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特許7432508リンおよびイッテルビウムをドープピングした多金属触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】リンおよびイッテルビウムをドープピングした多金属触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/185 20060101AFI20240208BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240208BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240208BHJP
   C10G 35/09 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B01J27/185 M
B01J37/02 101C
B01J37/08
C10G35/09
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020529335
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081580
(87)【国際公開番号】W WO2019105765
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】1761407
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ディール ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ゲガン カリーヌ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03039082(FR,A1)
【文献】特表2012-531307(JP,A)
【文献】特開平11-090224(JP,A)
【文献】特表2008-519685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 1/00 - 99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、少なくとも1種の貴金属Mと、スズと、リンと、イッテルビウムとを含んでいる、炭化水素ベースの供給原料の改質方法の触媒であって、リン元素の含有率は、触媒の質量に対して0.2重量%以上かつ0.4重量%未満であり、イッテルビウムの含有率は、触媒の質量に対して1重量%以下である、触媒。
【請求項2】
貴金属Mの含有率は、触媒の質量に対して0.02重量%~2重量%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
貴金属Mは、白金またはパラジウムである、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
スズの含有率は、触媒の質量に対して0.005重量%~10重量%である、請求項1~3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
イッテルビウムの含有率は、触媒の質量に対して0.01重量%~0.5重量%である、請求項1~4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
リンの含有率は、触媒の質量に対して0.25重量%~0.35重量%である、請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
Sn/Mの原子比は、0.5~4.0であり、P/Mの原子比は、0.2~30.0であり、Yb/Mの原子比は、0.1~5.0である、請求項1~6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
担体は、シリカ、アルミナまたはシリカ-アルミナを含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
ハロゲン化化合物も含有する、請求項1~8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
ハロゲン化化合物の含有率は、触媒の質量に対して0.1重量%~8重量%である、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の触媒を調製する方法であって、以下の連続的な工程:
a) 担体と、スズと、リンと、貴金属とを含んでいる前駆体を調製する工程、
b) 工程a)において得られた前駆体を、中性ガスの流れ下または酸素を含有しているガスの流れ下に200℃より低い温度で乾燥させ、かつ、350℃~650℃の温度で焼成する工程、
c) 工程b)において得られた乾燥・焼成済みの前駆体に、イッテルビウムの前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させる工程、
d) 工程c)において得られた含浸済みの前駆体を、中性ガスの流れ下または酸素を含有しているガスの流れ下に200℃より低い温度で乾燥させ、かつ、350℃~650℃の温度で焼成する工程
を含む、方法。
【請求項12】
工程a)は、以下の工程:
a1) 担体の成形の間にスズの前駆体を導入することによってスズを含んでいる担体を調製する工程、
a2) 工程a1)において得られたスズを含有している担体に、少なくとも1種の貴金属の前駆体とリンの前駆体とを含んでいる含浸溶液を含浸させる工程
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)は、以下の工程:
a1’) 担体の成形の間にスズの前駆体とリンの前駆体とを導入することよってスズとリンとを含んでいる担体を調製する工程、
a2’) 工程a1’)において得られたスズとリンとを含有している担体に、少なくとも1種の貴金属の前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させる工程
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程d)の後に得られた触媒を、水素下の処理に付す、請求項11~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
改質方法における、請求項1~10のいずれか1つに記載の触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の転化の分野、より具体的には、触媒の存在中で炭化水素ベースの供給原料を改質して、ガソリン留分および芳香族化合物を生じさせることに関する。より詳細には、本発明は、少なくとも1種の貴金属と、スズと、リンと、イッテルビウムとをベースとする改善された触媒、同触媒を調製する方法および改質方法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
接触改質方法により、原油の直接蒸留および/または他の精製方法、例えば、接触分解または熱分解を起源とするガソリンフラクションのオクタン価を有意に増大させることが可能となる。接触改質の方法は、蒸留によって得られた重質ガソリンを品質向上させるために精製業者によって非常に幅広く用いられている方法である。重質ガソリン供給原料の炭化水素(とりわけ、パラフィン類およびナフテン類)であって、分子当たり約5~12個の炭素原子を含有しているものは、この方法の間に、芳香族炭化水素および分枝パラフィン類に転化される。この転化は、(平均で480~520℃の範囲内の)高温において、低圧から中圧(0.2~2.5MPa)にわたって、触媒の存在中で得られる。接触改質によりリフォメートと水素とが生じ、このリフォメートにより、ガソリン留分のオクタン価を有意に向上させることが可能となる。リフォメートは、C5+化合物(少なくとも5個の炭素原子を含有している化合物)から主として形成される。
