(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】脊椎固定具用ロッド及びこれを備える脊椎用固定具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20240208BHJP
A61B 17/70 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61F2/44
A61B17/70
(21)【出願番号】P 2021009692
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝広
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013013024(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0106162(US,A1)
【文献】国際公開第2014/162873(WO,A1)
【文献】特開平04-366616(JP,A)
【文献】特開平11-296033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0152937(US,A1)
【文献】国際公開第2011/042998(WO,A1)
【文献】特表2011-508623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0325556(US,A1)
【文献】特表2007-514507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0181785(US,A1)
【文献】特表2007-526062(JP,A)
【文献】特表2010-504118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定具用ロッドであって、
樹脂を含むコア部材と、該コア部材上に設けられた強化繊維層とを含み、
該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが同一の樹脂である、又は、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが異なる樹脂であって、該コア部材の樹脂と該強化繊維層の樹脂の臨界表面張力がそれぞれ20mN/m以上であ
り、
前記コア部材の繊維は、該コア部材からその一部が露出しており、前記コア部材の繊維は長繊維又は短繊維であることを特徴とする、固定具用ロッド。
【請求項2】
前記コア部材の外表面は、1又は複数の凹部が形成される、請求項1に記載の固定具用ロッド。
【請求項3】
前記凹部は、前記コア部材の周方向に形成される、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項4】
前記凹部は、前記コア部材の軸長方向に形成される、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項5】
前記凹部は、前記コア部材の周方向に対して傾斜する方向に形成される、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項6】
前記凹部は、それぞれ異なる方向に形成された2以上の凹部を含む、請求項2に記載の固定具用ロッド。
【請求項7】
前記凹部の深さは、3μmから200μmの範囲である、請求項2から5までのいずれか1項に記載の固定具用ロッド。
【請求項8】
前記コア部材は、繊維を含む樹脂で形成されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の固定具用ロッド。
【請求項9】
前記コア部材の樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKのいずれかである、請求項1から
8までのいずれか1項に記載の固定具用ロッド。
【請求項10】
請求項1から
9までのいずれか1項に記載の固定具用ロッドを備える脊椎用固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎を固定するための固定具に用いる固定具用ロッド及びこれを備える脊椎用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、脊椎を固定するための固定具として金属を用いた固定具用ロッドが知られている。
【0003】
また、このような固定具用ロッドとして、例えば、特許文献1にポリマーコーティング内に少なくとも部分的に入れられた内部補強されたポリマーコアを備える脊柱椎弓根ロッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属を用いた固定具用ロッドは、一般に固定力や強度に優れるものの、MRI等による撮像の際、磁場中で金属が磁化することで磁場が影響を受け、画像の乱れが発生し、撮影画像による診断が難しいという問題があった。他方で、特許文献1に開示のロッドでは、そのような問題はないものの、ポリマー芯材とその被覆層との間の接着に接着剤を用いたとしても、均等かつ確実に接着することが難しく、安定した接着強度を得ることが難しいという問題があった。
【0006】
