(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】バッテリの動作異常を検出するための方法および前記方法を実施するシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20240208BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01N29/07
H01M10/48 Z
(21)【出願番号】P 2020559503
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019060301
(87)【国際公開番号】W WO2019206867
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-13
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギレ,ニコラ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-049401(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015210266(DE,A1)
【文献】特開2005-291832(JP,A)
【文献】特開2017-033825(JP,A)
【文献】特表2012-533147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
H01M 10/00-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ管理システム(BAT)を使用してバッテリ(BAT)の動作における異常を検出するための方法(100)であって、前記システムは、バッテリ(BAT)の壁に付着されるように構成される音響放射体(EA)と、バッテリ(BAT)の壁に付着されるように構成される音響受信機(RA)であって、前記音響受信機は、方法の実施中にバッテリの壁に付着されている、音響受信機(RA)と、音響放射体(EA)および音響受信機(RA)に接続されている計算手段(MC)とを備え、マッピング(CG)が、正常動作領域(ZN)と呼ばれる第1の動作領域、リスクがある動作領域(ZR)と呼ばれる第2の動作領域、および危険動作領域(ZD)と呼ばれる第3の動作領域を規定し、マッピングが、正常動作領域(ZN)に位置する参照点を含み、各領域が、速度制限と関連付けられ、速度は、それが参照点(REF)から離れる方へ動いているときには正であり、それが参照点(REF)に近づいているときには負であり、前記方法(100)は、少なくとも第1の測定サイクルを含み、各測定サイクルが、測定期間と呼ばれる期間によって、先行する測定サイクルから分離され、各測定サイクルは、
計算手段(MC)からの命令で音響放射体(EA)によって音響信号を放射するステップ(101)、
音響受信機(RA)によって音響信号を受信するステップ(102)であって、受信した信号が、マッピング(CG)内に測定点を得るように計算手段(MC)に伝送される、受信するステップ(102)、
測定点が位置する動作領域を決定するステップ(103)、
マッピング内の測定点の速度を計算するステップであって、この速度は、測定期間で割った、先行する測定サイクル中に得られた測定点と現在の測定点との間の距離に等しい、計算するステップ、
測定点の速度を、測定点が位置する動作領域と関連付けられた速度制限と比較するステップ、
測定点が、リスクがある動作領域(ZR)または危険動作領域(ZD)に位置するときに、また、測定点の速度が、第2の測定点が位置する動作領域と関連付けられた速度制限よりも大きいときに、異常を検出するステップ(104)のトリガリング
を含む、方法(100)。
【請求項2】
各測定サイクルが、異常が検出されたときに、アラートをトリガするステップ(105)を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
各サイクルが、異常が検出されたか、またはアラートがトリガされたときに、バッテリ(BAT)の動作レジームを修正するステップを含む、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
修正するステップが、既定の時間期間後にバッテリ(BAT)の正常動作レジームを再確立することを可能にしないときに、悪化モードへ切り替えるステップまたはシステムを停止するステップを含み、
正常動作領域は、バッテリが温度、セル電圧、および電流の公称範囲内で動作する領域である、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
測定期間を低減するステップが、アラートをトリガするステップ(104)によってトリガされる、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
各サイクル中に得られる各測定点が、測定点の数が適合しきい値と呼ばれるしきい値に等しく得られるまで記憶され、参照点(REF)の位置が再計算され、次いで測定点が、前記しきい値が達せられたときに消去される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(100)を実施するための手段を備えるバッテリ管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の管理システムに、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(100)のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の前記コンピュータプログラム