【0003】
改質触媒は、多金属触媒である。改質触媒には、主要なカテゴリーが2つあり、これらは、異なる特性を有している:白金-スズ触媒:これは、CDR(continuous catalytic reforming:連続式接触改質)の方法において移動床反応器中でビーズ状の形態で一般的に用いられる;および白金-レニウム触媒;これは、固定床において押出物状の形態で一般的に用いられる。
【0004】
これらの2タイプの触媒について、数多くの特許には、プロモータを添加して、炭化水素ベースの供給原料を改質することに関するそれらの性能を改善することが記載されている。
【0005】
ランタニド、とりわけ、セリウムをドーピングすることに関して、特許文献1には、プロモータ、例えば、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、タリウムまたはアクチニウムを、白金またはパラジウムをベースとする触媒に添加することが記載されている。特許文献2には、Ceを有する触媒(PtSnCe)が記載されている。特許文献3には、この同一タイプの触媒が非常に低い含有率にあるアルカリ化合物との組み合わせで記載されている。特許文献4には、Ceおよび/またはEuをドーピングされた触媒が記載されている。特許文献5および6には、同一の触媒上にCeに加えて他のランタニドを含んでいる触媒が記載されている。
【0006】
リンは、4個超の炭素原子を厳密に含有している炭化水素ベースの化合物(C5+)、特に芳香族生成物の収率を高めるためにさらに知られている。この特性は、特許(特許文献7~12)において特許請求されている。
【0007】
特許文献13には、白金と、スズと、リンと、ガリウム、インジウム、タリウム、ヒ素、アンチモンおよびビスマスからなる群から選択される少なくとも1種のプロモータとを含んでいる触媒が記載されている。
【0008】
特許文献14には、白金およびスズをPt/Sn比0.9未満で含んでおり、場合によっては、ゲルマニウム、ガリウム、セリウム、ランタン、ユーロピウム、インジウム、リン、ニッケル、鉄、タングステン、モリブデン、亜鉛およびカドミウムから単独でまたは混合物として選ばれる別の元素を、触媒の質量に対して0.1重量%~10重量%の元素含有率で含んでいる触媒が記載されているが、しかしながら、プロモータについては何等の特定の効果と関連していない。
【0009】
特許文献15には、0.4重量%未満の希釈量のリンを添加すれば、接触改質方法におけるそれの使用の間のより良好な比表面積の保持および塩素の保持が可能となることによって、担体が安定になることも記載されている。前記文献には、白金およびリンをベースとし、場合によっては、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、インジウム、ガリウム、イリジウム、ランタン、セリウム、ホウ素、コバルト、ニッケルおよび鉄から単独でまたは混合物として選ばれる別の元素を、触媒の質量に対して0.01重量%~5重量%の元素含有率で含んでいる触媒が開示されている。
【0010】
特許文献16には、担体と、少なくとも1種の貴金属Mと、スズと、リンと、ランタニド族からの少なくとも1種の元素とを含んでおり、リン元素の含有率は、触媒の質量に対して0.4重量%~1重量%であり、ランタニド族の元素(1種または複数種)の含有率は、触媒の質量に対して1重量%未満である触媒が記載されている。触媒の質量に対して、0.4重量%~1重量%の量のリンと、1重量%未満の量の少なくとも1種のランタニド族からの元素が同時に存在することにより、驚くべき相乗効果が、特に、触媒の必須の機能、すなわち選択性および安定性に対して示されるが、活性を悪化させることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第2814599号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0015103号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0256194号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1390140号明細書(特表2004-527371号公報)
【文献】中国特許出願公開第103372454号明細書
【文献】米国特許第6239063号明細書
【文献】米国特許第2890167号明細書
【文献】米国特許第3706815号明細書
【文献】米国特許第4367137号明細書
【文献】米国特許第4416804号明細書
【文献】米国特許第4426279号明細書
【文献】米国特許第4463104号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/122665号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1656991号明細書(特表2008-519685号公報)
【文献】米国特許出願公開第2007/0215523号明細書
【文献】仏国特許発明第3309082号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
用語「選択性(selectivity)」は、活性の所与のレベル(典型的には所与のオクタン価のレベル)における流出物に対する質量百分率として表されるC5+化合物の収率を意味する。
【0013】
活性は、一般的に、所定レベルの過酷度(severity)におけるC5+化合物の所与のオクタン価として特徴付けられるか、または、逆に、所与のオクタン価(RON、すなわち、Research Octane Numberとしても知られている)に達するために要求される温度によって表される。
【0014】
用語「安定性(stability)」は、活性の安定性を意味し、これは、一般的には、所与のオクタン価に性能を維持するための単位時間または単位供給原料当たりの単位における、機能している間に適用される熱増大によって測定される。
【0015】
この背景において、本発明の主題の一つは、改質方法において改善された活性および安定性を有しておりかつ選択性を悪化させることのない触媒を提案することにある。具体的には、選択性は、一般的には、求められる機能の一つではあるが、精製業者は、より大きい活性を有し、これが経時的である(安定性)触媒を必要としてよく、例えば、精製業者が、より加工し難い供給原料(例えば、高度にパラフィン性の供給原料)を処理することを必要とする場合または市場需要が有意に大きくなった場合である。
【0016】
本発明は、担体と、少なくとも1種の貴金属Mと、スズと、リンと、イッテルビウムとを含んでおり、リン元素の含有率は、触媒の質量に対して0.2重量%以上かつ0.4重量%未満であり、イッテルビウムの含有率は、触媒の質量に対して1重量%以下である、触媒に関する。
【0017】
リンプロモータとイッテルビウムプロモータとが同時に存在し、各プロモータが貴金属およびスズをベースとする触媒上に所定量で存在することにより、これらのプロモータのうちの一方のみを含有している従来技術の触媒の活性または両プロモータを過度に大量に含有している従来技術の触媒の活性よりはるかに優れた最終触媒の活性が与えられることが示された。あらゆる理論に縛り付けられることなく、触媒の質量に対して、0.2重量%以上かつ0.4重量%未満の量のリンプロモータと、1重量%以下の量のイッテルビウムプロモータとが同時に存在することが、驚くべきことに、活性および安定性を向上させることに関して相乗効果を示しながら、選択性を悪化させることがなく、かつ、この相乗効果は、両プロモータの既知の改善効果の単純な足し算によっては予知できるものではないようである。
【0018】