本発明の目的の一つは、芯材と強化繊維層との間の接着強度に優れた、高剛性で変形荷重による耐久性も高い固定具用ロッド及びこれを備える脊椎用固定具を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドは、樹脂を含むコア部材と、該コア部材上に設けられた強化繊維層とを含み、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが同一の樹脂である、又は、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが異なる樹脂であって、該コア部材の樹脂と該強化繊維層の樹脂の臨界表面張力がそれぞれ20mN/m以上であるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の外表面には、1又は複数の凹部が形成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記凹部は、前記コア部材の周方向に形成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記凹部は、前記コア部材の軸長方向に形成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記凹部は、前記コア部材の周方向に対して傾斜する方向に形成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記凹部は、それぞれ異なる方向に形成された2以上の凹部を含む。
【0013】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記凹部の深さは、3μmから200μmの範囲である。
【0014】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材は、繊維を含む樹脂で形成されている。
【0015】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の繊維は、該コア部材からその一部が露出している。
【0016】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の繊維は長繊維である。また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の繊維は短繊維である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記コア部材の樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKのいずれかであるように構成される。
【0018】
本発明の一実施形態に係る脊椎用固定具は、上記いずれかの固定具用ロッドを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記各実施形態によれば、芯材と強化繊維層との間の接着強度に優れた、高剛性で変形荷重による耐久性も高い固定具用ロッド及びこれを備える脊椎用固定具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドをを備える脊椎用固定具10を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドをその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材を説明する図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドのコア部材を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドの成形方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る固定具用ロッドの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1を含む脊椎用固定具10を示す図である。図示のように、脊椎用固定具10は、脊椎の骨に固定される複数のスクリュー部材18(図示の例では2つのスクリュー部材18)と、該スクリュー部材18に取付けられ、固定具用ロッドを受け入れる凹部21及び押圧部材22を備える複数のロッド固定部材20(図示の例では2つのロッド固定部材20)と、該複数のロッド固定部材20の凹部21に挿入されかつ押圧部材22により固定される固定具用ロッド1と、を備える。
【0023】
次に、
図2を参照して、脊椎用固定具10に用いる本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1について説明する。
図2は、
図1に示す固定具用ロッド1を同図に示すX-X断面でみたものである。
【0024】
図示のように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1は、樹脂を含むコア部材2と、該コア部材2上に設けられた強化繊維層3とを含み、該コア部材2の樹脂と、該強化繊維層3の樹脂とが同一の樹脂である、又は、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが異なる樹脂であって、該コア部材の樹脂と該強化繊維層の樹脂の臨界表面張力がそれぞれ20mN/m以上であるように構成される。
【0025】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1によれば、芯材と強化繊維層との間の接着強度に優れた、高剛性で変形荷重による耐久性も高い固定具用ロッドを提供することが可能となる。より具体的には、同一の樹脂、又は、異なる樹脂であっても、該コア部材の樹脂と該強化繊維層の樹脂の臨界表面張力がそれぞれ20mN/m以上のものを採用することで芯材と強化繊維層との親和性が向上し、芯材と強化繊維層との間の接着強度が優れると共に、中実の二重構造を採用し、後述するように外側層に平均曲げ弾性率の大きい材料を使用しているため、ロッド全体の曲げ剛性やつぶれ強度の優れた固定具用ロッドを提供することが可能となる。ここで、平均曲げ弾性率とは該当する部位全体の曲げ剛性を、該当する部位の二次モーメントで割って算出した値を指す。
【0026】
