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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20240208BHJP
   F02D 9/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F02D9/02 361C
F02D9/02 351C
F02D9/02 351J
F02D9/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021015162
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2021177077
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020081076
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清野 准
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-167262(JP,A)
【文献】特開2009-030564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0230034(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03203055(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011076446(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
F02D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に配置され、第1弁体、および、該第1弁体を回動可能に保持する第1回動軸を含むスロットル弁と、
前記スロットル弁を迂回するように前記吸気通路に接続されるバイパス通路に配置され、第2弁体、および、該第2弁体を回動可能に保持する第2回動軸を含むバイパス弁と、
前記スロットル弁及び前記バイパス弁に対して駆動力を付与するための共通のモータと、
前記第1回動軸に対して前記モータの駆動力を伝達又は遮断可能に構成された第1ギアと、
前記モータの前記駆動力を受領し、該駆動力を前記第2回動軸に伝達するように構成された第2ギアと、
前記バイパス弁の前記第2回動軸、又は、該第2回動軸と連動して回動する他の回動軸の回動量を検出するためのセンサと、を備え
前記スロットル弁の前記第1回動軸に固定され、係合突起を外周縁に有する中間板をさらに備え、
前記第1ギアは、前記中間板の前記係合突起に対して前記スロットル弁の開弁方向における閉側に位置し、前記係合突起に係合可能な閉側係合部を有し、
前記第1ギアは、
前記スロットル弁の全閉状態において、前記中間板の前記係合突起から前記閉側係合部が離れて位置し、前記第1ギアから前記第1回動軸への前記駆動力が遮断され、
前記スロットル弁の開状態において、前記中間板の前記係合突起に前記閉側係合部が当接し、前記第1ギアから前記第1回動軸への前記駆動力が伝達される、ように構成された
スロットル装置。
【請求項2】
前記バイパス弁は、前記中間板の前記係合突起から前記閉側係合部が離れて位置する状態において、前記第1ギアを介して前記第2ギアが受領する前記駆動力によって開度調整されるように構成された、
請求項に記載のスロットル装置。
【請求項3】
前記中間板は、前記中間板の前記開弁方向の閉側への移動を規制するための第1係止突起を含み、
前記スロットル弁の全閉位置に対応した限界位置を越えた、前記中間板の前記開弁方向の閉側への回動を阻止するよう、前記第1係止突起と係合可能に構成された第1ストッパをさらに備える、
請求項1又は2に記載のスロットル装置。
【請求項4】
前記第1係止突起を前記第1ストッパに近づけるように、前記中間板を前記開弁方向の閉側へと付勢するための第1付勢部材をさらに備える、
請求項に記載のスロットル装置。
【請求項5】
前記第1ギアの前記閉側係合部が前記中間板の前記係合突起に近づくように、前記第1ギアを前記開弁方向の開側へと付勢するための第2付勢部材をさらに備える、
請求項1から4の何れか一項に記載のスロットル装置。
【請求項6】
前記第1ギアの前記閉側係合部が前記中間板の前記係合突起に近づくように、前記第1ギアを前記開弁方向の開側へと付勢するための第2付勢部材をさらに備え、
前記第2付勢部材の付勢力は、前記第1付勢部材の付勢力より小さい、
請求項に記載のスロットル装置。
【請求項7】
前記中間板は、前記中間板の前記開弁方向の開側への移動を規制するための第2係止突起を含み、
前記スロットル弁の全開位置に対応した限界位置を越えた、前記中間板の前記開弁方向の開側への回動を阻止するよう、前記第2係止突起と係合可能に構成された第2ストッパをさらに備える、
請求項1から6の何れか一項に記載のスロットル装置。
【請求項8】
前記センサの検出結果に基づいて、前記モータを制御するように構成されるコントローラをさらに備える、
請求項1からの何れか一項に記載のスロットル装置。
【請求項9】
前記バイパス弁は、前記第2回動軸を中心として回動可能に前記バイパス通路内に設けられたロータリーバルブを含む、
請求項1からの何れか一項に記載のスロットル装置。
【請求項10】
吸気通路に配置され、第1弁体、および、該第1弁体を回動可能に保持する第1回動軸を含むスロットル弁と、
前記スロットル弁を迂回するように前記吸気通路に接続されるバイパス通路に配置され、第2弁体、および、該第2弁体を回動可能に保持する第2回動軸を含むバイパス弁と、
前記スロットル弁及び前記バイパス弁に対して駆動力を付与するための共通のモータと、
前記第1回動軸に対して前記モータの駆動力を伝達又は遮断可能に構成された第1ギアと、
前記モータの前記駆動力を受領し、該駆動力を前記第2回動軸に伝達するように構成された第2ギアと、
前記バイパス弁の前記第2回動軸、又は、該第2回動軸と連動して回動する他の回動軸の回動量を検出するためのセンサと、を備え、
前記バイパス弁は、前記第2回動軸を中心として回動可能に前記バイパス通路内に設けられたロータリーバルブを含み、
前記バイパス通路は、
入口通路と、
前記第2回動軸の軸線方向から視た平面視において前記入口通路に対して鋭角で交差する方向に延在する出口通路と、を含み、
