えば、不活化が行われる温度)を考慮することによって、当業者により適切に選択され得ると理解される。典型的に、本発明によるインキュベーション中の有機溶媒および単一界面活性剤の最終濃度は、約0.01%(w/w)~約5%(w/w)の有機溶媒および約0.05%(w/w)~約10%(w/w)の界面活性剤、好ましくは約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の有機溶媒および約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の界面活性剤、より好ましくは約0.1%(w/w)~約1%(w/w)の有機溶媒および約0.5%(w/w)~約5%(w/w)の界面活性剤、最も好ましくは約0.1%(w/w)~約0.5%(w/w)の有機溶媒および約0.5%(w/w)~約2%(w/w)の界面活性剤である。
【0101】
脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法における別の実施形態では、界面活性剤(および必要に応じて溶媒も)を液体に添加するステップは、さらなる界面活性剤を液体に添加するやり方で行われる。好ましくは、前記さらなる界面活性剤は、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(例えば、ポリソルベート80またはTWEEN(登録商標) 80としても公知である)である。好ましくは、前記溶媒は、有機溶媒であり、さらにより好ましくは、前記溶媒は、トリ-n-ブチルホスフェートである。本発明による界面活性剤の濃度、さらなる界面活性剤のタイプおよび濃度、ならびに溶媒のタイプおよび濃度は、例えば、液体中に存在する潜在的なウイルス、所望のLRV、液体中に存在し得るバイオ医薬品薬物の特性、および液体中に存在し得るバイオ医薬品薬物の製造プロセスの特徴(例えば、不活化が行われる温度)を考慮することによって、当業者により適切に選択され得ると理解される。典型的に、有機溶媒の最終濃度は、約0.01%(w/w)~約5%(w/w)であり、本発明による界面活性剤の最終濃度は、約0.05%(w/w)~約10%(w/w)であり、さらなる界面活性剤の最終濃度は、約0.01%(w/w)~約5%(w/w)である。好ましくは、有機溶媒の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約5%(w/w)であり、本発明による界面活性剤の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約10%(w/w)であり、さらなる界面活性剤の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約5%(w/w)である。より好ましくは、有機溶媒の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約1%(w/w)であり、本発明による界面活性剤の最終濃度は、約0.5%(w/w)~約5%(w/w)であり、さらなる界面活性剤の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約1%(w/w)である。最も好ましくは、有機溶媒の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約0.5%(w/w)であり、本発明による界面活性剤の最終濃度は、約0.5%(w/w)~約2%(w/w)であり、さらなる界面活性剤の最終濃度は、約0.1%(w/w)~約0.5%(w/w)である。
【0102】
本発明による別の実施形態では、1つの界面活性剤だけが使用される。例えば、本発明の方法の一実施形態では、ステップa)において、本発明の界面活性剤以外のさらなる界面活性剤は添加されない。本発明の方法の別の実施形態では、その方法において、本発明の界面活性剤以外のさらなる界面活性剤は添加されない。本発明による別の実施形態では、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための方法における本発明の界面活性剤の使用において、本発明の界面活性剤以外のさらなる界面活性剤は使用されない。これらの実施形態の利点の1つは、単一界面活性剤が、その後の(方法)ステップでより容易に除去され得ることである。例えば、単一界面活性剤は、標準の溶媒/界面活性剤(S/D)処理で使用される、2つの界面活性剤および1つの溶媒、特に有機溶媒を典型的に含む3つの構成成分と比較して、より容易に除去することができる。したがって、本発明による別の実施形態では、本発明の界面活性剤を含む組成物は、前記界面活性剤以外のいかなるさらなる界面活性剤も含まない。
【0103】
本発明による別の実施形態では、有機溶媒は使用されない。例えば、本発明の方法の一実施形態では、ステップa)において、有機溶媒は添加されない。本発明による別の実施形態では、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための方法における本発明の界面活性剤の使用において、有機溶媒は使用されない。本発明による別の実施形態では、本発明の界面活性剤を含む組成物は、いかなる有機溶媒も含まない。
【0104】
先に概説される通り、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法は、特に、バイオ医薬品の生成プロセスにおいて有用であり、患者の安全性を保障するためには、最終生成物に活性な(すなわち、感染性)ウイルスが存在しないことが確保されなければならない。したがって、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法における一実施形態では、界面活性剤は、バイオ医薬生成物またはバイオ医薬品薬物、好ましくはバイオ医薬品薬物を含む液体に添加される。本発明の好ましい実施形態では、前記バイオ医薬品薬物は、ウイルスワクチンではない。本発明によるバイオ医薬品薬物は、特に限定されない。本発明によるバイオ医薬品薬物は、組換えバイオ医薬品薬物および他の供給源由来のバイオ医薬品薬物、例えばヒト血漿から得られたバイオ医薬品薬物の両方を含む。本発明によるバイオ医薬品薬物は、限定されるものではないが、血液因子、免疫グロブリン、置換え酵素、ワクチン、遺伝子治療ベクター、増殖因子およびそれらの受容体を含む。好ましい実施形態では、バイオ医薬品薬物は、治療用タンパク質である。好ましい血液因子には、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子、第VII因子および第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子キニノゲン(HMWK)、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリンコファクターII、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI1)、ならびにプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)が含まれる。第VIII因子は、特に好ましい血液因子であり、組換え第VIII因子がさらにより好ましい。本発明に従って使用され得る血液因子は、機能的ポリペプチド変異体、および血液因子をコードするか、またはこのような機能的変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことを意味する。好ましい免疫グロブリンには、ヒト血漿由来の免疫グロブリン、モノクローナル抗体および組換え抗体が含まれる。本発明によるバイオ医薬品薬物は、好ましくはそれぞれのヒトもしくは組換えヒトタンパク質、またはそれらの機能的変異体である。
【0105】
先に示される通り、本発明によるバイオ医薬品薬物は、ウイルス遺伝子治療ベクターを含めた遺伝子治療ベクターであってもよい。当業者に明らかであるように、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法は、一般に、非エンベロープウイルスを不活化しない。したがって、本発明によるバイオ医薬品薬物がウイルス遺伝子治療ベクターである好ましい実施形態では、このようなウイルス遺伝子治療ベクターは、非エンベロープウイルスに基づく。好ましい実施形態では、このようなウイルス遺伝子治療ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく。
【0106】
本発明の他のすべての実施形態によれば、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法は、前記混合物をインキュベートして前記ウイルスを不活化するステップ後に、前記バイオ医薬品薬物を精製するステップを含むことができる。好ましくは、前記精製するステップは、前記バイオ医薬品薬物を前記界面活性剤から分離することを含む。当業者は、バイオ医薬品薬物を界面活性剤から分離するための様々な方法を認識されよう。このような方法は、バイオ医薬品薬物の特性、バイオ医薬品薬物が得られる供給源(例えば、組換えにより、または他の供給源から、例えばヒト血漿から)、および所望のバイオ医薬品の適用(例えば、皮下または静脈内に投与されるかどうかなど)を考慮して、当業者によって選択され得る。例えば、バイオ医薬品薬物は、アニオン交換クロマトグラフィーまたはカチオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを使用して、界面活性剤から分離され得る。一実施形態では、前記界面活性剤から前記精製するステップは、2つ以上のクロマトグラフィー精製を含む。
【0107】
本発明の他のすべての実施形態によれば、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための本発明の方法は、好ましくはデプスフィルターを用いて前記混合物を濾過するステップを含むことができる。この濾過するステップは、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製するステップの前に行うことができる。あるいは、この濾過するステップは、界面活性剤を液体に添加して、前記界面活性剤および前記液体の混合物を調製するステップと、前記混合物をインキュベートして、前記ウイルスを不活化するステップとの間に行うことができる。
【0108】
本発明の他のすべての実施形態による別の実施形態では、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための方法において、前記混合物をインキュベートして前記ウイルスを不活化するステップは、前記混合物を、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも12時間または少なくとも24時間インキュベートするやり方で行うことができる。
【0109】
本発明の他のすべての実施形態による別の実施形態では、前記混合物をインキュベートして前記ウイルスを不活化するステップにおいて、前記混合物は、0℃~15℃の間、0℃~10℃の間、0℃~8℃の間、0℃~6℃の間、0℃~4℃の間、または0℃~2℃の間、好ましくは0℃~10℃の間の温度などの低温でインキュベートされる。本発明の他のすべての実施形態による代替の実施形態では、前記混合物をインキュベートして前記ウイルスを不活化するステップにおいて、前記混合物は、16℃~25℃の間、18℃~24℃の間、または20℃~23℃の間の温度などの室温または室温に近い温度でインキュベートされる。
【0110】
本発明の方法のステップを行うべきやり方は、特に限定されないことを理解すべきである。特に、方法ステップは、バッチ方式で行うことができる。あるいは、方法ステップは、半連続または連続方式で行うこともできる。
【0111】
先に概説される通り、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法は、バイオ医薬品の生成プロセスにおいて特に有用である。したがって、本発明はまた、バイオ医薬品薬物を調製するための方法であって、脂質エンベロープを有するウイルスを、本発明およびその任意の実施形態に従って不活化するための方法の方法ステップを含む、方法に関する。好ましくは、本発明に従ってバイオ医薬品薬物を調製するための方法は、前記バイオ医薬品薬物を含む医薬製剤を調製するステップを含み、このステップは、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法のステップに続いて実施される。このような医薬製剤は、医薬製剤を調製するための公知の標準に従って調製することができる。例えば、製剤は、例えば担体、賦形剤または安定剤などの薬学的に許容される構成成分を使用することによって、適切に保存し、投与することができるやり方で調製することができる。このような薬学的に許容される構成成分は、患者に医薬製剤を投与する場合に使用される量では毒性がない。
