(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】接線流深層濾過システムおよびそれを使用する濾過方法
(51)【国際特許分類】
B01D 63/02 20060101AFI20240208BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240208BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240208BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D69/00
B01D71/26
B01D71/48
(21)【出願番号】P 2020538830
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 US2019021414
(87)【国際公開番号】W WO2019173752
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504232044
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】REPLIGEN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ブランズビー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キャロル、デレク
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】松井 裕典
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/180573(WO,A1)
【文献】特開平10-314553(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058983(WO,A1)
【文献】特開2013-188711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00-71/82
C02F1/44
A61M1/16
C12M1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセス用途のための中空糸接線流フィルタであって、
(a)内部を有する筐体と、
(b)流体入口と、
(c)未透過流体出口と、
(d)透過流体出口と、
(e)複数の押出ポリマーフィラメントから形成される多孔壁を含む、少なくとも1つの中空糸であって、前記少なくとも1つの中空糸が、内面、外面、および1mm~10mmの範囲の壁厚を有し、前記内面が、0.75mm~13mmの幅を有し、前記少なくとも1つの中空糸を通って延在する、内部ルーメンを形成し、前記中空糸の密度が、前記中空糸の同等の実体積の密度の51%~56%であり、
前記少なくとも1つの中空糸が、前記筐体内部に位置付けられ、前記流体入口および前記未透過流体出口が、前記少なくとも1つの中空糸の前記内部ルーメンと流体連通しており、前記透過流体出口が、前記筐体内部および前記多孔壁の前記外面と流体連通している、少なくとも1つの中空糸と、を備える、中空糸接線流フィルタ。
【請求項2】
前記押出ポリマーフィラメントが、単成分フィラメントである、請求項1に記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項3】
前記押出ポリマーフィラメントが、二成分フィラメントである、請求項1に記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項4】
前記二成分フィラメントが、ポリオレフィンとポリエステルとを含む、請求項3に記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項5】
前記二成分フィラメントが、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとを含む、請求項3に記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項6】
前記押出ポリマーフィラメントが、メルトブローフィラメントである、請求項1~5のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項7】
複数の前記押出ポリマーフィラメントが、前記押出ポリマーフィラメントに沿って互いに離間した複数の接触点において、互いに接着して前記多孔壁を画定する、請求項1~6のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項8】
複数の前記押出ポリマーフィラメントが、前記押出ポリマーフィラメントに沿って互いに離間した複数の接触点において、互いに熱接着して前記多孔壁を画定する、請求項1~6のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項9】
前記中空糸が、管状の前記押出ポリマーフィラメントを含み、加熱された前記押出ポリマーフィラメントが互いに接着している、請求項8に記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項10】
前記壁厚が、2mm~7mmの範囲である、請求項1~9のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項11】
前記壁が、0.2~10ミクロンに及ぶ平均孔径を有する、請求項1~10のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項12】
前記内部ルーメンが、0.75mm~5mmの範囲の幅を有する、請求項1~11のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項13】
複数の前記中空糸を含む、請求項1~12のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項14】
前記筐体の内部に位置付けられ、前記流体入口と流体連通している入口チャンバと、前記筐体の前記内部に位置付けられ、前記未透過流体出口と流体連通している出口チャンバと、をさらに備え、前記複数の中空糸が、前記入口チャンバと前記出口チャンバとの間に延在し、前記入口チャンバおよび前記出口チャンバが、前記内部ルーメンと流体連通している、請求項13に記載の中空糸接線流フィルタ。
【請求項15】
大きいサイズの粒子および小さいサイズの粒子を含む流体を、前記小さいサイズの粒子を含む透過物および大きいサイズの粒子を含む未透過物に分離するための、請求項1~14のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタの使用。
【請求項16】
前記流体が、前記少なくとも1つの中空糸の前記壁に閉じ込められる中間サイズの粒子をさらに含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記大きい粒子が、細胞を含み、前記中間サイズの粒子が、細胞残屑を含み、前記小さい粒子が、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および細胞代謝産物のうちの1つ以上を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
大きいサイズの粒子と小さいサイズの粒子とを含む流体を、請求項1~14のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタの前記流体入口に導入することを含む、濾過方法であって、前記流体が、前記透過流体出口を通って前記中空糸接線流フィルタを出る前記小さい粒子を含む透過物、および前記未透過流体出口を通って前記中空糸接線流フィルタを出る前記大きい粒子を含む未透過物に分離される、濾過方法。
【請求項19】
前記流体が、中間サイズの粒子をさらに含み、前記中間サイズの粒子の少なくとも一部分が、前記中空糸接線流フィルタの前記壁に閉じ込められる、請求項18に記載の濾過方法。
【請求項20】
前記大きい粒子が、細胞を含み、前記小さい粒子が、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および細胞代謝産物のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の濾過方法。
【請求項21】
前記大きい粒子および小さい粒子が、同じ組成を有する、請求項18に記載の濾過方法。
【請求項22】
前記大きい粒子および小さい粒子が、セラミック粒子、金属粒子、薬物送達のためのリポソーム構造、生分解性ポリマー粒子、およびマイクロカプセルから選択される、請求項21に記載の濾過方法。
【請求項23】
前記大きい粒子が、細胞を含み、前記中間サイズの粒子が、細胞残屑を含み、前記小さい粒子が、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および細胞代謝産物のうちの1つ以上を含む、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項24】
前記大きい粒子、小さい粒子、および前記中間サイズの粒子が、同じ組成を有する、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項25】
前記大きい粒子、小さい粒子、および前記中間サイズの粒子が、セラミック粒子、金属粒子、薬物送達のためのリポソーム構造、生分解性ポリマー粒子、およびマイクロカプセルから選択される、請求項24に記載の濾過方法。
【請求項26】
前記流体が、パルス形式で前記流体入口に導入される、請求項18~25のいずれかに記載の濾過方法。
【請求項27】
ポンプと、請求項1~14のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタと、を備える、接線流濾過システム。
【請求項28】
(a)バイオリアクタ流体を含むように構成されたバイオリアクタ槽であって、バイオリアクタ出口およびバイオリアクタ入口を有する、バイオリアクタ槽と、(b)ポンプ、および請求項1~14のいずれかに記載の中空糸接線流フィルタと、を備える、接線流濾過システムであって、前記バイオリアクタ出口が前記流体入口と流体連通しており、前記バイオリアクタ入口が前記未透過物出口と流体連通している、接線流濾過システムと、(c)制御システムと、を備える、バイオリアクタシステム。
【請求項29】
前記制御システムが、バイオリアクタ流体の第1の流れが前記バイオリアクタ出口から前記流体入口に送り込まれ、それによりバイオリアクタ流体の前記第1の流れを、前記未透過物出口から前記バイオリアクタ入口に再循環する未透過物流に、および前記透過流体出口から収集される透過物流に分離するように、前記ポンプを操作するように構成されている、請求項28に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項30】
前記システムが、バイオリアクタ流体の前記第1の流れをパルス形式で送り込むように構成されている、請求項28または29に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項31】
中空糸接線流濾過システムであって、
(a)内部を有する筐体と、
(b)流体入口と、
(c)未透過流体出口と、
(d)透過流体出口と、
(e)内面、外面、および1mm~10mmの範囲の壁厚を有する、多孔壁を含む、少なくとも1つの中空糸であって、前記内面が、0.75mm~7.5mmの幅を有し、前記少なくとも1つの中空糸を通って延在する、内部ルーメンを形成し、前記中空糸の密度が、前記中空糸の同等の実体積の密度の51%~56%であり、