前記ロータリーバルブは、前記入口通路および前記出口通路の交差部に配置される
ロットル装置。
【請求項11】
吸気通路に配置され、第1弁体、および、該第1弁体を回動可能に保持する第1回動軸を含むスロットル弁と、
前記スロットル弁を迂回するように前記吸気通路に接続されるバイパス通路に配置され、第2弁体、および、該第2弁体を回動可能に保持する第2回動軸を含むバイパス弁と、
前記スロットル弁及び前記バイパス弁に対して駆動力を付与するための共通のモータと、
前記第1回動軸に対して前記モータの駆動力を伝達又は遮断可能に構成された第1ギアと、
前記モータの前記駆動力を受領し、該駆動力を前記第2回動軸に伝達するように構成された第2ギアと、
前記バイパス弁の前記第2回動軸、又は、該第2回動軸と連動して回動する他の回動軸の回動量を検出するためのセンサと、を備え、
前記センサは、前記バイパス弁の前記第2回動軸に取り付けられ、前記バイパス弁の前記第2回動軸の回動量を検出する
ロットル装置。
【請求項12】
前記バイパス弁は、前記スロットル弁を挟んで前記モータとは反対側に位置し、
前記第2ギアは、前記第1ギアを介して前記モータの前記駆動力を受領するように構成された請求項1乃至11の何れか一項に記載のスロットル装置。
【請求項13】
吸気通路に配置され、第1弁体、および、該第1弁体を回動可能に保持する第1回動軸を含むスロットル弁と、
前記スロットル弁を迂回するように前記吸気通路に接続されるバイパス通路に配置され、第2弁体、および、該第2弁体を回動可能に保持する第2回動軸を含むバイパス弁と、
前記スロットル弁及び前記バイパス弁に対して駆動力を付与するための共通のモータと、
前記第1回動軸に対して前記モータの駆動力を伝達又は遮断可能に構成された第1ギアと、
前記モータの前記駆動力を受領し、該駆動力を前記第2回動軸に伝達するように構成された第2ギアと、
前記バイパス弁の前記第2回動軸、又は、該第2回動軸と連動して回動する他の回動軸の回動量を検出するためのセンサと、を備え、
前記バイパス弁は、前記モータを挟んで前記スロットル弁とは反対側に位置し、
前記第2ギアは、前記第1ギアを含まない動力伝達経路を介して前記モータの前記駆動力を受領するように構成されたスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、スロットル弁の上流側から下流側へバイパス弁(アイドルスピードコントロールバルブ)を介して吸気をバイパス通路に迂回させるバイパスシステムを有するスロットル装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-101995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなバイパスシステムを有するスロットル装置において、スロットル弁を駆動させるためのアクチュエータに加えて、バイパス弁を駆動させるためのアクチュエータを別に設けると、スロットル装置のコスト及び重量を増加させてしまう。この点、特許文献1には、スロットル装置のコスト及び重量の増加を抑制するための知見について何ら開示されていない。
【0005】
また、特許文献1に記載のスロットル装置において、スロットル弁の開度調整はスロットルポジションセンサの検出結果に基づいて行われるのに対し、バイパス弁の開度調整は、バイパス通路を流れる吸気の温度を検知する吸気温センサ、および、バイパス通路を流れる吸気の圧力を検知する吸気圧センサの検出結果に基づいて行われる。このため、バイパス弁の開度を高精度に調整することができない虞がある。
【0006】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、コスト及び重量を抑制するとともに、バイパス弁の開度を高精度に調整することができるスロットル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスロットル装置は、吸気通路に配置され、第1弁体、および、該第1弁体を回動可能に保持する第1回動軸を含むスロットル弁と、スロットル弁を迂回するように吸気通路に接続されるバイパス通路に配置され、第2弁体、および、該第2弁体を回動可能に保持する第2回動軸を含むバイパス弁と、スロットル弁及びバイパス弁に対して駆動力を付与するための共通のモータと、第1回動軸に対してモータの駆動力を伝達又は遮断可能に構成された第1ギアと、モータの駆動力を受領し、該駆動力を第2回動軸に伝達するように構成された第2ギアと、バイパス弁の第2回動軸、又は、該第2回動軸と連動して回動する他の回動軸の回動量を検出するためのセンサと、を備える。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、スロットル弁の第1回動軸に固定され、係合突起を外周縁に有する中間板をさらに備え、第1ギアは、中間板の係合突起に対してスロットル弁の開弁方向における閉側に位置し、係合突起に係合可能な閉側係合部を有し、第1ギアは、スロットル弁の全閉状態において、中間板の係合突起から閉側係合部が離れて位置し、第1ギアから第1回動軸への駆動力が遮断され、スロットル弁の開状態において、中間板の係合突起に閉側係合部が当接し、第1ギアから第1回動軸への駆動力が伝達される、ように構成されてもよい。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、バイパス弁は、中間板の係合突起から開側係合部が離れて位置する状態において、第1ギアを介して第2ギアが受領する駆動力によって開度調整されるように構成されてもよい。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の構成において、中間板は、中間板の開弁方向の閉側への移動を規制するための第1係止突起を含み、スロットル弁の全閉位置に対応した限界位置を越えた、中間板の開弁方向の閉側への回動を阻止するよう、第1係止突起と係合可能に構成された第1ストッパをさらに備えてもよい。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、第1係止突起を第1ストッパに近づけるように、中間板を開弁方向の閉側へと付勢するための第1付勢部材をさらに備えてもよい。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)から(5)の何れか1つに記載の構成において、第1ギアの閉側係合部が中間板の係合突起に近づくように、第1ギアを開弁方向の開側へと付勢するための第2付勢部材をさらに備えてもよい。
