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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】バッチ式熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/38 20060101AFI20240208BHJP
   F27B 9/16 20060101ALI20240208BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20240208BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240208BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F27B9/38
F27B9/16
F27B9/40
F27D3/12 C
F27D5/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021050548
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148744
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 智明
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀久
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-054587(JP,A)
【文献】特開2016-008812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
F27B 1/00- 3/28
F27B 17/00-19/04
F27D 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ式熱処理炉本体と、
前記バッチ式熱処理炉本体に着脱可能に取付けられ、被処理物が載置可能な処理テーブルと、
前記処理テーブルを前記バッチ式熱処理炉本体に搬送する搬送台車と、
を備えており、
前記バッチ式熱処理炉本体は、
天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、
前記昇降床に設けられており、前記処理テーブルが着脱可能に接続され、前記処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、
を備えており、
前記昇降床は、前記側壁の下端を開放する第1位置と、前記側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっており、
前記昇降床が前記第1位置に位置するときに、前記処理テーブルが前記駆動装置の駆動部に着脱可能に接続されるようになっており、
前記処理テーブルが前記駆動装置の駆動部に接続された状態で前記昇降床が前記第2位置に位置するときに、前記炉体内に前記処理テーブルの上面が露出した状態となり、
前記処理テーブルは、平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能である第1の回転テーブルを備えており、
前記第1の回転テーブルの角度位置と、前記駆動装置の駆動部の角度位置と、が所定の位置関係となるときに、前記処理テーブルは前記駆動装置の前記駆動部に接続可能な状態となり、
前記搬送台車は、前記処理テーブルが当該搬送台車に載置されたときに、当該搬送台車に対する前記第1の回転テーブルの角度位置が予め設定された角度となるように、前記処理テーブルを当該搬送台車に対して位置決めする第1位置決め機構を備えている、バッチ式熱処理装置。
【請求項2】
前記第1位置決め機構は、前記処理テーブルが当該搬送台車に載置されたときに、当該搬送台車の前後方向及び左右方向に対して前記処理テーブルの中心が予め設定された位置となるように前記処理テーブルをさらに位置決めする、請求項1に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項3】
前記第1位置決め機構は、
直線状に伸びる第1アームと、
前記第1アームに対して第1方向に離間して設けられ、前記第1アームと平行に伸びる第2アームと、を備えており、
前記処理テーブルは、第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材とは異なる位置に設けられた第2ガイド部材と、前記第1ガイド部材及び前記第2ガイド部材とは異なる位置に設けられた第3ガイド部材と、を少なくとも備えており、
前記第1ガイド部材が前記第1アームの基端部と先端部のうちの一方に当接し、前記第2ガイド部材が前記第1アームの基端部と先端部のうちの他方に当接し、かつ、前記第3ガイド部材が前記第2アームに当接することで、前記処理テーブルが前記搬送台車に対して位置決めされる、請求項1又は2に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項4】
前記第1位置決め機構は、前記第1アームと前記第2アームの少なくとも一方に設けられ、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材と前記第3ガイド部材の少なくとも1つをアーム長手方向に位置決めする第1ストッパ部材をさらに備えており、
前記第1ストッパ部材により前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材と前記第3ガイド部材の少なくとも1つがアーム長手方向に位置決めされると、前記搬送台車の前後方向及び左右方向に対して前記処理テーブルの中心が予め設定された位置となる、請求項3に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項5】
前記第1位置に位置する前記昇降床に対して予め設定された移載位置に前記搬送台車を位置決めする第2位置決め機構をさらに備えており、
前記搬送台車は、第1車輪と、前記第1車輪に対して当該搬送台車の左右方向に離間した位置に設けられる第2車輪と、を備えており、
