(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜および合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240208BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240208BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
C03C27/12 F
B60J1/00 H
B32B17/10
(21)【出願番号】P 2020527653
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025680
(87)【国際公開番号】W WO2020004577
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2018124594
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】有嶋 裕之
【審査官】菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0082669(US,A1)
【文献】国際公開第2016/076339(WO,A1)
【文献】特開2016-108229(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00-43/00
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層、C層、A層をこの順に含み、これらの層の間または外側の任意の箇所にB層を含
み、ただし、前記順におけるA層とC層の間および/またはC層とA層の間にはB層を含まない、合わせガラス用中間膜であって、
前記A層は第1の熱可塑性樹脂を含有する層であり、A層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-10:2005に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定されるtanδが最大となるピークを-30℃以上10℃以下の範囲に有し、A層の少なくとも1層の樹脂材料の当該tanδピークの高さは1.5以上であり、
前記C層は
、厚さが0.25mm以上2.5mm以下であって第3の熱可塑性樹脂
として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂のいずれかを含有する層であり
、C層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率が1.0GPa以上であり、
前記B層は
、第2の熱可塑性樹脂
としてのポリビニルアセタール樹脂および水酸基を有する可塑剤を含有する層であり、前記A層を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料から構成されている、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記A層は第1の熱可塑性樹脂として、芳香族ビニル単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(a)と共役ジエン単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(b)とを有するブロック共重合体の水素添加物を含有し、ブロック共重合体の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量は、ブロック共重合体の水素添加物の総質量に対して25質量%以下である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量は50質量部以下である、請求項1
または2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記可塑剤は融点が30℃以下であり、水酸基価15~450mgKOH/gであるエステル系可塑剤またはエーテル系可塑剤である、請求項
1~3のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラスと縦300mm、横25mm、厚さ0.55mmの化学強化された無機ガラスとを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数は0.55以上である、請求項1~
4のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1-a)と、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラスおよび縦300mm、横25mm、厚さ0.55mmの化学強化された無機ガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数およびISO16940:2008に準じて算出される当該3次共振周波数での曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2-a)との差ΔTLは、1000Hz以上の1/3オクターブ帯域の各中心周波数において4.1dB以下である、請求項1~
5のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数は0.55以上である、請求項1~
6のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1-b)と、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数およびISO16940:2008に準じて算出される当該3次共振周波数での曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2-b)との差ΔTLは、1000Hz以上の1/3オクターブ帯域の各中心周波数において4.1dB以下である、請求項1~
7のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記合わせガラス用中間膜における少なくとも1つの層は遮熱材料を含んでなる、請求項1~
8のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記遮熱材料は、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、金属ドープ酸化タングステン、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、ケイ素ドープ酸化亜鉛、六ホウ化ランタンおよび酸化バナジウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項
9に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記合わせガラス用中間膜における少なくとも1つの層は紫外線吸収剤を含んでなる、請求項1~
10のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物、マロン酸エステル系化合物、インドール系化合物およびシュウ酸アニリド系化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項
11に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記合わせガラス用中間膜は少なくともB層、A層、C層、A層をこの順に含む、請求項1~
12のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
2つの透明基材の間に請求項1~
13のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラスであって、透明基材のうちの少なくとも1つは厚さが1.2~3.0mmの無機ガラスである、合わせガラス。
【請求項15】
乗物用フロントガラス、乗物用サイドガラス、乗物用サンルーフ、乗物用リアガラスまたはヘッドアップディスプレイ用ガラスである、請求項
14に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用中間膜および合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラス等に使用されているガラス板は耐久性および採光性に優れているが、ダンピング性能(屈曲振動に対するtanδ)が非常に小さいことが知られている。このためガラスの振動と入射音波とで起こる共振状態、即ちコインシデンス効果による遮音性の低下は顕著である。
近年、合わせガラスを軽量化することにより、乗物(例えば自動車)を軽量化し、燃費を向上させる取り組みがなされている。一般には、合わせガラスの厚さを薄くすることによって軽量化できるが、その重量減少分に応じた遮音性の低下が生じるため、重量減少の実現には遮音性の低下を補う手段が求められている。
【0003】
遮音性を高める方法として、ダンピング性能に優れた合わせガラス用中間膜(以下、単に「中間膜」と称することもある)を用いる方法がある。中間膜は、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで振動エネルギーを吸収する能力を有する。そのような中間膜の例として、ポリビニルブチラールからなり、一定の耐衝撃性および遮音性を有する合わせガラス用中間膜(例えば特許文献1参照)、ポリスチレンとゴム系樹脂との共重合体からなる樹脂膜Aを可塑化ポリビニルアセタール系樹脂からなる樹脂膜Bで挟着されてなる中間膜(例えば特許文献2参照)、およびポリビニルアセタールと可塑剤とを含む第1の層が10層以上積層されている積層体を有する中間膜(例えば特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/018969号パンフレット
【文献】特開2007-91491号公報
【文献】国際公開第2013/031884号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載されるような合わせガラス用中間膜を用いた場合であっても、合わせガラスにおけるその遮音特性は十分に満足のいくものではなく、さらなる車内環境の快適さ、または合わせガラスの軽量化による自動車の燃費改善に対する要求等から、より一層の遮音特性の改善が求められている。
【0006】
したがって、本発明は高い遮音特性を有する合わせガラス用中間膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の材料で構成される層A、層Bおよび層Cを特定の順に含む合わせガラス用中間膜により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
〔1〕A層、C層、A層をこの順に含み、これらの層の間または外側の任意の箇所にB層を含む合わせガラス用中間膜であって、前記A層は第1の熱可塑性樹脂を含有する層であり、A層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-10:2005に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定されるtanδが最大となるピークを-30℃以上10℃以下の範囲に有し、A層の少なくとも1層の樹脂材料の当該tanδピークの高さは1.5以上であり、前記C層は、厚さが0.1mm以上1.5mm以下である無機ガラスからなる層であるか、または厚さが0.25mm以上2.5mm以下であって第3の熱可塑性樹脂を含有する層であり、C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、C層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率が1.0GPa以上であり、前記B層は第2の熱可塑性樹脂を含有する層であり、前記A層を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料から構成されている、合わせガラス用中間膜。
〔2〕前記A層は第1の熱可塑性樹脂として、芳香族ビニル単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(a)と共役ジエン単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(b)とを有するブロック共重合体の水素添加物を含有し、ブロック共重合体の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量は、ブロック共重合体の水素添加物の総質量に対して25質量%以下である、上記〔1〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔3〕前記B層は第2の熱可塑性樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂を含有する、上記〔1〕または〔2〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔4〕前記ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量は50質量部以下である、上記〔3〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔5〕前記可塑剤は融点が30℃以下であり、水酸基価15~450mgKOH/gであるエステル系可塑剤またはエーテル系可塑剤である、上記〔4〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔6〕前記無機ガラスは化学強化された無機ガラスである、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔7〕前記C層は第3の熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂またはポリビニルアセタール樹脂のいずれかを含有する、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔8〕前記ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量は30質量部以下である、請求項〔7〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔9〕前記可塑剤は融点が30℃以下であり、水酸基価が15~450mgKOH/gであるエステル系可塑剤またはエーテル系可塑剤である、請求項〔8〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔10〕縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラスと縦300mm、横25mm、厚さ0.55mmの化学強化された無機ガラスとを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数は0.55以上である、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔11〕0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1-a)と、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラスおよび縦300mm、横25mm、厚さ0.55mmの化学強化された無機ガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数およびISO16940:2008に準じて算出される当該3次共振周波数での曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2-a)との差ΔTLは、1000Hz以上の1/3オクターブ帯域の各中心周波数において4.1dB以下である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔12〕縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数は0.55以上である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔13〕0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1-b)と、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスにおいて、20℃で中央加振法により測定される3次共振周波数での損失係数およびISO16940:2008に準じて算出される当該3次共振周波数での曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2-b)との差ΔTLは、1000Hz以上の1/3オクターブ帯域の各中心周波数において4.1dB以下である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔14〕前記合わせガラス用中間膜における少なくとも1つの層は遮熱材料を含んでなる、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔15〕前記遮熱材料は、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、金属ドープ酸化タングステン、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、ケイ素ドープ酸化亜鉛、六ホウ化ランタンおよび酸化バナジウムからなる群から選択される少なくとも1つである、上記〔14〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔16〕前記合わせガラス用中間膜における少なくとも1つの層は紫外線吸収剤を含んでなる、上記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔17〕前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物、マロン酸エステル系化合物、インドール系化合物およびシュウ酸アニリド系化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、上記〔16〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔18〕前記合わせガラス用中間膜は少なくともA層、B層、C層、B層、A層をこの順に含み、当該C層と2つの当該B層とは直接隣接しており、当該C層は無機ガラスからなる層である、上記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔19〕前記合わせガラス用中間膜は少なくともB層、A層、C層、A層をこの順に含む、上記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
