(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20240208BHJP
F02B 77/11 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F02B77/00 E
F02B77/11 D
(21)【出願番号】P 2021077527
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴大
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-106619(JP,A)
【文献】特開2011-063100(JP,A)
【文献】特開2012-197711(JP,A)
【文献】特開2012-211556(JP,A)
【文献】特開2013-199879(JP,A)
【文献】特開2016-217188(JP,A)
【文献】特開2018-062856(JP,A)
【文献】特開2019-002357(JP,A)
【文献】実開昭62-014138(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0102182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/14
F02B 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド(1)と、シリンダヘッド(1)に組み付けられた排気管(20)と、排気管(20)をその周囲から覆う遮熱カバー(21)と、遮熱カバー(21)の端壁(21a)と対向する側に配置されたベルトテンショナ(22)を備えた、エンジンにおいて、
シリンダヘッド(1)に組み付けられたエンジン吊り金具(23)と、遮熱カバー(21)の(前の)端壁(21a)に沿う遮熱板(24)を備え、遮熱板(24)は、エンジン吊り金具(23)から導出され、遮熱カバー(21)の端壁(21a)とベルトテンショナ(22)の間に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
エンジン吊り金具(23)は、エンジン冷却ファン(7)の排気側の送風路(9b)の送風方向に沿う直進ガイド部(23a)と、直進ガイド部(23a)の縁部から折り曲げられた冷却風受け止め部(23b)を備えている、ことを特徴するエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載されたエンジンにおいて、
エンジン吊り金具(23)は、エンジン冷却ファン(7)の送風路(9)の送風方向に沿う直進ガイド部(23a)と、直進ガイド部(23a)の縁部から折り曲げられた冷却風受け止め部(23b)を備えている、ことを特徴するエンジン。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載されたエンジンにおいて、
遮熱板(24)は、遮熱カバー(21)の端壁(21a)の周縁部よりもその周方向外側に導出された延長部(24a)(24b)を備え、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、シリンダヘッド(1)とベルトテンショナ(22)の間にエンジン冷却ファン(7)の羽根(7a)と重なる冷却風導入隙間(25)を備えている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載されたエンジンにおいて、
遮熱板(24)の延長部(24a)は、エンジン冷却ファン(7)の送風路(9)の送風方向下流側に向けて折り曲げられ、排気側の送風路(9b)の送風方向に対して傾斜している、ことを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
ベルトテンショナ(22)が発電機(26)である、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、ベルトテンショナの温度上昇が抑制されるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドと、シリンダヘッドに組み付けられた排気管と、排気管を覆う遮熱カバーと、遮熱カバーの端壁と対向する側に配置されたベルトテンショナを備えた、エンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-199880号公報(
図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 ベルトテンショナが温度上昇し易い。
