(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】受信装置、通信システムおよび受信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20240208BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20240208BHJP
H04H 40/18 20080101ALI20240208BHJP
【FI】
H04L27/26 111
H04L27/26 410
H04B1/16 R
H04H40/18
(21)【出願番号】P 2020558097
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033226
(87)【国際公開番号】W WO2020110388
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2018224320
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 弘基
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-101542(JP,A)
【文献】特開平11-145928(JP,A)
【文献】特開2018-050153(JP,A)
【文献】特開2018-029336(JP,A)
【文献】特表2017-527167(JP,A)
【文献】特開2009-232439(JP,A)
【文献】特開2010-034854(JP,A)
【文献】特開2005-204339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 1/16
H04H 40/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する高速フーリエ変換部と、
前記高速フーリエ変換信号から伝送制御信号を取得する伝送制御信号取得部と、
前記伝送制御信号か
ら階層に応じた電力増減率を取得して、前記高速フーリエ変換信号の
前記階層毎の信号の振幅を前記階層に応じた電力増減率に基づいて正規化する振幅正規化部と、
前記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成するキャリア復調部と、
前記高速フーリエ変換信号からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部と、
前記パイロット信号を前記階層に応じて補正して時間軸方向および周波数軸方向に前記階層毎に補間することにより伝送路を推定して伝送路係数を生成する伝送路推定部と、
前記伝送路係数に基づいて前記高速フーリエ変換信号を補正する等化部と
を具備する受信装置。
【請求項2】
受信すべき階層を指定する受信階層指定部をさらに具備し、
前記伝送路推定部は、前記指定された階層に応じて前記伝送路係数と前記指定された階層の電力増減率との積を生成し、
前記等化部は、前記伝送路係数に基づいて前記高速フーリエ変換信号を補正し、
前記振幅正規化部は、前記指定された階層の電力増減率に基づいて前記等化部の出力の振幅を正規化する
請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信信号の受信環境に基づいて前記受信すべき階層を判定する受信環境判定部をさらに具備し、
前記受信階層指定部は、前記受信環境判定部の判定結果に従って前記受信すべき階層を指定する
請求項2記載の受信装置。
【請求項4】
前記受信信号の受信帯域を制限するバンドパスフィルタと、
前記伝送制御信号に基づいてデータ復調に必要な帯域を判断して前記バンドパスフィルタにおける前記受信信号の受信帯域を制御するバンドパスフィルタ制御部と
をさらに具備する請求項1記載の受信装置。
【請求項5】
伝送路を介して階層毎の信号を伝送する送信装置および受信装置を具備する通信システムであって、
前記送信装置は、
前記階層毎のデータをキャリア変調するキャリア変調部と、
前記キャリア変調された前記階層毎の信号の振幅を前記階層毎に増減して振幅調整を行う振幅調整部と、
前記振幅調整された前記階層毎の信号を合成する階層合成部と、
前記合成された信号を逆高速フーリエ変換処理して逆高速フーリエ変換信号を生成する逆高速フーリエ変換部と、
前記逆高速フーリエ変換信号を送信する送信部とを備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から送信された信号を受信する受信部と、
前記送信装置から受信した前記信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する高速フーリエ変換部と、
前記高速フーリエ変換信号から伝送制御信号を取得する伝送制御信号取得部と、
前記伝送制御信号から前記階層に応じた電力増減率を取得して、前記高速フーリエ変換信号の階層毎の信号の振幅を前記階層に応じた前記電力増減率に基づいて正規化する振幅正規化部と、
前記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成するキャリア復調部と、
前記高速フーリエ変換信号からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部と、
前記パイロット信号を前記階層に応じて補正して時間軸方向および周波数軸方向に前記階層毎に補間することにより伝送路を推定して伝送路係数を生成する伝送路推定部と、
前記伝送路係数に基づいて前記高速フーリエ変換信号を補正する等化部とを備える
通信システム。
【請求項6】
高速フーリエ変換部が、受信信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する手順と、
伝送制御信号取得部が、前記高速フーリエ変換信号から伝送制御信号を取得する手順と、
振幅正規化部が、前記伝送制御信号か
ら階層に応じた電力増減率を取得して、前記高速フーリエ変換信号の