〔20〕前記C層は第3の熱可塑性樹脂を含有する層である、上記〔19〕に記載の合わせガラス用中間膜。
〔21〕2つの透明基材の間に上記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラスであって、透明基材のうちの少なくとも1つは厚さが1.2~3.0mmの無機ガラスである、合わせガラス。
〔22〕乗物用フロントガラス、乗物用サイドガラス、乗物用サンルーフ、乗物用リアガラスまたはヘッドアップディスプレイ用ガラスである、上記〔21〕に記載の合わせガラス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い遮音特性を有する中間膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の合わせガラス用中間膜の一態様である構成を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の合わせガラス用中間膜の一態様である構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0011】
本発明の合わせガラス用中間膜は、A層、C層、A層をこの順に含み、これらの層の間または外側の任意の箇所にB層を含む。A層は第1の熱可塑性樹脂を含有する層であり、A層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-10:2005に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定されるtanδが最大となるピークを-30℃以上10℃以下の範囲に有し(以下、この温度を「tanδピーク温度」と称することもある)、A層の少なくとも1層の樹脂材料の当該tanδピークの高さ(以下、「tanδピーク高さ」と称することもある)は1.5以上である。C層は、厚さが0.1mm以上1.5mm以下である無機ガラスからなる層であるか、または厚さが0.25mm以上2.5mm以下であって第3の熱可塑性樹脂を含有する層であり、C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、C層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率が1.0GPa以上である。ここで、C層が無機ガラスで構成される場合であっても、本発明では、便宜上、「中間膜」として記載する。B層は第2の熱可塑性樹脂を含有する層であり、A層を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料から構成されている。
【0012】
<A層>
本発明の合わせガラス用中間膜は、第1の熱可塑性樹脂を含有するA層を少なくとも2層含む。A層は、A層、C層、A層の順で合わせガラス用中間膜に含まれることで合わせガラス用中間膜に高い遮音性をもたらす層である。A層を構成する樹脂材料は、第1の熱可塑性樹脂からなるか、または第1の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる。A層を構成する樹脂材料が上述のtanδピーク温度およびtanδピーク高さの条件を満たす限り、第1の熱可塑性樹脂は特に制限されない。ここで、複数のA層のうち、いずれか1層がtanδピーク高さの条件を満たしていればよいが、全てのA層が満たしていることがより好ましい。好ましくは、A層は第1の熱可塑性樹脂として、芳香族ビニル単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(a)と共役ジエン単量体単位を60モル%以上含む重合体ブロック(b)とを有するブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(A)」と称することもある)の水素添加物を含有し、ブロック共重合体の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量は、ブロック共重合体の水素添加物の総質量に対して25質量%以下である。
【0013】
芳香族ビニル単量体単位を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチル-o-メチルスチレン、α-メチル-m-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、β-メチル-o-メチルスチレン、β-メチル-m-メチルスチレン、β-メチル-p-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチル-2,6-ジメチルスチレン、α-メチル-2,4-ジメチルスチレン、β-メチル-2,6-ジメチルスチレン、β-メチル-2,4-ジメチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、α-クロロ-o-クロロスチレン、α-クロロ-m-クロロスチレン、α-クロロ-p-クロロスチレン、β-クロロ-o-クロロスチレン、β-クロロ-m-クロロスチレン、β-クロロ-p-クロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、α-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、α-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-ブロモメチルスチレン、m-ブロモメチルスチレン、p-ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデンおよびビニルナフタレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、製造コストおよび物性バランスの観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンおよびこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0014】
重合体ブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、重合体ブロック(a)を構成する全構成単位に対して、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、実質的に100モル%であってもよい。重合体ブロック(a)における芳香族ビニル単量体単位の含有量が前記下限値以上であると、良好な成形性または機械的強度を得やすい。
【0015】
重合体ブロック(a)は、本発明の目的および効果の妨げにならない範囲において、芳香族ビニル単量体単位以外の他の不飽和単量体に由来する構成単位を含有していてもよい。他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、イソブチレン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネンおよび2-メチレンテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0016】
重合体ブロック(a)中の他の不飽和単量体単位の含有量は、重合体ブロック(a)を構成する全構成単位に対して、好ましくは40モル%未満、より好ましくは20モル%未満、より好ましくは15モル%未満、さらに好ましくは10モル%未満、特に好ましくは5モル%未満である。本発明の好適な一実施態様において、重合体ブロック(a)は、上記した他の不飽和単量体単位を実質的に含まない。重合体ブロック(a)が上記した他の不飽和単量体に由来する単位を含有する場合、その結合形態は特に制限されるものではなく、ランダム状またはテーパー状のいずれでもよい。
【0017】
なお、ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a)中の芳香族ビニル単量体単位の含有量および他の不飽和単量体単位の含有量は、ブロック共重合体(A)の1H-NMRスペクトルから求められ、ブロック共重合体(A)の調製において各単量体の仕込み比を調節することにより所望の含有量に調整できる。
【0018】
ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(a)を2つ以上有する場合には、それらの重合体ブロック(a)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、本明細書において「重合体ブロックが異なる」とは、重合体ブロックを構成する単量体単位、重量平均分子量、立体規則性、並びに複数の単量体単位を有する場合には各単量体単位の比率および共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうちの少なくとも1つが異なることを意味する。このことは、後述する重合体ブロック(b)においても同じである。
【0019】
ブロック共重合体(A)に含まれる重合体ブロック(a)の重量平均分子量(Mw)は特に制限されない。ブロック共重合体(A)が含む重合体ブロック(a)のうち少なくとも1つの重合体ブロック(a)の重量平均分子量は、好ましくは3,000~60,000、より好ましくは4,000~50,000である。ブロック共重合体(A)が前記範囲内の重量平均分子量である重合体ブロック(a)を少なくとも1つ有することにより、機械的強度がより向上し、良好な製膜性を得やすい。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0020】
重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下であり、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上である。重合体ブロック(a)のガラス転移温度が前記した下限値と上限値との範囲内であると、A層を構成する樹脂材料のせん断貯蔵弾性率を特定の範囲に制御しやすくなり、得られる中間膜の遮音性の向上につながるとともに、機械的強度を高くできる。重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定され、ブロック共重合体(A)の調製において各単量体の仕込み比を調節することにより所望の範囲に調整できる。
【0021】
ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量〔複数の重合体ブロック(a)を有する場合はそれらの合計含有量〕は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して好ましくは25質量%以下である。ブロック共重合体(A)のモルフォロジーによってtanδの値も変化し、特にスフィア構造からなるミクロ相分離構造をとる場合にtanδが高くなる傾向にある。スフィア構造の形成のしやすさには、ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量が大きく影響するため、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対する重合体ブロック(a)の含有量を好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下に調整することは、得られる中間膜の遮音性をより向上させる上で非常に有利である。前記した重合体ブロック(a)の含有量は、より好ましくは14質量%以下、より好ましくは13質量%以下、より好ましくは12.5質量%以下、より好ましくは11質量%以下、特に好ましくは9質量%以下である。遮音性の観点から、前記した重合体ブロック(a)の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは3.5質量%以上である。本発明の一実施態様において、前記した重合体ブロック(a)の含有量は好ましくは3~25質量%(例えば3~15質量%)である。一方で、A層の取扱性および機械物性を高めやすい観点からは、前記した重合体ブロック(a)の含有量は好ましくは6~25質量%(例えば6~15質量%)、より好ましくは8~25質量%(例えば8~15質量%)、特に好ましくは10~25質量%(例えば10~15質量%)である。また、本発明の一実施態様において、前記した重合体ブロック(a)の含有量は好ましくは3.5~25質量%(例えば3.5~15質量%)、より好ましくは4~25質量%(例えば4~15質量%)であって、重合体ブロック(a)の含有量が前記範囲内であると、高い遮音性を確保しつつ、得られるA層の取扱性および機械物性を高めることができる。
なお、ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(a)の含有量は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の1H-NMRスペクトルから求められ、ブロック共重合体(A)の調製において各単量体の仕込み比を調節することにより所望の範囲に調整できる。
【0022】
重合体ブロック(b)に含まれる共役ジエン単量体単位を構成する共役ジエン化合物としては、例えばイソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびミルセン等を挙げることができる。共役ジエン化合物は1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、入手しやすさ、汎用性、および後述する結合形態の制御性等の観点から、イソプレン、ブタジエン、およびイソプレンとブタジエンとの混合物が好ましく、イソプレンがより好ましい。
【0023】
共役ジエン化合物として、ブタジエンとイソプレンとの混合物を用いてもよい。その混合比率[イソプレン/ブタジエン](質量比)に特に制限はないが、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、さらに好ましくは40/60~70/30、特に好ましくは45/55~65/35である。なお、前記混合比率[イソプレン/ブタジエン]をモル比で示すと、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、さらに好ましくは40/60~70/30、特に好ましくは45/55~55/45である。
【0024】
重合体ブロック(b)における共役ジエン単量体単位の含有量は、重合体ブロック(b)を構成する全構成単位に対して、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、特に好ましくは80モル%以上である。前記した共役ジエン単量体単位の含有量が前記下限値以上であると、遮音特性を発揮するセグメントの量が十分となり、遮音性に優れた中間膜を得やすい。前記した共役ジエン単量体単位の含有量の上限値は特に限定されない。共役ジエン単量体単位の含有量は100モル%であってもよい。
【0025】
重合体ブロック(b)は、1種の共役ジエン化合物に由来する構成単位のみを有していてもよく、2種以上の共役ジエン化合物に由来する構成単位を有していてもよい。先に述べた通り本発明では重合体ブロック(b)が共役ジエン単量体単位を60モル%以上含有することが好ましい。重合体ブロック(b)が共役ジエン単量体単位として、イソプレンに由来する構成単位(以下、「イソプレン単位」と略称することがある)、ブタジエンに由来する構成単位(以下、「ブタジエン単位」と略称することがある)、またはイソプレン単位とブタジエン単位との合計量を、それぞれの場合において60モル%以上含有することが好ましい。このことにより、遮音性に優れた中間膜を得やすい。
重合体ブロック(b)が2種以上の共役ジエン単量体単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロック、またはそれらの2種以上の組み合わせのいずれでもよい。
【0026】
重合体ブロック(b)は、本発明の目的および効果の妨げにならない範囲において、共役ジエン単量体単位以外の他の重合性単量体に由来する構成単位を含有していてもよい。他の重合性単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物、並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフラン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエンおよび1,3-シクロオクタジエン等が挙げられる。中でも、スチレン、α-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。重合体ブロック(b)が上記した他の重合性単量体単位を含有する場合、その具体的な組み合わせとしては、好ましくは、イソプレンとスチレン、ブタジエンとスチレンであり、より好ましくはイソプレンとスチレンである。重合体ブロック(b)がこのような組み合わせを含む場合、A層を構成する樹脂材料のtanδが高くなることがある。