一つの変形例によると、貴金属Mの含有率は、触媒の質量に対して0.02重量%~2重量%である。
【0019】
一つの変形例によると、貴金属Mは、白金またはパラジウムである。
【0020】
一つの変形例によると、スズ元素の含有率は、触媒の質量に対して0.005重量%~10重量%である。
【0021】
一つの変形例によると、イッテルビウムの含有率は、触媒の質量に対して0.01重量%~0.5重量%である。
【0022】
一つの変形例によると、リンの含有率は、触媒の質量に対して0.25重量%~0.35重量%である。
【0023】
一つの変形例によると、Sn/Mの原子比は、0.5~4.0であり、P/Mの原子比は、0.2~30.0であり、Yb/Mの原子比は、0.1~5.0である。
【0024】
一つの変形例によると、担体は、シリカ、アルミナまたはシリカ-アルミナを含む。
【0025】
一つの変形例によると、触媒は、ハロゲン化化合物も含有している。
【0026】
この変形例によると、ハロゲン化化合物の含有率は、触媒の質量に対して0.1重量%~8重量%である。
【0027】
本発明は、本発明による触媒を調製する方法であって、以下の連続的な工程:
a) 担体と、スズと、リンと、貴金属とを含んでいる前駆体を調製する工程、
b) 工程a)において得られた前駆体を、中性ガスの流れ下または酸素を含有しているガスの流れ下に、200℃より低い温度で乾燥させ、かつ、350℃~650℃の温度で焼成する工程、
c) 工程b)において得られた乾燥・焼成済みの前駆体に、イッテルビウムの前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させる工程、
d) 工程c)において得られた含浸済みの前駆体を、中性ガスの流れ下または酸素を含有するガスの流れの下に、200℃より低い温度で乾燥させ、かつ、350℃~650℃の温度で焼成する工程
を含む、方法にも関する。
【0028】
一つの変形例によると、工程a)は、以下の工程:
a1) 担体の成形の間にスズの前駆体を導入することによってスズを含んでいる担体を調製する工程、
a2) 工程a1)において得られたスズを含有している担体に、少なくとも1種の貴金属の前駆体とリンの前駆体とを含んでいる含浸溶液を含浸させる工程
を含む。
【0029】
別の変形例によると、工程a)は、以下の工程:
a1’) 担体の成形の間にスズの前駆体とリンの前駆体とを導入することによってスズとリンとを含んでいる担体を調製する工程、
a2’) 工程a1’)において得られたスズとリンとを含有している担体に、少なくとも1種の貴金属の前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させる工程
を含む。
【0030】
別の変形例によると、工程d)の後に得られた触媒は、水素下の処理に付される。
【0031】
本発明は、改質方法における本発明による触媒の使用にも関する。
【0032】
以降において、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics, 出版元CRC Press,編集長 D.R. Lide, 第81版, 2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10族の金属に対応する。
【0033】
触媒の種々の成分の全ての含有率、とりわけ、貴金属、スズ、リン、イッテルビウムおよびハロゲン化化合物の含有率は、はっきりと別途示されない限り、元素に対して表される
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
(触媒)
本発明は、担体と、少なくとも1種の貴金属Mと、スズと、リンと、イッテルビウムとを含んでいる触媒であって、リン元素の含有率は、触媒の質量に対して0.2重量%以上かつ0.4重量%未満であり、イッテルビウムの含有率は、触媒の質量に対して1重量%以下である、触媒に関する。
【0035】
担体は、一般的に、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウムおよびケイ素の酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物を含む。好ましくは、担体は、シリカ、アルミナまたはシリカ-アルミナを含み、大いに好ましくはアルミナを含む。好ましくは、担体は、アルミナを含み、大いに好ましくは、アルミナは、ガンマ-アルミナである。
【0036】
担体が有する全細孔容積は、有利には0.1~1.5cm/g、より好ましくは0.4~0.8cm/gである。全細孔容積の測定は、規格ASTM D4284に従う水銀ポロシメトリによって、140°のぬれ角で、Rouquerol F.; Rouquerol J.; Singh K.による成書“Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, Methodology and Applications”, Academic Press, 1999に記載されたようにして、例えば、Micromeritics(登録商標)の商標Autopore III(登録商標)のモデル機により行われる。
【0037】
担体の比表面積は、有利には50~600m・g-1、好ましくは100~400m・g-1、より好ましくは150~300m・g-1である。比表面積は、本発明において、規格ASTM D3663に従うBET法により決定される。この方法は、上記の同一の成書において記載されたものである。
【0038】
有利には、担体が有するタップ充填密度(tapped packing density:TPD)の値は、0.4~0.8g/mL、好ましくは0.5~0.7g/mLである。TPDの測定は、担体を、その容積が事前に決定されている測定シリンダ(典型的には100mLの容積を有する)に導入することと、次いで、振動により、一定の容積が得られるまでそれをタッピングすることとからなる。タッピング済みの物の容積密度は、導入された質量と、タッピングの後に占められた容積を比較することによって計算される。測定の不確実性は、一般的に、±0.01g/mLの程度である。
【0039】
それ故に、この担体が改質触媒の担体として用いられる場合、「密集(dense)」担体の要件(例えば、タップ充填密度約0.6~0.7g/mL)を満たすことができ、かつ、「軽質(light)」担体の要件(例えば、タップ充填密度約0.5~0.6g/mL)も満たすことができる。
【0040】
好ましくは、前記担体のタップ充填密度(TPD)の値は、0.5~0.7g/mLである。
【0041】
担体は、有利には、ビーズ状、押出物状、ペレット状または粉体状の形態にある。好ましくは、担体は、ビーズ状の形態にある。担体は、当業者に知られているあらゆる技術を介して得られてよい。成形処理は、例えば、押出、ペレット化、滴下凝固(オイルドロップ)法、回転板上の造粒によってまたは当業者に周知である任意の他の方法を介して行われてよい。
【0042】
担体がビーズ状の形態にある場合、それの径は、一般的には0.5~5mmである。このようなビードは、オイルドロップ法を介して製造されてよい。この方法によると、担体がアルミナである場合に、アルミナゲル(例えば、ベーマイト(結晶質オキシ水酸化アルミニウム)、すなわち擬ベーマイト)、乳化剤、場合による金属前駆体および水を含有している懸濁液が調製され、この懸濁液は、滴下用ポットに移される。この滴下用ポットは、ノズルを備えており、このノズルのオリフィスは、滴体を形成するように較正されている。懸濁液は、次いで、上部部分に有機相(石油相)と下部部分に塩基水性相(アンモニア溶液)を含有しているカラムに重力滴下させられ、塩基水性相の底部に球状粒子が集められる。球体の形成が起きるのは、有機相を通じた滴体の通過の間であり、ゲル化(または凝固)は水性相において起こる。ビーズは、次いで、乾燥させられかつ焼成される。
【0043】