前記階層毎の信号の振幅を前記階層に応じた電力増減率に基づいて正規化する手順と、
キャリア復調部が、前記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成する手順と、
パイロット信号抽出部が、前記高速フーリエ変換信号からパイロット信号を抽出する手順と、
伝送路推定部が、前記パイロット信号を前記階層に応じて補正して時間軸方向および周波数軸方向に前記階層毎に補間することにより伝送路を推定して伝送路係数を生成する手順と、
等化部が、前記伝送路係数に基づいて前記高速フーリエ変換信号を補正する手順と
を具備する受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、受信装置に関する。詳しくは、放送波を受信する受信装置、通信システム、および、これらにおける処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の地上波デジタルテレビ放送では、階層伝送が利用されており、同一チャンネルの中で、画質および雑音耐性の異なる複数のサービスが提供されている。例えば、伝送帯域の中央の1セグメントによってモバイル端末向けの雑音耐性の強いワンセグ信号が送信され、他の12個のセグメントによって固定テレビ受像器向けのハイビジョン信号が送信されている。
【0003】
この階層伝送は、今後、次世代の地上波デジタルテレビ放送においても採用されることが想定される。例えば、中央の3セグメントをA階層、周囲の32セグメントをB階層として、A階層の電力を増幅することによりB階層の伝送データ量の減少を抑制しながらA階層の伝送データ量を増加させる送受信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術の送信装置は、階層毎にキャリア変調部の出力を増幅または減衰させている。しかしながら、従来技術の受信装置においてはキャリア復調部に入力される信号の電力レベルが、本来期待される信号と異なるため、誤り率が上昇してしまうおそれがある。
【0006】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、階層毎に電力レベルが異なる信号について適切にキャリア復調を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、受信信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する高速フーリエ変換部と、上記高速フーリエ変換信号の階層毎の信号の振幅を正規化する振幅正規化部と、上記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成するキャリア復調部とを具備する受信装置、その受信方法、および、通信システムである。これにより、階層毎の信号の振幅を正規化してキャリア復調するという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記振幅正規化部は、上記階層に応じた電力増減率に基づいて上記正規化を行ってもよい。これにより、階層に応じた電力増減率に基づいて正規化してキャリア復調するという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記高速フーリエ変換信号から伝送制御信号を取得する伝送制御信号取得部をさらに具備し、上記振幅正規化部は、上記伝送制御信号から上記階層に応じた電力増減率を取得するようにしてもよい。これにより、伝送制御信号から取得した電力増減率に基づいて正規化してキャリア復調するという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記高速フーリエ変換信号から上記階層毎の信号を取得する階層信号取得部をさらに具備し、上記振幅正規化部は、上記階層毎の信号の振幅を上記階層に応じた電力増減率によって除算することにより上記正規化を行うようにしてもよい。これにより、階層毎の信号の振幅を階層に応じた電力増減率によって除算することにより正規化するという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記高速フーリエ変換信号からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部と、上記パイロット信号を上記階層に応じて補正して時間軸方向および周波数軸方向に補間することにより伝送路を推定して伝送路係数を生成する伝送路推定部と、上記伝送路係数に基づいて上記高速フーリエ変換信号を補正する等化部とをさらに具備してもよい。これにより、パイロット信号を階層に応じて補正して時間軸方向および周波数軸方向に補間することにより伝送路を推定し、伝送路による影響を信号から取り除いてキャリア復調するという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、受信すべき階層を指定する受信階層指定部をさらに具備し、上記伝送路推定部は、上記指定された階層に応じて上記伝送路係数と上記指定された階層の電力増減率との積を生成し、上記等化部は、上記伝送路係数に基づいて上記高速フーリエ変換信号を補正し、上記振幅正規化部は、上記指定された階層の電力増減率に基づいて上記等化部の出力の振幅を正規化するようにしてもよい。これにより、指定した階層を優先的に受信するという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記受信信号の受信環境に基づいて上記受信すべき階層を判定する受信環境判定部をさらに具備し、上記受信階層指定部は、上記受信環境判定部の判定結果に従って上記受信すべき階層を指定するようにしてもよい。これにより、受信信号の受信環境に基づいて決定された階層を優先的に受信するという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記受信信号の受信帯域を制限するバンドパスフィルタと、上記伝送制御信号に基づいてデータ復調に必要な帯域を判断して上記バンドパスフィルタにおける上記受信信号の受信帯域を制御するバンドパスフィルタ制御部とをさらに具備してもよい。これにより、伝送制御信号に基づいて判断された帯域に従って受信帯域を制限するという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本技術の実施の形態における通信システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本技術の実施の形態における送信機100の構成例を示す図である。