前記少なくとも1つの中空糸が、前記筐体内部に位置付けられ、前記流体入口および前記未透過流体出口が、前記少なくとも1つの中空糸の前記内部ルーメンと流体連通しており、前記透過流体出口が、前記筐体内部および前記多孔壁の前記外面と流体連通している、少なくとも1つの中空糸と、
(f)前記流体入口にパルス流を提供するように構成された、ポンプシステムと、を備える、中空糸接線流濾過システム。
【請求項32】
前記ポンプシステムが、拍動流ポンプを含む、請求項31に記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項33】
前記拍動流ポンプが、蠕動ポンプである、請求項31に記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項34】
前記ポンプシステムが、ポンプと、前記ポンプに前記パルス流を提供させる流量制御装置と、を備える、請求項31~33のいずれかに記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項35】
前記流量制御装置が、前記ポンプに入るおよび/または前記ポンプを出る流量を周期的に制限し、それにより前記流体入口にパルス流を提供するように構成されたアクチュエータを備える、請求項34に記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項36】
前記流量制御装置が、前記ポンプ入口に位置付けられる、請求項34または35に記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項37】
前記アクチュエータが、電気制御アクチュエータ、空圧制御アクチュエータ、または油圧制御アクチュエータから選択される、請求項35に記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項38】
前記流量制御装置が、サーボ弁またはソレノイド弁を備える、請求項34~37のいずれかに記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項39】
前記流量制御装置が、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化される流速を有するパルス流を提供するように構成されている、請求項34~37のいずれかに記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項40】
前記少なくとも1つの中空糸が、一緒に接着している複数の粒子および/またはフィラメントから形成される多孔壁を含む、請求項31~39のいずれかに記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項41】
前記少なくとも1つの中空糸が、一緒に熱接着している複数の粒子および/またはフィラメントから形成される多孔壁を含む、請求項31~39のいずれかに記載の中空糸接線流濾過システム。
【請求項42】
(a)バイオリアクタ流体を含むように構成されたバイオリアクタ槽であって、バイオリアクタ出口およびバイオリアクタ入口を有する、バイオリアクタ槽と、(b)請求項31~41のいずれかに記載の中空糸接線流濾過システムであって、前記バイオリアクタ出口が前記流体入口と流体連通しており、前記バイオリアクタ入口が前記未透過物出口と流体連通している、接線流濾過システムと、を備える、バイオリアクタシステム。
【請求項43】
前記ポンプシステムが、バイオリアクタ流体のパルス流を前記流体入口に提供し、それによりバイオリアクタ流体の前記パルス流を、前記未透過物出口から前記バイオリアクタ入口に再循環する未透過物流に、および前記透過流体出口から収集される透過物流に分離するように構成されている、請求項42に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項44】
(a)内部を有する筐体と、(b)流体入口と、(c)未透過流体出口と、(d)透過流体出口と、(e)内面、外面、および1~10mmの範囲の壁厚を有する多孔壁を含む、少なくとも1つの中空糸であって、前記内面が、0.75mm~7.5mmの範囲の幅を有し、前記少なくとも1つの中空糸を通って延在する、内部ルーメンを形成し、前記中空糸の密度が、前記中空糸の同等の実体積の密度の51%~56%であり、前記少なくとも1つの中空糸が、前記筐体内部に位置付けられ、前記流体入口および前記未透過流体出口が、前記少なくとも1つの中空糸の前記内部ルーメンと流体連通しており、前記透過流体出口が、前記筐体内部および前記多孔壁の前記外面と流体連通している、少なくとも1つの中空糸と、を備える、中空糸接線流フィルタを使用して、大きいサイズの粒子および小さいサイズの粒子を含む流体を濾過する方法であって、前記流体のパルス流を前記流体入口に送り込み、それにより前記流体を、前記大きい粒子を含む未透過物流および前記小さい粒子を含む透過物流に分離することを含む、方法。
【請求項45】
前記パルス流が、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化される流速を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの中空糸が、一緒に接着している複数の粒子および/またはフィラメントから形成される多孔壁を含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの中空糸が、一緒に熱接着している複数の粒子および/またはフィラメントから形成される多孔壁を含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項48】
前記流体が、前記少なくとも1つの中空糸の前記壁に閉じ込められる中間サイズの粒子をさらに含む、請求項44~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記大きい粒子が、細胞を含み、前記中間サイズの粒子が、細胞残屑を含み、前記小さい粒子が、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および細胞代謝産物のうちの1つ以上を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記流体が、バイオリアクタからの流体であり、前記未透過物流が、前記バイオリアクタ内に循環して戻る、請求項44~49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
バイオプロセスのための中空糸接線流フィルタであって、
内部を有する筐体と、流体入口と、未透過流体出口と、透過流体出口と、
少なくとも1つのポリマーから形成される多孔壁を含む、少なくとも1つ
の中空糸であって、前
記中空糸が、平均孔径および密度を有し、前記壁がルーメンを画定し、前記少なくとも1つの中空糸が、前記流体入口および前記未透過流体出口が前記ルーメンと流体連通しており、前記透過流体出口が前記内部および前記多孔壁と流体連通しているように、前記内部に配設されている、少なくとも1つ
の中空糸と、を備え、
前記密度が、前記ポリマーの同等の実体積の密度の51%~56%であ
り、
前記中空糸の膜厚が1~10mmの範囲である、バイオプロセスのための中空糸接線流フィルタ。
【請求項52】
前記密度が
、53%である、請求項51に記載のバイオプロセスのための中空糸接線流フィルタ。
【請求項53】
前記平均孔径が、90%の公称保持率
で2μmである、請求項51または52に記載のバイオプロセスのための中空糸接線流フィルタ。
【請求項54】
前記少なくとも1つのポリマーが、メルトブローされている、請求項51~53のいずれかに記載のバイオプロセスのための中空糸接線流フィルタ。
【請求項55】
前記少なくとも1つのポリマーが、焼結されている、請求項51~53のいずれかに記載のバイオプロセスのための中空糸接線流フィルタ。
【請求項56】
前記少なくとも1つのポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項51~55のいずれかに記載のバイオプロセスのための中空糸接線流フィルタ。
【請求項57】
バイオプロセスシステムであって、
バイオリアクタと、
少なくとも1つのポリマーから形成され、孔径および密度を有する多孔壁を含む
、中空糸を備えた、接線流深層濾過(TFDF)ユニットであって、前記多孔壁が、前記バイオリアクタと流体連通しているルーメンを画定する、接線流深層濾過(TFDF)ユニットと、
前記多孔壁と流体連通している、透過流体出口と、
前記ルーメンと流体連通しているポンプと、を備え、
前記密度が、前記少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度の51%~56%であ
り、
前記中空糸の膜厚が1~10mmの範囲である、バイオプロセスシステム。
【請求項58】
前記平均孔径が、90%の公称保持率
で2μmである、請求項57に記載のバイオプロセスシステム。
【請求項59】
前記密度が
、53%である、請求項57または58に記載のバイオプロセスシステム。
【請求項60】
前記少なくとも1つのポリマーが、メルトブローされている、請求項57~59のいずれかに記載のバイオプロセスシステム。
【請求項61】
前記少なくとも1つのポリマーが、焼結されている、請求項57~59のいずれかに記載のバイオプロセスシステム。
【請求項62】
前記ポンプが、前記ルーメンを通して流体のパルス流を提供するように構成されている、請求項57~61のいずれかに記載のバイオプロセスシステム。
【請求項63】
未透過物チャネルと濾液チャネルとを有する接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続された培養槽を備えた灌流バイオリアクタシステムにおいて、細胞を培養する方法であって、
前記培養槽から前記TFDFユニットの前記未透過物チャネルを通して培地を流動させ、それにより前記培地の画分が前記濾液チャネルに入るステップと、
前記未透過物チャネルから前記培養槽に流体を戻すステップと、を含み、
前記TFDFユニットが、少なくとも1つのポリマーを含む厚手中空糸を備え、前記厚手中空糸の密度が、前記少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度の51%~56%であり、
前記中空糸の膜厚が1~10mmの範囲であり、
(a)前記培地が、少なくとも60x10
6細胞/mLを含み、かつ(b)前記方法が、少なくとも連続8日間実施される、方法。
【請求項64】
前記細胞の少なくとも80%が、前記連続8日間を通して生存している、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
透過物体積に等しい体積の新鮮な培地を前記システムに添加するステップをさらに含む、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記体積の前記培地を添加する前記ステップは、1日当たり前記システムに前記培養槽の体積の少なくとも2倍添加することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記培地が、対象のバイオ生成物を含み、対象の前記バイオ生成物のふるい分け
率が、前記連続8日間にわたって少なくとも99%である、請求項63~66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記密度が