を記録した、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、非侵襲診断の技術分野、およびエネルギー(バッテリ、燃料電池)の変換のための電気化学システムの動作における技術分野である。それは、より詳細には、超音波特性評価技術を使用して、こうして特性評価されるバッテリの動作異常を検出し、また任意選択的に、好適な修正を行うことができるように、バッテリの最適動作パラメータを識別する方法に関する。本発明はまた、前記方法を実施するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ管理システムは、可能な限り最も効果的にユーザの要求を満たすために不可欠である。一般的には、管理システムは、バッテリの充電の状態、バッテリの健康の状態、および/またはバッテリの安全状態を考慮する。この様々な情報は、一般的には、バッテリの端子における電気的な量の測定によって得られるが、熱分析技術(温度および/または熱流量の測定)または非破壊制御(例えば、超音波特性評価)によって供給されるような外部データによっても得られる。これらのパラメータが決定されると、管理システムは、バッテリの性能を最適化するようにバッテリの動作を調節する。
【0003】
しかしながら、動作中のバッテリの調査のために最近提案された超音波音響信号による分析技術(Goldら、2017;Sood、Pecht、およびOsterman、2016;Steingartら、2016、DE102015210266A1)は、特定の欠点を有する。第一に、これらは、バッテリの特定のパラメータのみを関心事とし、測定される音響信号に含まれる情報のすべてを考慮しない。加えて、使用される音響信号は、一般的には、バッテリ内の定常状態の確立を可能にせず、したがって前記信号を分析するために使用され得る数学的ツールを制限する短い持続時間(0.1ms未満)のパルスの形態を有する。
【0004】
また、使用される技術は、各バッテリの特殊性を考慮せず、さらにはバッテリ寿命の間のバッテリの特性の変化を考慮することを可能にしない。実際、バッテリの動作の測定のために使用される主な特性(最小および最大セル電圧、最大電流、保管および動作温度範囲などの値)は、一般的には、製造業者によって提供される。大抵の場合、それらは、特定の電気特性に関する制限に対する一般的ガイドラインの形態でのみ存在するが、経年劣化中の、または温度などの他の動作パラメータに応じた、これらの制限における変化を考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102015210266号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、異なる動作条件に置かれたバッテリを使用するための最適パラメータをいつでも決定すること、およびバッテリの動作におけるいかなる異常も検出するようにバッテリ寿命の間のバッテリの変化を考慮することを可能にする方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、調査対象のバッテリによって伝送される音響信号に含まれる複数のパラメータを考慮することを可能にすることによって、本明細書内で上に述べた問題に対する解決策を提供する。これらの信号の分析を使用し、こうして、バッテリが、その性能およびその耐久性を保証するのに最適な条件で使用されているかどうか、または逆に、使用の条件が、バッテリの正しい動作に害を及ぼし得るかどうかを決定することが可能である。バッテリが、周囲の所有物および人間の安全に対してリスクを有するというリスクを負っているかどうかを決定することも可能である。これが、バッテリのより良好な診断を可能にし、したがって、動作パラメータをより効率的に修正すること、およびバッテリを最良の動作条件に保つことを可能にする。
【0008】
本発明の態様は、バッテリ管理システムを使用してバッテリの動作における異常を検出するための方法に関し、前記システムは、バッテリの壁に付着されるように構成される音響放射体であって、前記音響放射体が、方法の実施中にバッテリの壁に付着されている、音響放射体と、バッテリの壁に付着されるように構成される音響受信機であって、前記音響受信機が、方法の実施中にバッテリの壁に付着されている、音響受信機と、音響受信機に接続される計算手段とを備え、マッピングが、正常動作領域と呼ばれる第1の動作領域、リスクがある動作領域と呼ばれる第2の動作領域、および危険動作領域と呼ばれる第3の動作領域を規定する。本発明の第1の態様による方法は、少なくとも1つの第1の測定サイクル、好ましくは複数の測定サイクルを含み、各測定サイクルは、測定期間と呼ばれる期間によって、先行する測定サイクルから分離され、各測定サイクルは、
- 計算手段からの命令で音響放射体によって音響信号を放射するステップ;
- 音響受信機によって音響信号を受信するステップであって、受信した信号が、マッピング内に測定点を得るように計算手段に伝送される、受信するステップ;
- 測定点が位置する動作領域を決定するステップ;
- 測定点が、リスクがある動作領域または危険動作領域に位置するとき、異常を検出するステップ
を含む。
【0009】
「バッテリ」とは、電気エネルギーを変換および貯蔵するための任意の電気化学システムを意味する(充電式またはそうでないもの)。したがって、少なくとも1つの測定サイクルを使用して、バッテリの動作レジーム(regime)およびいかなるあり得る異常も識別することが可能になる。さらには、音響信号を放射するステップは、バッテリの応答を生成することを可能にし、このバッテリの応答は次いで、受信するステップ中に受信される。したがって、バッテリによって放射される音響信号を絶えず獲得する必要はなく、それは、この獲得が、放射と同時に、および放射される信号の持続時間に従って規定される持続時間にわたってトリガされるためである。受信した音響信号がバッテリ自体の動作によって単に生成されたときに直面するノイズフィルタリングの問題は防がれる。さらに、放射のステップ中に放射される信号は、正確に規定された特質(2つの放射の間の時間間隔、信号の振幅、その持続時間、信号の周波数分布)を有し、このことが、受信した信号の分析を促進し、経時的な測定値の比較を可能にする。加えて、動作領域を使用することは、先行技術との比較において、方法を実施するために必要とされるメモリを制限することを可能にする。実際、先行技術において、各測定値は、ライブラリの測定値と比較され、このライブラリは、問題となっているライブラリを形成する大量の測定値をメモリ内に保つことを必要とする。本発明の第1の態様による方法においては、動作領域のみが使用され、これは、はるかに少ないメモリしか必要としない。例えば、参照点は、許されており、および正常動作領域とリスクがある動作領域との間の限界およびリスクがある動作領域と危険動作領域との間の限界を規定する、正常との差に対応する距離と同様に、記憶され得る。加えて、先行技術において行われるようなライブラリの他の点との比較を実行するよりも、測定点を、これら3つの領域内のどこに前記測定点が位置するかを識別するために、位置特定する方が速い。充電の状態または健康の状態などの特性を単独で、本発明によって説明されるものなどの領域を規定するために使用することはできないということに留意することが重要である。実際、同じ充電の状態が、例えば、温度、バッテリを通過する電力、またはセル電圧に応じて、「正常」領域、「危険」領域、または「リスクがある」領域での動作に対応し得る。そのような状況は、特に、バッテリが過負荷、過熱、または短絡状態にあるいわゆる「乱用」試験の間に発生する。