【
図3】本技術の第1の実施の形態における受信機300の構成例を示す図である。
【
図4】本技術の実施の形態における伝送路推定部341による伝送路推定の態様例を示す図である。
【
図5】本技術の実施の形態における振幅正規化の必要性を示す図である。
【
図6】本技術の第1の実施の形態における受信機300の全体の処理手順例を示す流れ図である。
【
図7】本技術の第1の実施の形態における伝送路推定処理(ステップS903)の処理手順例を示す流れ図である。
【
図8】本技術の第1の実施の形態における振幅正規化処理(ステップS905)の処理手順例を示す流れ図である。
【
図9】本技術の第2の実施の形態における受信機300の構成例を示す図である。
【
図10】本技術の第2の実施の形態における伝送路推定処理の処理手順例を示す流れ図である。
【
図11】本技術の第3の実施の形態における受信機300の構成例を示す図である。
【
図12】本技術の第3の実施の形態における受信階層指定処理の処理手順例を示す流れ図である。
【
図13】本技術の実施の形態の変形例における受信機300の構成例を示す図である。
【
図14】本技術の実施の形態の変形例におけるバンドパスフィルタ制御部312の帯域幅制御の態様例を示す図である。
【
図15】本技術の実施の形態の変形例におけるバンドパスフィルタ制御処理の処理手順例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(振幅を正規化してデータを復調する例)
2.第2の実施の形態(受信階層を指定して伝送路を推定する例)
3.第3の実施の形態(受信環境に応じて受信階層を決定して伝送路を推定する例)
4.変形例(バンドパスフィルタの帯域幅を制御する例)
【0017】
<1.第1の実施の形態>
[通信システム]
図1は、本技術の実施の形態における通信システムの全体構成例を示す図である。
【0018】
この実施の形態では、送信機100から送信された送信信号が、伝送路200の影響を受けて、受信信号として受信機300に受信されるモデルを想定する。ここで、送信信号をS、伝送路のチャネル係数をH、受信信号をRとすると、これらの関係は、次式のように表すことができる。
R=HS
【0019】
受信機は、チャネル係数Hを求めることができれば、受信信号Rをチャネル係数Hで除算することにより送信信号Sを取り出すことができる。ただし、後述するように、送信機側で電力増幅または電力減衰が行われていた場合、受信機側でこれらを考慮して送信信号を取り出す必要がある。
【0020】
[送信機]
図2は、本技術の実施の形態における送信機100の構成例を示す図である。
【0021】
送信機100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を送信する装置である。この送信機100は、キャリア変調部111および112と、振幅調整部121乃至123と、階層合成部130と、フレーム化部150と、IFFT部170と、送信部180と、アンテナ190とを備える。
【0022】
キャリア変調部111および112は、予め設定されたパラメータおよび変調方式に応じて、入力されたデータのマッピング処理等を行って、キャリアシンボルを出力するものである。ここで、キャリア変調部111は、A階層のデータaを変調して変調信号Saを出力する。一方、キャリア変調部112は、B階層のデータbを変調して変調信号Sbを出力する。一般に、固定受信に用いられるB階層のデータの変調方式は、A階層よりも変調多値数が大きく、データ伝送量の多い変調方式が想定される。
【0023】
振幅調整部121は、キャリア変調部111からの変調信号Saの電力を、予め設定された電力増減率Aaに応じて調整するものである。すなわち、振幅調整部121の出力は、Aa・Saになる。振幅調整部122は、キャリア変調部112からの変調信号Sbの電力を、予め設定された電力増減率Abに応じて調整するものである。すなわち、振幅調整部121の出力は、Ab・Sbになる。帯域内の送信電力を一定に維持するという条件が課せられている場合には、A階層の電力を増幅して増やすときには、B階層の電力は減衰させる必要が生じる。その場合、振幅調整部122の電力増減率Abは、1より小さくなる。すなわち、電力調整は、電力増幅および電力減衰を含む概念である。
【0024】
振幅調整部123は、パイロット信号の電力の振幅を調整するものである。このパイロット信号は既知の信号Sspであり、時間軸方向および周波数軸方向に一定の間隔で挿入されている。振幅調整部123は、パイロット信号が配置されている階層のデータシンボルに合わせて電力を調整する。この振幅調整部123によって調整されたパイロット信号(すなわち、Aa・SspまたはAb・Ssp)は、フレーム化部150に供給される。
【0025】
階層合成部130は、振幅調整部121からのA階層の変調データと、振幅調整部122からのB階層の変調データとを階層合成するものである。この階層合成部130によって合成された信号は、フレーム化部150に供給される。
【0026】
フレーム化部150は、階層合成部130からのA階層およびB階層のデータ信号と、振幅調整部123からのパイロット信号等を、所定のキャリアおよびシンボル位置に配置することにより、OFDMフレームを生成するものである。このフレーム化部150により生成されたOFDMフレームは、IFFT部170に供給される。
【0027】