【0112】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤が、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するのに特に有用であることを見出した。したがって、本発明はまた、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するための任意の方法における、本発明による開示されるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤の使用に関する。好ましくは、前記ウイルスの前記不活化のための前記方法は、溶媒/界面活性剤による処理を使用する方法であり、前記溶媒/界面活性剤による処理は、本発明の前記界面活性剤の使用を含む。別の実施形態では、前記ウイルス不活化は、バイオ医薬品薬物を含む液体におけるウイルスの不活化である。
【0113】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル界面活性剤が、脂質エンベロープを有するウイルスを不活化するのに特に有用であることを見出したので、本発明はまた、本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤、および本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を含む組成物に関する。別の実施形態では、本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を含む組成物は、バイオ医薬品薬物および/または有機溶媒および/またはさらなる界面活性剤をさらに含む。
【0114】
本発明はまた、本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤、または本発明によるポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を含む組成物を含み、さらに、クロマトグラフィー精製のためのクロマトグラフィー樹脂を含む、ウイルス不活化のためのキットを提供する。別の実施形態では、前記キットは、デプスフィルターをさらに含む。
【0115】
本発明は、非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルを提供する。前述の通り、これらのポリオキシエチレンエーテルは、脂質エンベロープを有するウイルスを本発明に従って不活化するための方法において使用することができる。しかし、これらの非フェノール性ポリオキシエチレンエーテル、ならびに本発明による他のすべての非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルは、他の様々な目的で、例えばTriton X-100が一般に使用される目的で使用することもできる。例えば、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルは、実験室において使用することができる。実験室中では、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルは、例えば、細胞を溶解してタンパク質もしくは小器官を抽出するため、または生細胞の膜を透過処理するため、固定されていない(または軽度に固定された)真核細胞膜を透過処理するため、CHAPSなどの双性イオン性界面活性剤と共に膜タンパク質をそれらの天然状態で可溶化するため、DNA抽出における溶解緩衝液(通常、アルカリ溶解緩衝液中の5%溶液における)の一部として、免疫染色(通常、TBSまたはPBS緩衝液中0.1~0.5%の濃度における)中の水溶液の表面張力を低減するため、微生物学においてAspergillus nidulansのコロニー増殖を制限するため、動物由来の組織を脱細胞化するため、あるいはSDS-PAGEゲルからSDSを除去した後に、ゲル内でタンパク質を再生させるために使用することができる。別の実施形態では、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルは、電子工業において、例えば、一部の手順および操作を改善し、加速するための、薄板(slat)のための湿潤剤として使用することができる。別の実施形態では、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルは、医療用途を有することができ、例えば、殺精子薬であるノノキシノール(Nonoxinol)9のための代替物として、または医薬賦形剤として、またはインフルエンザワクチン(Fluzone)における成分として使用することができる。さらなる実施形態では、本発明による非フェノール性ポリオキシエチレンエーテルは、高耐久性の工業生成物から低刺激の界面活性剤にわたって、いくつかのタイプの清浄用化合物において使用することができ、蒸留水およびイソプロピルアルコールと一緒に自家製ビニルレコードの清浄液の成分として使用することができ、ダイヤモンド刃の清浄中に使用することができ、エマルジョンの重合のための配合物において使用することができ、タイヤにおいて使用することができ、洗浄剤および清浄剤において使用することができ、ポリマーもしくは接着剤の生成のための出発化学物質として工業において使用することができ、塗料もしくはコーティングにおける、パルプもしくは紙における、油田上の、織物における、農芸化学品における、金属加工油における家庭用もしくは工業用界面活性剤において使用することができ、軟質複合材料のための炭素材料の分散のために使用することができ、または金属めっきにおいて使用することができる。
【0116】
以下、本発明を、実施例によってそれに限定することなく例示する。
【実施例
【0117】
先に概説される通り、近年の生態学的研究は、バイオ医薬品の生成プロセスにおけるTriton X-100の使用に関する環境上の懸念を提起している。本発明者らは、構造的考察に基づいて、環境への負の影響とは関連しないとされてきたTriton X-100の有用な代替としての候補界面活性剤を特定した。特に本発明者らは、驚くべきことに、バイオ医薬品の生成中の溶媒/界面活性剤(S/D)処理によって脂質エンベロープウイルスを不活化するためのTriton X-100の適切な代替として、ポリオキシエチレンエーテルを特定した。以下の実験では、S/D処理についての例示的な候補界面活性剤の適切性を、静脈内免疫グロブリン(IVIG)含有液およびヒト血清アルブミン(HSA)含有液で試験した。さらに、以下の実験では、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを合成し、S/D処理についての4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートおよび他のポリオキシエチレンエーテルの適切性、ならびに単一界面活性剤による処理を、様々な試験項目で試験した。
【0118】
(実施例1)
静脈内免疫グロブリンを含む液体中での還元Triton X-100または還元Triton N-101を使用するHIVおよびPRVの不活化
静脈内免疫グロブリン(IVIG)を含む液体中で、脂質エンベロープウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)を不活化するためのS/D処理についての還元Triton X-100または還元Triton N-101の適切性を試験し、Triton X-100と比較した。この目的を達成するために、ウイルスを、IVIGを含む液体に添加した。次に、IVIGを含むウイルス含有液を、低濃度の還元Triton X-100、還元Triton N-101またはTriton X-100を含むS/D混合物と共に様々な期間にわたってインキュベートし、ウイルスの残りの感染力を決定した。ウイルス不活化動態、すなわちウイルス不活化効率(RFによって表される)を経時的に評価するために、還元Triton X-100、還元Triton N-101およびTriton X-100を低濃度で使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、還元Triton X-100または還元Triton N-101を含む本発明の界面活性剤は、著しくより高濃度で使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することも期待される。
【0119】
材料
IVIGを含む液体
IVIGを含む液体(IVIG含有液)を、ドライアイス上で凍結させ、収集日後1年以内に使用するまで、≦-60℃で保存した。
【0120】
ウイルス
仮性狂犬病ウイルス(PRV;Herpesviridae科;エンベロープ;dsDNA;
【数1】
)を、大型エンベロープDNAウイルスのモデルとして使用した。
【0121】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV;Retroviridae科;エンベロープ;ssRNA;
【数2】
)を、関連する標的ウイルスとして、HIV-2のような他の脂質エンベロープRNA(リボ核酸)ウイルスのためのモデルとして使用した。
【表1】
【0122】
ウイルスストックを、使用前に特徴付けた。この特徴付けには、少なくとも10回の独立な滴定によるウイルス力価の決定および陽性対照として使用するための許容ウイルス力価範囲の特定、ウイルスストックタンパク質含量の決定、ウイルスの特定ならびに他のウイルスおよびマイコプラズマによる汚染についてのPCR試験、ならびに大型ウイルス凝集体を通過させないフィルターを用いるウイルス凝集についての試験が含まれていた。著しい凝集がなくPCRによる特定/汚染試験に合格したウイルスストック(すなわち、ウイルスストックと濾過ストックとの感染力価の差が、1.0logよりも小さかった)だけを使用した。
【0123】
還元Triton X-100または還元Triton N-101の試薬ミックス
S/D構成成分であるポリソルベート80(PS80、Crillet 4 HP、Tween(登録商標) 80)およびトリ-n-ブチル-ホスフェート(TnBP)を、以下の比で、それぞれの界面活性剤(すなわち、Triton X-100、還元Triton X-100または還元Triton N-101)と合わせた(表2~表4を参照されたい)。
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
各混合物を、少なくとも15分間撹拌した。S/D試薬ミックスを、使用のために室温で1年以内保存した。使用前に、各S/D試薬ミックスを少なくとも15分間再び撹拌して、均質性を保証した。
【0127】
方法
S/D処理のウイルス不活化能力およびロバスト性を、ウイルス不活化にとって不利な条件下で、すなわち短いインキュベーション時間および相対的に低温で評価した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より長いインキュベーション時間およびより高い温度を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。さらに、既に先に述べた通り、低濃度のS/D構成成分を使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より高濃度のS/D構成成分を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。
【0128】
タンパク質濃度は、S/D処理中にウイルス不活化に対して著しい影響を及ぼさないので(Dichtelmuller et al., 2009も参照されたい)、タンパク質含量に関するロバスト性は調査しなかった。
【0129】