【0027】
重合体ブロック(b)における他の重合性単量体単位の含有量は、重合体ブロック(b)を構成する全構成単位に対して、好ましくは40モル%未満、より好ましくは35モル%未満、特に好ましくは20モル%未満である。重合体ブロック(b)が上記した他の重合性単量体単位を含有する場合、その結合形態は特に制限はなく、ランダムまたはテーパー状のいずれでもよい。
【0028】
なお、ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(b)中の共役ジエン単量体単位の含有量および他の重合性単量体単位の含有量は、ブロック共重合体(A)の1H-NMRスペクトルから求められ、ブロック共重合体(A)の調製において各単量体の仕込み比を調節することにより所望の含有量に調整できる。
【0029】
重合体ブロック(b)を構成する構成単位が、イソプレン単位またはブタジエン単位を含む場合、イソプレンの結合形態としては1,2-結合、3,4-結合または1,4-結合をとることができ、ブタジエンの結合形態としては1,2-結合または1,4-結合をとることができる。
ブロック共重合体(A)における重合体ブロック(b)中の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量(以下、「ビニル結合量」と称することがある)の合計は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上である。また、特に制限されるものではないが、上記したビニル結合量の合計は好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下である。ここで、ビニル結合量は、水素添加前のブロック共重合体(A)をCDCl3に溶解して1H-NMRスペクトルを測定して算出される。重合体ブロック(b)を構成する構成単位がイソプレン単位のみからなる場合は、イソプレン単位の全ピーク面積と3,4-結合単位および1,2-結合単位に対応するピーク面積との比からビニル結合量は算出される。重合体ブロック(b)を構成する構成単位がブタジエン単位のみからなる場合は、ブタジエン単位の全ピーク面積と1,2-結合単位に対応するピーク面積との比からビニル結合量は算出される。重合体ブロック(b)を構成する構成単位がイソプレン単位およびブタジエン単位を含む場合は、イソプレン単位およびブタジエン単位の全ピーク面積とイソプレン単位における3,4-結合単位および1,2-結合単位並びにブタジエン単位における1,2-結合単位に対応するピーク面積との比からビニル結合量は算出される。
【0030】
ビニル結合量が増えるほどA層を構成する樹脂材料のtanδの値が高くなる傾向にあり、このtanδのピークの位置を特定の温度範囲に制御することにより、得られる中間膜の遮音性を向上させることができる。ビニル結合量は、例えばブロック共重合体(A)を製造するためのアニオン重合の際に用いる有機ルイス塩基の添加量を調節することによって所望の範囲に調整できる。
【0031】
ブロック共重合体(A)に含まれる重合体ブロック(b)の重量平均分子量は、遮音性等の観点から、水素添加前の状態で、好ましくは15,000~800,000、より好ましくは50,000~700,000、さらに好ましくは70,000~600,000、特に好ましくは90,000~500,000、最も好ましくは130,000~450,000である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、重合体ブロック(b)の重量平均分子量とは、重合体ブロック(b)を共重合する前後の重量平均分子量の差により算出した値を意味する。
【0032】
重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下であり、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上である。重合体ブロック(b)のガラス転移温度が前記した下限値と上限値との範囲内であると、A層を構成する樹脂材料のtanδピーク温度を特定の範囲に制御しやすくなり、得られる中間膜の遮音性の向上につながる。重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定され、ブロック共重合体(A)の調製において各単量体の仕込み比を調節することにより所望の範囲に調整できる。
【0033】
ブロック共重合体(A)は、上記重合体ブロック(b)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(b)を2つ以上有する場合には、それらの重合体ブロック(b)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(b)の含有量〔複数の重合体ブロック(b)を有する場合にはそれらの合計含有量〕は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対して好ましくは75~97質量%(例えば85~97質量%)である。重合体ブロック(b)の含有量が上記範囲内にあると、ブロック共重合体(A)の水素添加物が適度な柔軟性または良好な成形性を有しやすい。また、ブロック共重合体(A)の水素添加物のモルフォロジーによってtanδの値も変化し、特にスフィア構造からなるミクロ相分離構造をとる場合にtanδが高くなる傾向にある。スフィア構造の形成のしやすさには、ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(b)の含有量が大きく影響するため、ブロック共重合体(A)の水素添加物の総質量に対する重合体ブロック(b)の含有量を好ましくは75~97質量%(例えば85~97質量%)に調整することは、得られる中間膜の遮音性をより向上させる上で非常に有利である。前記した重合体ブロック(b)の含有量は、より好ましくは75~96.5質量%(例えば85~96.5質量%)、さらに好ましくは75~96質量%(例えば85~96質量%)、特に好ましくは80~96質量%(例えば90~96質量%)である。一方で、A層の取扱性および機械物性を高めやすい観点からは、前記した重合体ブロック(b)の含有量は、好ましくは75~94質量%(例えば85~94質量%)、より好ましくは75~92質量%(例えば85~92質量%)、特に好ましくは75~90質量%(例えば85~90質量%)である。また、本発明の好適な一実施態様において、前記した重合体ブロック(b)の含有量は75~96.5質量%(例えば85~96.5質量%)であり、重合体ブロック(b)の含有量がこの範囲内にあると、高い遮音性を確保しつつ、得られるA層の取扱性および機械物性を高めることができる。
なお、ブロック共重合体(A)の水素添加物における重合体ブロック(b)の含有量は、ブロック共重合体(A)の水素添加物の1H-NMRスペクトルから求められ、ブロック共重合体(A)の調製において各単量体の仕込み比を調節することにより所望の範囲に調整できる。
【0035】
ブロック共重合体(A)において重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)とが結合している限りは、その結合形態は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上を組合せた結合形態のいずれでもよい。中でも、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との結合形態は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(a)をAで、また重合体ブロック(b)をBで表したときに、A-Bで示されるジブロック共重合体、A-B-Aで示されるトリブロック共重合体、A-B-A-Bで示されるテトラブロック共重合体、A-B-A-B-Aで示されるペンタブロック共重合体等を挙げることができる。中でも、直鎖状のトリブロック共重合体またはジブロック共重合体が好ましく、A-B-A型のトリブロック共重合体が柔軟性および製造容易性等の観点から好ましく用いられる。
【0036】
本発明において、A層は第1の熱可塑性樹脂として、上記ブロック共重合体(A)の水素添加物〔以下、「水添ブロック共重合体(A)と称することもある〕を1種以上含有することが好ましい。
耐熱性、耐候性および遮音性の観点から、重合体ブロック(b)が有する炭素-炭素二重結合の80モル%以上が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)されていることが好ましく、85モル%以上が水添されていることがより好ましく、88モル%以上が水添されていることがさらに好ましく、90モル%以上が水添されていることが特に好ましい(以下、この値を「水添率」と称することもある)。水添率の上限値に特に制限はない。水添率は99モル%以下であってよく、98モル%以下であってもよい。なお、水添率は、重合体ブロック(b)中の共役ジエン単量体単位中の炭素-炭素二重結合の含有量を水素添加前後に1H-NMR測定によって求め、それらの含有量から算出した値である。
【0037】
水添ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めた重量平均分子量は、好ましくは15,000~800,000、より好ましくは50,000~700,000、さらに好ましくは70,000~600,000、特に好ましくは90,000~500,000、最も好ましくは130,000~450,000である。水添ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が前記下限値以上であれば耐熱性が高くなりやすく、前記上限値以下であれば成形性が良好になりやすい。
【0038】
ブロック共重合体(A)の製造方法は特に限定されない。ブロック共重合体(A)は、例えばアニオン重合法、カチオン重合法またはラジカル重合法等により製造できる。アニオン重合法の具体的な例として、下記(i)~(iii)に記載の方法を挙げることができる。
(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体を逐次重合させる方法;
(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;
(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体を逐次重合させる方法。
【0039】
共役ジエン単量体を用いる場合、アニオン重合の際に有機ルイス塩基を添加することによって第1の熱可塑性樹脂の1,2-結合量および3,4-結合量を増やすことができ、有機ルイス塩基の添加量を調整することによって第1の熱可塑性樹脂の1,2-結合量および3,4-結合量、即ちビニル結合量を容易に制御することができる。ビニル結合量が増えるほどA層を構成する樹脂材料のtanδの値が高くなる傾向にあり、このtanδのピークの位置を特定の温度範囲に制御することにより、得られる中間膜の遮音性を向上させることができる。
【0040】
前記有機ルイス塩基としては、例えば酢酸エチル等のエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミド等のアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン等が挙げられる。
【0041】
ブロック共重合体(A)を水素添加反応に付すことにより、水添ブロック共重合体(A)を得ることができる。未水添のブロック共重合体(A)を水素添加反応に付す方法としては、例えば、生成したブロック共重合体(A)を含む反応液から未水添のブロック共重合体(A)を単離し、それを水素添加触媒に対して不活性な溶媒に溶解したもの、または前記反応液中の未水添のブロック共重合体(A)を、水素添加触媒の存在下で水素と反応させる方法が挙げられる。水添率は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは88モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0042】
水素添加触媒としては、例えばラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の担体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。水素添加反応は通常、水素圧力0.1MPa以上20MPa以下、反応温度20℃以上250℃以下、反応時間0.1時間以上100時間以下の条件下で行なうことができる。
【0043】
A層を構成する樹脂材料はJIS K 7244-10:2005に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで測定されるtanδが最大となるピークを-30℃以上10℃以下の範囲に有する。tanδピーク温度が-30℃より低い範囲にあると、5000Hzから10000Hzの周波数域の遮音性の低下が顕著となる。一方、tanδピーク温度が10℃より高い範囲にあると、2000Hzから5000Hzの中周波数域の遮音性の低下が顕著となる。ここで、tanδとは、損失正接とも称され、せん断損失弾性率をせん断貯蔵弾性率で除したものであり、この値が高いほど高い遮音性が期待される。なおtanδは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0044】
本発明においてA層を構成する樹脂材料のtanδピーク温度は、好ましくは-25℃以上、より好ましくは-20℃以上であり、好ましくは0℃以下、より好ましくは-5℃以下である。tanδピーク温度が前記した下限値と上限値との範囲内であると、2000Hzから10000Hzまでの周波数域における良好な遮音性がもたらされやすい。
【0045】
tanδピーク温度を調整する方法としては、ブロック共重合体(A)において、ハードセグメントである重合体ブロック(a)の含有量を調整したり、ハードセグメントである重合体ブロック(a)またはソフトセグメントである重合体ブロック(b)を構成する単量体の種類、結合形態もしくは各セグメント自体のガラス転移温度等を調整したりする方法等が挙げられる。具体的には、例えばブロック共重合体(A)における重合体ブロック(a)の含有量を少なくすること、または重合体ブロック(b)を構成する単量体の種類もしくは組み合わせの変更等によりビニル結合量を多くすることによって、tanδピーク温度を調整する(高くする)ことができる。
【0046】
本発明において、A層の少なくとも1層の樹脂材料の、好ましくはA層の少なくとも2層の樹脂材料の、より好ましくはA層の全ての樹脂材料のtanδピーク高さは1.5以上である。A層の全ての樹脂材料のtanδピーク高さが1.5未満である場合、すなわち、A層の樹脂材料のtanδピーク高さが1.5以上となるA層を1層も含まない場合、所望の遮音性は得られない。前記tanδピーク高さは好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上、特に好ましくは2.4以上である。前記tanδピーク高さの上限値は特に限定されない。前記tanδピーク高さは通常5.0以下である。
【0047】
tanδピーク高さを高くする方法としては、ミクロ相分離構造をスフィア構造とすること、重合体ブロック(b)中のビニル結合量を高めること等が挙げられる。
【0048】
A層を構成する樹脂材料について、JIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率は、好ましくは1.0GPa未満である。
【0049】
A層を構成する樹脂材料は、第1の熱可塑性樹脂としての前記水添ブロック共重合体(A)を、樹脂材料の総質量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の量で含む。A層を構成する樹脂材料は、前記水添ブロック共重合体(A)に加えて、必要に応じて、また本発明の効果が損なわれない範囲において、他の熱可塑性樹脂(例えば、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環式系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィンおよびジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリオレフィン系エラストマー、具体的にはエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブチレン共重合体、プロピレン-ブチレン共重合体、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系重合体、ポリエチレン系樹脂等)を含んでもよい。特に好ましくは、A層を構成する樹脂材料は、第1の熱可塑性樹脂としての前記水添ブロック共重合体(A)からなる。
【0050】
本発明の合わせガラス用中間膜において、A層1層の厚さは好ましくは50μm以上450μm以下である。A層の最適な厚さは、中間膜を構成する他の層(例えば後述するB層やC層)の厚さまたは各層の貯蔵弾性率等により異なるが、A層が厚いほど遮音性が高くなる一方で中間膜全体の貯蔵弾性率が下がる傾向にある。これにより、A層1層の厚さが450μmより厚くなると、合わせガラスのコインシデンス効果の起こる周波数域が6000Hzよりも高くなりやすく、6000Hz以上の周波数域における遮音性の低下が顕著になることがある。高周波数域の遮音性をより高める点から、A層1層の厚さは、より好ましくは350μm以下、特に好ましくは300μm以下である。また、A層の厚さが50μmより薄い場合には、貯蔵弾性率が高くなり、コインシデンス効果の起こる周波数域が中周波数域になることがあり、4000~6000Hzの中周波数域における遮音性の低下が顕著になることがある。特にこの周波数域における遮音性は実用上重要であり、また、遮音性の改善効果もA層の厚さの低下に伴って小さくなることから、A層1層の厚さは、より好ましくは70μm以上、特に好ましくは90μm以上、さらに好ましくは110μm以上である。また、複数のA層の総厚さは、好ましくは950μm以下、より好ましくは700μm以下である。複数のA層の各厚さは同一であってもよく、異なっていてもよい。厚さは厚み計で測定される。また複数のA層は、同一の樹脂材料から構成されても良く、異なる樹脂材料から構成されてもよい。
