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特許7432520透析器及び透析システム内の残留血液を決定するためのデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】透析器及び透析システム内の残留血液を決定するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240208BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240208BHJP
   G16H 20/40 20180101ALI20240208BHJP
   G16H 40/40 20180101ALI20240208BHJP
【FI】
A61M1/16 100
A61M1/36 153
G16H20/40
G16H40/40
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020554480
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2019058919
(87)【国際公開番号】W WO2019197387
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】102018205387.1
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】エルレンケッター アンスガー
(72)【発明者】
【氏名】ウツィグ ルーカス
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-081833(JP,A)
【文献】特開2001-099735(JP,A)
【文献】特表2013-500800(JP,A)
【文献】特開2004-113894(JP,A)
【文献】特表2017-521640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16,1/34,1/36
G16H 20/40,40/40
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析器(2)内の残留血液を決定するためのデバイス(1)であって、
透析器(2)を収容するように構成された保持デバイス(6)と、
前記保持デバイス(6)によって収容された透析器(2)の少なくとも1つの画像を取り込み、少なくとも1つのそれぞれの強度値が各々に割り当てられた複数の画像点を有する対応する画像データを発生させるように構成された画像取り込みデバイス(7)と、
前記少なくとも1つの画像内の前記強度値の少なくとも一部分の統計的頻度に基づいて前記透析器(2)内の残留血液の存在及び/又は含有量を特徴付ける残留血液情報を決定するように構成された制御デバイス(9)と、
を含むことを特徴とするデバイス(1)。
【請求項2】
前記画像取り込みデバイス(7)は、2又は3以上の異なる波長で電磁放射線を取り込み、各画像点毎に該波長の各々に対して強度値を発生させるように構成され、
前記制御デバイス(9)は、前記少なくとも1つの画像内の前記波長のうちの1又は2以上に対する前記強度値の統計的頻度に基づいて前記残留血液情報を決定するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記制御デバイス(9)は、前記少なくとも1つの画像内の前記強度値の前記頻度の分布に基づいて前記残留血液情報を決定するように構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記制御デバイス(9)は、前記少なくとも1つの画像内の前記強度値の前記頻度の前記分布の特性を特徴付ける少なくとも1つのパラメータに基づいて前記残留血液情報を決定するように構成されることを特徴とする請求項3に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記強度値の予測値及び/又は前記強度値の前記頻度の前記分布の重心によって与えられることを特徴とする請求項4に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記強度値の前記頻度の前記分布が最大値をそこで示す強度値(Imax)によって与えられることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記強度値の前記頻度の前記分布が2つの等しい面積にそこで分割される強度値(Imax)によって与えられることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記強度値の前記頻度の前記分布の幅を特徴付けることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパラメータは、