、53%である、請求項63~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1つのポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項63~68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
バイオ生成物を含む流体を処理する方法であって、
プロセス槽から
接線流深層濾過(TFDF)ユニットの未透過物チャネルを通して培地を流動させ、それにより前記培地の画分が濾液チャネルに入るステップと、
前記未透過物チャネルから前記プロセス槽に流体を戻すステップと、を含み、
前記濾液チャネルが、内部を通る2mmの内径のルーメンを有するフィルタを備え、
前記フィルタが
、2μmの平均孔径を有し、
前記TFDFユニットが、少なくとも1つのポリマーを含
む中空糸を備え、前
記中空糸の密度が、前記少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度の51%~56%であ
り、前記中空糸の膜厚が1~10mmの範囲である、方法。
【請求項71】
前記培地を流動させることが
、8000秒
-1の剪断速度で実施される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記フィルタが
、40L・m
-2・時間
-1を超える流束を有する、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記フィルタが
、2300L・m
-2・時間
-1の流束を有する、請求項70~72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記流動ステップが、遠心力浮上磁気ポンプ、容積移送式ポンプ、蠕動、膜ポンプ、およびATFポンプからなる群から選択されるポンプの使用をさらに含む、請求項70~73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
供給/未透過物チャネルと濾液チャネルとを有する接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続されたプロセス槽を備えたバイオリアクタシステムから、生体材料を採取する方法であって、
前記プロセス槽から前記TFDFユニットの前記供給/未透過物チャネルを通して前記生体材料を含む培地を送り込み、それにより前記培地の画分が前記濾液チャネルに入るステップと、
前記供給/未透過物チャネルから前記プロセス槽に流体を戻すステップと、
前記濾液チャネルから流体を収集するステップと、を含み、
前記TFDFユニットが、ポリマーから形成され、多孔壁を含
む中空糸を備え、前
記中空糸が、前記ポリマーの同等の実体積の密度
の53%の密度を有し、前記多孔壁が、前記供給/未透過物チャネルと流体連通している3mm~7mmのルーメンを画定し、前記多孔壁が
、5mmの厚さを有し、
前記TFDFユニットが
、400L・m
-2・時間
-1を超える流束を有し、
前記TFDFユニットが、5%未満のピーク細胞通過を有し、
前記バイオ生成物のふるい分け
率が、少なくとも99%である、方法。
【請求項76】
前記流動ステップが、遠心力浮上磁気ポンプ、容積移送式ポンプ、蠕動、膜ポンプ、およびATFポンプからなる群から選択されるポンプの使用をさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
供給/未透過物チャネルと濾液チャネルとを有する接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続されたプロセス槽を備えたバイオリアクタシステムから、生体材料を採取する方法であって、
ポンプを介して、前記プロセス槽から前記TFDFユニットの前記供給/未透過物チャネルを通して培地を流動させ、それにより前記培地の画分が前記濾液チャネルに入るステップと、
前記供給/未透過物チャネルから前記プロセス槽に流体を戻すステップと、
前記濾液チャネルから流体を収集するステップと、を含み、
前記TFDFユニットが、少なくとも1つのポリマーから形成され、多孔壁を含
む中空糸を備え、前
記中空糸が、前記少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度
の53%の密度を有し、
前記中空糸の膜厚が1~10mmの範囲であり、前記多孔壁が、前記供給/未透過物チャネルと流体連通しているルーメンを画定し、
前記TFDFユニットが
、400L・m
-2・時間
-1を超える流束を有し、
前記TFDFユニットが、5%未満のピーク細胞通過を有し、
前記培地が、対象のバイオ生成物を含み、対象の前記バイオ生成物のふるい分け
率が、少なくとも99%である、方法。
【請求項78】
供給/未透過物チャネルと濾液チャネルとを有する接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続されたプロセス槽を備えたバイオリアクタシステムから、生体材料を採取する方法であって、
前記TFDFユニットの前記供給/未透過物チャネルを通して培地を流動させ、それにより前記培地の画分が前記濾液チャネルに入るステップと、
前記供給/未透過物チャネルから前記プロセス槽に流体を戻すステップと、
前記濾液チャネルから流体を収集するステップと、を含み、
前記TFDFユニットが、少なくとも1つのポリマーから形成され、多孔壁を含
む中空糸を備え、前
記中空糸が、前記少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度
の53%の密度を有し、
前記中空糸の膜厚が1~10mmの範囲であり、前記多孔壁が、前記供給/未透過物チャネルと流体連通しているルーメンを画定する、方法。
【請求項79】
前記多孔壁の孔径が、90%の公称保持率
で2μmである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記流動ステップが、遠心力浮上磁気ポンプ、容積移送式ポンプ、蠕動、膜ポンプ、およびATFポンプからなる群から選択されるポンプの使用をさらに含む、請求項78または79のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、35 USC § 119の下、2018年3月8日出願の米国仮特許出願第62/640,175号および2018年5月25日出願の米国仮特許出願第62/676,411号に対する優先権の利益を主張し、これは、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は概して、プロセス濾過システムに関し、より具体的には接線流深層フィルタを利用するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
濾過は典型的には、流体溶液、混合物、または懸濁液を分離、浄化、改質、および/または濃縮するために実施される。バイオテクノロジーおよび製薬業界において、濾過は、新しい薬物、臨床検査薬、および他の生物学的製剤の生成、処理、および試験の成功に極めて重要である。例えば、動物または微生物細胞培養を使用して生物学的製剤を製造するプロセスにおいて、濾過は、培地からのある特定の構成成分の浄化、選択的除去、および濃縮のために、またはさらなる処理の前に培地を改質するために行われる。濾過はまた、高い細胞濃度で灌流中に培養物を維持することによって生産性を増強するために使用され得る。
【0004】
接線流濾過(クロスフロー濾過またはTFFとも称される)システムは、液相中に懸濁した微粒子の分離で広く使用され、重要なバイオプロセス用途を有する。単一流体供給物がフィルタに通されるデッドエンド濾過システムとは対照的に、接線流システムは、フィルタの表面にわたって流動する流体供給物を特徴とし、フィルタを通過した透過物構成成分および通過しなかった未透過物構成成分の2つの構成成分への供給物の分離をもたらす。デッドエンドシステムと比較して、TFFシステムは、汚染の傾向が少ない。TFFシステムの汚染は、Repligen Corporation(Waltham,Mass.)によって商品化されたXCell(商標)交互接線流(ATF)技術で行われるような濾過要素にわたる流体供給物の方向を交互に入れ替えることによって、フィルタをとして透過物を逆流させることによって、かつ/または周期的な洗浄によって、さらに低減され得る。
【0005】
現代のTFFシステムは、中空糸または管状膜などの1つ以上の管状濾過要素を備えるフィルタを頻繁に利用する。管状濾過要素が使用される場合、それらは典型的には、より大きい流体槽内に一緒に詰められ、一端では供給物と、もう一端では未透過物のための槽または流体路と流体連通して配置され、透過物は、糸の壁の細孔を通って糸の間の空間内およびより大きい流体槽内に流動する。管状濾過要素は、それらが収容することができる供給体積に対して大きく均一な表面積を提供し、これらの要素を利用するTFFシステムは、開発規模から商業規模まで容易に拡大縮小され得る。それらの利点にかかわらず、TFFシステムフィルタは、フィルタ流束制限を超えたときに汚染する可能性があり、TFFシステムは、有限のプロセス能力を有する。TFFシステムのプロセス能力を高めるための努力は、フィルタ流束と汚染との間の関係によって複雑化される。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、バイオプロセス用途および薬学的用途を含む様々な用途のための、中空糸接線流深層フィルタ(接線流深層フィルタとも称される)を含む中空糸接線流フィルタ、そのようなフィルタを用いるシステム、ならびにそれを使用する濾過方法に関する。
【0007】
ある特定の態様では、本開示は、バイオリアクタ流体の濾過に関する。バイオリアクタシステムは、生物活性を支持する環境を提供し、これは、バイオリアクタ流体中の代謝廃棄物を含む細胞代謝産物の蓄積をもたらす。細胞代謝産物の蓄積は、バイオリアクタ内の細胞増幅および/または細胞成長を制限する。結果として、既知の大容量バイオリアクタシステムは、最適な生物活性を維持するために、非常に大きく高価なバイオリアクタ、またはバイオリアクタ流体の濾過のいずれかを必要とする。
【0008】
様々な態様では、本開示は、中空糸接線流フィルタ、具体的には中空糸接線流深層フィルタに関し、これは、以下:内部を有する筐体と、流体入口と、未透過流体出口と、透過流体出口と、多孔壁を含む少なくとも1つの中空糸とを備え、少なくとも1つの中空糸は、内面、外面、および1mm~10mm、2mm~7mm、1.5mm~2mm、2mm~5mmなどの範囲の壁厚を有し、内面は、0.75mm~13mm、1mm~5mm、1mm~2mmなどの範囲の幅を有し、少なくとも1つの中空糸を通って延在する、内部ルーメンを形成する。少なくとも1つの中空糸は、筐体内部に位置付けられ、流体入口および未透過流体出口は、少なくとも1つの中空糸の内部ルーメンと流体連通しており、透過流体出口は、筐体内部および多孔壁の外面と流体連通している。
【0009】
いくつかの実施形態では、壁は、0.2~10ミクロンの範囲の平均孔径を有する。
【0010】
上記の態様および実施形態と共に使用され得るいくつかの実施形態では、少なくとも1つの中空糸は、一緒に接着している複数のフィラメントから形成される多孔壁を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、フィラメントは、押出ポリマーフィラメントである。例えば、押出ポリマーフィラメントは、単成分フィラメントであり得る。別の例として、押出ポリマーフィラメントは、二成分フィラメントであり得る。二成分フィラメントは、例えば、ポリエチレンテレフタレートコアおよびポリプロピレンコーティングを有する、ポリオレフィンおよびポリエステルを含有するものを含む。
【0012】