担体が押出状の形態にある場合、それらの調製は、アルミナゲルを水および適切な解膠剤、例えば、塩化水素酸または硝酸と、金属前駆体の場合による存在中で、押出可能なペーストが形成されるまで混ぜ合わせることによって行われてよい(せん断酸性混ぜ合わせ処理(shearing acidic blending)。得られたペースト状物は、適切なサイズのダイを通じて押し出されてよく、これにより、押出物が形成され、この押出物は、続いて、乾燥させられ、その後に、焼成される。押出に先行して、それは、pH中和剤、例えば、アンモニア溶液を加えることが必要である場合もある。一般に、押出物の径は、0.5~5mmであり、好ましくは、長さ-径の比は、1:1~5:1である。
【0044】
本発明による触媒の必須成分は、貴金属M、好ましくは白金またはパラジウム、大いに好ましくは白金である。この貴金属は、最終触媒中、酸化物、硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物の化合物として、触媒の他の成分の1種または複数種との化学的な組み合わせでまたは元素金属の形態で存在してよい。
【0045】
本発明による触媒中の貴金属Mの含有率は、触媒の質量に対して、0.02重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1.5重量%、一層より好ましくは0.1重量%~0.8重量%である。
【0046】
本発明による触媒の別の必須成分は、スズである。この元素は、最終触媒中に、酸化物、硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物の化合物として、触媒の他の成分の1種または複数種との化学的な組み合わせでまたは元素金属の形態で存在してよい。
【0047】
本発明による触媒中のスズの含有率は、0.005重量%~10重量%、より好ましくは0.01重量%~5重量%、大いに好ましくは0.1重量%~1重量%である。
【0048】
本発明による触媒の別の必須成分は、リンである。この元素は、最終触媒中に、酸化物または混合酸化物、リン酸塩、ポリリン酸塩、硫化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物または水素化物の化合物としてまたは触媒の他の成分の1種または複数種との化学的な組み合わせで存在してよい。
【0049】
本発明による触媒中のリン元素の含有率は、0.2重量%以上かつ0.4重量%未満、好ましくは0.25重量%~0.35重量%である。
【0050】
本発明による触媒の別の必須成分は、イッテルビウムである。イッテルビウムは、最終触媒中に、酸化物、硫化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物の化合物として、触媒の他の成分の1種または複数種との組み合わせでまたは元素金属の形態で、さらには、貴金属(例えば白金)との合金の形態で存在してよい。
【0051】
本発明による触媒中のイッテルビウム元素の含有率は、触媒の質量に対して1重量%以下、好ましくは0.01重量%~0.5重量%、特に好ましくは0.02重量%~0.3重量%である。
【0052】
触媒の質量に対して、0.2重量%以上かつ0.4重量%未満、好ましくは0.25重量%~0.35重量%の量のリンと、1重量%以下の量のイッテルビウムとが同時に存在することにより、驚くべき相乗効果が、とりわけ触媒の必須の機能、すなわち、活性および安定性に対して、選択性を悪化させることなく示される。
【0053】
Sn/Mの原子比は、一般的に0.5~4.0、より好ましくは0.9~3.5、大いに好ましくは0.95~3.2である。
【0054】
P/Mの原子比は、一般的に0.2~30.0、より好ましくは0.5~20.0、大いに好ましくは0.9~15.0である。
【0055】
Yb/Mの原子比は、一般的に0.1~5.0、より好ましくは0.2~3.0である。
【0056】
本発明による触媒は、好ましくは、ハロゲン化化合物を含んでもよく、これは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される。ハロゲン化化合物の含有率は、焼成後の触媒の重量で一般的に0.1重量%~8重量%、好ましくは0.2重量%~3重量%である。好ましくは、ハロゲン化化合物は、塩素である。
【0057】
本発明による触媒は、場合によっては、他のプロモータを含んでもよく、これは、周期律表の第IA族、第IIA族、第IIIA族(とりわけインジウム)、第IVA族(とりわけゲルマニウム)および第VA族、コバルト、ニッケル、鉄、タングステン、モリブデン、クロム、ビスマス、アンチモン、亜鉛、カドミウムおよび銅から選ばれる。触媒中にこれらの元素が存在する場合、その含有率は、酸化物として表されて、触媒の質量に対して一般的に0.01重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1重量%である。
【0058】
しかしながら、触媒は、好ましくは、担体と、少なくとも1種の貴金属Mと、スズと、リンと、イッテルビウムとからなり、特に好ましくは、それは、アルミナ担体と、白金と、スズと、リンと、イッテルビウムとから、上記に指し示されたようなリンとイッテルビウムとの特定の量でなっている。
【0059】
全ての元素は、好ましくは、担体中に均一に分散させられている。
【0060】
(触媒の調製方法)
本発明による触媒は、当業者に知られているあらゆる調製方法に従って調製されてよい。
【0061】
貴金属は、あらゆる適切な方法で担体に組み入れられてよく、例えば、共沈殿、イオン交換または含浸である。好ましくは、それの導入は、事前成形された担体の含浸によって、例えば、過剰での含浸または乾式含浸(導入されるべき元素を含有している溶液の容積が担体の細孔容積に相当している)によって、好ましくは、過剰での含浸によって行われる。これをするために、担体は、少なくとも貴金属を含んでいる含浸溶液を含浸させられる。
【0062】
一般的に、塩化水素または別の類似の酸が含浸溶液に加えられてもよい。担体の表面への貴金属成分の組み入れまたは付着および担体材料を通じた貴金属成分の均一な分配がさらに促進される。
【0063】
加えて、焼成が済まされた後に担体に含浸させることが一般的には好ましく、これにより、貴金属の浸出のリスクが最小にされる。
【0064】
貴金属が白金である場合、白金の前駆体は、以下の群の一部を形成するが、このリストは、制限的なものではない:ヘキサクロロ白金酸、ブロモ白金酸(bromoplatinic acid)、クロロ白金酸アンモニウム、塩化白金、ジクロロカルボニル白金ジクロリド、テトラアミン白金クロリドまたはジヒドロキシジアミン白金。有機白金錯体、例えば、白金(II)ジアセチルアセトナートが用いられてもよい。好ましくは、用いられる前駆体は、ヘキサクロロ白金酸である。
【0065】
担体へのスズの組み入れは、あらゆる適切な方法、例えば、共沈殿、イオン交換または含浸で、触媒を調製する方法のあらゆる工程において行われてよい。
【0066】
第1の変形例によると、それの担体への導入は、例えば、担体の合成の間または担体の成形の間であってよい。網羅的ではなく、担体の合成の間の担体の酸化物前駆体の溶解の前またはその間の添加のための技術が、熟成を伴ってまたは伴わずに、使用のために適切であってよい。導入は、それ故に、担体の前駆体の混合と同時であるかまたはその後であってよい。スズは、担体の合成の間に、ゾル-ゲルタイプのあらゆる技術に従って導入されてよいか、または、アルミナゾルに加えられてよい。スズは、担体の実施の間に、担体の成形、例えば、押出またはオイルドロップによる成形手順の従来技術に従って導入されてもよい。
【0067】