前記第2位置決め機構は、前記第1車輪を案内する第1レールと、前記第2車輪を案内する第2レールと、を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項6】
前記第1レールと前記第2レールの一方は、上方に向かって凸となる凸形状を有しており、
前記第1レールと前記第2レールの一方に案内される前記第1車輪と前記第2車輪の一方は、前記凸形状に対応する凹形状を有している、請求項5に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項7】
前記第2位置決め機構は、前記搬送台車が前記移載位置を超えて移動しないように前記搬送台車を位置決めする第2ストッパ部材をさらに備える、請求項5又は6に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項8】
前記処理テーブルは、平面視したときに前記第1の回転テーブルの内側に配置される少なくとも1つの第2の回転テーブルをさらに備えており、
前記第2の回転テーブルは、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されており、
前記第2の回転テーブルの中心の位置は、平面視したときに前記第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にあり、
前記駆動装置は、前記第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動軸と、前記第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動軸と、を備えており、
前記第1の回転テーブルの前記第1の軸線上に前記第1駆動軸が位置し、かつ、前記第2の回転テーブルの前記第2の軸線上に前記第2駆動軸が位置するように、前記処理テーブルが前記昇降床に対して位置決めされたときに、前記処理テーブルは前記駆動装置に接続可能となる、請求項1~7のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置。
【請求項9】
前記バッチ式熱処理炉本体は、前記処理テーブルの角度位置を検出する位置センサと、前記位置センサの検出結果に基づいて前記駆動装置を制御する制御装置と、をさらに備えており、
前記制御装置は、前記昇降床から前記処理テーブルを取り外すときは、前記第1の回転テーブルの角度位置が予め設定された初期角度となるように、前記駆動装置を制御する、請求項1~8のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物(例えば、セラミックコンデンサ、セラミック圧電素子、セラミック抵抗などの積層セラミック部品等)に熱処理するためのバッチ式熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炉内に配置された複数の被処理物を同時に熱処理する場合、複数の被処理物の熱処理後の特性を安定化するためには、複数の被処理物のそれぞれに同一の熱履歴を付与する必要がある。このために、特許文献1のバッチ式熱処理炉では、被処理物を載置する炉床が、主炉床と副炉床により構成されている。主炉床は、平面視すると円形状を有しており、その中心を通る軸線の回りに回転可能となっている。副炉床は、主炉床に形成された開口に配置されている。副炉床は、平面視すると円形状を有しており、その中心を通る軸線の回りに回転可能となっている。被処理物は、副炉床の上面に載置される。被処理物を熱処理する際は、副炉床自体が回転(いわゆる自転)すると共に、主炉床が回転することで副炉床も主炉床の中心を通る軸線の回りに回転(いわゆる公転)する。これによって、副炉床の上面に載置された複数の被処理物が均一に加熱され、被処理物のそれぞれに同一の熱履歴が付与されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-77001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッチ式熱処理炉により被処理物を熱処理するためには、熱処理炉内に被処理物を設置し、設置した被処理物に熱処理を行い、熱処理後の被処理物を熱処理炉の外部に取出す必要がある。被処理物の炉内への設置や炉外への取出しを効率化するために、処理テーブルを炉体の床面に対して着脱可能とし、着脱可能とした処理テーブル上に被処理物を載置することが検討されている。しかしながら、処理テーブルを炉体の床面に対して着脱可能とする場合、処理テーブルを回転駆動するための駆動装置を炉体の床面に設けることになる。このため、処理テーブルを炉体の床面に取り付けるためには、処理テーブルを駆動装置の駆動部に対して回転方向に位置合せをして接続しなければならない。そのため、従来のバッチ式熱処理炉では、炉体と処理テーブルを一対として使用する必要があった。その結果、例えば、複数の炉体に対して処理テーブルを共用した場合に、処理テーブルを各炉体に取付ける工程を自動化することができないという問題が生じ、あるいは、作業者によって処理テーブルを各炉体に取付る場合であっても、作業者による取付け作業を容易に行うことができないという問題があった。
【0005】
本明細書は、例えば、複数の炉体に対して処理テーブルを共用して、処理テーブルを炉体の床面に対して着脱可能とした場合において、処理テーブルの取付け作業を容易化することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するバッチ式熱処理装置は、バッチ式熱処理炉本体と、バッチ式熱処理炉本体に着脱可能に取付けられ、被処理物が載置可能な処理テーブルと、処理テーブルをバッチ式熱処理炉本体に搬送する搬送台車と、を備えている。バッチ式熱処理炉本体は、 天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、昇降床に設けられており、処理テーブルが着脱可能に接続され、処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、を備えている。昇降床は、側壁の下端を開放する第1位置と、側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっている。昇降床が第1位置に位置するときに、処理テーブルが駆動装置の駆動部に着脱可能に接続されるようになっている。処理テーブルが駆動装置の駆動部に接続された状態で昇降床が第2位置に位置するときに、炉体内に処理テーブルの上面が露出した状態となる。処理テーブルは、平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能である第1の回転テーブルを備えている。第1の回転テーブルの角度位置と、駆動装置の駆動部の角度位置と、が所定の位置関係となるときに、処理テーブルは駆動装置の駆動部に接続可能な状態となる。搬送台車は、処理テーブルが当該搬送台車に載置されたときに、当該搬送台車に対する第1の回転テーブルの角度位置が予め設定された角度となるように、処理テーブルを当該搬送台車に対して位置決めする第1位置決め機構を備えている。