特許文献1のエンジンでは、遮熱カバーの端壁とベルトテンショナが対面しており、遮熱カバーの端壁の輻射熱によりベルトテンショナが温度上昇し易い。
ベルトテンショナの温度上昇は、熱劣化や熱損傷の要因となるため、これを回避する必要がある。
【0005】
本発明の課題は、ベルトテンショナの温度上昇が抑制されるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図3に例示するように、このエンジンは、シリンダヘッド(1)に組み付けられたエンジン吊り金具(23)と、遮熱カバー(21)の端壁(21a)に沿う遮熱板(24)を備え、遮熱板(24)は、エンジン吊り金具(23)から導出され、遮熱カバー(21)の端壁(21a)とベルトテンショナ(22)の間に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果》 ベルトテンショナ(22)の温度上昇が抑制される。
このエンジンでは、遮熱カバー(21)の端壁(21a)からの輻射熱が遮熱板(24)で遮られ、遮熱板(24)の蓄熱は、遮熱板(24)とエンジン吊り金具(23)の両方から放熱されるため、ベルトテンショナ(22)の温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジンのデリバリーパイプの冷却構造を説明する図で、
図5のI‐I線断面図と水ポンプとエンジン冷却ファンを重ねた正面図である。
【0009】
【
図4】本発明の実施形態に係るエンジンの正面図である。
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図8は本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図で、この実施形態では、立形水冷式の直列多気筒形デュアルフューエルエンジンについて説明する。
【0012】
図4~8に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(27)と、シリンダブロック(27)の上部に組み付けられたシリンダヘッド(1)と、シリンダヘッド(1)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(28)と、クランク軸(8)の中心軸線(8a)の向きを前後方向として、シリンダブロック(27)の前側に組み付けられたフロントケース(29)と、シリンダブロック(27)の後部に配置されたフライホイールハウジング(30)と、シリンダブロック(27)の下部に組み付けられたオイルパン(31)を備えている。
図8に示すように、フライホイールハウジング(30)内にはフライホイール(30a)が収容されている。
このエンジンは、吸気装置と、燃料供給装置と、点火装置と、排気装置と、ブリーザ装置と、水冷装置と、潤滑装置を備えている。
【0013】
このエンジンの吸気装置は、
図4に示すように、エンジンの幅方向を横方向として、シリンダヘッド(1)の横一側に組み付けられた吸気マニホルド(3)と、
図5に示す吸気マニホルド(3)のコレクタ部(3a)の前端に組み付けられたスロットルボディ(32)と、スロットルボディ(32)の前部に組み付けられたガスミキサ(6)と、
図7に示すガスミキサ(6)に接続されたエアクリーナ(33)を備え、エアクリーナ(33)からのエア(33a)がガスミキサ(6)とスロットルボディ(32)を順に介して吸気マニホルド(3)に供給されるように構成されている。
図2に示すように、吸気マニホルド(3)は、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに架設された方形箱形のコレクタ部(3a)と、コレクタ部(3a)の横側から下向きに導出された複数のブランチ部(3b)を備え、各ブランチ部(3b)は、シリンダヘッド(1)の吸気ポート(1a)と連通し、
図7に示すエアクリーナ(33)からガスミキサ(6)とスロットルボディ(32)を順に介して
図2に示すコレクタ部(3a)に導入されたエア(33a)は、各ブランチ部(3b)を介して各吸気ポート(1a)に分配される。
図2に示すように、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、ブランチ部(3b)は、いずれもL字形に形成されている。
このエンジンは、4気筒エンジンで、ブランチ部(3b)と吸気ポート(1a)は、それぞれ4本ずつ設けられている。4本のブランチ部(3b)は、
図5と
図7に示されている。
【0014】
図7に示すように、このエンジンの燃料供給装置は、液体燃料タンク(34)と、液体燃料供給ポンプ(35)と、デリバリーパイプ(5)と、デリバリーパイプ(5)に取り付けられた複数の燃料インジェクタ(4)を備え、各燃料インジェクタ(4)はシリンダヘッド(1)に差し込まれ、液体燃料タンク(34)の液体燃料(34a)が液体燃料供給ポンプ(35)によりデリバリーパイプ(5)に供給され、