第2の変形例によると、スズの担体上への導入は、例えば、事前成形された担体の含浸によってなされてよい。1種または複数種のスズの前駆体を含有している溶液を担体に含浸させることは、過剰の溶液によってまたは乾式含浸によって行われてよい。含浸は、スズの前駆体と担体との間の相互作用について作用する種の存在中で行われてよい。これらの種は、例えば、かつ、制限することなく、鉱酸(HCl、HNO)または有機酸(例えば、カルボン酸またはポリカルボン酸)、および錯形成タイプの有機化合物であってよく、この錯形成タイプの有機化合物は、例えば、特許US 6 872 300およびUS 6 291 394に記載されているようなものである。好ましくは、含浸は、当業者に知られているあらゆる技術に従って、触媒中のスズの均質な分配を得るために行われる。
【0068】
スズの前駆体は、鉱物質または有機金属質のタイプであってよく、場合によっては、水溶性の有機金属性のタイプである。スズの前駆体は、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩および硝酸塩の化合物によって形成される群から選ばれてよい。これらのスズ体は、触媒を調製するための媒体に、供給された形態でまたは現場で(in situ)で(例えば、スズおよびカルボン酸の導入によって)生じたそれらの形態で導入されてよい。有機金属性のタイプのスズベースの前駆体は、例えば、SnR(式中、Rは、アルキル基(例えば、ブチル基)を示す)、MeSnCl、MeSnCl、EtSnCl、EtSnCl、EtSnCl、iPrSnCl、ヒドロキシドであるMeSnOH、MeSn(OH)、EtSnOH、EtSn(OH)、酸化物である(BuSn)Oまたは酢酸塩であるBuSnOC(O)Meであってよい。好ましくは、ハロゲン化されたスズの種、特に、塩素化された種が用いられることになる。特に、SnClまたはSnClが、有利には用いられることになる。
【0069】
第3の変形例によると、スズは、部分的に担体の合成または成形の間に、かつ、部分的に成形済み担体上への沈着によって導入されてよい。
【0070】
好ましくは、スズは、担体に導入される。すなわち、担体の合成の間または担体の成形の間に導入される。オイルドロップ技術によって調製されるビーズ状の形態にあるアルミナベースの担体の場合、スズの前駆体は、滴下されることになる懸濁液に導入される。
【0071】
リンの担体への組み入れは、あらゆる適切な方法で、例えば、共沈殿、イオン交換または含浸で、触媒を調製する方法のあらゆる工程においてなされてよい。それの導入、とりわけ、スズの場合に記載された3つの変形例に従って行われてよい。
【0072】
一つの変形例によると、リンは、担体に導入される。すなわち、それの成形の間に、例えば、スズと同時に導入される。
【0073】
別の変形例によると、リンは、含浸によって導入され、特に好ましくは、それは、貴金属と同時の含浸によって導入される。この場合、含浸溶液は、貴金属の前駆体とリンの前駆体とを含有する。
【0074】
リンの前駆体は、酸または塩、例えば、HPO、HPO、HPO、NHPOまたは(NHHPOであってよいが、このリストは網羅的ではない。
【0075】
イッテルビウムの担体への組み入れは、あらゆる適切な方法、例えば、共沈殿、イオン交換または含浸で、触媒を調製する方法のあらゆる工程において行われてよい。それは、とりわけ、スズの場合に記載された3つの変形例に従って導入されてよい。好ましくは、それは、含浸によって導入され、特に好ましくは、それは、貴金属が導入された後に、下記に記載されるように導入される。
【0076】
イッテルビウムの前駆体は、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩および硝酸塩の化合物によって形成される群から選ばれてよい。これらのイッテルビウム体は、触媒を調製するための媒体に、供給されたそれらの形態でまたは(例えば、イッテルビウムおよびカルボン酸の導入によって)現場内(in situ)で生じたそれらの形態で導入されてよい。例えば、硝酸イッテルビウムが好適に用いられることになる。
【0077】
他のプロモータが存在する場合、それらの担体への組み入れは、あらゆる適切な方法、例えば、共沈殿、イオン交換または含浸で、触媒を調製する方法のあらゆる工程において行われてよい。それらは、とりわけ、スズの場合において記載された3つの変形例に従って導入されてよい。
【0078】
触媒の複数種の成分が担体に、すなわち、担体の合成の間または担体の成形の間に導入される場合、導入は、同時であってよいか、または、別々に行われてよい。
【0079】
成分の担体への導入の後に、本発明による触媒を調製するためのプロトコルは、一般的には、貴金属と場合による他の成分との沈着の前に乾燥および焼成を必要とする。乾燥処理は、一般的には50℃~250℃、より好ましくは70℃~200℃の温度で、空気中または不活性雰囲気下に行われる。乾燥処理は、優先的には1~24時間、好ましくは1~20時間の時間にわたって行われる。焼成は、好ましくは350℃~650℃、好ましくは400℃~600℃、一層より好ましくは450℃~550℃の温度で、一般的には空気中で行われる。焼成の時間は、一般的には30分~16時間、好ましくは1時間~5時間である。温度上昇は、均一であってよいか、または、中間の安定温度段階を含んでよく、これらの安定段階は、固定されたまたは変動する温度上昇率で達成される。これらの温度上昇は、それ故に、それらの率(度/分または度/時間)において同一であってよいか、または、異なってよい。
【0080】
触媒の複数種の成分が、成形された担体上に含浸によって導入される場合、成分の導入は、単一種の含浸溶液によって同時であってよいか、または、成分の1種または複数種を含有している複数種の含浸溶液によって別々に行われてよく、あらゆる順序で行われてよい。
【0081】
本発明において記載されるあらゆる含浸溶液は、当業者に知られているあらゆる極性溶媒を含んでよい。用いられる前記極性溶媒は、有利には、メタノール、エタノール、水、フェノールおよびシクロヘキサノールによって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として利用される。前記極性溶媒は、有利には、炭酸プロピレン、DMSO(dimethyl sulfoxide:ジメチルスルホキシド)、N-メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone:NMP)およびスルホランによって形成された群から選ばれてもよく、単独でまたは混合物として利用される。好ましくは、極性のプロトン性溶媒が用いられる。一般の極性溶媒およびそれらの比誘電率のリストは、成書“Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry”、C. Reichardt, Wiley-VCH, 第3版, 2003, pages 472-474において見出され得る。大いに好ましくは、用いられる溶媒は、水またはエタノールであり、特に好ましくは、溶媒は水である。
【0082】
各含浸の後、含浸済みの触媒は、一般的に、含浸の間に導入された溶媒の全部または一部を除去するように乾燥させられ、その際の温度は、好ましくは50℃~250℃、より好ましくは70℃~200℃である。乾燥処理は、優先的には、1~24時間、好ましくは1~20時間の時間にわたって行われる。乾燥処理は、空気中、または不活性雰囲気(例えば窒素)下に行われる。
【0083】
乾燥処理の後、触媒は、一般的に焼成され、一般的には空気中で行われる。焼成の温度は、一般的に350℃~650℃、好ましくは400℃~650℃、一層より好ましくは450℃~550℃である。温度傾斜は、安定温度段階を含んでいてもよい。
【0084】
焼成の時間は、一般的には30分~16時間、好ましくは1時間~5時間である。
【0085】
より詳細には、本発明による触媒は、以下の連続的な工程:
a) 担体と、スズと、リンと、貴金属とを含んでいる前駆体を調製する工程、
b) 工程a)において得られた前駆体を、中性ガスの流れ下または酸素を含有しているガスの流れ下に、200℃より低い温度で乾燥させ、かつ、350℃~650℃の温度で焼成する工程、