ここで、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが異なる樹脂であっても、該コア部材の樹脂と該強化繊維層の樹脂の臨界表面張力がそれぞれ20mN/m以上である場合は、樹脂の臨界表面張力が異種材料間の接着における所望の接着性能を上回ることが確認され、かつ接着のための薬液処理やプラズマ処理等の特別な工程が不要となることが判明している。より具体的には、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ナイロン66の臨界表面張力は、それぞれ22-29mN/m、31mN/m、33mN/m、36-38mN/m、43mN/m、46mN/mであり、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが異なる樹脂であっても、樹脂の臨界表面張力により良好な接着性能を示すことが判っている。他方、PTFE(ポリテトラフルオロエチレンパラフィン)の臨界表面張力は、18.5mN/mであり、樹脂の臨界表面張力が異種材料間の接着における所望の接着性能を下回るため、接着のための薬液処理やプラズマ処理等の特別な工程が必要となることが判っている。但し、該コア部材の樹脂と、該強化繊維層の樹脂とが同一の樹脂である場合はこの限りではない。
【0027】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材2の樹脂は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル等)、又は熱可塑性樹脂(例えば、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEK等)が用いられる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材2は、繊維を含む樹脂で形成することができる。その場合、当該繊維は、カーボン、ガラス、アラミド、ボロン又はSiCのいずれかであり、当該樹脂は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル等)、又は熱可塑性樹脂(例えば、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEK等)であるように構成される。このようにして、コア部材の曲げ剛性の増大化や高強度化が可能となる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該強化繊維層3は、繊維強化樹脂であり、繊維として、カーボン、ガラス、ボロン、SiC又はアラミドが用いられ、樹脂として熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル等)、又は熱可塑性樹脂(例えば、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEK等)が用いられる。このようにして、強化繊維層の曲げ剛性の増大化や高強度化が可能となる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1は、当該強化繊維層3上に設けられた被覆層を含むように構成される。当該被覆層は、例えば、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PPSU、POM、PP、PE、ABS、PS、PAEK又はPEEKにより形成されることができるが、これらに限られない。
【0031】
次に、
図3-8を参照して、脊椎用固定具10に用いる本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1のコア部材2について説明する。本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材2の外表面には、1又は複数の凹部が形成される。このようにして、成形の際、当該コア部材2と強化繊維層3との間の接触表面積が大きくなるため、芯材と強化繊維層との間の接着強度を大幅に向上させることが可能となる。以下より具体的に説明する。
【0032】
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該凹部(周方向凹部)11は、当該コア部材2の周方向に形成される。図示の例では、7つの凹部11が形成されているが、所望の個数設けることができ特定の数に限定されるものではない。また、コア部材2の周方向の全部若しくはその一部に形成することができる。または、コア部材2の周方向の全部若しくはその一部に、凹部11を断続的に形成するようにしてもよい。このように、凹部をコア部材の周方向に設けることで、接着面積が増えると共に、コア部材2と強化繊維層3との間の軸方向のズレを抑制することができる。
【0033】
次に、
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該凹部(軸方向凹部)12は、当該コア部材2の軸長方向に形成される。図示の例では、8つの凹部12が形成されているが、所望の個数設けることができ特定の数に限定されるものではない。また、コア部材2の軸方向の全部若しくはその一部に形成することができる。または、コア部材2の軸方向の全部若しくはその一部に、凹部12を断続的に形成するようにしてもよい。このように、凹部をコア部材の軸方向に設けることで、接着面積が増えると共に、コア部材2と強化繊維層3との間の回転方向のズレを抑制することができる。
【0034】
次に、
図5に示すように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該凹部(傾斜方向凹部)13は、当該コア部材2の周方向に対して傾斜するように形成される。図示の例では、7つの凹部13が形成されているが、所望の個数設けることができ特定の数に限定されるものではない。また、コア部材2の全周若しくはその一部に形成することができる。または、コア部材2の全周若しくはその一部に、凹部13を断続的に形成するようにしてもよい。このように、凹部をコア部材の周方向に対して傾斜する方向に設けることで、接着面積が増えると共に、コア部材2と強化繊維層3との間の軸方向及び回転方向のズレを抑制することができる。
【0035】
次に、