IVIG含有液を解凍し、すべてのさらなるステップを、バイオセイフティクラスIIのキャビネット内で行った。IVIG含有液を、インキュベーションのためにクリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、+17℃±1℃の温度における撹拌下でインキュベートした。次に、IVIG含有液を、Sartorius(SM16249)ステンレス鋼フィルターホルダーに接続した、有効なフィルター面積25cmを有する0.2μmのデプスフィルター(Zeta Plus(登録商標)VR06、Cuno/3Mまたは等価物)を介して、加圧窒素を使用して標的圧力0.9バール(限界:0.5バール~1.5バール)で濾過した。調整のために、フィルター材料を、55l/mのHyflo Supercel懸濁液(1L当たり5.0g±0.05gのHyflo Supercel;3MのNaClを使用して伝導率を3.5mS/cmに調整(特定範囲:2.5~6.0mS/cm))(圧力≦0.5バールで)で予めコーティングした後に、液体を濾過した。濾過中、フィルターホルダーを冷却し、濾液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、≦18℃の標的温度で収集した。濾液のための容器を冷却した。フィルターが詰まった場合、残りの液体を濾過し続けるために、新しい事前調整フィルターを使用した。濾過後、温度(標的:≦18℃)および体積を測定した。
【0130】
IVIG含有液の体積を測定した後、それを冷却した(+2℃~+8℃)希釈緩衝液(標的伝導率3.5mS/cm(範囲:2.5mS/cm~6.0mS/cm)のNaCl溶液)と共に撹拌下で、算出標的吸光度28.9AU280~320/cm(範囲:14.5~72.3AU280~320/cm)に調整した。後の1:31ウイルススパイクを考慮すると、これによって、濾過後のS/D試薬とのインキュベーションでは28AU280~320/cm(範囲:14~70AU280~320/cm)の標的吸光度の算出値が得られた。
【0131】
濾過し、タンパク質調整したIVIG含有液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、撹拌下で+17℃±1℃に再び調整した。この温度範囲を、S/D試薬との濾過したIVIG含有液のインキュベーションの最後まで撹拌下で維持し、継続的に記録した。風袋重量を決定したスクリューキャップ付きフラスコに移した、決定された体積の濾過したIVIG含有液を、1:31の比においてウイルスでスパイクし、例えば、IVIGを含む液体30mLを、ウイルスストック溶液1mLでスパイクした。スパイクしたIVIG含有液を、継続的な撹拌下で、17℃±1℃でさらにインキュベートした。スパイク後1~2分以内に、ウイルス滴定のための試料(0.5mLのスパイク対照、SC、および2mLのホールド対照、HC)を採取した。
【0132】
抜き出した後、ホールド対照(HC)を、S/D試薬の添加後にスパイクしたプロセス材料と同じ温度で、すなわち+17℃±1℃で維持し、すなわちS/D処理の最後まで、IVIG含有液を入れた容器と同じ冷却サイクルで保存した。ホールド対照試料を挿入する前、およびホールド対照をS/D処理後の滴定のために除去する直前に再び、冷却液の温度を決定した。
【0133】
スパイクしたIVIG含有液の重量を、添加すべきS/D試薬ミックスの量を算出するために決定した。秤量した材料を、必要に応じて撹拌下で+17℃±1℃に再調整した。それぞれのS/D試薬ミックスを、IVIG含有液に添加して、最終濃度0.05%のそれぞれのポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を得た。S/D試薬ミックスを、撹拌下でシリンジを使用して1分以内に添加し、添加したS/D試薬ミックスの実際の量を、シリンジを逆秤量(back-weigh)することによって決定した。スパイクしたIVIG含有液を、+17℃±1℃で59±1分間、継続的な撹拌下で、S/D試薬と共にさらにインキュベートした。インキュベーション中、ウイルス滴定のための試料1mLを、1~2分後、10±1分後、30±1分後および59±1分後に採取した。試料を抜き出した後のS/D試薬によるウイルスのさらなる不活化を防止するために、試料を、冷却した(+2℃~+8℃)細胞培養培地ですぐに1:20希釈した(すなわち、1体積の試料と19体積の細胞培養培地)。
【0134】
試料を滴定するために、試料の連続0.5log希釈物を、適切な組織培養培地で調製し、各希釈物100μLを、それぞれの指標細胞株を播種したマイクロタイタープレートの8ウェルのそれぞれに添加した。細胞を、36.0℃で7日間インキュベートした(セットポイント)後、細胞変性作用を、顕微鏡下で視覚的点検によって評価した。組織培養の感染用量中央値(TCID50)を、ポアソン分布に従って算出し、log10[TCID50/mL]として表した。
【0135】
ウイルスクリアランス能力の算出を、次式に従って行った。
【数3】

式中、
R=ウイルスクリアランス指数
=出発材料の体積[mL]
=出発材料におけるウイルス濃度[TCID50/mL]
=ウイルス不活化後の材料の体積[mL]
=ウイルス不活化後のウイルス濃度[TCID50/mL]
【0136】
スパイクした各試料の、処理前および処理後の体積および力価を使用して、Rを算出した。ウイルスが検出されなかった場合はいつでも、算出のためのウイルス力価として検出限界を取った。
【0137】
結果
IVIG含有液のS/D処理を、還元Triton X-100、PS80およびTnBPの混合物、または還元Triton N-101、PS80およびTnBPの混合物を使用して実施した場合、HIVは、10分以内に少なくとも4のウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図1A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図1B)。
【0138】
追加実験では、IVIG含有液のS/D処理を、還元Triton X-100、PS80およびTnBPの混合物、または還元Triton N-101、PS80およびTnBPの混合物を使用して実施した場合、PRVは、10分以内に約4のRFによって不活化された(図2A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図2B)。
【0139】
これらの実験は、バイオ医薬品薬物含有液のS/D処理のために、Triton X-100を還元Triton X-100または還元Triton N-101によって置き換えると、低濃度の界面活性剤でも、脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることを示している。
【0140】
(実施例2)
静脈内免疫グロブリンを含む液体中でのBrij C10を使用するHIV、PRVおよびBVDVの不活化
材料および方法
実験を、先の実施例1に記載される通り実施した。しかし、S/D処理では、Brij C10を含むS/D混合物を試験し、Triton X-100を含むS/D混合物と比較した。Triton X-100を含むS/D混合物の組成物を、先の実施例1に記載される通り調製した。Brij C10を含むS/D混合物の組成物を、以下の通り調製した。
【0141】
S/D構成成分であるポリソルベート80(PS80、Crillet 4 HP、Tween(登録商標) 80)およびトリ-n-ブチル-ホスフェート(TnBP)を、以下の比で界面活性剤Brij C10と合わせた(表5を参照されたい)。
【表5】
【0142】
混合物を少なくとも15分間撹拌した。S/D試薬ミックスを、使用のために室温で1年以内保存した。使用前に、S/D試薬ミックスを少なくとも15分間再び撹拌して、均質性を保証した。
【0143】
それぞれのS/D試薬ミックスをIVIG含有液に添加して、最終濃度0.05%のそれぞれのポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を得た。
【0144】
さらに、ウイルスBVDVの不活化も試験した。
【表6】
【0145】
結果
IVIG含有液のS/D処理を、Brij C10、PS80およびTnBPの混合物を使用して実施した場合、HIVは、10分以内に4を超えるウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図3A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図3B)。
【0146】
追加実験では、IVIG含有液のS/D処理を、Brij C10、PS80およびTnBPの混合物を使用して実施した場合、PRVは、10分以内に約4のRFによって不活化された(図4A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図4B)。
【0147】
追加実験では、IVIG含有液のS/D処理を、Brij C10、PS80およびTnBPの混合物を使用して実施した場合、BVDVは、10分以内に約5のRFによって不活化された(図5A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図5B)。
【0148】
これらの実験は、バイオ医薬品薬物含有液のS/D処理のために、Triton X-100をBrij C10によって置き換えると、低濃度の界面活性剤でも、脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることを示している。
【0149】
(実施例3)
ヒト血清アルブミンを含む液体中でのBrij C10を使用するX-MuLVおよびBVDVの不活化
バイオ医薬品薬物のためのモデルタンパク質としてヒト血清アルブミン(HSA)を含む液体中で、脂質エンベロープウイルスである異種指向性マウス白血病ウイルス(X-MuLV)およびウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)を不活化するためのS/D処理についてのBrij C10の適切性を試験し、Triton X-100と比較した。この目的を達成するために、ウイルスを、HSAを含む液体に添加した。次に、HSAを含むウイルス含有液を、低濃度のBrij C10を含むS/D混合物と共に様々な期間にわたってインキュベートし、ウイルスの残りの感染力を決定した。ウイルス不活化動態、すなわちウイルス不活化効率(RFによって表される)を経時的に評価できるようにするために、Brij C10を低濃度で使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、Brij C10は、著しくより高濃度で使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるRFを増大することもできる。
【0150】
材料
HSAを含む液体
ヒト血清アルブミン(HSA)含有液を、バイオ医薬品薬物を含有する液体のモデルとして使用した。
【0151】
ウイルス
異種指向性マウス白血病ウイルス(X-MuLV;Retroviridae科;エンベロープssRNAウイルス;Φ=80~110nm)を、内因性レトロウイルス粒子およびエンベロープRNAウイルスのモデルとして使用した。さらに、BVDVを使用した。
【表7-1】
【表7-2】
【0152】
ウイルスストックを、使用前に特徴付けた。この特徴付けには、少なくとも10回の独立な滴定によるウイルス力価の決定および陽性対照として使用するための許容ウイルス力価範囲の特定、ウイルスストックタンパク質含量の決定、ウイルスの特定ならびに他のウイルスおよびマイコプラズマによる汚染についてのPCR試験、ならびに大型ウイルス凝集体を通過させないフィルターを用いるウイルス凝集についての試験が含まれていた。著しい凝集がなくPCRによる特定/汚染試験に合格したウイルスストック(すなわち、ウイルスストックと濾過ストックとの感染力価の差が、1.0logよりも小さかった)だけを使用した。
【0153】
Brij C10の試薬ミックス
S/D構成成分であるポリソルベート80(PS80、Crillet 4 HP、Tween(登録商標) 80)およびトリ-n-ブチル-ホスフェート(TnBP)を、以下の比で、それぞれの界面活性剤(すなわち、Triton X-100またはBrij C10)と合わせた(表8~表9を参照されたい)。
【表8】
【0154】
【表9】
【0155】
各混合物を、少なくとも15分間撹拌した。S/D試薬ミックスを、使用のために室温で1年以内保存した。使用前に、各S/D試薬ミックスを少なくとも15分間再び撹拌して、均質性を保証した。
【0156】
方法
S/D処理のウイルス不活化能力およびロバスト性を、ウイルス不活化にとって不利な条件下で、すなわち短いインキュベーション時間および相対的に低温で評価した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より長いインキュベーション時間およびより高い温度を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。さらに、既に先に述べた通り、低濃度のS/D構成成分を使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より高濃度のS/D構成成分を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。