【0013】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、第1ギアの閉側係合部が中間板の係合突起に近づくように、第1ギアを開弁方向の開側へと付勢するための第2付勢部材をさらに備え、第2付勢部材の付勢力は、第1付勢部材の付勢力より大きくてもよい。
【0014】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)から(7)の何れか1つに記載の構成において、中間板は、中間板の開弁方向の開側への移動を規制するための第2係止突起を含み、スロットル弁の全開位置に対応した限界位置を越えた、中間板の開弁方向の開側への回動を阻止するよう、第2係止突起と係合可能に構成された第2ストッパをさらに備えてもよい。
【0015】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)から(8)の何れか1つに記載の構成において、センサの検出結果に基づいて、モータを制御するように構成されるコントローラをさらに備えてもよい。
【0016】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)から(9)の何れか1つに記載の構成において、バイパス弁は、第2回動軸を中心として回動可能にバイパス通路内に設けられたロータリーバルブを含んでもよい。
【0017】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)に記載の構成において、バイパス通路は、入口通路と、第2回動軸に直交する平面内において入口通路に対して鋭角で交差する方向に延在する出口通路と、を含み、ロータリーバルブは、入口通路および出口通路の交差部に配置されてもよい。
【0018】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)から(11)の何れか1つに記載の構成において、センサは、バイパス弁の第2回動軸に取り付けられ、バイパス弁の第2回動軸の回動量を検出してもよい。
【0019】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)から(12)の何れか1つに記載の構成において、バイパス弁は、スロットル弁を挟んでモータとは反対側に位置し、第2ギアは、第1ギアを介してモータの駆動力を受領するように構成される。
【0020】
(14)幾つかの実施形態において、上記(1)から(12)の何れか1つに記載の構成において、バイパス弁は、モータを挟んでスロットル弁とは反対側に位置し、第2ギアは、第1ギアを含まない動力伝達経路を介してモータの駆動力を受領するように構成される。
【発明の効果】
【0021】
本開示の少なくとも一つの実施形態によれば、コスト及び重量を抑制するとともに、バイパス弁の開度を高精度に調整することができるスロットル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態に係るエンジンの構成を模式的に示す図である。
図2】第1ギアの回動位置と吸気量との関係を示すグラフである。
図3】本開示の一実施形態に係るスロットル装置の構成を示す斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係るスロットル装置の構成を示す側面図であって、図3のスロットル装置を左側から視たときの図である。
図5】本開示の一実施形態に係るスロットル装置の内部構成を示す斜視図である。
図6A】本開示の一実施形態に係る第1ギアが第1角度位置に位置している状態を示す斜視図である。
図6B】本開示の一実施形態に係る第1ギアが第2角度位置に位置している状態を示す斜視図である。
図6C】本開示の一実施形態に係る第1ギアが第3角度位置に位置している状態を示す斜視図である。
図7A】本開示の一実施形態に係るバイパス弁の動作を説明するための図であって、第1ギアが第1角度位置に位置している場合を示している。
図7B】本開示の一実施形態に係るバイパス弁の動作を説明するための図であって、第1ギアが第2角度位置に位置している場合を示している。
図7C】本開示の一実施形態に係るバイパス弁の動作を説明するための図であって、第1ギアが第3角度位置に位置している場合を示している。
図8】本開示の別の実施形態に係るエンジンの構成を模式的に示す図である。
図9】本開示の他の実施形態に係るスロットル装置の構成を示す斜視図である。
図10】本開示の他の実施形態に係るスロットル装置の動力伝達経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0024】
本開示の一実施形態に係るスロットル装置の構成について説明する。スロットル装置は、例えば、二輪車に搭載される多気筒エンジンへの吸気の流入量を調整するために多気筒エンジンの吸気側に取り付けられる。本開示では、2つの気筒を有するエンジンに取り付けられるスロットル装置を例にして説明する。
【0025】
図1は、本開示の一実施形態に係るエンジン100の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、エンジン100に取り付けられるスロットル装置1は、スロットル弁2と、バイパス弁3と、モータ4と、第1ギア5と、第2ギア6と、センサ7と、を備える。
【0026】
スロットル弁2は、吸気通路101に配置され、第1弁体20、および、該第1弁体20を回動可能に保持する第1回動軸21を含む。吸気通路101は、二輪車などの車両の外部から吸い込まれた空気(吸気A)をエンジン100の気筒102に供給するための通路である。スロットル装置1は、吸気通路101の一部を構成している。第1弁体20は、第1回動軸21に固定されており、第1回動軸21の回動と共に第1回動軸21を中心として回動する。第1弁体20が回動することで、吸気通路101を流通する吸気Aの吸気量が調整される。図1に示す例示的な形態では、吸気通路101を吸気Aが流通する流通方向において、スロットル弁2より吸気通路101の下流側に燃料噴射装置103及び吸気バルブ104が設けられている。吸気通路101を流通する吸気Aは、燃料噴射装置103が吸気通路101内に噴射した燃料と混合され、吸気バルブ104によって気筒102内に送り込まれる。そして、気筒102内で混合気を燃焼することで、ピストン105を気筒102内で往復運動させ、この往復運動によって発生するエネルギを、コンロッド106を介して、クランクシャフト107に伝達するようになっている。