上記の態様および実施形態と共に使用され得るいくつかの実施形態では、押出ポリマーフィラメントは、メルトブローフィラメントである。
【0013】
上記の態様および実施形態と共に使用され得るいくつかの実施形態では、複数の押出ポリマーフィラメントは、離間した接触点において互いに接着して多孔壁を画定する。例えば、複数の押出ポリマーフィラメントは、離間した接触点において互いに熱接着して多孔壁を画定してもよく、その場合、中空糸は、他にも技術があるが、押出ポリマーフィラメントを管状の形状に組み立て、押出ポリマーフィラメントが互いに接着するように押出ポリマーフィラメントを加熱することによって形成され得る。
【0014】
上記の態様および実施形態のいずれかと共に使用され得るいくつかの実施形態では、中空糸接線流フィルタは、複数の中空糸を備える。これらの実施形態では、中空糸接線流フィルタは、筐体の内部に位置付けられ、流体入口と流体連通している入口チャンバと、筐体の内部に位置付けられ、未透過流体出口と流体連通している出口チャンバと、をさらに備えてもよく、複数の中空糸は、入口チャンバと出口チャンバとの間に延在し、入口チャンバおよび出口チャンバは、中空糸の各々の内部ルーメンと流体連通している。
【0015】
様々な実施形態では、上記の態様および実施形態のいずれかによる中空糸接線流フィルタは、大きいサイズの粒子および小さいサイズの粒子を含む流体を、小さいサイズの粒子を含む透過物および大きいサイズの粒子を含む未透過物に分離するために使用される。
【0016】
様々な実施形態では、本開示は、大きいサイズの粒子と小さいサイズの粒子とを含む流体を、上記の態様および実施形態のいずれかによる中空糸接線流フィルタの流体入口に導入することを含む濾過方法に関し、流体は、透過流体出口を通って中空糸接線流フィルタを出る小さい粒子を含む透過物、および未透過流体出口を通って中空糸接線流フィルタを出る大きい粒子を含む未透過物に分離される。
【0017】
上記の態様と共に使用され得るいくつかの実施形態では、大きい粒子は、細胞を含んでもよく、小さい粒子は、他にも可能性があるが、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および細胞代謝産物のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0018】
上記の態様と共に使用され得るいくつかの実施形態では、流体は、少なくとも1つの中空糸の壁に閉じ込められる中間サイズの粒子をさらに含む。例えば、大きい粒子は、細胞を含んでもよく、中間サイズの粒子は、細胞残屑を含んでもよく、小さい粒子は、他にも可能性があるが、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および細胞代謝産物のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0019】
上記の態様および実施形態と共に使用され得るいくつかの実施形態では、大きい粒子および小さい粒子は、同じ組成を有し、大きい粒子から小さい粒子を分離するための方法が使用される。例えば、大きい粒子および小さい粒子は、他にも可能性があるが、セラミック粒子、金属粒子、薬物送達のためのリポソーム構造、生分解性ポリマー粒子、およびマイクロカプセルから選択されてもよい。
【0020】
上記の態様および実施形態と共に使用され得るいくつかの実施形態では、大きい粒子、小さい粒子、および中間サイズの粒子は、同じ組成を有し、大きい粒子から小さい粒子を分離し、かつ少なくとも1つの中空糸の壁に中間サイズの粒子閉じ込めるための方法が使用される。上記のように、大きい粒子、小さい粒子、および中間サイズの粒子は、他にも可能性があるが、セラミック粒子、金属粒子、薬物送達のためのリポソーム構造、生分解性ポリマー粒子、およびマイクロカプセルから選択されてもよい。
【0021】
上記の態様および実施形態のいずれかと共に使用され得る様々な実施形態では、流体は、バイオリアクタからの流体であり、未透過物流は、バイオリアクタに循環して戻る。
【0022】
上記の態様および実施形態のいずれかと共に使用され得る様々な実施形態では、流体は、パルス流で流体入口に導入され得る。例えば、パルス流は、他にも可能性があるが、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化され得る。
【0023】
様々な態様では、本開示は、上記の態様および実施形態のいずれかによる、ポンプシステムと中空糸接線流フィルタとを備える接線流濾過システムに関する。
【0024】
様々な実施形態では、接線流濾過システムのポンプシステムは、流体をパルス流で中空糸接線流フィルタの流体入口に送達するように構成されている。例えば、パルス流は、他にも可能性があるが、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化され得る。
【0025】
上記の態様および実施形態と共に使用され得る様々な実施形態では、中空糸接線流濾過システムのポンプシステムは、拍動流ポンプを備えてもよい。例えば、拍動流ポンプは、蠕動ポンプであってもよい。
【0026】
上記の態様および実施形態と共に使用され得る様々な実施形態では、中空糸接線流濾過システムのポンプシステムは、ポンプと、ポンプにパルス流を提供させる流量制御装置とを備えてもよい。例えば、流量制御装置は、ポンプ入口またはポンプ出口に位置付けられてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、流量制御装置は、ポンプに入るおよび/またはポンプを出る流量を周期的に制限し、それにより流体入口にパルス流を提供するように構成されたアクチュエータを備える。例えば、アクチュエータは、電気制御アクチュエータ、空圧制御アクチュエータ、または油圧制御アクチュエータから選択されてもよい。例えば、流量制御装置は、他にも多くの可能性があるが、サーボ弁またはソレノイド弁を備えてもよい。
【0028】
上記の態様および実施形態と共に使用され得る様々な実施形態では、接線流濾過システムの拍動流ポンプまたは流量制御装置は、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化される流速を有するパルス流を提供するように構成されてもよい。
【0029】
様々な態様では、本開示は、(a)バイオリアクタ流体を含むように構成されたバイオリアクタ槽であって、バイオリアクタ出口およびバイオリアクタ入口を有する、バイオリアクタ槽と、(b)バイオリアクタ出口が流体入口と流体連通しており、バイオリアクタ入口が未透過物出口と流体連通している、上記の態様および実施形態のいずれかによる中空糸接線流濾過システムを備える、バイオリアクタシステムに関する。
【0030】
様々な実施形態では、中空糸接線流濾過システムのポンプシステムは、バイオリアクタ流体のパルス流を流体入口に提供し、それによりバイオリアクタ流体のパルス流を、筐体の頂部または底部のいずれかから、未透過物出口からバイオリアクタ入口に再循環する未透過物流に、および透過流体出口から収集される透過物流に分離するように構成されている。ある特定の実施形態では、パルス流は、他にも可能性があるが、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化され得る。
【0031】
様々な態様では、本開示は、(a)バイオリアクタ流体を含むように構成されたバイオリアクタ槽であって、バイオリアクタ出口およびバイオリアクタ入口を有する、バイオリアクタ槽と、(b)ポンプ、および上記の態様および実施形態のいずれかによる中空糸接線流フィルタと、を備える、接線流濾過システムであって、バイオリアクタ出口が流体入口と流体連通しており、バイオリアクタ入口が未透過物出口と流体連通している、接線流濾過システムと、(c)制御システムと、を備える、バイオリアクタシステムに関する。
【0032】
様々な実施形態では、制御システムは、バイオリアクタ流体の第1の流れがバイオリアクタ出口から流体入口に送り込まれ、それによりバイオリアクタ流体の第1の流れを、未透過物出口からバイオリアクタ入口に再循環する未透過物流に、および透過流体出口から収集される透過物流に分離するように、ポンプを操作するように構成されている。
【0033】
上記の態様および実施形態と共に使用され得るいくつかの実施形態では、バイオリアクタシステムは、バイオリアクタ流体の第1の流れをパルス形式で送り込むように構成されている。例えば、パルス流は、他にも可能性があるが、1サイクル/分~1000サイクル/分の範囲の速度でパルス化され得る。
【0034】
様々な実施形態では、バイオプロセスのための中空糸接線流フィルタは、内部を有する筐体と、流体入口と、未透過流体出口と、透過流体出口とを含んでもよい。少なくとも1つの厚肉中空糸は、少なくとも1つのポリマーから形成される多孔壁を含んでもよい。厚肉中空糸は、平均孔径および密度を有してもよい。壁は、ルーメンを画定してもよい。少なくとも1つの中空糸は、流体入口および未透過流体出口がルーメンと流体連通しており、透過流体出口が内部および多孔壁と流体連通しているように、内部に配設されてもよい。密度は、ポリマーフィラメントの同等の実体積の密度の51%~56%であってもよい。
【0035】
様々な実施形態では、密度は、約53%であってもよい。平均孔径は、90%の公称保持率で約2μmであってもよい。ポリマーフィラメントは、メルトブローされてもよい。ポリマーフィラメントは、焼結されてもよい。ポリマーフィラメントは、ポリオレフィン、ポリエステル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0036】
様々な実施形態では、バイオプロセスシステムは、バイオリアクタを含んでもよい。接線流深層濾過(TFDF)ユニットは、少なくとも1つのポリマーから形成される厚肉中空糸を含んでもよく、孔径および密度を有する多孔壁を含んでもよい。多孔壁は、バイオリアクタと流体連通しているルーメンを画定してもよい。透過流体出口は、多孔壁と流体連通していてもよい。ポンプは、ルーメンと流体連通していてもよい。密度は、ポリマーフィラメントの同等の実体積の密度の51%~56%であってもよい。
【0037】
様々な実施形態では、平均孔径は、90%の公称保持率で約2μmであってもよい。密度は、約53%であってもよい。ポリマーフィラメントは、メルトブローされてもよい。ポリマーフィラメントは、焼結されてもよい。ポンプは、ルーメンを通して流体のパルス流を提供するように構成されてもよい。
【0038】
様々な実施形態では、灌流バイオリアクタシステムにおいて細胞を培養する方法は、未透過物チャネルと濾液チャネルとを有する接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続された培養槽を含んでもよい。培地は、培養槽からTFDFユニットの未透過物チャネルを通して流動し得、それにより培地の画分は、濾液チャネルに入る。流体は、未透過物チャネルから培養槽に戻ってもよい。培地は、少なくとも60x106細胞/mLを含んでもよい。方法は、少なくとも連続8日間実施されてもよい。培地の複数の細胞のうちの少なくとも80%が、連続8日間を通して生存している可能性がある。透過物体積に等しい新鮮な培地の体積がシステムに添加されてもよい。その新鮮な培地の体積の添加は、1日当たりシステムに培養槽の体積の少なくとも2倍添加することを含んでもよい。培地は、対象のバイオ生成物を含んでもよい。対象のバイオ生成物のふるい分け速度は、連続8日間を通して少なくとも99%であり得る。TFDFユニットは、メルトブローポリマーフィラメントを含み得る厚肉中空糸を含んでもよい。厚肉中空糸の密度は、ポリマーフィラメントの同等の実体積の密度の51%~56%であってもよい。密度は、約53%であってもよい。ポリマーフィラメントは、ポリオレフィン、ポリエステル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0039】