【0157】
タンパク質濃度は、S/D処理中にウイルス不活化に対して著しい影響を及ぼさないので(Dichtelmuller et al., 2009も参照されたい)、タンパク質含量に関するロバスト性は調査しなかった。
【0158】
以下のすべてのステップを、バイオセイフティクラスIIのキャビネット内で行った。出発材料を、インキュベーションのためにクリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、+1℃±1℃の温度における撹拌下でインキュベートした。次に、HSA含有液を、0.2μmのPVDF膜シリンジフィルター(親水性PVDFフィルター、Millipak 60または等価物)を介して濾過した。濾過後、温度および体積を測定した。
【0159】
濾過したHSA含有液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、撹拌下で+1℃±1℃に再び調整した。この温度範囲を、S/D試薬との濾過したHSA含有液のインキュベーションの最後まで撹拌下で維持し、継続的に記録した。風袋重量を決定したスクリューキャップ付きフラスコに移した、決定された体積の濾過したHSA含有液を、1:31の比でスパイクし、例えば、HSA含有液48mLを、ウイルスストック溶液1.6mLでスパイクした。スパイクしたHSA含有液を、継続的な撹拌下で、1℃±1℃でさらにインキュベートした。スパイク後1~2分以内に、ウイルス滴定のための試料(0.5mLのスパイク対照、SC、および2mLのホールド対照、HC)を採取した。
【0160】
抜き出した後、ホールド対照(HC)を、S/D試薬の添加後にスパイクしたHSA含有液と同じ温度で、すなわち+1℃±1℃で維持し、すなわちS/D処理の最後まで、HSA含有液を入れた容器と同じ冷却サイクルで保存した。ホールド対照試料を挿入する前、およびホールド対照をS/D処理後の滴定のために除去する直前に再び、冷却液の温度を決定した。
【0161】
スパイクしたHSA含有液の重量を、添加すべきS/D試薬ミックスの量を算出するために決定した。秤量した材料を、必要に応じて撹拌下で+1℃±1℃に再調整した。それぞれのS/D試薬ミックスを、HSA含有液に添加して、最終濃度0.08%~0.1%(w/w)のそれぞれのポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を得た。S/D試薬ミックスを、撹拌下でシリンジを使用して1分以内に添加し、添加したS/D試薬ミックスの実際の量を、シリンジを逆秤量することによって決定した。スパイクしたHSA含有液を、+1℃±1℃で59±1分間、継続的な撹拌下で、S/D試薬と共にさらにインキュベートした。インキュベーション中、ウイルス滴定のための試料1mLを、1~2分後、10±1分後、30±1分後および59±1分後に採取した。試料を抜き出した後のS/D試薬によるウイルスのさらなる不活化を防止するために、試料を、冷却した(+2℃~+8℃)細胞培養培地ですぐに1:20希釈した(すなわち、1体積の試料と19体積の細胞培養培地)。
【0162】
試料の滴定およびウイルスクリアランス能力の算出を、先の実施例1に記載される通り実施した。
【0163】
結果
HSA含有液のS/D処理を、Brij C10、PS80およびTnBPの混合物を使用して1℃±1℃で実施した場合、X-MuLVは、60分以内に2を超えるウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図6A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図6B)。
【0164】
追加実験では、HSA含有液のS/D処理を、Brij C10、PS80およびTnBPの混合物を使用して1℃±1℃で実施した場合、BVDVは、10分以内に約4のウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図7A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図7B)。
【0165】
HSA含有液のS/D処理を1℃±1℃の代わりに19℃±1℃で実施したことのみを除き、追加実験を、この実施例の材料および方法の節に記載される通り正確に実施した。HSA含有液のS/D処理を、Brij C10、PS80およびTnBP(Brij C10)の混合物を使用して19℃±1℃で実施した場合、X-MuLVは、10分以内に3を超えるウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図8A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図8B)。
【0166】
これらの実験は、バイオ医薬品薬物含有液のS/D処理のために、Triton X-100をBrij C10によって置き換えると、低濃度の界面活性剤でも、室温またはおよそ室温および1℃±1℃もの低温で脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることを示している。
【0167】
(実施例4)
4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートIの合成(方法1)
【化44】
【0168】
中間体IIIの合成
フェノールII(170.3g、800mmol)を、内部温度計および撹拌子を備えた3つ口の2Lフラスコに入れた。無水CHCl(1000mL)をフラスコに添加し、撹拌し始めた。出発材料が溶解した後、溶液を0℃に冷却した。全体が溶解した後、NEt(225mL、1.6mol)を10分以内に添加した。TfO(256g、907mmol)のCHCl(180mL)溶液を、0℃で120分間にわたって反応混合物に添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。飽和NaHCO水溶液(400mL)を添加し、反応混合物を抽出した。有機相を、水(2×400mL)およびブライン(500mL)で繰り返し洗浄した。次に、有機相を真空中で濃縮した。トルエン(300mL)を残留物に添加し、粗製生成物を濃縮して、黒色の粗製液体314gを得た。この残留物を、SiOプラグの上部に加え、石油エーテル/EtOAc(0~2%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、透明な無色の油状物269.5g(収率:99.6%)を得た。R=0.74(石油エーテル/EtOAc 5%)。
【0169】
中間体IVの合成
トリフレートIII(269g、795mmol)を、脱気した無水DMF(1.3L)およびZn(CN)(95.3g、795mmol)に溶解させ、Pd(PPh(25g、21.5mmol)を順次添加した。反応混合物を80℃に3時間加温した後、DMFを真空下で除去した。トルエン(300mL)を残留物に添加し、粗製生成物を濃縮して、黒色の残留物432gを得た。この粗製生成物を、SiOプラグの上部に加え、石油エーテル/EtOAc(0~10%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、透明な無色の油状物128.1g(収率:74.8%)を得た。R=0.23(石油エーテル/EtOAc 2%)
【0170】
中間体Vの合成
ニトリルIV(127.6g、592.5mmol)をMeOH(500mL)に溶解させ、4MのNaOH水溶液(750mL)を添加し、混合物を還流させ、この温度で(80℃)一晩維持した。さらなる10MのNaOH水溶液(150mL)を、加温した混合物に添加し、その溶液をさらに20時間加熱した。周囲温度に冷却した後、反応容器の内容物を大型ビーカーに移し、氷浴中で冷却した。4MのHCl水溶液(1.1L)を30分以内に添加し、この時点でpHは、pH紙によって示される通り酸性になり、白色の固体が沈殿した。沈殿物を濾過し、水(500mL)ですすいだ。湿潤ケーキを2Lのフラスコに移し、真空下で3日間乾燥させて、白色の粉末127.5g(収率:91.9%)を得た。R=0.42(石油エーテル/EtOAc 2:1)。
【0171】
中間体VIの合成
カルボン酸V(127g、542mmol)を、乾燥mTHF(1.2L)に懸濁させ、-10℃に冷却した。LiAlHのTHF(1M、575mL、575mmol)溶液を60分間にわたって添加し、次に反応物を周囲温度にゆっくり加温し、さらに一晩撹拌した。反応容器の内容物を大型ビーカーに移し、過剰の水素化物を氷(15g)で注意深くクエンチした。3MのHCl水溶液(500mL)を、20分以内に添加し、この時点でpHは、pH紙によって示される通り酸性になった。EtOAc(300mL)を粗製混合物に添加し、2つの相を激しくかき混ぜた。水相をEtOAcで2回(300mLおよび500mL)、逆抽出した。合わせた有機相を、飽和NaHCO水溶液(300mL)、水(300mL)およびブライン(500mL)で逐次的に洗浄した。次に、有機相を真空中で濃縮した。トルエン(300mL)を残留物に添加し、粗製生成物を濃縮して、透明の黄色がかった油状物123.3gを得た。この残留物を、SiOプラグの上部に加え、石油エーテル/EtOAc(0~15%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、白色の非晶質固体85.3g(収率:71.4%)を得た。R=0.37(石油エーテル/EtOAc 4:1)。
【0172】
中間体VIIの合成
ベンジルアルコールVI(84.8g、385mmol)を無水CHCl(1L)に溶解させ、氷/水浴中で冷却した。NEt(110mL、770mmol)を添加した後、MsCl(45mL、577mmol)の無水CHCl(25mL)溶液を60分間にわたってゆっくり添加した。反応物を周囲温度にゆっくり加温し、さらに一晩撹拌した。飽和NaHCO水溶液(420mL)を添加し、反応混合物を激しくかき混ぜた。有機相を、水(2×500mL)およびブライン(300mL)で繰り返し洗浄した。次に、有機相を真空中で濃縮した。トルエン(200mL)およびCHCl(100mL)を残留物に添加し、粗製生成物を濃縮して、オレンジ色の半固体90g(収率:78.4%)を得た。R=0.71(石油エーテル/EtOAc 4:1)。
【0173】
Iの合成
PEG400(360g、900mmol)を無水THF(1L)に溶解させ、tBuOK(90g、802mmol)を周囲温度で15分間にわたって少しずつ添加し、混合物を周囲温度で60分間撹拌し、氷浴中で冷却した。その間に、メシレートVII(89.5g、300mmol)をTHF(300mL)に懸濁させ、乳濁したオレンジ色の溶液を、冷却した脱プロトン化PEG400溶液に20分間にわたって添加した。反応物を周囲温度にゆっくり加温し、さらに一晩撹拌した。氷(500g)ならびに1MのHCl水溶液(820mL)を添加した。THFを真空下で除去し、EtOAc(1L)を添加した。相をかき混ぜ、有機相を水(2×500mL)で逐次的に洗浄した。各水相をEtOAc(300mL)で逆抽出した。合わせた有機相を水(500ml)で洗浄し、真空中で濃縮した。トルエン(250mL)を残留物に添加し、粗製生成物を濃縮して、透明の黄色がかった油状物125.2gを得た。この残留物を、SiOプラグの上部に加え、CHCl/MeOH(0~8%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、淡褐色の透明油状物107.5g(収率:59.5%)を得た。Rf = 0.37-0.22 (CH2Cl2/MeOH 20:1). MS (ESI): m/z =[M+H]+= 573.5, 617.5 (100%), 661.6; [M+Ac]- = 631.4, 675.4 (100%), 719.5. 1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.33 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 4.52 (s, 2H), 3.72-3.58 (m, 33H), 2.54 (br s, 1H), 1.72 (s, 2H), 1.34 (s, 6H), 0.70 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 149.7, 135.1, 127.4 (2C), 126.2 (2C), 73.2, 72.6, 70.7 (m), 70.5, 69.4, 61.9, 57.0, 38.6, 32.5, 31.9 (3C), 31.6 (2C).