【0051】
A層を構成する樹脂材料には、その他の成分として、後述するような酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料または遮熱材料等が必要に応じて添加されてもよい。なお、本発明の合わせガラス用中間膜において、これらの添加剤は、複数枚のA層、1枚または複数枚のB層、および1枚または複数枚のC層からなる群から選択される1層以上の層に含まれていてよい。前記群から選択される2層以上の層に添加剤が含まれる場合、それらの層に同じ添加剤が含まれていてもよく、異なるものが含まれていてもよい。
【0052】
酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の例としては、例えば1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等のアクリレート系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-)ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、またはトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、または2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0053】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、または10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン等のモノホスファイト系化合物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、またはテトラキス(2,4-ジ-tブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイト等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0054】
硫黄系酸化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤の添加量は、第1の熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。酸化防止剤の量が前記下限値以上であり前記上限値以下であれば、十分な酸化防止効果を付与することができる。
【0056】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル系化合物、インドール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤は、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の一態様では好ましくは、合わせガラス用中間膜における少なくとも1つの層は紫外線吸収剤を含んでなる。この態様において、紫外線吸収剤は好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物、マロン酸エステル系化合物、インドール系化合物およびシュウ酸アニリド系化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0057】
紫外線吸収剤の添加量は、第1の熱可塑性樹脂に対して質量基準で、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上であり、好ましくは50,000ppm以下、より好ましくは10,000ppm以下である。紫外線吸収剤の添加量が前記した下限値と上限値との範囲内であると、十分な紫外線吸収効果を期待できる。
【0058】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0059】
ブロッキング防止剤としては、無機粒子および有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えばIA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族およびIVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、有機カルボン酸塩、ケイ酸塩、チタン酸塩、硼酸塩およびそれらの含水化合物、並びにそれらを主成分として含む複合化合物および天然鉱物粒子が挙げられる。ここで主成分とは、含有量が最も高い成分である。有機粒子としては、例えばフッ素樹脂、メラミン系樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーンおよびそれらの架橋体が挙げられる。
【0060】
遮熱材料を含むことで、合わせガラス用中間膜に遮熱機能を付与し、合わせガラスとしたときに波長約1500nmの近赤外光の透過率を下げることができる。
遮熱材料としては、例えば熱線遮蔽機能を有する熱線遮蔽粒子、または熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物を樹脂もしくはガラスに含有させた材料等が挙げられる。熱線遮蔽機能を有する粒子としては、例えば錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、ケイ素ドープ酸化亜鉛等の酸化物の粒子、LaB6(六ホウ化ランタン)粒子等の熱線遮蔽機能を有する無機材料の粒子等が挙げられる。また、熱線遮蔽機能を有する有機色素化合物としては、例えばジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体等が挙げられる。遮熱材料は、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
本発明の一態様では好ましくは、合わせガラス用中間膜における少なくとも1つの層は遮熱材料を含んでなる。この態様において、遮熱材料は好ましくは、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、アンチモン酸亜鉛、金属ドープ酸化タングステン、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、ベンゼンジチオール型アンモニウム系化合物、チオ尿素誘導体、チオール金属錯体、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、ケイ素ドープ酸化亜鉛、六ホウ化ランタンおよび酸化バナジウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0062】
遮熱材料として熱線遮蔽粒子を用いる場合、その含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。本発明において遮熱材料は、A層、後述するB層、後述する(第3の熱可塑性樹脂を含有する場合の)C層および存在する場合は後述するD層のいずれに含まれていてもよく、上記した「含有量」とは、A層、B層、(第3の熱可塑性樹脂を含有する場合の)C層および存在する場合はD層を構成する樹脂材料全ての総質量を100質量%とした場合の量を意味する。後述する有機色素化合物の「含有量」も同じ意味を有する。熱線遮蔽粒子の含有量が前記した下限値と上限値との範囲内であると、得られる中間膜を用いた合わせガラスの可視光線の透過率に影響を及ぼすことなく、波長約1500nmの近赤外光の透過率を効果的に下げやすい。中間膜の透明性の観点から、熱線遮蔽粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。なお、この平均粒子径はレーザー回折装置で測定される平均粒子径である。
【0063】
遮熱材料として有機色素化合物を用いる場合、その含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。有機色素化合物の含有量が前記した下限値と上限値との範囲内であると、得られる中間膜を用いた合わせガラスの可視光線の透過率に影響を及ぼすことなく、波長約1500nmの近赤外光の透過率を効果的に下げやすい。
【0064】
<B層>
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくともガラスと接する面にB層を含むことが好ましく、B層はガラスに対して接着性を持つ層であることが好ましい。C層として、無機ガラスではなく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を含有する層を用いる場合には、A層とC層との間に必ずしもB層を備える必要はないが、B層を備えることを否定するものではない。
B層は、第2の熱可塑性樹脂を含有する層であり、A層を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料から構成されている。ここで「A層を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料」とは、A層を構成する樹脂材料と同一の樹脂材料以外の樹脂材料を意味する。例えば、A層に含まれる第1の熱可塑性樹脂とB層に含まれる第2の熱可塑性樹脂とがともにポリビニルブチラール樹脂であっても、A層を構成する樹脂材料がB層を構成する樹脂材料と同一でなければ、B層はA層を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料から構成されていると言える。具体的には例えば、A層を構成する樹脂材料が50~65質量%のポリビニルブチラール樹脂X1と35~50質量%の可塑剤Y1とからなる樹脂材料であり、B層を構成する樹脂材料が70~90質量%のポリビニルブチラール樹脂X1と10~30質量%の可塑剤Y1とからなる樹脂材料であってもよい。また例えば、A層を構成する樹脂材料がビニルアルコール単位1~10モル%のポリビニルブチラール樹脂X2からなる樹脂材料であり、B層を構成する樹脂材料がビニルアルコール単位10.1~30モル%のポリビニルブチラール樹脂X3からなる樹脂材料であってもよい。
温度に依存して隣接する層間で可塑剤が移行し、各層の可塑剤の含有量が変わることによって遮音特性が変化することを回避する観点からは、A層とB層のいずれかは、可塑剤を実質的に含まない樹脂材料で構成されていることが好ましい。例えば、A層とB層のいずれかを構成する樹脂材料において、可塑剤の含有量が、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下または0質量%であることが好ましい。
【0065】
B層を構成する樹脂材料は、第2の熱可塑性樹脂からなるか、または第2の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる。B層は第2の熱可塑性樹脂として、好ましくはポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂を含有する。B層がポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂を含有することにより、本発明の合わせガラス用中間膜を用いて製造した合わせガラスの破損時のガラス飛散性が低くなりやすい。
【0066】
第2の熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。アセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール系樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位等)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準とした、アセタールを形成する上記単位の量である。アセタール化度が前記した下限値と上限値との範囲内であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が良好になりやすく、ポリビニルアセタール樹脂および可塑剤を含有する樹脂材料を容易に得やすいため、プロセス上の観点から好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、耐水性の観点からは65モル%以上であることが好ましい。アセタール化度は、アセタール化反応におけるアルデヒドの使用量を調整することにより調整できる。
【0067】
ポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位の含有量は好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。酢酸ビニル単位の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール系樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位等)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準とした酢酸ビニル単位の量である。酢酸ビニル単位の含有量が前記上限値以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の製造時にブロッキングを起こし難く、製造しやすくなる。酢酸ビニル単位の含有量の下限値は特に限定されない。酢酸ビニル単位の含有量は通常は0.3モル%以上である。酢酸ビニル単位の含有量は、原料のポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を適宜調整することにより調整できる。
【0068】
ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有量は好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上であり、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。ビニルアルコール単位の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール系樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位等)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準としたビニルアルコール単位の量である。ビニルアルコール単位の含有量が前記下限値以上であると、可塑剤として後述するような水酸基を有する化合物を用いた場合に、可塑剤が有する水酸基とポリビニルアセタール樹脂との相互作用(水素結合)を十分発現させることができ、その結果、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が良好になり、可塑剤が他の層へ移行し難くなる傾向にある。また、ビニルアルコール単位の含有量が前記上限値以下であると、安全ガラスとして中間膜に要求される耐貫通性または耐衝撃性機能を好適に制御することができる。ビニルアルコール単位の含有量は、アセタール化反応におけるアルデヒドの使用量を調整することにより調整できる。
【0069】
ポリビニルアセタール樹脂は通常、アセタールを形成する単位、ビニルアルコール単位および酢酸ビニル単位から構成されており、これらの各単位量は、例えばJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」または核磁気共鳴法(NMR)によって測定される。
ポリビニルアセタール樹脂としては、1種のみを単独で用いてもよく、アセタール化度または粘度平均重合度等が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ポリビニルアセタール樹脂は従来公知の方法により製造でき、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(例えばポリビニルアルコール樹脂またはエチレンビニルアルコールコポリマー)をアルデヒドによりアセタール化することによって製造できる。具体的には例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を温水に溶解し、得られた水溶液を所定の温度(例えば0℃以上、好ましくは10℃以上、例えば90℃以下、好ましくは20℃以下)に保持しておいて、所要の酸触媒およびアルデヒドを加え、撹拌しながらアセタール化反応を進行させる。次いで、反応温度を70℃程度に上げて熟成して、反応を完結させ、その後、中和、水洗および乾燥を行って、ポリビニルアセタール樹脂の粉末を得ることができる。
【0071】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、さらに好ましくは600以上、特に好ましくは700以上、最も好ましくは750以上である。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度が低すぎると、耐貫通性、耐クリープ物性、特に85℃、85%RHのような高温高湿条件下での耐クリープ物性が低下することがある。また、ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下、特に好ましくは2300以下、最も好ましくは2000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度が高すぎると、B層の成形が難しくなることがある。
【0072】