予測値からの前記強度値の標準偏差、
前記強度値の分散、
前記頻度の前記分布の進行がそこで事前設定閾値を超える及び/又はそれに到達する2つの強度値(カットオン、カットオフ)の間の範囲、
のうちの少なくとも1つを特徴付ける、
ことを特徴とする請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記強度値の前記頻度の前記分布の勾配を特徴付けることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記強度値の前記頻度の前記分布の尖度を特徴付けることを特徴とする請求項4から請求項10のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のデバイス(1)と、
チューブによって透析器(2)に接続することができ、該透析器(2)を通して血液及び透析液を誘導して該血液を浄化するように構成された透析デバイス(10)と、
を含むことを特徴とする透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析器並びに透析システム内の残留血液を決定するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の血液を浄化することに関して、半透過性膜によって形成された壁を有する複数の中空繊維で作られたフィルタがいわゆる透析器に配置された透析システムは公知である。血液が繊維を通して誘導される間に、いわゆる透析液は、血液からの例えば水、電解質、及び尿毒症性物質のような小分子が膜を通過して透析液に入り、次に除去することができるように外部空間を通って流れる。
【0003】
透析では、血液凝固の望ましくない刺激は、抗凝血剤(例えばヘパリン)を使用することによって防止又は少なくとも低減することができる。抗凝血剤投与量が過度に低い場合に、処置中に凝血塊が形成される可能性がある。これらの凝血塊は、中空繊維の個々の又は同じく多くのものを閉塞させる可能性がある。処置の終了時に血液が再び患者に戻される時に、「残留血液」としても公知のある一定量の血液がそれぞれの繊維に残って患者に戻されないということが発生する可能性がある。
【0004】
最適な抗凝血剤投与量を決定するのに臨床実務で使用される様々な方法がある。1つの可能性は、処置中に(例えばt=60分で)採取された血液サンプルから凝固時間(例えば、ACT=活性化凝固時間、aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間)を決定することである。長い凝固時間は、過度に高い抗凝血剤投与量、短い凝固時間は、それとは対照的に過度に低い投与量が選択されたことを示す。更に、針の取り出し後に患者が出血を止めるのに要する出血時間も、最適な抗凝血剤投与量を推定するのに使用することができる。
【0005】
最後に大事なことであるが、技術担当者は、使用済みフィルタのいわゆる「ストリーキング」を検査することができる。再注入の終了時にフィルタが実質的に白色である時には、閉塞されていない自由な繊維は白色であり、それに対して残留血液によって閉塞されたものは赤色である。しかし、フィルタを検査することは、異なる個人が異なる結論及び結果に至る可能性があるような非常に主観的な評価をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透析器並びに対応する透析システム内の残留血液を確実に決定するためのデバイス及び方法を指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
透析器内の残留血液、特に血液凝塊を決定するための本発明によるデバイスは、透析器を収容するように構成された保持デバイスと、保持デバイスによって収容された透析器、特に透析器に位置付けられたフィルタの少なくとも1つの画像を取り込み、少なくとも1つのそれぞれの強度値、特に明度(color value、色値、色価)が各々に割り当てられた複数の画像点(ピクセル)を有する対応する画像データを発生させるように構成された画像取り込みデバイスと、少なくとも1つの画像内の強度値の少なくとも一部分の統計的頻度に基づいて透析器内の残留血液の存在及び/又は含有量を特徴付ける残留血液情報を決定するように構成された制御デバイスとを含む。