【0174】
(実施例5a)
4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートIの合成(方法2)
【化45】
【0175】
トルエン(35mL、328mmol)および濃縮HSO(10mL)を、丸底フラスコ内で0℃に冷却した。トルエン(27mL、256mmol)およびジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテン+2,4,4-トリメチル-2-ペンテンの3:1混合物として、10mL、64mmol)の混合物を、2時間にわたって反応混合物にゆっくり添加した。反応物を0℃でさらに2時間撹拌した。水(100mL)を添加した。相を分離した後、有機相を飽和NaHCO水溶液(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、透明な無色の油状物14gを得た。油状物を100mLの丸底フラスコに入れ、短経路蒸留装置(1・10-1mbar)で蒸留した。62~70℃の間で蒸留した画分(8.1g、収率61.9%)を収集した。R=0.65(石油エーテル40~60、100%)。
【0176】
p-置換トルエンX(500mg、2.45mmol)を、アセトニトリル(ACN)(5mL)に溶解させた。N-ブロモスクシンイミド(NBS)(460mg、2.57mmol)を添加し、溶解した後、25mLのDuran丸底フラスコを、ハロゲンランプ(300W)から15cm離して置いた。60分間照射した後(反応温度=45℃)、溶媒を除去した。石油エーテル40~60(25mL)を添加すると、固体が沈殿した。液体相を水(2×20mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、黄色がかった粗製油状物540mg(収率:77.9%)を得た。R=0.43(石油エーテル40~60、100%)。
【0177】
PEG400(2.25g、5.61mmol)を、無水THF(5mL)に周囲温度で溶解させた。tBuOK(420mg、3.74mmol)を、1分間にわたって少しずつ添加し、混合物を90分間撹拌し、次に氷/水浴中で0℃に冷却した。その間に、臭化ベンジル中間体XI(530mg、1.87mmol)をTHF(2mL)に懸濁させ、その溶液を、冷却した脱プロトン化PEG400溶液に添加した。反応物を周囲温度にゆっくり加温し、さらに一晩撹拌した。HCl(1M、20mL)、ならびにEtOAc(50mL)および水(20mL)を反応混合物に添加した。その溶液を、分液漏斗に移し、勢いよく抽出した。相を分離した後、有機相を、水(5×15mL)で逐次的に洗浄し、最後にMgSOで乾燥させて、粗製油性残留物0.8gを得た。この残留物を、SiOカラムの上部に加え、CHCl/MeOH(0~8%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、透明の黄色がかった油状物588mg(収率:52.2%)を得た。Rf = 0.37-0.22 (CH2Cl2/MeOH 20:1).
【0178】
(実施例5b)
4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートIの合成(方法2の変形法)
【化46】
【0179】
ステップ1
このステップを、以下の通り行った。
トルエン(750mL、7.04mol)および濃縮HSO(20mL、0.375mol)を、丸底フラスコ内で0℃に冷却した。トルエン(250mL、2.35mol)およびジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテン+2,4,4-トリメチル-2-ペンテンの3:1混合物として、200mL、1.28mol)の混合物を、90分間にわたって反応混合物にゆっくり添加した。反応物を0℃でさらに撹拌し、周囲温度に一晩加温した。氷(400g)を添加し、混合物を分液漏斗に移した。相を分離した後、有機相を飽和NaHCO水溶液(300mL)および水(2×250mL)で逐次的に洗浄した。有機相を濃縮して、透明な無色の油状物199.1gを得た。油状物を500mLの丸底フラスコに入れ、短経路蒸留装置(20mbar)で蒸留した。138℃~161℃の間で蒸留した画分を収集した(134.1g、収率51.4%)。R=0.65(石油エーテル40~60、100%)。1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.10 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H), 1.75 (s, 2H), 1.38 (s, 6H), 0.75 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 147.3, 134.7, 128.6 (2C), 126.1 (2C), 57.1, 38.4, 32.5, 31.9 (3C), 31.7 (2C), 21.0.
【0180】
あるいは、このステップを以下の通り行った。
トルエン(400mL、3.83mol)およびノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸(4mL、24mmol)を、丸底フラスコ内で周囲温度において撹拌した。トルエン(200mL、1.92mol)およびジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテン+2,4,4-トリメチル-2-ペンテンの3:1混合物として、100mL、0.64mol)の混合物を、60分間にわたって反応混合物にゆっくり添加した。反応物を周囲温度で一晩さらに撹拌した。飽和NaHCO水溶液(200mL)を添加し、混合物を20分間撹拌した。混合物を分液漏斗に移し、水相を破棄した。有機相を水(3×300mL)で逐次的に洗浄した。有機相を濃縮して、透明な無色の油状物132.5gを得た。油状物を500mLの丸底フラスコに入れ、短経路蒸留装置(26~16mbar)で蒸留した。115℃~135℃の間で蒸留した画分を収集した(80.5g、収率62%)。Rf = 0.65 (Petrol ether 40-60 100%). 1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.10 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H), 1.75 (s, 2H), 1.38 (s, 6H), 0.75 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 147.3, 134.7, 128.6 (2C), 126.1 (2C), 57.1, 38.4, 32.5, 31.9 (3C), 31.7 (2C), 21.0.
【0181】
ステップ2
このステップを、以下の通り行った。
p-置換トルエンX(63.6g、311mmol)を、アセトニトリル(ACN)(650mL)に溶解させた。N-ブロモスクシンイミド(NBS)(58.2g、327mmol)を添加し、溶解した後、2LのDuran丸底フラスコを、ハロゲンランプ(300W)から5~25cm離して置くと同時に、撹拌した(350rpm)。6時間照射した後(反応温度=46℃まで)、溶媒を真空下で除去した。石油エーテル40~60(450mL)を添加すると、暗色の固体が沈殿した。液体相を濃縮して、暗褐色の残留物(75g)を得た。この残留物を、SiOプラグの上部に加え、石油エーテル40~60(100%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、オレンジ色の透明油状物43.8g(収率:49.7%)を得た。R=0.43(石油エーテル40~60、100%)。1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.34 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.50 (s, 2H), 1.74 (s, 2H), 1.36 (s, 6H), 0.72 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 150.9, 134.8, 128.6 (2C), 126.7 (2C), 57.0, 38.7, 33.9, 32.5, 31.9 (3C), 31.6 (2C).