様々な実施形態では、バイオ生成物を含む流体を処理する方法は、プロセス槽からTFDFユニットの未透過物チャネルを通して培地を流動させることを含んでもよい。培地の画分は、濾液チャネルに入ってもよい。流体は、未透過物チャネルからプロセス槽に戻ってもよい。濾液チャネルは、内部を通る2mmの内径のルーメンを有するフィルタを含んでもよい。フィルタは、約2μmの平均孔径を有してもよい。培地を流動させることは、約8000秒-1の剪断速度で実施されてもよい。フィルタは、約40L・m-2・時間-1を超える流束を有してもよい。フィルタは、約2300L・m-2・時間-1の流束を有してもよい。流動ステップは、遠心力浮上磁気ポンプ、容積移送式ポンプ、蠕動、膜ポンプ、およびATFポンプからなる群から選択されるポンプの使用を含んでもよい。
【0040】
様々な実施形態では、バイオリアクタシステムから生体材料を採取する方法は、供給/未透過物チャネルと濾液チャネルとを有する接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続されたプロセス槽を含んでもよい。方法は、ポンプを介して、プロセス槽からTFDFユニットの供給/未透過物チャネルを通して培地を流動させることを含んでもよい。培地の画分は、濾液チャネルに入ってもよい。流体は、供給/未透過物チャネルからプロセス槽に戻ってもよい。流体は、濾液チャネルから収集されてもよい。TFDFユニットは、少なくとも1つのポリマーから形成される厚肉中空糸を含んでもよく、多孔壁を含んでもよい。厚肉中空糸は、少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度の約53%の密度を有してもよい。多孔壁は、供給/未透過物チャネルと流体連通しているルーメンを画定してもよい。TFDFユニットは、約400L・m-2・時間-1を超える流束を有してもよい。TFDFユニットは、5%未満のピーク細胞通過を有してもよい。培地は、対象のバイオ生成物を含んでもよい。対象のバイオ生成物のふるい分け速度は、少なくとも99%であり得る。
【0041】
様々な実施形態では、流動ステップは、遠心力浮上磁気ポンプ、容積移送式ポンプ、蠕動、膜ポンプ、およびATFポンプからなる群から選択されるポンプの使用を含んでもよい。
【0042】
様々な実施形態では、バイオリアクタシステムから生体材料を採取する方法は、供給/未透過物チャネルと濾液チャネルとを有してもよい接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続されたプロセス槽を含んでもよい。培地は、ポンプを介して、プロセス槽からTFDFユニットの供給/未透過物チャネルを通して流動してもよい。培地の画分は、濾液チャネルに入ってもよい。流体は、供給/未透過物チャネルからプロセス槽に戻ってもよい。流体は、濾液チャネルから収集されてもよい。TFDFユニットは、少なくとも1つのポリマーから形成される厚肉中空糸を含んでもよく、多孔壁を含んでもよい。厚肉中空糸は、少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度の約53%の密度を有してもよい。多孔壁は、供給/未透過物チャネルと流体連通しているルーメンを画定してもよい。TFDFユニットは、約400L・m-2・時間-1を超える流束を有してもよい。TFDFユニットは、5%未満のピーク細胞通過を有してもよい。培地は、対象のバイオ生成物を含んでもよい。対象のバイオ生成物のふるい分け速度は、少なくとも99%であり得る。
【0043】
様々な実施形態では、バイオリアクタシステムから生体材料を採取する方法は、供給/未透過物チャネルと濾液チャネルとを有してもよい接線流深層濾過(TFDF)ユニットに流体接続されたプロセス槽を含んでもよい。培地は、TFDFユニットの供給/未透過物チャネルを通して流動してもよい。培地の画分は、濾液チャネルに入ってもよい。流体は、供給/未透過物チャネルからプロセス槽に戻ってもよい。流体は、濾液チャネルから収集されてもよい。TFDFユニットは、少なくとも1つのポリマーから形成される厚肉中空糸を含んでもよく、多孔壁を含んでもよい。厚肉中空糸は、少なくとも1つのポリマーの同等の実体積の密度の約53%の密度を有してもよい。多孔壁は、供給/未透過物チャネルと流体連通しているルーメンを画定してもよい。
【0044】
様々な実施形態では、多孔壁の孔径は、90%の公称保持率で約2μmであってもよい。流動ステップは、遠心力浮上磁気ポンプ、容積移送式ポンプ、蠕動、膜ポンプ、およびATFポンプからなる群から選択されるポンプの使用を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本開示の上記および他の態様は、以下の図面と併せて示される以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0046】
【
図1A】本開示による中空糸接線流深層フィルタの概略断面図である。
【
図1B】
図1Aに示されるような接線流フィルタ内の3つの中空糸の概略部分断面図である。
【
図2】
図1Aに示されるような接線流深層フィルタ内の中空糸の壁の概略断面図である。
【
図3】本開示によるバイオリアクタシステムの概略図である。
【
図4A】本開示による接線流濾過システムの使い捨て部分の概略図である。
【
図4B】本開示による再利用可能な制御システムの概略図である。
【
図5A-B】本開示による様々な接線流濾過システムについての正規化された透過物圧力対時間を示す。
【
図6】本開示の一実施形態による灌流フィルタについての経時的な生存細胞密度(VCD)および生存率を示す。
【
図8】
図6および7のフィルタの細胞成長プロファイルを示す。
【
図9】
図6~8のフィルタの平均ふるい分け率を示す。
【
図10】
図6~9のフィルタを通過する細胞の割合を示す。
【
図13】本開示の2つのTFDFシステムについての膜貫通圧力変化およびフィルタ流束の経験的比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
概説
本開示の実施形態は概して、TFDFに関し、場合によっては、バイオプロセス、具体的には灌流培養および採取で使用するためのTFDFシステムおよび方法に関する。本開示の実施形態に適合する1つの例示的なバイオプロセス構成は、所望の生物学的製剤を生成する細胞を培養するための槽(例えば、バイオリアクタ)などのプロセス槽を含む。このプロセス槽は、TFDFフィルタ要素が位置付けられるTFDFフィルタ筐体に流体連結され、筐体を少なくとも第1の供給/未透過物チャネルおよび第2の透過物または濾液チャネルに分割する。プロセス槽からTFDFフィルタ筐体への流体の流れは典型的には、ポンプ、例えば、mag-lev、蠕動、またはダイアフラム/ピストンポンプによって駆動され、これは、単一方向に流体を押し進め得るか、または流れの方向を周期的に交互に入れ替え得る。
【0048】
細胞培養期間の終わりに生物学的製剤を採取するように設計されたバイオプロセスシステムは概して、所望の生物学的製剤を含有する流体(例えば、培地)から培養した細胞を除去するために、深層フィルタまたは遠心分離器などの大規模分離デバイスを利用する。これらの大規模デバイスは、凝集細胞、細胞残屑などを含む大量の微粒子物質を捕捉するために選択される。しかしながら、操作の間の設備の滅菌を伴う汚染または損傷のリスクを低減するために、バイオプロセス室内で使い捨てまたは単回使用設備を利用することが近年の傾向であり、各使用後の大規模分離デバイスの交換費用は、法外なものになるであろう。
【0049】
加えて、業界傾向は、バイオプロセス操作が、延長されているか、または連続的にさえなっていることを示す。そのような操作は、何日、何週間、または何か月もの操作に及び得る。フィルタなどの多くの典型的な構成要素は、汚染することなく、または別様にメンテナンスもしくは取り換えを必要とすることなく、そのような長い時間にわたって十分に機能することが不可能である。
【0050】
加えて、バイオプロセスにおいて、細胞密度を増加させることによって工程の収率を高めることが望ましい場合が多い。しかしながら、細胞密度の増加は、フィルタ汚染の増加などによって複雑化され得る。
【0051】
本開示の実施形態は、細胞密度の増加、処理時間の延長に耐え、採取での使用に好適である安価な濾過手段を提供することによってこれらの課題に対処する。本発明者らは、ポリマーまたはポリマーブレンドのメルトブローによって作製された接線流深層フィルタが、単回使用に適合し、比較的低コストで製造され得るが、それにもかかわらず高い流束および増加した細胞密度で、長期間動作することが可能であることを発見した。
【0052】
例示的な実施形態
本開示による中空糸接線流フィルタ30の概略断面図が
図1Aに示される。中空糸接線流フィルタ30は、入口チャンバ30aと出口チャンバ30bとの間に延在する平行な中空糸60を含む。流体入口ポート32aは、流れ12を入口チャンバ30aに提供し、未透過流体出口ポート32dは、出口チャンバ30bからの未透過物流16を受容する。中空糸60は、入口チャンバ30aを通して流れ12を受容する。流れ12は、中空糸60の各々の中空糸内部60aに導入され、透過物流24は、中空糸60の壁70を通ってフィルタ筐体31内の透過物チャンバ61に入る。透過物流24は、透過流体出口ポート32bおよび32cに移動する。
図1Aの透過物流24を除去するために2つの透過流体出口ポート32bおよび32cが用いられるが、他の実施形態では、単一の透過流体出口ポートのみが用いられてもよい。濾過された未透過物流16は、中空糸60から出口チャンバ30bへと移動し、未透過流体出口ポート32dを通して中空糸接線流フィルタ30から放出される。
【0053】
図1Bは、
図1Aに示されるものに類似の中空糸接線流フィルタ内の3つの中空糸60の概略部分断面図であり、大きい粒子74および小さい粒子72aを含有する入口流12(供給物とも称される)の、小さい粒子の一部分を含有する透過物流24、ならびに大きい粒子74および中空糸60の壁70を通過しない小さい粒子72aの一部分を含有する未透過物流16への分離を示す。
【0054】
本開示による接線流フィルタは、大きい粒子(例えば、細胞、マイクロキャリア、または他の大きい粒子)を除外し、中間サイズの粒子(例えば、細胞残屑、または他の中間サイズの粒子)を捕捉し、かつ小さい粒子(例えば、可溶性および不溶性細胞代謝産物、ならびに発現したタンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、または他の小さい粒子を含む、細胞によって産生される他の生成物)が入るのを可能にするのに好適である孔径および深さを有する接線流フィルタを含む。本明細書で使用される場合、「マイクロキャリア」は、バイオリアクタ内の付着細胞の成長を可能にする微粒子支持体である。
【0055】
この関連で、
図2は、
図1Aのような中空糸接線流フィルタ30と共に使用される中空糸60の壁70の概略断面図である。
図2中、大きい粒子74、小さい粒子72a、および中間サイズの粒子72bを含む流れ12は、中空糸接線流フィルタ30の流体入口ポート32aに導入される。大きい粒子74は、中空糸の中空糸内部60a(本明細書において糸ルーメンとも称される)を形成する壁70の内面に沿って流れ、最終的に未透過物流中に放出される。壁70は、流れ12の一部分が中空糸接線流フィルタ30の壁70を通過するときに流れ12のある特定の要素(すなわち、中間サイズの粒子72b)を捕捉する一方で、他の粒子(すなわち、小さい粒子72a)が透過物流24の一部として壁70を通過することを可能にする、蛇行路71を含む。