【0010】
先行する段落においてまさに述べた特性に加えて、本発明の第1の態様による方法は、個々に考慮されて、またはすべての技術的に可能な組合せで、以下のうちの1つまたは複数の追加特性を有し得る。
【0011】
有利には、パルスの持続時間は、0.2msと1msの間である。信号のそのような持続時間は、信号に重畳され得る外部ノイズの密度を減少させること、したがって短い持続時間の信号をマスクすることを可能にする。それはまた、バッテリ内の定常状態を確立することを可能にし、これは、音響信号がフーリエ変換などの数学的ツールを使用して分析されるときに好ましい。この持続時間はまた、伝送された信号のエネルギーが、伝送された信号が音響受信機において容易に検出されるほどに十分に高いことを依然として保証しながら、音響放射体によって放射される信号の振幅を減少させることを可能にする。最後に、この持続時間は、非常に近い周波数(ビート周波数とも呼ばれる)を有する信号の重畳に起因する信号の周期的変調の出現を伴い、材料内および界面における音響波の輸送の間の波の特定の部分伝送現象および反射の結果を明らかにすることを可能にする。
【0012】
有利には、マッピングは、正常動作領域に位置する参照点を含み、各領域が、速度制限と関連付けられ、速度は、それが参照点から離れる方へ動いているときには正であり、それが参照点に近づいているときには負であり、各測定サイクルが:
- マッピング内の測定点の速度を計算するステップであって、この速度は、測定期間で割った、先行する測定サイクル中に得られた測定点と現在の測定点(すなわち、現在のサイクルにおいて得られる)との間の距離に等しい、計算するステップ;
- 測定点の速度を、測定点が位置する領域と関連付けられた速度制限と比較するステップ;
- 測定点の速度が、第2の測定点が位置する領域と関連付けられた速度制限よりも大きいときに、異常を検出するステップのトリガリング
を含む。
【0013】
したがって、最後の測定点の速度における素早すぎると見なされる変化を通じて、バッテリの動作条件の悪化を予期することが可能である。加えて、修正処置は、バッテリが危険またはリスクがある動作領域に入る前にさえセットアップされ得、このことは、バッテリの寿命の持続時間を延長することに貢献する。
【0014】
有利には、各測定サイクルは、異常が検出されたときに、アラートをトリガするステップを含む。したがって、ユーザは、バッテリの異常動作の場合には通知される。
【0015】
有利には、各サイクルは、異常が検出されたときに、またはアラートがトリガされたとき、バッテリの動作レジームを修正するステップを含む。したがって、ユーザに機能不良を通知することに加えて、管理システムは、修正処置を実施する。
【0016】
有利には、修正するステップが、既定の時間期間後にバッテリの正常動作レジームを再確立することを可能にしないときに、悪化モードへ切り替えるステップまたはシステムを停止するステップ。
【0017】
したがって、実施された修正処置が十分でないとき、システムは、バッテリを悪化モードにすること、またはバッテリを停止することによって、バッテリ損傷が制限されることを確実にする。
【0018】
有利には、測定期間を低減するステップは、アラートをトリガするステップによってトリガされる。
【0019】
したがって、測定期間を低減することによって、本方法は、前記バッテリの動作状態の2つの連続する測定サイクルを分離する時間が低減されるため、バッテリのより良好な追跡を確実にすることを可能にする。
【0020】
有利には、各サイクル中に得られる各測定点は、測定点の数が適合しきい値と呼ばれるしきい値に等しく得られるまで記憶され、参照点の位置が再計算され、次いで測定点が、前記しきい値が達せられたときに消去される。
【0021】
したがって、マッピングは、新規の測定値を考慮し、このことが、システムが前記測定値を使用して自己学習を行うことを可能にする。
【0022】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による方法を実施するための手段を備えるバッテリを管理するためのシステムに関する。
【0023】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様による管理システムに、本発明の第1の態様による方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0024】
本発明の第4の態様は、コンピュータによって読まれ得るサポートに関し、コンピュータ上に、コンピュータプログラムが、本発明の第3の態様に従って記録される。
【0025】
本発明およびその様々な応用は、以下の説明を読むこと、および添付の図面を研究するときに、よりよく理解されるものとする。
【0026】
図面は、情報の目的のために示され、本発明をいかようにも制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第2の態様による管理システムを図式的に示す図である。
【
図2】本発明の第1の態様による方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の第1の態様による方法において使用され得る異なる信号パターンを示す図である。
【
図4】本発明の第1の態様による方法において使用されるバッテリの3つの異なる動作領域に対応する3つの領域が存在するマッピングを示す図である。
【
図5A】充電の状態に応じた、本発明の第1の態様による方法において放射される信号の絶対エネルギーにおける変化の例を示す図である。
【