【0008】
本発明による透析システムは、本発明によるデバイス、並びにチューブによって透析器に接続することができ、透析器を通して血液及び透析液を誘導して血液を浄化するように構成された透析デバイスを含む。
【0009】
透析器内の残留血液、特に血液凝塊を決定するための本発明による方法は、透析器、特に透析器に位置付けられたフィルタの少なくとも1つの画像を取り込み、少なくとも1つのそれぞれの強度値、特に明度が各々に割り当てられた複数の画像点(ピクセル)を有する対応する画像データを発生させる段階と、少なくとも1つの画像内の強度値の少なくとも一部分の統計的頻度に基づいて透析器内の残留血液の存在及び/又は含有量を特徴付ける残留血液情報を決定する段階とを含む。
【0010】
本発明の一態様は、カメラが、透析器に位置付けられたフィルタの1又は2以上の画像を取り込み、取り込んだ1又は複数の画像の濃淡値及び/又は明度の少なくとも一部分をそれぞれの画像内のそれらの統計的頻度に関して解析してそこからフィルタに残留血液が存在するか否か又はそれぞれどれ程の量が存在するかを示す対応する残留血液情報を導出することによってフィルタ内のいずれの残留血液、特に凝固血液(いわゆる血液凝塊)の存在及び/又は含有量も検出する又はそれぞれ決定するという手法に基づいている。画像内の濃淡値又はそれぞれ明度の解析された統計的頻度は、画像に出現する特定レベルのそれぞれの濃淡値又はそれぞれ明度の個数を示す絶対頻度値に関連することができる。これに代えて又はこれに加えて、解析された統計的頻度は、画像に出現する及び/又は画像で可能な濃淡値又はそれぞれ明度の総数に対する画像に出現する特定レベルのそれぞれの濃淡値数又はそれぞれ明度の比の尺度を表す相対頻度値に関連することができる。
【0011】
カメラによって取り込まれたフィルタ画像の統計的方法を使用する自動解析は、透析器内のいずれの残留血液の客観的及び従って特に確実な決定も可能にする。本発明の更に別の利点は、抗凝血剤投与量を特に確実に決定し、又はそれによって決定された時の残留血液情報に基づいてそれをそれぞれ最適化することができるということにもある。
【0012】
好ましくは、画像取り込みデバイスは、1又は2以上の異なる波長又は波長範囲で電磁放射線を取り込み、各画像点毎に波長の各々又はそれぞれ波長範囲の各々に対して強度値、特に2又は3以上の明度を発生させるように構成される。制御デバイスは、それにより、少なくとも1つの画像内でそれぞれ波長の1又は2以上に対して又はそれぞれ波長範囲の1又は2以上に対して強度値の統計的頻度に基づいて残留血液情報を決定するように更に構成される。好ましくは、画像取り込みデバイスは、各画像点に関する対応する明度がそこで決定されるいわゆる色チャネルを異なる波長の各々又はそれぞれ異なる波長範囲の各々に対して有する。好ましくは、画像取り込みデバイスは、赤色、緑色、及び青色の波長又はそれぞれ波長範囲に対する3つの色チャネルを有する。それによって取得された画像は、RGB画像とも呼ばれる。しかし、画像取り込みデバイスは、これに代えて、例えば、「シアン」、「マゼンタ」、「イエロー」、及び「キー」黒色百分率のような異なる色チャネルのいずれかの他の組合せを更に有することもでき、それによっていわゆるCMYK色スペクトル内の画像が取得される。これに代えて又はこれに加えて、画像取り込みデバイスは、特に異なる明度の少なくとも100個、特に少なくとも200個の強度値の強度値の分解能を有することが好ましい。例えば、チャネルの各々に対して、256個の異なる強度値に対応する8ビットの分解能が与えられる。上述の構成の1又は2以上を用いて取得された又はそれぞれ評価された画像は、透析器内の残留血液の特に確実な決定を可能にする。
【0013】
画像取り込みデバイスは、画像毎に250,000よりも多い、特に1,000,000よりも多い画像点(ピクセル)を発生させるように構成されることが更に好ましい。それによって達成された取り込み画像の高い空間分解能に起因して、特に中空繊維に埋め込まれた残留血液を特に確実に決定することができる。しかし、原理的には、画像取り込みデバイスによって発生される画像の画像点の全てを画像解析に考慮する必要はない。実際に、画像の詳細のみを相応に解析することが可能である。画像取り込みデバイスが、例えば、約1,000,000個の画像点の画像を生じる場合には、例えば、関連の画像情報、例えば、フィルタ又はフィルタの代表的な詳細が画像詳細内にレンダリングされる場合に、約500,000個の画像点のみの画像詳細が例えば統計的画像解析を受けることができる。それは、残留血液決定の信頼性を損なうことなく計算容量を節約する。