【0182】
あるいは、このステップを以下の通り行った。
p-置換トルエンX(85.2g、417mmol)を、トリフルオロトルエン(830mL)に溶解させた。エステルまたはアルカン(EtOAcおよびヘキサン)などの他の溶媒も有効である。N-ブロモスクシンイミド(NBS)(74.2g、417mmol)、ならびにAIBN(アゾビス(イソブチロニトリル)(3.4g、21mmol)を添加すると同時に、撹拌した(450rpm)。混合物を80℃に5時間加熱した。溶媒を真空下で除去した。石油エーテル40~60(350mL)を添加すると、白色の固体が沈殿した。液体相を濃縮して、透明なオレンジ色の残留物(108g)を得た。この残留物を、SiOプラグの上部に加え、石油エーテル40~60(100%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、透明なほぼ無色の油状物64.1g(収率:54.3%)が得られ、それを結晶化すると無色の針状物が形成され、高純度の生成物を示した。R=0.43(石油エーテル40~60、100%)1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.34 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.50 (s, 2H), 1.74 (s, 2H), 1.36 (s, 6H), 0.72 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 150.9, 134.8, 128.6 (2C), 126.7 (2C), 57.0, 38.7, 33.9, 32.5, 31.9 (3C), 31.6 (2C).ラジカル開始剤としてのAIBN(アゾビス(イソブチロニトリル)の使用は、この反応ステップで得られる生成物の高純度に寄与すると期待される。
【0183】
ステップ3
このステップを、以下の通り行った。
PEG400(184.1g、460mmol)を周囲温度で無水THF(550mL)に溶解させた。tBuOK(27.2g、245mmol)を少しずつ15分間にわたって添加し、混合物を90分間撹拌した。その間に、臭化ベンジル中間体XI(43.5g、153mmol)をTHF(300mL)に懸濁させ、その溶液を、冷却した脱プロトン化PEG400溶液に添加した。反応物を周囲温度で一晩撹拌した。HCl(1M、270mL)を反応混合物に添加した。揮発物を除去し、EtOAc(600mL)を添加した。溶液を分液漏斗に移し、勢いよく抽出した。相を分離した後、水相をEtOAc(300mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を、水/ブライン(1:1、3×300mL)で逐次的に洗浄し、最後に濃縮して、オレンジ色の粗製油状残留物90.4gを得た。この残留物を、SiOカラムの上部に加え、CHCl/MeOH(0~8%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、透明な淡褐色の油状物82.2g(収率:89.0%)を得た。Rf = 0.37-0.22 (CH2Cl2/MeOH 20:1). MS (ESI): m/z =[M+H]+= 573.5, 617.5 (100%), 661.6; [M+Ac]- = 631.4, 675.4 (100%), 719.5. 1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.33 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 4.52 (s, 2H), 3.72-3.58 (m, 33H), 2.54 (br s, 1H), 1.72 (s, 2H), 1.34 (s, 6H), 0.70 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 149.7, 135.1, 127.4 (2C), 126.2 (2C), 73.2, 72.6, 70.7 (m), 70.5, 69.4, 61.9, 57.0, 38.6, 32.5, 31.9 (3C), 31.6 (2C).
【0184】
あるいは、このステップを以下の通り行った。
PEG400(475g、1.19mol)を、TBME(メチル-tert-ブチルエーテル)(1.0L)に周囲温度で溶解させた。tBuOK(43.2g、385mmol)を、20分間にわたって少しずつ添加し、混合物を90分間撹拌した。その間に、臭化ベンジル中間体XI(84g、297mmol)をTBME(250mL)に懸濁させ、その溶液を脱プロトン化PEG400溶液に周囲温度で添加した。反応物を周囲温度で3時間撹拌した。氷(200g)およびHCl(1M、400mL)を反応混合物に添加した。溶液を分液漏斗に移し、EtOAc(1L)および水(500mL)を添加し、勢いよく抽出した。相を分離した後、有機相を水/ブライン(1:1、3×500mL)で逐次的に洗浄し、最後に濃縮して、オレンジ色の粗製油状残留物165gを得た。この残留物を、SiOカラムの上部に加え、CHCl/MeOH(0~10%)で溶出した。純粋な画分を濃縮することにより、透明な淡褐色の油状物151.7g(収率:84.9%)を得た。Rf = 0.37-0.22 (CH2Cl2/MeOH 20:1). MS (ESI): m/z =[M+H]+= 573.5, 617.5 (100%), 661.6; [M+Ac]- = 631.4, 675.4 (100%), 719.5. 1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 7.33 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 4.52 (s, 2H), 3.72-3.58 (m, 33H), 2.54 (br s, 1H), 1.72 (s, 2H), 1.34 (s, 6H), 0.70 (s, 9H). 13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ = 149.7, 135.1, 127.4 (2C), 126.2 (2C), 73.2, 72.6, 70.7 (m), 70.5, 69.4, 61.9, 57.0, 38.6, 32.5, 31.9 (3C), 31.6 (2C).溶媒としてのTBME(メチル-tert-ブチルエーテル)の使用、3時間の中程度の反応時間(反応副生成物を最小限に抑えると期待される)、より大きい製造規模、および出発材料(すなわち臭化ベンジル中間体XI)の純度は、すべてこの反応ステップで観測される高い収率に寄与すると期待される。
【0185】
(実施例6)
静脈内免疫グロブリンを含む液体中での4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを使用するPRVの不活化
材料および方法
実験を、先の実施例1に記載される通り実施した。しかし、S/D処理では、実施例5aで生成した4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを含むS/D混合物を試験し、Triton X-100を含むS/D混合物と比較した。Triton X-100を含むS/D混合物の組成物を、先の実施例1に記載される通り調製した。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを含むS/D混合物の組成物を、以下の通り調製した。
【0186】
S/D構成成分であるポリソルベート80(PS80、Crillet 4 HP、Tween(登録商標) 80)およびトリ-n-ブチル-ホスフェート(TnBP)を、以下の比で、実施例5aで生成した界面活性剤である4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートと合わせた(表10を参照されたい)。
【表10】
【0187】
混合物を少なくとも15分間撹拌した。S/D試薬ミックスを、使用のために室温で1年以内保存した。使用前に、S/D試薬ミックスを少なくとも15分間再び撹拌して、均質性を保証した。
【0188】
それぞれのS/D試薬ミックスをIVIG含有液に添加して、最終濃度0.05%w/wのそれぞれのポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を得た。
【0189】
ウイルスPRVの不活化だけを試験した。
【0190】
結果
IVIG含有液のS/D処理を、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、PS80およびTnBPの混合物を使用して実施した場合、PRVは、1~2分以内に約4のウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図9A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図9B)。
【0191】
これらの実験は、バイオ医薬品薬物含有液のS/D処理のために、Triton X-100を4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートによって置き換えると、低濃度の界面活性剤でも、脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることを示している。
【0192】
(実施例7)
ヒト血清アルブミンを含む液体中での4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを使用するX-MuLVの不活化
材料および方法
実験を、先の実施例3に記載される通り実施した。しかし、S/D処理では、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを含むS/D混合物を試験し、Triton X-100を含むS/D混合物と比較した。Triton X-100を含むS/D混合物の組成物を、先の実施例3に記載される通り調製した。4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを含むS/D混合物の組成物を、以下の通り調製した。
【0193】
S/D構成成分であるポリソルベート80(PS80、Crillet 4 HP、Tween(登録商標) 80)およびトリ-n-ブチル-ホスフェート(TnBP)を、以下の比で、界面活性剤である4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートと合わせた(表11を参照されたい)。
【表11】
【0194】
混合物を少なくとも15分間撹拌した。S/D試薬ミックスを、使用のために室温で1年以内保存した。使用前に、S/D試薬ミックスを少なくとも15分間再び撹拌して、均質性を保証した。
【0195】
それぞれのS/D試薬ミックスをHSA含有液に添加して、最終濃度0.1%のそれぞれのポリオキシエチレンエーテル界面活性剤を得た。
【0196】
ウイルスX-MuLVの不活化だけを試験した。
【0197】
結果
HSA含有液のS/D処理を、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、PS80およびTnBPの混合物を使用して1℃±1℃で実施した場合、X-MuLVは、10分以内に2を超えるウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図10A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図10B)。
【0198】
HSA含有液のS/D処理を1℃±1℃の代わりに19℃±1℃で実施したことのみを除き、追加実験を、この実施例の材料および方法の節に記載される通り正確に実施した。HSA含有液のS/D処理を、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、PS80およびTnBPの混合物を使用して19℃±1℃で実施した場合、X-MuLVは、10分以内に2を超えるウイルスクリアランス指数(RF)および30分以内に約4のRFによって不活化された(図11A)。反復実験では、類似の結果が得られた(図11B)。
【0199】
これらの実験は、バイオ医薬品薬物含有液のS/D処理のために、Triton X-100を4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートによって置き換えると、低濃度の界面活性剤でも、室温またはおよそ室温および1℃±1℃もの低温で脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることを示している。
【0200】
(実施例8)
HSAを含有する緩衝液中での4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、還元Triton X-100またはBrij C10を使用するBVDVの不活化