【0027】
バイパス弁3は、スロットル弁2を迂回するように吸気通路101に接続されるバイパス通路8に配置され、第2弁体30、および、該第2弁体30を回動可能に保持する第2回動軸31を含む。図1に示す例示的な形態では、流通方向において、スロットル弁2より上流側にバイパス通路8の入口80aが形成され、吸気通路101のスロットル弁2の下流側にバイパス通路8の出口80bが形成されている。第2弁体30は、第2回動軸31に固定されており、第2回動軸31の回動と共に第2回動軸31を中心として回動する。第2弁体30が回動することで、バイパス通路8を流通する吸気Aの吸気量が調整される。
【0028】
上述したスロットル弁2及びバイパス弁3は、それぞれ、共通のモータ4から付与される駆動力によって開度が調整可能になっている。
【0029】
第1ギア5は、モータ4の駆動力を受領可能に構成されている。第1ギア5は、スロットル弁2の第1回動軸21に取り付けられ、第1回動軸21に対してモータ4の駆動力を伝達又は遮断可能に構成されている。
【0030】
第2ギア6は、第1ギア5を介して、モータ4の駆動力を受領可能に構成されている。第2ギア6は、バイパス弁3の第2回動軸31に取り付けられ、モータ4の駆動力を第2回動軸31に伝達するように構成されている。
【0031】
センサ7は、バイパス弁3の第2回動軸31の回動量を検出するように構成される。センサ7は、例えば、第2回動軸31の回転角度を検出するポジションセンサである。また、センサ7は、バイパス弁3の第2回動軸31の回動量を検出することで、スロットル弁2の第1回動軸21の回動量も検出することができる。これは、バイパス弁3の第2回動軸31は、第1ギア5及び第2ギア6を介してモータ4から受け取った駆動力によって回動し続けるためである。尚、幾つかの実施形態では、図8に示すように、スロットル装置1は、第2ギア6を介して、モータ4の駆動力を受領可能に構成される連動ギア35をさらに備えてもよい。この場合、センサ7は、連動ギア35の回動軸(第2回動軸31と連動して回動する他の回動軸)の回動量を検出するように構成してもよい。
【0032】
図1に示す例示的な形態では、スロットル装置1は、モータ4を制御するように構成されるコントローラ9をさらに備える。コントローラ9は、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPU、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。コントローラ9は、センサ7と電気的に接続されており、センサ7が検出した第2回動軸31の回動量を取得する。
【0033】
このコントローラ9は、ステッピングモータのようなモータ4と電気的に接続されている。コントローラ9は、モータ4に対してモータ4を回転駆動させるための駆動信号Sを送信する。この駆動信号Sは、センサ7が検出した第2回動軸31の回動量に基づいて決められる。駆動信号Sを受信したモータ4は、駆動信号Sに応じた回転数で回転駆動する。そして、モータ4の駆動力によって、バイパス弁3の開度が調整される。このような構成によれば、バイパス弁3の実際の開度に基づいて、バイパス弁3の開度を高精度に調整することができる。また、センサ7は、第2回動軸31の回動量を検出することで第1回動軸21の回動量も検出することができるので、スロットル弁2の実際の開度に基づいて、スロットル弁2の開度を高精度に調整することもできる。
【0034】
図1に示す例示的な形態では、コントローラ9は、アクセルグリップ109とも電気的に接続されている。コントローラ9は、アクセルグリップ109から検出されるアクセルグリップ109の回動量(いわゆるアクセル開度)を取得する。駆動信号Sは、第2回動軸31の回動量及びアクセル開度に基づいて決められてもよい。
【0035】
ここで、エンジン100の運転状態に応じて調整される吸気Aの吸気量について説明する。図2には、第1ギア5の角度位置と吸気Aの吸気量との関係が示されている。図2において、バイパス通路8を流通する吸気Aの吸気量を実線で図示し、吸気通路101を流通する吸気Aの吸気量を点線で図示し、バイパス通路8を流通する吸気Aの吸気量と吸気通路101を流通する吸気Aの吸気量との合計を一点鎖線で図示している。
【0036】
スロットル弁2が全閉、且つバイパス弁3が全開(リミット開度)の時の第1ギア5の角度位置を第1角度位置P1、スロットル弁2及びバイパス弁3の両方が全開の時の第1ギア5の角度位置を第2角度位置P2、スロットル弁2及びバイパス弁3の両方が全閉の時の第1ギア5の回動位置を第3角度位置P3とする。
【0037】
第1角度位置P1は、エンジン100が停止状態の時に、後述する第1付勢部材24及び第2付勢部材26の働きにより、第1ギア5が復帰すべき原位置である。第1ギア5が第1角度位置P1(原位置)に復帰することで、スロットル弁2が全閉、且つバイパス弁3が全開となる。
【0038】
エンジン100の通常運転時(エンジン100のアイドル運転時を除く)には、スロットル弁2は開弁されている。この場合において、第1ギア5は第1角度位置P1と第2角度位置P2との間の範囲内を回動することで、吸気通路101を流通する吸気Aの吸気量を調整する。第1角度位置P1から第2角度位置P2に向かうにつれて、スロットル弁2の開度が大きくなり、吸気通路101を流通する吸気Aの吸気量が増加している。また、この際、バイパス弁3は全開のまま維持されている。
【0039】
エンジン100のアイドル運転時には、スロットル弁2は閉弁されている。この場合において、第1ギア5は、第1角度位置P1と第3角度位置P3との間の範囲内を回動することで、バイパス通路8を流通する吸気Aの吸気量を調整する。第1角度位置P1から第3角度位置P3に向かうにつれて、バイパス弁3の開度は小さくなり、バイパス通路8を流通する吸気Aの吸気量が減少している。また、この際、スロットル弁2は全閉のまま維持されている。このように、エンジン100のアイドル運転時におけるエンジン燃焼性や空気量分解能の向上を図ることができるようになっている。
【0040】