【0014】
原理的には、画像取り込みデバイスによって生成される画像は、個々のフレーム、画像シーケンス、及び/又は更に動画、特にビデオシーケンスとすることができる。
【0015】
制御デバイスは、少なくとも1つの画像内の強度値の頻度の分布、特にヒストグラムに基づいて残留血液情報を決定するように構成されることが更に好ましい。一般的に言って、ヒストグラムは、画像の輝度値の分布を可視化することができ、それによって濃淡値又はそれぞれ明度の発生の個々の頻度は、これらの濃淡値又はそれぞれ明度の値範囲を表す軸に沿う棒グラフとしてプロットされる。棒グラフが濃淡値又はそれぞれ明度よりも上に高いほど、この濃淡値又はそれぞれ明度は、より高頻度で画像に出現する。しかし、残留血液のこの決定に使用される強度値の頻度の分布又はそれぞれヒストグラムは、必ずしも可視化される必要はなく、それは、代わりに、画像内の濃淡値又はそれぞれ明度の特に絶対的又は相対的な統計的頻度の分布に関する対応するデータ対(濃淡値又はそれぞれ明度と絶対頻度及びそれぞれ相対頻度)を含有するだけでよい。2又は3以上の色チャネルを有する画像取り込みデバイスによって撮られた画像の場合に、画像の統計的解析は、好ましくは、2又は3以上の個々の色チャネルヒストグラム、例えば、RGB画像による3つのヒストグラム及びCMYK画像による4つのヒストグラムを相応に考慮する。
【0016】
制御デバイスは、好ましくは追加的に、少なくとも1つの画像内の強度値の頻度の分布の特性を特徴付ける少なくとも1つのパラメータに基づいて残留血液情報を決定するように構成される。画像の濃淡値又はそれぞれ明度の頻度分布の好ましくは自動で決定されるパラメータを用いて、それぞれ透析器又はフィルタ内のいずれの残留血液も、更に高い信頼性で決定することができる。これは、特に、例示的に含める以下のパラメータの1又は2以上にも適用される。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つのパラメータは、それぞれ少なくとも1つの画像内の強度値の予測値又はそれぞれ強度値の頻度の分布の重心、特に、少なくとも1つの画像内の青色及び/又は緑色波長範囲又はそれぞれ青色及び/又は緑色チャネル内の明度の予測値又は重心を含有する又はそれぞれ特徴付ける。予測値は、好ましくは、横座標(x軸)の上方に強度値の頻度の分布によって形成された区域の重心がそこに位置する強度値を示す。好ましくは、制御デバイスは、その目的を果たすために、決定された予測値又はそれぞれ重心に基づいて透析器内の残留血液の含有量、特にその量を特徴付ける残留血液情報を決定するように構成される。
【0018】
これに代えて又はこれに加えて、少なくとも1つのパラメータは、強度値の頻度の分布が最大値をそこで示す強度値を含有する又はそれぞれ特徴付ける。これに代えて又はこれに加えて、少なくとも1つのパラメータは、強度値の頻度の分布が2つの等しい面積にそこで分割される強度値を含有する又はそれぞれ特徴付ける。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つのパラメータは、少なくとも1つの画像内の強度値の頻度の分布の幅を特徴付ける。特に、少なくとも1つのパラメータは、予測値からの強度値の標準偏差、及び/又は強度値の分散、及び/又は頻度の分布の進行が事前設定閾値、特にゼロ、をそこで超える及び/又は到達する2つの強度値(カットオン、カットオフ)の間の範囲のうちの少なくとも1つを特徴付ける。分布の幅を特徴付けるパラメータに基づいて、制御デバイスは、そこから残留血液情報を導出するために、フィルタが均一に着色されているか否か、又は血液沈着のない白色区域が存在するか及び/又はフィルタがストリーキングを示すかを確実に自動的に決定することができる。しかし、それに代えて、残留血液情報は、分布の幅から直接に導出することもできる。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つのパラメータは、少なくとも1つの画像内の強度値の特にそれぞれ赤色波長範囲又は赤色チャネル内の明度の頻度の分布の勾配を特徴付ける。