図5B】バッテリの充電の状態に応じた、本発明の第1の態様による方法において受信される信号の絶対エネルギーにおける変化の例を示す図である。
【
図5C】温度に応じた、NMC/Gタイプ(ニッケル、マンガン、およびコバルトからなる金属酸化物ベースの正極、黒鉛ベースの負極)のリチウムイオンバッテリの端子における推奨最大電圧の変化を示す図である。
【
図6】本発明の第1の態様による方法の実施ありおよびなしでの、バッテリの健康の状態の変化を示す図である。
【
図7A】異なる温度についてのLFP/Gタイプ(リン酸鉄ベースの正極、黒鉛ベースの負極)のリチウムイオンバッテリで実行される複数の充電/放電サイクル中のバッテリの端子における電圧を示す図である。
【
図7B】時間に応じた、異なる温度についてのLFP/Gバッテリに対して測定される飛行時間の変化を示す図である。
【
図7C】温度に応じた、測定される飛行時間の変化を示す図である。
【
図8A】NMC/Gタイプの同じバッテリの2つの異なる熱挙動の異なるパラメータを通じた分析を示す図である。
【
図8B】NMC/Gタイプの同じバッテリの2つの異なる熱挙動の異なるパラメータを通じた分析を示す図である。
【
図8C】NMC/Gタイプの同じバッテリの2つの異なる熱挙動の異なるパラメータを通じた分析を示す図である。
【
図8D】NMC/Gタイプの同じバッテリの2つの異なる熱挙動の異なるパラメータを通じた分析を示す図である。
【
図9A】NMC/Gタイプの同じバッテリの異なる動作領域の決定を示す図である。
【
図9B】NMC/Gタイプの同じバッテリの異なる動作領域の決定を示す図である。
【
図9C】NMC/Gタイプの同じバッテリの異なる動作領域の決定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
別途記載のない限り、異なる図に登場する同じ要素は、固有の参照番号を有する。
【0029】
図1から
図4に示される本発明の第1の態様の第1の実施形態は、バッテリ管理システムBATを使用してバッテリBATの動作における異常を検出するための方法100に関する。以下では、「バッテリ」BATとは、電気エネルギーを変換および貯蔵する任意の電気化学システムを意味する(充電式またはそうでないもの)。好ましくは、バッテリ管理システムBATは、バッテリBATによって送達される電流またはバッテリBATの端子における電圧など、バッテリBATの参照物理量を制御および測定するための手段を備える。加えて、管理システムは、バッテリBATの壁に付着されるように構成される音響受信機RAと(前記音響受信機は、本発明の第1の態様による方法の実施中にバッテリの壁に付着されている)、音響受信機RAに接続される計算手段MCとを備える。音響受信機RAは、好ましくは、圧電性音響受信機RAであり、これは、接着剤または任意の他の付着手段を使用して、バッテリBATの壁に付着される。例えば、音響受信機RAは、PVDF(PolyVinyliDene Fluoride:フッ化ポリビニリデン)ベースを有し得、kHzからMHzの間に含まれる広い共振周波数帯域を一般的に有するデバイスである。代替的に、音響受信機RAは、PZTセラミックベース(チタン酸ジルコン酸鉛)を有し得、10kHzから数百kHzの間に含まれる狭い共振周波数帯域を一般的に有するデバイスである。計算手段MCは、メモリ、ASICボード、またはFPGAと関連付けられたプロセッサの形態を有し得る。計算手段MCの音響受信機RAとの接続は、バス、イーサネット(R)タイプの接続、またはワイヤレス接続、例えばブルートゥース(R)を用いて、なされ得る。
【0030】
管理システムはまた、正常動作領域ZNと呼ばれる第1の動作領域、リスクがある動作領域ZRと呼ばれる第2の動作領域、および危険動作領域ZDと呼ばれる第3の動作領域を規定するマッピングCGを、メモリ内に記憶して、備える。より詳細には、正常動作領域ZNは、バッテリBATの正常動作に対応し、リスクがある動作領域ZRは、バッテリBATのリスクがある動作、すなわち、バッテリBATが、バッテリが既定の持続時間を超えて維持される場合に短期間で不可逆的悪化を被り得るという動作条件、に対応し、危険動作領域ZDは、バッテリBATの即座の不可逆的悪化を結果としてもたらす動作に対応する。このマッピングCGは、信号のライブラリから決定され得、信号のライブラリの各信号が、バッテリBATの所与の動作状態に対応する。例えば、このライブラリは、学習により実行される。このため、バッテリBATは、承認された動作限界(電圧、電流、温度)に対応する異なる動作条件に置かれる。次いで、動作の異なる正常条件において受信される音響信号の特性、より好ましくは、主要特性が、ライブラリに記憶される。有利には、特定のパラメータ(例えば、いくつかの違う温度:公称、最小、最大動作温度における充電の状態に応じた信号の変化)に応じた、信号の特性の変化を記憶することも可能である。ライブラリは、例えば、バッテリBATの製造業者によって供給され得る。信号の特性は、信号の時間的分析(持続時間、絶対エネルギー、信号の強度、信号の上昇速度、飛行時間、最大振幅前の持続時間など)から、および/または周波数分析(最大周波数、平均周波数、周波数重心、パワースペクトル密度など)から生じ得る。
【0031】
実施形態において、3つの動作領域は、本明細書内で上に説明されるようなライブラリから得られる。このため、ライブラリの点すべてのバリセンタが、参照点REFを得るようなやり方で計算される。次いで、各測定点について、前記点を参照点REFから分離する距離が、距離の分布を得るようなやり方で計算される。このとき、2つの限界を規定する2つの距離、したがってこの分布に従う3つの領域を識別することが可能である。例えば、特に有利な実施形態において、ライブラリは、正常動作状態で取られた測定値のみを含む。各関連パラメータについて、測定点の約95%に対応する距離(2σ:正常動作条件下で測定される偏差の標準偏差の2倍)が、中心が参照点REFである球の半径を規定するようなやり方で決定される(この球の次元の数は、マッピングCGが実行される空間の数に等しい)。この球は、次いで、正常動作領域ZNとリスクがある動作領域ZRとの間の限界を規定する。次いで、標準偏差の4倍(4σ)に対応し、正常条件で得られる測定点の99.99%超を統計学的に含む距離が、中心が参照点REFである第2の球の半径を規定するやり方で決定される。