図3は、本開示の一実施形態に係るスロットル装置1の外形形状を示す斜視図である。図4は、図3のスロットル装置1を左側から視たときの側面図である。図3に示す例示的な形態では、スロットル装置1は、スロットル弁2の第1回動軸21の軸線方向(以下、「第1方向D1」とする)に並ぶ左側ケーシング10Aと右側ケーシング10Bと、を含む。左側ケーシング10Aは、右側ケーシング10Bより第1方向D1の一方側に配置されている。本開示では、第1方向D1の一方を「左」とし、第1方向D1の他方を「右」とする。
【0041】
左側ケーシング10Aは、スロットル弁2が収容されるスロットルボディ22と、バイパス弁3が収容されるバイパス弁収容体32と、モータ4が収容されるモータケーシング40と、を含む。モータケーシング40は、第2方向D2において、スロットルボディ22を挟んでバイパス弁収容体32とは反対側に位置している。第2方向D2は、第1方向D1に直交する方向のうちスロットル弁2の第1回動軸21を基準とした際に、モータケーシング40が配置される一方を「下」とし、その反対方向である他方を「上」とする方向である。つまり、本開示では、第1方向D1が「左右方向」であれば、第2方向D2は「上下方向」である。第2方向D2において、バイパス弁収容体32はスロットルボディ22より上方に位置し、モータケーシング40はスロットルボディ22より下方に位置している。右側ケーシング10Bは、第2のスロットル弁2A(2)が収容される第2のスロットルボディ22A(22)を含む。尚、不図示の他の実施形態では、第2方向D2において、モータケーシング40は、吸気通路101を挟んで燃料噴射装置103とは反対側に位置してもよい。
【0042】
また、図3に示す例示的な形態では、左側ケーシング10Aの右側の右端部11Aと右側ケーシング10Bの左側の左端部11Bとは、ボルトのような締結具12によって互いに結合されている。図3には図示されていないが、左側ケーシング10Aの右端部11Aと右側ケーシング10Bの左端部11Bとによって囲われることでギア収容空間29が形成される。また、センサ7は、ボルトのような締結具13を介して、バイパス弁収容体32の左端部32aに取り付けられている。この場合、センサ7とバイパス弁3の第2回動軸31の左端とが互いに連結している。このような構成によれば、センサ7は、第2回動軸31の回動量の検出結果の誤差を抑制することができる。
【0043】
図4に示す例示的な形態では、バイパス通路8は、入口通路80と、出口通路81と、交差部82と、を含む。入口通路80は、吸気Aの流通方向において、交差部82より上流側に位置する。出口通路81は、吸気Aの流通方向において、交差部82より下流側に位置する。また、第2回動軸31の軸線方向から視た平面視において(つまりは、図4の紙面において)、出口通路81は入口通路80に対して鋭角θで交差する方向に延在する。具体的には、交差部82の入口83の開口断面に直交する方向を第1直交方向D3、交差部82の出口84の開口断面に直交する方向を第2直交方向D4とすると、鋭角θは第1直交方向D3と第2直交方向D4とが交差することで形成される角度である。尚、本開示では、バイパス通路8は、1つの入口通路80に対して出口通路81,81を2つ含んでいる(図3参照)。
【0044】
また、図3及び図4に示す例示的な形態では、バイパス弁3は、第2回動軸31を中心として回動可能にバイパス通路8の交差部82内に設けられたロータリーバルブ33を含む。ロータリーバルブ33は、第2回動軸31の軸線方向に直交する断面を視たときに半円形状(D字形状)の第2弁体30を有している。このような構成によれば、ロータリーバルブ33の第2弁体30がバイパス通路8の交差部82内を回動することで、バイパス通路8の流路断面の流路面積を調整し、ロータリーバルブ33の開度を高精度に調整することができる。
【0045】
次に、図5を参照して、本開示の一実施形態に係るスロットル装置1の内部構成について説明する。図5には、吸気Aの流通方向に対して第1弁体20が直交したスロットル弁2の全閉状態である時のスロットル装置1の内部構成が示されている。
【0046】
図5に示す例示的な形態では、スロットル弁2の第1弁体20は円板形状を有する。この第1弁体20は、ボルトのような締結具34を介して、第1回動軸21に取り付けられている。バイパス弁3は、第2回動軸31と一体的に構成される大径部36を含む。この大径部36は、第2回動軸31より大径に構成されている。大径部36の一部37は、第2回動軸31の軸線方向に直交する断面を視たときに半円形状(D字形状)を有するように切り欠かれている。この大径部36の一部37が、上述したロータリーバルブ33の第2弁体30に相当する。
【0047】
図5に示すように、ギア収容空間29には、第1ギア5、第2ギア6、モータ出力ギア14が収容されている。第1ギア5と第2ギア6とは互いにかみ合っている。
【0048】
モータ出力ギア14は、モータ4の駆動力を第1ギア5に伝達するように構成される。図5に示す例示的な形態では、モータ出力ギア14は、第3ギア14A、第4ギア14B、第5ギア14C、及び第6ギア14Dを含んでいる。第3ギア14Aは、モータ4の出力軸41に固定されているギアであって、モータ4の出力軸41と一体的に回動する。第4ギア14Bは、第3ギア14Aと互いにかみ合っている。第4ギア14Bと第5ギア14Cとは共通のシャフト14Eに固定されており、第5ギア14Cは第4ギア14Bの回動とともにシャフト14Eを中心として回動する。第6ギア14Dは、第5ギア14Cと互いにかみ合っている。また、第6ギア14Dは、第1ギア5とも互いにかみ合っている。尚、モータ出力ギア14の構成は、モータ4の駆動力を第1ギア5に伝達可能であれば、図5に示す例に限定されるものではない。
【0049】
次に、図5、及び図6A図6Cを参照して、第1回動軸21に対してモータ4の駆動力を伝達又は遮断可能な構成の1例について説明する。以下では、第1回動軸21が回動する方向を「周方向」とする。また、第1回動軸21と直交する平面上に第1回動軸21を中心として描かれる円の半径方向(第1回動軸21の径方向)を「径方向」とする。また、図6Aには、第1ギア5が第1角度位置P1に位置している状態が示されている。図6Bには、第1ギア5が第2角度位置P2に位置している状態が示されている。図6Cには、第1ギア5が第3角度位置P3に位置している状態が示されている。
【0050】
図5、及び図6A図6Cに示す例示的な形態では、スロットル装置1は、円板状の中間板15をさらに備える。中間板15は、スロットル弁2の第1回動軸21に固定される。中間板15は、径方向外側に向かって突出する係合突起16を外周縁17に有する。中間板15には第1回動軸21が挿通される挿通孔23が形成されており、中間板15はこの挿通孔23に第1回動軸21が挿通している状態で第1回動軸21に固定されている。