【0007】
上記のバッチ式熱処理装置では、バッチ式熱処理炉本体に処理テーブルを取付けるときは、搬送台車に処理テーブルを載置し、搬送台車によりバッチ式熱処理炉本体まで処理テーブルを搬送する。ここで、搬送台車に処理テーブルが載置されると、第1位置決め機構によって、搬送台車に対する第1の回転テーブルの角度位置が予め設定された角度となる。このため、バッチ式熱処理炉本体に対して搬送台車を適切に位置決めすることで、第1の回転テーブルの角度位置と、駆動装置の駆動部の角度位置と、を所定の位置関係とすることができる。これにより、第1の回転テーブルと駆動部の回転方向の位置合せが不要となり、処理テーブルの駆動装置への取付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る熱処理炉システムの概略構成を示す概略図。
図2】実施例1に係る熱処理炉システムに装備されるバッチ式熱処理装置の各構成要素を説明するための図であり、バッチ式の熱処理炉本体と、その熱処理炉本体に着脱可能に取付けられる処理テーブルと、処理テーブルを搬送する搬送台車とを示す概要図。
図3】熱処理炉本体に処理テーブルが取付けられた状態を示す断面図(昇降床が下降した状態)。
図4】熱処理炉本体に処理テーブルが取付けられた状態を示す断面図(昇降床が上昇した状態)。
図5】処理テーブルが取付けられた熱処理炉本体の横断面図(図4のV-V断面図)。
図6】昇降床に処理テーブルが取付けられた状態を示す側面図(ただし、駆動装置(20,22)の図示を省略)。
図7】昇降床に処理テーブルが取付けられた状態を示す平面図(図6において上方から処理テーブル及び昇降床を見た図)。
図8】処理テーブルと駆動機構とを連結する連結部の概略構成を示す概略図(処理テーブルと駆動機構が連結されていない状態を示す図)。
図9】処理テーブルと駆動機構とを連結する連結部の概略構成を示す概略図(処理テーブルと駆動機構が連結されている状態を示す図)。
図10】実施例1に係る搬送台車の背面図(ただし、アームの図示を省略)。
図11】実施例1に係る搬送台車の右側面図。
図12】搬送台車のアームによって処理テーブルを持ち上げるときの動作を説明するための図(持ち上げる直前の状態)。
図13】搬送台車のアームと、処理テーブルを載置する載置台と、処理テーブルのガイド部材との位置関係を示す平面図。
図14】搬送台車のアームと処理テーブルのガイド部材との位置関係を示す拡大図(アームにより処理テーブルを持ち上げた状態)。
図15】搬送台車のアームと処理テーブルのガイド部材との位置関係を示す拡大図(アームにより処理テーブルを持ち上げる直前の状態)。
図16】実施例1に係る搬送台車のアームによって処理テーブルを持ち上げるときの動作を説明するための図(持ち上げた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(特徴1)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、第1位置決め機構は、処理テーブルが当該搬送台車に載置されたときに、当該搬送台車に対して処理テーブルの中心が予め設定された位置となるように処理テーブルをさらに位置決めするようにしてもよい。このような構成によると、駆動装置に対する処理テーブルの位置決めが容易となり、処理テーブルの駆動装置への取付け作業をより容易に行うことができる。
【0010】
(特徴2)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、第1位置決め機構は、直線状に伸びる第1アームと、第1アームに対して第1方向に離間して設けられ、第1アームと平行に伸びる第2アームと、を備えていてもよい。処理テーブルは、第1ガイド部材と、第1ガイド部材とは異なる位置に設けられた第2ガイド部材と、第1ガイド部材及び第2ガイド部材とは異なる位置に設けられた第3ガイド部材と、を少なくとも備えていてもよい。第1ガイド部材が第1アームの基端部と先端部のうちの一方に当接し、第2ガイド部材が第1アームの基端部と先端部のうちの他方に当接し、かつ、第3ガイド部材が第2アームに当接することで、処理テーブルが搬送台車に対して位置決めされてもよい。このような構成によると、第1アームと第2アームによって処理テーブルを持ち上げるだけで、処理テーブルが搬送台車に対して周方向及び左右方向に位置決めすることができる。
【0011】
(特徴3)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、第1位置決め機構は、第1アームと第2アームの少なくとも一方に設けられ、第1ガイド部材と第2ガイド部材と第3ガイド部材の少なくとも1つをアーム長手方向に位置決めする第1ストッパ部材をさらに備えていていもよい。このような構成によると、処理テーブル側のガイド部材とアーム側の第1ストッパ部材を当接することで、処理テーブルを搬送台車の長手方向に位置決めすることができる。
【0012】
(特徴4)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、第1位置に位置する昇降床に対して予め設定された移載位置に搬送台車を位置決めする第2位置決め機構をさらに備えていてもよい。搬送台車は、第1車輪と、第1車輪に対して当該搬送台車の左右方向に離間した位置に設けられる第2車輪と、を備えていてもよい。第2位置決め機構は、第1車輪を案内する第1レールと、第2車輪を案内する第2レールと、を備えていてもよい。このような構成によると、搬送台車の車輪をレールによって案内することで、搬送台車を移載位置に案内することができる。