特に、制御デバイスは、特に赤色波長範囲に対する分布の勾配に基づいて、透析器内の残留血液の含有量、特にその量を特徴付ける残留血液情報を決定するように構成される。特に、それによって検査されるのは、頻度の分布が右に歪曲しているか又は左に歪曲しているかであり、それによって右歪曲分布の場合に感知可能な血液沈着のない白色フィルタであると結論付けられ、左に傾いた分布では血液沈着を含有するフィルタであると結論付けられる。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つのパラメータは、強度値の頻度の分布の尖度を特徴付ける。尖度は、好ましくは、特に正規分布に対する分布の鋭さ又は先鋭度の尺度である。例えば、頻度の分布の進行に沿っていくつかのピーク又は肩部が存在する場合に尖度値は低減する。好ましくは、制御デバイスは、尖度に基づいて透析器内の残留血液の含有量、特にその量を特徴付ける残留血液情報を決定し、それによって特に尖度のより低い値の場合に感知可能な血液沈着のない白色フィルタであると結論付けることができ、尖度のより高い値では対応する量の残留血液を含有するフィルタであると結論付けることができるように構成される。
【0022】
好ましくは、残留血液情報決定は、2又は3以上の透析器、特に、異なる量の残留血液を含有する透析器内のフィルタの画像を取り込み、少なくとも1つの強度値、特に明度に各々が関連付けられた複数の画像点を有する対応する画像データを発生させる段階と、透析器に含有される残留血液のそれぞれの異なる量に関する情報及びそれぞれ取り込まれた画像内の強度値の少なくとも一部の統計的頻度の解析に基づいて較正データを発生させる段階とを含む較正処理で決定された較正データの考慮を更に含む。
【0023】
好ましくは残留血液情報の実際の決定の前に行われる較正処理では、複数の画像、例えば、5、10、又は20個の画像が、好ましくは、それぞれ既知の量の残留血液を含有するそれぞれの透析器又はそれぞれフィルタの異なる場所で及び/又は異なる条件下で、例えば異なる回転位置で取り込まれる。例えば、3つの別様に充填された透析器、例えば、NaCl溶液のみ(血液なし)で充填されたもの、血液で完全に充填されたもの、及びそれぞれ血液で半分までのみ充填されたものの画像が撮られる。別様に充填された透析器で撮られた各画像データは、画像にそれぞれ発生する強度値の特に例えば赤、緑、及び青色チャネルでのような異なる明度の統計的頻度を決定し、好ましくは例えば明度の頻度のそれぞれの分布の予測値、幅、勾配、及び/又は尖度のような上述のパラメータのうちの少なくとも1つを用いて特徴付ける評価を受ける。
【0024】
例えば、別様に充填された透析器の各々に対して、較正データは、各色チャネルに対する少なくとも1つのパラメータ又は対応する強度値をそれぞれ組み込む。例えば3つの異なる透析器(NaClのみ、血液で半分充填されたもの、血液で完全に充填されたもの)と例えば3つの色チャネル(赤色、緑色、青色)とを用いて、赤色、緑色、青色の明度の3つの予測値が透析器毎に取得される。
【0025】
この較正データは、次に、透析器の取り込まれた画像の赤、緑、及び青色チャネル内の明度の予測値を決定し、それを別様に充填された透析器に対して取得された較正データの明度トリプレットと比較することにより、未知量の残留血液の場合の透析器内の残留血液を後で決定する時に使用することができる。それに代えて、2つの色チャネルのみ又は1つの色チャネルのみからの明度の予測値を決定する又はそれぞれ比較することも可能である。すなわち、意外なことに、緑色チャネルに対する予測値を決定し、それを別様に充填された透析器に対する較正で取得された緑色チャネルに対する予測値と比較することがそれぞれの透析器内の残留血液の特に簡単でそれにも関わらず確実な決定を可能にすることが見出された。
【0026】
本発明の更に別の利点、特徴、及び潜在的用途は、図面と共に以下の説明によってもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】透析器内の残留血液を決定するためのデバイスの一例を示す図である。
図2】NaClで充填された透析器の画像内の強度値の頻度の分布の第1の例を示す図である。
図3】血液で半分まで充填された透析器の画像内の強度値の頻度の分布の第2の例を示す図である。
図4】血液で完全に充填された透析器の画像内の強度値の頻度の分布の第3の例を示す図である。
図5】較正データの一例のグラフィック表現を示す図である。