図6に示すように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該凹部(異方向凹部)14は、それぞれ異なる方向に形成された2以上の凹部を含むように、当該コア部材2の表面に形成される。図示の例では、数多くの凹部14が形成されているが、所望の個数設けることができ特定の数に限定されるものではない。また、3つ若しくはそれ以上の凹部14がある場合、その内の2つ又はそれ以上の凹部14が同じ方向に形成されてもよい。また、コア部材2の表面全体若しくはその一部に形成することができる。または、コア部材2の表面全体若しくはその一部に、凹部11を断続的に形成するようにしてもよい。このように、凹部を異なる方向に設けることで、異なる複数の方向のズレを抑制することができる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッドにおいて、前記凹部の深さは、3μmから200μmの範囲である。このようにして、凹部による剛性の変化やバラツキを抑えながら、コア部材2と強化繊維層3との間のズレを抑える適切な範囲とすることができる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、コア部材2は、繊維を含む樹脂で形成することができるが、当該コア部材の繊維は短繊維であるように構成される。短繊維を用いることで、繊維方向をランダムに配向することができ、あらゆる方向に対する強化が可能となる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、コア部材2は、繊維を含む樹脂で形成することができるが、当該コア部材の繊維は長繊維であるように構成される。このようにして、曲げ剛性を効果的に向上させることができる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、上述の通り、当該コア部材2は、繊維を含む樹脂で形成することができる。そのような場合において、
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材2の繊維(短繊維)15は、該コア部材の表面からその一部が露出している。このように、短繊維15を露出させることで、コア部材2表面に微小な凹凸を生ぜしめ、コア部材2と強化繊維層3との間のズレを抑制することができる。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、上述の通り、当該コア部材2は、繊維を含む樹脂で形成することができる。そのような場合において、
図8に示すように、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該コア部材2の繊維(長繊維)16は、該コア部材2の表面からその一部が露出している。このように、長繊維16を露出させることで、コア部材2表面に微小な凹凸を生ぜしめ、コア部材2と強化繊維層3との間のズレを抑制することができる。
【0041】
本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該強化繊維層3の繊維は長繊維であるように構成される。強化繊維層3の繊維が長繊維であることにより、さらに曲げ剛性の増大化や高強度化が可能となる。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1において、当該強化繊維層3に含まれる、1つ以上の層の繊維含有率は、60重量%以上であるように構成される。このように、長繊維が高密度に重点された繊維層により、剛性が高く、耐久性に優れた固定具用ロッド1を形成することが可能となる。
【0043】
次に、
図9を参照して、本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1の製造方法について説明する。まず、ステップ1として、コア部材(芯材)(上述した、
図3-8の各態様を含む)を用意する(
図9a)。次に、ステップ2として、繊維強化樹脂材料を用意する(
図9b)。次に、ステップ3として、芯材に繊維強化樹脂材料を巻き付け、繊維強化材料一体部材を形成する(
図9c)。
【0044】
次に、ステップ4において、当該繊維強化樹脂材料一体部材の外表面に、外型としてテープを巻き付ける(
図9d)。次に、ステップ5において、当該テープが巻きつけられた繊維強化樹脂材料一体部材を焼成(成形)する(
図9e)。その後、ステップ6として、焼成後の繊維強化樹脂材料一体部材を取り出し、不要部分を切断する(
図9f)。最後に、ステップ7として、不要部分を切断した繊維強化樹脂材料一体部材のテープを除去することで、コア部材と繊維強化樹脂層とを備えた本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1を得ることができる(
図9g)。
【0045】
このようにして形成された本発明の一実施形態に係る固定具用ロッド1によれば、芯材と強化繊維層との間の接着強度に優れた、高剛性で変形荷重による耐久性も高い固定具用ロッドを提供することが可能となる。より具体的には、同一の樹脂、又は、異なる樹脂であっても、該コア部材の樹脂と該強化繊維層の樹脂の臨界表面張力がそれぞれ20mN/m以上のものを採用することで芯材と強化繊維層との親和性が向上し、芯材と強化繊維層との間の接着強度が優れると共に、中実の二重構造を採用し、後述するように外側層に平均曲げ弾性率の大きい材料を使用しているため、ロッド全体の曲げ剛性やつぶれ強度の優れた固定具用ロッドを提供することが可能となる。ここで、平均曲げ弾性率とは該当する部位全体の曲げ剛性を、該当する部位の二次モーメントで割って算出した値を指す。
【0046】
本発明の一実施形態に係る脊椎用固定具10は、上記いずれかの固定具用ロッド1を備える。
【0047】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 固定具用ロッド
2 コア部材
3 強化繊維層
10 脊椎用固定具
11 凹部(周方向凹部)
12 凹部(軸方向凹部)
13 凹部(傾斜方向凹部)
14 凹部(異方向凹部)
15 繊維(短繊維)
16 繊維(長繊維)
18 スクリュー部材
20 ロッド固定部材
21 凹部
22 押圧部材