IFFT部170は、フレーム化部150からのOFDMフレーム化した変調信号に対して逆高速フーリエ変換処理(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)を行って、周波数領域の信号から時間領域の信号に変換するものである。このIFFT部170によって時間領域の信号に変換された変調信号は、送信部180に供給される。なお、IFFT部170は、特許請求の範囲に記載の逆高速フーリエ変換部の一例である。
【0028】
送信部180は、IFFT部170からの変調信号に対してガードインターバルを付加し、直交変調を行った後、無線周波数信号に周波数変換して、電力増幅を行って、送信信号をアンテナ190から出力するものである。
【0029】
[受信機]
図3は、本技術の第1の実施の形態における受信機300の構成例を示す図である。
【0030】
受信機300は、アンテナ311と、バンドパスフィルタ313と、受信部315と、FFT部320と、TMCC抽出部331と、TMCC復調部332と、SP抽出部333と、伝送路推定部341と、等化部345と、デフレーム化部360と、階層分割部370と、振幅正規化部381および382と、キャリア復調部391および392とを備える。
【0031】
アンテナ311によって受信された受信信号は、バンドパスフィルタ313を介して受信部315に入力される。バンドパスフィルタ313は、受信信号の通過帯域を制限するフィルタである。受信部315は、無線周波数の受信信号を中間周波数信号に周波数変換して、直交復調を行った後、ガードインターバル除去等の信号処理を行うものである。
【0032】
FFT部320は、受信部315で処理された信号について高速フーリエ変換処理(FFT:Fast Fourier Transform)を行って、時間領域の信号を周波数領域の信号yに変換するものである。このFFT部320によって変換された周波数領域の信号yは、TMCC抽出部331、SP抽出部333および等化部345に出力される。FFT部320から出力される信号yは、A階層の信号の場合は
y=H・Aa・Sa
であり、B階層の信号の場合は
y=H・Ab・Sb
である。なお、FFT部320は、特許請求の範囲に記載の高速フーリエ変換部の一例である。
【0033】
TMCC抽出部331は、FFT部320からの周波数領域の信号から、伝送制御(TMCC:Transmission and Multiplexing Configulation Control)信号を抽出するものである。このTMCC信号は、受信信号の復調に必要な、変調波の伝送制御に関する信号である。具体的には、このTMCC信号は、信号が属する階層や、送信機100の振幅調整部121および122における電力増減率AaおよびAb、放送波の帯域などの情報を含む。
【0034】
TMCC復調部332は、TMCC抽出部331によって抽出されたTMCC信号を復調するものである。このTMCC復調部332によるTMCC信号の復調によって、受信信号が属する階層や、電力増減率、放送波の帯域などのTMCC信号に含まれる情報を特定することができるようになる。なお、TMCC復調部332は、特許請求の範囲に記載の伝送制御信号取得部の一例である。
【0035】
SP抽出部333は、FFT部320からの周波数領域の信号から、スキャッタードパイロット(SP:Scattered Pilot)信号を抽出するものである。このSP信号は、伝送路推定のために時間軸方向および周波数軸方向に一定の間隔で挿入されたパイロット信号である。このSP抽出部333によって抽出されたSP信号は、伝送路推定部341に供給される。なお、SP抽出部333は、特許請求の範囲に記載のパイロット信号抽出部の一例である。
【0036】
伝送路推定部341は、TMCC復調部332によって特定された階層について、SP抽出部333によって抽出されたSP信号を時間軸方向および周波数軸方向に補間して伝送路を推定するものである。
【0037】
図4は、本技術の実施の形態における伝送路推定部341による伝送路推定の態様例を示す図である。伝送路推定部341は、同図におけるaに示すように、SP抽出部333によって抽出されたSP信号30の伝送路を求める。このとき、TMCC復調部332によって特定された階層を参照して、SP信号30が属する階層に応じてSP信号30を除算する。すなわち、A階層であれば、SP信号30をAa・Sspで除算する。一方、B階層であれば、SP信号30をAb・Sspで除算する。なお、Sspは、振幅調整部123によって振幅調整される前のSP信号である。
【0038】
そして、同図におけるbに示すように、時間軸方向に伝送路の補間を行ってデータ信号40の伝送路を求める。そして、同図におけるcに示すように、周波数軸方向に伝送路の補間を行ってデータ信号50の伝送路を求める。このように、階層毎にSP信号を補間することにより伝送路が推定され、チャネル係数Hが生成される。この生成されたチャネル係数Hは、等化部345に供給される。
【0039】
等化部345は、FFT部320からの信号yと伝送路推定部341からのチャネル係数Hとに基づいて、等化処理を行うものである。すなわち、各信号yをそれぞれのチャンネル係数Hで補正(y/H)して、その補正されたOFDMフレームを算出する。この等化部345の出力はデフレーム化部360に供給される。すなわち、A階層の信号についてはAa・Saが供給され、B階層の信号についてはAb・Sbが供給される。
【0040】
デフレーム化部360は、等化部345からのOFDMフレームの信号から、必要なデータ信号を抽出するものである。このデフレーム化部360によって抽出されたデータ信号は、階層分割部370に供給される。
【0041】
階層分割部370は、デフレーム化部360からのデータ信号について、階層毎のデータ信号に分割するものである。分割されたデータ信号は、それぞれ対応する階層の振幅正規化部381および382に供給される。すなわち、振幅正規化部381にはAa・Saが供給され、振幅正規化部382にはAb・Sbが供給される。なお、階層分割部370は、特許請求の範囲に記載の階層信号取得部の一例である。
【0042】