次いで、この第2の球は、リスクがある動作領域ZRと危険動作領域ZDとの間の限界を規定する。この実施形態は、正常動作レジームに留まりながら3つの領域を決定することを可能にするという点で特に有利である。実際、この実施形態において、「正常」動作領域とは、バッテリが、製造業者によって「正常」と規定される動作条件で動作している(充電-放電)または休止している領域を意味する。すなわち、それは、一般的には製造業者によって提供されるデータシート内に詳述される、温度、セル電圧、および電流(または電力)の公称範囲を出ない。さらには、各放射後に受信した音響波の物理的特殊性は、「正常」と事前に見なされる較正および動作中に規定される限界以内に含まれる(すなわち、本明細書内で上に提示される2σの限界以内)。同様に、この実施形態において、「リスクがある」動作領域とは、バッテリが、製造業者によって「正常」と規定される動作条件で常に動作している(充電-放電)または休止している領域を意味する。すなわち、それは、一般的には製造業者によって提供されるデータシート内に詳述される、温度、セル電圧、および電流(または電力)の公称範囲を出ない。しかしながらこの場合は、各放射後に受信した音響波の物理的特殊性は、「正常」と見なされる較正および動作中に規定される限界を出る(すなわち、本明細書内で上に提示される4σの限界以内)。さらには、この実施形態において、「危険」動作領域とは、バッテリが、製造業者によって「正常」と規定される動作条件で常に動作している(充電-放電)または休止している領域を意味する。すなわち、それは、一般的には製造業者によって提供されるデータシート内に詳述される、温度、セル電圧、および電流(または電力)の公称範囲を出ない。しかしながらこの場合は、各放射後に受信した音響波の物理的特殊性は、「リスクがある」と事前に見なされる較正および動作中に規定される限界を出る(すなわち、本明細書内で上に提示される4σの限界を超える)。
【0032】
好ましくは、信号の主要特性のみ、すなわち、考慮されるべき最も関連する特性が、マッピングCGを生成するために使用される。しかしながら、特性は、全システムに強く依存し、したがって、マッピングは、前記システムに特有である。より詳細には、ライブラリに供給することが必要とされる情報は、全システムセットアップに、また特に、以下のパラメータ:
- 音響放射体EA(バッテリに対する位置付け、周波数範囲信号の形状、振幅など);
- バッテリBATの特殊性(サイズ、形状、化学的性質、パッケージング);
- 受信した信号を記録するために使用される圧電性素子の特殊性(共振周波数、感度、バッテリとの結合の位置付けおよび品質など)
に強く依存する。
【0033】
本発明の第1の態様による方法100は、少なくとも1つの第1の測定サイクル、好ましくは複数の測定サイクルを含み、各測定サイクルは、測定期間と呼ばれる期間によって、先行する測定サイクル(または後に続く)から分離される。言い換えると、バッテリBATを監視することは、測定サイクルの経時的な連続によって確実にされる。好ましくは、この測定期間は一定である。しかしながら、測定期間は、変化し得、例えば、この期間は、バッテリBATの動作レジームの変化が、バッテリの損傷の恐れを生じる場合には、より頻繁な監視を確実にするようなやり方で低減され得る。
【0034】
このため、各測定サイクルは、音響受信機RAによって音響信号を受信するステップ102であって、受信した信号が、マッピングCG内に測定点を得るように計算手段MCに伝送される、受信するステップ102を含む。この音響信号は、所望の周波数範囲で音響波を生成することができる音響信号(ノイズ)の外部ソースによって作り出され得る。この外部ソースは、例えば、プロセッサ、ファン、またはトランジスタベースのスイッチモード電源であり得る。外部音響信号ソースの使用の場合、少なくとも1つの音響受信機RAを有する必要があるが、少なくとも2つの音響受信機RAを有することが好ましい。実際、いくつかの音響受信機RAでは、分析のために検討されるべき測定値はまた、放射される信号と受信機RAの1つ1つによって受信された信号との間の差に関するパラメータを含み得る。
【0035】
好ましくは、受信される信号の放射は、制御される。このため、実施形態において、管理システムは、バッテリBATの壁に付着されるように構成される音響放射体EAを備え、前記音響放射体は、本発明の第1の態様による方法の実施の間にバッテリの壁に付着され、計算手段MCが、音響放射体EAに接続される。音響放射体EAは、好ましくは、圧電性音響放射体EAであり、これは、接着剤または任意の他の付着手段を使用して、バッテリBATの壁に付着される。例えば、音響放射体EAは、PVDF(PolyVinyliDene Fluoride:フッ化ポリビニリデン)ベースを有し得、kHzからMHzの間に含まれる広い共振周波数帯域を一般的に有するデバイスである。代替的に、音響放射体EAは、PZTセラミックベース(チタン酸ジルコン酸鉛)を有し得、10kHzから数百kHzの間に含まれる狭い共振周波数帯域を一般的に有するデバイスである。好ましくは、音響放射体EAが付着される、および音響受信機RAが付着される壁の反対側である壁。加えて、各測定サイクルは、音響信号を受信するステップ102の前に、計算手段MCからの命令で音響放射体EAによって音響信号を放射するステップ101を含む。既に述べたように、制御された音響信号の放射は、いくつかの利点を有する。第一に、バッテリによって放射された音響信号を絶えず獲得する必要がなく、それは、この獲得が、放射があるときにのみ行われるためである。また、受信した音響信号がバッテリ自体の動作によって単に生成されたときに直面するノイズフィルタリングの問題は回避される。さらには、放射のステップ中に放射される信号は、よく知られている特質を有し、このことが、受信した信号の分析を促進し、経時的な測定点の比較を可能にする。
【0036】
好ましくは、放射される信号は、1kHzと1MHzの間、好ましくは100kHzと200kHzの間に含まれる複数の周波数を含む。したがって、この周波数範囲の部分またはすべてにおいて音響放射体EAを励起することが可能である。信号は、特に、いくつかの連続する周波数成分(例えば、経時的に連続して周波数を増大または減少させるいくつかの正弦波)および/または同時(多周波数励起)を含む。