【0013】
(特徴5)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、第1レールと第2レールの一方は、上方に向かって凸となる凸形状を有していてもよい。第1レールと第2レールの一方に案内される第1車輪と第2車輪の一方は、凸形状に対応する凹形状を有していてもよい。このような構成によると、搬送台車の左右方向(幅方向)の位置決め精度を高めることができる。
【0014】
(特徴6)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、第2位置決め機構は、搬送台車が移載位置を超えて移動しないように搬送台車を位置決めする第2ストッパ部材をさらに備えていてもよい。このような構成によると、搬送台車が第2ストッパ部材と当接する位置まで移動させることで、搬送台車を移載位置に位置決めすることができる。
【0015】
(特徴7)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、処理テーブルは、平面視したときに第1の回転テーブルの内側に配置される少なくとも1つの第2の回転テーブルをさらに備えていてもよい。第2の回転テーブルは、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されていてもよい。第2の回転テーブルの中心の位置は、平面視したときに第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にあってもよい。駆動装置は、第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動軸と、第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動軸と、を備えていてもよい。第1の回転テーブルの第1の軸線上に第1駆動軸が位置し、かつ、第2の回転テーブルの第2の軸線上に第2駆動軸が位置するように、処理テーブルが昇降床に対して位置決めされたときに、処理テーブルは駆動装置に接続可能となっていてもよい。このような構成では、第2の回転テーブルの上面に被処理物を載置することで、第2の回転テーブルの回転に伴って被処理物を回転(自転)することができ、また、第1の回転テーブルの回転に伴って第1の軸線の回りに被処理物を回転(公転)することができる。これによって、被処理物に均一に熱処理を実施することができる。また、第1の回転テーブルの内側に第2の回転テーブルを配置することで、処理テーブルと駆動装置の位置合せが複雑となるが、搬送台車が位置決め機構を備えることで、処理テーブルと駆動装置の位置合せを容易に行うことができる。
【0016】
(特徴8)本明細書が開示するバッチ式熱処理装置では、バッチ式熱処理炉本体は、処理テーブルの角度位置を検出する位置センサと、位置センサの検出結果に基づいて駆動装置を制御する制御装置と、をさらに備えていてもよい。制御装置は、昇降床から処理テーブルを取り外すときは、第1の回転テーブルの角度位置が予め設定された初期角度となるように、駆動装置を制御してもよい。このような構成によると、昇降床から処理テーブルを着脱する際は、第1の回転テーブルの角度位置が初期角度となっているため、処理テーブルの着脱作業を容易に行うことができる。
【実施例
【0017】
以下、本実施例に係る熱処理炉システム100について説明する。まず、熱処理炉システム100の概略構成について説明する。図1に示すように、熱処理炉システム100が設置されるエリアには、積みエリアAと、降ろしエリアBと、熱処理エリアCが設けられる。熱処理炉システム100は、複数の処理テーブル30と、熱処理エリアCに設置される複数の熱処理炉本体10と、各エリアA,B,Cの間で処理テーブル30を搬送する搬送台車70と、を備えている。すなわち、本実施例の熱処理炉システム100は、処理テーブル30と熱処理炉本体10と搬送台車70とを備える複数のバッチ式の熱処理装置を備えている。
【0018】
処理テーブル30は、被処理物Wが載置される上面を備えている。積みエリアAでは、処理テーブル30は、後述する載置台120(図12等に図示)の上に載置されている。積みエリアAにおいて、処理テーブル30の上面に熱処理前の被処理物Wが載置される。被処理物Wが載置された処理テーブル30は、搬送台車70によって熱処理エリアCに搬送される。熱処理エリアCには、積みエリアAと降ろしエリアBとを結ぶ搬送経路が設けられており、その搬送経路に沿って複数の熱処理炉本体10が設置されている。熱処理炉本体10は、バッチ式の熱処理炉であり、被処理物Wに熱処理をするために用いられる。本実施例では、複数の熱処理炉本体10のそれぞれに処理テーブル30が取付け可能となっている。このため、処理テーブル30が取付けられる熱処理炉本体10には、熱処理炉システム100の稼働状況に応じて適切な熱処理炉本体10が選択される。熱処理エリアCに搬送された処理テーブル30は、選択された熱処理炉本体10まで搬送され、選択された熱処理炉本体10に取付けられる。処理テーブル30が取付けられると、熱処理炉本体10は、その処理テーブル30に載置された被処理物Wに対して熱処理を行う。被処理物Wに対する熱処理が終了すると、次に、熱処理炉本体10から処理テーブル30が取り出される。取り出された処理テーブル30は、搬送台車70によって降ろしエリアBに搬送され、処理テーブル30ごと降ろしエリアBに降ろされる。すなわち、降ろしエリアBにも、処理テーブル30を載置する載置台120が設置されている。搬送台車70によって降ろしエリアBに搬送された処理テーブル30は、被処理物Wが載置された状態で載置台載置台120の上に降ろされる。その後、処理テーブル30上から被処理物Wが取り出された後、処理テーブル30は、降ろしエリアBから積みエリアAに搬送台車70によって搬送される。
【0019】