振幅正規化部381および382は、階層分割部370によって分割されたデータ信号の振幅を、TMCC信号に含まれる電力増減率に応じて正規化するものである。すなわち、振幅正規化部381は、階層分割部370からの信号Aa・Saを電力増減率Aaで除算してデータ信号Saを出力する。また、振幅正規化部382は、階層分割部370からの信号Ab・Sbを電力増減率Abで除算してデータ信号Sbを出力する。
【0043】
キャリア復調部391および392は、振幅正規化部381および382によって振幅が正規化されたデータ信号を復調するものである。すなわち、キャリア復調部391は、振幅正規化部381からのデータ信号Saを復調してデータaを出力する。また、キャリア復調部392は、振幅正規化部382からのデータ信号Sbを復調してデータbを出力する。
【0044】
[振幅正規化]
図5は、本技術の実施の形態における振幅正規化の必要性を示す図である。
【0045】
この例では、変調方式として16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)を採用した場合の例を示している。この16QAMは、4ビット信号により16通りの値を伝送する直角位相振幅変調方式である。
【0046】
データ信号Saは、本来、位置10として復調されることが期待されるものとする。このとき、この階層の信号は送信機100において電力増減率Aaにより電力増幅されていたとすると、位置20の値となってしまい、受信機300において位置10以外の位置として受信されるおそれが生じる。
【0047】
そこで、この実施の形態では、振幅正規化部381および382によって電力増減率に応じて振幅を正規化することにより、送信機100における電力調整の影響を取り除いて、誤り率を低下させる。
【0048】
[動作]
図6は、本技術の第1の実施の形態における受信機300の全体の処理手順例を示す流れ図である。
【0049】
アンテナ311によって受信された受信信号が、バンドパスフィルタ313を介して受信部315に入力される(ステップS901)。受信部315は、信号処理を施した信号をFFT部320に供給する。
【0050】
FFT部320が、受信部315で処理された信号について高速フーリエ変換処理を行う(ステップS902)。
【0051】
そして、TMCC復調部332によって特定された階層について、伝送路推定部341が、SP抽出部333によって抽出されたSP信号を時間軸方向および周波数軸方向に補間して伝送路を推定する(ステップS903)。
【0052】
そして、等化部345によって等化処理が行われたOFDMフレームの信号から、必要なデータ信号がデフレーム化部360によって抽出され、階層分割部370によって階層毎のデータ信号に分割される(ステップS904)。
【0053】
このようにして取得された階層毎のデータ信号について、振幅正規化部381および382により振幅正規化が行われ(ステップS905)、キャリア復調部391および392によってデータ信号が復調される(ステップS906)。
【0054】
図7は、本技術の第1の実施の形態における伝送路推定処理(ステップS903)の処理手順例を示す流れ図である。
【0055】
入力されたSP信号がA階層のSP信号であれば(ステップS911:Yes)、入力されたSP信号はH・Aa・Sspであるため、伝送路推定部341は入力されたSP信号をAa・Sspで除算する(ステップS912)。一方、入力されたSP信号がB階層のSP信号であれば(ステップS911:No)、入力されたSP信号はH・Ab・Sspであるため、伝送路推定部341は入力されたSP信号をAb・Sspで除算する(ステップS913)。
【0056】
そして、伝送路推定部341は除算後のSP信号について時間軸方向に補間を行い(ステップS914)、周波数軸方向に補間を行う(ステップS915)。これにより、伝送路が推定され、チャネル係数Hが生成される。
【0057】
図8は、本技術の第1の実施の形態における振幅正規化処理(ステップS905)の処理手順例を示す流れ図である。
【0058】
階層分割部370に入力されたデータがA階層のものであれば(ステップS921:Yes)、階層分割部370は入力されたデータを振幅正規化部381(図中では「振幅正規化部a」と表記)に出力する(ステップS922)。振幅正規化部381は入力されたデータをAaで除算して、キャリア復調部391(図中では「キャリア復調部a」と表記)に出力する(ステップS923)。
【0059】
一方、階層分割部370に入力されたデータがB階層のものであれば(ステップS921:No)、階層分割部370は入力されたデータを振幅正規化部382(図中では「振幅正規化部b」と表記)に出力する(ステップS924)。振幅正規化部382は入力されたデータをAbで除算して、キャリア復調部392(図中では「キャリア復調部b」と表記)に出力する(ステップS925)。
【0060】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、送信機100において振幅調整された信号について、受信機300の振幅正規化部381および382によって階層毎に振幅を正規化することにより、受信したデータ信号を正しく復調することができる。
【0061】
なお、この実施の形態においては、A階層およびB階層の2階層を例として説明したが、3階層以上であっても同様に適用することができる。以下の実施の形態についても同様である。
【0062】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、全ての階層の信号を受信することを想定していたが、特定の階層のみを受信する用途も考えられる。この第2の実施の形態では、受信階層を指定することにより、回路規模や消費電力の低減を図る。なお、通信システムの全体構成および送信機100の構成については、上述の第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
[受信機]
図9は、本技術の第2の実施の形態における受信機300の構成例を示す図である。
【0064】