図2に示すように、各燃料インジェクタ(4)から各吸気ポート(1a)を通過するエア(33a)に液体燃料(34a)が噴射されるように構成されている。
図5,
図7に示すように、燃料インジェクタ(4)は4本配置されている。
液体燃料(34a)にはガソリンが用いられている。
【0015】
図1に示すように、このエンジンの燃料供給装置は、液化ガス燃料源(36)と、ベーパライザ(37)と、ガスレギュレータ(10)と、ガスミキサ(6)を備え、液化ガス燃料源(36)の液化ガス燃料(36a)がベーパライザ(37)で気化されてガス燃料(37a)となり、ガス燃料(37a)がガスレギュレータ(10)で調圧され、ガスミキサ(6)に供給され、ガスミキサ(6)でエアクリーナ(33)からのエア(33a)と混合されて混合気が形成され、混合気が
図7に示すスロットルボディ(32)から吸気マニホルド(3)のコレクタ部(3a)に導入され、各ブランチ部(3b)を介して
図2に示す各吸気ポート(1a)に分配される。
図1に示す液化ガス燃料源(36)には、液化ガス燃料ボンベが用いられている。液化ガス燃料(36a)には、液化石油ガス、液化天然ガス、その他の液化ガス燃料を用いることができる。
【0016】
図1に示すように、このエンジンの燃料供給装置は、燃料切替操作装置(38)と、電子制御装置(39)を備え、燃料切替操作装置(38)の燃料切替操作に基づいて、電子制御装置(39)の制御により、液体燃料運転とガス燃料運転が相互に切替られる。
燃料切替操作装置(38)は、燃料切替操作レバー(38a)であり、電子制御装置(39)はエンジンECU(39a)である。ECUは電子制御ユニットの略称である。
電子制御装置(39)は、ガスレギュレータ(10)と燃料インジェクタ(4)に電気的に接続され、燃料切替操作装置(38)を液体燃料側に投入すると、ガスレギュレータ(10)の調量弁(図示せず)は閉弁され、燃料インジェクタ(4)の電磁弁(図示せず)が所定タイミングで所定時間開弁されることにより、所定タイミングで所定量の液体燃料(34a)が噴射されて液体燃料運転が行われ、燃料切替操作装置(38)をガス燃料側に投入すると、燃料インジェクタ(4)の電磁弁が常時閉弁されると共に、ガスレギュレータ(10)の調量弁が開弁されることにより、ガスレギュレータ(10)からガスミキサ(6)に調量されたガス燃料(37a)が供給され、ガス燃料運転が行われる。
【0017】
図2に示すように、このエンジンの点火装置は、電子制御装置(39)と、イグニッションコイル(40)と、点火プラグ(図示せず)と、点火プラグのプラグキャップ(13)を備え、電子制御装置(39)の制御により、イグニッションコイル(40)で発生させた高電圧で各点火プラグの電極間からスパークを飛ばし、各シリンダ(2)内の液体燃料またはガス燃料の混合気に点火する。
各イグニッションコイル(40)は、各プラグキャップ(13)に一体に取り付けられている。各プラグキャップ(13)は、各点火プラグに接続されている。点火プラグは、シリンダヘッド(1)に組み付けられ、スパークを飛ばす電極は各シリンダ(2)内に臨んでいる。
【0018】
このエンジンの排気装置は、
図7に示すシリンダヘッド(1)の横一側に組み付けられた吸気マニホルド(3)とは反対の横他側に組み付けられた
図6図示の排気マニホルド(20a)を備えている。
【0019】
図7に示すように、このエンジンのブリーザ装置は、PCVシステム(11)を備えている。PCVはポジティブクランクケースベンチレーションの略称である。
PCVシステム(11)は、シリンダヘッドカバー(28)に配置されたブリーザ室(42)と、ブリーザ室出口に配置されたPCVバルブ(43)と、PCVバルブ(43)から導出されたブローバイガス導出チューブ(44)と、ブローバイガス導出チューブ(44)の導出端に接続された吸気マニホルド(3)のブローバイガス導入口(3c)と、
図1,
図4に示すエアクリーナ(33)とガスミキサ(6)の間から導出されたフレッシュエア導出チューブ(45)と、フレッシュエア導出チューブ(45)の導出端に接続されたフレッシュエア導入ケース(12)を備え、フレッシュエア導入ケース(12)はフロントケース(29)を介して
図2に示すクランク室(2c)と連通している。
【0020】
PCVシステム(11)では、通常運転時は、
図2に示す各シリンダ(2)からクランク室(2c)内に流出したブローバイガス(42a)は、
図7に示すブリーザ室(42)からPCVバルブ(43)を介して吸気マニホルド(3)に吸い出され、
図2に示すクランク室(2c)内は、