上記のことから明らかなように、本実施例の熱処理炉システム100では、複数の熱処理炉本体10と、これら複数の熱処理炉本体10のそれぞれに着脱可能に取付けられる複数の処理テーブル30を備えている。このため、熱処理炉本体10が稼働中(例えば、被処理物Wを熱処理中)に、他の処理テーブル30に、次に熱処理を行う被処理物Wを載置して準備することができる。また、被処理物Wの熱処理後は、熱処理炉本体10から熱処理後の被処理物Wが載置された処理テーブル30を取外すことができる。このため、処理テーブル30が取り外された後の熱処理炉本体10に、新しい処理テーブル30(すなわち、熱処理前の被処理物Wが載置された処理テーブル30)を取付け、次の被処理物Wに熱処理を行うことができる。したがって、本実施例の熱処理炉システムによると、複数の熱処理炉本体10を効率的に稼働することができ、被処理物Wの熱処理を効率的に行うことができる。なお、熱処理炉本体10から取り外された処理テーブル30は降ろしエリアBに設置された載置台載置台120の上に放置され、熱処理後の被処理物Wを冷却することができる。
【0020】
一方、処理テーブル30を複数の熱処理炉本体10で共用すると、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業が必要となる。本実施例の処理テーブル30は、後述するように主炉床34と副炉床36を備え、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付けるためには、処理テーブル30を熱処理炉本体10に対して回転方向に正確に位置決めする必要がある。このため、本実施例の熱処理炉本体10では、処理テーブル30の回転を停止させるときは、処理テーブル30が予め設定された位置(回転方向の位置)となるように停止させる。また、搬送台車70で処理テーブル30を持ち上げるときは、搬送台車70に対する処理テーブル30の状態が予め定められた状態(搬送台車70の進行方向の位置及び処理テーブル30の回転方向の位置が予め定められた状態)となるように設定されている。これにより、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易にしている。以下、処理テーブル30と搬送台車70と熱処理炉本体10について詳細に説明する。
【0021】
まず、処理テーブル30について説明する。図6~9に示すように、処理テーブル30は、主炉床34と、主炉床34に設置された4つの副炉床36と、を備えている。主炉床34は、上端に位置する小径部33と、小径部33の下方に位置する大径部32と、を有している。小径部33と大径部32は、円板状の外形状を有しており、その中心軸が同一直線上に位置するように一体化されている。大径部32の下面の中心には、後述する熱処理炉本体10の駆動機構20と係合可能とされる凹所34aが形成されている。また、大径部32の下面にはドグ38が取付けられている(図6,7参照)。ドグ38は、その上端が大径部32の外周縁近傍に固定され、その下端は大径部32の下面から下方に伸びている。ドグ38が固定される大径部32の周方向の位置は、処理テーブル30の回転停止位置を制御するための基準位置となる。熱処理炉炉体10に処理テーブル30が取付けられると、主炉床34(小径部33と大径部32)は、その中心軸(すなわち、小径部33と大径部32の中心を通って上下方向に伸びる線)が熱処理炉炉体10の軸線に一致するようになっている。なお、主炉床34の大径部32の下面には、第1支持板37を介して4つのガイド部材35が固定されている(図7~9参照)。ガイド部材35は、上端側(すなわち、処理テーブル30側)が大径となる一方で下端側が小径となる円錐台形状の部材であり、後述するように、処理テーブル30を搬送台車70に対して位置決めするために用いられる。図7に示すように、4つのガイド部材35のそれぞれは、小径部33の外側(すなわち、副炉床36が配置される位置より外側)であって大径部32の中心から等距離の位置に配置され、かつ、周方向には等間隔(すなわち、90°間隔)に配置されている。より詳細には、4つのガイド部材35のそれぞれの中心は、主炉床34の中心と4つの副炉床36の中心とを結ぶ直線上に位置している。
【0022】
副炉床36は、円板状の形状を有しており、主炉床34に対して回転可能に設置されている。具体的には、主炉床34には、その上端面(小径部33)から下端面(大径部32)までを貫通する貫通孔が形成されており、その貫通孔内に副炉床36が回転可能に配置されている。すなわち、副炉床36のそれぞれは、その軸線(すなわち、副炉床36の中心を通って上下方向に伸びる線)周りに回転可能となっている。本実施例では、4つの副炉床36が周方向に等間隔を空けて設置されている(すなわち、4つの副炉床36は、周方向に90°間隔で設置されている。)。4つの副炉床36のそれぞれは、その下端に後述する駆動機構20と係合可能な係合面36aを有している(図8,9参照)。4つの副炉床36の軸線のそれぞれは、主炉床34の軸線と平行であり、主炉床34の軸線から等距離に配置されている。主炉床34の上面と副炉床36の上面は面一となっており、副炉床36の上面には被処理物Wが載置可能となっている。
【0023】
主炉床34と副炉床36のそれぞれは、回転方向及び回転速度の変更停止が可能となっている。副炉床36の上面に被処理物Wが載置されるため、主炉床34が回転することで被処理物Wはいわゆる公転し、副炉床36が回転することで被処理物Wはいわゆる自転をすることになる。各炉床34,36の回転方向は任意に設定することができる。例えば、図5に示すように、主炉床34及び副炉床36がともに反時計回りに回転してもよいし、主炉床34及び副炉床36がともに時計回りに回転してもよい。あるいは、主炉床34が時計回りに回転する一方で副炉床36が反時計回りに回転してもよいし、主炉床34が反時計回りに回転する一方で副炉床36が時計回りに回転してもよい。主炉床34及び副炉床36の回転速度及び回転方向を適宜制御することで、副炉床36上に載置された被処理物Wを均一に加熱することができる。
【0024】
上述の説明から明らかなように、主炉床34が回転すると、それに応じて副炉床36も主炉床34の軸線周りに回転(公転)する。このため、主炉床34が回転を停止する位置が変化すると、副炉床36が停止する位置も変化する。上述したように、主炉床34の下面には凹所34aが形成され、副炉床36の下面には係合面36aが形成され、これら凹所34aと係合面36aのそれぞれが熱処理炉本体10の駆動機構20に接続される。したがって、主炉床34が回転を停止する位置を同一の位置とすると、副炉床36が停止する位置も常に一定の位置となり、処理テーブル30を熱処理炉本体10の駆動機構20に接続するときの位置合せを容易にすることができる。