c) 工程b)において得られた乾燥・焼成済みの前駆体に、イッテルビウムの前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させる工程、
d) 工程c)において得られた含浸済みの前駆体を、中性ガスの流れ下または酸素を含有しているガスの流れ下に、200℃より低い温度で乾燥させ、かつ、350℃~650℃の温度で焼成する工程
を含んでいる調製方法に従って調製されてよい。
【0086】
貴金属、とりわけ白金と、リンとを含浸させられ、前もって乾燥および焼成がなされた固体上にイッテルビウムを導入することが好ましい。具体的には、貴金属とリンとの後にイッテルビウムを導入することにより、貴金属およびリンの含浸、好ましくは過剰における含浸の間のイッテルビウムのあらゆる浸出を回避することが可能となる。
【0087】
工程a)において、スズと、リンと、貴金属とを含んでいる担体が調製される。
【0088】
スズの導入は、担体の調製中のあらゆる時点において、優先的には成形の間に、または、すでに成形された担体上の含浸によって行われてよい。好ましくは、スズは、担体の成形の間に導入される。
【0089】
このことは、リンについての場合も同様である。リンの導入は、担体の調製中のあらゆる時点において、優先的には成形の間に、または、既に成形された担体上の含浸によって行われてよい。一つの変形例によると、リンは、担体に導入される。すなわち、担体の成形の間、好ましくは、スズの化合物と共に導入される。別の変形例によると、リンは、含浸によって導入され、特に好ましくは、それは、貴金属と同時の含浸によって導入される。
【0090】
貴金属の導入は、有利には、担体上に過剰の溶液を1回または複数回含浸させることによって、または1回または複数回の乾式含浸によって、好ましくは前記担体(好ましくは、スズ化合物と場合によるリンとを含有している)の単一回の過剰での含浸によって、貴金属の前駆体と、好ましくはリンの前駆体(担体がリンを全く含有していないかまたはリンを一部のみ含有している場合)とを含有している溶液(1種または複数種)、好ましくは水溶液(1種または複数種)によって行われてよい。
【0091】
それ故に、第1の変形例によると、工程a)は、以下の連続的な工程:
a1) 担体の成形の間にスズの前駆体を導入することによってスズを含んでいる担体を調製する工程、
a2) 工程a1)において得られたスズを含有している担体に、少なくとも1種の貴金属の前駆体と、リンの前駆体とを含んでいる含浸溶液を含浸させる工程
を含む。
【0092】
第2の変形例によると、工程a)は、以下の連続的な工程:
a1’) 担体の成形の間にスズの前駆体とリンの前駆体とを導入することによってスズとリンとを含んでいる担体を調製する工程、
a2’) 工程a1’)において得られたスズとリンとを含有している担体に、少なくとも1種の貴金属の前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させる工程
を含む。
【0093】
工程b)において、工程a)で得られた前駆体は、上記の条件下に乾燥させられかつ焼成される。
【0094】
工程c)において、工程b)で得られた乾燥・焼成済みの前駆体は、少なくとも1種のイッテルビウムの前駆体を含んでいる含浸溶液を含浸させられる。イッテルビウムの導入は、有利には、担体上に過剰の溶液を1回または複数回含浸させることを介して、または好ましくは1回または複数回の乾式含浸を介して、好ましくは、前記前駆体の1回のみの乾式含浸を介して行われてよく、イッテルビウムの前駆体を含有している溶液(1種または複数種)、好ましくは水溶液(1種または複数種)が用いられる。
【0095】
工程d)において、工程c)で得られた前駆体は、上記の条件下に乾燥させられかつ焼成される。
【0096】
別の変形例によると、本発明による触媒の調製は、担体の成形の間にスズの前駆体を導入することによってスズを含んでいる担体を調製すること、次いで、貴金属の前駆体と、リンの前駆体と、イッテルビウムの前駆体とを単独でまたは混合物として含有している溶液(1種または複数種)、好ましくは水溶液(1種または複数種)を用いて、担体上に過剰の溶液を1回または複数回含浸させるか、1回または複数回の乾式含浸を行うか、好ましくは、前記前駆体の1回のみの過剰での含浸を行うこと、次いで、上記の条件下に乾燥および焼成を行うことによって行われてよい。
【0097】
本発明による触媒の調製において用いられる種々の前駆体がハロゲンを含有していないか、または、不十分な量のハロゲンを含有している場合、調製の間にハロゲン化化合物を加えることが必要であってよい。当業者に知られているあらゆる化合物が、用いられ、かつ、本発明による触媒を調製する工程のいずれか1つに組み入れられてよい。特に、有機化合物、例えば、メチルまたはエチルのハロゲン化物、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルクロロホルムまたは四塩化炭素を用いることが可能である。
【0098】
ハロゲンは、調製の間のあらゆる時点において、対応する酸、例えば、塩化水素酸の水溶液を含浸させることによって加えられてもよい。典型的なプロトコルは、所望の量のハロゲンを導入するように固体に含浸させることからなる。触媒は、この量のハロゲンを沈着させるのに十分に長い時間にわたって水溶液と接触しているように維持される。
【0099】
塩素は、オキシ塩素化の処理によって本発明による触媒に加えられてもよい。このような処理は、例えば350℃~550℃で数時間にわたって所望量の塩素を含有しかつ場合によっては水を含有している空気の流れの下に行われてよい。
【0100】
使用の前に、触媒は、水素下の処理に付され、これにより、活性金属相が得られる。この処理の手順は、例えば、最大還元温度、例えば、100℃~600℃、好ましくは200℃~580℃までの、高純度水素または希釈水素の流れ下のゆっくりした温度上昇と、次の、例えば30分~6時間にわたるこの温度での維持とからなる。この還元は、焼成の直後に、または後に使用者によって行われてよい。使用者が乾燥済みの生成物を直接的に還元することも可能である。
【0101】
(接触改質方法)
本発明は、本発明による触媒の存在中の炭化水素ベースの供給原料の接触改質の方法にも関する。本発明による触媒は、実際に、ガソリンを改質するためおよび芳香族化合物を生じさせるための方法において用いられてよい。
【0102】
本改質方法により、原油の蒸留および/または他の精製方法、例えば、接触分解または熱分解を起源とするガソリンフラクションのオクタン価を増大させることが可能となる。芳香族化合物を生じさせる方法により、石油化学工業において用いられ得る基本生成物(ベンゼン、トルエン、キシレン類)が提供される。これらの方法が有しているさらなる利益は、精製所の水素化処理および水素化の方法のために必須である大量の水素の生成に貢献することである。
【0103】
改質方法のための供給原料が含有しているのは、一般的に、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系の炭化水素であって、分子当たり5~12個の炭素原子を含有しているものである。この供給原料は、特に、それの密度およびそれの重量組成によって定義される。これらの供給原料は、40℃~70℃の初期沸点および160℃~220℃の最終沸点を有してよい。それらは、40℃~220℃の初期および最終の沸点を有するガソリンフラクションまたはガソリンフラクションの混合物によって形成されてもよい。供給原料は、それ故に、160℃~200℃の沸点を有している重質ナフサによって形成されてもよい。
【0104】
典型的には、改質触媒は、ユニットに装填され、上記のような還元処理に最初に付される。
【0105】