図1に示すフレッシュエア導出チューブ(45)からフレッシュエア導入ケース(12)内とフロントケース(29)内を順に介して導入されたフレッシュエア(33b)で換気される。
【0021】
図1に示すように、このエンジンの水冷装置は、水ポンプ(15)と、シリンダ冷却水ジャケット(2b)と、ヘッド冷却水ジャケット(1b)と、ヘッド冷却水導出ケース(14)と、ラジエータ(16)と、ラジエータ入口側ホース(18)と、ラジエータ出口側ホース(19)と、バイパスチューブ(14b)を備えている。
ヘッド冷却水導出ケース(14)は、サーモスタット室(14a)と、サーモスタット室(14a)に収容されたサーモスタット弁(14d)と、ラジエータ側出口(14e)と、バイパス側出口(14f)を備えている。また、水ポンプ(15)は、バイパス入口ケース(15a)を備えている。
【0022】
図1に示すように、ヘッド冷却水導出ケース(14)のラジエータ側出口(14e)は、ラジエータ入口側ホース(18)を介してラジエータ(16)の熱水入口に連通し、ラジエータ(16)の放熱水出口はラジエータ出口側ホース(19)を介して水ポンプ(15)の放熱水入口(15c)と連通している。
ヘッド冷却水導出ケース(14)のバイパス側出口(14f)は、バイパスチューブ(14b)を介して水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)と連通している。
【0023】
図1に示すヘッド冷却水ジャケット(1b)からサーモスタット室(14a)に流入したエンジン冷却水(1c)の水温が比較的低い場合には、サーモスタット弁(14d)が閉弁状態を維持し、冷却水ポンプ(15)で圧送されたエンジン冷却水(1c)は、シリンダ冷却水ジャケット(2b)と、ヘッド冷却水ジャケット(1b)と、ヘッド冷却水導出ケース(14)のサーモスタット室(14a)を経て、エンジン冷却水(14c)の矢印で示すように、バイパス側出口(14f)と、バイパスチューブ(14b)を順に介してバイパス入口ケース(15a)から水ポンプ(15)に還流し、ラジエータ(16)を迂回することにより、水温を速やかに昇温させる。
【0024】
図1に示すヘッド冷却水ジャケット(1b)からサーモスタット室(14a)に流入したエンジン冷却水(1c)の水温が比較的高く(80°C以上)なってくると、サーモスタット弁(14d)が全開し、冷却水ポンプ(15)で圧送されたエンジン冷却水(1c)は、シリンダ冷却水ジャケット(2b)と、ヘッド冷却水ジャケット(1b)と、ヘッド冷却水導出ケース(14)のサーモスタット室(14a)を介してエンジン冷却水(1c)の矢印のように、ラジエータ側出口(14e)と、ラジエータ入口側ホース(18)と、ラジエータ(16)と、ラジエータ出口側ホース(19)を順に介して水ポンプ(15)に還流し、ラジエータ(16)による放熱で冷却される。
【0025】
図1に示すラジエータ(16)は、エンジン冷却ファン(7)で起こされるエンジン冷却風で空冷される。
図4に示すように、エンジン冷却ファン(7)のファンプーリ(7e)は、クランクプーリ(8b)からファンベルト(8c)を介して駆動され、ファンベルト(8c)はベルトテンショナ(22)により張力が調節される。
ベルトテンショナ(22)は、下端の支点(22a)を中心として、上端が揺動し、上端は所定の揺動位置でステー(22b)に固定される。
ベルトテンショナ(22)のテンションプーリ(22c)はベルトカバー(22d)で横側から覆われている。
【0026】
図4に示すように、このエンジンの潤滑装置は、フロントケース(29)内に配置されたオイルポンプ(46)と、フロントケース(29)の横側に重ねて取り付けられたオイルフィルタ(47)及びオイルクーラ(48)と、シリンダブロック(27)に形成されたオイルギャラリ(図示せず)を備え、オイルパン(31)内のエンジンオイル(図示せず)がオイルポンプ(46)の圧送力で、オイルフィルタ(47)及びオイルクーラ(48)を通過し、オイルギャラリからクランク軸(8)の軸受(図示せず)等の摺動部に供給される。
【0027】
図1に示すように、このエンジンは、複数の燃料インジェクタ(4)と、複数の燃料インジェクタ(4)に液体燃料(34a)を分配するデリバリーパイプ(5)と、ガスミキサ(6)を備え、液体燃料運転とガス燃料運転が相互に切り替え可能とされ、液体燃料運転時には、
図2に示すエア(33a)に燃料インジェクタ(4)から液体燃料(34a)が噴射されて混合気が形成され、ガス燃料運転時には、
図1に示すガスミキサ(6)でエア(33a)とガス燃料(37a)が混合されて混合気が形成される。
この種のエンジンでは、ユーザーが扱いやすい燃料を選択して運転でき、クリーンなイメージを求められる場合には、クリーンなイメージのLPG等のガス燃料を選択して使用できる利点がある。