さらに、得られる合わせガラス用中間膜のラミネート(積層)適性を向上させ、外観に一層優れた合わせガラスを得るためには、ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は好ましくは1500以下、より好ましくは1100以下、さらに好ましくは1000以下である。
【0073】
なお、ポリビニルアセタール樹脂の好ましい粘度平均重合度の値は、上記したポリビニルアルコール系樹脂の好ましい粘度平均重合度の値と同一である。
【0074】
得られるポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位を30モル%以下に設定するために、ケン化度が70モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂を使用することが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が前記下限値以上であると、樹脂の透明性や耐熱性に優れる傾向にあり、またアルデヒドとの反応性も良好となる。ケン化度は、より好ましくは95モル%以上である。
【0075】
ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度およびケン化度は、例えば、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
【0076】
ポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化に用いるアルデヒドとしては、炭素数が1以上12以下のアルデヒドが好ましい。アルデヒドの炭素数が前記範囲内であるとアセタール化の反応性が良好であり、反応中に樹脂のブロックが発生し難くなり、ポリビニルアセタール樹脂の合成を容易に行うことができる。
【0077】
アルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒドおよびシンナムアルデヒド等の脂肪族、芳香族または脂環式アルデヒドが挙げられる。これらの中でも炭素数が2以上6以下の脂肪族アルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドが特に好ましい。また、上記アルデヒドは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、多官能性アルデヒドやその他の官能基を有するアルデヒド等を全アルデヒドの20質量%以下の範囲で少量併用してもよい。
【0078】
ポリビニルアセタール樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂が最も好ましい。ポリビニルブチラール樹脂としては、ビニルエステルと他の単量体との共重合体をケン化して得られるポリビニルアルコール系重合体を、ブチルアルデヒドを用いてブチラール化した変性ポリビニルブチラール樹脂を用いることができる。前記した他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレンおよびスチレンが挙げられる。また、前記した他の単量体として、水酸基、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有する単量体を用いることができる。
【0079】
B層が第2の熱可塑性樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を含有する場合、B層は可塑剤をさらに含有してよい。可塑剤は特に限定されない。可塑剤として、一価カルボン酸エステル系可塑剤もしくは多価カルボン酸エステル系可塑剤等のカルボン酸エステル系可塑剤;リン酸エステル系可塑剤もしくは亜リン酸エステル系可塑剤、またはカルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤もしくはポリアルキレングリコール系可塑剤等の高分子可塑剤、またはひまし油等のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物;ヒドロキシカルボン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル化合物等のヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤も使用することができる。可塑剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
一価カルボン酸エステル系可塑剤としては、ブタン酸、イソブタン酸、へキサン酸、2-エチルブタン酸、へプタン酸、オクチル酸、2-エチルヘキサン酸またはラウリル酸等の一価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはグリセリン等の多価アルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。その具体的な化合物を例示すると、トリエチレングリコールジ2-ジエチルブタノエート、トリエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジオクタノエート、テトラエチレングリコールジ2-エチルブタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジオクタノエート、ジエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、PEG#400ジ2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2-エチルヘキサノエート、グリセリンまたはジグリセリンの2-エチルヘキサン酸との完全または部分エステル化物等が挙げられる。ここでPEG#400とは、平均分子量が350~450であるポリエチレングリコールを表す。
【0081】
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはトリメット酸等の多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノールまたはベンジルアルコール等の炭素数1~12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルブチル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸モノ(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ2-エチルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2-エチルブチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ベンジルブチルおよびフタル酸ジドデシル等が挙げられる。
【0082】
リン酸エステル系可塑剤または亜リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸または亜リン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノールまたはベンジルアルコール等の炭素数1~12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリ(ブトキシエチル)および亜リン酸トリ(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0083】
カルボン酸ポリエステル系可塑剤の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンまたは1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールとを交互共重合して得られるカルボン酸ポリエステル;脂肪族ヒドロキシカルボン酸(例えばグリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシへキサン酸、8-ヒドロキシへキサン酸、10-ヒドロキシデカン酸もしくは12-ヒドロキシドデカン酸)または芳香環含有ヒドロキシカルボン酸〔例えば4-ヒドロキシ安息香酸もしくは4-(2-ヒドロキシエチル)安息香酸〕等のヒドロキシカルボン酸の重合体(ヒドロキシカルボン酸ポリエステル);脂肪族ラクトン化合物(例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトンまたはラクチド)または芳香環含有ラクトン化合物(例えばフタリド)等のラクトン化合物を開環重合して得られるカルボン酸ポリエステル等が挙げられる。カルボン酸ポリエステルの末端構造は特に限定されず、水酸基もしくはカルボキシル基でもよいし、末端水酸基を一価カルボン酸と反応させてエステル結合としたもの、もしくは末端カルボキシル基を一価アルコールと反応させてエステル結合としたものでもよい。
【0084】
炭酸ポリエステル系可塑剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンまたは1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールと、炭酸ジメチルまたは炭酸ジエチル等の炭酸エステルとをエステル交換反応により交互共重合して得られる炭酸ポリエステルが挙げられる。炭酸ポリエステル化合物の末端構造は特に限定されないが、好ましくは炭酸エステル基または水酸基等である。
【0085】
ポリアルキレングリコール系可塑剤の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはオキセタン等のアルキレンオキシドを、一価アルコール、多価アルコール、一価カルボン酸または多価カルボン酸を開始剤として開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0086】
ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤の例としては、ヒドロキシカルボン酸の一価アルコールエステル、例えばリシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸ブチル、6-ヒドロキシヘキサン酸メチル、6-ヒドロキシヘキサン酸エチルまたは6-ヒドロキシヘキサン酸ブチル;ヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステル、例えばエチレングリコールジ(6-ヒドロキシヘキサン酸)エステル、ジエチレングリコールジ(6-ヒドロキシヘキサン酸)エステル、トリエチレングリコールジ(6-ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(6-ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(2-ヒドロキシ酪酸)エステル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(3-ヒドロキシ酪酸)エステル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(4-ヒドロキシ酪酸)エステル、トリエチレングリコールジ(2-ヒドロキシ酪酸)エステル、グリセリントリ(リシノール酸)エステルまたはL-酒石酸ジ(1-(2-エチルヘキシル));ひまし油もしくはヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステルのヒドロキシカルボン酸由来の一部の基を、水酸基を含まないカルボン酸由来の基もしくは水素原子に置き換えた化合物が挙げられる。これらヒドロキシカルボン酸エステルは従来公知の方法で得られるものを使用できる。
【0087】
前記可塑剤は、ポリビニルブチラール樹脂との相溶性または他の層への低移行性もしくは非移行性を高めやすい観点から、好ましくは、融点が30℃以下であり、水酸基価が15mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であるエステル系可塑剤もしくはエーテル系可塑剤であるか、または非結晶性であり、水酸基価が15mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であるエステル系可塑剤もしくはエーテル系可塑剤である。ここで非結晶性とは、-20℃以上の温度において融点が観測されないことを指す。融点が観測される場合、前記融点は、好ましくは15℃以下であり、特に好ましくは0℃以下である。前記水酸基価は、融点が観測される場合も観測されない場合も、より好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは45mgKOH/g以上であり、より好ましくは360mgKOH/g以下、特に好ましくは280mgKOH/g以下である。前記エステル系可塑剤としては、前記規定を満たすポリエステル(前述したカルボン酸ポリエステル系可塑剤もしくは炭酸ポリエステル系可塑剤等)またはヒドロキシカルボン酸エステル化合物(前述したヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤等)が挙げられ、エーテル系可塑剤としては、前記規定を満たすポリエーテル化合物(前述したポリアルキレングリコール系可塑剤等)が挙げられる。
【0088】
B層における可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。可塑剤の含有量が前記上限値以下であると、得られる中間膜を用いた合わせガラスが優れた耐衝撃性を有しやすい。可塑剤の含有量の下限値は、特に限定されない。B層における可塑剤の含有量は、B層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して例えば10質量部以上であってよく、5質量部以上であってよく、0質量部であってもよい。
【0089】
水酸基を有する化合物はポリビニルアセタール樹脂との相溶性が高くA層への移行性が低いため、得られる中間膜を用いた合わせガラスの遮音性が安定的に発揮されることから、前記可塑剤として好ましくは水酸基を有する化合物を用いる。水酸基を有する可塑剤化合物としては、例えば株式会社クラレ製のポリエステルポリオール「クラレポリオールP-510」または「クラレポリオールP-1010」が挙げられる。
【0090】
B層に含まれる可塑剤の全量に対する水酸基を有する可塑剤化合物の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
【0091】
B層が含む第2の熱可塑性樹脂としてアイオノマー樹脂を用いる場合、アイオノマー樹脂は特に限定されない。アイオノマー樹脂の例としては、エチレン由来の構成単位およびα,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位を有し、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の少なくとも一部が金属イオンによって中和された樹脂等が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルおよび無水マレイン酸等が挙げられ、アクリル酸またはメタクリル酸が特に好ましい。金属イオンとしては例えばナトリウムイオンが挙げられる。ベースポリマーとなるエチレン・α,β-不飽和カルボン酸共重合体において、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。入手しやすさの観点から、エチレン・アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂およびエチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂が好ましい。エチレン系アイオノマー樹脂の特に好ましい例としては、エチレン・アクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマー樹脂およびエチレン・メタクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマー樹脂が挙げられる。アイオノマー樹脂としては、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
B層は、ポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂以外の樹脂を含有することもできる。ガラスとの高い接着性を維持しやすい観点から、B層を構成する樹脂材料におけるポリビニルアセタール樹脂またはアイオノマー樹脂の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0093】
本発明の合わせガラス用中間膜の好適な一実施態様において、B層を構成する樹脂材料はアイオノマー樹脂からなる。B層を構成する樹脂材料としてアイオノマー樹脂を用いた場合においても、本発明において規定する遮音性に優れたA層を複数枚用い、複数枚のA層の間に後述するC層を挿入した構成とすることによって、遮音性に優れた中間膜を得ることができる。
【0094】
B層を構成する樹脂材料は、その他の成分としてさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物または遮熱材料等を必要に応じて含有してもよい。
【0095】
酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤または遮熱材料に関しては、先のA層の説明内で記述した材料と同様のものを用いることができ、B層における好適な剤もしくは材料または添加量は、A層における好適な剤もしくは材料または添加量と同じであっても異なっていてもよい。
【0096】