【0025】
次に、熱処理炉本体10について説明する。図2~5に示すように、熱処理炉本体10は、架台16と、架台16に支持される炉体11と、を備えている。架台16は、熱処理エリアCの所定の位置に設置されている。炉体11を架台16で支持することで、炉体11の下方に処理テーブル30の着脱作業を行う空間が形成されている。
【0026】
炉体11は、耐火物によって構成されており、円筒状の側壁14と、円板状の天井壁12を備えている。側壁14は、その下端部が架台16に固定されており、その上端部が天井壁12まで伸びている。天井壁12は、側壁14の上端部に当接し、側壁14の上端の開口部を閉じている。天井壁12の中央には、図示しない排気口が形成されている。
【0027】
炉体11は、昇降床18をさらに備えている。昇降床18は、平面視すると方形状の箱形に形成されており、その内部に処理テーブル30を回転駆動する駆動装置(20,22)が収容されている。駆動装置(20,22)は、駆動源22と駆動機構20を備えている。駆動源22は、処理テーブル30を回転駆動するための汎用のモータ(すなわち、サーボ機能のないモータ)である。駆動源22で発生した駆動力は、駆動機構20を介して処理テーブル30(詳細には、主炉床34及び副炉床36のそれぞれ)に伝達される。
【0028】
図8、9に示すように、駆動機構20は、主炉床34の凹所34aに連結される第1連結部46と、副炉床36の下面に連結される第2連結部44を備えている。第1連結部46には、図示しない伝達部材(チェーン等)を介して駆動源22の回転駆動力が伝達される。第1連結部46の下端には円板状の第2支持板48が固定されている。第2支持板48は、主炉床34の下面に当接し、主炉床34を支持する。第2連結部44の下面には第2駆動軸42が固定されている。第2駆動軸42は第2支持板48の図示しない貫通孔を貫通しており、その下端に図示しない伝達部材(チェーン等)を介して駆動源22の回転駆動力が伝達される。第1連結部46及び第2連結部44のそれぞれに駆動源22の回転駆動力が伝達されることで、主炉床34は回転(自転)し、それに伴って副炉床36は自転及び公転することになる。
【0029】
第1連結部46に処理テーブル30(主炉床34)の凹所34aが連結され、第2連結部44に処理テーブル30(副炉床36)の係合面36aが連結されることで、駆動機構20に処理テーブル30が取付けられる。これによって、処理テーブル30が駆動機構20の第2支持板48の上面に載置され、処理テーブル30が駆動機構20に支持される。駆動機構20に処理テーブル30が取付けられると、図2~4に示すように、昇降床18の上方に処理テーブル30が支持される。ここで、昇降床18は、架台16に設けられた昇降装置24によって、炉体11の下端近傍の位置(請求項でいう第2位置の一例)と、床面近傍の位置(請求項でいう第1位置の一例)との間を昇降可能となっている。昇降床18が床面近傍の位置に位置決めされると、側壁14の下端が開放されると共に、駆動機構20に処理テーブル30が着脱可能となる(図3に示す状態)。
【0030】
また、駆動機構20に処理テーブル30が取付けられた状態で昇降床18が炉体11の下端近傍の位置に位置決めされると、処理テーブル30が側壁14の下端開口部を閉じる(図4に示す状態)。処理テーブル30が側壁14の下端開口部を閉じると、処理テーブル30と炉体12によって、被処理物Wを熱処理する炉内空間26が形成される。図4、5に示すように、炉内空間26には主炉床34の上面及び副炉床36の上面が露出しており、副炉床36の上面に載置された被処理物Wが炉内空間26に収容される。なお、炉内空間26には、図示しないヒータ50(図10に図示)とガス供給装置52(図10に図示)が配設されている。ヒータ50により被処理物Wが加熱され、ガス供給装置52によって炉内空間26の雰囲気が制御される。
【0031】
なお、図6、7に示すように、昇降床18には、処理テーブル30に取付けられたドグ38を検出するための位置センサ40が設けられている。位置センサ40から出力される検出信号は、ドグ38と対向するときにONとなり、ドグ38と対向しないときはOFFとなる。図7に示すように、ドグ38は一定の幅を有する板材であるため、主炉床34が予め設定された設定角度範囲にあるときに、位置センサ40から出力される検出信号はONとなる。
【0032】
熱処理炉本体10は、制御部をさらに備えている。制御部は、例えば、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成されている。制御部は、生産管理装置60と位置センサ40に接続されており、生産管理装置60からの指示や、位置センサ40からの検出信号が入力される。制御部は、入力される指示や検出信号に基づいて、熱処理炉本体10の各部の動作を制御する。すなわち、制御部は、昇降装置24を制御することで昇降床18を昇降させ、駆動装置(20,22)を制御することで処理テーブル30の回転を制御し、ヒータ50とガス供給装置52を制御することで炉内温度及び炉内雰囲気を制御する。
【0033】
なお、本実施例では、被処理物Wへの熱処理が終了して処理テーブル30の回転を停止させる時は、制御部は、処理テーブル30が予め設定された位置(角度位置)に停止するように駆動装置(20,22)を制御する。すなわち、制御部は、位置センサ40から出力される検出信号に基づいて駆動装置(20,22)を制御することで、処理テーブル30は予め設定された位置に停止する。処理テーブル30が予め設定された位置に停止するため、停止時の主炉床34と副炉床36の位置関係が一定となり、その結果、駆動機構20の第1連結部46と第2連結部44の位置関係も一定となる。後述するように、本実施例では、搬送台車70で処理テーブル30を持ち上げる際に、搬送台車70に対して処理テーブル30が予め設定された位置関係となるように、搬送台車70が処理テーブル30を持ち上げる。そして、搬送台車70を熱処理炉本体10に対して予め設定された位置に位置決めすることで、駆動機構20に対して処理テーブル30を接続可能な位置関係に位置決めするようにしている。これによって、本実施例では、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易化している。なお、処理テーブル30を予め設定された位置(角度位置)に停止させる方法としては、公知の種々の方法を採用することができる。例えば、制御部は、位置センサ40から出力される検出信号がOFFからONに切り替わったときに駆動装置(20,22)の回転を停止させてもよいし、あるいは、熱処理が終了したときに処理テーブル30の回転速度を低速に切り替え、その後に位置センサ40から出力される検出信号がOFFからONに切り替わったときに駆動装置(20,22)の回転を停止させてもよい。処理テーブル30が低速で回転する状態から停止させることで、処理テーブル30の停止位置の精度を高めることができる。