この第2の実施の形態における受信機300は、上述の第1の実施の形態に加えて、受信階層指定部355をさらに備える。また、伝送路推定部342、等化部346、階層分割部371、および、キャリア復調部393については、上述の第1の実施の形態のものとは異なる機能を備える。また、階層毎の振幅正規化部381および382については、設ける必要がない。これら以外については、上述の第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
受信階層指定部355は、受信機300の操作者などの指示により、受信対象となる階層を指定するものである。指定された階層は、伝送路推定部342、階層分割部371、および、キャリア復調部393に供給される。
【0066】
伝送路推定部342は、上述の第1の実施の形態と同様に、SP信号を時間軸方向および周波数軸方向に補間することにより伝送路を推定する。ただし、この第2の実施の形態では、受信対象となる階層が指定されていることから、それを前提とした動作を行う。上述の第1の実施の形態ではSP信号が属する階層に応じて、A階層であればSP信号をAa・Sspで除算し、B階層であればSP信号をAb・Sspで除算していた。この第2の実施の形態では、受信対象として指定された階層に応じて、除算後のSP信号に対して乗算を行った上で補間を行う。すなわち、受信指定された階層がA階層であれば除算後のSP信号にAaを乗算し、B階層であれば除算後のSP信号にAbを乗算する。その結果、伝送路推定部342の出力xは、受信指定された階層がA階層の場合は
x=H・Aa
となり、受信指定された階層がB階層の場合は
x=H・Ab
となる。
【0067】
等化部346は、上述の第1の実施の形態と同様に、等化処理を行うものである。ただし、この第2の実施の形態では、FFT部320からの信号yと伝送路推定部342からの出力xとに基づいて、等化処理を行う。すなわち、信号yを出力xで補正(y/x)して、その補正されたOFDMフレームを算出する。このとき、A階層の信号であれば信号yはH・Aa・Saであり、B階層の信号であれば信号yはH・Ab・Sbである。受信指定された階層と入力された信号の階層とが一致しているものと仮定すれば、等化部346の出力としては、A階層の信号に対してはSaが、B階層の信号に対してはSbがそれぞれ得られる。
【0068】
なお、この第2の実施の形態における等化部346は、伝送路の影響であるチャネル係数Hを除算により取り除く機能と、受信指定された階層の電力増減率の影響であるAaもしくはAb(図中ではAと表記)を除算により取り除く機能の2つの機能を備えていると考えることができる。すなわち、等化部346は、上述の第1の実施の形態の等化部345と比較すると、等化部345とその出力部に振幅正規化部383を設けたものと等価になる。等化部345は伝送路の影響であるチャネル係数Hを除算により取り除く役割を有し、振幅正規化部383は等化部345の出力(図中ではy'と表記)に含まれる電力増減率の影響であるAaもしくはAbを除算により取り除く 役割を有する。したがって、振幅正規化部383の機能は、等化部346に含まれることになる。
【0069】
階層分割部371は、上述の第1の実施の形態と同様に、デフレーム化部360からのデータ信号について、階層毎のデータ信号に分割するものである。ただし、この第2の実施の形態では、受信対象となる階層が指定されていることから、指定された階層のデータ信号のみを分割して後段に供給する。なお、階層分割部371は、特許請求の範囲に記載の階層信号取得部の一例である。
【0070】
キャリア復調部393は、上述の第1の実施の形態と同様に、データ信号を復調するものである。ただし、この第2の実施の形態では、受信対象となる階層が指定されていることから、指定された階層のデータ信号のみを復調する。したがって、上述の第1の実施の形態と異なり、1つのキャリア復調部393で足りる。すなわち、キャリア復調部393は、受信指定された階層がA階層であればデータ信号Saからデータaを復調し、受信指定された階層がB階層であればデータ信号Sbからデータbを復調する。
【0071】
[動作]
図10は、本技術の第2の実施の形態における伝送路推定処理の処理手順例を示す流れ図である。
【0072】
入力されたSP信号がA階層のSP信号であれば(ステップS931:Yes)、入力されたSP信号はH・Aa・Sspであるため、伝送路推定部342は入力されたSP信号をAa・Sspで除算する(ステップS932)。一方、入力されたSP信号がB階層のSP信号であれば(ステップS931:No)、入力されたSP信号はH・Ab・Sspであるため、伝送路推定部342は入力されたSP信号をAb・Sspで除算する(ステップS933)。
【0073】
また、受信階層指定部355によって受信指定された階層がA階層であれば(ステップS934:Yes)、伝送路推定部342はSP信号にさらにAaを乗算する(ステップS935)。一方、受信指定された階層がB階層であれば(ステップS934:No)、伝送路推定部342はSP信号にさらにAbを乗算する(ステップS936)。
【0074】
そして、伝送路推定部342は得られたSP信号について時間軸方向に補間を行い(ステップS937)、周波数軸方向に補間を行う(ステップS938)。これにより、伝送路が推定され、出力xが生成される。すなわち、伝送路推定部342は、受信指定された階層がA階層であれば出力xとしてH・Aaを出力し、受信指定された階層がB階層であれば出力xとしてH・Abを出力する。
【0075】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、受信階層指定部355によって受信対象となる階層を指定することにより、受信機300の回路規模や消費電力を低減することができる。
【0076】
<3.第3の実施の形態>
上述の第2の実施の形態では、受信対象となる階層を受信機300の操作者などが指定することを想定していたが、受信信号の受信環境に基づいて受信対象となる階層を決定してもよい。この第3の実施の形態では、受信環境を測る指標として、変調誤差比(MER:Modulation Error Ratio)を用いた例について説明する。なお、通信システムの全体構成および送信機100の構成については、上述の第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0077】