B層は必要に応じて、得られる中間膜のガラス等への接着性を制御する層であってよい。接着性を制御する方法としては例えば、B層を構成する樹脂材料に合わせガラスの接着性調整剤として使用される添加剤を添加する方法、またはB層を構成する樹脂材料に接着性を調整するための各種添加剤を添加する方法等が挙げられる。このような方法によって、接着性調整剤および/または接着性を調整するための各種添加剤を含む合わせガラス用中間膜が得られる。
【0097】
接着性調整剤としては、例えば国際公開第03/033583号に開示されているものを使用することができる。好ましくはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が使用され、その例としてカリウム塩、ナトリウム塩またはマグネシウム塩等が挙げられる。前記塩の例としては、カルボン酸(例えばオクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸または蟻酸等)等の有機酸の塩;塩酸または硝酸等の無機酸の塩が挙げられる。
【0098】
接着性調整剤の最適な添加量は使用する接着性調整剤により異なる。前記添加量は、得られる中間膜のガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummel Test:国際公開第03/033583号等に記載)において、一般には3以上10以下になるよう調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3以上6以下になるように調整することが好ましい。また、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7以上10以下になるように調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性調整剤を添加しないことも有用な方法である。
【0099】
B層を構成する樹脂材料について、JIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率は、好ましくは1.0GPa未満である。
【0100】
本発明の合わせガラス用中間膜において、B層1層の厚さは好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、特に好ましくは200μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは350μm以下、最も好ましくは300μm以下である。B層の厚さが前記下限値以上であると、中間膜に適度な曲げ剛性が付与されやすく、高周波数域での遮音性の低下が抑制されやすく、ガラス等に対するB層の十分な接着性が発現されやすい。B層の厚さが前記上限値以下であると、合わせガラス用中間膜の厚さが厚くなりすぎず、合わせガラスの重量軽減に有利である。複数のB層が積層される場合、それらの厚さは同一であってもよく、異なっていてもよい。厚さは厚み計で測定される。
【0101】
<C層>
本発明の合わせガラス用中間膜は、複数枚用いられるA層を隔てるように配置されたC層を含んでなる。C層は、厚さが0.1mm以上1.5mm以下である無機ガラスからなる層であるか、または厚さが0.25mm以上2.5mm以下であって第3の熱可塑性樹脂を含有する層である。C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、C層を構成する樹脂材料は、JIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率が1.0GPa以上である。当該引張貯蔵弾性率は、好ましくは1.5GPa以上、より好ましくは2.0GPa以上である。本発明では、C層が一定の厚さを有し、高い引張貯蔵弾性率を有する材料で構成されること、およびC層が遮音性に重要な役割を持つ複数のA層を隔てた配置構成とすることによって、中間膜の高い遮音性を実現している。一般に、板状材料の曲げ剛性は引張貯蔵弾性率および厚さに相関している。C層の曲げ剛性が高いことが複数のA層の遮音性の発現に関与し、さらには中間膜としての優れた遮音性の発現をもたらすと考えられるため、C層として引張貯蔵弾性率が高いものを用いるほどC層の厚さが薄くても遮音性を高く設計することができ、その結果、合わせガラスの厚さを薄くでき、軽量化が可能となる。
【0102】
C層として無機ガラスを用いる場合、ガラスの材質は特に限定されない。無機ガラスの例として、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスおよび石英ガラス等が挙げられる。C層の厚さを1mm以下とする場合には、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスまたはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス等のガラスをイオン交換プロセスによって化学強化されたガラス板(例えば、コーニング社Gorillaガラス、AGC社Dragon Trail)を使用してもよい。即ち、本発明の一態様では好ましくは、前記無機ガラスは化学強化された無機ガラス(以下において「化学強化無機ガラス」と称することもある)である。
C層に無機ガラスを用いる場合、その厚さは0.1mm以上1.5mm以下である。無機ガラスの厚さが0.1mmを下回ると、ガラスが脆くなると同時に遮音性の改善効果が低下しやすい。無機ガラスの厚さが1.5mmを上回ると、合わせガラスの厚さが厚くなって合わせガラスが重くなる問題が生じたり、コインシデンス効果の起こる周波数域が低周波数域になるために、人の耳の感度の高い4000Hzから6000Hzまでの周波数域での遮音性に問題が生じたりすることがある。厚さは好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、そして、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.68mm以下、さらに好ましくは0.58mm以下である。
【0103】
C層は、無機ガラスからなる層であっても、第3の熱可塑性樹脂を含有する層であってもよい。乗物(例えば自動車)のフロントガラス用の中間膜においては、薄い無機ガラスを用いると、機械的強度の高さを維持しつつフロントガラスの曲面を形成することが困難な場合がある。そのような場合には、C層は好ましくは第3の熱可塑性樹脂を含有する層である。また、C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合は、中間膜の全ての層を共押出によって一度に製造できる観点から、製造プロセス面での利点も有する。
【0104】
C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、C層を構成する樹脂材料は、その引張貯蔵弾性率が1.0GPa以上となるよう適宜選択される。C層を構成する樹脂材料は、第3の熱可塑性樹脂からなるか、または第3の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる。上述の通り、引張貯蔵弾性率の高い樹脂材料を用いることにより、遮音性の向上のために必要なC層の厚さを低減でき、合わせガラス用中間膜の厚さまたは合わせガラスの厚さを低減でき、軽量化を実現できる。0℃の引張貯蔵弾性率に着目することにより、中周波数域の遮音特性の改善が実現される。
第3の熱可塑性樹脂として、例えばポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂またはポリビニルアセタール樹脂等を使用できる。引張貯蔵弾性率の高さ、透明性、コスト、または得られる中間膜の耐引き裂き性の観点から、C層は第3の熱可塑性樹脂として、好ましくはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂またはポリビニルアセタール樹脂のいずれかを含有する。C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、その厚さは0.25mm以上2.5mm以下である。0.25mmを下回ると遮音性の改善効果が低下しやすい。2.5mmを上回ると、合わせガラスの厚さが厚くなって合わせガラスが重くなる問題が生じたり、コインシデンス効果の起こる周波数域が低周波数域になるために、人の耳の感度の高い4000Hzから6000Hzまでの周波数域での遮音性に問題が生じたり、合わせガラスを積層する際に形状に追従しない問題が生じたりすることがある。厚さは好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、そして、好ましくは2.2mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
ただし、合わせガラス用中間膜がA層とC層との間にB層またはD層を含む積層構成を有する場合には、C層が薄くても遮音性が改善することがある。この場合、C層に接するB層が複数存在する場合またはD層が存在する場合を含めて、2つのA層の間に存在するB層、C層およびD層の総厚さは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上であり、そして、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下であり、さらに、B層、C層およびD層の総厚さに対するC層の厚さ〔C層の厚さ/(B層、C層およびD層の総厚さ)〕は、0.3以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。
C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、例えば20℃から40℃のような(0℃より)高温側においても、C層を構成する樹脂材料の引張貯蔵弾性率が高いことがより好ましい。そのような場合、中間膜や合わせガラスに剛性を付与することができるため、相対的に薄いガラスを用いた合わせガラスであっても、サイドガラス等に好適に使用できる。ただし、C層を構成する樹脂材料の引張貯蔵弾性率が高い場合、厚くなるにつれて、シートをロールに巻き付けづらくなったり、シートの切り出しが困難になったりすることがあるため、高温側における引張貯蔵弾性率が高い場合には、C層は1.5mm未満の厚さを有することが好ましい。
【0105】
第3の熱可塑性樹脂として用いることのできるアクリル樹脂は、前記引張貯蔵弾性率を満足する樹脂材料をもたらすものであれば特に限定されない。
アクリル樹脂は、以下に例示するような単量体の1種を重合したもの、または以下に例示するような単量体の2種類以上を共重合したものである:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等。
【0106】
アクリル樹脂は、前記単量体と共重合可能な単量体を構成成分としてさらに含んでよい。そのような共重合可能な単量体は、単官能性単量体、即ち分子内に重合性の炭素-炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、または多官能性単量体、即ち分子内に重合性の炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよい。アクリル樹脂が共重合可能な単量体を構成成分として含む場合、共重合可能な単量体は1種のみが単独で含まれてもよいし、または2種類以上が含まれてもよい。
単官能性単量体の例としては、スチレン、α-メチルスチレンおよびビニルトルエンのような芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルのようなアルケニルシアン化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸およびN-置換マレイミド;等が挙げられる。多官能性単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリルおよびケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル;ジビニルベンゼンのような芳香族ポリアルケニル化合物;等が挙げられる。
【0107】
アクリル樹脂の耐環境性(吸湿による反り)を改善しやすい観点から、アクリル樹脂は好ましくはメタクリル酸メチル-スチレン共重合体である。メタクリル酸メチル-スチレン共重合体としては、全単量体構成単位を基準として、通常は30~95質量%のメタクリル酸メチル単位および5~70質量%のスチレン単位を有するもの、好ましくは40~95質量%のメタクリル酸メチル単位および5~60質量%のスチレン単位を有するもの、より好ましくは50~90質量%のメタクリル酸メチル単位および10~50質量%のスチレン単位を有するものが用いられる。
【0108】
本発明に用いることのできるアクリル樹脂は、前述した単量体成分を懸濁重合、乳化重合または塊状重合等の公知の方法で重合させることにより調製することができる。その際、得られるアクリル樹脂のガラス転移温度を所望の温度に調整しやすい観点または中間膜を作製する際に好適な成形性を示す粘度を得やすい観点から、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体成分の種類または調製するアクリル樹脂の組成等に応じて、適宜決定すればよい。
【0109】
第3の熱可塑性樹脂として用いることのできるポリカーボネート樹脂は、前記引張貯蔵弾性率を満足する樹脂材料をもたらすものであれば特に限定されない。芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネートおよび脂環式ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。
【0110】
芳香族ポリカーボネートとしては、例えばi)二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法または溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるもの、ii)カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの、iii)環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。これらの中でも前記i)の芳香族ポリカーボネートが生産性の観点から好ましい。
【0111】
前記i)の芳香族ポリカーボネートの調製に用いられる二価フェノールの例としては下記化合物が挙げられ、このような化合物は必要に応じて単独でまたは2種以上用いることができる:ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(3-イソプロピル-4-ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-フェニル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}フルオレン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエステル等。
これらの例示した二価フェノールの中でも、ビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンからなる群から選択される1種以上の二価フェノールを用いることが好ましく、ビスフェノールAの単独使用、または1,1-ビス(4ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用がより好ましい。
【0112】
前記i)の芳香族ポリカーボネートの調製に用いられるカルボニル化剤の例としては下記化合物が挙げられ、このような化合物は必要に応じて単独でまたは2種以上用いることができる:ホスゲンのようなカルボニルハライド、ジフェニルカーボネートのようなカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメートのようなハロホルメート等。
【0113】
第3の熱可塑性樹脂として用いることのできるポリエステル樹脂は、前記引張貯蔵弾性率を満足する樹脂材料をもたらすものであれば特に限定されない。ポリエステル樹脂として、一般的なジカルボン酸構成単位とジオール構成単位とからなる樹脂を使用できる。
【0114】
ジカルボン酸構成単位に適した単量体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2-メチルテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸およびテトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸並びにそのエステル形成性誘導体;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸およびペンタシクロドデカンジカルボン酸等の飽和脂環式ジカルボン酸並びにそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類、またはそれらのエステル形成性誘導体がより好ましい。
ジオール構成単位に適した単量体としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7-デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールおよびペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール;4,4’-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)および4,4’-スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール;並びに前記ビスフェノールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。加えて、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’-ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物;並びに環状アセタール骨格を有するジオール等も挙げられる。