図6】強度値の頻度の分布を特徴付けるための異なるパラメータを例示するグラフィック表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、透析器2内の残留血液を決定するためのデバイス1の例を概略側面図に示している。透析器2は、例えばプラスチック又はガラスのような好ましくは透明材料の実質的に円筒形のシェル3を含む。シェル3の両端上には、末端キャップ5が設けられ、そこにそれぞれのコネクタ5a及び5bが位置付けられ、そこでは血液及び透析液を透析器2の中に又はそれぞれ外にそれらが透析デバイス10の対応するコネクタに(図示していない)チューブによって接続された時に誘導することができる。
【0029】
それぞれ透析器2又はシェル3内には、描いている例では半透過性材料の複数の概略でのみ示す中空繊維を含むフィルタ4が位置付けられる。透析手順中に、浄化すべき血液は、それらが外側から透析液で洗い流される間に中空繊維の内側に誘導される。
【0030】
描いている例では、透析器2は、透析器2が特に回転可能に装着された半円筒形凹部を有する2つの担持要素6を含む保持デバイスに、例えばそれぞれ透析手順を終了した後又は透析デバイス10から分離された後、位置している。
【0031】
断面で描いている担持要素6の一方の内部には、担持要素6の領域内でそれぞれ透析器2又はフィルタ4の詳細の1又は2以上の画像を撮影する機能を有する画像取り込みデバイス7、例えばスチールフレームカメラ及び/又はビデオカメラが設けられる。好ましくは、カメラチップが、画像取り込みデバイス7としての役割を果たす。
【0032】
好ましくは、少なくとも画像の取り込み中に透析器2又はそれぞれフィルタ4の関連の細部を照明する照明デバイス8、例えば1又は2以上の発光ダイオードが更に設けられる。
【0033】
担持要素6内の透析器2の回転可能な装着は、透析器2の複数の画像が異なる回転位置で順次撮影されることを提供することができる。透析器2を回転させることにより、特にパノラマ画像の撮影を可能にすることができる。
【0034】
画像取り込みデバイス7は、好ましくは色画像を取り込むように設計され、例えば赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)波長又はそれぞれ波長範囲にある3つの色チャネルを有する。
【0035】
画像取り込みデバイス7によって撮られた透析器2又はそれぞれフィルタ4の各画像は、少なくとも1つの強度値、特にR、G、及びBの色チャネルに対する3つの異なる明度(color value、色値、色価)を伴う複数の画像点、いわゆるピクセルを有する。
【0036】
画像取り込みデバイス7によって発生された画像データは、制御デバイス9に給送され、フィルタ4内のいずれかの残留血液についての結論を引き出すことができるようにそこで解析される。
【0037】
明度の少なくとも一部は、それによってそれぞれの画像内でそれらの頻度に関して、特にその頻度分布に関して解析され、そこからフィルタ4内に残留血液が存在するか否か又はそれぞれどれ程の量が存在するかを示す対応する残留血液情報が導出される。
【0038】
残留血液情報は、単に定性的な性質のもの、例えば「残留血液あり」/「残留血液なし」とするか、又は他に例えば残留血液含有量の大まかな表示(例えば、「高」、「平均」、「低」)の形式での及び/又は更に数値の形式での残留血液含有量についての定量的情報(例えば、重量百分率、体積百分率、絶対濃度値、フィルタのいわゆるストリーキングに関する情報)を含むことができる。
【0039】
好ましくは、残留血液情報は、明度のうちの少なくとも1つの頻度分布の少なくとも1つの特性を特徴付ける少なくとも1つのパラメータを考慮して決定される。好ましくは、頻度分布の1又は2以上の特性を血液含有量と相関付ける事前決定較正データがそれによって更に考慮される。それについて下記でより詳細に説明することにする。
【0040】
図2は、NaClで充填された透析器のRGB画像内の強度値の頻度の分布の第1の例を示している。描いたグラフィック表現は、それぞれ取り込まれた画像内の画像点の個数(いわゆるピクセルカウント)の形式での絶対頻度が赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の個々の色チャネル内で発生する強度値又はそれぞれ明度にわたってプロットされたいわゆるヒストグラムである。
【0041】
図3は、血液で半分まで充填された透析器のRGB画像内の強度値の頻度の分布の第2の例を示している。図2に示す異なる複数のチャネル内の明度分布とは対照的に、図3の分布は、より広範囲にわたっている。異なるR、G、及びBチャネルの間の分布は、図2のものよりも大きい差も示している。