【0051】
また、第1ギア5は、中間板15の係合突起16に対してスロットル弁2の開弁方向における閉側に位置するとともに、係合突起16に係合可能な閉側係合部50を有する。ここで、図5、及び図6A図6Cに示すとおり、スロットル弁2の開弁方向とは、スロットル弁2の開度を大きくするために第1ギア5が回動する方向である。なお、図5、及び図6A図6Cに示す例では、スロットル弁2の開弁方向は反時計回り(左回転)に回動する方向である。
【0052】
閉側係合部50は、第1ギア5と一体的に回動する。中間板15の係合突起16は、閉側係合部50が移動する経路上に位置している。バイパス弁3の全開状態において、閉側係合部50は中間板15の係合突起16に係合する。図6Aに示すように、第1ギア5が第1角度位置P1に位置する状態で、第1ギア5が反時計回りに回動すると、中間板15及び第1回動軸21も第1ギア5に従動して反時計回り(スロットル弁2の開弁方向)に回動する。なお、バイパス弁3が全開に至っていない状態(全閉又は半開状態)では、第1ギア5の閉側係合部50は係合突起16から離れており、第1ギア5の回動力は中間板15及び第1回動軸21には伝達されない(図6C参照)。
【0053】
上述した構成により、第1ギア5は、スロットル弁2の全閉状態において、第1ギア5がスロットル弁2の開弁方向の閉側に向かって回動することで、中間板15の係合突起16から閉側係合部50が離れて位置し、第1ギア5から第1回動軸21へのモータ4の駆動力が遮断される。また、第2ギア6は第1ギア5を介してモータ4の駆動力を受領する。そして、バイパス弁3は、中間板15の係合突起16から閉側係合部50が離れて位置する状態において開度調整される。また、上述した構成により、第1ギア5は、スロットル弁2の開状態において、第1ギア5がスロットル弁2の開弁方向の開側に向かって回動することで、中間板15の係合突起16に閉側係合部50が当接し、第1ギア5から第1回動軸21へのモータ4の駆動力が伝達される。
【0054】
尚、図6A図6Cに示されるように、第1ギア5は、係合突起16に係合可能な開側係合部51を有してもよい。開側係合部51は、中間板15の係合突起16に対してスロットル弁2の開弁方向の開側に位置する。
【0055】
幾つかの実施形態では、図5及び図6A図6Cに示すように、中間板15は、スロットル弁2の開弁方向における中間板15の閉側への移動を規制するための第1係止突起18を含む。スロットル装置1は、図6Aに示すように、スロットル弁2の全閉位置に対応した限界位置を越えた、スロットル弁2の開弁方向の閉側への中間板15の回動を阻止するよう、第1係止突起18と係合可能に構成された第1ストッパ19をさらに備える。第1ストッパ19は、左側ケーシング10Aに固定されている。また、第1ストッパ19は、第1係止突起18よりスロットル弁2の開弁方向の閉側に位置している。
【0056】
このような構成によれば、中間板15がスロットル弁2の全閉位置に対応した限界位置を越えて開弁方向の閉側へ回動しようとしても、中間板15の第1係止突起18に第1ストッパ19が係合し、スロットル弁2の開弁方向の閉側への中間板15の回動を抑止する。このため、スロットル弁2が全閉状態における、第1弁体20の位置決めをすることができる。また、エンジン100のアイドル運転時には、中間板15が図6Aに示す状態よりスロットル弁2の開弁方向の閉側に回動しないので、スロットル弁2を全閉状態のままで維持させることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、図5及び図6A図6Cに示すように、スロットル装置1は、第1係止突起18を第1ストッパ19に近づけるように、中間板15をスロットル弁2の開弁方向の閉側へと付勢するための第1付勢部材24をさらに備える。第1付勢部材24は、例えば、第1係止突起18に取り付けられるフック部25を有する第1スプリング24A(24)であって、第1係止突起18を介して、第1ギア5をスロットル弁2の開弁方向の閉側へと付勢している。第1スプリング24Aは、第1回動軸21周りに配置されている。
【0058】
第1付勢部材24の機能について具体的に説明する。例えば、モータ4の稼働中、第1ギア5の角度位置が、第1角度位置(原位置)P1と第2角度位置P2との間の範囲内である場合、第1ギア5の閉側係合部50が中間板15の係合突起16に当接した状態となっている。その後、モータ4が停止すると、第1付勢部材24により、スロットル弁2の開弁方向の閉側に向かって第1ギア5の第1係止突起18が付勢され、第1係止突起18が第1ストッパ19によって係止される第1角度位置P1まで第1ギア5が回動する(図6A参照)。
【0059】
このような構成によれば、第1回動軸21に伝達されるモータ4の駆動力が第1付勢部材24の付勢力よりも小さくなる、又は第1回動軸21にモータ4の駆動力が伝達されなくなると、スロットル弁2を、スロットル弁2にモータ4の駆動力が作用する前の状態に戻すことができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、図5及び図6A図6Cに示すように、第1ギア5の閉側係合部50が中間板15の係合突起16に近づくように、第1ギア5をスロットル弁2の開弁方向の開側へと付勢するための第2付勢部材26をさらに備える。第2付勢部材26は、図6A図6Cに示すように、閉側係合部50に当接しており、閉側係合部50を介して、第1ギア5をスロットル弁2の開弁方向の開側へと付勢している。このような、第2付勢部材26は、例えば、第2スプリング26A(26)であって、第1回動軸21周りに配置されている。また、第1回動軸21が延在する方向において、第2スプリング26Aは、中間板15を挟んで第1スプリング24Aとは反対側に配置されている。
【0061】
第2付勢部材26の機能について具体的に説明する。例えば、モータ4の稼働中、第1ギア5の角度位置が、第3角度位置P3と第1角度位置(原位置)P1との間の範囲内である場合、図6Cに示すように、中間板15の第1係止突起18が第1ストッパ19によって係止され、且つ、第1ギア5の閉側係合部50が中間板15の係合突起16から離れた状態になっている。その後、モータ4が停止すると、第2付勢部材26により、スロットル弁2の開弁方向の開側に向かって第1ギア5の閉側係合部50が付勢され、閉側係合部50が中間板15の係合突起16に当接するまで、第1ギア5がスロットル弁2の開弁方向の開側へと回動する(図6A参照)。