【0115】
前記ポリエステル樹脂は公知の方法で製造できる。例えば、ジカルボン酸とジオールとのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下で重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法、または有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造できる。
【0116】
第3の熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、先のB層の説明で述べたポリビニルアセタール樹脂および可塑剤が同様に使用できる。ただし、高い引張貯蔵弾性率を有する樹脂層を得やすい観点から、C層を構成する樹脂材料における可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは23質量部以下、さらにより好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下、最も好ましくは0質量部である。C層を構成する樹脂材料における可塑剤の含有量の下限値は特に限定されない。前記含有量は1質量部以上であってよい。
【0117】
C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合、C層を構成する樹脂材料は、その他の成分としてさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物、遮熱材料または接着力調整剤等を必要に応じて含有してもよい。
【0118】
酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤または遮熱材料に関しては、先のA層またはB層の説明内で記述した材料と同様のものを用いることができ、C層における好適な剤もしくは材料または添加量は、A層またはB層における好適な剤もしくは材料または添加量と同じであっても異なっていてもよい。
【0119】
接着力調整剤の例としては、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体基、エポキシ基、ボロン酸基、ボロン酸基の誘導体基、アルコキシル基、またはアルコキシル基の誘導体基等の接着性官能基を有するポリオレフィン類が挙げられる。
【0120】
遮熱材料の中には紫外線による光劣化を起こす材料があるが、C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合は、中間膜断面において相対的に中心に位置するC層に遮熱材料を多く含み、C層より外側に位置するA層またはB層に紫外線吸収剤を多く含む構成を採用することによって、遮熱材料の劣化を抑制することができる。
【0121】
<合わせガラス用中間膜>
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。
C層が無機ガラスからなる層である場合は例えば、A層の両面にB層を積層した構成(B層/A層/B層)の中間膜フィルムを2枚作製し、その間にC層を挟持させることにより合わせガラス用中間膜(B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層)を製造できる。前記中間膜フィルムは、B層を構成する樹脂材料を均一に混練した後、公知の製膜方法(例えば押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法またはインフレーション法)によりB層を作製し、同様の方法でA層を構成する樹脂材料からA層を作製し、これらをプレス成形等で積層することにより作製してもよいし、B層およびA層を共押出することにより作製してもよい。なお、本発明の合わせガラス用中間膜を用い、後述する合わせガラスの製造方法にしたがって合わせガラスを製造できるが、C層が無機ガラスからなる層である場合は、作製した合わせガラス用中間膜を最外層の2枚の透明基材の間に配置して積層することにより合わせガラスを製造してもよいし、中間膜フィルムとC層との積層および合わせガラス用中間膜と最外層の透明基材との積層を同時に行うことにより(具体的な例としては、最外層の2枚の透明基材の間に2枚の前記中間膜フィルムを配置し、さらにそれらの中間膜フィルムの間にC層を配置して積層することにより)合わせガラスを製造してもよい。
また、C層が第3の熱可塑性樹脂を含有する層である場合は例えば、合わせガラス用中間膜が所望の順(例えばB層/A層/C層/A層/B層またはB層/A層/B層/C層/B層/A層/B層等)で各層を含むよう、前述したように各層を製膜した後に積層するか、または共押出することにより合わせガラス用中間膜を製造できる。
【0122】
公知の製膜方法の中でも、特に押出機を用いて中間膜フィルムまたは合わせガラス用中間膜を製造する方法が好適に採用される。押出時の樹脂温度(樹脂材料温度)は、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。押出時の樹脂温度が前記した下限値と上限値との範囲内であると、樹脂材料に含まれる樹脂等の分解が起こり難いため樹脂等の劣化が生じ難く、押出機からの吐出が安定しやすい。揮発性物質を効率的に除去するためには、減圧によって押出機のベント口から揮発性物質を除去することが好ましい。
【0123】
A層、B層およびC層それぞれの1層ずつの厚さは、先に述べた通りである。
【0124】
本発明の合わせガラス用中間膜における積層構成は目的によって適宜決められる。合わせガラス用中間膜は、例えば、
図1に示すようにA層がB層によって挟持された2枚の中間膜フィルムがC層を挟持するようにして積層された構成(B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層)であってよい。また、例えば
図2に示すような構成(B層/A層/C層/A層/B層)のほか、B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層といったようなC層を複数枚用いた積層構成であってもよい。
【0125】
本発明の一態様では好ましくは、合わせガラス用中間膜は少なくともA層、B層、C層、B層、A層をこの順に含み、当該C層と2つの当該B層とは直接隣接しており、当該C層は無機ガラスからなる層である。
また、本発明の一態様では好ましくは、合わせガラス用中間膜は少なくともB層、A層、C層、A層をこの順に含む。この態様において好ましくは、C層は第3の熱可塑性樹脂を含有する層である。
【0126】
また、本発明の合わせガラス用中間膜は、A層、B層およびC層以外の層(D層とする)を1層以上含んでいてもよい。合わせガラス用中間膜がD層も含む場合の積層構成の非限定的な例としては、B層/A層/D層/B層/C層/B層/A層/B層、B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層/D層、B層/D層/A層/D層/B層/C層/B層/A層/B層、B層/D層/A層/B層/C層/B層/A層/D層/B層、B層/D層/A層/B層/D層/C層/B層/A層/B層、B層/D層/A層/B層/C層/B層/A層/B層/D層、D層/B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層/D層、B層/A層/D層/B層/D層/C層/B層/A層/B層、D層/B層/A層/B層/D層/C層/B層/A層/B層、D層/B層/A層/D層/B層/D層/C層/B層/A層/B層、D層/B層/D層/A層/D層/B層/D層/C層/B層/A層/B層等が挙げられる。前記積層構成において、A層、B層、C層および/またはD層がそれぞれ2層以上含まれる場合、各々のA層、B層、C層、D層を構成する材料(樹脂を含有する材料の場合は樹脂材料)および厚さは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0127】
本発明の合わせガラス用中間膜に含まれ得るD層は、公知の樹脂からなる層であってよい。D層を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステルのうちポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマーまたはポリイミド等を用いることができる。また、必要に応じて、D層は可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料および遮熱材料等の添加剤を含有してよく、無機多層膜や金属導電層等の層がD層上の少なくとも一部に形成されていてもよい。
【0128】
本発明の合わせガラス用中間膜の表面には、メルトフラクチャーまたはエンボス加工等の従来公知の方法で凹凸構造を形成することが好ましい。凹凸構造の形状は特に限定されず、従来公知のものを採用できる。C層が無機ガラスからなる層である場合は、C層に接する面にも凹凸構造を形成することが好ましい。
【0129】
本発明の合わせガラス用中間膜の厚さは、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.1mm以上であり、好ましくは3.6mm以下、より好ましくは3.2mm以下、特に好ましくは2.4mm以下である。前記厚さが前記下限値以上であると、合わせガラスの遮音性に優れた構成を得やすく、前記厚さが前記上限値以下であると、合わせガラス全体の重量軽減につながり、中間膜のコストを削減しやすいため好ましい。
【0130】
本発明の合わせガラス用中間膜は、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラスと縦300mm、横25mm、厚さ0.55mmの化学強化無機ガラスとを用いて該合わせガラス用中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着した合わせガラスにおける、20℃での中央加振法による合わせガラスのダンピング試験により測定される3次共振周波数での損失係数が、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。なお本発明では、中間膜を通常使用する温度と考えられる20℃における損失係数を遮音性の一指標として採用した。
また、該ダンピング試験によりISO16940:2008に準じて算出される3次共振周波数での曲げ剛性は、好ましくは60N・m以上200N・m以下、より好ましくは70N・m以上180N・m以下である。曲げ剛性が前記した下限値と上限値との範囲内であると、中周波数域から高周波数域の広い周波数域にわたる高い遮音性を実現することができる。
【0131】
一般に、合わせガラス用中間膜を挟持する最外層の透明基材(例えばガラス)が薄くなると、損失係数は低くなる傾向にある。そのため、合わせガラスとしては同一の厚さであったとしても、最外層の2枚の透明基材の厚さが異なって合わせガラス断面が非対称な構成とすることにより、最外層の2枚の透明基材の厚さが同一であって合わせガラス断面が対称な構成と比べて、損失係数は低下する。一方、自動車フロントガラス用合わせガラスにおいては、飛び石に対するチッピング耐性を付与するため、一般に車外側のガラスは約1.8mm以上の厚さに制限される。そのため、合わせガラスの軽量化を実現するためには車内側のガラスを薄くする必要があるが、その場合には上述のような損失係数の低下が問題となっていた。本発明による合わせガラス用中間膜はそのような問題を解決する方法として有用である。
【0132】
また、本発明の合わせガラス用中間膜は、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスを用いて該合わせガラス用中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着した合わせガラスにおける、20℃での中央加振法による合わせガラスのダンピング試験により測定される3次共振周波数での損失係数が、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。
また、該ダンピング試験によりISO16940:2008に準じて算出される3次共振周波数での曲げ剛性は、好ましくは60N・m以上200N・m以下、より好ましくは70N・m以上180N・m以下である。曲げ剛性が前記した下限値と上限値との範囲内であると、中周波数域から高周波数域の広い周波数域にわたる高い遮音性を実現することができる。
したがって、自動車用合わせガラスに用いられる中間膜としては、フロントガラスのみならず、サイドガラスのような合わせガラス断面が対称な構成を持つガラスに対しても、遮音性を高める目的で好適に使用できる。
【0133】
上記ダンピング試験によって得られた損失係数および曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2)と、下記の式で与えられる0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1)との差ΔTL(=TL1-TL2)が小さいほど、コインシデンス効果による遮音性の低下が抑制されていることを意味し、望ましい遮音特性となる。
TL1=20・log(f・m)-47.5
上記式において、fは1/3オクターブ帯域の各中心周波数(Hz)、mは合わせガラスの面密度(kg/m2)を表す。
【0134】
本発明の好ましい一態様では、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmのフロートガラスと縦300mm、横25mm、厚さ0.55mmの化学強化無機ガラスとを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着した合わせガラスにおける、0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1-a)と、20℃での中央加振法による合わせガラスのダンピング試験により測定される3次共振周波数での損失係数およびISO16940:2008に準じて算出される当該3次共振周波数での曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2-a)との差ΔTLは、1000Hz以上(1000Hz~10000Hz)の1/3オクターブ帯域の各中心周波数(1000、1250、1600、2000、2500、3150、4000、5000、6300、8000、10000Hz)において4.1dB以下である。
【0135】
また、本発明の好ましい一態様では、縦300mm、横25mm、厚さ1.9mmである2枚のフロートガラスを用いて前記合わせガラス用中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着した合わせガラスにおける、0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1-b)と、20℃での中央加振法による合わせガラスのダンピング試験により測定される3次共振周波数での損失係数およびISO16940:2008に準じて算出される当該3次共振周波数での曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2-b)との差ΔTLは、1000Hz以上(1000Hz~10000Hz)の1/3オクターブ帯域の各中心周波数(1000、1250、1600、2000、2500、3150、4000、5000、6300、8000、10000Hz)において4.1dB以下である。
なお、TL1-aおよびTL1-bは、前述のTL1を求める式により算出される値である。
【0136】
従来、中間膜の弾性率の調整等によって曲げ剛性を調整することでコインシデンス周波数を調整し、特定の周波数域の音響透過損失を高くすることは実現できていた。しかし、上記の全周波数域にわたって十分に音響透過損失を高くすることは困難であった。例えば、A層にガラス転移温度の低い熱可塑性樹脂を用いるとコインシデンス周波数が高周波数域に位置するため、1000Hz~5000Hzまでの周波数域では質量則に則った高い遮音性を示すことはできるが、8000Hz~10000Hzの周波数域においてはコインシデンス効果による遮音性の低下が顕著となっていた。
本発明による高い損失係数を示す合わせガラスを用いることにより、全周波数域にわたってΔTLが4.1dB以下の高い音響透過損失を実現することができる。ΔTLはより好ましくは3.8dB以下、特に好ましくは3.5dB以下である。
【0137】
<合わせガラス>
本発明の合わせガラスは、2つの透明基材の間に本発明の合わせガラス用中間膜が挟持されてなるものである。上述の通り、本発明の合わせガラス用中間膜を用いることにより、遮音性、特に2000Hzから10000Hzまでの周波数域における遮音性に優れる合わせガラスを得ることができる。そのため、本発明の合わせガラス用中間膜は、乗物用(例えば自動車用)フロントガラス、乗物用サイドガラス、乗物用サンルーフ、乗物用リアガラスまたはヘッドアップディスプレイ用ガラス等に好適に用いることができる。したがって、本発明の好ましい一態様では、合わせガラスは、乗物用フロントガラス、乗物用サイドガラス、乗物用サンルーフ、乗物用リアガラスまたはヘッドアップディスプレイ用ガラスである。ここで、本発明における乗物とは、汽車、電車、自動車、船舶または航空機等を意味する。
【0138】
2つの透明基材の間に本発明の合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラスをヘッドアップディスプレイ用ガラスに適用する場合、中間膜の断面形状は、一方の端面側が厚く、他方の端面側が薄い形状であることが好ましい。その場合、断面形状は、一方の端面側から他方の端面側に漸次的に薄くなるような全体が楔形である形状であってもよいし、一方の端面から該端面と他方の端面の間の任意の位置までは同一の厚さで、該任意の位置から他方の端面まで漸次的に薄くなるような断面の一部が楔形のものであってもよいし、製造上問題とならない限り、位置によらず任意の断面形状を有していてもよい。断面厚さが変わる層は、すべての層であってもよいし、一部の層のみが変わってもよい。