図3に示されるように、放射される信号のパターンは、正方形パターン、三角形パターン、正弦波パターン、これらのパターンの少なくとも一部分の組合せ、または任意の何らかの形状であり得る。信号の形状、周波数、および強度は、バッテリBATの各タイプの特殊性、音響放射体EAの性質、および/または音響受信機RAの性質を考慮するようなやり方で選択され得る。
【0037】
好ましくは、放射される音響信号の持続時間は、0.2と1msの間に含まれる。この持続時間は、信号に重畳されることができる外部ノイズの密度を減少させること、したがって短い持続時間の信号をマスクすることを可能にする。それはまた、バッテリBAT内の定常状態を確立することを可能にし、これは、音響信号がフーリエ変換などの数学的ツールを使用して分析されるときに好ましい。そのような定常状態は、先行技術の方法において使用されるような短い持続時間(典型的には0.1ms未満)のパルスでは得ることができないことを強調することが有用である。この持続時間はまた、信号のエネルギーが、信号が音響受信機RAにおいて容易に検出され得るように十分に高いことを依然として保証しながら、音響放射体EAによって放射される信号の振幅を減少させることを可能にする。振幅の減少(短い持続時間の音響信号と比較して)は、バッテリBATの応答、音響放射体EAの応答、および/または音響受信機RAの応答の非線形性に結び付けられる問題を減少させることを可能にする。したがって、音響受信機RAによって検出された音響信号は、計算手段MCに送信され、これによって処理されることができるように電気信号へと変換されるということに留意することは興味深い。この変換は、非線形現象が最小まで低減される場合にのみ信頼でき、これは、本発明では、使用される音響信号の持続時間によって可能にされる。加えて、先行技術の方法が時間的データ処理技術だけに限定されるのに対して、音響受信機RAによって受信される信号は、フーリエ変換などの周波数データ処理技術による前記信号の使用のための必要条件である定常状態にあるシステムから得られる。最後に、この持続時間は、非常に近い周波数(ビート周波数とも呼ばれる)を有する信号の重畳に起因する信号の周期的変調の出現を通じて、物体内の音響波の輸送に結び付けられる特定の現象(材料内および界面における音響波の輸送の間の波の特定の部分伝送および反射)の結果を明らかにすることを可能にする。しかしながら、このタイプの信号は、バッテリBATを形成する異なる材料ならびに界面を通じた音響波の輸送と結び付けられた情報が非常に豊富である。
【0038】
各測定サイクルはまた、測定点が位置する動作領域を決定するステップ103を含む。本明細書内で上に説明されるように、計算手段MCは、メモリ内に、3つの領域を含むマッピングCGを有する。測定点が得られると、このマッピングCGのこれら3つの領域のうちのどれにそれが位置するかを決定することが可能である。加えて、各測定サイクルは、測定点が、リスクがある動作領域ZRまたは危険動作領域ZDに位置するとき、異常を検出するステップ104を含む。
【0039】
本発明の第1の態様による方法100の実施中に測定される信号に対するバッテリBATの動作条件の影響を示すため、異なる実験的方法が実行され、
図5から
図8に提示される。
【0040】
図5Aは、3つの連続した充電-放電サイクルC1、C2、C3について時間に応じての信号の強度の変化を示す。第1の充電/放電サイクルC1は、充電が完了するサイクルである一方、第2の充電/放電サイクルC2は、バッテリがその公称容量の110%まで充電されるサイクルである。サイクルC3は、再び、C1と同一の充電-放電サイクルである。各充電/放電サイクルC1、C2、C3について、最大強度の2つのピークが存在し、それらの間には、信号の強度(または信号のエネルギー)が実質的に一定であるプラトーPLが位置する。しかしながら、過負荷の場合のこのプラトーの縦座標が、正常充電の場合の前記プラトーの縦座標とは異なるということが観察され、この差は、
図5A内のΔPにより表される。
図5Bは、これら3つの連続する充電-放電サイクルC1、C2、C3中のバッテリの充電の状態に応じての受信される信号の絶対エネルギーの変化を示す。測定値ライブラリ内では、したがって、第1のプラトーPLと関連付けられた測定値は、バッテリBATの正常充電と関連付けられる一方、第2のプラトーPLと関連付けられた測定値は、過負荷と関連付けられる。次いで、動作領域は、その結果、第1のサイクルC1に対応する測定点および第3のサイクルC3に対応する測定点が、正常動作領域ZN内に位置する一方、第2のサイクル中の過負荷に対応する測定点が、リスクがある動作領域ZR内、さらには危険動作領域ZD内に位置するようなやり方で、プロットされることになる。
【0041】
図5Cは、温度に応じた、リスクがある動作領域ZRに達する前のバッテリBATの端子における最大電圧の変化を示す。リスクがある領域ZRへの移行は、5℃までは4.2V弱で観察され、電圧値は、温度が上昇すると減少する。したがって、25℃では、リスクがある領域ZRへ移行する前の最大電圧は、この場合たったの4.05Vである。それは、45℃の動作温度ではたったの3.97Vとなる。したがって、より良好な耐久性を保証するために、リスクがある領域ZRへの移行の検出を使用してバッテリBATの最大動作電圧を決定し、このバッテリBATの管理を改善することができる。これは、特に、加速経年劣化(accelerated ageing)プロトコルを用いて試験される2つのバッテリBATの健康の状態の変化の例を示す
図6に示される。2つのバッテリBATの健康の状態は、サイクル動作の間に悪化するが、リスクがある領域ZRへの移行の検出を通じた最適化された管理からの恩恵を受けるものは、ほぼ2倍少ない健康の状態における悪化を有する。
【0042】
温度がバッテリの動作レジームに対して有し得る影響の別の例は、異なる温度について実行される複数の充電/放電サイクルを示す
図7Aに与えられる。より詳細には、
図7Aは、一方では時間に応じてのバッテリBATの端子における電圧の変化(黒色曲線)、ならびに時間に応じての前記バッテリBATの温度の変化(グレー曲線)を有する。伝送される音響信号を特性評価する異なるパラメータのうち、いくつかは、バッテリの充電の状態とともに変化しないか、またはほんの少ししか変化しないが、他方で、温度とともにかなり変化する。説明される例(温度の変動の間、LFP/G円筒状バッテリの充電-放電サイクル中に取られた音響信号の測定値)において、これは、受信される信号の持続時間、ストロークの数、または、それほどではないが、信号の平均周波数について言える。これはまた、飛行時間、すなわち、放射された信号の放射をその受信から分離する時間についても言える。