【0028】
図1に示すように、このエンジンは、軸流式のエンジン冷却ファン(7)を備え、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、デリバリーパイプ(5)の全部がエンジン冷却ファン(7)の羽根(7a)と重なる位置に配置され、デリバリーパイプ(5)の周囲が送風路(9)とされ、吸気マニホルド(3)のコレクタ部(3a)の端部にガスミキサ(6)が取り付けられ、このガスミキサ(6)が送風路(9)の送風入口(9a)にその周囲側(上側)から臨んでいる。
【0029】
図1に示すように、このエンジンでは、エンジン冷却ファン(7)で起こされたエンジン冷却風(7f)は、羽根(7a)と重なるデリバリーパイプ(5)の周囲の送風路(9)に多量に供給され、ガス燃料運転時にデリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
図1に示すように、送風路(9)の送風入口(9a)に供給されたエンジン冷却風(7f)は、ガスミキサ(6)により、送風入口(9a)の周囲方向(上方向)への拡散が抑制されるため、デリバリーパイプ(5)を冷却するエンジン冷却風(7f)の風量は比較的多くなる。
なお、
図1に示すように、エンジン運転中、シリンダヘッド(1)からの輻射熱を受けているガスミキサ(6)は、ガス燃料運転時には、内部を通過するエア(33a)とガス燃料(37a)により冷却され、その表面温度は比較的低温に維持されるため、ガスミキサ(6)の表面で案内されたエンジン冷却風(7f)は、温度上昇することなく、送風路(9)に供給される。
また、デリバリーパイプ(5)は、比較的表面温度の低い吸気マニホルド(3)とシリンダヘッドカバー(28)の間に配置されているため、これらからの輻射熱による液体燃料(34a)の温度上昇は小さいか殆どない。
【0031】
図1に示すように、このエンジンでは、ガスミキサ(6)により、送風入口(9a)の周囲方向(上方向)へのエンジン冷却風(7f)の拡散が抑制されるため、ガスミキサ(6)をエンジン冷却風(7f)の拡散防止部品として兼用することができる。
【0032】
図2に示すように、このエンジンでは、デリバリーパイプ(5)の周壁(5a)は板金で形成されている。
このエンジンでは、鋳物製のものに比べ、デリバリーパイプ(5)を細身にでき、熱容量を小さくできると共に、周囲の送風路(9)を広げることができ、デリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の冷却効率が高まる。
【0033】
図2に示すように、このエンジンでは、デリバリーパイプ(5)の周壁(5a)は方形筒で、その一辺部分(斜め下の一辺部分)に燃料インジェクタ(4)が取り付けられ、残り三辺部分が送風路(9)に臨んでいる。
このエンジンでは、デリバリーパイプ(5)の周壁(5a)の放熱面積が広く、デリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の冷却効率が高まる。
【0034】
図1に示すように、このエンジンでは、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、デリバリーパイプ(5)がエンジン冷却ファン(7)の羽根(7a)の先端側半部と重なる位置に配置されている。
このエンジンでは、回転速度が速い羽根(7a)の先端側半部で発生する多量のエンジン冷却風がデリバリーパイプ(5)の周囲の送風路(9)に供給され、デリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の冷却効率が高まる。
【0035】
図1に示すように、このエンジンでは、ガスミキサ(6)にガスレギュレータ(10)が接続され、このガスレギュレータ(10)が送風路(9)の送風入口(9a)にその周囲側(上側)から臨んでいる。
【0036】
このエンジンでは、送風路(9)の送風入口(9a)に供給されたエンジン冷却風は、ガスレギュレータ(10)により、送風入口(9a)の周囲方向(上方向)への拡散が抑制されるため、デリバリーパイプ(5)を冷却するエンジン冷却風(7f)の風量は比較的多くなる。
なお、エンジン運転中、シリンダヘッド(1)からの輻射熱を受けているガスレギュレータ(10)のは、ガス燃料運転時には、内部を通過するガス燃料(37a)により冷却され、その表面温度は比較的低温に維持され、ガスレギュレータ(10)の表面で拡散が抑制されたエンジン冷却風は、温度上昇することなく、送風路(9)に供給される。
【0037】