治療用抗体のためのモデルタンパク質としてヒト血清アルブミン(HSA)を含有する緩衝液中で、脂質エンベロープウイルスであるウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)を不活化するための単一界面活性剤による処理についての4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレート、還元Triton X-100またはBrij C10の適切性を試験し、Triton X-100と比較した。この目的を達成するために、低濃度のそれぞれの界面活性剤を、HSAを含有する緩衝液に添加し、次に、その混合物を、ウイルスでスパイクした。様々な期間にわたってインキュベートした後、ウイルスの残りの感染力を決定した。ウイルス不活化動態、すなわちウイルス不活化効率(RFによって表される)を経時的に評価できるようにするために、それぞれの界面活性剤を低濃度で使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、本発明の界面活性剤は、著しくより高濃度で使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるRFを増大することもできる。
【0201】
材料
HSAを含有する緩衝液
ヒト血清アルブミン(HSA)を含有する緩衝液を、治療用抗体のモデルとして使用した。
ウイルス
【表12】
【0202】
ウイルスストックを、使用前に特徴付けた。この特徴付けには、少なくとも10回の独立な滴定によるウイルス力価の決定および陽性対照として使用するための許容ウイルス力価範囲の特定、ウイルスストックタンパク質含量の決定、ウイルスの特定ならびに他のウイルスおよびマイコプラズマによる汚染についてのPCR試験、ならびに大型ウイルス凝集体を通過させないフィルターを用いるウイルス凝集についての試験が含まれていた。著しい凝集がなくPCRによる特定/汚染試験に合格したウイルスストック(すなわち、ウイルスストックと濾過ストックとの感染力価の差が、1.0logよりも小さかった)だけを使用した。
【0203】
界面活性剤
それぞれの界面活性剤、またはその1:10希釈物(すなわち、1g±2%のそれぞれの界面活性剤と9g±2%のAqua Dest)を使用する前に、少なくとも15分間撹拌して、均質性を保証した。
【0204】
方法
単一界面活性剤による処理のウイルス不活化能力およびロバスト性を、ウイルス不活化にとって不利な条件下で、すなわち短いインキュベーション時間および相対的に低温で評価した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より長いインキュベーション時間およびより高い温度を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。さらに、既に先に述べた通り、低濃度のそれぞれの界面活性剤を使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より高濃度のそれぞれの界面活性剤を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。
【0205】
タンパク質濃度は、ウイルス不活化に対して著しい影響を及ぼさないので(Dichtelmuller et al., 2009も参照されたい)、タンパク質含量に関するロバスト性は調査しなかった。
【0206】
以下のすべてのステップを、バイオセイフティクラスIIのキャビネット内で行った。出発材料を、インキュベーションのためにクリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、+14℃±1℃の温度における撹拌下でインキュベートした。
【0207】
HSAを含有する緩衝液を、風袋重量を決定したスクリューキャップ付きフラスコに移した。HSAを含有する緩衝液の重量(閉じたフラスコ中)を、添加すべき単一の界面活性剤の量を算出するために決定した。HSAを含有する緩衝液1g当たり必要な量([mg])の界面活性剤、またはそれぞれの量のその1:10希釈物を添加して、以下の最終濃度0.1%±0.01%(w/w)または0.03%±0.01%(w/w)のそれぞれの界面活性剤を得た。界面活性剤を、撹拌下でシリンジを使用して1分以内に添加し、添加した実際の量を、シリンジを逆秤量することによって決定した。界面活性剤の添加が完了した後、HSAを含有する緩衝液を少なくとも10分間さらに撹拌した。界面活性剤と混合したHSAを含有する緩衝液を、0.2μmのSuporシリンジ膜フィルター(または等価物)を介して濾過し、濾液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、14℃±1℃の標的温度で収集した。濾液のための容器を冷却した。フィルターが詰まった場合、HSAを含有する緩衝液を濾過し続けるために、新しいフィルターを使用した。濾過後、温度(標的:14℃±1℃)および体積を測定した。
【0208】
それぞれの界面活性剤を含む、HSAを含有する濾過した緩衝液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、撹拌下で14℃±1℃に調整した。この温度範囲を、HSAを含有する緩衝液の界面活性剤とのインキュベーションの最後まで撹拌下で維持し、継続的に記録した。界面活性剤を含む、HSAを含有する決定された体積の緩衝液を、1:31の比でスパイクし、例えば、HSAを含有する緩衝液48mLを、ウイルスストック溶液1.6mlでスパイクした。HSAを含有するスパイクした緩衝液を、継続的な撹拌下で、14℃±1℃で59±1分間、さらにインキュベートした。インキュベーション中、ウイルス滴定のための試料を、1~2分、5±1分、29±1分および59±1分に採取した。試料を抜き出した後の界面活性剤によるウイルスのさらなる不活化を防止するために、試料を、冷却した(+2℃~+8℃)それぞれの細胞培養培地ですぐに1:20希釈した(すなわち、1体積の試料と19体積の細胞培養培地)。
【0209】
スパイク対照およびホールド対照を、同日に実施した。HSAを含有する緩衝液を、界面活性剤を事前に添加しなかったことを除き、前述の通り濾過した。次に、濾液を、前述の通り撹拌下で14℃±1℃に調整した。HSAを含有する緩衝液を、前述の通り、1:31の比でスパイクし、14℃±1℃で59±1分間、さらにインキュベートした。スパイク後1~2分以内に、ウイルス滴定のための試料(スパイク対照)を採取した。59±1分間インキュベートした後、ウイルス滴定のための試料(すなわちホールド対照試料)(HC)を採取した。
【0210】
試料の滴定およびウイルスクリアランス能力の算出を、先の実施例1に記載される通り実施した。
【0211】
結果
HSAを含有する緩衝液の単一界面活性剤による処理を、0.1%±0.01%のTriton X-100、Brij C10、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用して14℃±1℃で実施した場合、BVDVは、5分以内に約5のウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図12A)。HSAを含有する緩衝液の単一界面活性剤による処理を、0.03%±0.01%のTriton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用して14℃±1℃で実施した場合、BVDVは、5分以内に3を超えるウイルスクリアランス指数(RF)および29分以内に4を超えるウイルスクリアランス指数によって不活化された(図12B)。
【0212】
これらの実験は、Triton X-100、Brij C10、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用するバイオ医薬品薬物含有液の単一界面活性剤による処理によって、低濃度の界面活性剤でも、脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることを示している。
【0213】
(実施例9)
IVIG含有液中での4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用するBVDVの不活化
静脈内免疫グロブリン(IVIG)を含む液体中で、脂質エンベロープウイルスであるウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)を不活化するための単一界面活性剤による処理についての4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100の適切性を試験し、Triton X-100と比較した。この目的を達成するために、ウイルスを、IVIGを含む液体に添加した。次に、IVIGを含むウイルス含有液を、低濃度の還元Triton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたはTriton X-100と共に、様々な期間にわたってインキュベートし、ウイルスの残りの感染力を決定した。ウイルス不活化動態、すなわちウイルス不活化効率(RFによって表される)を経時的に評価するために、還元Triton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートおよびTriton X-100を低濃度で使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、還元Triton X-100または4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを含む本発明の界面活性剤は、著しくより高濃度で使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することも期待される。
【0214】
材料
IVIGを含む液体
IVIGを含む液体(IVIG含有液)を、ドライアイス上で凍結させ、収集日後1年以内に使用するまで、≦-60℃で保存した。
ウイルス
【表13】
【0215】
ウイルスストックを、使用前に特徴付けた。この特徴付けには、少なくとも10回の独立な滴定によるウイルス力価の決定および陽性対照として使用するための許容ウイルス力価範囲の特定、ウイルスストックタンパク質含量の決定、ウイルスの特定ならびに他のウイルスおよびマイコプラズマによる汚染についてのPCR試験、ならびに大型ウイルス凝集体を通過させないフィルターを用いるウイルス凝集についての試験が含まれていた。著しい凝集がなくPCRによる特定/汚染試験に合格したウイルスストック(すなわち、ウイルスストックと濾過ストックとの感染力価の差が、1.0logよりも小さかった)だけを使用した。
【0216】
界面活性剤
それぞれの界面活性剤、またはその1:10希釈物(すなわち、1g±2%のそれぞれの界面活性剤と9g±2%のAqua Dest)を使用する前に、少なくとも15分間撹拌して、均質性を保証した。
【0217】
方法
単一界面活性剤による処理のウイルス不活化能力およびロバスト性を、ウイルス不活化にとって不利な条件下で、すなわち短いインキュベーション時間および相対的に低温で評価した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より長いインキュベーション時間およびより高い温度を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。さらに、既に先に述べた通り、低濃度のそれぞれの界面活性剤を使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より高濃度のそれぞれの界面活性剤を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。
【0218】
タンパク質濃度は、ウイルス不活化に対して著しい影響を及ぼさないので(Dichtelmuller et al., 2009も参照されたい)、タンパク質含量に関するロバスト性は調査しなかった。
【0219】
IVIG含有液を解凍し、すべてのさらなるステップを、バイオセイフティクラスIIのキャビネット内で行った。IVIG含有液を、インキュベーションのためにクリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、+17℃±1℃の温度における撹拌下でインキュベートした。次に、IVIG含有液を、Sartorius(SM16249)ステンレス鋼フィルターホルダーに接続した、有効なフィルター面積25cmを有する0.2μmのデプスフィルター(Cuno VR06または等価物)を介して、加圧窒素を使用して標的圧力0.9バール(限界:0.5バール~1.5バール)で濾過した。調整のために、フィルター材料を、55L/mのHyflo Supercel懸濁液(1L当たり5.0g±0.05gのHyflo Supercel;3MのNaClを使用して伝導率を3.5mS/cmに調整(特定範囲:2.5~6.0mS/cm))(圧力≦0.5バールで)で予めコーティングした後に、液体を濾過した。濾過中、フィルターホルダーを冷却し、濾液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、+17℃±1℃の標的温度で収集した。濾液のための容器を冷却した。フィルターが詰まった場合、残りの液体を濾過し続けるために、新しい事前調整フィルターを使用した。濾過後、体積を測定した。