図2の概略断面図において、蛇行路71に入る中間サイズの粒子72bを捕捉する一方で、より小さい粒子72aが壁70を通過することを可能にし、したがって、中間サイズの粒子72bを捕捉し、透過物流24中のより小さい粒子72aからの中間サイズの粒子72bの分離を引き起こすものとして、沈降ゾーン73および狭小チャネル75が例示される。したがって、この方法は、中間サイズの粒子72bが壁70の内面において蓄積し、蛇行路71への入口を詰まらせる可能性がある、標準的な薄肉中空糸接線流フィルタ膜の表面によって得られる濾過とは異なる。
【0056】
この関連で、灌流中で濾過されるものなどの細胞培養流体の濾過および細胞培養流体の採取を含む、様々な濾過処理のための最も問題のある領域のうちの1つは、フィルタ汚染による、標的分子または粒子の物質移動の減少である。本開示は、接線流濾過の利点と深層濾過の利点を組み合わせることによって、これらの障害の多くを克服する。接線流濾過を使用する標準的な肉薄中空糸フィルタとして、細胞は、中空糸のルーメンを通して送り込まれ、中空糸の内面の表面に沿って細胞を素早く通し、細胞がさらなる産生のために再利用されることを可能にする。しかしながら、中空糸の内面において汚染ゲル層を形成するタンパク質および細胞残屑の代わりに、壁は、壁構造の内側に細胞残屑を捕捉し、本開示の様々な実施形態において典型的な標的タンパク質のほぼ100%の通過を維持しながら、容積スループットの増加を可能にする、本明細書において「深層濾過」特徴と称されるものを追加する。そのようなフィルタは、本明細書において接線流深層フィルタと称され得る。
【0057】
図2に概略的に示されるように、本開示の様々な実施形態による接線流深層フィルタは、正確に定義された細孔構造を有しない。フィルタの「孔径」よりも大きい粒子は、フィルタの表面で止められる。一方で、かなりの量の中間サイズの粒子が、フィルタの壁に入り、壁の対向表面から出てくる前に壁内に捕捉される。より小さい粒子および可溶性物質は、透過物流中でフィルタ材料を通過することができる。当該技術分野の他の多くのフィルタよりも厚い構造および高い多孔率であるため、当該フィルタは、流速、および濾過技術分野において「汚れ負荷容量」として既知であるものの増大を示すことができる。汚れ負荷容量は、最大許容背圧に達する前に、フィルタが捕捉および保持することができる微粒子物質の量である。
【0058】
正確に定義された細孔構造がないにもかかわらず、所与のフィルタの孔径は、「バブルポイント試験」として既知の広く使用されている孔径検出方法を介して客観的に決定され得る。バブルポイント試験は、所与の流体および孔径について、絶えず湿潤した状態で、細孔を通して気泡を押すために必要とされる圧力が孔径に反比例しているという事実に基づいている。実際に、これは、フィルタ材料を流体で湿潤させ、気泡の連続流がガス圧下で湿潤フィルタの下流において最初に見られる圧力を測定することによって、フィルタの最大孔径が定められ得ることを意味する。第1の気泡流がフィルタ材料から出てくる点は、フィルタ材料における最大細孔(複数可)の反映であり、圧力と孔径との間の関係は、P=K/dに単純化され得るポアズイユの法則に基づいており、式中、Pは、気泡流の出現時のガス圧であり、Kは、フィルタ材料に依存する実験定数であり、dは、孔径である。この関連で、本明細書において実験的に決定される孔径は、第1の泡立ち点サイズ(FBP)、平均流孔径(MFP)(本明細書において「平均孔径」とも称される)、および最小孔径(SP)に関する情報を得るために使用され得るデータを提供する、圧力スキャン方法(増加する圧力および得られるガス流が、試験中連続的に測定される)に基づき、POROLUXTM 1000 Porometer(Porometer NV,Belgium)を使用して測定される。これらのパラメータは、キャピラリー流量気孔計技術分野において周知である。
【0059】
様々な実施形態では、本開示で使用するための中空糸は、他にも考えられる値があるが、例えば、0.1ミクロン(μm)以下~30ミクロン以上の範囲、典型的には0.2~5ミクロンの範囲の平均孔径を有してもよい。
【0060】
様々な実施形態では、本開示で使用するための中空糸は、他にも値があるが、例えば、1mm~10mmの範囲、典型的には2mm~7mmの範囲、より典型的には約5.0mmの壁厚を有してもよい。
【0061】
様々な実施形態では、本開示で使用するための中空糸は、他にも値があるが、例えば、0.75mm~13mmの範囲、1mm~5mm、0.75mm~5mmの範囲、4.6mmの内径(すなわち、ルーメン直径)を有してもよい。一般に、内径の減少は、剪断速度の増加をもたらす。理論によって束縛されるものではないが、剪断速度の増加は、中空糸の壁からの細胞および細胞残屑のフラッシングを増強すると考えられている。
【0062】
本開示で使用するための中空糸は、広範囲の長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、中空糸は、他にも値があるが、例えば、長さが200mm~2000mmの範囲の長さを有してもよい。
【0063】
本開示で使用するための中空糸は、様々なプロセスを使用して様々な材料から形成され得る。
【0064】
例えば、中空糸は、多くの粒子、フィラメント、または粒子およびフィラメントの組み合わせを管状の形状に組み立てることによって形成され得る。粒子および/またはフィラメントから形成される中空糸の孔径および分布は、中空糸を形成するために組み立てられる粒子および/またはフィラメントのサイズおよび分布に依存する。フィラメントから形成される中空糸の孔径およびサイズはまた、中空糸を形成するために組み立てられるフィラメントの密度に依存する。例えば、0.5ミクロン~50ミクロンの範囲の平均孔径は、異なるフィラメントの密度によって作られ得る。
【0065】
本開示で使用するための好適な粒子および/またはフィラメントは、無機および有機の両方の粒子および/またはフィラメントを含む。いくつかの実施形態では、粒子および/またはフィラメントは、単成分粒子および/または単成分フィラメントであり得る。いくつかの実施形態では、粒子および/またはフィラメントは、多成分(例えば、二成分、三成分など)粒子および/またはフィラメントであり得る。他にも多くの可能性があるが、例えば、第1の構成要素から形成されるコアと、第2の構成要素から形成されるコーティングまたはシースとを有する二成分粒子および/またはフィラメントが用いられ得る。
【0066】
様々な実施形態では、粒子および/またはフィラメントは、ポリマーから作製されてもよい。例えば、粒子および/またはフィラメントは、単一ポリマーから形成されるポリマー単成分粒子および/もしくはフィラメントであり得るか、またはそれらは、2つ、3つ、もしくはそれ以上のポリマーから形成されるポリマー多成分(すなわち、二成分、三成分など)粒子および/もしくはフィラメントであり得る。単成分および多成分粒子および/またはフィラメントを形成するために、他にもあるが、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6またはナイロン66などのポリアミド、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーを含む、様々なポリマーが使用され得る。
【0067】
様々な実施形態では、フィルタの多孔壁は、フィラメントが同等の実体積のポリマーと比較して吸収する体積の割合である密度を有してもよい。例えば、パーセント密度は、フィルタの多孔壁の質量を多孔壁が吸収する体積で割り、その結果を、同じ体積で割ったフィラメント材料の非多孔壁の質量と比率形式で比較することによって計算され得る。フィルタが汚染することなく動作することができる可変細胞密度(VCD)の量に直接関係がある製造中に、特定の密度の割合を有するフィルタが製造され得る。フィルタの多孔壁の密度は、追加的または代替的に体積当たりの質量(例えば、グラム/cm3)によって表現され得る。
【0068】
粒子は、例えば、管状の成形型を使用することによって管状の形状に形成され得る。いったん管状の形状に形成されると、粒子は、任意の好適なプロセスを使用して一緒に接着し得る。例えば、任意に粒子の圧縮も行いながら、粒子が部分的に溶融し、様々な接触点において一緒に接着する時点まで粒子を加熱すること(焼結として既知のプロセス)によって、粒子は一緒に接着し得る。別の例として、任意に粒子の圧縮も行いながら、様々な接触点において粒子を互いに接着させるための好適な接着剤を使用することによって、粒子は一緒に接着し得る。例えば、
図2に概略的に示される壁70に類似の壁を有する中空糸は、多くの不規則な粒子を管状の形状に組み立て、粒子を圧縮させながら粒子を加熱することによって粒子を一緒に接着させることによって形成され得る。
【0069】
管状の形状を形成するために使用されるフィラメントベースの製造技術には、他にもあるが、例えば、複数の押出ダイからの同時押出(例えば、溶融押出、溶媒系押出など)、またはロッド形状の基材への電界紡糸もしくは電子噴霧(これは後に除去される)が含まれる。
【0070】
フィラメントは、任意の好適なプロセスを使用して一緒に接着し得る。例えば、任意にフィラメントの圧縮も行いながら、フィラメントが部分的に溶融し、様々な接触点において一緒に接着する時点までフィラメントを加熱することによって、フィラメントは一緒に接着し得る。別の例として、任意にフィラメントの圧縮も行いながら、様々な接触点においてフィラメントを互いに接着させるための好適な接着剤を使用することによって、フィラメントは一緒に接着し得る。
【0071】
特定の実施形態では、多くの微細押出フィラメントは、他にも可能性があるが、例えば、押出フィラメントから管状の形状を形成し、フィラメントを加熱してフィラメントを一緒に接着させることによって、中空糸を形成するための様々な時点において一緒に接着し得る。
【0072】
場合によっては、押出フィラメントは、メルトブローフィラメントであり得る。本明細書で使用される場合、「メルトブロー」という用語は、フィラメントがそれらの溶融状態にある間に、フィラメントを弱めるか、または薄くするための、フィラメント押出ダイの出口におけるガス流の使用を指す。メルトブローフィラメントは、例えば、Bergerの米国特許第5,607,766号に記載されている。様々な実施形態では、単成分または二成分フィラメントは、フィラメントの集合体を製造するために既知のメルトブロー技術を使用して押出ダイを出るときに弱められる。次いで、フィラメントの集合体は、中空糸の形態で一緒に接着し得る。
【0073】
ある特定の有益な実施形態では、中空糸は、コア材料の融点よりも低い温度で接着可能である第1の材料のシースを有する二成分フィラメントを組み合わせることによって形成され得る。例えば、中空糸は、二成分押出技術とメルトブロー減衰を組み合わせて絡み合った二成分フィラメントのウェブを生成し、次いで、ウェブを成形および加熱(例えば、炉内でまたは上記もしくは熱風などの加熱流体を使用して)して、フィラメントをそれらの接触点において接着することによって形成され得る。シース-コアメルトブローダイの一例は、米国特許第5,607,766号に概略的に示されており、ここで、溶融シース形成ポリマーおよび溶融コア形成ポリマーがダイに供給され、そこから押し出される。溶融二成分シース-コアフィラメントは、フィラメントを弱め、微細な二成分フィラメントの製造を可能にする、高速度空気流に押し出される。Bergerの米国特許第3,095,343号は、フィラメントの本体が全体として長手方向に配向され、凝集体として平行配向にあるが、非平行の発散方向および収束方向に多かれ少なかれランダムに伸びる短い部分を有する、主に長手方向に無作為に配向されたフィラメントの連続的管状本体(例えば、中空糸)を形成するために、マルチフィラメントウェブを集合させ、加熱処理するための装置を示す。このようにして、シース-コア二成分フィラメントのウェブは、限られた領域に引き込まれ得(例えば、中央通路形成部材を有する先細ノズルを使用して)、そこでウェブは、集合して管状のロッド形状になり、加熱されて(または別様に硬化されて)フィラメントを接着させる。