また、このエンジンでは、ガスレギュレータ(10)により、送風入口(9a)の周囲方向(上方向)へのエンジン冷却風(7f)の拡散が抑制されるため、ガスレギュレータ(10)をエンジン冷却風(7f)の拡散防止部品として兼用することができる。
【0038】
図1に示すように、このエンジンでは、PCVシステム(11)のフレッシュエア導入ケース(12)を備え、このフレッシュエア導入ケース(12)が送風路(9)の送風入口(9a)にその周囲側(下側)から臨んでいる。
【0039】
このエンジンでは、送風路(9)の送風入口(9a)に供給されたエンジン冷却風(7f)は、フレッシュエア導入ケース(12)により、送風入口(9a)の周囲方向(下方)への拡散が抑制されるため、デリバリーパイプ(5)を冷却するエンジン冷却風(7f)の風量は比較的多くなる。
なお、エンジン運転中、シリンダヘッド(1)からの輻射熱を受けているフレッシュエア導入ケース(12)の表面は、エンジン運転中、内部を通過するフレッシュエア(33b)により冷却され、その表面温度は比較的低温に維持され、フレッシュエア導入ケース(12)の表面で拡散が抑制されたエンジン冷却風(7f)は、温度上昇することなく、送風路(9)に供給される。
【0040】
また、このエンジンでは、フレッシュエア導入ケース(12)により、送風入口(9a)の周囲方向(下方)へのエンジン冷却風(7f)の拡散が抑制されるため、フレッシュエア導入ケース(12)をエンジン冷却風(7f)の拡散防止部品として兼用することができる。
【0041】
図1,2に示すように、このエンジンは、点火プラグのプラグキャップ(13)を備え、点火プラグのプラグキャップ(13)の外周面が送風路(9)に臨んでいる。
このエンジンでは、点火プラグのプラグキャップ(13)が送風路(9)を通過するエンジン冷却風(7f)で冷却され、点火プラグやプラグキャップ(13)の熱損傷や熱劣化が抑制される。
【0042】
図1に示すように、このエンジンは、シリンダヘッド(1)に取り付けられたヘッド冷却水導出ケース(14)を備え、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、シリンダ中心軸線(2a)と平行で、エンジン冷却ファン(7)の回転中心(7b)を通過するファン中央仮想線(7c)を想定すると共に、ファン中央仮想線(7c)を境界として、デリバリーパイプ(5)の周囲にある吸気側の送風路(9)の送風入口(9a)と反対側に位置する排気側の送風領域(7d)を想定した場合に、排気側の送風領域(7d)にヘッド冷却水導出ケース(14)が配置されている。
【0043】
このエンジンでは、ヘッド冷却水導出ケース(14)の熱は、排気側の送風領域(7d)を通過するエンジン冷却風(7g)に吸熱され、吸気側の送風路(9)には流入し難いため、デリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の冷却効率が高まる。
なお、エンジン運転中、ヘッド冷却水導出ケース(14)内をシリンダヘッド(1)から流出した直後の高温のエンジン冷却水(1c)が通過するため、そのヘッド冷却水導出ケース(14)の表面温度は比較的高温になるが、その熱は吸気側の送風路(9)には流入し難い。
【0044】
図1に示すように、このエンジンは、ヘッド冷却水導出ケース(14)に設けられたサーモスタット室(14a)と、サーモスタット室(14a)から導出されたバイパスチューブ(14b)と、バイパスチューブ(14b)に接続された水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)を備え、サーモスタット室(14a)のエンジン冷却水(14c)がラジエータ(16)を迂回して水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)内に吸引されるように構成されている。
図1に示すように、このエンジンでは、エンジン冷却ファン(7)が、中心側の羽根取り付け基板(7h)と、羽根取り付け基板(7h)の周縁から放射状に突出した羽根(7a)を備え、クランク軸(8)と平行な向きに見て、水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)がエンジン冷却ファン(7)の羽根取り付け基板(7h)と重なる位置に配置されている。
【0045】
このエンジンでは、水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)の熱は、吸気側の送風路(9)には流入し難いため、デリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の冷却効率が高まる。