[受信機]
図11は、本技術の第3の実施の形態における受信機300の構成例を示す図である。
【0078】
この第3の実施の形態における受信機300は、上述の第2の実施の形態に加えて、MER算出部351を備える。これら以外については、上述の第2の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
MER算出部351は、受信環境の指標として受信信号から変調誤差比(MER)を算出するものである。受信階層指定部356は、MERを指標として受信環境を判断して、受信対象となる階層を決定する。なお、MER算出部351は、特許請求の範囲に記載の受信環境判定部の一例である。
【0080】
ここで、低レートで受信所要C/N比(Carrier to Noise Ratio)が低い信号がA階層により送信され、高レートで受信所要C/N比が高い信号がB階層により送信されることを想定する。このとき、受信階層指定部356は、MERを指標として受信環境が良いと判断した場合にはB階層を指定し、受信環境が悪いと判断した場合にはA階層を指定する。これにより、操作者が入力することなく、受信環境に応じて受信対象となる階層を指定することができる。
【0081】
[動作]
図12は、本技術の第3の実施の形態における受信階層指定処理の処理手順例を示す流れ図である。
【0082】
MER算出部351は、受信信号からMERを算出する。受信階層指定部356は、MERを指標として受信環境を判断する。受信環境が良いと判断した場合には(ステップS941:Yes)、受信対象となる階層としてB階層を指定する(ステップS942)。一方、受信環境が悪いと判断した場合には(ステップS941:No)、受信対象となる階層としてA階層を指定する(ステップS943)。
【0083】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、MER算出部351によって算出されたMERを指標として受信環境を判断することにより、受信環境に応じて受信対象となる階層を指定することができる。
【0084】
なお、この第3の実施の形態では、受信環境を測る指標としてMERを用いた例について説明したが、受信環境の品質が判別できればMER以外の指標を用いてもよい。例えば、誤り訂正部の誤り訂正数、マルチパスの数、伝送路の変動具合などを指標としてもよい。
【0085】
<4.変形例>
受信機にとって、受信しようとしている信号の帯域外の信号は妨害波となる。そのため、上述の第1乃至第3の実施の形態では、バンドパスフィルタ313を用いて所定の帯域の信号を受信していた。ただし、一般に、受信信号の占有帯域は復調するまで分からないことがあり、帯域幅を固定することは難しい。そこで、この変形例では、バンドパスフィルタ313の帯域を受信信号の占有帯域に合わせるよう適切に設定を行う。なお、通信システムの全体構成および送信機100の構成については、上述の第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
[受信機]
図13は、本技術の実施の形態の変形例における受信機300の構成例を示す図である。
【0087】
この変形例における受信機300は、上述の第1の実施の形態に加えて、バンドパスフィルタ制御部312を備える。これら以外については、上述の第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
バンドパスフィルタ制御部312は、バンドパスフィルタ313の信号通過帯域を可変制御するものである。このバンドパスフィルタ制御部312は、受信信号の占有帯域幅が狭い場合には、必要以上の帯域の信号を受信しないようにバンドパスフィルタ313の帯域幅を狭く設定する。一方、受信信号の占有帯域幅が広い場合には、受信信号全体を受信できるようにバンドパスフィルタ313の帯域幅を広く設定する。
【0089】
[帯域幅制御]
図14は、本技術の実施の形態の変形例におけるバンドパスフィルタ制御部312の帯域幅制御の態様例を示す図である。
【0090】
ここでは、放送波60がとり得る最も狭い帯域幅内に上述のTMCC信号70が挿入されていることを想定する。このTMCC信号70には復調に必要な情報が含まれている。なお、複数のTMCC信号70が示されているが、それぞれの内容は同じものである。したがって、これら複数のTMCC信号70を用いて互いに補完することにより、ノイズによって損なわれている部分を互いに補って、より確実な受信を行うことが可能である。
【0091】
同図におけるaに示すように、TMCC信号を復調する前は、放送波60の占有帯域によらず、バンドパスフィルタ313の帯域はTMCC信号を受信できる程度に狭くてよい。データの復調にはTMCC信号の情報が必要なため、この段階ではTMCC信号以外の帯域がバンドパスフィルタ313によって除外されても支障はない。
【0092】
TMCC信号を復調した後は、放送波60の占有帯域が判明し、それに応じた受信を行う。そのため、同図におけるbに示すように、放送波60の占有帯域に合わせて、バンドパスフィルタ313の帯域を設定する。これにより、バンドパスフィルタ313の帯域を放送波60の占有帯域に合わせるよう適切に設定を行うことができる。
【0093】
[動作]
図15は、本技術の実施の形態の変形例におけるバンドパスフィルタ制御処理の処理手順例を示す流れ図である。
【0094】
受信を開始した時点では、TMCC信号を復調する前の状態であり、バンドパスフィルタ制御部312は、放送波の最も狭い帯域に合うようにバンドパスフィルタ313の帯域を制御する(ステップS951)。
【0095】
その後、TMCC信号の復調が完了すると(ステップS952:Yes)、バンドパスフィルタ制御部312は、TMCC信号の復調結果から放送波の帯域が特定できるため、その帯域に合うようにバンドパスフィルタ313の帯域を制御する(ステップS953)。
【0096】