【0034】
次に、搬送台車70について説明する。図10,11に示すように、搬送台車70は、車体フレーム(74,80)と、車体フレーム(74,80)に昇降可能に支持される一対のアーム72と、を備えている。
【0035】
図11、13に示すように、一対のアーム72は、搬送台車70の幅方向に間隔を空けて配置され、搬送台車70の前後方向に互いに平行に伸びている。一対のアーム72の後端は連結フレーム74で連結され、一対のアーム72と連結フレーム74が一体化されている。一体化された一対のアーム72は、車体フレーム(74,82)の上端に設けられた昇降機構88により上下方向に昇降可能となっている。具体的には、作業者がハンドル86を操作することで昇降機構88が動作し、一対のアーム72が上下方向に移動するようになっている。
【0036】
図13に示すように、一対のアーム72のそれぞれの上面には、平面視すると長方形状の案内板76が固定されている。また、各アーム72の内側面(すなわち、他方のアーム72と対向する面)には、第1ストッパ部材78が設けられている。案内板76及び第1ストッパ部材78は、処理テーブル30の下面に設けられた4つのガイド部材35と協働することで、一対のアーム72に対する処理テーブル30の位置(搬送台車70の進行方向の位置)及び姿勢(回転方向の角度位置)を精度よく制御する。すなわち、2つのガイド部材35が一方のアーム72の案内板76の内縁に当接し、他の2つのガイド部材35が他方のアーム72の案内板76の内縁に当接することで、一対のアーム72に対して処理テーブル30の姿勢(回転方向の位置)が確定する。また、1つのガイド部材35が一方のアーム72の第1ストッパ部材78に当接し、他の1つのガイド部材35が他方のアーム72の第1ストッパ部材78に当接することで、一対のアーム72に対する処理テーブル30の位置(搬送台車72の進行方向の位置)が確定する。これにより、搬送台車70に対する処理テーブル30の位置及び姿勢を精度よく制御することができる。
【0037】
車体フレーム(74,80)は、搬送台車70の前後方向に伸びる一対の水平フレーム80と、水平フレーム80の後端に取付けられた一対の垂直フレーム82を備えている。一対の垂直フレーム82は、搬送台車70の幅方向に間隔を空けて互いに平行に配置され、搬送台車70の高さ方向に伸びている。一対の垂直フレーム82は、作業者が把持する取っ手84により連結されている。一対の垂直フレーム82が連結されることで、一対の水平フレーム80と一対の垂直フレーム82が一体化されている。
【0038】
一対の水平フレーム80は、搬送台車70の幅方向に間隔を空けて互いに平行に配置されると共に、搬送台車70が走行する床面の近傍を床面と平行に配置されている。水平フレーム80の前端には、内前輪90と、その内前輪90のさらに前方に位置する当接部材81が取付けられている。内前輪90には、舵角の変更が不能な車輪が用いられている。当接部材81は、搬送台車70をその進行方向に位置決めするために用いられる。水平フレーム80の後端には、内後輪92が取付けられている。内後輪92には、舵角の変更が可能な車輪が用いられている。このため、作業者が取っ手84に加える力の方向を変えることで、搬送台車70の進行方向を変えることができる。
【0039】
また、進行方向右側の水平フレーム80の右側面(すなわち、外側の側面)には、第1外輪94が取付けられている(図11参照)。第1外輪94は、右側の水平フレーム80の前方よりの位置と後方よりの位置のそれぞれに設けられている。進行方向左側の水平フレーム80の左側面(すなわち、外側の側面)には、第2外輪96が取付けられている(図10参照)。第2外輪96も、第1外輪94と同様、左側の水平フレーム80の前方よりの位置と後方よりの位置のそれぞれに設けられている。第1外輪94及び第2外輪96は、舵角の変更が不能な車輪であり、床面に設置された案内レール110,112にそれぞれ案内される。案内レール110,112の上面は床面より上方に位置するため、第1外輪94及び第2外輪96は、床面とは直接接触しないようになっている。図10に示すように、案内レール110の上面は水平な水平面となっている。このため、案内レール110に案内される第1外輪94の接触面も平坦面となっている。一方、案内レール112の上面は上方に凸な三角形状となっている。このため、案内レール110と接触する第2外輪96の外周面は、案内レール112の上面の形状に対応する凹形状となっている。上方に凸となる三角形状の案内レール112で第2外輪96を案内することで、搬送台車70は、その進行方向及び幅方向の位置を精度よく調整することができる。
【0040】
上述した案内レール110,112は、処理テーブル30の積み上げ、積み降ろし、駆動機構20への取付け及び取外しを行う作業場所に設けられている。このような作業場所は、積みエリアAと、降ろしエリアBと、熱処理エリアCのそれぞれに設けられる。図11に示すように、案内レール110,112の隣接する位置には、第2ストッパ部材114が配置されている。搬送台車70が案内レール110,112に案内されて移動する際(例えば、図11の左側から右側に移動する際)に、水平フレーム80の前端に取付けられた当接部材81が第2ストッパ部材114に当接することで、搬送台車70が第2ストッパ部材114を超えて移動することが規制される。したがって、第1外輪94及び第2外輪96が案内レール110,112に案内されながら搬送台車70が移動することで、搬送台車70は、その進行方向及び幅方向の位置が精度よく制御され、また、当接部材81が第2ストッパ部材114に当接することで進行方向の位置が精度よく制御される。これによって、搬送台車70は、各作業場所に予め設定された位置決め位置に精度よく位置決めすることができる。