【0042】
図4は、血液で完全に充填された透析器の画像内の強度値の頻度の分布の第3の例を示している。図2及び図3に示す異なる複数のチャネル内の明度分布とは対照的に、図4の分布はより対称であり、かなり鮮明である。更に、異なるR、G、及びBチャネル内でいわゆる分布の重心の明瞭なシフトが認められる。
【0043】
それぞれデバイス1を較正する関連又は対応する方法では、頻度分布の重心は、例えば、決定してそれぞれの血液含有量と相関付けることができる。x軸に沿う分布f(x)の重心の位置xsは、次式のように定義される。
【数1】
【0044】
離散的な強度値(x軸)及び頻度値(y軸)による計算を実施するために、上記の式は次式のように調節される。
【数2】
【0045】
次に次式が得られる。
【数3】
【数4】
【0046】
この式は、(絶対)ヒストグラムデータからの重心の決定に対応する。次式のように(相対)ヒストグラムデータから重心xsを決定することもできる。
【数5】
ここで、hn=相対頻度である。
【0047】
次式のように生ピクセルデータからの重心の決定も可能である。
【数6】
【0048】
図2から図4に示す異なる明度の分布から、それぞれの重心での強度値/明度と、異なる透析器血液充填量と、の間の相関は、このようにして取ることができる。
【0049】
特定の透析器/フィルタタイプに関して上記のようにして取得された較正データを図5にグラフィックに例示している。この例示から明らかなように、緑色(G)色チャネルに関して取得された重心強度値は、それぞれの血液含有量の関数として特に顕著に変化する。同じことが青色(B)色チャネルにも当てはまるが、それ程目立った形態にはない。
【0050】
従って、そのような透析器内の残留血液を決定する時に、好ましくは頻度分布又はそれぞれの重心が緑、及び/又は青、及び/又は赤色チャネルに関して識別される。そのように取得された重心の強度値を、緑、及び/又は青、及び/又は赤色チャネルに関して較正データと比較することにより、透析器内の残留血液含有量に関する結論を引き出すことができる。緑色チャネルを使用することが特に好ましい。
【0051】
好ましくは、較正において考察される血液量の間、それを下回る、及び/又はそれを上回るものである血液量に関して残留血液含有量を決定することもできるように、図5に示すようにそれぞれ取得された強度値と血液含有量値との対が線形に内挿及び/又は外挿される。
【0052】
これに代えて又はこれに加えて、図2から図4に示す頻度分布のy軸(頻度)に沿うそれぞれの重心を相応に決定し、残留血液の決定にそれを組み込むことも可能である。この場合に、特に絶対的な、強度値頻度と血液含有量の間の相関が、較正手順において相応に取られる。
【0053】
x軸に沿う分布の重心は、強度値の頻度の分布の血液含有量依存のシフトの尺度を表すが、y軸に沿う重心は、その重みを特徴付ける。
【0054】
しかし、それぞれ重心又は予測値に代えて又はそれに加えて、例えば、それぞれの分布の幅、勾配、及び/又は尖度、頻度分布が最大値を示す強度値又は明度、及び/又はそれぞれの分布がゼロ線を割り込む又はそれぞれ再度ゼロ線に到達する強度値、いわゆるカットオン/カットオフ値のような、頻度分布の他の特性を残留血液の決定/較正において考察することもできる。
【0055】
図6は、分布特性の特徴付けのための異なるパラメータを例示する画像の強度値の頻度分布のグラフィック表現を示している。
【0056】
強度値I1/2で引かれた破線は、頻度分布によってx軸の上に形成された面積を2つの等しい面積に分割する。残留血液の決定において、重心/予測値に代えて又はそれに加えて、強度値I1/2を同様に使用することができる。
【0057】
2つの「カットオン」及び「カットオフ」点は、頻度分布の推移にわたって強度がゼロ値を超える又は再びゼロ値に到達する強度値及び/又は頻度値を特徴付ける。上述のパラメータに代えて又はこれに加えて、対応する強度値を残留血液の決定に同様に使用することができる。
【0058】
同じことは、最も頻繁に発生する強度値Imax又はそれぞれこの強度値の頻度Imaxを特徴付ける「最大」値にも相応に適用される。
【符号の説明】
【0059】
1 透析器内の残留血液を決定するためのデバイス
2 透析器
4 フィルタ
5a、5b コネクタ
7 画像取り込みデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6