【0062】
このような構成によれば、第1回動軸21に伝達されるモータ4が第2付勢部材26の付勢力の駆動力よりも小さくなる、又は第1回動軸21にモータ4の駆動力が伝達されなくなると、バイパス弁3を、バイパス弁3にモータ4の駆動力が作用する前の状態に戻すことができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、図5及び図6A図6Cに示すように、第2付勢部材26の付勢力は、第1付勢部材24の付勢力より小さくなるように構成される。図5及び図6A図6Cに示す例示的な形態では、第1スプリング24Aは、第2スプリング26Aよりばね線径が大きい。また、第1スプリング24Aは、第2スプリング26Aと略同一の内径を有している。このような構成によれば、第1付勢部材24の付勢力が第2付勢部材26の付勢力よりも大きいことから、第1ギア5が原位置に戻った際に、中間板15は、第1付勢部材24によって第1係止突起18が第1ストッパ19に押し付けられた状態が維持され、静止したままにすることができる。
【0064】
また、幾つかの実施形態では、図5及び図6A図6Cに示すように、中間板15は、スロットル弁2の開弁方向の開側への中間板15の移動を規制するための第2係止突起27を含む。第2係止突起27は、スロットル弁2の開弁方向において、第1係止突起18よりも開側、且つ、係合突起16よりも閉側に位置している。また、スロットル弁2の開弁方向において、第1係止突起18と第2係止突起27とは互いに離間している。
【0065】
また、図5及び図6A図6Cに示すように、スロットル装置1は、スロットル弁2の全開位置に対応した限界位置を越えた、中間板15の開弁方向の開側への回動を阻止するよう、第2係止突起27と係合可能に構成された第2ストッパ28をさらに備える。第2ストッパ28は、左側ケーシング10Aに固定されている。尚、不図示の他の実施形態では、中間板15は、スロットル弁2の開弁方向の開側への中間板15の移動を規制するための第1係止突起18を含んでもよい。この場合、スロットル装置1は、スロットル弁2の全開位置に対応した限界位置を越えた、スロットル弁2の開弁方向の開側への中間板15の回動を阻止するよう、第1係止突起18と係合可能に構成される第2ストッパ28をさらに備える。つまり、この構成によれば、第1係止突起18を第2係止突起27として機能させており、第2係止突起27を設けずに済む。
【0066】
第2係止突起27及び第2ストッパ28の機能について具体的に説明する。第1ギア5が第1角度位置P1を超えて第2角度位置P2に向かうように回動すると、中間板15の係合突起16に第1ギア5の閉側係合部50が当接しているので、中間板15に駆動力が伝達され、中間板15はスロットル弁2の開弁方向の開側に向かって回動する。この中間板15の回動が進むにつれて、スロットル弁2の開度が大きくなる。そして、スロットル弁2が全開になると、第2係止突起27と第2ストッパ28とが係合する(図6B参照)。
【0067】
このような構成によれば、中間板15がスロットル弁2の全開位置に対応した限界位置を越えてスロットル弁2の開弁方向の開側へ回動しようとしても、中間板15の第2係止突起27に第2ストッパ28が係合し、スロットル弁2の開弁方向の開側への中間板15の回動を抑止する。このため、スロットル弁2が全開状態における、第1弁体20の位置決めをすることができる。
【0068】
次に、図7A図7Cを参照して、第1ギア5が第1角度位置P1、第2角度位置P2、及び第3角度位置P3のそれぞれに位置する場合のバイパス弁3について説明する。図7Aには、第1ギア5が第1角度位置P1にある場合のバイパス弁3が示されている。図7Bには、第1ギア5が第2角度位置P2にある場合のバイパス弁3が示されている。図7Cには、第1ギア5が第3角度位置P3にある場合のバイパス弁3が示されている。
【0069】
図7Aに示すように、第1ギア5が第1角度位置P1に位置する場合には、交差部82の入口83及び出口84の全体が開口している。図7Bに示すように、第1ギア5が第2角度位置P2に位置する場合には、第1ギア5が第1角度位置P1に位置するときと比較してバイパス弁3は回動しているものの、交差部82の入口83及び出口84の全体が開口している。図7Cに示すように、第1ギア5が第3角度位置P3に位置する場合には、交差部82の入口83の全体は開口しているが、交差部82の出口84の全体がバイパス弁3によって閉塞されている。このように本開示では、バイパス弁3の開度は、交差部82の出口84の開口面積を変化させることで調整されている。
【0070】
このような構成によれば、スロットル弁2が全閉時(エンジン100のアイドル運転時)におけるバイパス弁3の開度を高精度に調整するとともに、バイパス弁3を全開状態で維持したままスロットル弁2の開度を調整することができる。
【0071】
本開示の一実施形態に係るスロットル装置1の作用・効果について説明する。本実施形態によれば、スロットル弁2及びバイパス弁3に対して駆動力を付与するための共通のモータ4を備えるので、スロットル弁2及びバイパス弁3のそれぞれにモータ4,4を設ける場合と比較して、コスト及び重量の増加を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、センサ7は、第2弁体30を回動可能に保持する第2回動軸31の回動量を検出するので、バイパス弁3の実際の開度を検出する。そして、この検出結果に基づいてバイパス弁3の開度が調整されることで、バイパス弁3の実際の開度に基づいてバイパス弁3の開度が調整されない場合と比較して、バイパス弁3の開度を高精度に調整することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、第1ギア5が第1角度位置P1(原位置)を越えてスロットル弁2の開弁方向の開側へと回動する場合において、バイパス弁3は既に全開になっているが、バイパス弁3の第2回動軸31は、第1ギア5及び第2ギア6を介してモータ4から受け取った駆動力によって回動し続ける。このため、センサ7によってバイパス弁3の第2回動軸31の回動量が検出されることで、スロットル弁2の第1回動軸21の回動量も検出することができる。つまり、センサ7をスロットル弁2の実際の開度を検出するためのスロットルポジションセンサとして機能させることができる。よって、スロットル弁2及びバイパス弁3の開度を高精度に調整する構成を維持しつつ、スロットル装置1のコスト及び重量の増加を抑制することができる。