【0074】
ある特定の実施形態では、形成されたままの中空糸は、糸の内側または外側のいずれかにおいて好適なコーティング材料(例えば、PVDF)でさらにコーティングされてもよく、そのコーティングプロセスは、必要に応じて中空糸の孔径を低減する働きもする。
【0075】
上記に記載のような中空糸は、バイオプロセス用途および薬学的用途のための接線流フィルタを構築するために使用され得る。そのような接線流フィルタが用いられ得るバイオプロセス用途の例には、タンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、および他の代謝産物などのより小さい粒子から細胞を分離するために細胞培養流体が処理されるものが含まれる。
【0076】
そのような用途には、より小さい粒子が透過物として細胞培地から連続的に除去されると同時に、細胞がバイオリアクタに戻される未透過物流体中に保持される(かつ同等の体積の培地が典型的には同時にバイオリアクタに添加されて、全体的なリアクタ体積を維持する)、灌流用途が含まれる。そのような用途にはさらに、より小さい粒子(典型的には生物学的製剤)が透過物流体として細胞培地からより迅速に除去される、浄化用途または採取用途も含まれる。
【0077】
上記のような中空糸は、粒子分別、濃縮、および洗浄のための接線流深層フィルタを構築するために使用され得る。そのような接線流フィルタが用いられ得る用途の例には、そのような接線流深層フィルタを使用するより大きい粒子からの小さい粒子の除去、そのような接線流深層フィルタを使用するミクロ粒子の濃縮、およびそのような接線流フィルタを使用するミクロ粒子の洗浄が含まれる。
【0078】
本開示と共に使用するためのバイオリアクタシステム10の特定の例がここで説明される。
図3、4A、および4Bを参照すると、バイオリアクタシステム10は、バイオリアクタ流体13を含むバイオリアクタ槽11と、接線流濾過システム14と、制御システム20とを含む。接線流濾過システム14は、バイオリアクタ出口11aとバイオリアクタ入口11bとの間に接続されて、例えば、細胞、細胞残屑、廃棄代謝産物を含む細胞代謝産物、発現したタンパク質などを含有するバイオリアクタ流体12(バイオリアクタ供給物とも称される)を、バイオリアクタ11からバイオリアクタ管15を通して受容し、かつ濾過された流れ16(未透過物流またはバイオリアクタ戻りとも称される)を、戻り管17を通してバイオリアクタ11に戻す。バイオリアクタシステム10は、バイオリアクタ流体から様々な物質(例えば、細胞残屑、可溶性および不溶性細胞代謝産物、ならびに発現したタンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、または他の小さい粒子を含む、細胞によって産生される他の生成物)を除去し、バイオリアクタ槽11内の反応が継続することを可能にするために細胞を戻す、接線流濾過システム14を通して、バイオリアクタ流体を循環させる。廃棄代謝産物の除去は、バイオリアクタ内の細胞の増殖の継続を可能にし、それにより細胞が組換えタンパク質、抗体、または対象である他の生体物質を発現させ続けることを可能にする。
【0079】
バイオリアクタ管15は、例えば、バイオリアクタ11の最低点または浸漬管に接続されてもよく、戻り管17は、例えば、バイオリアクタ体積の上部部分でバイオリアクタ11に接続されて、バイオリアクタ流体13に浸漬されてもよい。
【0080】
バイオリアクタシステム10は、中空糸接線流フィルタ30(上により詳細に記載されている)と、ポンプ26と、関連した取り付け部および接続部とを備える、アセンブリを含む。他にもあるが、例えば、蠕動ポンプ、容積移送式ポンプ、およびポンプヘッドの内側に浮上ロータを備えたポンプを含む、任意の好適なポンプが本開示と共に使用され得る。特定の例として、ポンプ26は、低剪断、ガンマ照射安定性、使い捨て、浮上ポンプヘッド26a、例えば、Levitronix,Waltham,Mass,USAによって製造されたモデル番号PURALEV(登録商標)200SU低剪断再循環ポンプを含んでもよい。PURALEV(登録商標)200SUは、使い捨てポンプヘッドの内側に磁気浮上ロータ、およびポンプ本体内に固定子巻線を含み、ポンプヘッド26aの単純な取り外しおよび取り換えを可能にする。
【0081】
バイオリアクタ流体12の流れは、バイオリアクタ槽11から接線流濾過システム14に移り、バイオリアクタ流体16からの戻り流は、接線流濾過システム14からバイオリアクタ槽11に戻る。透過物流24(例えば、可溶性および不溶性細胞代謝産物、ならびに発現したタンパク質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エクソソーム、脂質、DNA、または他の小さい粒子を含む、細胞によって産生される他の生成物を含有する)は、接線流濾過システム14によってバイオリアクタ物質12の流れから引き離され、管19によって接線流濾過システム14から離れて運ばれる。透過物流24は、透過物ポンプ22によって中空糸接線流システム14から貯蔵容器23に引き込まれる。
【0082】
示される実施形態では、接線流濾過システム14(
図4Aを参照)は、初期設定およびメンテナンスを単純化する、使い捨てポンプヘッド26aを含む。ポンプヘッド26aは、バイオリアクタ流体12を中空糸接線流フィルタ30を通して循環させ、再びバイオリアクタ槽11に戻す。中空糸接線流フィルタ30内の圧力を制御するために、中空糸接線流フィルタ30からバイオリアクタ槽11への流れ16に沿って非侵襲的膜貫通圧力制御弁34が提供され得る。例えば、弁34は、戻り流16を運ぶ管の外側に存在する非侵襲的弁であり得、これは、流量を制限および制御するために管を絞り、弁が膜上に加えられた圧力を調節することを可能にする。代替的または追加的に、流量制御装置36は、以下により詳細に記載されるように、中空糸接線流フィルタ30にパルス流を提供するためにポンプヘッド26a入口に提供され得る。透過物流24は、中空糸接線流フィルタ30を通って流動するバイオリアクタ流体13から継続的に除去されてもよい。ポンプヘッド26aおよび透過物ポンプ22は、中空糸接線流フィルタ30を通る所望の流動特性を維持するために制御システム20によって制御される。
【0083】
接線流濾過システム14内のポンプヘッド26aおよび中空糸接線流フィルタ30は、可撓性管によって接続され、要素の容易な交換を可能にし得る。そのような管は、中空糸接線流フィルタ30が物質で塞がれる場合の中空糸接線流フィルタ30の無菌の取り換えを可能にし、したがって、新しい中空糸アセンブリへの容易な交換を提供する。
【0084】
接線流濾過システム14は、例えば、ガンマ照射、eビーム照射、またはETOガス処理を使用して滅菌されてもよい。
【0085】
再び
図1を参照すると、動作中、いくつかの実施形態では透過物流24を除去するために、2つの透過流体出口ポート32bおよび32cが用いられ得る。他の実施形態では、単一の透過流体出口ポートのみが用いられ得る。例えば、透過物流24は、上部透過物ポート32cのみから収集され得るか(例えば、透過物ポート32bを閉鎖することによって)、または下部透過物ポート32bのみから収集され得る(例えば、透過物ポート32cが閉じられているか、もしくは開放されたままである一方で、下部透過物ポート32bから透過物流24を排出することによって)。ある特定の有益な実施形態では、透過物流24は、下部透過物ポート32bから排出されて、スターリング流を低減または排除し得、これは、中空糸60の上流(下部)端部(高圧端部)が、中空糸60の下流(上部)端部(低圧端部)を逆流させる透過物を生成する現象である。下部透過物ポート32bからの透過物流24の排出は、空気を中空糸60の上端と接触したまま残し、スターリング流を最小限化または排除する。
【0086】
ある特定の実施形態では、バイオリアクタ流体12は、一定流速で中空糸接線流フィルタ30に導入され得る。
【0087】
ある特定の実施形態では、バイオリアクタ流体は、拍動流形式(すなわち、パルス流条件下)で中空糸接線流フィルタ30に導入されてもよく、これは、透過物速度と容積スループット能力を増加させることが示されている。本明細書で使用される場合、「パルス流」は、送り込まれている流体(例えば、中空糸接線流フィルタに入っている流体)の流速が周期的にパルス化される(すなわち、流れが周期的なピークおよびトラフを有する)、流れ様式である。いくつかの実施形態では、流速は、1サイクル/分以下~2000サイクル/分以上の範囲(例えば、1~2~5~10~20~50~100~200~500~1000~2000サイクル/分の範囲)(すなわち、上記の値のうちのいずれか2つの間の範囲)の周波数でパルス化されてもよい。いくつかの実施形態では、トラフに関連する流速は、ピークに関連する流速の90%未満、ピークに関連する流速の75%未満、ピークに関連する流速の50%未満、ピークに関連する流速の25%未満、ピークに関連する流速の10%未満、ピークに関連する流速の5%未満、またはピークに関連する流速の1%未満でさえあり、パルス間にゼロの流れおよび逆流の期間を含む。
【0088】
パルス流は、任意の好適な方法によって発生し得る。いくつかの実施形態では、パルス流は、本質的にパルス流をもたらす蠕動ポンプなどのポンプを使用して発生し得る。例えば、出願者によって試験が実施されており、この試験は、定流量条件下での上記のような磁気浮上ロータを備えたポンプから、蠕動ポンプ(約200サイクル/分のパルス速度を提供する)への切り替えが、接線流深層フィルタが汚染前に操作され得る時間を増加させる(したがって、制御され得る透過物の量を増加させる)ことを示す。
【0089】
いくつかの実施形態では、パルス流は、流速を制御するための好適な流量制御装置を用いることによって、そうでなければ一定の、または本質的に一定の出力を提供するポンプ(例えば、容積移送式ポンプ、磁気浮上ポンプを含む遠心ポンプなど)を使用して発生し得る。そのような流量制御装置の例には、ポンプに入るか、またはポンプを出る流体を周期的に制限するための電気制御アクチュエータ(例えば、サーボ弁、もしくはソレノイド弁)、空圧制御アクチュエータ、または油圧制御アクチュエータを有するものが含まれる。例えば、ある特定の実施形態では、流量制御装置36は、本明細書で上に記載されたようなポンプ26の上流(例えば、入口)または下流(例えば、出口)(例えば、
図4Aのポンプヘッド26aの上流)に配置され、所望の流動特性を有する拍動流を提供するために制御装置20によって制御されてもよい。
【実施例】
【0090】
1.5mmのルーメン直径および2.4mmの壁厚を有する中空糸を含む接線流深層フィルタを試験した。しかしながら、他のルーメン直径の範囲が本開示全体を通して企図される。1ミクロンまたは2ミクロンの平均孔径を有する中空糸を、ポリエチレンテレフタレートのコアおよびポリプロピレンのシースを有する接着押出された二成分フィラメントから形成した。0.5ミクロン、1ミクロン、2ミクロン、または4ミクロンの平均孔径を有する中空糸も、ポリエチレンテレフタレートのコアおよびポリプロピレンのシースを有する接着押出された二成分フィラメントから形成し、続いてこれにポリビニリデンフルオリド(PVDF)のコーティングを行った。