供給原料は、次いで、水素が存在する中で導入され、水素/供給原料の炭化水素のモル比は、一般的に0.1~10、好ましくは1~8である。改質処理の操作条件は、一般的には以下の通りである:温度は、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~540℃であり、圧力は、好ましくは0.1MPa~4MPa、より好ましくは0.25MPa~3.0MPaである。生じた水素の全部または一部は、改質反応器の入口に再循環させられてよい。
【0106】
(実施例)
以下の実施例は、本発明を例証する。
【0107】
(実施例1:Pt/Al-Sn-Cl触媒A1(比較例)の調製)
ベーマイトを合成した。これは、0.1mol・L-1の硝酸アルミニウム溶液を1mol・L-1の水酸化ナトリウム溶液によって室温でpHを約10に制御して塩基性化することによって行った。懸濁液を、次いで、1週間にわたってオーブン中95℃で撹拌なしで熟成させた。熟成後の懸濁液のpHは変化する:最終のpHは11.5に等しい。ろ過によって固体を回収し、出発容積にほぼ等しい容積の水で洗浄する。固体を水に再懸濁させ、オートクレーブ中150℃で4時間にわたって処理する。懸濁液を遠心分離にかけ、次いで、空気の流れ下に、室温で乾燥させる。
【0108】
こうして合成したベーマイトを用いて実施例1の担体を調製する。鉱物材料25%(Alの百分率として表される)を含有している懸濁液を調製する。この調製を、γ-アルミナ供給原料とベーマイト紛体とを、15質量%のHNO/Alを含有している酸性化水溶液中で混合することによって行う。二塩化スズをこの懸濁液に加えて、最終固体上に0.3重量%のスズを得る。Alの固体の部分を、ベーマイトで88重量%の割合およびγ-アルミナ供給原料で12重量%の割合で提供する。この懸濁液は、細孔形成剤および界面活性剤も含有している。細孔形成剤は、10~12個の炭素原子を含有しているパラフィンの混合物を含んでいる有機相であり、その沸点は、約290℃であり、その密度は、0.75g/cmである。界面活性剤は、Galoryl(登録商標)である。これらの化合物を、以下の割合で導入する:細孔形成剤/水の質量割合=1.4%および界面活性剤/細孔形成剤の質量割合=6%。
【0109】
この系を、滴下するのに適したレオロジー特性(粘度250MPa・s)を有している懸濁液が得られるまで600rpmでの撹拌に付す。
【0110】
オイルドロップすることによる成形処理を行う。滴下カラムを、28g/Lの濃度のアンモニア性の溶液と、エマルジョンの調製において細孔形成剤として用いられたものと同じ石油留分からなる有機溶液とで満たす。懸濁液を、較正されたノズルによって滴下させる。カラムの底部においてビーズ状物を集め、通風オーブン中120℃で、水200g/kg(乾燥空気)を含有している湿潤空気中に12時間にわたって置く。それらを、次いで、乾燥空気中650℃で3時間にわたって焼成する。得られたビーズ状物が有している径は、1.9mmである。
【0111】
触媒A1の調製をこの担体上に行うに際して、最終触媒上に白金0.3重量%および塩素1重量%を沈着させることを目標とする。ヘキサクロロ白金酸および塩化水素酸の水溶液400cmを、スズを含有しているアルミナ担体100gに加える。4時間にわたってこの溶液と接触しているようにして担体を静置し、次いで、排水する。それを、120℃で15時間にわたって乾燥させ、次いで、500℃で、毎時100リットルの空気の流れ下に3時間にわたって、毎分7℃温度上昇率を伴って焼成する。
【0112】
焼成後の1重量%より高い塩素の含有率を、2.5時間にわたる8000容積ppmの水を補給した乾燥空気中520℃での部分脱塩化熱処理によって1重量%に調節する。
【0113】
脱塩素化の後に得られた触媒A1は、白金0.29重量%、スズ0.29重量%および塩素1.03重量%を含有している。
【0114】
(実施例2:触媒A2(比較例):Pt/Al-Sn-P-Clの調製)
ベーマイトを合成した。これは、0.1mol・L-1の硝酸アルミニウム溶液を1mol・L-1の水酸化ナトリウム溶液により室温においてpHを約10に制御することにより塩基性化することによる。懸濁液を、次いで、1週間にわたってオーブン中95℃で撹拌なしで熟成させる。熟成後の懸濁液のpHは変動する:最終のpHは、11.5に等しい。ろ過によって固体を回収し、次いで、出発容積にほぼ等しい容積の水で洗浄する。固体を水中に再懸濁させ、オートクレーブ中150℃で4時間にわたって処理する。懸濁液を遠心分離にかけ、次いで、空気の流れ下に、室温で乾燥させる。
【0115】
こうして合成したベーマイトを用いて実施例2の担体を調製する。(Alの百分率として表される)25%の鉱物材料を含有している懸濁液の調製を、γ-アルミナ供給原料とベーマイト紛体とを15質量%のHNO/Alを含有している酸性化水溶液中で混合することによって行う。この懸濁液に二塩化スズおよびリン酸を同時に加えて、最終固体上にスズ0.3重量%およびリン0.3重量%を得る。Alの固体の部分を、88重量%の割合のベーマイトと、12重量%の割合のγ-アルミナ供給原料で提供する。この懸濁液は、細孔形成剤および界面活性剤も含有している。細孔形成剤は、10~12個の炭素原子を含有しているパラフィンの混合物を含んでいる有機相であり、その沸点は、約290℃であり、その密度は、0.75g/cmである。界面活性剤は、Galoryl(登録商標)である。これらの化合物を、以下の割合で導入する:細孔形成剤/水の質量割合=1.4%および界面活性剤/細孔形成剤の質量割合=6%。
【0116】
滴下するのに適したレオロジー特性(粘度250MPa・s)を有する懸濁液が得られるまでこの系を600rpmでの撹拌に付す。
【0117】
オイルドロップ処理による成形を行う。滴下カラムを、28g/Lの濃度にあるアンモニア性の溶液と、エマルジョンの調製において細孔形成剤として用いられるものと同一の石油留分からなる有機溶液とにより満たす。較正されたノズルによって懸濁液を滴下する。カラムの底部においてビーズ状物を集め、通風オーブン中120℃で、乾燥空気の重量(kg)当たり水200gを含有している湿潤空気中に12時間にわたって置く。それらを、次いで、乾燥空気中650℃で3時間にわたって焼成する。得られたビーズ状物が有している径は、1.9mmである。
【0118】
この担体上の触媒Aの調製を行うに際して、最終触媒上の白金0.3重量%および塩素1重量%の沈着を目標とする。ヘキサクロロ白金酸および塩化水素酸の水溶液400cmを、スズを含有しているアルミナ担体100gに加える。4時間にわたってこの溶液と接触しているようにして担体を静置し、次いで、排水する。それを120℃で15時間にわたって乾燥させ、次いで、500℃で、毎時100リットルの空気の流れ下に3時間にわたって、毎分7℃の温度上昇率を伴って焼成する。
【0119】
焼成後の1重量%より高い塩素の含有率を、2.5時間にわたって、8000容積ppmの水を補給した乾燥空気中520℃での部分脱塩素化熱処理によって1重量%に調節する。
【0120】
脱塩素化の後に得られた触媒Aは、白金0.29重量%、スズ0.28重量%、リン0.40重量%および塩素1.01重量%を含有している。
【0121】
(実施例3:触媒B(比較例):YbPt/Al-Sn-Clの調製)
実施例2の方法と同様の方法で実施例3の担体を調製するが、ベーマイト懸濁液に二塩化スズのみを加え、最終固体中スズ0.3重量%を目標とする点でのみ異なっている。
【0122】
この担体上に過剰の白金を含浸させるに当たり、実施例2に記載されたのと同一の方法で、最終触媒上の白金0.3重量%および塩素1重量%の沈着を目標とする。
【0123】
焼成の後、硝酸イッテルビウムの乾式含浸を行い、最終触媒上0.20重量%を目標とする。イッテルビウムの含浸の前に、触媒を室温で水飽和雰囲気中に終夜静置する。硝酸イッテルビウムの水溶液42cmを、スズを含有しているアルミナ担体70gに加える。30分にわたって溶液と接触しているようにして担体を静置する。含浸の後、固体を、再度、水飽和雰囲気中室温で終夜静置熟成させる。それを120℃で15時間にわたって乾燥させ、次いで、500℃で、毎時100リットルの空気の流れ下に3時間にわたって、毎分7℃の温度上昇率を伴って焼成する。実施例2に記載されたようにして塩素の含有率の調節を2時間にわたって行う。