このように、本技術の実施の形態の変形例によれば、TMCC信号の復調結果に応じてバンドパスフィルタ313の帯域を制御することにより、放送波の占有帯域に合わせるよう適切に設定を行うことができる。すなわち、TMCC信号を復調する際は放送波がどのような帯域であってもノイズが最小になるようなバンドパスフィルタの帯域になるため、TMCC信号の復調性能の向上と、それによるTMCC復調の高速化が期待できる。また、データの復調にはTMCC信号の情報が必要になるため、TMCC信号の復調前は放送波の一部がバンドパスフィルタで落とされていたとしても支障は出ない。一方、TMCC復調後はバンドパスフィルタの帯域が放送波に合った帯域に変更されるため、データの復調が可能になる。
【0097】
なお、この変形例では第1の実施の形態に対してバンドパスフィルタ制御部312を加えた構成について説明したが、同様に第2および第3の実施の形態に対してバンドパスフィルタ制御部312を加えた構成であっても適用することが可能である。
【0098】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0099】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0100】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0101】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)受信信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する高速フーリエ変換部と、
前記高速フーリエ変換信号の階層毎の信号の振幅を正規化する振幅正規化部と、
前記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成するキャリア復調部と
を具備する受信装置。
(2)前記振幅正規化部は、前記階層に応じた電力増減率に基づいて前記正規化を行う
前記(1)に記載の受信装置。
(3)前記高速フーリエ変換信号から伝送制御信号を取得する伝送制御信号取得部をさらに具備し、
前記振幅正規化部は、前記伝送制御信号から前記階層に応じた電力増減率を取得する
前記(2)に記載の受信装置。
(4)前記高速フーリエ変換信号から前記階層毎の信号を取得する階層信号取得部をさらに具備し、
前記振幅正規化部は、前記階層毎の信号の振幅を前記階層に応じた電力増減率によって除算することにより前記正規化を行う
前記(3)に記載の受信装置。
(5)前記高速フーリエ変換信号からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部と、
前記パイロット信号を前記階層に応じて補正して時間軸方向および周波数軸方向に補間することにより伝送路を推定して伝送路係数を生成する伝送路推定部と、
前記伝送路係数に基づいて前記高速フーリエ変換信号を補正する等化部と
をさらに具備する前記(3)に記載の受信装置。
(6)受信すべき階層を指定する受信階層指定部をさらに具備し、
前記伝送路推定部は、前記指定された階層に応じて前記伝送路係数と前記指定された階層の電力増減率との積を生成し、
前記等化部は、前記伝送路係数に基づいて前記高速フーリエ変換信号を補正し、
前記振幅正規化部は、前記指定された階層の電力増減率に基づいて前記等化部の出力の振幅を正規化する
前記(5)に記載の受信装置。
(7)前記受信信号の受信環境に基づいて前記受信すべき階層を判定する受信環境判定部をさらに具備し、
前記受信階層指定部は、前記受信環境判定部の判定結果に従って前記受信すべき階層を指定する
前記(6)に記載の受信装置。
(8)前記受信信号の受信帯域を制限するバンドパスフィルタと、
前記伝送制御信号に基づいてデータ復調に必要な帯域を判断して前記バンドパスフィルタにおける前記受信信号の受信帯域を制御するバンドパスフィルタ制御部と
をさらに具備する前記(3)から(7)のいずれかに記載の受信装置。
(9)伝送路を介して階層毎の信号を伝送する送信装置および受信装置を具備する通信システムであって、
前記送信装置は、
前記階層毎のデータをキャリア変調するキャリア変調部と、
前記キャリア変調された前記階層毎の信号の振幅を前記階層毎に増減する振幅調整部と、
前記振幅調整された前記階層毎の信号を合成する階層合成部と、
前記合成された信号を逆高速フーリエ変換処理して逆高速フーリエ変換信号を生成する逆高速フーリエ変換部と、
前記逆高速フーリエ変換信号を送信する送信部とを備え、
前記受信装置は、
前記送信装置から送信された信号を受信する受信部と、
前記送信装置から受信した前記信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する高速フーリエ変換部と、
前記高速フーリエ変換信号の階層毎の信号の振幅を正規化する振幅正規化部と、
前記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成するキャリア復調部とを備える
通信システム。
(10)高速フーリエ変換部が、受信信号を高速フーリエ変換処理して高速フーリエ変換信号を生成する手順と、
振幅正規化部が、前記高速フーリエ変換信号の階層毎の信号の振幅を正規化する手順と、
キャリア復調部が、前記正規化された信号をキャリア復調してデータを生成する手順と
を具備する受信方法。
【符号の説明】
【0102】
100 送信機
111、112 キャリア変調部
121~123 振幅調整部
130 階層合成部
150 フレーム化部
170 IFFT部
180 送信部
190、311 アンテナ
200 伝送路
300 受信機
312 バンドパスフィルタ制御部
313 バンドパスフィルタ
315 受信部
320 FFT部
331 TMCC抽出部
332 TMCC復調部
333 SP抽出部
341、342 伝送路推定部
345、346 等化部
351 MER算出部
355、356 受信階層指定部
360 デフレーム化部
370、371 階層分割部
381~383 振幅正規化部
391~393 キャリア復調部