【0041】
なお、図12に示すように、積みエリアAや降ろしエリアBにおいては、上述した案内レール110,112に挟まれるように載置台120が設置される。載置台120には処理テーブル30が載置される。図13に示すように、載置台120は、水平方向に伸びる互いに平行な一対の支持フレーム122を備えている。支持フレーム122の外側面(アーム72と対向する側の面)には、支持フレーム122の軸線方向に間隔を空けて2つの案内部124が設けられている。載置台120に処理テーブル30が載置されると、一方の支持フレーム122の2つの案内部124に処理テーブル30の2つのガイド部材35が当接し、他方の支持フレーム122の2つの案内部124に処理テーブル30の2つのガイド部材35が当接する。これによって、載置台120に対する処理テーブル30の姿勢(回転方向の位置)が所望の姿勢となるように制御される。
【0042】
ここで、載置台120に載置された処理テーブル30を搬送台車70に載置する場合は、まず、搬送台車70は、第1外輪94及び第2外輪96が案内レール110,112に案内されながら載置台120に向かって接近する。そして、搬送台車70の当接部材81が第2ストッパ部材114に当接すると、搬送台車70の移動を停止する。この際、一対のアーム72の高さは、処理テーブル30の下面よりも下方の位置としておく。次いで、ハンドル86を操作して昇降機構88を作動させ、一対のアーム72を上昇させる。この際、図14,15に示すように、アーム72の案内板76がガイド部材35のガイド面35aに案内されながらアーム72が上昇し、案内板76の上面が処理テーブル30の下面に固定された第1支持板37に当接する。4つのガイド部材35のガイド面35aにアーム72の案内板76が案内されることで、アーム72に対する処理テーブル30の位置及び姿勢の微調整が行われる。案内板76の上面が第1支持板37に当接した後、アーム72がさらに上昇することで、図16に示すように、搬送台車70に処理テーブル30が載置される。
【0043】
搬送台車70に載置した処理テーブル30を熱処理炉本体10へ取付けるためには、まず、熱処理炉本体10の近傍に設けられた案内レール110,112に案内されながら搬送台車70を予め設定された位置に位置決めする。上述したように、搬送台車70は熱処理炉本体10に対して予め設定された位置に精度よく位置決めされ、また、搬送台車70のアーム72に対する処理テーブル30の位置及び姿勢は予め設定された位置及び姿勢となり、さらに、熱処理炉本体10の駆動機構20の第1連結部46と第2連結部44の位置関係も予め設定された関係となっている。このため、アーム72を下降させるだけで、熱処理炉本体10の駆動機構20に処理テーブル30を取付けることができる。なお、駆動機構20から処理テーブル30を取り外すときは、上記の手順と逆の手順で行えばよい。また、駆動機構20から取り外した処理テーブル30を降ろしエリアBに設置された載置台120へ積み降ろす手順は、載置台120に載置された処理テーブル30を搬送台車70に載置する場合と逆の手順で行えばよい。
【0044】
本実施例の熱処理炉システム100では、複数の熱処理炉本体10と、これら複数の熱処理炉本体10のそれぞれに共用して用いられる複数の処理テーブル30を備えている。このため、複数の熱処理炉本体10を効率的に稼働して、被処理物Wの熱処理を効率的に行うことができる。また、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業が必要となるが、上述したように、処理テーブル30が回転を停止する位置は予め設定された位置となり、かつ、搬送台車70を熱処理炉本体10に位置決めする位置も予め設定された位置となり、さらに、搬送台車70に対する処理テーブル20の位置及び姿勢も予め設定された位置及び姿勢となるように制御されている。したがって、駆動機構20に対して処理テーブル30を接続可能な位置関係に容易に位置決めすることができ、処理テーブル30を熱処理炉本体10に取付ける作業を容易化することができる。
【0045】
なお、上述した実施例では、作業者が搬送台車70を操作し、作業者によって処理テーブル30を熱処理炉本体10の駆動機構20に接続していたが、本明細書に開示の技術はこのような形態に限られない。例えば、搬送台車70を自動化し、搬送台車70が自律的に処理テーブル30を駆動機構20に接続するようにしてもよい。これによって、搬送台車70を自動化し、熱処理炉システムを省人化することができる。
【0046】
また、上述した実施例では、処理テーブル30に4つのガイド部材35を設け、これらガイド部材35を搬送台車70の案内板76で案内することで、搬送台車70に対した処理テーブル30を位置決めしたが、本明細書に開示の技術はこのような形態に限られない。例えば、処理テーブル30に案内板を設け、搬送台車70のアーム72の基端部と先端部のそれぞれにガイド部材を設けるような構成としてもよい。また、上述した実施例では、2本のアーム72のそれぞれに第1ストッパ部材78を設けたが、2本のアーム72の一方にのみ第1ストッパ部材78を設けてもよい。
【0047】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 熱処理炉
11 炉体
12 天井壁
14 側壁
16 架台
18 昇降床
20 駆動機構
22 駆動装置
24 昇降装置
26 炉内空間
28 開口
30 処理テーブル
32 大径部
33 小径部
34 主炉床
35 ガイド部材
35a ガイド面
36 副炉床
37 第1支持板
38 ドグ
40 位置センサ
42 第2駆動軸
44 第2連結部
46 第1連結部
48 第2支持板
50 ヒータ
52 ガス供給装置
70 搬送台車
72 アーム
74 連結フレーム
76 案内板
78 第1ストッパ部材
84 取っ手
86 ハンドル
88 昇降機構
100 熱処理炉システム
114 第2ストッパ部材
120 載置台
122 支持フレーム
124 案内部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16