なお、エンジン運転中、水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)をヘッド冷却水導出ケース(14)から流出した直後の高温のエンジン冷却水(14c)が通過するため、バイパス入口ケース(15a)の表面温度は比較的高温になるが、エンジン冷却ファン(7)の羽根取り付け基板(7h)と重なるバイパス入口ケース(15a)の熱はエンジン冷却風(7f)には伝わり難く、吸気側の送風路(9)には流入し難い。
【0046】
図1に示すように、水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)に取り付けられた放熱水入口パイプ(15b)と、シリンダヘッド(1)のヘッド冷却水ジャケット(1b)を備え、ヘッド冷却水ジャケット(1b)からのエンジン冷却水(1c)がエアコンディショナ(17)の放熱器(17a)を介して放熱水入口パイプ(15b)から水ポンプ(15)のバイパス入口ケース(15a)に吸引されるように構成されている。
図1に示すように、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、サーモスタット室(14a)及びバイパス入口ケース(15a)よりもデリバリーパイプ(5)寄りに放熱水入口パイプ(15b)が配置されている。
【0047】
このエンジンでは、エンジン運転中、比較的高温のサーモスタット室(14a)及びバイパス入口ケース(15a)からの輻射熱は、比較的低温の放熱水入口パイプ(15b)で遮られ、デリバリーパイプ(5)寄りの送風入口(9a)を通過するエンジン冷却風(7f)を加熱しないため、デリバリーパイプ(5)中で停滞する液体燃料(34a)の冷却効率が高まる。
なお、エアコンディショナ(17)の放熱中は、放熱水入口パイプ(15b)を通過する放熱水(17b)で、放熱水入口パイプ(15b)の表面温度は比較的低温になり、エアコンディショナ(17)の放熱停止中は、放熱水入口パイプ(15b)内の停滞水で、放熱水入口パイプ(15b)の表面温度は比較的低温になるため、比較的高温のサーモスタット室(14a)及びバイパス入口ケース(15a)からの輻射熱を遮り、送風入口(9a)を通過するエンジン冷却風(7f)の加熱を抑制する。
【0048】
図3に示すように、このエンジンは、シリンダヘッド(1)と、シリンダヘッド(1)に組み付けられた排気管(20)と、排気管(20)をその周囲から覆う遮熱カバー(21)と、遮熱カバー(21)の端壁(21a)と対向する側に配置されたベルトテンショナ(22)を備えている。
図3に示すように、このエンジンは、シリンダヘッド(1)に組み付けられた(前寄りの)エンジン吊り金具(23)と、遮熱カバー(21)の(前の)端壁(21a)に沿う遮熱板(24)を備え、遮熱板(24)は、(前寄りの)エンジン吊り金具(23)から導出され、遮熱カバー(21)の(前の)端壁(21a)とベルトテンショナ(22)の間に配置されている。
排気管(20)は排気マニホルド(20a)である。
【0049】
このエンジンでは、遮熱カバー(21)の(前の)端壁(21a)からの輻射熱が遮熱板(24)で遮られ、遮熱板(24)の蓄熱は、遮熱板(24)と(前寄りの)エンジン吊り金具(23)の両方から放熱されるため、ベルトテンショナ(22)の温度上昇を抑制することができる。
【0050】
図7に示すように、(前寄りの)吊り金具(23)は、シリンダヘッド(1)の前寄りに配置されたもので、このエンジンは、平面視でシリンダヘッド(1)の対角線上、(前寄りの)吊り金具(23)と対向する後寄りのエンジン吊り金具(23c)を備えている。
【0051】
図4に示すように、このエンジンは、軸流式のエンジン冷却ファン(7)を備え、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、エンジン冷却ファン(7)の羽根(7a)と重なる位置に(前寄りの)エンジン吊り金具(23)が配置されている。
このエンジンでは、エンジン冷却ファン(7)で起こされたエンジン冷却風(7g)は、羽根(7a)と重なる(前寄りの)エンジン吊り金具(23)の周囲の排気側の送風領域(7d)に多量に供給され、(前寄りの)エンジン吊り金具(23)の放熱を促進することができる。
【0052】
図3,4に示すように、このエンジンでは、(前寄りの)エンジン吊り金具(23)は、エンジン冷却ファン(7)の排気側の送風路(9b)の送風方向に沿う直進ガイド部(23a)と、直進ガイド部(23a)の縁部から折り曲げられた冷却風受け止め部(23b)を備えている。
このエンジンでは、エンジン冷却風(7g)は冷却風受け止め部(23b)で受け止められ、エンジン吊り金具(23)の放熱が促進される。
また、このエンジンでは、直進ガイド部(23a)からの冷却風受け止め部(23b)の折り曲げにより、(前寄りの)エンジン吊り金具(23)の強度を高めることができる。