【0091】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含有する流体を、200サイクル/分のパルス周波数で拍動流を提供する蠕動ポンプを使用して、上記のような中空フィルタを含む接線流深層フィルタを通して流体を循環させることによって濃縮した。LMH(リットル/平方メートル/時間またはL/m2/時)として表される、以下の透過流速で、以下の中空糸を有する接線流深層フィルタを使用して、8000秒-1の剪断速度(160mL/分)における濃縮モードで実験を行った。(a)1ミクロンのコーティングされていない中空糸、300LMH、(b)2ミクロンのコーティングされていない中空糸、100LMH、(c)2ミクロンのコーティングされていない中空糸、300LMH、(d)2ミクロンのコーティングされた中空糸、100LMH、および(e)4ミクロンのコーティングされた中空糸、実験中に40LMHから100LMHに増加。
【0092】
正規化された透過物圧力対時間として表される結果が、
図5Aに示される。フィルタ汚染時点での未透過物中の細胞の最終濃度は、以下のとおりであった。115・106細胞/mL(1μmコーティングされていない、300LMH);97・106細胞/mL(2μmコーティングされた、100LMH,);688・106細胞/mL(2μmコーティングされていない、300LMH);1.5・109細胞/mL(2μmコーティングされていない、100LMH);および72・106細胞/mL(4μmコーティングされた、40および100LMH)。
【0093】
図5Aからわかるように、一般に、圧減衰は、300LMHにおいて、かつ4μmの糸について急速であった。100LMHは、濃縮に最も最適であるように思われた。2μmの糸のうち、コーティングされた2μmの糸は、100LMHにおけるコーティングされていない2μmの糸よりも性能が悪かった。
図5Aの糸の各々は、パーセント密度を有する。1μmの糸は、約55%のパーセント密度を有し、2μmの糸は、約53%のパーセント密度を有し、4μmのフィルタは、約51%の密度を有する。2μmの53%密度の糸は、1μmの55%密度の糸および4μmの51%密度の糸の両方よりも性能が良く、1μmの55%密度の糸は、これらの試料のうちで最も性能が悪かった。これらの糸の観察された例示的な望ましくない特性には、4μmの51%密度の糸を通る過度の濁度および過度の細胞の通過、ならびに不必要に急な速度での1μmの55%密度を通る流体の通過が含まれる。
【0094】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含有する流体を、以下の流速で、以下の中空糸を有する磁気浮上ポンプを使用した接線流深層フィルタを通して流体を最初に送り込むことによっても濃縮した。1ミクロンのコーティングされていない中空糸、100LMHおよび2ミクロンのコーティングされた中空糸、100LMH。2ミクロンのコーティングされた中空糸に対して約5分後および1ミクロンのコーティングされていない中空糸に対して約8分後に、磁気浮上ポンプから、200サイクル/分のパルス周波数で拍動流を提供する蠕動ポンプに、流れを切り替えた。正規化された透過物圧力対時間として表される結果が、
図5Bに示される。
図5Bからわかるように、正規化された透過物圧力は、磁気浮上ポンプを使用する動作の初期期間中にフィルタに対して負であった。しかしながら、蠕動ポンプを切り替えた後、正規化された透過物圧力は陽に変わり、透過物流の増加を伴った。
【0095】
本明細書に開示される開示が特定の実施形態の手段およびその用途によって説明されているが、特許請求の範囲に記載される本開示の範囲から逸脱することなく、多くの修正および変更が当業者によって行われ得る。
【0096】
図6を参照すると、バイオプロセス用途のための接線流フィルタの一実施形態についての経時的なVCDおよび生存率に関するデータが示され、これは、約2μm~約5μmの孔径の範囲を有する第1の焼結フィルタP2を使用しながら始まり、続いて第1のフィルタP2を第2のフィルタP3に取り換える手順を含む。第2のフィルタP3は、約4μmの孔径および約51%の密度の割合を有した。第1の焼結フィルタP2は、手順中、約8日間の動作後に汚染した。約8日間の動作中、第1の焼結フィルタP2は、約60x106細胞/mLのVCDを超えて動作することができなかった。汚染後、第1の焼結フィルタP2を第2のフィルタP3に取り換えた。第2のフィルタP3は、2槽体積/日(VVD)の交換速度で9日間の動作期間中、60x106細胞/mL超に曝露された。第2のフィルタP3を用いた動作中のシステムのピークVCDは、175.0x106細胞/mLであった。第2のフィルタP3動作の9日目(手順全体の17日目)に、システムの透過物ラインは、機械の故障を受け、漏れ始めた。したがって、手順を終了した。第2のフィルタP3は、第1の焼結フィルタP2と比較してその動作中により大きいVCDを維持した。
【0097】
以下の表1は、約51%の密度の割合を有する6つのフィルタの例示的なデータを示す。
図6の第2のフィルタP3および以下の表1のフィルタは、約4μmの孔径および約51%の密度の割合を有するが、異なる孔径および密度の割合を有する他のフィルタ、例えば、約53%の密度の割合および90%の公称保持率で約2μmの孔径を有するフィルタが企図される。
【表1】
【0098】
図7を参照すると、
図6のフィルタの様々な測定基準が示される。例えば、第2のフィルタP3を通る平均ふるい分け率は、99.24+14.85である。ふるい分け率は、フィルタの多孔壁を通って(例えば、横切って)移動する流体の体積を指す。175.0x106細胞/mLの第2のフィルタP3ピークVCDは、約60x106細胞/mLの第1の焼結フィルタP2よりもはるかに高く、これは、第1の焼結フィルタP2は汚染した一方で、第2のフィルタP3は汚染することなく達成された。
【0099】
図8を参照すると、
図6および7の第2のフィルタP3の細胞成長プロファイルが示される。第2のフィルタP3のVVD範囲は、2であった。第2のフィルタP3のVVD範囲およびピークVCDが表2に示される。
【表2】
【0100】
図9および表3は、
図6~8の第2のフィルタP3の平均ふるい分け率を示す。第2のフィルタP3は、約100%の平均ふるい分け率を示し、その動作全体を通して約80%超を維持した。
【表3】
【0101】
図10および表4は、
図6~9の第2のフィルタP3を通過する細胞の割合を示す。第2のフィルタP3を通過する細胞の初期割合は最初、以前のTFDF灌流で観察された通常の値(例えば、約1%未満)よりもはるかに高かった(約1%超)。通過する細胞の割合は、第2のフィルタP3の灌流期間にわたって減少し、ピークVCDにおいて通過する細胞は急上昇した。細胞保持効率は、灌流培養全体を通して約95%に維持された。
【表4】
【0102】
図11および表5は、第2のフィルタP3の流束が
図6~10の蠕動ポンプを使用して連続的に流れることを示し、これは、培養期間にわたって有意に直線形である。
【表5】
【0103】
図12および表6は、
図6~11の第2のフィルタP3の濁度を示す。第2のフィルタP3に関する濁度値は、第1のフィルタP2よりも高かった。
【表6】
【0104】
図13を参照すると、膜貫通圧力(ΔTMP/秒)が、1.5mmまたは2.0mmのTDF内径を利用するTFDFシステムで、異なるフィルタ流束において観察される。ΔTMP/秒の有意な増加は、管状濾過要素(この場合TDF)の内面上のゲル層の形成およびフィルタのシグナル汚染を示す。図面は、8000秒-1の固定剪断速度(γ)で操作されたとき、1.5mmのTFDF設定が、400L・m-2・時間-1を超える流束で汚染を示した一方で、2mmのTFDF設定が、最大2300L・m-2・時間-1の流束で感知され得る汚染を示さなかったことを示す。以下の表7は、両方の条件についてのフィルタパラメータおよび動作変数を列挙し、システムは、両方のシステムにおいて同じ剪断速度を達成するために異なる供給流速を使用したが、本質的にそれらのそれぞれのTDF直径および供給におけるそれらのレイノルズ数が異なった。
【表7】
【0105】
結論
本開示は、記載される特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみであり、限定することを意図していない。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0106】
本開示の実施形態は、バイオプロセスにおける使用のためのものを含む培地に特に関連して説明されているが、そのようなシステムおよび方法が、様々な器具および様々な流体を用いて、流体処理の様々な構成で使用され得ることが理解されるべきである。
【0107】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も同様に含むことを意図する。本明細書で使用される場合、「備える」および/もしくは「備えること」または「含む」および/もしくは「含むこと」は、記述された特徴、領域、ステップ、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しない。本明細書で使用される場合、接続詞「および」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、そのように結合された構造、構成要素、特徴などの各々を含み、接続詞「または」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、単独で、かつ任意の組み合わせおよび数で、そのように結合された構造、構成要素、特徴などのうちの一方またはもう一方を含む。「または」という用語は一般に、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、その「および/または」を含む意味で用いられる。
【0108】
全ての数値は本明細書において、明示的に示されるかどうかにかかわらず、「約」という用語によって修飾されると考えられる。数値の文脈における「約」という用語は一般に、当業者が列挙された値と同等である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と見なす数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字四捨五入される数を含んでもよい。「約」という用語の他の使用(すなわち、数値以外の文脈における)は、特に明記しない限り、本明細書の文脈から理解されるような、かつそれと一致したそれらの通常の慣習的な定義(複数可)を有すると考えられ得る。端点による数値範囲の列挙は、端点を含むその範囲内の全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0109】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明されるその実施形態(複数可)が特定の特徴、構造、または特徴を含み得るが、全ての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特徴を含まなくてもよいことを示すことに留意されたい。さらに、そのような語句は必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特徴が一実施形態に関連して説明される場合、明らかに反対のことが述べられない限り、明示的に記載されるかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連した特徴、構造、または特徴に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内であろう。つまり、以下に記載される様々な個々の要素が、たとえ特定の組み合わせで明示的に示されていないとしても、それにもかかわらず、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するために、または記載された実施形態(複数可)を捕捉および/もしくは強化するために、互いと組み合わせ可能または配置可能であるものとして企図される。