【0074】
図3乃至図5を参照して上述した実施形態では、バイパス弁3が、スロットル弁2を挟んでモータ4とは反対側に位置するため、第2ギア6は、第1ギア5を介してモータ4の駆動力を受領してバイパス弁3の第2回動軸31に動力を伝達するようになっている。かかる機器配置は、例えば、2つの気筒102が第1方向D1に並んだ直列エンジン又は並列エンジンの場合に好適である。
これに対し、2つの気筒102がV字型に配置されたV型エンジンの場合、気筒102にそれぞれ接続される吸気通路101間にスペースを確保しやすいから、モータ4を挟んでスロットル弁2とは反対側にバイパス弁3を配置してもよい。
【0075】
図9は、本開示の一実施形態に係るスロットル装置の構成を示す斜視図である。図10は、本開示の他の実施形態に係るスロットル装置の動力伝達経路を説明するための図である。
以下、図3乃至図5を参照して説明した構成要素については同一の符号を付し、重ねての説明は省略する。
【0076】
幾つかの実施形態では、図9及び図10に示すように、スロットル装置110は、第1弁体20及び第1回動軸21をそれぞれ含む一対のスロットル弁2と、第2弁体30及び第2回動軸31を含むバイパス弁3と、スロットル弁2及びバイパス弁3に対して駆動力を付与するための共通のモータ4と、を含む。
【0077】
一対のスロットル弁2は、第1方向D1(即ち、第1回動軸21の軸線方向)に直交する第2方向D2において、モータ4及びバイパス弁3を挟んで両側に配置される。一対のスロットル弁2は、複数のリンク200(200A,200B,200C)を介して互いの第1回動軸21が連結されており、一対のスロットル弁2は連動するようになっている。
リンク200Aは、一方のスロットル弁2の第1回動軸21に一端側が回動可能に連結される。リンク200Aの他端側には、リンク200Aとの連結位置から第2方向D2においてモータ4及びバイパス弁3を通過するように延在するリンク200Bの一端側が連結される。リンク200Bは、他端側においてリンク200Cと連結される。リンク200Cは、リンク200Cとの連結部とは反対側の端部において、一方のスロットル弁2の第1回動軸21に回動可能に連結される。
なお、一対のスロットル弁2は、それぞれ別々に設けられたスロットルボディ22に収容される。各々のスロットルボディ22には、スロットル弁2を収容するためのボア(吸気通路101)が形成されている。一対のスロットル弁2にそれぞれ対応するスロットルボディ22は、ボアの中心軸が互いに平行ではなく交差しており、V型エンジンのそれぞれの気筒に向かって吸気通路101が延在する。
【0078】
図10に示す実施形態では、モータ4の出力軸41から一方のスロットル弁2の第1回動軸21に動力を伝達するための第1動力伝達経路310と、モータ4の出力軸41からバイパス弁3の第2ギア6に動力を伝達するための第2動力伝達経路320と、を含む。第1動力伝達経路310及び第2動力伝達経路320は、図9に示すギア収容空間29に収容される。
また、第1動力伝達経路310を介して一方のスロットル弁2に伝達された動力は、リンク200(200A,200B,200C)を介して、他方のスロットル弁2の第1回動軸21に伝達される。こうして、共通のモータ4によって、一対のスロットル弁2及びバイパス弁3が駆動される。
【0079】
第1動力伝達経路310は、第2方向D2において、モータ4に対してスロットル弁2側に設けられる。
図10に示す例示的な実施形態では、第1動力伝達経路310は、モータ4の出力軸41に噛合する大径ギア部122と、第1ギア5と噛合する小径ギア部124を有する第1中継ギア120を含む。
【0080】
第1動力伝達経路310を介してモータ4の駆動力が付与される第1ギア5は、スロットル装置1に関して上述したとおり、第1回動軸21に対してモータ4の駆動力を伝達又は遮断可能に構成される。例えば、第1ギア5による動力の伝達又は遮断の切替を行う観点から、図6A図6Cを参照して上述した中間板15を設けてもよい。
第1ギア5から動力の伝達を受けると、一方のスロットル弁2が開閉動作する。これに伴い、リンク200(200A,200B,200C)を介して他方のスロットル弁2も連動して開閉動作する。
【0081】
第2動力伝達経路320は、第1ギア5を含まない動力伝達経路であり、第2方向D2においてモータ4に対してバイパス弁3側に設けられる。
図10に示す例示的な実施形態では、第2動力伝達経路320は、モータ4の出力軸41に噛合する大径ギア部132と、第2ギア6と噛合する小径ギア部134を有する第2中継ギア130を含む。
第2ギア6から動力の伝達を受けると、バイパス弁3が開閉動作する。このとき、バイパス弁3の第2回動軸31の回動量は、センサ7によって検出される。
【0082】
V型エンジン向けのスロットル装置では、一般に、一対のスロットル弁2間の第2方向D2の距離が広くなる傾向がある。このため、例えばクリーナボックス300内にスロットル装置を収納するレイアウトを採用する際に、スロットル装置の第2方向D2における寸法の縮小が求められる。
この点、スロットル装置110の上記構成では、第2方向D2に関して、モータ4を挟んで両側に一方のスロットル弁2とバイパス弁3とを配置し、バイパス弁3に対しては第1ギア5を含まない第2動力伝達経路320を介して動力伝達するようにしたので、スロットル装置110のコンパクト化を実現できる。これにより、スロットル装置110をクリーナボックス300内に収納することも可能となる。
【0083】
以上、本開示の一実施形態に係るスロットル装置1について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 スロットル装置
2 スロットル弁
3 バイパス弁
4 モータ
5 第1ギア
6 第2ギア
7 センサ
9 コントローラ
15 中間板
16 係合突起
17 外周縁
18 第1係止突起
19 第1ストッパ
20 第1弁体
21 第1回動軸
24 第1付勢部材
26 第2付勢部材
27 第2係止突起
28 第2ストッパ
30 第2弁体
31 第2回動軸
33 ロータリーバルブ
50 閉側係合部
80 入口通路
81 出口通路
82 交差部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10