【0220】
IVIG含有液の体積を測定した後、それを冷却した(+2℃~+8℃)希釈緩衝液(標的伝導率3.5mS/cm(範囲:2.5mS/cm~6.0mS/cm)のNaCl溶液)と共に、撹拌下で、算出標的吸光度28.9AU280~320/cm(範囲:14.5~72.3AU280~320/cm)に調整した。後の1:31ウイルススパイクを考慮すると、これによって、濾過後の界面活性剤とのインキュベーションでは28AU280~320/cm(範囲:14~70AU280~320/cm)の標的吸光度の算出値が得られた。
【0221】
濾過し、タンパク質調整したIVIG含有液を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、撹拌下で+17℃±1℃に再び調整した。この温度範囲を、界面活性剤との濾過したIVIG含有液のインキュベーションの最後まで撹拌下で維持し、継続的に記録した。風袋重量を決定したスクリューキャップ付きフラスコに移した、決定された体積の濾過したIVIG含有液を、1:31の比においてウイルスでスパイクし、例えば、IVIG含有液30mLを、ウイルスストック溶液1mLでスパイクした。スパイクしたIVIG含有液を、継続的な撹拌下で、17℃±1℃でさらにインキュベートした。スパイク後1~2分以内に、ウイルス滴定のための試料(スパイク対照、SC、およびホールド対照、HC)を採取した。
【0222】
抜き出した後、ホールド対照(HC)を、界面活性剤の添加後にスパイクしたIVIG含有液と同じ温度で、すなわち+17℃±1℃で維持し、すなわち界面活性剤処理の最後まで、IVIG含有液を入れた容器と同じ冷却サイクルで保存した。ホールド対照試料を挿入する前、およびホールド対照を界面活性剤処理後の滴定のために除去する直前に再び、冷却液の温度を決定した。
【0223】
スパイクしたIVIG含有液の重量を、添加すべき界面活性剤の量を算出するために決定した。秤量した材料を、必要に応じて撹拌下で+17℃±1℃に再調整した。IVIG含有液1g当たり必要な量([mg])の界面活性剤、またはそれぞれの量のその1:10希釈物を添加して、以下の最終濃度0.1%±0.01%(w/w)または0.03%±0.01%(w/w)のそれぞれの界面活性剤を得た。界面活性剤を、撹拌下でシリンジを使用して1分以内に添加し、添加した界面活性剤の実際の量を、シリンジを逆秤量することによって決定した。スパイクしたIVIG含有液を、+17℃±1℃で59±1分間、継続的な撹拌下で、それぞれの界面活性剤と共にさらにインキュベートした。インキュベーション中、ウイルス滴定のための試料1mLを、1~2分後、10±1分後、30±1分後および59±1分後に採取した。試料を抜き出した後のS/D試薬によるウイルスのさらなる不活化を防止するために、試料を、冷却した(+2℃~+8℃)細胞培養培地ですぐに1:20希釈した(すなわち、1体積の試料と19体積の細胞培養培地)。
【0224】
試料の滴定およびウイルスクリアランス能力の算出を、先の実施例1に記載される通り実施した。
【0225】
結果
IVIG含有液の単一界面活性剤による処理を、0.1%±0.01%のTriton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用して17℃±1℃で実施した場合、BVDVは、10分以内に約5のウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図13A)。IVIG含有液の単一界面活性剤による処理を、0.03%±0.01%のTriton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用して17℃±1℃で実施した場合、BVDVは、10分以内に3を超えるウイルスクリアランス指数(RF)および30分以内に4を超えるウイルスクリアランス指数によって不活化された(図13B)。
【0226】
これらの実験では、Triton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用するバイオ医薬品薬物含有液の単一界面活性剤による処理によって、低濃度の界面活性剤でも、脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることが確認される。
【0227】
(実施例10)
FVIII含有液中での4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用するBVDVの不活化
【0228】
血漿由来第VIII因子(pdFVIII)を含む液体中で、脂質エンベロープウイルスであるウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)を不活化するための単一界面活性剤による処理についての4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100の適切性を試験し、Triton X-100と比較した。この目的を達成するために、ウイルスを、pdFVIIIを含む液体に添加した。次に、pdFVIIIを含むウイルス含有液を、低濃度の還元Triton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたはTriton X-100と共に、様々な期間にわたってインキュベートし、ウイルスの残りの感染力を決定した。ウイルス不活化動態、すなわちウイルス不活化効率(RFによって表される)を経時的に評価するために、還元Triton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートおよびTriton X-100を低濃度で使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、還元Triton X-100または4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートを含む本発明の界面活性剤は、著しくより高濃度で使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することも期待される。
【0229】
材料
pdFVIIIを含む液体
pdFVIIIを含む液体(pdFVIII含有液)を、ドライアイス上で凍結させ、収集日後1年以内に使用するまで、≦-60℃で保存した。
ウイルス
【表14】
【0230】
ウイルスストックを、使用前に特徴付けた。この特徴付けには、少なくとも10回の独立な滴定によるウイルス力価の決定および陽性対照として使用するための許容ウイルス力価範囲の特定、ウイルスストックタンパク質含量の決定、ウイルスの特定ならびに他のウイルスおよびマイコプラズマによる汚染についてのPCR試験、ならびに大型ウイルス凝集体を通過させないフィルターを用いるウイルス凝集についての試験が含まれていた。著しい凝集がなくPCRによる特定/汚染試験に合格したウイルスストック(すなわち、ウイルスストックと濾過ストックとの感染力価の差が、1.0logよりも小さかった)だけを使用した。
【0231】
界面活性剤
それぞれの界面活性剤、またはその1:10希釈物(すなわち、1g±2%のそれぞれの界面活性剤と9g±2%のAqua Dest)を使用する前に、少なくとも15分間撹拌して、均質性を保証した。
方法
【0232】
単一界面活性剤による処理のウイルス不活化能力およびロバスト性を、ウイルス不活化にとって不利な条件下で、すなわち短いインキュベーション時間で評価した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より長いインキュベーション時間を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。さらに、既に先に述べた通り、低濃度のそれぞれの界面活性剤を使用した。当業者に明らかであるように、バイオ医薬品の生成などの商業生成プロセスでは、より高濃度のそれぞれの界面活性剤を使用することができ、それによって、ウイルス不活化動態を促進し、達成されるLRVを増大することもできる。
【0233】
タンパク質濃度は、ウイルス不活化に対して著しい影響を及ぼさないので(Dichtelmuller et al., 2009も参照されたい)、タンパク質含量に関するロバスト性は調査しなかった。
【0234】
pdFVIII含有液を解凍し、すべてのさらなるステップを、バイオセイフティクラスIIのキャビネット内で行った。存在し得る目に見える凝集体を除去するために、pdFVIII含有液を、0.45μmの膜フィルター(例えばSartorius SartoScale Sartobranまたは等価物)を介して濾過した。pdFVIII含有液を、風袋重量を決定したスクリューキャップ付きフラスコに移し、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、撹拌下で+23℃±1℃の標的温度に調整した。決定された体積のpdFVIII含有液を、1:31の比でスパイクし、例えば、pdFVIII含有液48mLを、ウイルスストック溶液1.6mLでスパイクした。その後、ウイルス滴定のための試料(スパイク対照、SC)およびホールド対照(HC)のための試料を採取した。
【0235】
ホールド対照を、界面活性剤の添加後にスパイクしたpdFVIII含有液と同じ温度で、すなわち+23℃±1℃で維持し、すなわち界面活性剤処理の最後まで、pdFVIII含有液を入れた容器と同じ冷却サイクルで保存した。ホールド対照試料を挿入する前、およびホールド対照を界面活性剤処理後の滴定のために除去する直前に再び、冷却液の温度を決定した。
【0236】
スパイクしたpdFVIII含有液の重量を、添加すべき界面活性剤の量を算出するために決定した。秤量した材料を、クリオスタットに接続した二重壁容器を使用して、撹拌下で+23℃±1℃に調整した。この温度範囲を、界面活性剤とのスパイクしたpdFVIII含有液のインキュベーションの最後まで撹拌下で維持し、継続的に記録した。pdFVIII含有液1g当たり必要な量([mg])の界面活性剤、またはそれぞれの量のその1:10希釈物を添加して、最終界面活性剤濃度0.1%±0.01%(w/w)を得た。界面活性剤を、撹拌下でシリンジを使用して1分以内に添加し、添加した界面活性剤の実際の量を、シリンジを逆秤量することによって決定した。界面活性剤の添加が完了した後、スパイクしたpdFVIII含有液を+23℃±1℃で59±1分間、継続的な撹拌下でさらにインキュベートした。
【0237】
インキュベーション中、ウイルス滴定のための試料1mLを、1~2分後、5±1分後、30±1分後および59±1分後に採取した。
【0238】
試料を抜き出した後の界面活性剤によるウイルスのさらなる不活化を防止するために、試料を、冷却した(+2℃~+8℃)それぞれの細胞培養培地ですぐに1:20希釈した(すなわち、1体積の試料と19体積の細胞培養培地)。
【0239】
試料の滴定およびウイルスクリアランス能力の算出を、先の実施例1に記載される通り実施した。
【0240】
結果
pdFVIII含有液の単一界面活性剤による処理を、0.1%±0.01%のTriton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用して23℃±1℃で実施した場合、BVDVは、5分以内に約5のウイルスクリアランス指数(RF)によって不活化された(図14)。
【0241】
これらの実験では、Triton X-100、4-tert-オクチルベンジルアルコールポリエトキシレートまたは還元Triton X-100を使用するバイオ医薬品薬物含有液の単一界面活性剤による処理によって、低濃度の界面活性剤でも、脂質エンベロープウイルスが効率的に不活化されることが確認される。
【0242】
(実施例11)
毒性試験
コンピューターデータに基づくと、本発明による界面活性剤のいずれについても、内分泌撹乱物質として活性であるという証拠は見出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明の方法、プロセスおよび生成物は、例えば、工業製造プロセスにおける脂質エンベロープウイルスの環境適合性の不活化のために商業的に有用である。例えば、本発明は、バイオ医薬品の工業生成において使用することができる。したがって、本発明は、産業上利用可能である。
【0244】
参考文献
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