【0043】
図7Bおよび
図7Cは、
図7Bでは、時間に応じての飛行時間(測定点)および温度(黒色曲線)、および
図7Cでは、温度に応じての飛行時間を示す(点は測定値、および点線は線形回帰を表す)。したがって、これら2つの図から、動作温度が、測定される飛行時間と相関性が高いことを確認することが可能である。したがって、本発明の第1の態様による方法において、飛行時間の測定によってバッテリBATの動作温度を考慮することが可能である。バッテリBATの内部温度の変動をこのように考慮することは、局所的な普通でない加熱を検出するため、および火災または爆発のリスクを防ぐために、温度センサによる測定の補足として使用され得る。内部温度測定は、実際、バッテリのセルの表面に置かれ「皮膚(skin)温度」のみを測定する温度センサの使用よりも、加熱のはるかに早い検出をより高い精度で可能にする。
【0044】
温度が有し得る影響のさらに別の例は、
図8Aから
図8Dに示される。
図8Aは、電圧の変化(最も高い曲線)、および、2つの違う場合:第一に、バッテリBATの熱挙動が正常であり(最も下の曲線)、充電の最後に約150mWで最高点に達する、熱の穏やかな放出を伴う動作の場合、次いで、全く同じ動作条件において、バッテリBATによって放出される熱の流れが、非常に鋭く異常に増大して650mWに達する場合(真ん中の曲線)における、同じバッテリBATの充電中に放出される熱の流れの変化を示す。熱の形態で放出されるそのようなエネルギーの量は、寄生反応の出現と結び付けられる、バッテリBAT内の大きな機能不全の兆候である。直接の結果は、材料に対する損傷であり得、性能における不可逆的悪化、ならびに性能における相当なリスク、ならびにバッテリBATの破壊をもたらし得る熱暴走における相当なリスク、ならびに安全性の問題(ガス放出、安全ベントの開放、火災、爆発など)をもたらす。したがって、好適な修正処置(電流の制限、非常停止など)を進めるために、そのような機能不全をできる限り早期に検出することができることが必須である。
【0045】
図8Bは、両方の場合(正常および異常動作)における、充電中のバッテリBATの端子における電圧の変化を示し、バッテリBATの端子における電圧の変化が、この異常加熱を検出することを可能にしないことを示す。
図8Bはまた、2つの場合(正常および異常挙動)における、バッテリBATの表面温度の変化を示す。熱の異常放出は、実際、検出されるが、まさにこの場合では、正常動作に関して表面温度(5℃)において数度のみの上昇を結果としてもたらす。したがって、そのような加熱は、容易には気付かれないままに進むが、その結果は、その後の性能、およびシステムの安全性にさえ、かなりの害を及ぼし得る。
【0046】
図8Cは、正常および異常挙動についての、時間に応じての信号の絶対エネルギーの変化を示し、異常熱挙動が、音響信号の絶対エネルギーの測定によって検出され得ることを示す:実際、絶対エネルギーは、異常挙動の場合、もはや正常な変化をたどらず、音響信号の絶対エネルギーがかなり減っている。
図8Dに示されるように、絶対エネルギーの同じ測定が、充電の状態に応じて行われ得、異常挙動がそのような測定によって明らかにされ得ることも示す。
【0047】
これらの異なる測定を使用して、バッテリBATの動作のマッピングを決定することが可能である。
図9Aは、簡略化したマッピング(これは2つのパラメータのみを考慮する)を示し、横座標には周波数重心の差、縦座標には絶対エネルギーの差を示す。この空間内の各測定点は、受信した音響信号に対応する。白点は、正常条件における動作に対応し、黒点は、バッテリBATがその動作中に熱の異常放出を示すときに記録された音響信号に対応する。
【0048】
3つの動作領域は、この空間内に規定されている:正常動作領域ZN、リスクがある動作領域ZR、および危険動作領域ZD。実施形態において、これら3つの領域は、検討されるパラメータについて得られる測定値の分布を使用して規定される(
図9Bおよび
図9C)。統計分析は、各パラメータについて正常動作条件で測定された値の標準偏差を計算することを可能にする。したがって、各パラメータについて、正常動作領域ZNとリスクがある領域ZRとの間の限界が、測定された標準偏差から規定され得る。実施形態において、領域ZNについての許容される偏差は、2σに対応し(統計学的に、正常動作において得られる値の95%超を含む)、リスクがある領域について規定される限界は、4σの偏差から計算され得る(統計学的に、正常動作において得られる値の99.99%超を含む)。当然ながら、許容される偏差は、検討される用途に応じて適合される。異常状態(黒点)に対応する測定値が、正常動作領域ZNから去り、リスクがある動作領域ZR、およびさらには危険動作領域ZDに達するということがこのマッピング上に明白に現れる。したがって、異常挙動は、本発明の第1の態様による方法100を使用して検出され得る。
【0049】
これらの異なる例は、定される信号の複数のパラメータを考慮することが、どのようにして、1つまたは複数の異常(過負荷、加熱など)を検出することを可能にし、一方、単一のパラメータ(充電の状態、バッテリBATの端子における電圧など)を測定することが十分ではないことを示すことを可能にする。
【0050】
実施形態において、マッピングCGは、正常動作領域ZN内に位置する参照点REFを含む。加えて、各領域は、速度制限と関係付けられる。速度は、それが参照点REFから離れる方へ動いているときには正であり、それが参照点REFへ近づいているときには負である。さらには、各測定サイクルは、マッピングCG内の測定点の速度を計算するステップを含み、この速度は、測定期間で割った、先行する測定サイクル中に得られた測定点と現在の測定点(すなわち、進行中の測定サイクルに対応する)との間の距離に等しい。受信される各信号は、大量のパラメータ(周波数、振幅、強度、エネルギー、持続時間、飛行時間など)を有し、したがって、マッピングCGは、大きな次元の空間内で実行され、測定サイクル中に得られる各測定値が前記空間内の点である、ということに留意することが有用である。したがって、特に2つの点を分離する距離を測定することによって、この空間の様々な点を比較することが可能である。この距離は、例えば、ユークリッド、マンハッタン、またはミンコフスキー距離であり得る。