【0124】
脱塩素化の後に得られた触媒Bは、白金0.319重量%、スズ0.30重量%、イッテルビウム0.19重量%および塩素1.04重量%を含有している。
【0125】
(実施例4:触媒C(本発明に合致する):YbPt/Al-Sn-P0.3-Clの調製)
触媒Cの調製を、スズ0.3重量%およびリン0.4重量%を含有している実施例2の担体から、実施例3に記載されたようにして白金、次いで、イッテルビウムを含浸させることによって行う。
【0126】
脱塩素化の後に得られた触媒Cは、白金0.29重量%、イッテルビウム0.19重量%、スズ0.319重量%、リン0.40重量%および塩素0.98重量%含有している。
【0127】
(実施例5:触媒D(本発明に合致する):YbPt/Al-Sn-P0.8-Clの調製)
実施例5の担体を、実施例の方法と同様の方法で調製するが、目標のリンの含有率は、最終触媒上に0.8重量%である。
【0128】
白金、次いで、イッテルビウムを、その後に、実施例2に記載されたようにして含浸させる。
【0129】
脱塩素化の後に得られた触媒Dは、白金0.31重量%、イッテルビウム0.18重量%、スズ0.28重量%、リン0.79重量%および塩素1.02重量%を含有している。
【0130】
(実施例6:触媒E(本発明に合致する):PtYb/Al-Sn-P0.3-Clの調製)
触媒Eの調製を、スズ0.3重量%およびリン0.4重量%を含有している実施例2の担体から、イッテルビウム、次いで白金を含浸させることによって行い、両元素の含浸による導入の順序において実施例3とは異なっている。イッテルビウム0.20重量%およびリン0.30重量%の目標含有率は同一である。
【0131】
脱塩素化の後に得られた触媒Eは、白金0.30重量%、イッテルビウム0.19重量%、スズ0.29重量%、リン0.41重量%および塩素1.03重量%を含有している。
【0132】
(実施例7:触媒F(本発明に合致する):YbPt/Al-Sn-P0.2-Clの調製)
実施例7の担体を、実施例2の方法と同様の方法で調製するが、目標のリンの含有率は、最終の触媒上で0.3重量%である。
【0133】
白金、次いで、イッテルビウムを、実施例3に記載されたようにして続けて含浸させる。
【0134】
脱塩素化の後に得られた触媒Fは、白金0.31重量%、イッテルビウム0.17重量%、スズ0.28重量%、リン0.129重量%および塩素1.01重量%を含有している。
【0135】
(実施例8:触媒G(比較):YbPt/Al-Sn-P1.00-Clの調製)
実施例8の担体を、実施例2の方法と同様の方法で調製するが、目標のリンの含有率は、最終の触媒上で1.15重量%である。
【0136】
白金、次いで、イッテルビウムを、実施例2に記載されたようにして続けて含浸させる。
【0137】
脱塩素化の後に得られた触媒Gは、白金0.31重量%、イッテルビウム0.21重量%、スズ0.29重量%、リン1.22重量%および塩素0.96重量%を含有している。
【0138】
(実施例9:触媒H(本発明に合致する):YbPt/Al-Sn-P0.3-Clの調製)
触媒Hの調製を、スズ0.3重量%およびリン0.4重量%を含有している実施例2の担体から、実施例3に記載されたように白金、次いで、イッテルビウムを含浸させることによって行うが、相違は、目標のイッテルビウムの含有率が1.00重量%であることにある。
【0139】
脱塩素化の後に得られた触媒Hは、白金0.31重量%、イッテルビウム0.94重量%、スズ0.30重量%、リン0.38重量%および塩素0.99重量%を含有している。
【0140】
(実施例10:触媒I(本発明に合致する):YbPtP0.3/Al-Sn-Clの調製)
実施例3の担体を、実施例2の方法と同様の方法で調製するが、二塩化スズのみをベーマイト懸濁液に加え、最終固体中0.3重量%を目標とする。
【0141】
実施例2に従って過剰の白金を含浸させることを行うが、リン酸をヘキサクロロ白金酸の溶液に加え、最終触媒上0.4重量%の含有率を目標とする。実施例3に記載された手順に従ってイッテルビウムの乾式含浸を行う。熱処理は、実施例3のものと同一である。
【0142】
脱塩素処理の後に得られた触媒Iは、白金0.30重量%、イッテルビウム0.18重量%、スズ0.32重量%、リン0.41重量%および塩素1.01重量%を含有している。
【0143】
(実施例11:触媒J(比較例):YbPtP0.3/Al-Sn-Clの調製)
触媒Hと全く同様にして触媒Jを調製したが、Ybの異なる目標含有率(より高い)は、1.2重量%の程度である。脱塩素化の後に得られた触媒Jは、白金0.29重量%、イッテルビウム1.17重量%、スズ0.29重量%、リン0.38重量%および塩素0.98重量%を含有している。
【0144】
(実施例12:接触改質における触媒A1、A2およびB~Jの性能の評価)
実施例1~10に調製が記載された触媒のサンプルを、炭化水素ベースの供給原料であって、石油の蒸留から得られたナフサタイプのものの転化に適合した反応床において用いた。このナフサは、以下の組成:
パラフィン系化合物:49.6重量%、
ナフテン:35.3重量%、
芳香族化合物15.1重量%
を有している。
【0145】
全体的な密度については、0.7539g/cmである。この供給原料の初期および最終の蒸留点は、それぞれ、101℃および175℃であり、95%は、166℃で行われる蒸留である。
【0146】
リサーチオクタン価は、55に近い。
【0147】
反応器に装填した後に、触媒を、高純度水素の雰囲気下の、2時間の時間にわたる490℃での熱処理によって活性にする。
【0148】
触媒性能の評価を、改質反応条件下に、水素および上記のナフサが存在する中で行う。触媒の実施のための条件は、以下の通りである:
- 反応器の圧力:0.76MPa(7.6barg)
- 供給原料の流量は、触媒の重量(kg)当たり1.8kg/時である
- 水素/供給原料の炭化水素のモル比:3。
【0149】
触媒の比較を、供給原料の接触転化に由来する液体流出物(リフォメート)のリサーチオクタン価(research octane number:RON)の等価品質で行う。比較は、100のRONについて行う。
【0150】
選択性は、活性の所与のレベルにおける流出物に対する質量百分率として表されるC5+化合物の収率として表される。試験の間に、収率は、供給原料下に時間に伴って高くなる第1段階を通過する。この段階は、コークによる触媒の選択性化(selectivation)に対応するものである。次に、可変の継続期間の安定な段階の後、収率の値は、時間に伴って低下する。これは、触媒の不活性化の期間である。選択性の点からの触媒の比較は、ここでは、安定な段階にわたって測定された収率の値を用いてなされることになる。この測定の精度は、±0.3ポイントである。選択的な触媒は、高いC5+収率によって表される。
【0151】
活性は、所与のオクタン価(RONすなわちResearch Octane Numberとしても知られている)に達するのに必要とされる温度によって表される。ここでは、温度は、試験実施の24時間において取られることになる。この測定の精度は、±2℃である。非常に活性な触媒は、RONに達するのに相対的に低い温度によって表される。
【0152】
用語「安定性(stability)」は、活性の安定性を意味し、これは、一般的には、一定のRON100を維持するための時間の単位当たりに適用される熱増大によって測定される。安定な触媒は、低い熱増大によって表される。
【0153】
【表1】
【0154】
これらの結果により、リンの含有率が0.2重量%以上かつ0.4重量%未満でありかつイッテルビウムの含有率が1重量%以下である場合にPとYbとの間に相乗効果があることが示されている。この効果により、触媒の選択性を品質低下させることなくそれらの活性および安定性を向上させることが可能となる。