【0139】
本発明の合わせガラスには通常、最も外側に透明基材を2枚使用する。透明基材は特に限定されず、例えば無機ガラス、有機ガラス、またはそれらの組み合わせを使用できる。無機ガラスの例としては、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラスおよび熱線吸収板ガラスが挙げられる。有機ガラスを構成する材料としては、例えばアクリル樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂)およびポリカーボネート樹脂が挙げられる。透明基材は無色、有色、透明または非透明のいずれであってもよい。
透明基材の厚さは特に限定されないが、好ましくは100mm以下である。また、本発明の中間膜は遮音性に優れることから、より薄い透明基材を用いた場合であっても高い遮音性が発揮されるため、合わせガラスの軽量化が実現される。軽量化の観点からは、透明基材の厚さは少なくとも1枚が好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下、特に好ましくは1.8mm以下である。特に、一方の透明基材の厚さを1.8mm以上とし、他方の透明基材の厚さを1.8mm以下として2枚の透明基材の厚さの差を0.2mm以上とすることにより、曲げ強度を損なうことなく薄膜化と軽量化とを実現した合わせガラスを作製することができる。前記した2枚の透明基材の厚さの差は好ましくは0.5mm以上であり、1.0mm以上であってもよい。
自動車用サイドガラスでは、主として、車外側と車内側の透明基材の厚さが同等の構成の合わせガラスが用いられるが、そのような場合においても、本発明による遮音性の高い中間膜が好適に使用される。
【0140】
本発明の一態様では好ましくは、合わせガラスは2つの透明基材の間に本発明の合わせガラス用中間膜が挟持されてなる合わせガラスであって、透明基材のうちの少なくとも1つは厚さが1.2~3.0mmの無機ガラスである。当該厚さは、好ましくは1.3~2.0mmである。この一態様において、透明基材のうちの1つが前記厚さを有する場合、もう1つの透明基材の厚さは特に制限されないが、好ましくは0.2~2.0mm、より好ましくは0.3~1.0mmである。透明基材は、化学強化無機ガラスであってもよい。
【0141】
合わせガラスの遮音性は、先の合わせガラス用中間膜の説明において記載した通り、中央加振法によるダンピング試験によって得られる損失係数で評価でき、合わせガラスの損失係数が高いほど、合わせガラスの遮音性が高いといえる。
【0142】
本発明の合わせガラスの、20℃で中央加振法による合わせガラスのダンピング試験により測定される3次共振周波数での損失係数は、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。
本発明の合わせガラスの、上記ダンピング試験によりISO16940:2008に準じて算出される3次共振周波数での曲げ剛性は、好ましくは60N・m以上200N・m以下、より好ましくは70N・m以上180N・m以下である。
本発明の合わせガラスの、上記ダンピング試験によって得られた損失係数および曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2)と、下記の式で与えられる0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1)との差ΔTL(=TL1-TL2)は、1000Hz以上(1000Hz~10000Hz)の1/3オクターブ帯域の各中心周波数(1000、1250、1600、2000、2500、3150、4000、5000、6300、8000、10000Hz)において4.1dB以下であることが好ましい。ΔTLはより好ましくは3.8dB以下、特に好ましくは3.5dB以下である。
TL1=20・log(f・m)-47.5
上記式において、fは1/3オクターブ帯域の各中心周波数(Hz)であり、mは合わせガラスの面密度(kg/m2)を表す。
【0143】
<合わせガラスの製造方法>
本発明の合わせガラスは、従来公知の方法で製造することが可能である。そのような方法の例としては、真空ラミネータ装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法およびニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮圧着後に付加的にオートクレーブ工程に投入する方法を行なうこともできる。
【0144】
真空ラミネータ装置を用いる方法では例えば、太陽電池の製造に用いられる公知の装置を使用し、1×10-6MPa以上3×10-2MPa以下の減圧下、100℃以上200℃以下(特に130℃以上170℃以下)の温度で積層を行う。
【0145】
真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば欧州特許第1235683号明細書に記載されており、例えば約2×10-2MPaの圧力下、130℃以上145℃以下の温度で積層を行う。
【0146】
ニップロールを用いる方法としては例えば、ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着をした後、さらに流動開始温度に近い条件で圧着または仮圧着する方法が挙げられる。具体的には例えば、赤外線ヒーター等で30℃以上100℃以下に加熱した後ロールで脱気し、それに伴って仮圧着し、さらに50℃以上150℃以下に加熱した後ロールで圧着または仮圧着する方法が挙げられる。
【0147】
仮圧着後に付加的に行われるオートクレーブ工程は、合わせガラスの厚さや構成にもよるが、例えば、1MPa以上15MPa以下の圧力下、120℃以上160℃以下の温度で0.5時間以上2時間以下の時間実施される。
【実施例】
【0148】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の実施例において「%」は特に断りのない限り、「質量%」を意味する。
【0149】
以下の実施例および比較例において、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂としては、目的とする粘度平均重合度と同じ粘度平均重合度(JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定した粘度平均重合度)を有するポリビニルアルコールを塩酸触媒下でn-ブチルアルデヒドによりアセタール化したものを用いた。
【0150】
1.物性評価
<A層を構成する樹脂材料のtanδピーク温度およびtanδピーク高さ>
A層を構成する樹脂材料(ブロック共重合体の水素添加物、以下において「水添ブロック共重合体」とも称する)を温度230℃、圧力10MPaで3分間加圧することで、厚さ1.0mmの単層シートを作製した。この単層シートを円板形状に切り出し、これを試験シートとした。
JIS K7244-10:2005に準じて周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を行うことで、A層を構成する樹脂材料のtanδが最大となるピークの温度および当該tanδピークの高さを求めた。
【0151】
<B層またはC層を構成する樹脂材料の引張貯蔵弾性率測定>
B層またはC層を構成する樹脂材料を、温度230℃、圧力10MPaで10分間加圧することで、厚さ0.8mmのサンプルを作製した。これらをそれぞれ幅3mmに切断して、動的粘弾性測定用サンプルとした。この測定用サンプルについて、JIS K7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで、0℃における引張貯蔵弾性率を求めた。その結果を表1に示す。
【0152】
【0153】
2.重合体ブロック(a)の含有量
A層を構成する樹脂材料(水添ブロック共重合体)をCDCl3に溶解して1H-NMRスペクトルを測定[装置:JNM-Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、スチレンに由来するピーク強度から重合体ブロック(a)の含有量を算出した。
【0154】
3.重合体ブロック(a)および重合体ブロック(b)のガラス転移温度
A層を構成する樹脂材料(水添ブロック共重合体)に含まれる重合体ブロック(a)および重合体ブロック(b)のガラス転移温度を、水添ブロック共重合体の調製に用いた重合体ブロック(a)を構成する単量体と、調製した水添ブロック共重合体について、それぞれ、示差走査熱量測定(DSC、セイコー電子工業社製)を行うことにより求めた。測定においては、10℃/分の昇温速度にて-120℃から100℃まで昇温し、測定曲線の変曲点の温度を読みとり、各ブロックのガラス転移温度とした。
【0155】
4.遮音特性評価(合わせガラスの3次共振周波数における損失係数および曲げ剛性)
市販のフロートガラス(縦300mm×横25mm×厚さ1.9mm)2枚、または市販のフロートガラス(縦300mm×横25mm×厚さ1.9mm)1枚と市販の化学強化無機ガラス(縦300mm×横25mm×厚さ0.55mm)1枚とを合わせガラスの最外層に用い、構成上C層に化学強化無機ガラスを用いる場合には市販の化学強化無機ガラス(縦300mm×横25mm×厚さ0.55mm)1枚をさらに用いて、実施例および比較例で得られた各中間膜を挟み、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着して合わせガラスを作製した。
その後、機械インピーダンス装置(株式会社小野測器製;マスキャンセルアンプ:masscancelamplifierMA-5500;チャンネルデータステーション:DS-2100)における加振器(poweramplifier/model371-A)のインピーダンスヘッドに内蔵された加振力検出器の先端部に、上記合わせガラスの厚さ1.9mmのガラスの中央部を固定した。20℃において周波数0~10000Hzの範囲で上記合わせガラスの中央部に振動を与え、この加振点(振動を加えた合わせガラスの中央部)の加振力と加速度波形を検出することで、中央加振法による合わせガラスのダンピング試験を行った。得られた加振力と加速度信号を積分して得られた速度信号とに基づき加振点の機械インピーダンスを求め、横軸を周波数、縦軸を機械インピーダンスとして得られるインピーダンス曲線においてピークを示す周波数と半値幅とから合わせガラスの損失係数を求めた。さらに3次共振周波数および該3次共振周波数における損失係数を用い、ISO16940:2008に準じて該3次共振周波数における曲げ剛性を算出した。
【0156】
実施例1
表2に示す組成に従い、A層を構成する樹脂材料として、8質量%のスチレン単位および92質量%のイソプレン単位を含有し、-11.8℃のtanδピーク温度および2.5のtanδピーク高さを有する直鎖状水添スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体(水添率93%、重量平均分子量258,000)を用いた。
また、B層を構成する樹脂材料として、ポリビニルブチラール樹脂(アセタール化度70モル%、酢酸ビニル単位含有量0.9モル%、原料としたポリビニルアルコールの粘度平均重合度約1700)および可塑剤〔株式会社クラレ製ポリエステルポリオール「クラレポリオールP-510」(融点:-77℃、水酸基価:213.0~235.0mgKOH/g)〕からなる樹脂組成物(ポリビニルブチラール樹脂100質量部に対する可塑剤の量は38.8質量部)を用いた。
これらの樹脂材料をそれぞれ押出成形し、厚さ250μmのA層および厚さ250μmのB層を作製した。得られたA層を2つのB層の間に挟み、150℃でプレス成形して3層構成の複合膜である厚さ750μmの中間膜フィルム1を作製した。表2においてフィルム1として概要を示す。なお、A層を構成する樹脂材料について、JIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率は、1.0GPa未満であった。
得られた中間膜フィルム1を2枚、厚さ1.9mmのフロートガラスを1枚および厚さ0.55mmの化学強化無機ガラスを2枚用いて、表3に示す構成となるよう積層し、温度140℃、圧力1MPa、60分の条件で圧着して合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスの損失係数および曲げ剛性を表3に示す。
また、合わせガラスの重量およびサイズに基づき、0°~78°の音場入射で与えられる質量則による音響透過損失(TL1)と、上記の損失係数および曲げ剛性から算出される音響透過損失(TL2)との差ΔTLを1000Hz以上(1000Hz~10000Hz)の1/3オクターブ帯域の各中心周波数で算出した。その中で最大の値を最大ΔTL(dB)として表3に示す。
【0157】
実施例2~11
表2に記載の通り中間膜フィルムを作製し、表3に記載の合わせガラスの構成としたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを作製した。用いた中間膜フィルムの構成を表2に示し、得られた合わせガラスの遮音特性を表3に示す。
なお、中間膜フィルム2~5および8のA層を構成する樹脂材料は、中間膜フィルム1のA層を構成する樹脂材料と同じものを用いた。中間膜フィルム2~4および6~8のB層を構成する樹脂材料は、中間膜フィルム1のB層を構成する樹脂材料と同じものを用いた。
中間膜フィルム6のA層を構成する樹脂材料としては、8質量%のスチレン単位および92質量%のイソプレン単位を含有し、-4.5℃のtanδピーク温度および2.5のtanδピーク高さを有する直鎖状水添スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体(水添率91%、重量平均分子量263,000)を用いた。
中間膜フィルム7のA層を構成する樹脂材料としては、8質量%のスチレン単位および92質量%のイソプレン単位を含有し、-16.4℃のtanδピーク温度および2.6のtanδピーク高さを有する直鎖状水添スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体(水添率91%、重量平均分子量278,000)を用いた。
なお、中間膜フィルム6のA層および中間膜フィルム7のA層を構成する樹脂材料について、JIS K 7244-4:1999に準じて周波数0.3Hzの条件で動的粘弾性試験を行うことで測定される0℃における引張貯蔵弾性率は、1.0GPa未満であった。
中間膜フィルム5のB層を構成する樹脂材料であるアイオノマー樹脂としては、デュポン社製SentryGlas(R) Interlayerを用いた。
実施例2~7のC層としては、実施例1と同じ化学強化無機ガラスを用いた。
実施例8~11のC層としては、所定の厚さを有する市販のアクリル樹脂シートまたはポリカーボネート樹脂シートを用いた。
【0158】
実施例12
表2に示すようにA層およびB層を各々1枚ずつの構成としたこと以外は実施例1と同様にして、中間膜フィルム8を作製した。その後、C層としての厚さ1mmの市販アクリル樹脂シートにA層が接するように配置したこと以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスの遮音特性を表3に示す。
【0159】
【0160】
【0161】
<比較例1~8>
表4に記載の通り中間膜フィルムを作製し、表5に示す構成となるよう中間膜フィルム、フロートガラスおよび化学強化無機ガラスを用いたこと以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製し、得られた合わせガラスの遮音特性を測定した。
なお、中間膜フィルム9のA層を構成する樹脂材料としては、ポリビニルブチラール樹脂(アセタール化度70モル%、酢酸ビニル単位含有量0.9モル%、原料としたポリビニルアルコールの粘度平均重合度約1700)および可塑剤〔株式会社クラレ製ポリエステルポリオール「クラレポリオールP-510」(融点:-77℃、水酸基価:213.0~235.0mgKOH/g)〕からなる樹脂組成物(ポリビニルブチラール樹脂100質量部に対する可塑剤の量は60質量部)を用いた。
中間膜フィルム9および10のB層を構成する樹脂材料としては、実施例1のB層を構成する樹脂材料と同じポリビニルブチラール樹脂組成物を用いた。
また、比較例2で用いた厚さ1.6mmのガラスは市販のフロートガラスであり、比較例3および4で用いた厚さ1.1mmのガラスは市販のフロートガラスであった。
比較例1~4、7および8は層Cに該当する層を有さない構成となっている。比較例5は、C層および2枚の中間膜フィルム9から構成される合わせガラス用中間膜を用いているが、中間膜フィルム9におけるA層を構成する樹脂材料のtanδピーク高さが1.5より低いものとなっている。比較例6は、C層、中間膜フィルム9および中間膜フィルム10から構成される合わせガラス用中間膜を用いているが、中間膜フィルム9におけるA層を構成する樹脂材料のtanδピーク高さが1.5より低く、中間膜フィルム10はA層に該当する層を有さないものとなっている。
【0162】
【0163】
【0164】
表3および表5の遮音特性および最大ΔTLを比較すると、実施例1~12の合わせガラスが0.55以上の高い損失係数および4.1以下の低い最大ΔTLを有する一方で、比較例1~8の合わせガラスは0.55未満の損失係数および4.1より大きい最大ΔTLを有することが分かる。これらの結果は、本発明の合わせガラス用中間膜は高い遮音性を有し、そのような合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは遮音性を備えることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の合わせガラス用中間膜および合わせガラスは特に、高い遮音性が要求される乗物用ガラス(例えば乗物用窓ガラス)等に好適に使用される。
【符号の説明】
【0166】
1a A層
1b A層
2a B層
2b B層
2c B層
2d B層
3 C層