【0051】
それはまた、測定点の速度を、測定点が位置する領域と関連付けられた速度制限と比較するステップを含む。それは最終的に、測定点の速度が、測定点が位置する領域と関連付けられた速度制限よりも大きいときに、異常を検出するステップ104のトリガリングを含む。比較は、速度の符号を考慮するということに留意されたい。したがって、参照点、したがって正常動作領域に近づく傾向のある測定点は、測定点自体が正常動作領域ZNの外側に位置しないため、異常の検出を生じさせない。
【0052】
実施形態において、各測定サイクルは、異常が検出されたときに、アラートをトリガするステップ105を含む。したがって、本方法は、バッテリの動作レジームが異常であるときを識別することが可能である。
【0053】
実施形態において、バッテリBATの動作状態を修正するステップは、アラートをトリガするステップ105によってトリガされる。したがって、バッテリBATの動作における問題の存在をユーザに通知することに加えて、管理システムは、1つまたはいくつかの修正処置を開始することができる。修正処置は、特に、バッテリBATによって送達される最大電力の制限、バッテリBATの端子における最大許容電圧範囲の減少、またはバッテリBATに相応しい温度の範囲の制限を含む。実施形態において、修正処置は、バッテリBATの動作に対する修正処置の影響を制限するようなやり方で、徐々に、より好ましくは、各修正の間に前記修正の効果を測定するように測定サイクルを実行することによって、実行され得る。実施形態において、方法100は、修正するステップが、既定の時間期間後(または既定の数の測定サイクルの後)にバッテリBATの正常動作レジームを再確立することを可能にしないときに、悪化モードへ切り替えるステップまたはシステムを停止するステップを含む。
【0054】
実施形態において、測定期間を低減するステップは、アラートをトリガするステップ104によってトリガされる。したがって、バッテリBATが異常動作状態にあるとき、バッテリBATの状態は、任意の修正処置、悪化モードへの切り替え、および/またはシステムの停止が必要なだけ素早くトリガされるようなやり方で、より規則的に測定される。実施形態において、バッテリBATの動作レジームが正常に戻るとき、測定期間は、その開始値へと再初期化され得る。
【0055】
実施形態において、各サイクル中に得られる各測定点は、測定点の数が適合しきい値と呼ばれるしきい値(例えば、統計学的な代表的分布を得るようなやり方で100よりも大きいかそれに等しいしきい値)に等しく得られるまで記憶され、参照点REFの位置が再計算され、次いで測定点が、前記しきい値が達せられたときに消去される。これらの測定点を記憶することは、計算手段MCのメモリ内で行われ得、こうして占有されたメモリの部分は、参照点REFの位置が再計算されるときに解放される。好ましくは、新規参照点REFの位置は、記憶される測定点のバリセンタに対応する。これは、バッテリBATの寿命の経過中に参照点REFの位置を変更すること、したがってバッテリBATの経年劣化を考慮することを可能にする。参照点の位置の変化は、本明細書内で上に説明される3つの動作領域も変化させるということに留意されたい。
【0056】
本発明の第1の態様による方法100を実施するように、本発明の第2の態様は、バッテリBATを管理するためのシステムに関する。バッテリ管理システムBATは、前記バッテリBATによって送達される電流または前記バッテリBATの端子における電圧など、バッテリBATの参照物理量を制御および測定するための手段を備える。制御の手段は、特に、バッテリBATの動作レジームを修正するために、そのような修正が必要とされる場合に使用され得る。加えて、バッテリBATの管理システムは、バッテリBATの壁に付着されるように構成される音響放射体EAを備える。音響放射体EAは、好ましくは、圧電性音響放射体EAであり、これは、接着剤または任意の他の付着手段を使用して、バッテリBATの壁に付着される。バッテリBATの管理システムはまた、バッテリBATの壁に付着されるように構成される音響受信機RAを備える。音響放射体EAと同様に、音響受信機RAは、好ましくは、圧電性音響受信機RAであり、これは、接着剤または任意の他の付着手段を使用して、バッテリBATの壁に付着される。例えば、音響放射体/受信機EA/RAは、PVDF(PolyVinyliDene Fluoride:フッ化ポリビニリデン)ベースを有し得、kHzからMHzの間に含まれる広い共振周波数帯域を一般的に有するデバイスである。代替的に、音響放射体EA/受信機RAは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)ベースを有し得、10kHzから数百kHzの間に含まれる狭い共振周波数帯域を一般的に有するデバイスである。好ましくは、音響放射体EAが付着される、および音響受信機RAが付着される壁の反対側である壁。管理システムはまた、音響放射体EAおよび音響受信機RAに接続される計算手段MCを備える。計算手段MCは、メモリ、ASICボード、またはFPGAと関連付けられたプロセッサの形態を有し得る。音響放射体および音響受信機との計算手段MCの接続は、バス、イーサネット(R)タイプの接続、またはワイヤレス接続、例えばブルートゥース(R)を用いて、なされ得る。計算手段MCはまた、マッピングCGが記憶されるメモリを含む。このマッピングCGは、正常動作領域ZNと呼ばれる第1の動作領域、リスクがある動作領域ZRと呼ばれる第2の動作領域、および危険動作領域ZDと呼ばれる第3の動作領域を規定する。
【0057】
さらには、音響放射体EAは、計算手段MCからの命令で音響放射体による音響信号を放射するように構成される。好ましくは、音響信号は、1kHzと1MHzの間、好ましくは100kHzと200kHzの間に含まれる複数の周波数を含む。好ましくは、音響信号は、0.2と1msの間に含まれる持続時間を有する。加えて、音響受信機RAは、音響信号を受信するように、および前記信号を計算手段MCに伝送するように構成される。最後に、計算手段MCは、測定点が位置する動作領域を決定し、測定点がリスクがある動作領域ZRまたは危険動作領域ZDにあるとき、異常を検出するように構成される。