【0053】
図3に示すように、このエンジンでは、遮熱板(24)は、遮熱カバー(21)の端壁(21a)の周縁部よりもその周方向外側に導出された延長部(24a)(24b)を備え、
図4に示すように、クランク軸(8)の中心軸線(8a)と平行な向きに見て、シリンダヘッド(1)とベルトテンショナ(22)の間にエンジン冷却ファン(7)の羽根(7a)と重なる冷却風導入隙間(25)を備えている。
図4に示すように、このエンジンでは、エンジン冷却ファン(7)で起こされたエンジン冷却風(7g)は、羽根(7a)と重なる冷却風導入隙間(25)から排気側送風領域(7d)に多量に供給され、遮熱板(24)の熱は、
図3に示す延長部(24a)(24b)で拡張された広い放熱面から放熱されるため、遮熱板(24)の放熱効率が高い。
延長部(24a)(24b)は、上側の延長部(24a)と下側の延長部(24b)からなる。
【0054】
図3に示すように、このエンジンでは、(上側の)遮熱板(24)の延長部(24a)は、エンジン冷却ファン(7)の送風路(9)の送風方向下流側に向けて折り曲げられ、排気側の送風路(9b)の送風方向に対して傾斜している。
このエンジンでは、(上側の)延長部(24a)の傾斜により、排気側の送風路(9b)の流路抵抗が小さくなり、排気側の送風路(9b)での遮熱板(24)の冷却効率が高まる。
【0055】
図3に示すように、このエンジンでは、ベルトテンショナ(22)が発電機(26)である。
このエンジンでは、熱劣化や熱損傷を受けやすい発電機(26)の温度上昇が抑制されるため、その熱劣化や熱損傷の抑制効果が顕在化する。
発電機(26)にはオルタネータが用いられている。
【符号の説明】
【0056】
(1)…シリンダヘッド、(1a)…吸気ポート、(1b)…ヘッド冷却水ジャケット、(1c)…エンジン冷却水、(1d)…エンジン冷却水、(2)…シリンダ、(2a)…シリンダ中心軸線、(2b)…シリンダ冷却水ジャケット、(2c)…クランク室、(3)…吸気マニホルド、(3a)…コレクタ部、(3b)…ブランチ部、(3c)…ブローバイガス導入口、(4)…燃料インジェクタ、(5)…デリバリーパイプ、(5a)…周壁、(5b)…液体燃料、(6)…ガスミキサ、(7)…エンジン冷却ファン、(7a)…羽根、(7b)…回転中心、(7c)…ファン中央仮想線、(7d)…排気側送風領域、(7e)…ファンプーリ、(7f)…エンジン冷却風、(7g)…エンジン冷却風、(7h)…基部、(8)…クランク軸、(8a)…中心軸線、(9)…送風路、(9a)…送風入口、(9b)…排気側の送風路。
【0057】
(10)…ガスレギュレータ、(11)…PCVシステム、(12)…フレッシュエア導入ケース、(13)…プラグキャップ、(14)…ヘッド冷却水導出ケース、(14a)…サーモスタット室、(14b)…バイパスチューブ、(14c)…エンジン冷却水、(14d)…サーモスタット弁、(14e)…ラジエータ側出口、(14f)…バイパス側出口、(15)…水ポンプ、(15a)…バイパス入口ケース、(15b)…放熱水入口パイプ、(15c)…放熱水入口、(16)…ラジエータ、(16a)…放熱水、(17)…エアコンディショナ、(17a)…放熱器、(18)…ラジエータ入口側ホース、(19)…ラジエータ出口側ホース。
【0058】
(20)…排気管、(21)…遮熱カバー、(21a)…端壁、(22)…ベルトテンショナ、(22a)…支点、(22b)…ステー、(22c)…テンションプーリ、(22d)…ベルトカバー、(23)…前寄りのエンジン吊り金具、(23a)…直進ガイド部、(23b)…冷却風受け止め部、(23c)…後寄りのエンジン吊り金具、(24)…遮熱板、(24a)…延長部、(24b)…延長部、(25)…冷却風導入隙間、(26)…発電機、(27)…シリンダブロック、(28)…シリンダヘッドカバー、(29)…フロントケース。
【0059】
(30)…フライホイールハウジング、(31)…オイルパン、(32)…スロットルボディ、(33)…エアクリーナ、(33a)…エア、(33b)…フレッシュエア、(34)…液体燃料タンク、(34a)…液体燃料、(35)…液体燃料供給ポンプ、(36)…液化ガス燃料源、(36a)…液化ガス燃料、(37)…ベーパライザ、(37a)…ガス燃料、(38)…燃料切替操作装置、(38a)…燃料切替操作レバー、(39)…電子制御装置、(39a)…エンジンECU。
【0060】
(40)…イグニッションコイル、(42)…ブリーザ室、(42a)…ブローバイガス、(43)…PCVバルブ、(44)…ブローバイガス導出チューブ、(45)…フレッシュエア導出チューブ、(46)…オイルポンプ、(47)…オイルフィルタ、(48)…オイルクーラ。